走査型画像表示装置
【課題】表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる走査型画像表示装置を提供する。
【解決手段】光源である半導体レーザを有する光源部と、光源から出射されたレーザ光を走査する走査部と、出射光量を制御する光源制御部と、光源の閾値電流値のプラス側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶するとともに、映像出力電流値を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部とを備え、光源制御部は、記憶部に記憶した基準入力電流値で光源から出射させたレーザ光の光量を画像形成に有効な有効走査範囲外の無効走査範囲で検出し、検出した光量が記憶部に記憶した基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更することとした。
【解決手段】光源である半導体レーザを有する光源部と、光源から出射されたレーザ光を走査する走査部と、出射光量を制御する光源制御部と、光源の閾値電流値のプラス側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶するとともに、映像出力電流値を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部とを備え、光源制御部は、記憶部に記憶した基準入力電流値で光源から出射させたレーザ光の光量を画像形成に有効な有効走査範囲外の無効走査範囲で検出し、検出した光量が記憶部に記憶した基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、詳しくは、半導体レーザを有する光源部から出射されたレーザ光を走査して投射対象に投射する走査型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走査型画像表示装置として、画像信号に応じた強度のレーザ光等の光束を出射する光源部と、この光源部から出射された光束を2次元走査する走査部とを有し、走査部により走査された光束を投射部から投射対象に投射して画像を表示する構成のものが知られている。そして、走査型画像表示装置の具体例としては、投射対象を観察者の眼の網膜とした網膜走査型の画像表示装置や、投影対象をスクリーンとした光走査型の画像表示装置等がある。
【0003】
このような走査型画像表示装置において、光源部を構成する光源が半導体レーザである場合、半導体レーザの特性(光源の電流と発光量との関係を示す特性)として、供給される電流値が固有の閾値電流値に達するまではほとんど発光しない。そこで、光源部の応答性を高める観点から、光源を待機状態とするため、光源にバイアス電流を供給することが行われている。つまり、光源部から出射されるレーザ光によって画像表示が行われる場合、画像信号に応じた大きさの駆動電流が、バイアス電流に重畳して光源に供給される。
【0004】
上述した半導体レーザ、すなわち光源の特性は、レーザ光の出射にともなって発生する熱や外気温の変化、あるいは経時劣化等により変化する。
【0005】
そこで、従来、光源部の光出力を一定に保つための技術として、自動的に光出力の制御を行うAPC(Automatic Power Control)がある。APCによれば、例えば、フォトダイオード等によって光源の光出力が検出され、光源の光出力が所定の値となるように、光源に供給されるバイアス電流が制御される。特許文献1には、網膜走査型の画像表示装置において、光源から出射されたレーザ光の強度に基づいて光源に供給する電流を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−244797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
走査型画像表示装置においては、上述したようなAPCが行われるのであるが、例えば、色の基準となる映像出力0パーセントの黒レベルが変化しないようにAPCを行った場合、図11に示すように、電流―発光量特性における変調幅が変化してしまう。
【0008】
一方、実際の映像出力は、光源(半導体レーザ)の固有の閾値電流値より大きな領域でなされる場合が多く、その場合、光源の特性変化には、光源の閾値電流値の変化も含まれているが、従来、この閾値電流値の変化については十分な考慮がなされていなかった。
【0009】
すなわち、図11に示すように、温度変化(Tc1→Tc2)が生ずると、光源の特性が変化してしまい、閾値電流値までも変化する。そのため、入力電流値に応じた入力画像データ(入力輝度値)に対するγテーブルの関係が崩れてしまい、色バランスが崩れてしまう問題があった。このように、光源の閾値電流値が変化すると、映像出力電流値の補正(γ補正)を行うためのγテーブルと入力画像データとの関係が崩れてしまい、表示画像の輝度が安定しない等の不具合の原因となるおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は、光源の閾値電流値の変化に応じてγテーブルを変更することによって、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる走査型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、供給される電流に応じた強度のレーザ光を出射する光源として半導体レーザを有する光源部と、前記光源から出射されたレーザ光を2次元走査する走査部と、前記光源に供給するバイアス電流と変調電流とを調整して前記光源からの出射光量を制御する光源制御部と、を備え、前記走査部により走査されたレーザ光によって画像を表示する走査型画像表示装置において、前記光源の閾値電流値の増加側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶するとともに、映像出力電流値を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶した前記基準入力電流値で前記光源から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲外の無効走査範囲で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更することとした。
【0012】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の走査型画像表示装置において、前記記憶部は、複数のγテーブルを予め記憶しており、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶された前記複数のγテーブルの中から、探索して得られた前記映像出力電流値に応じて選択することにより前記γテーブルの変更を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の走査型画像表示装置において、前記光源制御部は、探索して得られた前記映像出力電流値に基づいて演算して得られる補正係数に基づく線形補間を行うことにより前記γテーブルの変更を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の本発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の走査型画像表示装置において、前記光源制御部は、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索する際に、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも小さい場合は前記映像出力電流を増加させ、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも大きい場合は前記映像出力電流を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検出した光量が、予め記憶部に記憶していた基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいてγテーブルを変更するようにしている。したがって、外部気温などの変化によって半導体レーザの特性が変化し、光源である半導体レーザの閾値電流値が変化した場合でも、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る走査型画像表示装置の概要を示す説明図である。
【図2】同走査型画像表示装置の全体構成を示す説明図である。
【図3】同走査型画像表示装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】γテーブルを変更する際のレーザ光出射タイミングを示す説明図である。
【図5】電流−発光量特性を表すI−L曲線を示す図である。
【図6】γテーブルを変更する際の手順を示す説明図である。
【図7】γテーブルを変更する際の手順を示す説明図である。
【図8】γテーブルを変更する際の手順を示す説明図である。
【図9】γテーブルを変更する際の手順の流れを示す説明図である。
【図10】γテーブルを示す説明図である。
【図11】APC制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本実施形態に係る画像表示装置の概要]
本実施形態に係る画像表示装置は、走査部により走査されたレーザ光によって画像を表示するようにした走査型画像表示装置としている。すなわち、図1に示すように、供給される電流に応じた強度のレーザ光を出射する光源として半導体レーザを有する光源部と、前記光源から出射されたレーザ光を2次元走査する走査部と、前記光源に供給するバイアス電流と変調電流とを調整して前記光源からの出射光量を制御する光源制御部とを備えている。
【0018】
かかる走査型画像表示装置において、本実施形態では、前記光源の閾値電流値のプラス側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶するとともに、映像出力電流値を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶した前記基準入力電流値で前記光源から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲外の無効走査範囲で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更することに特徴を有する。
【0019】
かかる構成としたことにより、外部気温などの変化によって半導体レーザの特性が変化し、光源の閾値電流値が変化した場合でも、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる。
【0020】
以下、図2〜図9面を参照しながら、本発明の実施の形態を、より具体的に説明する。なお、以下の説明では、走査型画像表示装置を、走査したレーザ光を観察者の少なくとも一方の網膜上に投射して画像を認識させる網膜走査型の画像表示装置(Retinal Scanning Display、以下「RSD」とする。)としている。
【0021】
[RSDの構成]
まず、本実施形態に係るRSDの電気的構成及び光学的構成について、図2及び図3を用いて説明する。本実施形態に係るRSDは、投影対象を、観察者の少なくとも一方の眼10の網膜10bとし、光束としてのレーザ光を走査する走査部によって走査したレーザ光を、投射部により投射して網膜10bに入射することによって画像を表示する。つまり、RSDは、微弱な光を高速で走査しながら観察者の網膜10bに投射することで、網膜10b上に走査された光の残像を映像として観察者に認識させるのである。
【0022】
図2に示すように、RSDは、コントロールユニット2と、投影ユニット3とを備える。コントロールユニット2は、画像信号に応じた強度のレーザ光を画像光として出射する。コントロールユニット2から出射された画像光は、光ファイバケーブル4により、投影ユニット3に伝送される。
【0023】
コントロールユニット2は、制御部5が備える記憶装置に記憶されたコンテンツ情報等に基づいて画像信号を形成する。コントロールユニット2は、形成した画像信号に応じた強度のレーザ光を画像光として光ファイバケーブル4へ出射する。なお、コンテンツ情報等は、コントロールユニット2とは別体の外部記憶装置(不図示)などに記憶されている情報を、記憶媒体を介して制御部5の記憶装置に読み込むようにすることもできる。
【0024】
投影ユニット3は、光ファイバケーブル4により伝送されて来た画像光を走査し、観察者が表示画像として認識できるようにしている。すなわち、投影ユニット3は、コントロールユニット2においてR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の色毎に強度変調された画像光を、2次元方向に走査して観察者の眼10に入射させる。
【0025】
コントロールユニット2は、制御部5と光源ユニット6とを備えている。そして、光源ユニット6は、光源部7と駆動信号供給制御回路8とを備えている。
【0026】
制御部5は、予め記憶されている制御プログラムにしたがって所定の処理を実行することによってRSDの各部を統括的に制御している。制御部5は、データ通信用のバスにより接続されるCPU、及び記憶部としてのフラッシュメモリ、RAM、VRAM、さらには複数の入出力インターフェース等の各種機能部分を有し、バスを介して各種情報の送受信を行うことでRSDを制御している。
【0027】
