説明

赤外線温度測定装置

【課題】ガスコンロで鍋の異常過熱を防止するための接触式の温度測定に代えて赤外線による温度測定とする際に雰囲気温度の変化に対して温度測定を安定化する。
【解決手段】板状のステム1と、当該ステム1上に設けられたサーモパイル31,31と、当該ステム1に接合されて当該ステム1のサーモパイル31,31側を覆う有蓋筒状のキャップ34とを備えた2素子搭載センサデバイス32を有する。第1基板20aにステム1側を向けて配置される2素子搭載センサデバイス32の当該ステム1と第1基板20aとの間にステム1に当接して配置されるスペーサ5bを備える。キャップ34の周囲に当該キャップ34に当接して配置されるホルダ5aを備える。このスペーサ5bとホルダ5aとから有底筒状に形成される熱伝導熱容量部材5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ、ガステーブルといった外炎式および内炎式ガス調理器具に備えられ、当該ガス調理器具で加熱される鍋等の被加熱容器の温度を測定する赤外線温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガステーブル、ガスコンロ等の調理器具では、加熱される鍋の鍋底に当接する温度測定部を有する過熱防止装置を設け、当該過熱防止装置の温度測定部に内蔵されたサーミスタで鍋底の温度を測定し、所定以上の温度となった場合、すなわち、異常過熱と判定された場合に、過熱防止装置によりガスの供給を遮断していた。
このような過熱防止装置では、サーミスタを内蔵する温度測定部を鍋底に接触させるため、温度測定部を上下動可能とするとともに、上側にバネで付勢した状態としていた。そして、温度測定部は、加熱される鍋を支持する五徳よりも突出した状態とされ、鍋を五徳に載せた際に鍋の重さにより、鍋底に接触した状態で下降するようになっている。
【0003】
したがって、温度測定部のバネのバネ荷重に対して軽い重量の鍋を載せると、鍋を水平にできず、小さくて軽い鍋が使用できない。
また、複数のコンロを有するガステーブルにおいて、鍋を水平に移動させようとした際などに、不意に鍋を五徳より上に出た温度測定部にぶつけてしまうことがあった。これらのことから過熱防止装置によりガステーブルの利便性が損われていた。
【0004】
また、ガステーブル等の加熱調理器具ではないが、電磁調理器(誘導加熱調理器)等では、被加熱物の温度を測定するのに、非接触で温度測定が可能な熱型赤外線センサ(熱型赤外線検知素子)を用いることが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
ガス調理機器具で、このような赤外線センサを用いて非接触で鍋底の温度を測定するようにすれば、上述のような鍋底に接触する温度測定部を用いた場合の問題が解消される。
【0005】
しかし、熱型赤外線素子を用いた温度測定においては、雰囲気温度の大きな変化が発生する環境では、正確な温度測定が困難であり、大きな雰囲気温度の変化が生じる環境で、熱型赤外線素子を用いた温度測定装置を用いることはなかった。
上述の電磁調理器で使用される熱型赤外線検知素子においては、雰囲気温度変化の影響を避けるために、熱型赤外線検知素子の周囲に空間を設け、この空間を空気断熱層とし、この空気断熱層の緩衝効果により、熱型赤外線検知素子への雰囲気温度変化による影響を軽減していた。
さらに、雰囲気温度変化の影響に対して、熱型赤外線検知素子の周囲に樹脂断熱層を設け、この樹脂断熱層の緩衝効果により、熱型赤外線検知素子への雰囲気温度変化による影響を軽減していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−63451号公報
【特許文献2】特開2007−242625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、基本的に電磁誘導により被加熱容器自体が発熱する電磁調理器に対してガスコンロ等の外炎式および内炎式ガス調理器具においては、調理器具内に熱源としてのガスバーナがあるので、調理器具内の雰囲気温度変化が極めて大きくなり、空気や樹脂による断熱層を設けたことに基づく緩衝効果だけでは、安定した温度測定が困難であった。
例えば、熱型赤外線検知素子の構造として、金属製で肉厚の板状に形成されたステム上にサーモパイルを配置し、ステムにサーモパイルを覆う金属製で有蓋円筒状のキャップを被せ、当該キャップにキャップ上からサーモパイルに赤外線を通すことを可能とする窓を設けたものが知られているが、ガスコンロにおける雰囲気温度変化により、金属製のステムやキャップに温度の位置によるばらつきが生じることに基づき、外乱となる赤外線の2次輻射が発生し、正確な赤外線の測定が困難であった。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、ガスコンロ等の外炎式または内炎式ガス調理器具に設けられて鍋等の被加熱容器の温度を測定するに際し、ガス調理器具内における雰囲気温度の変化の影響を低減することにより熱型赤外線検知素子を用いた温度測定を雰囲気温度の変化が激しいガス調理器具内でも可能とする赤外線温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のガス調理器具用赤外線温度測定装置は、板状のステムと、当該ステム上に設けられたサーモパイルと、当該ステムに接合されて当該ステムの前記サーモパイル側を覆う有蓋筒状のキャップと、当該キャップの蓋部のサーモパイルに臨む位置に設けられた開口に配置されて前記サーモパイルに入射する赤外線の波長を規制するフィルタとを備えた赤外線温度センサデバイスを有し、ガスコンロ等のガス調理器具に設けられて当該ガス調理器具で加熱される鍋等の被加熱容器の温度を非接触で測定するガス調理器具用赤外線温度測定装置であって、
