説明

赤外線光源

【課題】 デバイス自体にパッケージの機能を持たせることにより、低コストで信頼性の高いデバイスを実現する。
【解決手段】 第1の基板にマイクロブリッジ状にフィラメントを形成し、このフィラメントに通電して発熱させることにより赤外線を出射させる赤外線光源において、前記第1の基板と接合し前記フィラメントを密閉する第2の基板と、前記フィラメントの電極を前記第1の基板の外側に導出する貫通電極とを具備することにより、デバイス自体にパッケージの機能を持たせ、低コストで信頼性の高いデバイスになるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中などのガス濃度を、赤外線を用いて測定する赤外線ガス分析計などに使用される赤外線光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス分析においては、ガスの種類によって吸収される赤外線の波長が異なることを利用し、この吸収量を検出することによりそのガス濃度を測定する、非分散赤外線(Non−Dispersive InfraRed)ガス分析計(以下、NDIRガス分析計と記す)が使用されている。
【0003】
NDIRガス分析計は、寸法を特定したセル内に被測定ガスを導入し、被測定ガスに赤外光を入射し、ある特定した赤外波長帯の強度の減衰量から被測定ガス成分の濃度を測定するもので、例えば二酸化炭素を測定する場合には、4.25μm近傍の赤外線の透過量を測定すれば良い。
【0004】
図5は、NDIRガス分析計の構成図である。図5において、NDIRガス分析計は、セル100と、赤外線光源101と、波長選択フィルタ102と、赤外線検出器103と、赤外線検出器103の信号を処理する信号処理回路(図示しない)とから構成されている。
【0005】
そして、セル100の内部には被測定ガスが供給され、赤外線光源101から放射されて被測定ガスに照射された赤外光は、波長選択フィルタ102に入射する。そして、被測定ガスの吸収特性に対応した波長帯域近傍の赤外光が波長選択フィルタ102を透過し、赤外線検出器103により検出され、信号処理回路は、赤外線検出器103からの信号に基づいて被測定ガスの濃度を算出する。
【0006】
次に、図6(a)は、従来の赤外線光源の平面図であり、図6(b)は、図6(a)に示したA−A‘断面図である。
【0007】
図6(a)、(b)において、SOI基板201は、単結晶シリコン基板202上に絶縁膜としての二酸化シリコン203を介して単結晶シリコン層204が形成されたものである。単結晶シリコン基板202は、面方位を[100]とする単結晶シリコンで、単結晶シリコン層204は不純物濃度の高いP型のシリコンである。
【0008】
フィラメント205は、単結晶シリコン層204をフォトエッチングすることにより所望の平面形状にパターンニングされる。なお、図6(a)においては、フィラメント205は直線状となっているが、温度変化によりフィラメント205に加わる応力を分散させてフィラメント205の寿命を長くする目的で、または赤外線の放射面積を大きくする目的で、複数の直線部が折り返されたミアンダ型、スパイラル型等の任意の形状を取ることができる。
【0009】
そして、フィラメント205下部の二酸化シリコン203をフォトエッチングにより四角形状に除去し、その二酸化シリコン203が除去された部分の単結晶シリコン基板202を異方性の温度差エッチングを行うことにより堀206を形成し、フィラメント205は、堀206の両端に固定されて堀206上の中空に浮いたマイクロブリッジ状に形成される。
【0010】
そして、単結晶シリコン層204上に形成された二酸化シリコン208を孔開け加工した後、電極207a、207bをフィラメント205に通電可能に形成し、電極207a、207bを介してフィラメント205に電流を流すと、フィラメント205は発熱し、その温度に対応した赤外線を放出する。
【0011】
そして、シリコンの単結晶には結晶粒が存在しないため、単結晶シリコン層204によって形成されたフィラメント205の物理特性は安定している。また、フィラメント205の膜厚はSOI基板201の単結晶シリコン層204の厚さによって決定されるので極めて安定している。従って、経時変化が極めて少なく、投入電力と光源強度の関係のばらつき等の固体差が小さい赤外線光源を安定して製造することができる。
