説明

赤色系メタリック塗料組成物

【課題】 自動車車体外板等の各種工業製品に対して、ハイライトで明度が高く且つシェードで彩度が高い、耐候性に優れた塗膜を形成することができる塗料組成物を提供すること。
【解決手段】 樹脂成分、アルミニウムフレーク顔料及び赤色酸化鉄顔料を含んでなる赤色系メタリック塗料組成物において、樹脂成分の全固形分100重量部に対して、アルミニウムフレーク顔料を1〜30重量部及び赤色酸化鉄顔料を0.1〜10重量部含有し、且つ赤色酸化鉄顔料が少なくとも200nmの一次平均粒子径を有するものであることを特徴とする赤色系メタリック塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイライトでは高明度であり且つシェードでは高彩度である、耐候性に優れた赤色系塗膜を形成することができる塗料組成物、該塗料組成物を用いた塗膜形成方法及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
高彩度の赤色系メタリック塗膜を形成するために、一般に、アルミニウムフレーク顔料及び赤色系着色顔料を含んでなる塗料組成物が用いられている。特に、高彩度のメタリック塗膜を形成するために、着色顔料として、粒子径が小さい透明性赤色酸化鉄顔料や有機赤色系顔料が用いられている。
【0003】
しかしながら、アルミニウムフレーク顔料と併用される着色顔料として、平均粒子径が小さい顔料を使用すると、形成される塗膜は、ハイライトでは高明度、高彩度であるが、シェードでは彩度が低く、ハイライトからシェードにかけて明度と彩度が低下する単調な塗色になるという問題があり、また、特に、一次平均粒子径が小さい有機赤色系顔料は、耐候性が劣るものが多いため、塗膜が長期間屋外に曝されると、変褪色し易いという問題もある。
【0004】
高彩度の赤色系メタリック塗膜を形成する方法として、例えば、特許文献1には、下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成された基材上にカラーベース塗膜を形成し硬化させた後、マイカベース塗膜及びクリヤー塗膜を順次形成しこれら両塗膜を同時に硬化させることからなる積層マイカ塗膜の形成方法において、該マイカベース塗膜が着色アルミニウム顔料及びマイカ顔料を含有し、且つ該カラーベース塗膜が呈する色相と、該着色アルミニウム顔料が呈する色相が同系色である積層マイカ塗膜の形成方法が開示されている。しかし、この方法では、マイカベース塗膜の隠蔽力が低いために、カラーベース塗膜としてマイカベース塗膜と同系色のものを使用しなければならず、塗装工程上制限があるという問題がある。また、カラーベース塗膜に含有せしめられる着色アルミニウム顔料は、アルミニウムフレーク顔料に塗料用途に使用される着色顔料をコーティング(湿式)したものであって、コーティングする着色顔料によっては耐候性に問題があり、特に有機赤色系顔料は耐候性に劣るものが多いため、長期間の屋外における使用によって塗膜が変褪色し易いという問題があり、しかも、シェードの彩度も十分とはいえない。
【特許文献1】特開2001−321719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる目的は、ハイライトでは高明度であり且つシェードでは高彩度である、耐候性に優れた赤色系塗膜を形成し得る塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、今回、赤色系メタリック塗料にアルミニウムフレーク顔料及び赤色酸化鉄顔料を特定量で配合し且つ赤色酸化鉄顔料として一次平均粒子径が大きいものを使用することにより、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明は、樹脂成分、アルミニウムフレーク顔料及び赤色酸化鉄顔料を含んでなる赤色系メタリック塗料組成物において、樹脂成分の全固形分100重量部に対して、アルミニウムフレーク顔料を1〜30重量部及び赤色酸化鉄顔料を0.1〜10重量部
含有し、且つ赤色酸化鉄顔料が少なくとも200nmの一次平均粒子径を有するものであることを特徴とする赤色系メタリック塗料組成物を提供するものである。
【0008】
本発明は、また、基材上に、上記の赤色系メタリック塗料組成物を塗装し、次いで形成される塗膜上にクリヤー塗料を塗装することを含んでなる複層塗膜形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記塗料組成物を用いれば、ハイライトでは高明度であり且つシェードでは高彩度である、屋外に長期間放置されても変褪色することがほとんどない赤色系塗膜を容易に形成せしめることができるという顕著な効果が得られる。
【0010】
以下、本発明の塗料組成物及びそれを用いる塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の塗料組成物は、樹脂成分、アルミニウムフレーク顔料及び赤色酸化鉄顔料を含んでなる赤色系メタリック塗料組成物である。
【0012】
樹脂成分
本発明の塗料組成物における樹脂成分としては、塗料分野でビヒクルとして一般に使用されるものが同様に使用可能であり、通常、基体樹脂と架橋剤を含んでなることができる。上記基体樹脂としては、具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂が挙げられ、また、該基体樹脂を硬化させるための架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは、通常、有機溶剤、水又はこれらの混合物などの溶媒に溶解または分散した形態で使用される。該樹脂成分における基体樹脂と架橋剤の相対的割合は、厳密に制限されるものではないが、通常、基体樹脂/架橋剤の重量比で30/70〜90/10、好ましくは50/50〜80/20の範囲内であることができる。