制御部5は、入出力端子等を介して外部接続された記憶装置などを具備する図示しない機器類から供給される画像データや、制御部5内の図示しない記憶装置内に予め記憶されたコンテンツ情報に基づく画像データ等の各種画像データの入力を受ける。そして、制御部5は、入力された画像データに基づいて、画像信号5Sを生成する。制御部5により生成された画像信号5Sは、駆動信号供給制御回路8に送られる。つまり、制御部5は、画像信号5Sに応じた強度のレーザ光を光源部7に出射させることができる。
【0028】
駆動信号供給制御回路8は本実施形態に係るRSDの要部をなすものであり、RSDを統括的に制御する制御部5と協働して光源制御部として機能する。
【0029】
すなわち、本実施形態に係る光源制御部は、図3に示すように、制御部5と駆動信号供給制御回路8とを備えている。そして、制御部5の前記フラッシュメモリなどの記憶部内にはγ補正用のγテーブルが記憶されている。また、駆動信号供給制御回路8は、走査制御部81と、γ変更制御部82と、バイアス電流制御部83と、変調電流制御部84と、画像出力制御部85とを備えている。この画像出力制御部85において、前記γテーブルに基づいてγ補正を行うことにより、表示画像が極めて自然な発色で観察者に認識されることになる。
【0030】
そして、光制御部を構成する駆動信号供給制御回路8は、駆動信号生成部としても機能し、制御部5からの画像信号5Sに応じた駆動信号を生成する。すなわち、制御部5からの画像信号5Sに基づいて、画像出力制御部85により表示画像を形成するための要素となる各信号を画素単位で生成して後述する各色のレーザドライバ11b,12b,13b(図2)に送信する。
【0031】
光源部7は、駆動信号供給制御回路8により生成された駆動信号に応じた強度のレーザ光を出力する。この光源部7は、赤色レーザ光を生成して出射する赤色レーザ部11と、緑色レーザ光を生成して出射する緑色レーザ部12と、青色レーザ光を生成して出射する青色レーザ部13とを有する。
【0032】
各色のレーザ部11,12,13は、各色のレーザ光を発生させる光源としての半導体レーザ(レーザダイオード)11a,12a,13aと、この半導体レーザ11a,12a,13aを駆動させるための光源駆動部としてのレーザドライバ11b,12b,13bとを含む構成となっている。R、G、B各色のレーザ11a,12a,13aと、対応する色のレーザドライバ11b,12b,13bとは、それぞれ駆動ライン11c,12c,13cにより接続されている。
【0033】
こうして、各色のレーザドライバ11b,12b,13bは、駆動信号供給制御回路8の画像出力制御部85から入力される駆動信号に基づき、それぞれ対応するレーザ11a,12a,13aに駆動電流を供給する。そして、各色のレーザ11a,12a,13aは、対応するレーザドライバ11b,12b,13bから供給される駆動電流に応じて強度変調されたレーザ光を出射する。
【0034】
したがって、赤色レーザ部11は、画像出力制御部85からの駆動信号14Rに基づき、レーザドライバ11bによって半導体レーザ11aを駆動させ、赤色のレーザ光を出射することができる。また、緑色レーザ部12は、画像出力制御部85からの駆動信号14Gに基づき、レーザドライバ12bによって半導体レーザ12aを駆動させ、緑色のレーザ光を出射することができる。また、青色レーザ部13は、画像出力制御部85からの駆動信号14Bに基づき、レーザドライバ13bによって半導体レーザ13aを駆動させ、青色のレーザ光を出射することができる。
【0035】
このように、本実施形態では、駆動信号供給制御回路8からの駆動信号に基づくレーザドライバ11b,12b,13bから各半導体レーザ11a,12a,13aに供給される駆動電流が、画像信号5Sに応じて変化する変調電流に相当する。そして、駆動信号供給制御回路8の変調電流制御部84(図3)が変調電流を制御している。こうして、各色のレーザドライバ11b,12b,13bは、画像信号5Sに応じた大きさの変調電流を画素単位で順次各色のレーザ11a,12a,13aに供給し、各色の半導体レーザ11a,12a,13aを駆動する。したがって、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給される変調電流が変調されることで、各色の半導体レーザ11a,12a,13aから出射されるレーザ光の強度変調が行われることになる。
【0036】
また、駆動信号供給制御回路8は、各色の半導体レーザ11a,12a,13aにバイアス電流を供給するためのバイアス電流供給信号24R,24G,24Bを生成する。かかるバイアス電流供給信号24R,24G,24Bを生成する制御はバイアス電流制御部83(図3)が行っている。そして、各色のレーザドライバ11b,12b,13bは、駆動信号供給制御回路8から入力されるバイアス電流供給信号に基づき、それぞれ対応する半導体レーザ11a,12a,13aにバイアス電流を供給する。バイアス電流により、光源部7を構成する各色の半導体レーザ11a,12a,13aは待機状態となり、光源部7の応答性が高められる。なお、各色に対応するバイアス電流供給信号24R,24G,24Bは、対応する色の駆動信号14R,14G,14Bに重畳して駆動信号供給制御回路8から出力されてもよい。
【0037】
このように、本実施形態のRSDでは、光源制御部を構成する駆動信号供給制御回路8が、画像信号5Sに応じた画像表示用電流としての変調電流、及び光源部7を待機状態とするためのバイアス電流を光源部7に供給させる電流供給部としても機能している。すなわち、駆動信号供給制御回路8は、各色のレーザドライバ11b,12b,13bに、変調電流及びバイアス電流を各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給させるため、各色のレーザドライバ11b,12b,13bに送信する駆動信号14R,14G,14B、及びバイアス電流供給信号24R,24G,24Bを生成する。
【0038】
光源部7は、各色のレーザ部11,12,13により出射したレーザ光を、合波してから光ファイバケーブル4に出射する。このため、光源部7は、コリメート光学系16,17,18と、ダイクロイックミラー19,20,21と、結合光学系22とを有する。
【0039】
各色のレーザ部11,12,13から出射した各色のレーザ光は、それぞれコリメート光学系16,17,18によって平行光化された後、それぞれ対応するダイクロイックミラー19,20,21に入射する。各ダイクロイックミラー19,20,21に入射する赤色,緑色,青色の3色のレーザ光は、3個のダイクロイックミラー19,20,21により、波長に関して選択的に反射・透過させられて結合光学系22に達し、合波されて集光される。結合光学系22により集光されたレーザ光は、光ファイバケーブル4に入射する。
【0040】
このように、光源部7から光ファイバケーブル4に入射するレーザ光は、強度変調された各色のレーザ光が合波されたものである。なお、各色のレーザ部11,12,13からのレーザ光を光源部7からの出射光として出射させるための光学系の構成は、各色のレーザ部11,12,13から出射される各色のレーザ光が波長に関して選択的に反射・透過させられる構成であれば本実施形態に限定されるものではない。
【0041】
投影ユニット3は、RSDにおいて光源部7と観察者の眼10との間に位置している。投影ユニット3は、コリメート光学系31と、水平走査部32と、第1リレー光学系33と、垂直走査部34と、第2リレー光学系35とを有する。
【0042】
コリメート光学系31は、光源部7で生成され光ファイバケーブル4から出射されたレーザ光を平行光化する。水平走査部32は、コリメート光学系31で平行光化されたレーザ光を画像表示のために水平方向に往復走査する。第1リレー光学系33は、水平走査部32と垂直走査部34との間に設けられ、走査レンズ系を構成し、水平走査部32と垂直走査部34との間でレーザ光を中継する。
【0043】
垂直走査部34は、水平走査部32で水平方向に走査されたレーザ光を垂直方向に走査する。第2リレー光学系35は、水平走査部32及び垂直走査部34によって水平方向と垂直方向に走査されたレーザ光を、投影ユニット3から外部へと出射させるための光学系である。
【0044】
水平走査部32及び垂直走査部34、ならびに第1リレー光学系33は、光ファイバケーブル4から出射したレーザ光を、画像として観察者の網膜10bに投影可能な状態とするために、水平方向と垂直方向に走査して走査光束とするための光走査装置及び光学系である。つまり、本実施形態では、水平走査部32及び垂直走査部34を含む構成が、光源部7から出射されたレーザ光を2次元走査する走査部として機能する。以下の説明では、水平走査部32及び垂直走査部34を含む構成を総称して「走査部」という。
【0045】
水平走査部32は、走査部において、垂直走査部34に対して相対的に高速にレーザ光を走査する高速スキャナとして機能する。水平走査部32は、共振型の偏向素子32aと、水平走査駆動回路32bとを備える。偏向素子32aは、レーザ光を水平方向に走査するため偏向面(反射面)を有する。水平走査駆動回路32bは、偏向素子32aを共振させて偏向素子32aの偏向面を揺動させる駆動信号を生成する。水平走査駆動回路32bは、偏向素子32aに対する駆動信号を、駆動信号供給制御回路8の走査制御部81(図2)から入力される水平駆動信号36に基づいて生成する。
【0046】
一方、垂直走査部34は、走査部において、水平走査部32に対して相対的に低速にレーザ光を走査する低速スキャナとして機能する。垂直走査部34は、非共振型の偏向素子34aと、垂直走査駆動回路34bとを備える。偏向素子34aは、レーザ光を垂直方向に走査するため偏向面(反射面)を有する。垂直走査駆動回路34bは、偏向素子34aの偏向面を非共振状態で揺動させる駆動信号を生成する。垂直走査駆動回路34bは、偏向素子34aに対する駆動信号を、駆動信号供給制御回路8の走査制御部81(図2)から入力される垂直駆動信号37に基づいて生成する。
【0047】
垂直走査部34は、表示すべき画像の1フレーム毎に、画像を形成するためのレーザ光を最初の水平走査線から最後の水平走査線に向かって垂直に走査する。これにより、2次元走査された画像が形成される。ここで「水平走査線」とは、水平走査部32による水平方向への1走査を意味する。走査部が有する偏向素子32a,34aは、例えば、ガルバノミラー等である。また、偏向素子32a,34aの駆動方式は、例えば、圧電駆動、電磁駆動、静電駆動等である。
【0048】
第1リレー光学系33は、水平走査部32が有する偏向素子32aの偏向面によって水平方向に走査されたレーザ光を、垂直走査部34が有する偏向素子34aの偏向面に収束させる。そして、偏向素子34aの偏向面に収束したレーザ光が、偏向素子34aの偏向面によって垂直方向に走査され、画像光Lxを形成する。なお、RSDにおいては、水平走査部32と垂直走査部34との配置を入れ替えることで、レーザ光を垂直走査部34によって垂直方向に走査した後、水平走査部32によって水平方向に走査する構成を採用してもよい。
【0049】
第2リレー光学系35は、正の屈折力を持つ2つのレンズ系として、直列配置されるレンズ系38,39を有する。垂直走査部34により走査されたレーザ光は、レンズ系38によって、走査されるレーザ光同士で中心線が相互に平行となるように、かつ収束レーザ光となるように変換される。レンズ系38により変換されたレーザ光は、レンズ系39により、RSDが備えるハーフミラー15を介して観察者の瞳孔10aに収束するように変換される。
【0050】
このように、画像光Lxとしてのレーザ光は、第2リレー光学系35を介した後、ハーフミラー15により反射させられて、観察者の瞳孔10aに入射する。画像光Lxが瞳孔10aに入射することにより、網膜10b上に、画像信号5Sに応じた表示画像が投影される。このようにして、観察者は、画像光Lxを表示画像として認識する。
【0051】
本実施形態では、第2リレー光学系35を構成するレンズ系38,39、及びハーフミラー15を含む構成が、走査部により2次元走査されたレーザ光を、観察者の少なくとも一方の眼10の網膜10bに入射させる接眼光学系部として機能している。そして、RSDは、網膜10bをレーザ光の投射対象として画像を表示する。
【0052】
また、ハーフミラー15は、外光Lyを透過させて観察者の眼10に入射させる。これにより、観察者は、外光Lyにより認識される背景に、画像光Lxによる画像を重ねて視認することができる。このように、本実施形態のRSDは、投影ユニット3から出射される画像光Lxを観察者の眼10に走査しつつ投射するとともに、外光Lyを透過させるシースルー型である。ただし、RSDは必ずしもシースルー型である必要はない。
【0053】
以上のような構成を備えるRSDは、例えば、投影ユニット3を含む構成を支持する眼鏡型のフレームを備えることで、観察者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイを構成する。以下、本実施形態のRSDの詳細について説明する。
【0054】
[走査部の動作]
RSDが備える走査部の動作等について、図4を参照しながら説明する。RSDにおいては、走査部による走査範囲として、水平方向及び垂直方向の各方向について、画像信号5Sに応じた画像表示(以下単に「画像表示」ともいう。)が行われる有効走査範囲と、この有効走査範囲に対して走査方向の両端側に位置し、画像表示が行われない無効走査範囲とが存在する。
【0055】