つまり、投入電力と光源強度の関係が安定した赤外線ガス分析計を実現することができる。
【0012】
【特許文献1】特開2001−221737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、このような赤外線光源には、次のような問題点があった。
図6のデバイスを実際に使用する場合、デバイスを大気中で動作させると、酸化の進行、アルミ電極の腐食、ゴミの侵入、などにより信頼性が悪化するためパッケージに封入する必要がある。
パッケージは赤外光を取り出す窓、気密性、排熱などを考慮する必要があり、デバイスのコストと信頼性を支配する要因となる。
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の欠点をなくし、デバイス自体にパッケージの機能を持たせることにより、低コストで信頼性の高いデバイスを実現することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のような目的を達成するために、本発明の請求項1では、第1の基板にマイクロブリッジ状にフィラメントを形成し、このフィラメントに通電して発熱させることにより赤外線を出射させる赤外線光源において、前記第1の基板と接合し前記フィラメントを密閉する第2の基板と、前記フィラメントの電極を前記第1の基板の外側に導出する貫通電極とを具備することを特徴とする。
【0016】
請求項2では、請求項1の赤外線光源において、前記第2の基板は、前記フィラメントの上部空間となる凹部を有することを特徴とする。
【0017】
請求項3では、請求項1または2の赤外線光源において、前記第2の基板は、この第2の基板の内側および外側に反射防止膜を有することを特徴とする。
【0018】
請求項4では、請求項1乃至3いずれかの赤外線光源において、前記第1の基板は、前記フィラメントを中空に支持する凹部の内面に反射膜を有することを特徴とする。
【0019】
請求項5では、請求項1乃至4いずれかの赤外線光源において、前記第1の基板の材料としてパイレックス(登録商標)ガラスを用いることを特徴とする。
【0020】
請求項6では、請求項1乃至5いずれかの赤外線光源において、前記第2の基板の材料としてシリコンを用いることを特徴とする。
【0021】
請求項7では、請求項1乃至5いずれかの赤外線光源において、前記第2の基板の材料としてフッ化カルシウムを用いることを特徴とする。
【0022】
請求項8では、請求項6の赤外線光源において、前記第1の基板と前記第2の基板を陽極接合することを特徴とする。
【0023】
請求項9では、請求項1乃至7いずれかの赤外線光源において、前記第1の基板と前記第2の基板をスペーサーを介して接合することを特徴とする。
【0024】
請求項10では、請求項9の赤外線光源において、スペーサーの材料としてシリコンを用いることを特徴とする。
【0025】
請求項11では、請求項1乃至10いずれかの赤外線光源において、前記貫通電極は、金属膜を成膜した貫通穴にハンダもしくはメッキで金属を充填することあるいは導電性ペーストを充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を説明すれば下記の通りである。
【0027】
本発明の赤外線光源は、パッケージを必要としないため、パッケージ分のコスト削減およびパッケージに組み立てるコストの削減をすることができ、低コストを実現することができる。また、プリント基板等に直接ハンダ付け実装をすることができる。
【0028】
そして、陽極接合による高信頼性シール構造を実現することができる。
【0029】
さらに、貫通電極から速やかに熱が逃げることにより、高速点滅を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を用いて、本発明の赤外線光源を説明する。
【実施例1】
【0031】
図1(a)、(b)は、本発明の赤外線光源の一実施例を示す構造図である。図1(a)は、本発明の赤外線光源の平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示したX−X‘断面図である。
【0032】
パイレックス(登録商標)ガラス基板を第1の基板として使用する(以下、ガラス基板1とする)。
