走査型表示装置および画像表示方法
【課題】高解像度化を図ることができる、小型の走査型表示装置を提供する。
【解決手段】走査型表示装置は、光源部11と、光源部11からの光ビームを投射面13上で第1の方向および/または第1の方向と交差する第2の方向に走査する走査手段12と、走査手段12を制御し、光源部11の発光タイミングを制御して、投射面13上に画像を表示させる制御部10と、を有する。走査手段12は、第1の走査周期で第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、第1の走査周期より短い第2の走査周期で第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、第2の走査周期より短い第3の走査周期で第1の方向の走査を行う、最大走査角が第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子と、を有する。制御部10は、第3の走査周期に同期して光源部11の発光タイミングを制御し、第2の方向において、一方の側から他方の側へ向かう1度の走査で、複数の走査線を描画させる。
【解決手段】走査型表示装置は、光源部11と、光源部11からの光ビームを投射面13上で第1の方向および/または第1の方向と交差する第2の方向に走査する走査手段12と、走査手段12を制御し、光源部11の発光タイミングを制御して、投射面13上に画像を表示させる制御部10と、を有する。走査手段12は、第1の走査周期で第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、第1の走査周期より短い第2の走査周期で第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、第2の走査周期より短い第3の走査周期で第1の方向の走査を行う、最大走査角が第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子と、を有する。制御部10は、第3の走査周期に同期して光源部11の発光タイミングを制御し、第2の方向において、一方の側から他方の側へ向かう1度の走査で、複数の走査線を描画させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを走査して被投射面上に画像を表示する走査型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ビームを水平方向および垂直方向に走査するとともに、水平走査において、往路と復路のそれぞれで描画を行う表示装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の表示装置は、補正走査装置、水平走査装置および垂直走査装置からなる走査系を有する。
【0004】
補正走査装置は、光源からの光ビームを垂直方向に走査する。補正走査装置からの光ビームは、水平走査装置に入射する。
【0005】
水平走査装置は、補正走査装置からの光ビームを水平方向に走査する。水平走査装置からの光ビームは、垂直走査装置に入射する。
【0006】
垂直走査装置は、水平走査装置からの光ビームを垂直方向に走査する。垂直走査装置からの光ビームは、投射面上に照射される。
【0007】
鋸波状の垂直駆動信号が垂直走査装置に供給され、正弦波状の水平駆動信号が水平走査装置に供給される。水平駆動信号の周波数は、垂直駆動信号に比べて十分に高い。
【0008】
補正走査装置は、投射面上の走査ラインの傾きを調整するものであって、その振れ幅は、水平走査装置や垂直走査装置と比較して十分に小さい。補正走査装置の駆動信号の周波数は、水平走査装置の水平駆動信号の2倍である。
【0009】
補正走査装置、水平走査装置および垂直走査装置として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーに代表される小型の共振ミラーを用いることができる。
【0010】
補正走査装置なしで、水平走査装置および垂直走査装置で走査した場合、図19に示すように、往路においては、右下がりの走査ライン300aが形成され、復路においては、左下がりの走査ライン300bが形成される。このように走査ラインが傾くと、投射面の端部近傍において、画素の間隔が小さくなり、その結果、隣接する画素が互いに重なって、画質が低下する場合がある。
【0011】
補正走査装置は、往路および復路のそれぞれで、走査ラインが水平になるように、垂直方向の走査角度を調整する。図20に、調整後の走査ラインを模式的に示す。図20に示すように、往路および復路のそれぞれで、略水平な走査ライン300が形成される。
【0012】