すなわち、図4に示すように、水平走査部32の走査方向である水平方向について、有効走査範囲Za1と、この有効走査範囲Za1の両側に位置する無効走査範囲Za2とが存在し、垂直走査部34の走査方向である垂直方向について、有効走査範囲Zb1と、この有効走査範囲Zb1の両側に位置する無効走査範囲Zb2とが存在する。有効走査範囲Za1,Zb1と無効走査範囲Za2,Zb2とは、光源部7に供給される変調電流の値によって切り替えられる。
【0056】
有効走査範囲Za1,Zb1とは、具体的には、水平走査部32及び垂直走査部34のそれぞれの偏向素子32a,34aがレーザ光を走査できる最大の範囲(以下「最大走査範囲」という。)Za3,Zb3のうち、実際に光源部7から画像信号5Sに応じて強度変調されたレーザ光(以下「画像形成用レーザ光」という。)が出射される範囲である。つまり、画像形成用レーザ光は、走査部の偏向素子32a,34aによる走査位置が所定の範囲として定められる有効走査範囲Za1,Zb1にあるタイミングで出射される。そして最大走査範囲Za3,Zb3のうち、画像形成用レーザ光が出射されない無効走査範囲Za2,Zb2が、各有効走査範囲Za1,Zb1に対してレーザ光の走査方向の両側に存在する。
【0057】
このようにレーザ光の走査状態が有効走査範囲Za1,Zb1と無効走査範囲Za2,Zb2とで切り替わる構成によれば、図4に示すように、走査部によってレーザ光が2次元走査されることで画像が形成される画面において、有効走査範囲Za1,Zb1に対応する画像有効領域A1と、無効走査範囲Za2,Zb2に対応する画像無効領域A2(薄墨部分)とが形成される。
【0058】
つまり、画像有効領域A1が、画面における画像の表示領域であり、レーザ光の走査位置(以下「光走査位置」という。)が画像有効領域A1にある場合、画像信号5Sに応じた大きさの変調電流が、光源部7に供給される。そして、水平走査部32及び垂直走査部34により、画像有効領域A1内で、1フレーム分のレーザ光が走査され、この走査が1フレームの画像ごとに繰り返される。本実施形態では、図4に示すように、画像無効領域A2は、矩形状に形成される画像有効領域A1に対して、画像有効領域A1を囲む枠状の領域として形成される。
【0059】
なお、図4には、光源部7からレーザ光が常時出射されたとの仮定のもと、水平走査部32及び垂直走査部34によって走査されるレーザ光の軌跡γが仮想的に示されている。ただし、水平走査部32による水平走査方向(Y方向)の走査数は、1フレームあたり数百又は千程度あることから、図4では、便宜上、レーザ光の軌跡γを簡略して記載している。
【0060】
[光源部の特性]
ここで、光源部7が有する各色の半導体レーザ11a,12a,13aの特性について説明する。図5〜図8は、各色のレーザに供給される電流値と半導体レーザの発光量との関係を示す電流−発光量特性(I−L特性)を表している。図5〜図8に示すI−L曲線において、横軸は半導体レーザに供給される電流値(I)を示し、縦軸は半導体レーザの発光量(L)を示す。なお、発光量は半導体レーザが具備するPD(フォトダイオード)の値であるPD電圧値(単にPD値という場合もある)である。
【0061】
図5に示すように、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給される電流値が固有の閾値電流値Ithに達するまでは、電流値の増加にともなって発光量は増加するものの、その増加量はわずかであり、発光量は極めて少ない。そして、各色のレーザ11a,12a,13aに供給される電流値が閾値電流値Ithを超えることにより、発光量が急激に立ち上がる。
【0062】
このようなレーザの特性を踏まえ、本実施形態のRSDにおいては、上述したように、光源部7の応答性を高める観点から、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに値Ibのバイアス電流が供給される。具体的には、各色の半導体レーザ11a,12a,13aは、容量成分を含むことから、供給される電流値が0から閾値電流値Ithまで上昇する過程で、電流の一部が容量の充電に用いられる分、実際の発光に寄与する電流の立ち上がりが遅れる。このため、各色のレーザ11a,12a,13aは、電流の供給を受け始めてから発光するまでの遅延時間を要する。
【0063】
そこで、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに、バイアス電流(値Ib)が供給されることで、半導体レーザが待機状態となり、発光の遅延が抑制され、応答性が高められる。本実施形態のRSDでは、バイアス電流の値Ibは、各色の半導体レーザの閾値電流値Ithよりも小さい値であって、例えば、フル点灯(発光量La)の状態となる電流(以下「最大電流」という)の値Iaの略半分の値である。なお、バイアス電流の値としては、例えば、閾値電流値Ithよりもわずかに大きい値が用いられる場合もある。
【0064】
このように、各色の半導体レーザ11a,12a,13aにバイアス電流の供給が行われる構成において、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給される電流の値に関し、電流の値がバイアス電流の値Ibから最大電流の値Iaまでの範囲d1で、光源部7から画像形成用レーザ光が出射される。つまり、各色のレーザ11a,12a,13aに供給される電流の値について、バイアス電流の値Ibの状態が画像0%の状態に対応し、最大電流の値Iaの状態が画像100%の状態に対応し、画像0〜100%の範囲d1が、画像信号5Sに応じた変調成分としてのレーザ光が出射される範囲に対応する。
【0065】
したがって、図5に示すように、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに値Ibのバイアス電流が供給されている画像0%の状態での表示画像の輝度のレベルが黒レベルであり、バイアス電流の値Ibから最大電流の値Iaまでの電流値の範囲d1が各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給される変調電流の変調幅である。このように、各半導体色のレーザ11a,12a,13aに供給される変調電流は、黒レベルを規定するバイアス電流を基準(画像0%)として、画像信号5Sに応じて、最大電流(画像100%)までの範囲で変化する。
【0066】
[光源制御部による制御動作]
本実施形態のRSDでは、各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光量に関し、自動的に光出力の制御を行うAPCとして、最大電流の値Iaを所定の値となるように制御するAPC(以下「白レベルAPC」という。)と、バイアス電流の値Ibを所定の値となるように制御するAPC(以下「黒レベルAPC」という。)とが行われる。すなわち、白レベルAPCによれば、画像100%の状態における各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光量(最大光量(白レベル))が所定の値となるように自動的に制御され、黒レベルAPCによれば、画像0%の状態における各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光量(最小光量(黒レベル))が所定の値となるように自動的に制御される。このように、白レベルAPCと黒レベルAPCとが行われる場合、上述したような各色の半導体レーザ11a,12a,13aのI−L特性から、次のような現象が生じ得る。
【0067】
各色の半導体レーザ11a,12a,13aのI−L特性は、レーザ光を出射する際に発生する熱や外気温の変化等に起因して変化する。例えば、「発明が解決しようとする課題」の項で参照した図11に示すように、レーザの温度が温度Tc1から温度Tc2に上昇することで、I−L特性は、破線で示す曲線(Tc1)から点線で示す曲線(Tc2)へと変化する。これに対応するために、APCが行われて黒レベルを維持しようとすると、変調幅も、閾値電流値(図5の値Ithを参照)も増加する方向に変化する。画像表示用電流としての変調電流の変調幅が変化すると、入力画像データに対するγテーブルの関係が崩れてしまう虞がある。
【0068】
そこで、光源制御部(図3)では、制御部5が備えた記憶部(例えばフラッシュメモリなど)に、先ず、光源である各色の半導体レーザ11a,12a,13aのI−L曲線における各閾値電流値の増加側近傍、すなわちプラス側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶する処理を行うようにしている。かかる記憶処理は、例えば、RSDの組立時に予め行っておくとよい。
【0069】
そして、実際にRSDを使用する際に、光源制御部は、RSDを起動すると、前記基準入力電流値で光源(半導体レーザ11a,12a,13a)から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲Za1,Zb1の外である無効走査範囲Za2,Zb2(画像無効領域A2)で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更するようにしている。
【0070】
図6〜図9を参照しながら説明すると、例えば、RSDの組立時に、先ず、光源である各色の半導体レーザ11a,12a,13aのI−L曲線における各閾値電流値のプラス側(増加側)近傍に設定ポイントを設定する。そして、光源制御部は、このポイントにおける電流値に対応する基準入力輝度値Aと、この基準入力輝度値Aに対応する初期値となる映像出力電流値(LD用のデジタルアナログコンバータの値:映像出力DAC値a)と、これらに対応する基準光量(PD電圧値)とを、制御部5が備えるRAMなどに予め記憶する(図6参照)。制御部5は、この記憶された値に基づいてγテーブルを作成してフラッシュメモリなどに記憶する。
【0071】
ここで、LD用のデジタルアナログコンバータは、制御信号としてのデジタル信号をアナログ信号に変換するものであり、各色の半導体レーザ11a,12a,13a毎に、変調電流及びバイアス電流それぞれに対する制御信号を変換して映像出力DAC値としている。
【0072】
他方、RSDを実際に使用する際に、観察者(使用者)が電源をONにすると、光源制御部は、APCを行うが、例えば、図7に示すように、実際に使用する際のI−L特性(点線で示す曲線)と、出荷時に行う光源調整時のI−L特性(破線で示す曲線)との間でずれが生じている場合、色の基準となる映像出力0パーセントの黒レベルの輝度を一定化する黒レベルAPCと、映像出力100パーセントの白レベルの輝度を一定化する白レベルAPCを行った場合、基準光量PD電圧値に対応する閾値近傍の映像出力DAC値もずれることになる。
【0073】
かかるAPCを実行した後、光源制御部は、フラッシュメモリなどにγテーブル化されて記憶している基準入力電流値で、光源である半導体レーザ11a,12a,13aから出射させ、そのレーザ光の光量(A/D変換したPD電圧値)を、画像形成に有効な有効走査範囲Za1,Zb1の外である無効走査範囲Za2,Zb2(図4:画像無効領域A2)で検出し取得する。
【0074】
そして、光源制御部は、取得した光量のPD電圧値に対し、記憶されている基準光量のPD電圧値と比較する。
【0075】
比較結果が所定値、すなわち[基準光量PD電圧値±目標範囲]から外れている場合、記憶されている基準光量PD電圧値を目標値として、映像出力電流値である映像出力DAC値を変化させて探索(サーチ)し、[基準光量PD電圧値±目標範囲]内のPD電圧値を検出する(図7参照)。
【0076】
ここで、基準光量PD電圧値が得られる像出力DAC値を探索する際に、検出した光量のPD電圧値がフラッシュメモリなどの記憶部に記憶した基準光量PD電圧値よりも小さい場合は映像出力DAC値を増加させ、検出した光量が記憶部に記憶した基準光量PD電圧値よりも大きい場合は像出力DAC値を減少させるようにしている。したがって、どのような温度変化に対してもロスのない時間で[基準光量PD電圧値±目標範囲]内にある所望のPD電圧値を探索することができる。
【0077】
次いで、光源制御部は、サーチした映像出力DAC値xと、基準入力輝度値Aに対応するγテーブル中の映像出力DAC値a(図10の初期γテーブルを参照)とを比較する(図8参照)。なお、図8においても、点線で示す曲線は実際に使用する際のI−L特性、破線で示す曲線は出荷時に行った光源調整時のI−L特性を示す。
【0078】
そして、比較結果の差が、γテーブルを変更するために予め設定されているγ変更閾値より大きければγテーブルを変更するための次の探索(サーチ)を行う。すなわち、光源制御部は、γテーブルから映像出力DAC値がx以上になる最初の入力輝度値B(映像出力DAC値b)を探索(サーチ)する(図8及び図10の初期γテーブルを参照)。
【0079】
そして、光源制御部は、探索して検出した映像出力DAC値bと基準入力輝度値Aに対応する映像出力DAC値aと基づいて、以下の式1によって傾きαを求めるγ変更係数計算を行い、図10における入力輝度値A〜Bまでの線形補間を行う。
【0080】
α=(b−x)/(B−A)・・・式1
【0081】
式1によって得た傾きαを用いて、画像の表示領域である画像有効領域A1(図4)において、入力される入力輝度値がA〜Bの区間のときは、以下のような補正を行ってγ変更を行う(図10に示す変更後のγテーブルを参照)。ただし、補正する区間(A〜B)において、入力輝度値A<入力輝度値B、映像出力DAC値x<映像出力DAC値bとする。
【0082】
すなわち、入力輝度値Aのときは映像出力DAC値xとし、同様に、入力輝度値A+1→映像出力DAC値x+α、入力輝度値A+2→映像出力DAC値x+2α、入力輝度値A+3→映像出力DAC値x+3α、・・・入力輝度値X→映像出力DAC値b(x+(n−1)α:n=B−A)、入力輝度値B→映像出力DAC値b(x+nα:n=B−A)として、図10に示す変更後のγテーブルを得るのである。
