説明

赤外線照明装置

【課題】 均一な明るさの赤外線を照射しうる赤外線照明装置を提供する。
【解決手段】楕円状の集光用レンズを有する複数の楕円型赤外線LED10を縦横に配列した、少なくとも1台の第1の面状発光ボード9Aと、縦断面が砲弾型の集光用レンズを有する複数の砲弾型赤外線LED11を縦横に配列した、少なくとも1台の第2の面状発光ボード9Bと、第1の面状発光ボード9A及び第2の面状発光ボード9Bを駆動するためのLED駆動回路と、LED駆動回路に楕円型赤外線LED10及び砲弾型赤外線LED11を駆動するための電力を供給する電源とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、防犯カメラ、夜間観察カメラ、交通監視カメラ、駐車場監視カメラ等の赤外線カメラと組み合わせて使うのに好適な赤外線照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線カメラと組み合わせて使う赤外線照明装置で、複数の赤外線LED(Light Emitting Diode)を光源とするものは知られている。特に多数のLEDを例えば、マトリクス状に配置したパネル状の光源は全体として大きな光量となることから、様々な照明として利用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
被照射対象物の高輝度照明用として、基板上に多数の赤外線LEDを縦横に配列した面状発光ボードが使用されている。各赤外線LEDは、それぞれ光ビームを一定の領域に集光するための集光レンズを備えている。
楕円状のレンズを備えた楕円型赤外線LEDは、例えば、10数メートル離れた場所に楕円状のビームを照射して、その領域をほぼむらなく照らす。図6は楕円型赤外線LEDの配光特性を示す図で、(a)は楕円型赤外線LEDの光ビームの所定位置における照度の分布を示した概略図、(b)は(a)を平面的にみた図である。楕円型赤外線LEDを数百個程度配列した面状発光ボードは、図6(b)に示すように楕円状の領域25を均一に照らす照明として適する。
【0004】
一方、縦断面が砲弾型のレンズを備えた砲弾型赤外線LEDは、円状の領域を照射する。図7は砲弾型赤外線LEDの配光特性を示す図で、(a)は砲弾型赤外線LEDの光ビームの所定位置における照度の分布を示した概略図、(b)は(a)を平面的にみた図である。砲弾型赤外線LEDの明るさは図7に示すように、中央に円状の最も明るい部分26があり、周辺部にやや暗い環状の照射領域27がある。この砲弾型レンズを配列した面状発光ボードは、複数を組み合わせることで、中央部分が明るく、周辺がやや暗い図7に示すような特性の照明装置になる。このとき、各面状発光ボードは、それぞれ少しずつ照射方向に差を付けて、全体として好ましい照射特性を得る。
【特許文献1】特開平11―195307号公報
【特許文献2】特開平11―195317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来の技術には次のような解決すべき課題がある。
高速道路等において、図8に示すように、走行中の自動車30を照明し、必要に応じてナンバープレートなどを撮影するために利用される光源31も、複数のLEDを、取付装置を用いて基板に縦横に整然と配列したものを使用している。例えば、自動車の後方から自動車の全体像を撮影し、自動車のナンバープレートの撮影画像からナンバーの文字認識をしようとする場合、ナンバープレートを照射する部分の明るさが問題になる。照明が不足すると文字認識精度が下がる。LED自体の発光強度を大きくして全体を十分に明るく照射するとよいが、それではLEDの発熱が大きくなり、LEDの寿命が短くなり、照明装置全体の電力消費が無視できないほど大きくなる。全体の電力消費量に制限があることから、照射領域の中心付近だけ他の部分より明るい図5のような配光特性が好ましい。
【0006】
図7の配光特性は、砲弾型赤外線LEDにより実現するが、複数の基板の向きを微妙に調整する作業は煩雑で、工事費が増大する。また、照射距離を変更すると、各基板の向きを再度微調整する必要があり、最適化が容易でない。
【0007】
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、調整が容易で、照射領域の中心付近だけ他の部分より明るい、効率のよい照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以上の点を解決するため次の構成を採用する。
〈構成1〉