前記サーモパイルへの赤外線の入射を遮ることなく前記赤外線温度センサデイバスの周囲を覆うように設けられるとともに、前記ステムより熱伝導率が高く、かつ、比熱容量が大きな熱伝導熱容量部材と、
前記サーモパイルへの赤外線の入射を遮ることなく前記熱伝導熱容量部材の周囲を覆うように設けられる断熱部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の本発明においては、ガスコンロ等のガス調理器具に設けられて鍋等の温度を非接触で測定する赤外線温度測定装置に設けられ、かつ、ステム上にサーモパイルが設けられるとともにキャップを備えた赤外線温度センサデバイスの周囲が熱伝導熱容量部材に覆われた状態となっている。さらに、熱伝導熱容量部材の周囲が樹脂製の断熱材で囲まれている。
【0011】
ここで、ガス調理器具で、ガスコンロやグリル等のガスバーナを点火すると、赤外線温度センサデバイスの周囲の温度、すなわち、雰囲気温度が変化するとともに、例えば、熱伝導熱容量部材のガスバーナに近い部分は、他の部分よりも早く温度が上昇させられ、熱伝導熱容量部材の温度が位置によりばらつくことになる。
【0012】
しかし、熱伝導熱容量部材においては、熱伝導率が高いことから熱の伝わる速さが速く、熱が直ぐに熱伝導熱容量部材内で拡散され、熱伝導熱容量部材内の温度が均一になるように作用する。
また、熱伝導熱容量部材は、ステムより比熱容量が大きくなっているので、全体の熱容量が大きく、周囲の温度の変化に基づいて熱伝導熱容量部材に加えられる熱量に対して、熱伝導熱容量部材の温度変化が小さなものとなる。
【0013】
これにより、熱伝導熱容量部材に囲まれた赤外線温度センサデバイスにおいても各部位間で大きな温度差が生じることが防止されるとともに、温度変化が低減される。
さらに、熱伝導熱容量部材の周囲が断熱部材で囲まれていることにより、ガス調理器具内における雰囲気温度の変化が熱伝導熱容量部材まで伝わりにくい状態となる。
【0014】
言い換えれば、断熱部材でも遮断しきれなかった熱が熱伝導熱容量部材に達しても、その熱を大きな熱容量で緩和して温度変化を小さなものとし、かつ、熱を早い速度で拡散することで熱を均一化し、赤外線温度センサデバイスへの雰囲気温度の変化による影響を防止することができる。
また、赤外線温度センサデバイスのステムより熱伝導熱容量部材の熱伝導率を高くするとともに比熱容量を大きくすることで、ステムが温度変化の影響を受けるのをより確実に抑止することができ、ステムを略均一な温度で、かつ、温度変化の少ないものとすることができる。
【0015】
請求項2に記載のガス調理器具用赤外線温度測定装置は、請求項1に記載の発明において、
前記赤外線温度センサデバイスが搭載される基板が設けられ、
前記熱伝導熱容量部材は、前記赤外線温度センサデバイスの当該ステムと前記基板との間に前記ステムに当接して配置される板状部と、
前記キャップの周囲に当該キャップに当接して配置される筒状部とを備えて有底筒状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、有底筒状の熱伝導熱容量部材によりサーモパイルへの赤外線の入射を妨げることなく確実に熱伝導熱容量部材の周囲を囲んで、赤外線温度センサデバイスの雰囲気温度の変化による影響を防止することができる。
また、熱伝導熱容量部材の板状部がステムに当接し、かつ、筒上部がキャップに当接しており、熱伝導熱容量部材とステムおよびキャップとで熱の伝達が可能となっており、熱伝導熱容量部材による温度変化および温度のばらつきの防止を効率的に図ることが可能となる。
【0017】
請求項3に記載のガス調理器具用赤外線温度測定装置は、請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記熱伝導熱容量部材に周囲を囲まれた前記赤外線温度センサデバイスを収納するケースを備え、
前記断熱部材は、前記ケース内で、当該ケースと前記熱伝導熱容量部材との間に設けられたインナーケースであることを特徴とする。
【0018】
断熱部材がケース内に設けられたインナーケースとなっているので、断熱部材をケース内に効率的に配置して、スペース効率を向上できるとともに、ケースとインナーケースと合わせて効率的に赤外線温度センサデバイスを断熱することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、赤外線温度センサデバイスの周囲に断熱材を配置するとともに、断熱材内に熱伝導率が高く熱容量の大きな熱伝導熱容量部材を配置することで、赤外線温度センサデバイスへの雰囲気温度の変化による悪影響を防止して、ガス調理器具内においても、赤外線により温度測定が可能となり、従来の接触式の温度測定装置を用いた場合の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の赤外線温度測定装置を備えたガステーブル内部の概略を示す図である。
【図2】前記赤外線温度測定装置のケースを開放し、その内部の断面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る赤外線温度測定装置を備えるガス調理器具を示す要部概略断面図、図2はケースを開いた状態で、かつ内部の一部を半分に切断した状態の赤外線温度測定装置を示す斜視図である。