特許文献2には、スペックルの低減を目的に、水平方向の走査を行うポリゴンスキャナと、垂直方向の走査を行うガルバノスキャナと、ビームを垂直方向に微小な角度で振動させるビーム振動手段と、を有する画像表示装置が記載されている。
【0013】
上記の画像表示装置によれば、1水平走査期間に複数回、垂直方向にビームを振動させることでスペックルを低減する。ここで、スペックルとは、レーザ光のコヒーレンスに起因する斑点上のノイズである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4490019号
【特許文献2】国際公開2005/083492
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1、2に記載の表示装置においては、小型で高解像度の装置を提供することが困難であるという問題がある。以下に、高解像度化における問題を具体的に説明する。
【0016】
特許文献1に記載の表示装置において、水平走査装置の駆動信号の周波数を高くすることで、高解像度化を図ることができる。しかし、水平走査装置はMEMSミラー等の小型の共振ミラーよりなるので、その駆動速度及び動作周波数には限界があり、その限界を超えて解像度を高くすることはできない。例えば、WUXGA(1920×1200)の画面に対応する場合、水平走査装置の駆動周波数は36KHzであり、現状では、そのような駆動周波数で動作する小型の共振ミラーを提供することは困難である。
【0017】
また、水平走査装置の振れ角を小さくすると、1回の走査にかかる時間が短くなる。このため駆動周波数を大きくすることができるため、水平走査線数を増大し、解像度を高くすることができる。しかし、この場合は、水平走査装置の振れ角を小さくしたことによって画面が小さくなる。
【0018】
特許文献2に記載のものにおいては、ポリゴンスキャナやガルバノスキャナを用いているので、装置が大型化するという問題がある。ポリゴンスキャナやガルバノスキャナに代えてMEMSミラー等の小型の共振ミラーを用いることで小型化を図ることができるが、この場合は、上記の高解像度化における問題を生じる。
【0019】
本発明の目的は、高解像度化を図ることができる、小型の走査型表示装置、および画像表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の走査型表示装置は、
光ビームを出射する光源部と、
投射面上で光源部からの光ビームを、第1の方向および/または該第1の方向と交差する第2の方向に走査する走査手段と、
走査手段を制御し、光源部の発光タイミングを制御して、投射面上に複数の走査線からなる画像を表示させる制御部と、を有し、
走査手段は、
第1の走査周期で第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、
第1の走査周期より短い第2の走査周期で第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、
第2の走査周期より短い第3の走査周期で第1の方向の走査を行う、最大走査角が第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子と、を有し、
制御部は、第3の走査周期に同期して光源部の発光タイミングを制御し、第2の方向において、一端から他端へ向かう1度の走査で、2以上の走査線を描画させる。
【0021】
本発明の画像表示方法は、光源部からの光ビームを投射面上で第1の方向および/または該第1の方向と交差する第2の方向に走査し、光源部の発光タイミングを制御して、投射面上に複数の走査線からなる画像を表示させる画像表示方法であって、
第1の走査周期で第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、第1の走査周期より短い第2の走査周期で第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、第2の走査周期より短い第3の走査周期で第1の方向の走査を行う、最大走査角が第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子とを同期させて制御し、
第3の走査周期に同期して光源部の発光タイミングを制御し、第2の方向において、一端から他端へ向かう1度の走査で、2以上の走査線を描画させることを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、小型で高解像度の走査型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す走査型表示装置の光源部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す走査型表示装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す走査型表示装置にて用いられる第1の垂直走査信号と水平走査信号との対応関係を示すタイミングチャートである。