【0083】
ここで、RSDを実際に使用する際に、光源制御部が実行するγテーブル変更処理の流れについて、図9を用いて説明する。なお、説明はRSDの電源をONした後からについて説明する。
【0084】
RSDの電源がONされて走査部が駆動すると、駆動信号供給制御回路8とともに光源制御部として機能する制御部5のCPUは、図示するように、先ず、走査ラインをカウントする(ステップS11)。
【0085】
次いで、CPUは、走査されているレーザ光(走査ライン)が画像有効領域A1(図4参照)にあるか否かを判定する(ステップS12)。
【0086】
レーザ光が画像有効領域A1にない場合(ステップS12:No)、すなわち、レーザ光が画像無効領域A2にある場合、CPUは、走査ラインがγ変更制御開始ラインであるか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、RSDでは、画像無効領域A2における走査ライン毎に、例えば、バイアス電流制御処理を行ったり、変調電流制御処理を行ったりしており、予め、γ変更制御処理を行うタイミングが走査ラインに規定されているのである。
【0087】
走査ラインがγ変更制御開始ラインでない場合(ステップS13:No)、CPUは、他の制御を実行し(ステップS14)、処理をステップS30に移す。なお、ステップS14における他の制御には、何もしないという制御も含まれている。
【0088】
一方、ステップS13の処理で、走査ラインがγ変更制御開始ラインあると判定した場合(ステップS13:Yes)、CPUは、基準光量PD電圧値±目標範囲]内になる映像出力DAC値xを探索する(ステップS15)。
【0089】
次いで、CPUは、探索して得た映像出力DAC値xと、γテーブル中の基準入力輝度値Aに対応する映像出力DAC値aとを比較する(ステップS16)。
【0090】
そして、CPUは、比較結果がγ変更閾値以上であるか否かを判定し(ステップS17)、閾値未満であれば処理をステップS30に移す一方、比較結果がγ変更閾値以上であればγ変更フラグをセットする(ステップS18)。
【0091】
そして、CPUは、前述したように式1を用いてγ変更係数計算を実行し、γテーブルを線形補間したものに変更する(ステップS19)。
【0092】
そして、CPUは、γ変更処理又は他の制御処理を行った1ライン走査を終了し(ステップS30)、処理をステップS11に移す。
【0093】
そして、ステップS11で走査ラインをカウントし、ステップS12において、走査ラインが画像有効領域A1にあるか否かを判定し、レーザ光が画像有効領域A1にある場合(ステップS12:Yes)、γ変更フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS20)。
【0094】
γ変更フラグがセットされている場合(ステップS20:Yes)、CPUは、ステップS19で行って得たγ変更係数に基づいて線形補間されて変更されたγ補正による画像表示を行い(ステップS22)、1ライン走査を終え(ステップS30)、その後、処理をステップS11に移す。
【0095】
一方、ステップS20の処理で、γ変更フラグがセットされていない場合(ステップS20:No)、CPUは、γ変更を行わずに画像処理を実行し(ステップS23)、1ライン走査を終え(ステップS30)、その後、処理をステップS11に移す。
【0096】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、外部気温などの変化によって半導体レーザ11a,12a,13aの特性が変化し、光源である半導体レーザ11a,12a,13aの閾値電流値が変化した場合でも、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる。
【0097】
また、γテーブルの変更を、探索して得られた映像出力DAC値に基づいて演算して得られる補正係数である傾きαに基づく線形補間を行うことで実現させているため、温度変化に対して色バランスなどが崩れる度にγテーブルを作成しなおす必要がなく、一度変更するだけで良いため、手間が掛からない。
【0098】
ところで、本実施形態では、白レベル(映像100%)及び黒レベル(映像0%)での輝度をそれぞれ一定化するようAPCを行って、バイアス電流と黒レベルから白レベルまでの変調電流の変調幅を決めているが、必ずしも両レベルでAPCを行わなければならないものではない。
【0099】
なお、本実施形態に係る制御部5は、γテーブルを記憶する記憶装置の他、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに対応する各色のIV変換回路(不図示)と、ADコンバータ(不図示)とを備えている。IV変換回路は、例えばトランスインピーダンスアンプ等により構成され、各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光出力を検出するフォトダイオード11d,12d,13dからのモニタ信号としての電流信号を受け、電圧信号に変換する。そして、各IV変換回路により得られた電圧信号は、ADコンバータに入力される。そして、ADコンバータは、各IV変換回路から受けた電圧信号としてのアナログ信号を、デジタル信号に変換する。ADコンバータにより得られたデジタル信号は、駆動信号供給制御回路8に入力され、駆動信号供給制御回路8は、ADコンバータから受けた信号を処理する構成として、APC制御を行う画像出力制御部85(図3)を備えている。
【0100】
この画像出力制御部85は、各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光出力についての情報を含むADコンバータからの信号の入力を受け、この入力信号に基づいて、半導体レーザ11a,12a,13aのレーザ光の色毎に、APCを行うための制御信号を生成する。本実施形態では、画像出力制御部85は、駆動信号供給制御回路8において、FPGA(Field Programmable Gate Array)の一機能部分として構成されている。なお、FPGAとは、現場において回路の書換えが可能な集積回路である。
【0101】
ところで、上述してきた実施形態では、γテーブルの変更を行う場合、探索して得られた映像出力DAC値に基づいて演算して得られる補正係数に基づいて線形補間を行うこととしていた。しかし、他の実施形態として、制御部5の記憶装置に複数のγテーブルを予め記憶しておき、光源制御部は、記憶装置に記憶された前記複数のγテーブルの中から、探索して得られた映像出力DAC値に応じて適切なγテーブルを選択することによってγテーブルを変更することもできる。
【0102】
この場合、そのときそのときに演算処理を行わず、探索して検出した値に応じたγテーブルを選択するだけでよいので、CPUなどへの負荷が軽減され、構成も簡単となる。
【0103】
上述してきた実施形態により、以下のRSDが実現する。
【0104】
(1)供給される電流に応じた強度のレーザ光を出射する光源として半導体レーザ11a,12a,13aを有する光源部7と、前記半導体レーザ11a,12a,13a(光源)から出射されたレーザ光を2次元走査する水平走査部32及び垂直走査部34を含む構成(走査部)と、前記光源に供給するバイアス電流と変調電流とを調整して前記光源からの出射光量を制御する光源制御部(制御部5及び駆動信号供給制御回路8)とを備え、前記走査部により走査されたレーザ光によって画像を表示することができ、前記半導体レーザ11a,12a,13a(光源)の閾値電流値の増加側近傍に設定した基準入力電流値Aと、この基準入力電流値Aに対する基準光量PD電圧値(基準光量値)とを記憶するとともに、映像出力DAC値(映像出力電流値)を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶した前記基準入力電流値Aで前記半導体レーザ11a,12a,13a(光源)から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲Za1,Zb1外の無効走査範囲Za2,Zb2で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量PD電圧値(基準光量値)よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量PD電圧値(基準光量値)が得られる映像出力DAC値(映像出力電流値)を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更するRSD(走査型画像表示装置)。
【0105】
かかるRSDによれば、外部気温などの変化によって半導体レーザ11a,12a,13a(光源)の特性が変化し、前記半導体レーザ11a,12a,13aの閾値電流値が変化した場合でも、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる。
【0106】
(2)前記記憶部は、複数のγテーブルを予め記憶しており、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶された前記複数のγテーブルの中から、探索して得られた映像出力DAC値(映像出力電流値)に応じて選択することにより前記γテーブルの変更を行うRSD(走査型画像表示装置)。
【0107】
さらに、かかる(2)の構成を有するRSDによれば、γテーブルの変更を、前記記憶部に記憶された複数のγテーブルの中から、探索して得られた映像出力電流値に応じて選択することで実現できるため、複雑な演算などが不要で簡単な構成となる。
【0108】
(3)前記光源制御部は、探索して得られた前記映像出力DAC値(映像出力電流値)に基づいて演算して得られる演算して得られる傾きα(補正係数)に基づく線形補間を行うことにより前記γテーブルの変更を行うRSD(走査型画像表示装置)。
【0109】
また、かかる(3)の構成を有するRSDであれば、γテーブルの変更を、探索して得られた映像出力電流値に基づいて演算して得られる補正係数に基づく線形補間を行うことで実現するため、一度変更するだけで良く、温度変化に対して色バランスなどが崩れる度にγテーブルを作成しなおす必要がなくなる。
【0110】
(4)前記光源制御部は、前記基準光量PD電圧値(基準光量値)が得られる映像出力DAC値(映像出力電流値)を探索する際に、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量PD電圧値(基準光量値)よりも小さい場合は前記映像出力電流を増加させ、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量PD電圧値(基準光量値)よりも大きい場合は前記映像出力電流を減少させるRSD(走査型画像表示装置)。
【0111】
かかる(4)の構成を有するRSDによれば、どのような温度変化に対してもロスのない時間で所望する電流値を探索することができる。
【0112】
上述してきた実施形態では、走査型画像表示装置を網膜走査型画像表示装置として説明した。しかし、当然ではあるが、本発明は、走査したレーザ光をスクリーン面などに投射して画像表示する画像投影装置(レーザディスプレイ)など、レーザ光を走査して画像を表示する他の走査型画像表示装置に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
5 制御部
8 駆動信号供給制御回路
11a,12a,13a 半導体レーザ(光源)
11b,12b,13b レーザドライバ(LDドライバ)
32 水平走査部
34 垂直走査部
85 画像出力制御部
Za1,Zb1 有効走査範囲
Za2,Zb2 無効走査範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、詳しくは、半導体レーザを有する光源部から出射されたレーザ光を走査して投射対象に投射する走査型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走査型画像表示装置として、画像信号に応じた強度のレーザ光等の光束を出射する光源部と、この光源部から出射された光束を2次元走査する走査部とを有し、走査部により走査された光束を投射部から投射対象に投射して画像を表示する構成のものが知られている。そして、走査型画像表示装置の具体例としては、投射対象を観察者の眼の網膜とした網膜走査型の画像表示装置や、投影対象をスクリーンとした光走査型の画像表示装置等がある。
【0003】
このような走査型画像表示装置において、光源部を構成する光源が半導体レーザである場合、半導体レーザの特性(光源の電流と発光量との関係を示す特性)として、供給される電流値が固有の閾値電流値に達するまではほとんど発光しない。そこで、光源部の応答性を高める観点から、光源を待機状態とするため、光源にバイアス電流を供給することが行われている。つまり、光源部から出射されるレーザ光によって画像表示が行われる場合、画像信号に応じた大きさの駆動電流が、バイアス電流に重畳して光源に供給される。
【0004】
上述した半導体レーザ、すなわち光源の特性は、レーザ光の出射にともなって発生する熱や外気温の変化、あるいは経時劣化等により変化する。
【0005】