図1に示すように、赤外線温度測定装置30は、ガステーブル等のコンロ部分の内部で、筒状のガスバーナ2の中央の下側に配置される。そして、ガスバーナ2の上に被加熱容器、すなわち、鍋としてのフライパン3を図示しない五徳上に載せた場合に、筒状のガスバーナ2の中央部の空間を通してフライパン3の鍋底3a部分が見通せる位置に赤外線温度測定装置30が配置されている。
【0022】
そして、赤外線温度測定装置30は、図2に示すように、肉厚の円板状に形成されたステム1と、当該ステム1上に設けられた2つのサーモパイル31,31と、ステム1外周に開口側を接続されてサーモパイル31,31を覆うように設けられる有蓋円筒状のキャップ34とを備えた2素子搭載センサデバイス32(赤外線温度センサデバイス)を備える。
また、赤外線温度測定装置30は、当該2素子搭載センサデバイス32の上側で、二つのサーモパイル31,31を囲む様に配置されるとともに上側(測定対象側)に延出する光導管33と、当該光導管33内に複数段に配置される絞り部材としての複数の遮光板35,36,37と、光導管33の先端部内に配置され光導管33の先端部側開口を閉塞した状態の集光光学素子としての集光レンズ19と、2素子搭載センサデバイス32から出力される信号に基づいて測定温度の値を算出する温度演算ユニット20と、これら部材のうちの光導管33を除く部材を収納するケース41と、当該ケース41内で、光導管33等を支持するインナーケース(断熱部材)22とを備えるものである。
また、赤外線温度測定装置30は、2素子搭載センサデバイス32の外周側で、かつ、インナーケース22の内側に、有底円筒状の熱伝導熱容量部材5を備えている。
【0023】
2素子搭載センサデバイス32は、2つの異なる波長の赤外線放射を検出する2つのサーモパイル31,31を備えている。そして、2素子搭載センサデバイス32は、これらサーモパイル31,31で測定される鍋からの赤外線の放射強度の比としての赤外線放射強度比を用いて温度を測定する周知の2色測定法に用いることが可能である。さらに、2素子搭載センサデバイス32は、2色測定法に限られることなく、波長の異なる2つの赤外線放射強度を用いる温度測定法に用いることができ、波長の異なる2つの赤外線放射強度を用いるものならば、新たに開発される温度測定法にも適用可能である。
【0024】
また、2素子搭載センサデバイス32は、前記ステム1を備えている。ステム1は例えばSPC(冷間圧延鋼板)からなり、金属製となっている。ステム1は円板状に形成されるとともに、底部がその上の本体部分より径が大きくされたフランジ部11が備えられている。
すなわち、外周に径の大きなフランジ部11とその上のフランジ部11より径の小さい本体とから段差が形成されている。
【0025】
そして、ステム1には、その上面に上述のサーモパイル31,31が左右に並んで形成されている。また、ステム1の上面には、ステム1の温度を計測するためのサーミスタ24が設けられている。
また、ステム1には、サーモパイル31,31やサーミスタ24等に接続される端子25が貫通した状態で、かつ、下方に延出した状態に設けられている。なお、端子25は、ステム1および後述の端子が貫通するスペーサ5bと絶縁された状態となっている。
【0026】
そして、ステム1には、そのフランジ部11にキャップ34が接合されている。キャップ34は、有蓋円筒状であり、キャップ34の内径がステム1の本体の外径より大きく、キャップ34の外径がフランジ部11の外径より小さくなっている。また、キャップ34の開口側端部には、円筒状のキャップ34の開口側端部を拡径した状態のフランジ部が形成されている。
【0027】
そして、キャップ34の底部側開口にステム1の本体が挿入された状態で、キャップ34の開口側の円環状のフランジ部の下面がステム1のフランジ部11の上面に当接した状態となっており、キャップ34の端面がフランジ部11の上面に例えば溶接により接合されている。
そして、キャップ34の底側の開口は、ステム1により閉塞した状態となっている。
そして、キャップ34は、上述のサーモパイル31,31やサーミスタ24を有するステム1の上面を、当該上面上のサーモパイル31,31やサーミスタ24と間隔をあけて覆うように形成されている。
【0028】
すなわち、有蓋筒状のキャップ34の蓋部分と、ステム1の上面との間には、間隔があけられ、ステム1の上面とキャップ34の蓋部分との間にはキャップ34に囲まれた空間が形成されており、その空間内に、サーモパイル31,31やサーミスタ24が収容された状態となっている。
また、キャップ34は、例えば、SUM(硫黄複合快削鋼鋼材)から構成されている。
【0029】
そして、有蓋円筒状のキャップ34の蓋部分には、2つのサーモパイル31,31に対応して、2つの開口が形成されており、各開口は、各サーモパイル31,31の真上に配置されている。当該開口には、それぞれ異なる光学フィルタが開口を閉塞するように取り付けられている。これらの光学フィルタは、サーモパイル31,31に向けて放射される赤外線の波長を制限するものであり、これら二つのフィルタのうちの一方のフィルタは、赤外線の短波長領域をより透過し、長波長領域の透過を制限する。また、他方のフィルタは、赤外線の長波長領域をより透過し、短波長領域の透過を制限する。
【0030】