【図5】図1に示す走査型表示装置にて用いられる水平走査信号と第2の垂直走査信号との対応関係を示すタイミングチャートである。
【図6】図1に示す走査型表示装置における、第2の垂直走査信号とタイミング信号と往路または復路に同時に描画される2ラインの各画素の発光タイミングとの対応関係を示すタイミングチャートである。
【図7】2ライン同時描画の画像の一例を示す模式図である。
【図8】比較例としての1ライン描画の画像の一例を示す模式図である。
【図9】図1に示す走査型表示装置の第2の垂直走査素子の偏向角度を説明するための模式図である。
【図10】4ライン同時描画で、アスペクト比が1である場合のビームスポットの一例を示す模式図である。
【図11】4ライン同時描画で、アスペクト比が2である場合のビームスポットの一例を示す模式図である。
【図12】本発明の第2の実施形態である走査型表示装置にて用いられる第2の垂直走査信号とタイミング信号の対応関係を示すタイミングチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態の走査型表示装置で描画される水平走査ラインの模式図である。
【図14】本発明の第3の実施形態である走査型表示装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3の実施形態の走査型表示装置にて行われる4ライン同時描画における、nフレームから(n+3)フレームの4つのフレームについて、第2の垂直走査信号の水平走査信号に対する位相差を変化させた場合の描画状態を示す模式図である。
【図16】本発明の第5の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【図17】図16に示す走査型表示装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図18】図16に示す走査型表示装置のダイクロイックミラーの組立時に生じる光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれによるビームスポットの位置ずれを示す模式図である。
【図19】走査型表示装置における水平走査ラインの傾きを説明するための模式図である。
【図20】特許文献1に記載の表示装置による水平走査ラインの傾きの調整を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示す走査型表示装置は、レーザプロジェクタに代表される表示装置であって、光ビームを出力する光源部11と、光源部11からの光ビームを水平方向および垂直方向に走査する走査手段12と、走査手段12を制御するとともに、光源部11の発光タイミングを制御して投射面13上に画像を表示させる制御部10とを有する。
【0027】
投射面13には、透過型の拡散スクリーン、反射型の拡散スクリーン、反射型の半透明スクリーン、蛍光スクリーン等を用いることができる。
【0028】
走査手段12は、2次元走査部12aおよび垂直走査素子12bを有する。
【0029】
2次元走査部12aは、水平方向の走査を行う水平走査素子と、垂直方向の走査を行う垂直走査素子とを有する。2次元走査部12aは、これら水平走査素子および垂直走査素子を一体的に組み込んだ2次元走査素子であってもよい。2次元走査素子は、例えば、MEMSより構成してもよい。
【0030】
垂直走査素子12bは、光源部11と2次元走査部12aの間に配置されており、光源部11からの光ビームを垂直方向に走査するが、その最大走査角(ビームの振れ角の最大値)は、2次元走査部12aの垂直方向における最大走査角より十分に小さい。垂直走査素子12bで走査された光ビームは、2次元走査部12aに入射する。垂直走査素子12bとして、電気光学(EO)素子、音響光学(AO)素子、高速駆動レンズ、MEMSミラー等を用いることができる。
【0031】
光源部11は、図2に示すように、光源11R、11G、11B、第1乃至第3のコリメートレンズ110、ミラー111、およびダイクロイックミラー112、13を有する。
【0032】
光源11Rは、赤色の波長帯域にピーク波長を有する光源であり、例えば、発光色が赤色である、LEDや半導体レーザよりなる。また固体光源以外の場合は、光変調器を含む。
【0033】
光源11Gは、緑色の波長帯域にピーク波長を有する光源であり、例えば、発光色が緑色である、LEDや半導体レーザよりなる。また固体光源以外の場合は、光変調器を含む。