【0033】
図1(a)、(b)に示すように、赤外線光源において、先ず、貫通電極9、10を形成したガラス基板1の表面に、シリコンフィラメント3が形成される。
【0034】
また、シリコンフィラメント3は、フィラメントの下を加工することによって、中空を支持する凹部(以下、フィラメントの下部空間となる凹部4とする)の両端であるガラス基板1に固定される。
【0035】
貫通電極9、10はシリコンフィラメント3の電極をガラス基板1の外側に導出するために、シリコンフィラメント3の両端部が貫通電極9、10に接続されている。
【0036】
また、フィラメントの下部空間となる凹部4の内面には反射膜5が形成されている。
【0037】
ガラス基板1の外面には金属膜11が成膜されており、ダイシングで形成した溝12により、貫通電極9、10に対応した部分を電気的に分離している。
【0038】
シリコン基板を第2の基板として使用する(以下、第2のシリコン基板2とする)。
【0039】
ガラス基板1は、フィラメントの上部空間となる凹部8を加工した第2のシリコン基板2と、窒素、クリプトンなどのガス雰囲気中で陽極接合されている。
【0040】
また、ガラス基板1と第2のシリコン基板2が陽極接合することにより、ガラス基板1上のシリコンフィラメント3が第2のシリコン基板2により密閉される。
【0041】
第2のシリコン基板2の内側および外側には、熱酸化膜や窒化膜などの誘電体からなる反射防止膜6、7が成膜されている。
【0042】
次に、図1(a)、(b)に示す赤外光源の動作を説明する。
【0043】
貫通電極9、10間に電圧を印加するとシリコンフィラメント3に電流が流れ、ジュール熱が発生する。シリコンフィラメント3の上下に空間があるため、シリコンフィラメント3の上下に空間がない場合よりも、熱伝導による熱の逃げが小さくなり、シリコンフィラメント3は大きく温度上昇して発光する。第2のシリコン基板2に反射防止膜6、7を成膜して反射による損失を低減することにより透過する光量を増加させることができる。また、フィラメントの下部空間となる凹部4の内面の反射膜5により、シリコンフィラメント3から下側に発光した光を反射して上方向に出すことによっても取り出す光量を増加させることができる。
【0044】
パッケージを必要としないため、パッケージ分のコスト削減およびパッケージに組み立てるコストの削減をすることができ、低コストを実現することができる。そして、プリント基板等に直接ハンダ付け実装をすることができる。
【0045】
また、陽極接合による高信頼性シール構造を実現することができる。
【0046】
また、ガスなどの分析に応用する場合、高速にON/OFFを繰り返す必要があるが、そのためにはシリコンフィラメント3からの速やかな熱の逃げも重要となる。本発明の赤外線光源の構造では、貫通電極9、10を経由して速やかに熱を逃がすことができる。つまり、高速点滅を実現することができる。
【0047】
さらに、内部の空間は、酸素や水分を除去して窒素、クリプトンなどのガス雰囲気となっているため、シリコンフィラメント3の酸化を防止して長寿命を得ることができる。
【0048】
図2(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)は、本発明の赤外線光源の作製プロセスの一実施例を示す工程図である。
【0049】
赤外線光源において、先ず、図2(a)に示すように、ガラス基板1にフィラメントの下部空間となる凹部4をエッチングなどにより加工する。
【0050】
そして、図2(b)に示すように、ガラス基板1上のフィラメントの下部空間となる凹部4の内面に反射膜5となるAuなどの金属膜をスパッタなどで成膜し、エッチング加工する。
【0051】
次に、図2(c)に示すように、ガラス基板1にサンドブラストなどにより貫通電極にするための貫通穴13、14を加工する。
【0052】
一方、図2(d)に示すように、第1のシリコン基板15の表面にボロン高濃度層16を拡散、エピタキシャル成長などで形成する。
【0053】
そして、図2(e)に示すように、ボロン高濃度層16を、後の工程でシリコンフィラメント3となる部分以外をエッチング除去する。
【0054】
ここで、図2(f)に示すように、図2に示す工程(c)で行った第1の基板と、図2に示す工程(e)で行った第1のシリコン基板15を陽極接合する。