楕円状の集光用レンズを有する複数の楕円型赤外線LEDを縦横に配列した、複数台の第1の面状発光ボードと、縦断面が砲弾型の集光用レンズを有する複数の砲弾型赤外線LEDを縦横に配列した、少なくとも1台の第2の面状発光ボードと、上記第1の面状発光ボード及び上記第2の面状発光ボードを駆動するためのLED駆動回路と、上記LED駆動回路に上記楕円型赤外線LED及び上記砲弾型赤外線LEDを駆動するための電力を供給する電源とを備えたことを特徴とする赤外線照明装置。
【0009】
前記楕円型赤外線LEDは、楕円状の領域をほぼ均等な照度で照射するものであり、前記砲弾型赤外線LEDは、円状の領域の中心付近をその周辺部よりも高い照度で照射するものである。
前記第1の面状発光ボード及び前記第2の面状発光ボードを組み合わせたことにより、最も明るい部分に対し周辺の暗い部分の明るさが約70%程度の照射特性が得られる。
【0010】
〈構成2〉
構成1に記載の赤外線照明装置において、
上記第1の面状発光ボードと上記第2の面状発光ボードは、同一の被照射領域の中心を向くように固定されたことを特徴とする赤外線照明装置。
【0011】
前記第1の面状発光ボード及び前記第2の面状発光ボードの全ての赤外線LEDの発する各光ビームが、被照射対象物の最も明るく照射すべき部分に向けて照射し、被照射対象物の中心が一致するように重ね合わせる。
【0012】
〈構成3〉
構成1に記載の赤外線照明装置において、
1台の上記第1の面状発光ボードと1台の上記第2の面状発光ボードとを同一平面に対して互いに傾いた状態でほぼ正方形に配置したことを特徴とする赤外線照明装置。
【0013】
1台の第1の面状発光ボードと1台の第2の面状発光ボードとから構成したものである。この構成においても、全ての赤外線LEDの発する各光ビームが、被照射対象物の最も明るく照射すべき部分に向けて照射し、被照射対象物の中心が一致するように重ね合わせる。
【0014】
〈構成4〉
構成1に記載の赤外線照明装置において、
1台の前記第1の面状発光ボードと1台の前記第2の面状発光ボードとを、同一平面に対して互いに傾いた状態で四辺形に配置されたものを、複数配置したことを特徴とする赤外線照明装置。
【0015】
複数台の第1の面状発光ボードと複数台の第2の面状発光ボードとを一組としたものであり、被照射対象物の大きさや同対象物までの距離に応じて前記第1の面状発光ボード及び前記第2の面状発光ボードの組数を調節する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体例を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1の赤外線照明装置の構成を示す説明図である。
図1において、この赤外線照明装置は、複数の楕円型赤外線LED10を縦横に配列した第1の面状発光ボード9Aと、複数の砲弾型赤外線LED11を縦横に配列した第2の面状発光ボード9Bとを、ほぼ同一平面上に並べたものである。
【0018】
楕円型赤外線LED10は、楕円状の集光用レンズを備え、楕円状の領域をほぼ均等な照度で照射するものである。砲弾型赤外線LED11は、縦断面が砲弾型の集光用レンズを備え、円状の領域の中心付近をその周辺部よりも高い照度で照射するものである。
2台の面状発光ボード9A、9Bには、全ての赤外線LED10、11を点灯駆動させる回路が接続されている。
【0019】
図2は、全ての赤外線LED10、11を点灯駆動させる回路のブロック図である。
この回路は、面状発光ボード9A、9B、と、LED駆動回路18と制御回路19と電源20と冷却ファン23とから構成されている。面状発光ボード9A、9B、9C、9Dに装着された全ての赤外線LEDに対して、LED駆動回路18から所定の電流が供給される。これによって、それぞれ赤外線LEDが赤外線光ビームを照射する。
【0020】
なお、LED駆動回路18の駆動電流は、例えば、赤外線LEDの状態によって、発光強度が安定するように制御される。このために、制御回路19が設けられている。冷却ファン23は必要に応じて設けられ、面状発光ボード9A、9B、に搭載された全ての赤外線LEDを風によって冷却する。電源20は、LED駆動回路18と制御回路19を動作させるための電源である。
【0021】
図3は、第1の面状発光ボード9A、あるいは第2の面状発光ボード9Bの具体的構成を示している。
図2に示されるように、例えば、縦が約15cm、横が約10cmの四辺形をなす基板12に、猫目型赤外線LED10または砲弾型赤外線LED11を、20列、20行で計400個を配列して構成されている。
符号16は基板12の取付け用貫通孔を示し、基板の四隅に設けられている。また、符号17は、それぞれ基板12の電路、すなわちLED駆動回路18や電源20に連結される電気端子を示している。第1の面状発光ボード9A、と第2の面状発光ボード9Bとの違いは、楕円赤外線LED10または砲弾型赤外線LED11を使用したことのみである。
【0022】
図4はこの赤外線照明装置の使用状況を示す説明図である。