【0034】
光源11Bは、青色の波長帯域にピーク波長を有する光源であり、例えば、発光色が青色である、LEDや半導体レーザよりなる。また固体光源以外の場合は、光変調器を含む。
【0035】
光源11Rから出力された赤色のビーム光の進行方向に、第1のコリメートレンズ110、ミラー111が配置されている。光源11Rからの赤色のビーム光は、第1のコリメートレンズ110によって平行光束化された後、ミラー111に入射する。ミラー111は、入射した赤色のビーム光を所望の角度で反射する。
【0036】
光源11Gから出力された緑色のビーム光の進行方向に、第2のコリメートレンズ110、ダイクロイックミラー112が配置されている。光源11Gからの緑色のビーム光は、第2のコリメートレンズ110によって平行光束化された後、ダイクロイックミラー112の一方の面に入射する。
【0037】
ミラー111からの赤色の光ビームの中心光線は、第2のコリメートレンズ110によって平行光束化された緑色の光ビームの中心光線と直交しており、その交点に、ダイクロイックミラー112が配置されている。
【0038】
ダイクロイックミラー112は、赤色の波長の光を透過させ、それ以外の波長の光を反射する分光透過特性を有する。ミラー111からの赤色の光ビームは、ダイクロイックミラー112を透過する。第2のコリメートレンズ110からの緑色の光ビームは、ダイクロイックミラー112によって略90度の角度で反射され、その反射光は、赤色の光ビームの透過光と同じ方向に向かう。
【0039】
光源11Bから出力された青色のビーム光の進行方向に、第3のコリメートレンズ110、ダイクロイックミラー113が配置されている。光源11Bからの青色のビーム光は、第3のコリメートレンズ110によって平行光束化された後、ダイクロイックミラー113の一方の面に入射する。
【0040】
ダイクロイックミラー112からの赤色および緑色の光ビームの中心光線は、第3のコリメートレンズ110によって平行光束化された青色の光ビームの中心光線と直交しており、その交点に、ダイクロイックミラー113が配置されている。
【0041】
ダイクロイックミラー113は、赤色および緑色の波長の光を透過させ、それ以外の波長の光を反射する分光透過特性を有する。ダイクロイックミラー112からの赤色および緑色の光ビームは、ダイクロイックミラー113を透過する。第3のコリメートレンズ110からの青色の光ビームは、ダイクロイックミラー113によって略90度の角度で反射され、その反射光は、赤色および緑色の光ビームの透過光と同じ方向に向かう。
【0042】
光源部11からの赤色、緑色、青色の光ビームはそれぞれ、垂直走査素子12bに入射する。
【0043】
制御部10は、2次元走査部12aおよび垂直走査素子12bを制御するとともに、光源11R、11G、11Bそれぞれの発光タイミングを制御して投射面13上に画像を表示させる。
【0044】
図3は、制御部10の構成の一例を示すブロック図である。図3には、2次元走査部12aが垂直走査素子12a―1および水平走査素子12a―2からなる場合の制御部10の構成が示されている。
【0045】
図3を参照すると、制御部10は、タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102、103および水平走査制御部104を有する。
【0046】
画像信号S1が、外部装置からLD制御部101に供給される。外部装置は、例えばパーソナルコンピュータ等の映像供給装置である。画像信号S1は、赤色、緑色、青色の各色の画像信号を含む。例えば、各色の画像が時分割で表示される場合、画像信号S1として、それぞれの色の画像信号が時分割で供給される。各色の画像が同時に表示される場合は、画像信号S1は、それぞれの色の画像信号を含む。
【0047】
同期信号S2は、画像信号S1に基づく画像の表示における垂直同期および水平同期をとるための信号(垂直同期信号および水平同期信号)であって、外部装置から制御部10に供給される。同期信号S2は、タイミング制御部100、垂直走査制御部101、102および水平走査制御部103のそれぞれに供給される。
【0048】
例えば、各色の画像が時分割で表示される場合は、同期信号S2として、それぞれの色の画像信号に対応する同期信号が時分割で供給される。各色の画像が同時に表示される場合は、同期信号S2として、各色の画像信号に共通の同期信号が供給される。
【0049】
タイミング制御部100は、同期信号S2に基づいて、光源11R、11G、11Bそれぞれの発光タイミングを示すタイミング信号S3を生成する。タイミング信号S3は、タイミング制御部100からLD制御部100に供給される。