【0013】
アルミニウムフレーク顔料
本発明の塗料組成物には、形成塗膜に金属感を付与することを目的として、アルミニウムフレーク顔料が含有せしめられる。本発明において使用されるアルミニウムフレーク顔料としては、塗料分野においてメタリック顔料として使用されるそれ自体既知のものが同様に使用可能である。アルミニウムフレーク顔料は、例えば、金属アルミニウム溶湯を噴霧することにより得られる粒状のアトマイズ粉やアルミニウムの箔片を原料とし、それらをスタンプ・ミル法や湿式もしくは乾式ボールミル法などの機械的衝撃力で粉砕研磨するか、或いは回転するボールミル内でミネラルスピリット等の有機溶剤の存在下で粉砕助剤とともに粉砕することにより得られる燐片状粒子であり、上記粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。通常、粒子の大きさが平均粒子径で5〜100μmであり且つ厚さが0.05〜5μm程度のものが使用される。本発明においては、リーフィングタイプ及びノンリーフィングタイプのいずれのタイプのものでも使用することができるが、特に、オレイン酸を粉砕助剤としたノンリーフィングタイプのアルミニウムフレーク顔料が好適である。
【0014】
該アルミニウムフレーク顔料の塗料組成物中における含有量は、塗膜の仕上がり性などの観点から、上記樹脂成分の全固形分100重量部に対して、固形分として1〜30重量部の範囲内とすることができ、好ましくは3〜25重量部、特に好ましくは5〜22重量部の範囲内であることができる。
【0015】
赤色酸化鉄顔料
本発明の塗料組成物には、形成塗膜の色相、特にシェード部における色相を決定し且つ塗膜のシェードにおける彩度を高めることなどを目的として、一次平均粒子径が少なくとも200nm、好ましくは210nm〜800nmの範囲内、特に好ましくは400〜600nmの範囲内にある赤色酸化鉄顔料が含有せしめられる。赤色酸化鉄顔料は、べんがらに代表される主成分を酸化第二鉄(Fe)とする橙赤色から赤茶色の顔料であり、シリカやジルコニアなどにより表面処理されていることができる。本発明の塗料組成物における赤色酸化鉄顔料の含有量は、形成塗膜の彩度などの観点から、上記樹脂成分の全固形分100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内であることができ、好ましくは0.5〜8重量部、特に好ましくは1〜5重量部の範囲内であることができる。
【0016】
本発明の塗料組成物には、さらに、シェードで濁りを生じない範囲内において、一次平均粒子径が100nm以下の赤色系顔料を含有せしめることができる。配合し得る赤色系顔料としては、所謂透明性顔料と称されるものが好ましく、具体的には、例えば、透明性酸化鉄顔料、ジケトピロロピロール顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料などを挙げることができる。これらの赤色系顔料の配合量は、上記樹脂成分の全固形分100重量部に対して、通常10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜8重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部の範囲内であることができる。
【0017】
なお、本明細書において、顔料の「一次平均粒子径」は、アルミニウムフレーク顔料に代表される光輝性顔料の場合には、顔料をクリヤーラッカー塗料にその樹脂固形分100重量部あたり15重量部の割合で添加し攪拌混合し均一に分散させた後、予めN−6グレーの中塗塗料が塗装されたアート紙上に膜厚が乾燥膜厚で20μmとなるように塗装し乾燥させ、得られる塗膜をビデオマイクロスコープにて1250倍の倍率で視野を変えながら観察して、視野中の単位顔料粒子100個の長径を目視で測定したときの平均値であり、また、着色顔料の場合には、ディスク遠心沈降式(ラインスタート法)粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:BI−DCP)により測定される値である。
【0018】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、以上に述べた樹脂成分、アルミニウムフレーク顔料及び赤色酸化鉄顔料を含んでなり、且つ必要に応じて、通常の塗料添加剤、例えば、水、有機溶剤、それらの混合物などの溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等;体質顔料などを適宜含有することができる。
【0019】
本発明の塗料組成物は、有機溶剤型、水性型、非水分散型などの形態をとることができ、それ自体既知の塗料調製法に従い、以上に述べた各成分を混合分散せしめることによって調製することができる。本発明の塗料組成物は、塗装時において、固形分含有率が通常12〜50重量%、好ましくは15〜30重量%の範囲内にあり、また、20℃における粘度が15〜20秒/フォードカップ#3であることが好ましい。
【0020】
塗膜形成方法
本発明の塗料組成物は、基材上に、任意の塗装手段、例えば、静電塗装、エアースプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性などの観点から、硬化塗膜に基づいて5〜30μmの範囲内であることが好ましい。本発明の塗料組成物の塗膜それ自体は、通常、約70〜約150℃の温度に加熱することにより架橋硬化させることができる。