これらのフィルタにより、二つのサーモパイル31,31のうちの一方のサーモパイル31が赤外線の短波長領域の放射強度を検出し、他方のサーモパイル31が赤外線の長波長領域の放射強度を検出するようになっている。すなわち、サーモパイル31,31には、赤外線の波長の選択性がなく、フィルタにより検出する波長を制限するようになっている。
【0031】
前記サーモパイル31,31とは、複数の熱電対を直列や並列に接続したもので、熱エネルギを電気エネルギに変換して電気信号を出力する。また、サーモパイル31,31は、絶対温度を出力するものではなく、局所的温度差等の相対温度を出力する。ここでは、ステム(冷接点)とのサーモパイル(温接点)との温度差を出力する。
また、上述のサーミスタ24は、ステム1の温度を測定して絶対温度として出力しており、このサーミスタ24からの出力と、サーモパイル31,31の出力から温度を算出するが、サーミスタ24からの出力により雰囲気温度の変化に対するサーモパイル31,31からの出力誤差をある程度補正することができる。
そして、2つのサーモパイル31,31においては、一方のサーモパイル31が赤外線の範囲内で相対的に短波長側の赤外線を検出し、他方のサーモパイル31が前記短波長より相対的に長い長波長側の赤外線を検出するものとなっている。
【0032】
そして、2素子搭載センサデバイス32は、ケース41内部で後述のように光導管33の基端側に固定されるとともに、温度演算ユニット20に配線接続されており、各サーモパイル31,31からの赤外線の放射強度を示す出力信号がそれぞれ温度演算ユニット20に入力されるようになっている。
温度演算ユニット20は、2素子搭載センサデバイス32の直下に配置される第1基板20aと、当該第1基板20aよりも下側に配置される第2基板20bとから構成されている。
また、2素子搭載センサデバイス32上に左右に並んで配置されるとともに、間に僅かに間隔をあけた2つのサーモパイル31,31の周囲はキャップ34により遮光されている。
【0033】
また、2素子搭載センサデバイス32の基板のキャップ34より外側となる外周部が上のホルダ5aと下のスペーサ5bとから構成される上述の熱伝導熱容量部材5により挟まれた状態となっている。また、スペーサ5bの下側には、温度演算ユニット20の第1基板20aが遮光された状態に配置され、当該第1基板20aと2素子搭載センサデバイス32とが前記端子25により接続されている。
【0034】
前記熱伝導熱容量部材5のスペーサ5bは、2素子搭載センサデバイス32の底部を構成するステム1の底面と、第1基板20aとの間に配置されている。なお、端子25は、スペーサ5bを貫通して第1基板20aに接続されている。
そして、スペーサ5bは、円板状に形成されるとともに、その上面の中央部に前記ステム1のフランジ部11の直径より僅かに大きな内径の円形状の窪みが形成されており、当該窪みにステム1のフランジ部11と、当該フランジ部11に接合されたキャップ34のフランジ部が挿入された状態となっている。また、窪みの深さと、互いに接合されたステム1のフランジ部11とキャップ34のフランジ部とを合わせた厚さとは、略同じ長さとされるが、2つのフランジ部11を合わせた厚さの方が、スペーサ5bの窪みの深さより僅かに短くなっている。
【0035】
また、スペーサ5bの窪み内の上面と、2素子搭載センサデバイス32のステム1の底面とは当接した状態となっている。また、スペーサ5bの窪み部分の厚さと、ステム1の厚さが同程度となっているが、スペーサ5bの窪みより外周側における厚さは、ステム1の厚さより厚くなっている。
【0036】
また、スペーサ5bより上の2素子搭載センサデバイス32の周囲には、熱伝導熱容量部材5の円筒状のホルダ5aが配置されている。
ホルダ5aは、キャップ34の外径より僅かに大きい内径を有し、スペーサ5b上でキャップ34の周囲を囲った状態となっている。また、キャップ34の外径とホルダ5aの内径との差は僅かであり、キャップ34の外周面の全周に渡って、ホルダ5aの内周面がほぼ当接した状態となっている。
【0037】
また、ホルダ5aは、スペーサ5bと略等しい外径を有し、当該ホルダ5aが、その全周に渡って、スペーサ5b上に載った状態となっている。また、スペーサ5bに載った状態でホルダ5aの上面の高さと2素子搭載センサデバイス32のキャップ34の上面の高さとが略等しくなっている。
したがって、2素子搭載センサデバイス32のキャップ34は、その下端部のフランジ部より上の外周面の全てがホルダ5aに覆われた状態となっている。
【0038】
また、ホルダ5aの底面はスペーサ5bの上面に当接した状態となるが、スペーサ5bの2素子搭載センサデバイス32の底部が挿入された状態のくぼみの外径は、ホルダ5aの内径より僅かに大きくなっており、ホルダ5aの底面の内周部分は、窪みの外周部分の上に配置されている。すなわち、ホルダ5aの底面の内周部分は、スペーサ5bの窪みの外周部分に収容された状態のステム1のフランジ部11とキャップ34のフランジ部上に配置されている。
【0039】
また、スペーサ5bとホルダ5aとは、これらがビスによりインナーケース22の天板22aに固定する際にスペーサ5bの外周分の上面とホルダ5aの底面とが押し付けられた状態とされる。なお、熱伝導熱容量部材5は、2素子搭載センサデバイス32の周囲に熱伝導が早く、かつ大きな熱容量を有する部分を設けることで、2素子搭載センサデバイス32に対するその周囲の雰囲気温度の変化の影響を低減するためのものである。
そこで、スペーサ5bの底面とホルダ5aの上面とには、部材間の隙間を埋めて熱伝導率を高くする伝熱シリコングリスが塗布された状態で互いに当接されており、これにより、スペーサ5bとホルダ5aとの間の熱伝導率の低下を抑制している。