【0050】
LD制御部100は、画像信号S1とタイミング制御部100からのタイミング信号S3とに基づいて、光源11R、11G、11Bをそれぞれ駆動するための駆動信号S4を生成する。駆動信号S4は、光源11Rを駆動する赤用駆動信号、光源11Gを駆動する緑用駆動信号、光源11Bを駆動する青用駆動信号を含む。
【0051】
光源部11では、光源11Rが赤用駆動信号に従って点灯し、光源11Gが緑用駆動信号に従って点灯し、光源11Bが青用駆動信号に従って点灯する。
【0052】
垂直走査制御部102は、同期信号S2に含まれる垂直同期信号に基づいて垂直走査素子12a―1を動作させるための垂直走査信号SV1を生成する。垂直走査素子12a―1は、垂直走査制御部102からの垂直走査信号SV1に従って垂直走査を行う。
【0053】
垂直走査制御部103は、同期信号S2に含まれる水平同期信号に基づいて垂直走査素子12bを動作させるための垂直走査信号SV2を生成する。垂直走査素子12bは、垂直走査制御部103からの垂直走査信号SV2に従って垂直走査を行う。
【0054】
水平走査制御部104は、同期信号S2に含まれる水平同期信号に基づいて水平走査素子12a―2を動作させるための水平走査信号SHを生成する。水平走査素子12a―2は、水平走査制御部104からの水平走査信号SHに従って水平走査を行う。
【0055】
図4は、垂直走査信号SV1と水平走査信号SHとの対応関係を示すタイミングチャートである。
【0056】
図4に示すように、垂直走査信号SV1は鋸波状の信号であって、1フレームの表示期間TFにおいて振幅値が徐々に増大し、その後、垂直ブランキング期間TVBにおいて、振幅値が急激に減少する。
【0057】
垂直ブランキング期間TVBは、例えば、上部から下部まで画面を描画した後に、次の画面を描画するために上部へ戻るための垂直帰線期間を含む。垂直ブランキング期間TVBは、表示期間TFに対して十分に短い。表示期間TFに垂直ブランキング期間TVBを加算した期間が垂直走査信号SV1の周期であり、画面上の1フレームに一致する。垂直走査信号SV1の動作周波数は、画面のリフレッシュレート(例えば、30Hz、60Hz、120Hz・・・)に等しい。
【0058】
一方、水平走査信号SHは正弦波状の信号であって、その周期は、垂直走査信号SV1の周期に比較して十分に小さい。
【0059】
図5は、水平走査信号SHと垂直走査信号SV2との対応関係を示すタイミングチャートである。図6は、垂直走査信号SV2と、タイミング信号S3と往路または復路に同時に描画される2ラインの各画素の発光タイミングとの対応関係を示すタイミングチャートである。図5において、水平走査信号SHは、図4に示したものを部分的に拡大したものであり、図6において、垂直走査信号SV2は、図5に示したものを部分的に拡大したものである。なお、便宜上、図5に示す垂直走査信号SV2は、矩形の部分を破線で模式的に示している。
【0060】
図5に示すように、水平走査信号SHの周期は、1水平表示ライン期間THに水平ブランキング期間THBを加算して2倍した期間に等しい。
【0061】
図5および図6に示すように、垂直走査信号SV2は、矩形形状の信号であって、その周期は、水平走査信号SHの周期より十分に短い。
【0062】
1水平表示ライン期間THにおいて、垂直走査信号SV2の矩形波形の立ち上がり後または立下り後の信号レベルが徐々に増大し、その後、水平ブランキング期間THBにおいて、垂直走査信号SV2の信号レベルが急激に減少する。換言すると、垂直走査信号SV2は全体で、鋸波状の信号を形成しており、この鋸波状の信号の周期の2倍は、水平走査信号SHの周期に等しい。
【0063】
図6に示す例では、1つの光源、例えば光源11Rについて、タイミング信号S3と、NラインおよびN+1ラインの2ラインを描画する際のそれぞれのライン上の画素における発光タイミングを示している。
【0064】
タイミング信号S3は、垂直走査周波数Sv2の立ち上がりタイミングおよび立ち下りタイミングそれぞれでパルスが生成されたものである。タイミング信号S3の周期は、垂直走査周波数Sv2の周期の半分である。
【0065】
例えば、Nラインでは、タイミング信号S3の偶数番目のパルスの立ち上がりタイミング(すなわち、垂直走査信号SV2の矩形波形の立ち上がりのタイミング)で光源11Rが発光する。一方、N+1ラインでは、タイミング信号S3の奇数番目のパルスの立ち上がりタイミング(垂直走査信号SV2の矩形波形の立ち下がりのタイミング)で光源11Rが発光する。ここでは、各画素における発光時間(パルス幅)は、垂直走査信号SV2の矩形の波形の幅に略一致するように、タイミング信号S3と画像信号S1とに基づいて駆動信号S4が生成されている。