そこで、従来、光源部の光出力を一定に保つための技術として、自動的に光出力の制御を行うAPC(Automatic Power Control)がある。APCによれば、例えば、フォトダイオード等によって光源の光出力が検出され、光源の光出力が所定の値となるように、光源に供給されるバイアス電流が制御される。特許文献1には、網膜走査型の画像表示装置において、光源から出射されたレーザ光の強度に基づいて光源に供給する電流を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−244797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
走査型画像表示装置においては、上述したようなAPCが行われるのであるが、例えば、色の基準となる映像出力0パーセントの黒レベルが変化しないようにAPCを行った場合、図11に示すように、電流―発光量特性における変調幅が変化してしまう。
【0008】
一方、実際の映像出力は、光源(半導体レーザ)の固有の閾値電流値より大きな領域でなされる場合が多く、その場合、光源の特性変化には、光源の閾値電流値の変化も含まれているが、従来、この閾値電流値の変化については十分な考慮がなされていなかった。
【0009】
すなわち、図11に示すように、温度変化(Tc1→Tc2)が生ずると、光源の特性が変化してしまい、閾値電流値までも変化する。そのため、入力電流値に応じた入力画像データ(入力輝度値)に対するγテーブルの関係が崩れてしまい、色バランスが崩れてしまう問題があった。このように、光源の閾値電流値が変化すると、映像出力電流値の補正(γ補正)を行うためのγテーブルと入力画像データとの関係が崩れてしまい、表示画像の輝度が安定しない等の不具合の原因となるおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は、光源の閾値電流値の変化に応じてγテーブルを変更することによって、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる走査型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、供給される電流に応じた強度のレーザ光を出射する光源として半導体レーザを有する光源部と、前記光源から出射されたレーザ光を2次元走査する走査部と、前記光源に供給するバイアス電流と変調電流とを調整して前記光源からの出射光量を制御する光源制御部と、を備え、前記走査部により走査されたレーザ光によって画像を表示する走査型画像表示装置において、前記光源の閾値電流値の増加側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶するとともに、映像出力電流値を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶した前記基準入力電流値で前記光源から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲外の無効走査範囲で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更することとした。
【0012】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の走査型画像表示装置において、前記記憶部は、複数のγテーブルを予め記憶しており、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶された前記複数のγテーブルの中から、探索して得られた前記映像出力電流値に応じて選択することにより前記γテーブルの変更を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の走査型画像表示装置において、前記光源制御部は、探索して得られた前記映像出力電流値に基づいて演算して得られる補正係数に基づく線形補間を行うことにより前記γテーブルの変更を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の本発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の走査型画像表示装置において、前記光源制御部は、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索する際に、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも小さい場合は前記映像出力電流を増加させ、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも大きい場合は前記映像出力電流を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検出した光量が、予め記憶部に記憶していた基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいてγテーブルを変更するようにしている。したがって、外部気温などの変化によって半導体レーザの特性が変化し、光源である半導体レーザの閾値電流値が変化した場合でも、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る走査型画像表示装置の概要を示す説明図である。
【図2】同走査型画像表示装置の全体構成を示す説明図である。
【図3】同走査型画像表示装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】γテーブルを変更する際のレーザ光出射タイミングを示す説明図である。
【図5】電流−発光量特性を表すI−L曲線を示す図である。
【図6】γテーブルを変更する際の手順を示す説明図である。
【図7】γテーブルを変更する際の手順を示す説明図である。
【図8】γテーブルを変更する際の手順を示す説明図である。
【図9】γテーブルを変更する際の手順の流れを示す説明図である。
【図10】γテーブルを示す説明図である。
【図11】APC制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本実施形態に係る画像表示装置の概要]
本実施形態に係る画像表示装置は、走査部により走査されたレーザ光によって画像を表示するようにした走査型画像表示装置としている。すなわち、図1に示すように、供給される電流に応じた強度のレーザ光を出射する光源として半導体レーザを有する光源部と、前記光源から出射されたレーザ光を2次元走査する走査部と、前記光源に供給するバイアス電流と変調電流とを調整して前記光源からの出射光量を制御する光源制御部とを備えている。
【0018】
かかる走査型画像表示装置において、本実施形態では、前記光源の閾値電流値のプラス側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶するとともに、映像出力電流値を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶した前記基準入力電流値で前記光源から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲外の無効走査範囲で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更することに特徴を有する。
【0019】
かかる構成としたことにより、外部気温などの変化によって半導体レーザの特性が変化し、光源の閾値電流値が変化した場合でも、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる。
【0020】
以下、図2〜図9面を参照しながら、本発明の実施の形態を、より具体的に説明する。なお、以下の説明では、走査型画像表示装置を、走査したレーザ光を観察者の少なくとも一方の網膜上に投射して画像を認識させる網膜走査型の画像表示装置(Retinal Scanning Display、以下「RSD」とする。)としている。
【0021】
[RSDの構成]
まず、本実施形態に係るRSDの電気的構成及び光学的構成について、図2及び図3を用いて説明する。本実施形態に係るRSDは、投影対象を、観察者の少なくとも一方の眼10の網膜10bとし、光束としてのレーザ光を走査する走査部によって走査したレーザ光を、投射部により投射して網膜10bに入射することによって画像を表示する。つまり、RSDは、微弱な光を高速で走査しながら観察者の網膜10bに投射することで、網膜10b上に走査された光の残像を映像として観察者に認識させるのである。
【0022】
図2に示すように、RSDは、コントロールユニット2と、投影ユニット3とを備える。コントロールユニット2は、画像信号に応じた強度のレーザ光を画像光として出射する。コントロールユニット2から出射された画像光は、光ファイバケーブル4により、投影ユニット3に伝送される。
【0023】
コントロールユニット2は、制御部5が備える記憶装置に記憶されたコンテンツ情報等に基づいて画像信号を形成する。コントロールユニット2は、形成した画像信号に応じた強度のレーザ光を画像光として光ファイバケーブル4へ出射する。なお、コンテンツ情報等は、コントロールユニット2とは別体の外部記憶装置(不図示)などに記憶されている情報を、記憶媒体を介して制御部5の記憶装置に読み込むようにすることもできる。
【0024】
投影ユニット3は、光ファイバケーブル4により伝送されて来た画像光を走査し、観察者が表示画像として認識できるようにしている。すなわち、投影ユニット3は、コントロールユニット2においてR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の色毎に強度変調された画像光を、2次元方向に走査して観察者の眼10に入射させる。
【0025】
コントロールユニット2は、制御部5と光源ユニット6とを備えている。そして、光源ユニット6は、光源部7と駆動信号供給制御回路8とを備えている。
【0026】
制御部5は、予め記憶されている制御プログラムにしたがって所定の処理を実行することによってRSDの各部を統括的に制御している。制御部5は、データ通信用のバスにより接続されるCPU、及び記憶部としてのフラッシュメモリ、RAM、VRAM、さらには複数の入出力インターフェース等の各種機能部分を有し、バスを介して各種情報の送受信を行うことでRSDを制御している。
【0027】
制御部5は、入出力端子等を介して外部接続された記憶装置などを具備する図示しない機器類から供給される画像データや、制御部5内の図示しない記憶装置内に予め記憶されたコンテンツ情報に基づく画像データ等の各種画像データの入力を受ける。そして、制御部5は、入力された画像データに基づいて、画像信号5Sを生成する。制御部5により生成された画像信号5Sは、駆動信号供給制御回路8に送られる。つまり、制御部5は、画像信号5Sに応じた強度のレーザ光を光源部7に出射させることができる。
【0028】
駆動信号供給制御回路8は本実施形態に係るRSDの要部をなすものであり、RSDを統括的に制御する制御部5と協働して光源制御部として機能する。
【0029】
すなわち、本実施形態に係る光源制御部は、図3に示すように、制御部5と駆動信号供給制御回路8とを備えている。そして、制御部5の前記フラッシュメモリなどの記憶部内にはγ補正用のγテーブルが記憶されている。また、駆動信号供給制御回路8は、走査制御部81と、γ変更制御部82と、バイアス電流制御部83と、変調電流制御部84と、画像出力制御部85とを備えている。この画像出力制御部85において、前記γテーブルに基づいてγ補正を行うことにより、表示画像が極めて自然な発色で観察者に認識されることになる。
【0030】
そして、光制御部を構成する駆動信号供給制御回路8は、駆動信号生成部としても機能し、制御部5からの画像信号5Sに応じた駆動信号を生成する。すなわち、制御部5からの画像信号5Sに基づいて、画像出力制御部85により表示画像を形成するための要素となる各信号を画素単位で生成して後述する各色のレーザドライバ11b,12b,13b(図2)に送信する。
【0031】
光源部7は、駆動信号供給制御回路8により生成された駆動信号に応じた強度のレーザ光を出力する。この光源部7は、赤色レーザ光を生成して出射する赤色レーザ部11と、緑色レーザ光を生成して出射する緑色レーザ部12と、青色レーザ光を生成して出射する青色レーザ部13とを有する。
【0032】
各色のレーザ部11,12,13は、各色のレーザ光を発生させる光源としての半導体レーザ(レーザダイオード)11a,12a,13aと、この半導体レーザ11a,12a,13aを駆動させるための光源駆動部としてのレーザドライバ11b,12b,13bとを含む構成となっている。R、G、B各色のレーザ11a,12a,13aと、対応する色のレーザドライバ11b,12b,13bとは、それぞれ駆動ライン11c,12c,13cにより接続されている。
【0033】
こうして、各色のレーザドライバ11b,12b,13bは、駆動信号供給制御回路8の画像出力制御部85から入力される駆動信号に基づき、それぞれ対応するレーザ11a,12a,13aに駆動電流を供給する。そして、各色のレーザ11a,12a,13aは、対応するレーザドライバ11b,12b,13bから供給される駆動電流に応じて強度変調されたレーザ光を出射する。
【0034】
したがって、赤色レーザ部11は、画像出力制御部85からの駆動信号14Rに基づき、レーザドライバ11bによって半導体レーザ11aを駆動させ、赤色のレーザ光を出射することができる。また、緑色レーザ部12は、画像出力制御部85からの駆動信号14Gに基づき、レーザドライバ12bによって半導体レーザ12aを駆動させ、緑色のレーザ光を出射することができる。また、青色レーザ部13は、画像出力制御部85からの駆動信号14Bに基づき、レーザドライバ13bによって半導体レーザ13aを駆動させ、青色のレーザ光を出射することができる。