【0040】
なお、熱伝導率を考慮すれば、スペーサ5bとホルダ5aを一体に形成して熱伝導熱容量部材5を有底円筒状とした方が好ましいが、この例では、ステム1とキャップ34の接合部がフランジ状に外周に突出した状態となっており、この2素子搭載センサデバイス32の外周に突出する部分が邪魔となって、カップ状の熱伝導熱容量部材5を2素子搭載センサデバイスの底面と外周面とに当接した状態に後付けすることが困難である。
【0041】
そこで、この例では、熱伝導熱容量部材5をスペーサ5bとホルダ5aとの分割構造としたが、例えば、2素子搭載センサデバイス32が外周面に突出する部分がない円筒状となっているものとした場合に、スペーサ5bとホルダ5aとが一体となった有底円筒状の熱伝導熱容量部材を用いるものとしてもよい。
そして、このスペーサ5bとホルダ5aとからなる熱伝導熱容量部材5は、例えば、金属において比較的熱伝導率および比熱容量が高いアルミニウム(アルミニウム合金)を用いるものとなっている。
【0042】
熱伝導熱容量部材5の部材としては、例えば、上述のステム1やキャップ34に対して、熱伝導率および比熱容量が高いものが用いられる。組成によっても熱伝導率や比熱が変化するが、一般的に、鉄系の材料からなるステム1およびキャップ34に対して、アルミニウム合金を用いた熱伝導熱容量部材5の方が熱伝導率および比熱容量が高いものとなる。
また、熱の伝導は、部材の断面積が大きい方が熱抵抗が低下して早くなり、熱容量は体積が大きくなるほど大きくなる。
そこで、熱伝導熱容量部材5の肉厚は、例えば、ステム1より厚いことが好ましい。
【0043】
そして、2素子搭載センサデバイス32の周囲に、上述のように熱の伝導が早く、大きな熱容量を有する熱伝導熱容量部材5を配置した場合に、熱伝導熱容量部材5が熱の伝導が早いことにより雰囲気温度が変化して部分的に熱伝導熱容量部材5が暖められるようなことがあっても、直ぐに熱が伝わって、熱伝導熱容量部材5全体がほぼ同じ温度となるので、熱伝導熱容量部材5内の異なる部位間で大きな温度差が生じるの防止し、全体が均一に近い温度となる。
【0044】
また、熱伝導熱容量部材5が大きな熱容量を有するので、雰囲気温度の変化により暖められるようなことがあっても、温度変化を小さなものとすることができ、これによっても熱伝導熱容量部材5の全体を均一に近い温度とすることができる。すなわち、雰囲気温度の単位時間当たりの変化量にもよるが、雰囲気温度の変化に対して、熱伝導熱容量部材5は、その部位による温度のばらつきの発生を低減する効果がある。
【0045】
そして、熱伝導熱容量部材5に覆われた2素子搭載センサデバイス32においても、その周囲の温度変化が少なく、位置による温度のばらつきが少なくなることで、そのステム1やキャップ34等の温度変化や温度のばらつきを減少することができる。すなわち、例えば、雰囲気温度の変化に対して、ステム1での位置による温度のばらつきや、時間当たりの温度の変化量を抑えることができる。これにより、2素子搭載センサデバイス32における赤外線の2次輻射の発生を防ぎ、正確な温度測定を可能とする。
【0046】
なお、熱伝導熱容量部材5の材料は、アルミニウム(アルミニウム合金)に限られるものではなく、例えば、ステム1よりも熱伝導率が高く、比熱容量が大きい部材を用いることができる。また、熱伝導熱容量部材5において、熱容量を確保する上で、ある程度の量が必要となるので、コスト的に高い貴金属や希少金属よりも価格の低い材料が好ましい。これらのことからアルミニウム(アルミニウム合金)を好適に用いることができる。
また、熱伝導熱容量部材5を上述のようにスペーサ5bと、ホルダ5aとに分割するものとしたが、分割方法はこれに限定されるものではなく、全体として有底筒状の熱伝導熱容量部材5をどの位置で分割してもよい。但し、2素子搭載センサデバイス32の形状に対応して、2素子搭載センサデバイス32を収納しやすいように分割する必要がある。
例えば、この例では、2素子搭載センサデバイス32のステム1とキャップ34の接合部となる底部の外周に突出した部分(フランジ部11等)が、スペーサ5b側に収容されるように、スペーサ5bに2素子搭載センサデバイス32の他の部分より径の大きな底部を収容可能な窪みを形成した。ここで、スペーサ5bの上面を平面上として、ホルダ5a側の下部の内周に、上述のフランジ部11等を収容するように他の内周部分より内径の大きな広径部を設け、当該広径部にフランジ部11等が収容されるようにしてもよい。
【0047】
インナーケース22は、天板22a、筒部22b、底板22cから四角箱状となっている。インナーケース22は、高い断熱性を有する周知の断熱材として使用可能な樹脂から構成されており、高い断熱性を有するものとなっている。なお、インナーケース22は、基本的に赤外線温度測定装置の全体を支持する骨格的な部材であり、上述の2素子搭載センサデバイス32、熱伝導熱容量部材5、温度演算ユニット20等を安定して支持可能な強度を有するものとなっている。
【0048】
インナーケース22の底板22cは、ケース41内に収まる四角形状の板体であるが、左右両側縁からケース41の外部に延出する固定辺22e,22eを備えている。固定辺22e、22eには、ビスを貫通させるビス孔が備えられ、当該固定辺22e、22eをガス調理器具内の所定箇所にビス止めすることで、赤外線温度測定装置をガス調理器具内に固定可能となっている。