【0021】
本発明によれば、上記の如くして基材上に塗装される本発明の塗料組成物の未硬化のまたは硬化した塗膜上に、クリヤー塗料を塗装することにより複層塗膜を形成せしめることができる。
【0022】
本発明の塗料組成物を塗装することができる基材としては、例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの金属やこれらを含む合金;これらの金属や合金によるメッキ又は蒸着が施された成型物;、ガラス、プラスチック、発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これらの基材は、それを構成する素材の種類などに応じて適宜、脱脂処理や表面処理などの前処理を施すことができる。また、上記基材には、予め、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜を形成させておくことが好ましい。
【0023】
下塗り塗膜は、基材表面を隠蔽したり、基材に防食性、防錆性などを付与することを目的として形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化せしめることによって形成することができる。使用しうる下塗り塗料は、特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、溶剤型プライマーなどを挙げることができる。
【0024】
また、中塗り塗膜は、基材表面又は下塗り塗膜の隠蔽、塗膜の付着性向上や耐チッピング性付与などを目的として形成されるものであり、基材表面又は下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化せしめることによって形成することができる。使用しうる中塗り塗料は、特に限定されるものではなく、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を含んでなる有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用することができる。
【0025】
特に基材として予め下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成された基材を使用する場合、本発明の塗料組成物を塗装する前に下塗り塗膜又は中塗り塗膜を加熱して架橋硬化させることができ、或いは下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の状態で本発明の塗料組成物を塗装することもできる。
【0026】
本発明の塗料組成物の未硬化のもしくは硬化した塗膜上に塗装されるクリヤー塗料としては、樹脂成分(基体樹脂及び架橋剤)及び溶剤を含んでなり、さらに必要に応じて、その他の塗料用添加剤などを適宜配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する、それ自体既知の液状もしくは粉体状の塗料組成物を使用することができる。
【0027】
上記基体樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられ、また、架橋剤としては、上記基体樹脂中の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂などが挙げられる。
【0028】
クリヤー塗料は、さらに必要に応じて、水、有機溶剤、これらの混合物などの溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、表面調整剤等の塗料添加剤を適宜含有することができる。
【0029】
上記クリヤー塗料には、さらに、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用としてそれ自体既知の顔料を単独でもしくは2種以上組み合わせて配合することができる。その配合量は、クリヤー塗料中の樹脂成分の全固形分100重量部に対して、30重量部以下、好ましくは0.01〜15重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部の範囲内であることができる。
【0030】
上記クリヤー塗料は、それ自体既知の塗装手段、例えば、静電塗装、エアースプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて15〜70μmの範囲内であるのが好ましい。クリヤー塗料の塗膜それ自体は、通常、約70
〜150℃の温度に加熱することにより架橋硬化させることができる。
【0031】
本発明によれば、前記の本発明の塗料組成物を塗装した後、加熱して塗膜を乾燥・硬化させた後、次いでその硬化塗膜上に上記クリヤー塗料を塗装し加熱してクリヤー塗膜を乾燥・硬化させる、いわゆる2C2B方式により複層塗膜を形成せしめることができ、或いはまた、本発明の塗料組成物を塗装し、場合によりセッテイングした後、その未硬化の塗膜上に上記クリヤー塗料を塗装し、次いで加熱して両塗膜を同時に硬化せしめる、いわゆる2C1B方式により複層塗膜を形成せしめてもよい。
【0032】