【0055】
そして、図2(g)に示すように、ヒドラジン、TMAH、KOHなどのアルカリ液でエッチングすることにより、ボロン高濃度層16のシリコンフィラメント3を除く第1のシリコン基板15全てをエッチング除去する。
【0056】
一方、図2(h)に示すように、第2のシリコン基板2にKOHなどによる異方性エッチングなどでフィラメントの上部空間となる凹部8を加工する。
【0057】
そして、図2(i)に示すように、第2のシリコン基板2の内側および外側に熱酸化などにより反射防止膜6、7を成膜、パターニングする。
【0058】
更に、図2(j)に示すように、図2に示す工程(g)で行った第1の基板と、図2に示す工程(i)で行った第2の基板を窒素、クリプトンなどのガス雰囲気中で陽極接合を行う。
【0059】
そして、図2(k)に示すように、ガラス基板1の貫通穴13、14の内部およびガラス基板1の底面に金属膜11をスパッタなどで成膜する。
【0060】
また、図2(l)に示すように、ガラス基板1の底面にダイシングで形成した溝12を施すことにより、貫通電極9、10に対応した部分を電気的に分離する。この貫通電極9、10の分離は、フォトリソグラフィやハードマスクなどで行なうこともできる。
また、貫通電極9、10は、金属膜11を成膜した貫通穴13、14にハンダもしくはメッキで金属を充填あるいは導電性ペーストを充填する。
【実施例2】
【0061】
図3(a)、(b)は、本発明の赤外線光源の他の実施例を示す構成図である。図3(a)は、本発明の赤外線光源の他の実施例の平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示したX−X‘断面図である。図において、図1(a)、(b)と同様のものは、同一符号を付して示す。
【0062】
広い波長透過帯域が必要な光源では、図1(a)、(b)の構造は適応できない。
そこで、透過波長帯域の広い、フッ化カルシウム(CaF)などの窓材を接着する構造を図3(a)、(b)に示す。
【0063】
パイレックス(登録商標)ガラス基板を第1の基板として使用する(以下、ガラス基板1とする)。
【0064】
図3(a)、(b)に示すように、赤外線光源において、先ず、貫通電極9、10を形成したガラス基板1の表面に、シリコンフィラメント3が形成される。
【0065】
また、シリコンフィラメント3は、フィラメントの下を加工することによって、中空を支持する凹部(以下、フィラメントの下部空間となる凹部4とする)の両端であるガラス基板1に固定される。
【0066】
貫通電極9、10はシリコンフィラメント3の電極をガラス基板1の外側に導出するために、シリコンフィラメント3の両端が貫通電極9、10に接続されている。
【0067】
また、フィラメントの下部空間となる凹部4の内面には反射膜5が形成されている。
【0068】
ガラス基板1の外面には金属膜11が成膜されており、ダイシングで形成した溝12により、貫通電極9、10に対応した部分を電気的に分離している。
【0069】
フッ化カルシウム基板を第2の基板として使用する(以下、フッ化カルシウム(CaF)窓材19とする)。
【0070】
また、スペーサー17を介して、ガラス基板1とフッ化カルシウム(CaF)窓材19を接合する。シリコンをスペーサー17として使用する。
【0071】
ガラス基板1は、フッ化カルシウム(CaF)窓材19を接着するためのスペーサー17と陽極接合されている。
【0072】
窒化シリコン膜(SiN)18は、スペーサー17を異方性エッチングにより加工したときのマスクである。
【0073】
接着剤20により、スペーサー17とフッ化カルシウム(CaF)窓材19を窒素、クリプトンなどのガス雰囲気中で接着している。
【0074】
また、ガラス基板1とスペーサー17が陽極接合し、接着剤20によりスペーサー17とフッ化カルシウム(CaF)窓材19を接着することにより、ガラス基板1上のシリコンフィラメント3がフッ化カルシウム(CaF)窓材19等により密閉される。
【0075】
そして、スペーサー17を使用することにより、シリコンフィラメント3上に空間を有することができる。
【0076】
次に、図3(a)、(b)に示す窓材を接着した構造の赤外光源の動作を説明する。
【0077】