筒部22bは、四角筒状の部材で、下側が底板22cに接続されて閉塞され、上側が天板22aに接続されて閉塞されている。そして、筒部22bは、その内側に第1基板20aおよび第2基板20bからなる温度演算ユニット20、2素子搭載センサデバイス32、熱伝導熱容量部材5を収容する空間を形成している。また、インナーケース22の各部位の肉厚は箱状のケース41の各部位の肉厚より厚くなっている。
【0049】
上述のようにインナーケース22がケース41内に配置されることから、第1基板20aに搭載されるとともに前記熱伝導熱容量部材5に周囲を囲まれた2素子搭載センサデバイスを収納するケース41内には、当該ケース41と熱伝導熱容量部材5との間に、熱伝導熱容量部材5の周囲を囲む断熱材料からなるインナーケース22が設けられていることになる。
【0050】
天板22aは、筒部22bの上端部に接続されるとともに、天板22aの下面に後述のように固定される2素子搭載センサデバイス32のキャップ34の蓋部分を露出する円形の開口を有するとともに、当該円形の開口を内周とする光導管33の後述の最下段となる分割筒部33aと一体に形成されている。
また、天板22aは、前記円形の開口の周囲に下面側が開放した状態のビス用の複数の雌ねじが設けられており、前記開口の下に、上からホルダ5a、スペーサ5bおよび温度円座ユニットの第1基板20aがビス止めされている。
【0051】
これにより、ホルダ5aとスペーサ5bが上述のように互いに押し付けられた状態に固定されている。また、スペーサ5bとホルダ5aとの間には、上述のようにステム1のフランジ部11と、当該フランジ部11に固定されたキャップ34のフランジ部とが挟まれた状態となっており、これにより、スペーサ5bとホルダ5aとの間に2素子搭載センサデバイス32が固定されるとともに、2素子搭載センサデバイス32がインナーケース22に固定されている。
また、インナーケース22は、断熱性を有するので、ガス調理器具内の熱の伝導を抑制し、2素子搭載センサデバイス32の周囲の雰囲気温度の変化を抑制することができる。
【0052】
すなわち、2素子搭載センサデバイスに当接して配置される熱伝導熱容量部材5においては、上述のようにできるだけ温度が均一な状態となるようにすることで、温度変化を抑制しているが、インナーケース22では、温度変化が2素子搭載センサデバイス32と、熱伝導熱容量部材5とに伝導されるのを抑制している。
【0053】
これらの相乗効果により、2素子搭載センサデバイス32の温度変化や部位による温度のばらつきが抑制されることにより、赤外線の2次輻射が抑制されて、正確な温度の測定が可能となる。
インナーケース22の外側は、天板22aの光導管33の分割筒部33aの部分を除いてケース41により覆われた状態となっており、さらに断熱性が高められるとともに、赤外線温度測定装置30の強度を高めている。
【0054】
また、熱伝導熱容量部材5、インナーケース22、ケース41においては、2素子搭載センサデバイス32のキャップ34の蓋となる上面を開放した状態となっているが、その部分は、インナーケース22の天板22aと一体となる最下端の分割筒部33aとそれに続く分割筒部33b、33c、33dにより囲まれた状態となっており、雰囲気温度が伝達されるのを抑制するようになっている。
【0055】
なお、分割筒部33aは、断熱材からなる天板22aと一体であり、高い断熱性を有するものとなっている。また、他の分割筒部33b、33c、33dもインナーケース22と同じ断熱性の高い材料から構成されることが好ましい。
また、この例では、光導管33がケース41から露出した状態となっているが、ケース41内に収納された状態となっていてもよい。すなわち、ケース41を上方に延ばした形状とし、ケース41内に光導管33の一部や全部を収容する構造としてもよい。
また、光導管33の周囲に筒状のケースを設け、これをケース41に接続した形状としてもよい。
【0056】
光導管33は、光学素子としての集光レンズ19を内部に支持するとともに、集光レンズ19を介して入射される以外の光の入射を阻止し、集光レンズ19を介して入射される光が2つのサーモパイル31,31に至るようにするものである。
【0057】
光導管33は、その軸方向に沿って複数段(例えば4段)の分割筒部33a,33b,33c,33dを重ねた状態となっている。したがって、光導管33は、複数段に分割可能な形状となっている。
各分割筒部33a,33b,33c,33dのうちの最下端となる分割筒部33aは上述のようにインナーケース22の天板22aに一体に形成されて固定された状態とされるが、その他の分割筒部33b,33c,33dは、それぞれ直下の分割筒部33a,33b,33cに着脱自在に固定される。分割筒部33b,33c,33dは、それぞれ上部、中部、下部の三つの部分からなっている。そして、上部は、中部および下部より内径が広く、中部と同じ外径を有するものとなっている。また、下部は、上部および中部より外径が狭く、中部と同じ内径を有するものとなっている。
【0058】
これらのことから、中部は上部と同じ外径を有し、下部と同じ内径を有するものとなっている。
これにより、上部は、外径と内径がともに広く、中部は外径が広いが内径は狭く、下部は外径と内径がともに狭い。
そして、分割筒部33b,33c,33dにおいて、その内周面には、内径の広い上部と、内径の狭い中部および下部との間に段差があり、その外周面には、外径の広い上部および中部と、外径の狭い下部との間に段差がある。
【0059】