【0035】
このように、本実施形態では、駆動信号供給制御回路8からの駆動信号に基づくレーザドライバ11b,12b,13bから各半導体レーザ11a,12a,13aに供給される駆動電流が、画像信号5Sに応じて変化する変調電流に相当する。そして、駆動信号供給制御回路8の変調電流制御部84(図3)が変調電流を制御している。こうして、各色のレーザドライバ11b,12b,13bは、画像信号5Sに応じた大きさの変調電流を画素単位で順次各色のレーザ11a,12a,13aに供給し、各色の半導体レーザ11a,12a,13aを駆動する。したがって、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給される変調電流が変調されることで、各色の半導体レーザ11a,12a,13aから出射されるレーザ光の強度変調が行われることになる。
【0036】
また、駆動信号供給制御回路8は、各色の半導体レーザ11a,12a,13aにバイアス電流を供給するためのバイアス電流供給信号24R,24G,24Bを生成する。かかるバイアス電流供給信号24R,24G,24Bを生成する制御はバイアス電流制御部83(図3)が行っている。そして、各色のレーザドライバ11b,12b,13bは、駆動信号供給制御回路8から入力されるバイアス電流供給信号に基づき、それぞれ対応する半導体レーザ11a,12a,13aにバイアス電流を供給する。バイアス電流により、光源部7を構成する各色の半導体レーザ11a,12a,13aは待機状態となり、光源部7の応答性が高められる。なお、各色に対応するバイアス電流供給信号24R,24G,24Bは、対応する色の駆動信号14R,14G,14Bに重畳して駆動信号供給制御回路8から出力されてもよい。
【0037】
このように、本実施形態のRSDでは、光源制御部を構成する駆動信号供給制御回路8が、画像信号5Sに応じた画像表示用電流としての変調電流、及び光源部7を待機状態とするためのバイアス電流を光源部7に供給させる電流供給部としても機能している。すなわち、駆動信号供給制御回路8は、各色のレーザドライバ11b,12b,13bに、変調電流及びバイアス電流を各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給させるため、各色のレーザドライバ11b,12b,13bに送信する駆動信号14R,14G,14B、及びバイアス電流供給信号24R,24G,24Bを生成する。
【0038】
光源部7は、各色のレーザ部11,12,13により出射したレーザ光を、合波してから光ファイバケーブル4に出射する。このため、光源部7は、コリメート光学系16,17,18と、ダイクロイックミラー19,20,21と、結合光学系22とを有する。
【0039】
各色のレーザ部11,12,13から出射した各色のレーザ光は、それぞれコリメート光学系16,17,18によって平行光化された後、それぞれ対応するダイクロイックミラー19,20,21に入射する。各ダイクロイックミラー19,20,21に入射する赤色,緑色,青色の3色のレーザ光は、3個のダイクロイックミラー19,20,21により、波長に関して選択的に反射・透過させられて結合光学系22に達し、合波されて集光される。結合光学系22により集光されたレーザ光は、光ファイバケーブル4に入射する。
【0040】
このように、光源部7から光ファイバケーブル4に入射するレーザ光は、強度変調された各色のレーザ光が合波されたものである。なお、各色のレーザ部11,12,13からのレーザ光を光源部7からの出射光として出射させるための光学系の構成は、各色のレーザ部11,12,13から出射される各色のレーザ光が波長に関して選択的に反射・透過させられる構成であれば本実施形態に限定されるものではない。
【0041】
投影ユニット3は、RSDにおいて光源部7と観察者の眼10との間に位置している。投影ユニット3は、コリメート光学系31と、水平走査部32と、第1リレー光学系33と、垂直走査部34と、第2リレー光学系35とを有する。
【0042】
コリメート光学系31は、光源部7で生成され光ファイバケーブル4から出射されたレーザ光を平行光化する。水平走査部32は、コリメート光学系31で平行光化されたレーザ光を画像表示のために水平方向に往復走査する。第1リレー光学系33は、水平走査部32と垂直走査部34との間に設けられ、走査レンズ系を構成し、水平走査部32と垂直走査部34との間でレーザ光を中継する。
【0043】
垂直走査部34は、水平走査部32で水平方向に走査されたレーザ光を垂直方向に走査する。第2リレー光学系35は、水平走査部32及び垂直走査部34によって水平方向と垂直方向に走査されたレーザ光を、投影ユニット3から外部へと出射させるための光学系である。
【0044】
水平走査部32及び垂直走査部34、ならびに第1リレー光学系33は、光ファイバケーブル4から出射したレーザ光を、画像として観察者の網膜10bに投影可能な状態とするために、水平方向と垂直方向に走査して走査光束とするための光走査装置及び光学系である。つまり、本実施形態では、水平走査部32及び垂直走査部34を含む構成が、光源部7から出射されたレーザ光を2次元走査する走査部として機能する。以下の説明では、水平走査部32及び垂直走査部34を含む構成を総称して「走査部」という。
【0045】
水平走査部32は、走査部において、垂直走査部34に対して相対的に高速にレーザ光を走査する高速スキャナとして機能する。水平走査部32は、共振型の偏向素子32aと、水平走査駆動回路32bとを備える。偏向素子32aは、レーザ光を水平方向に走査するため偏向面(反射面)を有する。水平走査駆動回路32bは、偏向素子32aを共振させて偏向素子32aの偏向面を揺動させる駆動信号を生成する。水平走査駆動回路32bは、偏向素子32aに対する駆動信号を、駆動信号供給制御回路8の走査制御部81(図2)から入力される水平駆動信号36に基づいて生成する。
【0046】
一方、垂直走査部34は、走査部において、水平走査部32に対して相対的に低速にレーザ光を走査する低速スキャナとして機能する。垂直走査部34は、非共振型の偏向素子34aと、垂直走査駆動回路34bとを備える。偏向素子34aは、レーザ光を垂直方向に走査するため偏向面(反射面)を有する。垂直走査駆動回路34bは、偏向素子34aの偏向面を非共振状態で揺動させる駆動信号を生成する。垂直走査駆動回路34bは、偏向素子34aに対する駆動信号を、駆動信号供給制御回路8の走査制御部81(図2)から入力される垂直駆動信号37に基づいて生成する。
【0047】
垂直走査部34は、表示すべき画像の1フレーム毎に、画像を形成するためのレーザ光を最初の水平走査線から最後の水平走査線に向かって垂直に走査する。これにより、2次元走査された画像が形成される。ここで「水平走査線」とは、水平走査部32による水平方向への1走査を意味する。走査部が有する偏向素子32a,34aは、例えば、ガルバノミラー等である。また、偏向素子32a,34aの駆動方式は、例えば、圧電駆動、電磁駆動、静電駆動等である。
【0048】
第1リレー光学系33は、水平走査部32が有する偏向素子32aの偏向面によって水平方向に走査されたレーザ光を、垂直走査部34が有する偏向素子34aの偏向面に収束させる。そして、偏向素子34aの偏向面に収束したレーザ光が、偏向素子34aの偏向面によって垂直方向に走査され、画像光Lxを形成する。なお、RSDにおいては、水平走査部32と垂直走査部34との配置を入れ替えることで、レーザ光を垂直走査部34によって垂直方向に走査した後、水平走査部32によって水平方向に走査する構成を採用してもよい。
【0049】
第2リレー光学系35は、正の屈折力を持つ2つのレンズ系として、直列配置されるレンズ系38,39を有する。垂直走査部34により走査されたレーザ光は、レンズ系38によって、走査されるレーザ光同士で中心線が相互に平行となるように、かつ収束レーザ光となるように変換される。レンズ系38により変換されたレーザ光は、レンズ系39により、RSDが備えるハーフミラー15を介して観察者の瞳孔10aに収束するように変換される。
【0050】
このように、画像光Lxとしてのレーザ光は、第2リレー光学系35を介した後、ハーフミラー15により反射させられて、観察者の瞳孔10aに入射する。画像光Lxが瞳孔10aに入射することにより、網膜10b上に、画像信号5Sに応じた表示画像が投影される。このようにして、観察者は、画像光Lxを表示画像として認識する。
【0051】
本実施形態では、第2リレー光学系35を構成するレンズ系38,39、及びハーフミラー15を含む構成が、走査部により2次元走査されたレーザ光を、観察者の少なくとも一方の眼10の網膜10bに入射させる接眼光学系部として機能している。そして、RSDは、網膜10bをレーザ光の投射対象として画像を表示する。
【0052】
また、ハーフミラー15は、外光Lyを透過させて観察者の眼10に入射させる。これにより、観察者は、外光Lyにより認識される背景に、画像光Lxによる画像を重ねて視認することができる。このように、本実施形態のRSDは、投影ユニット3から出射される画像光Lxを観察者の眼10に走査しつつ投射するとともに、外光Lyを透過させるシースルー型である。ただし、RSDは必ずしもシースルー型である必要はない。
【0053】
以上のような構成を備えるRSDは、例えば、投影ユニット3を含む構成を支持する眼鏡型のフレームを備えることで、観察者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイを構成する。以下、本実施形態のRSDの詳細について説明する。
【0054】
[走査部の動作]
RSDが備える走査部の動作等について、図4を参照しながら説明する。RSDにおいては、走査部による走査範囲として、水平方向及び垂直方向の各方向について、画像信号5Sに応じた画像表示(以下単に「画像表示」ともいう。)が行われる有効走査範囲と、この有効走査範囲に対して走査方向の両端側に位置し、画像表示が行われない無効走査範囲とが存在する。
【0055】
すなわち、図4に示すように、水平走査部32の走査方向である水平方向について、有効走査範囲Za1と、この有効走査範囲Za1の両側に位置する無効走査範囲Za2とが存在し、垂直走査部34の走査方向である垂直方向について、有効走査範囲Zb1と、この有効走査範囲Zb1の両側に位置する無効走査範囲Zb2とが存在する。有効走査範囲Za1,Zb1と無効走査範囲Za2,Zb2とは、光源部7に供給される変調電流の値によって切り替えられる。
【0056】
有効走査範囲Za1,Zb1とは、具体的には、水平走査部32及び垂直走査部34のそれぞれの偏向素子32a,34aがレーザ光を走査できる最大の範囲(以下「最大走査範囲」という。)Za3,Zb3のうち、実際に光源部7から画像信号5Sに応じて強度変調されたレーザ光(以下「画像形成用レーザ光」という。)が出射される範囲である。つまり、画像形成用レーザ光は、走査部の偏向素子32a,34aによる走査位置が所定の範囲として定められる有効走査範囲Za1,Zb1にあるタイミングで出射される。そして最大走査範囲Za3,Zb3のうち、画像形成用レーザ光が出射されない無効走査範囲Za2,Zb2が、各有効走査範囲Za1,Zb1に対してレーザ光の走査方向の両側に存在する。
【0057】
このようにレーザ光の走査状態が有効走査範囲Za1,Zb1と無効走査範囲Za2,Zb2とで切り替わる構成によれば、図4に示すように、走査部によってレーザ光が2次元走査されることで画像が形成される画面において、有効走査範囲Za1,Zb1に対応する画像有効領域A1と、無効走査範囲Za2,Zb2に対応する画像無効領域A2(薄墨部分)とが形成される。
【0058】
つまり、画像有効領域A1が、画面における画像の表示領域であり、レーザ光の走査位置(以下「光走査位置」という。)が画像有効領域A1にある場合、画像信号5Sに応じた大きさの変調電流が、光源部7に供給される。そして、水平走査部32及び垂直走査部34により、画像有効領域A1内で、1フレーム分のレーザ光が走査され、この走査が1フレームの画像ごとに繰り返される。本実施形態では、図4に示すように、画像無効領域A2は、矩形状に形成される画像有効領域A1に対して、画像有効領域A1を囲む枠状の領域として形成される。
【0059】
なお、図4には、光源部7からレーザ光が常時出射されたとの仮定のもと、水平走査部32及び垂直走査部34によって走査されるレーザ光の軌跡γが仮想的に示されている。ただし、水平走査部32による水平走査方向(Y方向)の走査数は、1フレームあたり数百又は千程度あることから、図4では、便宜上、レーザ光の軌跡γを簡略して記載している。
【0060】
[光源部の特性]
ここで、光源部7が有する各色の半導体レーザ11a,12a,13aの特性について説明する。図5〜図8は、各色のレーザに供給される電流値と半導体レーザの発光量との関係を示す電流−発光量特性(I−L特性)を表している。図5〜図8に示すI−L曲線において、横軸は半導体レーザに供給される電流値(I)を示し、縦軸は半導体レーザの発光量(L)を示す。なお、発光量は半導体レーザが具備するPD(フォトダイオード)の値であるPD電圧値(単にPD値という場合もある)である。
【0061】
図5に示すように、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給される電流値が固有の閾値電流値Ithに達するまでは、電流値の増加にともなって発光量は増加するものの、その増加量はわずかであり、発光量は極めて少ない。そして、各色のレーザ11a,12a,13aに供給される電流値が閾値電流値Ithを超えることにより、発光量が急激に立ち上がる。