実施例1の赤外線照明装置においては、第1の面状発光ボード9Aと第2の面状発光ボード9Bとは同一平面に配置され、図1に示すように互いに若干傾いた状態でほぼ正方形に配置されて取り付けられる。
【0023】
これらの各ボートの傾きは、図4に示すように、第1の面状発光ボード9A、及び第2の面状発光ボード9Bから発射される各光ビーム13がそれぞれ数メートル〜数十メートル離れている被照射対象物14の照射領域の中心15、すなわち、被照射対象物14の最も明るく照射すべき部分を向くようにすることで決定される。
【0024】
図5は、上記赤外線照明装置の配光特性を示す説明図である。
図5に示されるように、第1の面状発光ボード9A、と第2の面状発光ボード9Bを組み合わせたことにより、楕円型赤外線LED10により楕円状に均一に照らした領域22に、砲弾型赤外線LED11により円状に照らした領域21が重ねあわされた照度が得られる。最も明るい部分に対し周辺の暗い部分の明るさが約70%程度の照射特性を持つ照明装置が得られた。
【0025】
なお、上記実施例では、1台の第1の面状発光ボードと1台の第2の面状発光ボードとを、同一平面に対して互いに傾いた状態で四辺形に配置したものであったが、本発明は、第1の面状発光ボードと第2の面状発光ボードとをそれぞれ複数台ずつ用いて、さらに拡大配置したものでもよい。
被照射対象物の大きさや同対象物までの距離に応じて、第1の面状発光ボード9A、及び第2の面状発光ボード9Bの組数を調節すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の赤外線照明装置の構成を示す説明図である。
【図2】赤外線LEDを点灯駆動させる回路のブロック図である。
【図3】実施例1の面状発光ボードの具体例を示す平面図である。
【図4】実施例1の赤外線照明装置の使用状況を示す説明図である。
【図5】実施例1の赤外線照明装置の配光特性を示す図で、(a)は楕円型赤外線LED及び砲弾型赤外線LEDの光ビームの所定位置における照度の分布を示した概略図、(b)は(a)を平面的にみた図である。
【図6】楕円型赤外線LEDの配光特性を示す図で、(a)は楕円型赤外線LEDの光ビームの所定位置における照度の分布を示した概略図、(b)は(a)を平面的にみた図である。
【図7】砲弾型赤外線LEDの配光特性を示す図で、(a)は砲弾型赤外線LEDの光ビームの所定位置における照度の分布を示した概略図、(b)は(a)を平面的にみた図である。
【図8】赤外線カメラと組み合わせて使う赤外線照明装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
10 楕円型赤外線LED
11 砲弾型赤外線LED
9A 第1の面状発光ボード
9B 第2の面状発光ボード
12 基板
13 光ビーム
14 被照射対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楕円状の集光用レンズを有する複数の楕円型赤外線LEDを縦横に配列した、少なくとも1台の第1の面状発光ボードと、
縦断面が砲弾型の集光用レンズを有する複数の砲弾型赤外線LEDを縦横に配列した、少なくとも1台の第2の面状発光ボードと、
前記第1の面状発光ボード及び前記第2の面状発光ボードを駆動するためのLED駆動回路と、
前記LED駆動回路に前記楕円型赤外線LED及び前記砲弾型赤外線LEDを駆動するための電力を供給する電源とを備えたことを特徴とする赤外線照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線照明装置において、
前記第1の面状発光ボードと前記第2の面状発光ボードは、同一の被照射領域の中心を向くように固定されたことを特徴とする赤外線照明装置。
【請求項3】
請求項1に記載の赤外線照明装置において、
1台の前記第1の面状発光ボードと1台の前記第2の面状発光ボードとを同一平面に対して互いに傾いた状態でほぼ正方形に配置したことを特徴とする赤外線照明装置。
【請求項4】
請求項1に記載の赤外線照明装置において、
1台の前記第1の面状発光ボードと1台の前記第2の面状発光ボードとを、同一平面に対して互いに傾いた状態で四辺形に配置されたものを、複数配置したことを特徴とする赤外線照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−19041(P2006−19041A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192816(P2004−192816)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【出願人】(593074824)株式会社エルテル (12)
【Fターム(参考)】