貫通電極9、10間に電圧を印加するとシリコンフィラメント3に電流が流れ、ジュール熱が発生する。シリコンフィラメント3の上下に空間があるため、シリコンフィラメント3の上下に空間がない場合よりも、熱伝導による熱の逃げが小さくなり、シリコンフィラメント3は大きく温度上昇して発光する。また、フィラメントの下部空間となる凹部4の内面の反射膜5により、シリコンフィラメント3から下側に発光した光を反射して上方向に出すことにより取り出す光量を上げている。
【0078】
パッケージを必要としないため、パッケージ分のコスト削減およびパッケージに組み立てるコストの削減をすることができ、低コストを実現することができる。そして、プリント基板等に直接ハンダ付け実装をすることができる。
【0079】
また、陽極接合による高信頼性シール構造を実現することができる。
【0080】
また、ガスなどの分析に応用する場合、高速にON/OFFを繰り返す必要があるが、そのためにはシリコンフィラメント3からの速やかな熱の逃げも重要となる。本発明の窓材を接着した赤外線光源の構造では、貫通電極9、10を経由して速やかに熱を逃がすことができる。つまり、高速点滅を実現することができる。
【0081】
さらに、内部の空間は酸素や水分を除去して、窒素、クリプトンなどのガス雰囲気となっており、シリコンフィラメント3の酸化を防止して長寿命を得ることができる。
【0082】
次に、図4(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)は、本発明の窓材を使用した赤外線光源の作製プロセスの一実施例を示す工程図である。図2と同様のものは、同一符号を付して示す。
【0083】
赤外線光源において、先ず、図4(a)に示すように、ガラス基板1にフィラメント下部空間となる凹部4をエッチングなどにより加工する。
【0084】
そして、図4(b)に示すように、ガラス基板1上のフィラメント下部空間となる凹部4の内面に反射膜5となるAuなどの金属膜をスパッタなどで成膜し、エッチング加工する。
【0085】
次に、図4(c)に示すように、ガラス基板1にサンドブラストなどにより貫通電極にするための貫通穴13、14を加工する。
【0086】
一方、図4(d)に示すように、スペーサー17の表面にボロン高濃度層16を拡散、エピタキシャル成長などで形成する。
【0087】
そして、図4(e)に示すように、スペーサー17のボロン高濃度層16を拡散、エピタキシャル成長などで形成した面に対する裏面の両端に窒化シリコン膜(SiN)18を成膜、パターニングする。
【0088】
次に、図4(f)に示すように、ボロン高濃度層16について、後の工程でシリコンフィラメント3となる部分以外をエッチング除去する。
【0089】
ここで、図4(g)に示すように、図4に示す工程(c)で行った第1の基板と、図2に示す工程(f)で行ったスペーサー17を陽極接合する。
【0090】
そして、図4(h)に示すように、ガラス基板1の貫通穴13、14の内部およびガラス基板1の底面に金属膜11をスパッタなどで成膜する。成膜後、ガラス基板1の底面にダイシングで形成した溝12を施すことにより、貫通電極9、10に対応した部分を電気的に分離する。この貫通電極9、10の分離は、フォトリソグラフィやハードマスクなどで行なうこともできる。
【0091】
また、図4(i)に示すように、ヒドラジン、TMAH、KOHなどのアルカリ液でエッチングすることにより、スペーサー17部分を選択的にエッチング除去する。
【0092】
さらに、図4(j)に示すように、スペーサー17上の窒化シリコン膜(SiN)18に接着剤20を塗布し、フッ化カルシウム(CaF)窓材19と接合する。また、貫通電極9、10は、金属膜11を成膜した貫通穴13、14にハンダもしくはメッキで金属を充填あるいは導電性ペーストを充填する。
【0093】
窓材を使用しない実施例1の赤外線光源では、基板にシリコンを使用しているため、波長帯域幅が狭いことにより、検出したいガスが1種類と決まっている場合に使用することができる。また、シリコンは、フッ化カルシウムよりコストが安い。そして、何種類かのガスを検出したい場合は、手間が掛かるが検出したい各ガスの波長帯域幅に合わせて反射防止膜6、7の厚みを変えることにより、各ガスを測定することが可能となる。
【0094】