また、最下端となる分割筒部33aは、その下部がインナーケース22の天板22aに一体に固定されており、下部の形状が他の分割筒部33b,33c,33dと異なるが、分割筒部33aの上部と中部の形状は、他の分割筒部33b,33c,33dと同じとなっている。
そして、上下に隣接する分割筒部33a,33b,33c,33d同士は、下の分割筒部33a,33b,33cの広い内径を有する上部に、上の分割筒部33b,33c,33dの狭い外径を有する下部が挿入された状態で、分割筒部33a,33b,33c,33d同士が連接されて筒状の光導管33となっている。
【0060】
また、分割筒部33a,33b,33c,33d同士の接続部分は、下側の分割筒部33a,33b,33cの上部外周から当該上部外周内に挿入された上側の分割筒部33b,33c,33dの下部外周に向かって止めねじ43をねじ込むことで固定されている。また、上側の分割筒部33b,33c,33dには、前記止めねじ43をねじ込むように外周から内周に貫通するねじ孔が形成されている。
【0061】
また、下の分割筒部33a,33b,33cの広い内径を有する上部と、狭い内径を有する中部および下部との間の内周側の段差面に遮光板35,36,37がそれぞれ配置されている。そして、遮光板35,36,37は、下の分割筒部33a,33b,33cの内周の上述の段差面と、上の分割筒部33b,33c,33dの下端面との間に挟持された状態となっている。
【0062】
また、一番上の分割筒部33dの上部の内周の段差上には集光レンズ19が載った状態に配置されている。また、一番上の分割筒部33の上部の内周面には雌ねじが切られており、その雌ねじに、外周面に雄ねじが形成された止めリング23が螺合した状態となっている。そして、止めリング23と光導管33の段差面との間に集光レンズ19の外周部が挟まれて締結された状態となっている。これにより集光レンズ19は光導管33に対して着脱可能となっており、集光レンズ19を取り外すとともに、各分割筒部33a,33b,33c,33dを分解することで、集光レンズ19のメンテナンスと光導管33内のメンテナンスが可能となっている。
【0063】
遮光板35,36,37には、2つのサーモパイル31,31のそれぞれの視野となる2つの円形の開口の一部を重ねた状態の開口を有する。なお、基端側の遮光板35から先端側の遮光板37となるにつれて、各遮光板の円形の開口部分の内径が大きくなる。
【0064】
これらの遮光板35,36,37により、サーモパイル31,31の視野、すなわち、サーモパイル31,31に入射可能な赤外線の範囲が絞られることになる。すなわち、各サーモパイル31,31の視野が狭まることになるが、この際に、各サーモパイル31,31毎に視野を狭めるように、遮光板35,36,37に2つの円の一部が重なった状態の開口を設けることで、互いに近接して並んで配置される各サーモパイル31,31の視野を効率的に絞り込むことができる。これにより、視野を狭めながら、各サーモパイル31,31における検出効率が低下するのを抑制することができる。
【0065】
また、複数の遮光板35,36,37を設けることにより、視野の外側から光導管33内に入射して、光導管33内周面で反射して、サーモパイル31,31に至る赤外線を遮断することができる。すなわち、視野外から入射した赤外線の少なくとも一部は、光導管33内周面から突出した状態の遮光板35,36,37のいずれかに当たり、サーモパイル31,31に至るのを阻止させられる。
なお、光導管33内周面は、できるだけ赤外線を吸収して反射しないように例えば反射防止コーティング等が施されるものとしてもよい。
【0066】
集光レンズ19は、例えば、円形の凸レンズである。そして、この例においては、円形の凸レンズの焦点距離が光導管33の基端側に配置された2素子搭載センサデバイス32のサーモパイル31,31から光導管33の先端部の集光レンズ19までの距離より短くなっている。すなわち、集光レンズ19の焦点位置は、サーモパイル31,31の位置よりも集光レンズ19側となっており、サーモパイル31,31は、焦点距離から離れて焦点距離より遠くに配置されている。
【0067】
これにより、サーモパイル31,31の視野は、集光レンズ19の先側、すなわち、被加熱容器となるフライパン3側で像を結ぶことになる。また、この例では、サーモパイル31,31から集光レンズ19までの距離と、集光レンズ19からフライパン3までの距離と、集光レンズ19の焦点距離との関係が、上述のように集光レンズ19の焦点距離よりサーモパイル31,31が遠くに配置され、かつ、サーモパイル31からの視野が集光レンズ19からフライパン3の鍋底3aに至る距離となる前に像を結ぶようになっている。
【0068】
したがって、サーモパイル31,31から鍋底3aに至る視野が大きく広がって、ガスバーナ2や、その炎が視野に入るのを防止することができる。
温度演算ユニット20は、2素子搭載センサデバイス32から入力される2つの放射線強度から以下のようにして測定温度を算出するものである。
すなわち、2つの異なる波長(短波長と長波長)の赤外線センサ(サーモパイル31,31)からそれぞれ出力される赤外線の放射強度を示す2つの出力値と、既知の黒体炉における赤外線放射強度と温度との関係から2つの放射強度の出力値を当該放射強度の場合の黒体炉の温度に変換する。次いで、長波長領域用の赤外線センサで検出された放射強度から求められた黒体炉の温度と、短波長領域用の赤外線センサで検出された放射強度から求められた黒体炉の温度とを比較する。
【0069】