本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜は、ハイライト部において、明度L*が90以上、特に100〜130の範囲内であって且つシェード部において、彩度C*が10以上、特に10〜20に範囲内であるという顕著な特徴を有する。ここで、ハイライト(部)の明度は、塗膜を正反射角方向の近傍で見たときの明度を意味し、シェード(部)の彩度は、塗膜を正反射角方向の影響を受けない拡散光方向から見たときの彩度を意味する。この明度L*及び彩度C*は、具体的には、予めグレー色(マンセル表色系でN−7)の塗膜を形成した塗板上に、上記の方法に従い形成される塗膜を多角度分光光度計(X−Rite社製、商品名:MA−68II)を使用して測定することができる。本明細書においては、塗膜に対して45度の角度で測定光を照射し、ハイライトの明度は、正反射角から15度の角度で受光して測定し、そしてシェードの彩度は、正反射角から測定光の方向に110度の角度で受光して測定したときの値である。
【実施例】
【0033】
次に、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0034】
実施例1、2及び比較例1〜3
(1)基材の作製
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)に、カチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名、関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂/ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を、硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて、該鋼板上に電着塗膜を形成せしめた。
【0035】
得られた電着塗膜上に、中塗塗料「ルーガベーク中塗りグレー」(商品名、関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂/メラミン樹脂系、有機溶剤型)を、エアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚が30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させ、中塗塗膜を形成せしめた。この塗板を基材とした。
【0036】
(2)塗料の調製
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)(注1)70重量部(固形分)及びメラミン樹脂(注2)30重量部(固形分)からなる樹脂成分に、アルミニウムフレーク顔料A又はB(注3)及び着色赤色系顔料a、b、c又はd(注4)を、該樹脂成分100重量部(固形分)あたり、下記表1に示す重量部(固形分)で配合して攪拌混合し、酢酸エチル/スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、商品名、高沸点石油系溶剤)の混合溶剤(重量比50/50)で塗装に適する粘度(20秒/フォードカップ#3、20℃)に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料組成物を調製した。
【0037】
(注1)水酸基含有アクリル樹脂:攪拌機、冷却機、温度調節装置、窒素導入器及び滴下
漏斗を備えた反応装置に、キシレン/スワゾール1000(コスモ石油株式会社
製、商品名、高沸点石油系溶剤)の混合溶剤(重量比50/50)80重量部及
びn−ブチルアルコール20重量部を投入し、反応器内を窒素置換した。加熱攪
拌を行って、容器内の温度を120℃に維持し、下記のモノマー混合物
スチレン 20重量部
メタクリル酸ブチル 38.6重量部
メタクリル酸2−エチルヘキシル 15重量部
メタクリル酸ヒドロキシエチル 12重量部
アクリル酸ヒドロキシエチル 10.7重量部
メタクリル酸 3.7重量部
2,2−アゾビスイソブチロニトリル 1重量部
を3時間かけて滴下した。滴下終了後、温度を維持したまま30分間熟成して、
水酸基価100、数平均分子量20000の水酸基含有アクリル樹脂(固形分5
0重量%)を得た。
【0038】
(注2)メラミン樹脂:「ユーバン28−60」、商品名、三井サイテック株式会社社製
、固形分60重量%。
【0039】
(注3)アルミニウムフレーク顔料A:「アルミペーストGX−180A」、商品名、旭
化成株式会社製、アルミニウムフレーク顔料ペースト、固形分74重量%、アル
ミニウムフレーク顔料B:「PaliocromOrangeL2800」(商
品名、BASF AG製、酸化鉄被覆アルミニウムフレーク顔料ペースト、固形
分65重量%。
【0040】
(注4)着色赤色系顔料a:「トダカラー180ED」、商品名、戸田工業株式会社製、
α−Fe、一次平均粒子径550nm、
着色赤色系顔料b:「トダカラー140ED」、商品名、戸田工業株式会社製、
α−Fe、一次平均粒子径210nm、
着色赤色系顔料c:「トダカラー100ED」、商品名、戸田工業株式会社製、
α−Fe、一次平均粒子径100nm、
着色赤色系顔料d:「IrgazinDPP RED BO」、商品名、チバス
ペシャリティ株式会社製、ジケトピロロピロール顔料、一次平均粒子径460n
m。
【0041】
【表1】

(3)試験塗板の作製
上記(2)で調製した塗料組成物をそれぞれ上記(1)で作製した基材にエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmとなるように塗装し、15分間放置し、次いでその未硬化の塗面に、クリヤー塗料「ルーガベーククリヤー」(商品名、関西ペイント株式会社製、アクリル樹脂/アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度25℃、湿度75%の条件で硬化塗膜に基づいて膜厚が25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉を使