一方、窓材を接着した実施例2の赤外線光源では、シリコンに比べてフッ化カルシウム窓材のコストが高くなるが、フッ化カルシウムは波長帯域が広いため、様々なガスを一度に検出することができる。
【0095】
すなわち、検出したいガスが1種類に特定されている場合は安価である実施例1の赤外線光源を選択し、検出したいガスが多種ある場合にはコストは高くなるが一度に多種類のガスを検出することができる実施例2を選択するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は本発明の一実施例を示す構造図である。
【図2】図2は本発明の一実施例を示す工程図である。
【図3】図3は本発明の他の実施例を示す構造図である。
【図4】図2は本発明の他の実施例を示す工程図である
【図5】図5は従来の一実施例を示す構成図である。
【図6】図6は従来の一実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0097】
1 ガラス基板
2 第2のシリコン基板
3 シリコンフィラメント
4 フィラメントの下部空間となる凹部
5 反射膜(金属膜)
6、7 反射防止膜
8 フィラメントの上部空間となる凹部
9、10 貫通電極
11 金属膜
12 ダイシングで形成した溝
13、14 貫通穴
15 第1のシリコン基板
16 ボロン高濃度層
17 スペーサー
18 窒化シリコン膜(SiN)
19 フッ化カルシウム(CaF)窓材
20 接着剤
100 セル
101 赤外線光源
102 波長選択フィルタ
103 赤外線検出器
201 SOI基板
202 単結晶シリコン基板
203 二酸化シリコン
204 単結晶シリコン層
205 フィラメント
206 堀
207a 電極
207b 電極
208 二酸化シリコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板にマイクロブリッジ状にフィラメントを形成し、このフィラメントに通電して発熱させることにより赤外線を出射させる赤外線光源において、
前記第1の基板と接合し前記フィラメントを密閉する第2の基板と、
前記フィラメントの電極を前記第1の基板の外側に導出する貫通電極と
を具備することを特徴とする赤外線光源。
【請求項2】
前記第2の基板は、前記フィラメントの上部空間となる凹部を有することを特徴とする請求項1記載の赤外線光源。
【請求項3】
前記第2の基板は、この第2の基板の内側および外側に反射防止膜を有することを特徴とする請求項1または2記載の赤外線光源。
【請求項4】
前記第1の基板は、前記フィラメントを中空に支持する凹部の内面に反射膜を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の赤外線光源。
【請求項5】
前記第1の基板の材料としてパイレックス(登録商標)ガラスを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線光源。
【請求項6】
前記第2の基板の材料としてシリコンを用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線光源。
【請求項7】
前記第2の基板の材料としてフッ化カルシウムを用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線光源。
【請求項8】
前記第1の基板と前記第2の基板を陽極接合することを特徴とする請求項6記載の赤外線光源。
【請求項9】
前記第1の基板と前記第2の基板をスペーサーを介して接合することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の赤外線光源。
【請求項10】
スペーサーの材料としてシリコンを用いることを特徴とする請求項9記載の赤外線光源。
【請求項11】
前記貫通電極は、金属膜を成膜した貫通穴にハンダもしくはメッキで金属を充填することあるいは導電性ペーストを充填することを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の赤外線光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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