【0066】
本実施形態の走査型表示装置では、タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102、垂直走査制御部103、および水平走査制御部104がそれぞれ、図4〜図6に示したような関係を有する、タイミング信号S3、駆動信号S4(赤用駆動信号、緑用駆動信号および青用駆動信号を含む)、垂直走査信号SV1、垂直走査信号SV2、および水平走査信号SHを生成する。なお図4と図5、及び図6のSV2の縦軸は各制御部102〜104に印加する電圧を示すが、図6のS3、Nライン及びN+1ラインの縦軸はタイミングのみを示している。
【0067】
光源11R、11G、11Bが駆動信号S4に従って動作するとともに、垂直走査素子12a―1、垂直走査素子12b、および水平走査素子12a―2がそれぞれ、垂直走査信号SV1、垂直走査信号SV2、および水平走査信号SHに従って動作する。これにより、投射面13上では、光源11R、11G、11Bそれぞれについて、往路および復路のそれぞれで、同時に、2ラインの描画(2ライン同時描画)が行われる。
【0068】
図7に、2ライン同時描画の画像の一例を示し、図8に、比較例として、垂直走査素子12bなしの1ライン描画の画像の一例を示す。
【0069】
図8に示す比較例では、垂直走査素子12bが停止しており、垂直走査素子12a―1および水平走査素子12a―2による走査が行われる。この場合は、左端から右端へ向かう往路時は、右下がりの直線に沿って複数のビームスポット1が形成され、これにより、右下がりの1本の走査ラインが形成される。一方、右端から左端へ向かう復路時は、左下がりの直線に沿って複数のビームスポット1が形成され、これにより、左下がりの1本の走査ラインが形成される。
【0070】
一方、本実施形態の走査型表示装置では、垂直走査素子12a―1および水平走査素子12a―2に加えて、垂直走査素子12bが動作し、この垂直走査素子12bの動作に同期して光源部11の発光タイミングを制御することで、図7に示すような2ライン同時描画が行われる。
【0071】
左端から右端へ向かう往路において、垂直走査素子12bによって光ビームが垂直方向に微小な角度で往復走査され、この走査に同期して光源部11が発光することで、上側にビームスポット1aが形成され、下側にビームスポット1bが形成される。ビームスポット1a、1bは、往路において交互に複数形成される。これにより、複数のビームスポット1aよりなる第1の水平走査ライン(例えば、図6に示したNライン)と、複数のビームスポット1bよりなる第2の水平走査ライン(例えば、図6に示したN+1ライン)とが、同時に形成される。
【0072】
右端から左端へ向かう復路においても、上記の往路と同様に、第1および第2の水平走査ラインが同時に形成される。
【0073】
このように、往路と復路のそれぞれで、複数の水平走査ラインを同時に描画することができるので、比較例と比較して、解像度を高くすることができる。
【0074】
また、本実施形態の走査型表示装置によれば、図5に示したように、垂直走査信号SV2は全体で鋸波状に変化するような波形になっており、これにより、図8に示した水平走査ラインの傾きを抑制し、ほぼ水平な走査ラインを描画することができる。
【0075】
以下に、その原理を具体的に説明する。
【0076】
図9は、垂直走査素子12bの偏向角度を説明するための模式図である。図9には、垂直走査素子12bから投写面13までの走査系の部分を、垂直走査方向と直交する方向から見た状態が模式的に示されている。
【0077】
図9において、S、H、V、SCはそれぞれ、垂直走査素子12b、水平走査素子12a―2、垂直走査素子12a―1、投写面13それぞれの位置を示す。Hxは垂直走査素子12bと水平走査素子12aの間の距離を示し、Hyは水平走査素子12a―2と垂直走査素子12a―1の間の距離を示し、SCxは垂直走査素子12a―1と投射面13の間の距離を示す。θは、垂直走査素子12bによる光ビームの偏向角度、ψは垂直走査素子12a―1による光ビームの偏向角度を示す。
【0078】
1ライン走査の場合、水平走査素子12a―2上でのずれHyは、以下の式で与えられる。
【0079】
【数1】
【0080】
垂直走査素子12a―1上でのずれVyは、以下の式で与えられる。
【0081】
【数2】
【0082】
投射面13上でのずれSCxは、以下の式で与えられる。
【0083】
【数3】
【0084】
で与えられる。
【0085】
一方、nライン同時描画の場合、投写面13上でのずれSCy(n)は、以下の式で与えられる。
【0086】
【数4】
【0087】