【0062】
このようなレーザの特性を踏まえ、本実施形態のRSDにおいては、上述したように、光源部7の応答性を高める観点から、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに値Ibのバイアス電流が供給される。具体的には、各色の半導体レーザ11a,12a,13aは、容量成分を含むことから、供給される電流値が0から閾値電流値Ithまで上昇する過程で、電流の一部が容量の充電に用いられる分、実際の発光に寄与する電流の立ち上がりが遅れる。このため、各色のレーザ11a,12a,13aは、電流の供給を受け始めてから発光するまでの遅延時間を要する。
【0063】
そこで、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに、バイアス電流(値Ib)が供給されることで、半導体レーザが待機状態となり、発光の遅延が抑制され、応答性が高められる。本実施形態のRSDでは、バイアス電流の値Ibは、各色の半導体レーザの閾値電流値Ithよりも小さい値であって、例えば、フル点灯(発光量La)の状態となる電流(以下「最大電流」という)の値Iaの略半分の値である。なお、バイアス電流の値としては、例えば、閾値電流値Ithよりもわずかに大きい値が用いられる場合もある。
【0064】
このように、各色の半導体レーザ11a,12a,13aにバイアス電流の供給が行われる構成において、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給される電流の値に関し、電流の値がバイアス電流の値Ibから最大電流の値Iaまでの範囲d1で、光源部7から画像形成用レーザ光が出射される。つまり、各色のレーザ11a,12a,13aに供給される電流の値について、バイアス電流の値Ibの状態が画像0%の状態に対応し、最大電流の値Iaの状態が画像100%の状態に対応し、画像0〜100%の範囲d1が、画像信号5Sに応じた変調成分としてのレーザ光が出射される範囲に対応する。
【0065】
したがって、図5に示すように、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに値Ibのバイアス電流が供給されている画像0%の状態での表示画像の輝度のレベルが黒レベルであり、バイアス電流の値Ibから最大電流の値Iaまでの電流値の範囲d1が各色の半導体レーザ11a,12a,13aに供給される変調電流の変調幅である。このように、各半導体色のレーザ11a,12a,13aに供給される変調電流は、黒レベルを規定するバイアス電流を基準(画像0%)として、画像信号5Sに応じて、最大電流(画像100%)までの範囲で変化する。
【0066】
[光源制御部による制御動作]
本実施形態のRSDでは、各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光量に関し、自動的に光出力の制御を行うAPCとして、最大電流の値Iaを所定の値となるように制御するAPC(以下「白レベルAPC」という。)と、バイアス電流の値Ibを所定の値となるように制御するAPC(以下「黒レベルAPC」という。)とが行われる。すなわち、白レベルAPCによれば、画像100%の状態における各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光量(最大光量(白レベル))が所定の値となるように自動的に制御され、黒レベルAPCによれば、画像0%の状態における各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光量(最小光量(黒レベル))が所定の値となるように自動的に制御される。このように、白レベルAPCと黒レベルAPCとが行われる場合、上述したような各色の半導体レーザ11a,12a,13aのI−L特性から、次のような現象が生じ得る。
【0067】
各色の半導体レーザ11a,12a,13aのI−L特性は、レーザ光を出射する際に発生する熱や外気温の変化等に起因して変化する。例えば、「発明が解決しようとする課題」の項で参照した図11に示すように、レーザの温度が温度Tc1から温度Tc2に上昇することで、I−L特性は、破線で示す曲線(Tc1)から点線で示す曲線(Tc2)へと変化する。これに対応するために、APCが行われて黒レベルを維持しようとすると、変調幅も、閾値電流値(図5の値Ithを参照)も増加する方向に変化する。画像表示用電流としての変調電流の変調幅が変化すると、入力画像データに対するγテーブルの関係が崩れてしまう虞がある。
【0068】
そこで、光源制御部(図3)では、制御部5が備えた記憶部(例えばフラッシュメモリなど)に、先ず、光源である各色の半導体レーザ11a,12a,13aのI−L曲線における各閾値電流値の増加側近傍、すなわちプラス側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶する処理を行うようにしている。かかる記憶処理は、例えば、RSDの組立時に予め行っておくとよい。
【0069】
そして、実際にRSDを使用する際に、光源制御部は、RSDを起動すると、前記基準入力電流値で光源(半導体レーザ11a,12a,13a)から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲Za1,Zb1の外である無効走査範囲Za2,Zb2(画像無効領域A2)で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更するようにしている。
【0070】
図6〜図9を参照しながら説明すると、例えば、RSDの組立時に、先ず、光源である各色の半導体レーザ11a,12a,13aのI−L曲線における各閾値電流値のプラス側(増加側)近傍に設定ポイントを設定する。そして、光源制御部は、このポイントにおける電流値に対応する基準入力輝度値Aと、この基準入力輝度値Aに対応する初期値となる映像出力電流値(LD用のデジタルアナログコンバータの値:映像出力DAC値a)と、これらに対応する基準光量(PD電圧値)とを、制御部5が備えるRAMなどに予め記憶する(図6参照)。制御部5は、この記憶された値に基づいてγテーブルを作成してフラッシュメモリなどに記憶する。
【0071】
ここで、LD用のデジタルアナログコンバータは、制御信号としてのデジタル信号をアナログ信号に変換するものであり、各色の半導体レーザ11a,12a,13a毎に、変調電流及びバイアス電流それぞれに対する制御信号を変換して映像出力DAC値としている。
【0072】
他方、RSDを実際に使用する際に、観察者(使用者)が電源をONにすると、光源制御部は、APCを行うが、例えば、図7に示すように、実際に使用する際のI−L特性(点線で示す曲線)と、出荷時に行う光源調整時のI−L特性(破線で示す曲線)との間でずれが生じている場合、色の基準となる映像出力0パーセントの黒レベルの輝度を一定化する黒レベルAPCと、映像出力100パーセントの白レベルの輝度を一定化する白レベルAPCを行った場合、基準光量PD電圧値に対応する閾値近傍の映像出力DAC値もずれることになる。
【0073】
かかるAPCを実行した後、光源制御部は、フラッシュメモリなどにγテーブル化されて記憶している基準入力電流値で、光源である半導体レーザ11a,12a,13aから出射させ、そのレーザ光の光量(A/D変換したPD電圧値)を、画像形成に有効な有効走査範囲Za1,Zb1の外である無効走査範囲Za2,Zb2(図4:画像無効領域A2)で検出し取得する。
【0074】
そして、光源制御部は、取得した光量のPD電圧値に対し、記憶されている基準光量のPD電圧値と比較する。
【0075】
比較結果が所定値、すなわち[基準光量PD電圧値±目標範囲]から外れている場合、記憶されている基準光量PD電圧値を目標値として、映像出力電流値である映像出力DAC値を変化させて探索(サーチ)し、[基準光量PD電圧値±目標範囲]内のPD電圧値を検出する(図7参照)。
【0076】
ここで、基準光量PD電圧値が得られる像出力DAC値を探索する際に、検出した光量のPD電圧値がフラッシュメモリなどの記憶部に記憶した基準光量PD電圧値よりも小さい場合は映像出力DAC値を増加させ、検出した光量が記憶部に記憶した基準光量PD電圧値よりも大きい場合は像出力DAC値を減少させるようにしている。したがって、どのような温度変化に対してもロスのない時間で[基準光量PD電圧値±目標範囲]内にある所望のPD電圧値を探索することができる。
【0077】
次いで、光源制御部は、サーチした映像出力DAC値xと、基準入力輝度値Aに対応するγテーブル中の映像出力DAC値a(図10の初期γテーブルを参照)とを比較する(図8参照)。なお、図8においても、点線で示す曲線は実際に使用する際のI−L特性、破線で示す曲線は出荷時に行った光源調整時のI−L特性を示す。
【0078】
そして、比較結果の差が、γテーブルを変更するために予め設定されているγ変更閾値より大きければγテーブルを変更するための次の探索(サーチ)を行う。すなわち、光源制御部は、γテーブルから映像出力DAC値がx以上になる最初の入力輝度値B(映像出力DAC値b)を探索(サーチ)する(図8及び図10の初期γテーブルを参照)。
【0079】
そして、光源制御部は、探索して検出した映像出力DAC値bと基準入力輝度値Aに対応する映像出力DAC値aと基づいて、以下の式1によって傾きαを求めるγ変更係数計算を行い、図10における入力輝度値A〜Bまでの線形補間を行う。
【0080】
α=(b−x)/(B−A)・・・式1
【0081】
式1によって得た傾きαを用いて、画像の表示領域である画像有効領域A1(図4)において、入力される入力輝度値がA〜Bの区間のときは、以下のような補正を行ってγ変更を行う(図10に示す変更後のγテーブルを参照)。ただし、補正する区間(A〜B)において、入力輝度値A<入力輝度値B、映像出力DAC値x<映像出力DAC値bとする。
【0082】
すなわち、入力輝度値Aのときは映像出力DAC値xとし、同様に、入力輝度値A+1→映像出力DAC値x+α、入力輝度値A+2→映像出力DAC値x+2α、入力輝度値A+3→映像出力DAC値x+3α、・・・入力輝度値X→映像出力DAC値b(x+(n−1)α:n=B−A)、入力輝度値B→映像出力DAC値b(x+nα:n=B−A)として、図10に示す変更後のγテーブルを得るのである。
【0083】
ここで、RSDを実際に使用する際に、光源制御部が実行するγテーブル変更処理の流れについて、図9を用いて説明する。なお、説明はRSDの電源をONした後からについて説明する。
【0084】
RSDの電源がONされて走査部が駆動すると、駆動信号供給制御回路8とともに光源制御部として機能する制御部5のCPUは、図示するように、先ず、走査ラインをカウントする(ステップS11)。
【0085】
次いで、CPUは、走査されているレーザ光(走査ライン)が画像有効領域A1(図4参照)にあるか否かを判定する(ステップS12)。
【0086】
レーザ光が画像有効領域A1にない場合(ステップS12:No)、すなわち、レーザ光が画像無効領域A2にある場合、CPUは、走査ラインがγ変更制御開始ラインであるか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、RSDでは、画像無効領域A2における走査ライン毎に、例えば、バイアス電流制御処理を行ったり、変調電流制御処理を行ったりしており、予め、γ変更制御処理を行うタイミングが走査ラインに規定されているのである。
【0087】
走査ラインがγ変更制御開始ラインでない場合(ステップS13:No)、CPUは、他の制御を実行し(ステップS14)、処理をステップS30に移す。なお、ステップS14における他の制御には、何もしないという制御も含まれている。
【0088】
一方、ステップS13の処理で、走査ラインがγ変更制御開始ラインあると判定した場合(ステップS13:Yes)、CPUは、基準光量PD電圧値±目標範囲]内になる映像出力DAC値xを探索する(ステップS15)。
【0089】
次いで、CPUは、探索して得た映像出力DAC値xと、γテーブル中の基準入力輝度値Aに対応する映像出力DAC値aとを比較する(ステップS16)。
【0090】
そして、CPUは、比較結果がγ変更閾値以上であるか否かを判定し(ステップS17)、閾値未満であれば処理をステップS30に移す一方、比較結果がγ変更閾値以上であればγ変更フラグをセットする(ステップS18)。
【0091】
そして、CPUは、前述したように式1を用いてγ変更係数計算を実行し、γテーブルを線形補間したものに変更する(ステップS19)。
【0092】
そして、CPUは、γ変更処理又は他の制御処理を行った1ライン走査を終了し(ステップS30)、処理をステップS11に移す。
【0093】
そして、ステップS11で走査ラインをカウントし、ステップS12において、走査ラインが画像有効領域A1にあるか否かを判定し、レーザ光が画像有効領域A1にある場合(ステップS12:Yes)、γ変更フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS20)。
【0094】
γ変更フラグがセットされている場合(ステップS20:Yes)、CPUは、ステップS19で行って得たγ変更係数に基づいて線形補間されて変更されたγ補正による画像表示を行い(ステップS22)、1ライン走査を終え(ステップS30)、その後、処理をステップS11に移す。
【0095】
一方、ステップS20の処理で、γ変更フラグがセットされていない場合(ステップS20:No)、CPUは、γ変更を行わずに画像処理を実行し(ステップS23)、1ライン走査を終え(ステップS30)、その後、処理をステップS11に移す。