用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験塗板を得た。
【0042】
(4)性能試験
各試験塗板の意匠性、明度L*及び彩度C*、促進耐候性を以下の方法で評価した。その結果を下記表2に示す。
【0043】
(*1)意匠性
試験塗板を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:ハイライトで高い明度であって、ハイライトからシェードにかけて彩度が上が
る、
△:ハイライトで高い明度であるが、シェードにかけて彩度が上がらない、
×:ハイライトでの明度が低く、シェードにかけての彩度も上がらない。
【0044】
(*2)測色試験
試験塗板の明度L*及び彩度C*を多角度分光光度計「MA−68II」(商品名、X−Rite社製)を用いて測定した。その際の照射角度は塗膜に対して45℃、そして受光角度は、明度についてはハイライトに相当する正反射角に対して15°、彩度についてはシェードに相当する正反射角に対して照射方向に110°とした。
【0045】
(*3)促進耐候性
上記(1)で作製した基材にそれぞれ上記(2)で調製した塗料組成物をREAガンを用いて、ブース温度25℃、湿度75%の条件で硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmとなるように塗装し、室温にて15分間放置し、次いでその未硬化塗面にクリヤー塗料「ルーガベーククリヤー」(商品名、関西ペイント株式会社製、アクリル樹脂/アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブース温度25℃、湿度75%の条件で硬化塗膜に基づいて膜厚が25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉で140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板を得た。それぞれの実施例及び比較例について試験板を各2枚を作製し、1枚を促進耐候性試験に供し、もう1枚は控え塗板として実験室内に保管した。
【0046】
促進耐候性試験には、JIS B 7754に規定された「スーパーキセノンウェザオメーター」(商品名、スガ試験機株式会社社製)を使用し、1時間42分間のキセノンアークランプの照射と18分間の降雨条件における同ランプの照射による2時間を1サイクルとして、500サイクルの繰り返し試験を行った。試験終了後に、実験室内に保管しておいた控え塗板と目視で比較し、以下の基準で評価した。
○:変褪色及び光沢の低下が認められない、
×:変褪色及び光沢の低下が著しい。
【0047】
さらに、拡散照明垂直受光色彩色差計「CR−200」(商品名、コニカミノルタ株式会社製)を用いて変褪色値Δeを測定した。
【0048】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は各種工業製品、特に自動車車体の外板の塗装において非常に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分、アルミニウムフレーク顔料及び赤色酸化鉄顔料を含んでなる赤色系メタリック塗料組成物において、樹脂成分の全固形分100重量部に対して、アルミニウムフレーク顔料を1〜30重量部及び赤色酸化鉄顔料を0.1〜10重量部含有し、且つ赤色酸化鉄顔料が少なくとも200nmの一次平均粒子径を有するものであることを特徴とする赤色系メタリック塗料組成物。
【請求項2】
樹脂成分の全固形分100重量部に対して、アルミニウムフレーク顔料を3〜25重量部含有する請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
アルミニウムフレーク顔料がノンリーフィングタイプである請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
樹脂成分の全固形分100重量部に対して、赤色酸化鉄顔料を0.5〜8重量部含有する請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
赤色酸化鉄顔料が210〜800nmの一次平均粒子径を有するものである請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】
樹脂成分が基体樹脂と架橋剤を含んでなる請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
基材上に、請求項1に記載の塗料組成物を塗装し、次いで形成される塗膜上にクリヤー塗料を塗装することを含んでなる複層塗膜形成方法。
【請求項8】
形成される塗膜のハイライトの明度L*が90以上であり且つシェードの彩度C*が10以上である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法により塗装された物品。

【公開番号】特開2006−274243(P2006−274243A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48583(P2006−48583)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】