ここで、Lyは水平方向に1ライン走査したときの垂直走査素子12bの最大走査幅(例えば、図7に示した、ビームスポット1aからなる走査ラインの中心線とビームスポット1bからなる走査ラインの中心線との間隔)、nはライン数、Mは最大ライン数である。また、不連続の場合は、
Ly(n)=(0.5−(N−1)/(M−1)×Ly
である。ここで、N=1,2,...,nの中の任意の数値である。
【0088】
垂直走査制御部103の偏向角度θの最大値が、上記の条件における、ずれSCy(n)の範囲内となるように、垂直走査信号SV2の鋸波状の変化部分の傾きを決定する。これにより、複数ライン同時描画において、ほぼ水平な走査ラインを描画することができ、ほぼ長方形の画面を提供することができる。
【0089】
例えば、投射角ψが±40°であり、解像度がXGA(1024×768)であり、投射距離が300mmである場合、スクリーンサイズは、504mm(=300mm×tan40×2)であり、水平1ラインの間隔は、0.66mm(=504mm÷768本)である。この場合、垂直方向における最大シフト量は、±0.33(=0.66mm÷2)である。垂直走査素子12bと水平走査素子12a−2との距離Hxは10mm、水平走査素子12a−2と垂直走査素子12a−1との距離Vxは6mmである。
【0090】
上記の条件において、垂直走査素子12bの偏向角度θを±0.04°とすると、ほぼ水平な走査ラインを形成することができる。
【0091】
また、水平走査素子12a−2上でのずれ量Hyは0.006mmであり、垂直走査素子12a−1上でのずれ量Vyは0.011mmであり、投射面13上でのずれ量ΔSCyは0.368mmである。垂直走査制御部103の最大偏向角度である±0.04°は、ずれ量ΔSCyである0.368mmの範囲内であり、隣接する走査ライン間で、ビームスポットの一部が重なることはない。
【0092】
また、本実施形態の走査型表示装置によれば、複数の水平走査ラインを同時に描画することにより、高解像度化に加えて、以下のような効果を奏することもできる。
【0093】
nライン描画を同時に行う場合、水平走査素子12a―2の速度(動作周波数)は、
[ライン数]×[リフレッシュレート]÷2÷n
で与えられる。垂直走査素子12bの速度(動作周波数)は、
[水平走査素子12a―2の速度]×n×水平解像度
で与えられる。
【0094】
例えば、2ライン同時描画によりXGA(1024×768)の解像度を実現する場合、リフレッシュレートが60Hzであると、水平走査素子12a―2の速度は、11.52KHz(=768本×60Hz÷2÷2)であり、垂直走査素子12bの速度は約23.64MHz(=11.52KHz×2×1024)である。これらの速度を満たすために、水平走査素子12a―2はMEMSミラー等により実現可能であり、垂直走査素子12bは、電気光学(EO)素子や音響光学(AO)素子等に実現可能である。
【0095】
また、3ライン同時描画によりWUXGA(1920×1200)の解像度を実現する場合、リフレッシュレートが60Hzであると、水平走査素子12a―2の速度は、12KHz(=1200本×60Hz÷2÷3)であり、垂直走査素子12bの速度は69.1MHz(=12KHz×3×1920)である。これらの速度を満たすために、水平走査素子12a―2はMEMSミラー等により実現可能であり、垂直走査素子12bは、電気光学(EO)素子や音響光学(AO)素子等に実現可能である。
【0096】
一方、垂直走査素子12bを用いない構成においては、例えば、WUXGAの解像度を実現する場合、水平走査素子12a―2の速度は、36KHz(=1200本×60Hz÷2)である。このような速度の水平走査素子12a―2をMEMSミラーで実現することは困難である。
【0097】
また、10ライン同時描画により4K2K(DCI 4096×2160)の解像度を実現する場合、リフレッシュレートが120Hzであると、水平走査素子12a―2の速度は、25.92KHz(=2160本×120Hz÷2÷10)であり、垂直走査素子12bの速度は、約1.06GHz(=25.92KHz×10×4096)である。これらの速度を満たすために、水平走査素子12a―2はMEMSミラー等により実現可能であり、垂直走査素子12bは、電気光学(EO)素子や音響光学(AO)素子等に実現可能である。
【0098】
一方、垂直走査素子12bを用いない構成においては、例えば、4K2Kの解像度を実現する場合、水平走査素子12a―2の速度は、259.2KHz(=2160本×120Hz÷2)である。このような速度の水平走査素子12a―2をMEMSミラーで実現することは困難である。
【0099】
以上のように、本実施形態によれば、垂直走査素子12a―1および水平走査素子12a―2に加えて、垂直走査素子12bを用いることで、水平走査素子12a―2の速度に対する設計の余裕度が増大し、それにより、走査系のコストを削減することが可能となる。