そして、短波長側の黒体炉の温度の方が長波長側の黒体炉の温度より高い場合に、上述の2つの放射強度比(長波長側の放射強度/短波長側の放射強度)を求め、求められた放射強度比と、既知の放射強度比と温度との関係とから測定温度を求める。
【0070】
また、長波長側の黒体炉の温度の方が短波長側の黒体炉の温度より高い場合に、長波長側のサーモパイル31で検出された放射強度と、既知の放射強度と温度との関係とから測定温度を求める。
なお、2素子搭載センサデバイス32を用いた温度の算出方法は、上述のものに限られるものではなく、長波長領域用赤外線センサと、短波長領域用赤外センサとでそれぞれ求められる赤外線の放射強度を用いる測定温度の算出方法ならば、どのような方法を用いてもよい。
【0071】
また、ガステーブルには、上述の温度演算ユニット20から出力される測定温度を示す出力値が所定の出力値以上となった場合に、赤外線温度測定装置30が設置されたコンロのガスバーナ2に対応するガスの配管に設けられたバルブを閉とするようになっており、これにより鍋の異常過熱を防止するようになっている。
【0072】
以上のような赤外線温度測定装置30によれば、ガス調理器具において、赤外線温度測定装置30が設けられたガスバーナの点火および消火や、他のガスバーナやグリルのガスの点火や消火などにより、雰囲気温度が大きく変化することになるが、ケース、インナーケース22、光導管33等により断熱されて、熱伝導熱容量部材5に対する雰囲気温度の変化が抑制され、さらに熱伝導熱容量部材5では、熱が早く伝導されるとともに、大きな熱容量により温度変化が抑制されることから、位置の違いによる温度差が減少される。すなわち、熱伝導熱容量部材5は、全体がほぼ均一な温度状態に保たれるようになっている。
【0073】
そして、熱伝導熱容量部材5で覆われた状態の2素子搭載センサデバイス32においては、雰囲気温度の変化の一部がケース41とインナーケース22とにより遮断され、かつ、熱伝導熱容量部材5により吸収された状態となるので、雰囲気温度の変化による影響を大きく抑制することができる。
したがって、ガス調理器具の内部という雰囲気温度が大きく変化するような、赤外線温度測定装置30にとって過酷な環境であっても、正確な温度測定を可能とすることができる。
【0074】
言い換えれば、断熱部材だけで、赤外線温度センサデバイス32の温度変化による温度の測定への影響を防止することが困難であるとともに、熱伝導容量部材5だけで赤外線温度センサデバイス32の温度変化による温度の測定への影響を防止することが困難であり、断熱部材としてのインナーケース22により熱の多くの部分を遮断した状態で、遮断し切れなかった熱を熱伝導熱容量部材で速やかに拡散するとともに温度変化を抑制することにより、ガス調理器具内での赤外線温度センサデバイスの使用が可能となる。
なお、外乱による赤外線温度センサデバイス32の温度変化を抑制し、精度よく温度測定を可能にする点で、本発明は前記ガス調理器具はもちろんのこと電磁調理器(誘導加熱調理器)にも適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1 ステム
5 熱伝導熱容量部材
5a ホルダ(筒状部)
5b スペーサ(板状部)
20a 第1基板(基板)
22 インナーケース
30 赤外線温度測定装置
31 サーモパイル
32 2素子搭載センサデバイス(赤外線温度センサデバイス)
34 キャップ
41 インナーケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のステムと、当該ステム上に設けられたサーモパイルと、当該ステムに接合されて当該ステムの前記サーモパイル側を覆う有蓋筒状のキャップと、当該キャップの蓋部のサーモパイルに臨む位置に設けられた開口に配置されて前記サーモパイルに入射する赤外線の波長を規制するフィルタとを備えた赤外線温度センサデバイスを有し、ガスコンロ等のガス調理器具に設けられて当該ガス調理器具で加熱される鍋等の被加熱容器の温度を非接触で測定するガス調理器具用赤外線温度測定装置であって、
前記サーモパイルへの赤外線の入射を遮ることなく前記赤外線温度センサデイバスの周囲を覆うように設けられるとともに、前記ステムより熱伝導率が高く、かつ、比熱容量が大きな熱伝導熱容量部材と、
前記サーモパイルへの赤外線の入射を遮ることなく前記熱伝導熱容量部材の周囲を覆うように設けられる断熱部材とを備えることを特徴とするガス調理器具用赤外線温度測定装置。
【請求項2】
前記赤外線温度センサデバイスが搭載される基板が設けられ、
前記熱伝導熱容量部材は、前記赤外線温度センサデバイスの当該ステムと前記基板との間に前記ステムに当接して配置される板状部と、
前記キャップの周囲に当該キャップに当接して配置される筒状部とを備えて有底筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガス調理器具用赤外線温度測定装置。
【請求項3】
前記熱伝導熱容量部材に周囲を囲まれた前記赤外線温度センサデバイスを収納するケースを備え、
前記断熱部材は、前記ケース内で、当該ケースと前記熱伝導熱容量部材との間に設けられたインナーケースであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス調理器具用赤外線温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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