【0096】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、外部気温などの変化によって半導体レーザ11a,12a,13aの特性が変化し、光源である半導体レーザ11a,12a,13aの閾値電流値が変化した場合でも、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる。
【0097】
また、γテーブルの変更を、探索して得られた映像出力DAC値に基づいて演算して得られる補正係数である傾きαに基づく線形補間を行うことで実現させているため、温度変化に対して色バランスなどが崩れる度にγテーブルを作成しなおす必要がなく、一度変更するだけで良いため、手間が掛からない。
【0098】
ところで、本実施形態では、白レベル(映像100%)及び黒レベル(映像0%)での輝度をそれぞれ一定化するようAPCを行って、バイアス電流と黒レベルから白レベルまでの変調電流の変調幅を決めているが、必ずしも両レベルでAPCを行わなければならないものではない。
【0099】
なお、本実施形態に係る制御部5は、γテーブルを記憶する記憶装置の他、各色の半導体レーザ11a,12a,13aに対応する各色のIV変換回路(不図示)と、ADコンバータ(不図示)とを備えている。IV変換回路は、例えばトランスインピーダンスアンプ等により構成され、各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光出力を検出するフォトダイオード11d,12d,13dからのモニタ信号としての電流信号を受け、電圧信号に変換する。そして、各IV変換回路により得られた電圧信号は、ADコンバータに入力される。そして、ADコンバータは、各IV変換回路から受けた電圧信号としてのアナログ信号を、デジタル信号に変換する。ADコンバータにより得られたデジタル信号は、駆動信号供給制御回路8に入力され、駆動信号供給制御回路8は、ADコンバータから受けた信号を処理する構成として、APC制御を行う画像出力制御部85(図3)を備えている。
【0100】
この画像出力制御部85は、各色の半導体レーザ11a,12a,13aの光出力についての情報を含むADコンバータからの信号の入力を受け、この入力信号に基づいて、半導体レーザ11a,12a,13aのレーザ光の色毎に、APCを行うための制御信号を生成する。本実施形態では、画像出力制御部85は、駆動信号供給制御回路8において、FPGA(Field Programmable Gate Array)の一機能部分として構成されている。なお、FPGAとは、現場において回路の書換えが可能な集積回路である。
【0101】
ところで、上述してきた実施形態では、γテーブルの変更を行う場合、探索して得られた映像出力DAC値に基づいて演算して得られる補正係数に基づいて線形補間を行うこととしていた。しかし、他の実施形態として、制御部5の記憶装置に複数のγテーブルを予め記憶しておき、光源制御部は、記憶装置に記憶された前記複数のγテーブルの中から、探索して得られた映像出力DAC値に応じて適切なγテーブルを選択することによってγテーブルを変更することもできる。
【0102】
この場合、そのときそのときに演算処理を行わず、探索して検出した値に応じたγテーブルを選択するだけでよいので、CPUなどへの負荷が軽減され、構成も簡単となる。
【0103】
上述してきた実施形態により、以下のRSDが実現する。
【0104】
(1)供給される電流に応じた強度のレーザ光を出射する光源として半導体レーザ11a,12a,13aを有する光源部7と、前記半導体レーザ11a,12a,13a(光源)から出射されたレーザ光を2次元走査する水平走査部32及び垂直走査部34を含む構成(走査部)と、前記光源に供給するバイアス電流と変調電流とを調整して前記光源からの出射光量を制御する光源制御部(制御部5及び駆動信号供給制御回路8)とを備え、前記走査部により走査されたレーザ光によって画像を表示することができ、前記半導体レーザ11a,12a,13a(光源)の閾値電流値の増加側近傍に設定した基準入力電流値Aと、この基準入力電流値Aに対する基準光量PD電圧値(基準光量値)とを記憶するとともに、映像出力DAC値(映像出力電流値)を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶した前記基準入力電流値Aで前記半導体レーザ11a,12a,13a(光源)から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲Za1,Zb1外の無効走査範囲Za2,Zb2で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量PD電圧値(基準光量値)よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量PD電圧値(基準光量値)が得られる映像出力DAC値(映像出力電流値)を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更するRSD(走査型画像表示装置)。
【0105】
かかるRSDによれば、外部気温などの変化によって半導体レーザ11a,12a,13a(光源)の特性が変化し、前記半導体レーザ11a,12a,13aの閾値電流値が変化した場合でも、表示画像の輝度が良好で安定した画質を得ることができる。
【0106】
(2)前記記憶部は、複数のγテーブルを予め記憶しており、前記光源制御部は、前記記憶部に記憶された前記複数のγテーブルの中から、探索して得られた映像出力DAC値(映像出力電流値)に応じて選択することにより前記γテーブルの変更を行うRSD(走査型画像表示装置)。
【0107】
さらに、かかる(2)の構成を有するRSDによれば、γテーブルの変更を、前記記憶部に記憶された複数のγテーブルの中から、探索して得られた映像出力電流値に応じて選択することで実現できるため、複雑な演算などが不要で簡単な構成となる。
【0108】
(3)前記光源制御部は、探索して得られた前記映像出力DAC値(映像出力電流値)に基づいて演算して得られる演算して得られる傾きα(補正係数)に基づく線形補間を行うことにより前記γテーブルの変更を行うRSD(走査型画像表示装置)。
【0109】
また、かかる(3)の構成を有するRSDであれば、γテーブルの変更を、探索して得られた映像出力電流値に基づいて演算して得られる補正係数に基づく線形補間を行うことで実現するため、一度変更するだけで良く、温度変化に対して色バランスなどが崩れる度にγテーブルを作成しなおす必要がなくなる。
【0110】
(4)前記光源制御部は、前記基準光量PD電圧値(基準光量値)が得られる映像出力DAC値(映像出力電流値)を探索する際に、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量PD電圧値(基準光量値)よりも小さい場合は前記映像出力電流を増加させ、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量PD電圧値(基準光量値)よりも大きい場合は前記映像出力電流を減少させるRSD(走査型画像表示装置)。
【0111】
かかる(4)の構成を有するRSDによれば、どのような温度変化に対してもロスのない時間で所望する電流値を探索することができる。
【0112】
上述してきた実施形態では、走査型画像表示装置を網膜走査型画像表示装置として説明した。しかし、当然ではあるが、本発明は、走査したレーザ光をスクリーン面などに投射して画像表示する画像投影装置(レーザディスプレイ)など、レーザ光を走査して画像を表示する他の走査型画像表示装置に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0113】
5 制御部
8 駆動信号供給制御回路
11a,12a,13a 半導体レーザ(光源)
11b,12b,13b レーザドライバ(LDドライバ)
32 水平走査部
34 垂直走査部
85 画像出力制御部
Za1,Zb1 有効走査範囲
Za2,Zb2 無効走査範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電流に応じた強度のレーザ光を出射する光源として半導体レーザを有する光源部と、
前記光源から出射されたレーザ光を2次元走査する走査部と、
前記光源に供給するバイアス電流と変調電流とを調整して前記光源からの出射光量を制御する光源制御部と、
を備え、前記走査部により走査されたレーザ光によって画像を表示する走査型画像表示装置において、
前記光源の閾値電流値の増加側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶するとともに、映像出力電流値を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記光源制御部は、
前記記憶部に記憶した前記基準入力電流値で前記光源から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲外の無効走査範囲で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更することを特徴とする走査型画像表示装置。
【請求項2】
前記記憶部は、複数のγテーブルを予め記憶しており、
前記光源制御部は、
前記記憶部に記憶された前記複数のγテーブルの中から、探索して得られた前記映像出力電流値に応じて選択することにより前記γテーブルの変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の走査型画像表示装置。
【請求項3】
前記光源制御部は、
探索して得られた前記映像出力電流値に基づいて演算して得られる補正係数に基づく線形補間を行うことにより前記γテーブルの変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の走査型画像表示装置。
【請求項4】
前記光源制御部は、
前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索する際に、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも小さい場合は前記映像出力電流を増加させ、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも大きい場合は前記映像出力電流を減少させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の走査型画像表示装置。
【請求項1】
供給される電流に応じた強度のレーザ光を出射する光源として半導体レーザを有する光源部と、
前記光源から出射されたレーザ光を2次元走査する走査部と、
前記光源に供給するバイアス電流と変調電流とを調整して前記光源からの出射光量を制御する光源制御部と、
を備え、前記走査部により走査されたレーザ光によって画像を表示する走査型画像表示装置において、
前記光源の閾値電流値の増加側近傍に設定した基準入力電流値と、この基準入力電流値に対する基準光量値とを記憶するとともに、映像出力電流値を補正するためのγテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記光源制御部は、
前記記憶部に記憶した前記基準入力電流値で前記光源から出射させたレーザ光の光量を、画像形成に有効な有効走査範囲外の無効走査範囲で検出し、検出した光量が、前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも所定値以上ずれている場合、前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索し、探索結果に基づいて前記γテーブルを変更することを特徴とする走査型画像表示装置。
【請求項2】
前記記憶部は、複数のγテーブルを予め記憶しており、
前記光源制御部は、
前記記憶部に記憶された前記複数のγテーブルの中から、探索して得られた前記映像出力電流値に応じて選択することにより前記γテーブルの変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の走査型画像表示装置。
【請求項3】
前記光源制御部は、
探索して得られた前記映像出力電流値に基づいて演算して得られる補正係数に基づく線形補間を行うことにより前記γテーブルの変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の走査型画像表示装置。
【請求項4】
前記光源制御部は、
前記基準光量値が得られる映像出力電流値を探索する際に、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも小さい場合は前記映像出力電流を増加させ、検出した前記光量が前記記憶部に記憶した前記基準光量値よりも大きい場合は前記映像出力電流を減少させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の走査型画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−155020(P2012−155020A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12170(P2011−12170)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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