【0100】
なお、本実施形態の走査型表示装置は、本発明の一例であり、その構成は適宜に変更することができる。
【0101】
例えば、高解像度化の観点からすると、垂直走査素子103によって生成される垂直走査信号SV2は、信号レベル全体が鋸波状に変化するものでなくてもよい。すなわち、垂直走査素子103は、図6に示した例において、傾きを持たない垂直走査信号SV2を生成してもよい。ただし、この場合は、往路および復路のうちの一方でのみ描画が行われる。
【0102】
また、図6に示した例では、タイミング制御部100は、垂直走査信号SV2の周期の1/2の周期のタイミング信号S3を生成しているが、これに限定されない。例えば、タイミング制御部100は、垂直走査信号SV2の周期を3以上の整数の値で割った値を周期とするタイミング信号S3を生成してもよい。
【0103】
本実施形態の走査型表示装置において、投射面13に投射される光ビームのアスペクト比は適宜に設定することができる。ここで、光ビームのアスペクト比は、光ビームの長軸方向と短軸方向の広がり角度の比である。ここでは、垂直方向の広がり角度に対する水平方向の広がり角度の比である。
【0104】
図10に、4ライン同時描画で、アスペクト比が1である場合のビームスポットの一例を示す。図10に示すように、複数のビームスポット1aからなる第1の水平走査ラインと、複数のビームスポット1bからなる第2の水平走査ラインと、複数のビームスポット1cからなる第3の水平走査ラインと、複数のビームスポット1dからなる第4の水平走査ラインが、同時に描画される。ビームスポット1a〜1dの形状は、いずれも略真円状である。
【0105】
図10に示したものでは、垂直方向において、ビームスポット1a〜1dからなる縦ラインが形成される。この縦ラインは、一定の間隔で水平方向に並んでいる。この場合は、縦ラインの間の隙間が目視され、それにより画質が低下する。
【0106】
図11に、4ライン同時描画で、アスペクト比が2である場合のビームスポットの一例を示す。図10に示すように、複数のビームスポット1aからなる第1の水平走査ラインと、複数のビームスポット1bからなる第2の水平走査ラインと、複数のビームスポット1cからなる第3の水平走査ラインと、複数のビームスポット1dからなる第4の水平走査ラインが、同時に描画される。ビームスポット1a〜1dの形状は、いずれも横長の楕円の形状である。
【0107】
図11に示したものでは、垂直方向において、ビームスポット1a〜1dからなる縦ラインが形成されるが、ビームスポットの形状が横長であるため、縦ライン間の隙間は目視されない。したがって、図10に示したものと比較して、縦ライン間の隙間が目立たないため、画質が向上する。
【0108】
シリンドリカルレンズ等の光学系を用いて、光源部11からの光ビームのアスペクト比を変えることができる。具体的には、光ビームを垂直方向において集光し、水平方向においては集光しないように、シリンドリカルレンズを配置することで、図11に示したような横長の形状の光ビームを得ることができる。この他、光源がLD等の光源よりなる場合は、出射面に、出射光の広がり方向を制御する凹凸構造を形成し、その凹凸構造の凹部または凸部の配置を、所望のアスペクト比が得られるように設定してもよい。
【0109】
アスペクト比は、1以上、同時描画ライン数未満が望ましい。この範囲によれば、隣接するビームスポットの重なりによる画質低下を抑制することができる。
【0110】
また、垂直走査素子12bの位置は、図1に示した位置に限定されない。光源部11からの光ビームが、2次元走査部12aを介して垂直走査素子12bに入射するように構成してもよい。また、光源11−R、11−G、11−Bのそれぞれの光路に垂直走査素子12bを配置してもよい。
【0111】
図3に示した構成において、垂直走査素子12a―1と水平走査素12a―2は逆の配置であってもよい。
【0112】
(第2の実施形態)
第1の実施形態のものにおいては、例えば、図10や図11に示した4ライン同時描画を行った場合、第1乃至第4の走査ラインからなるライン群の左右の端部は、斜めのカットされた直線形状になっている。このため、第1乃至第4の走査ラインからなるライン群を垂直方向に並べて画像を構成すると、それぞれのライン群の端部がギザギザの形状に見えてしまう。
【0113】
ここでは、上記の画像の端部がギザギザの形状に見えてしまうという問題を解決することができる形態について説明する。
【0114】
本発明の第2の実施形態である走査型表示装置は、第1の実施形態と同様、制御部10、光源部11および走査手段12を有するが、制御部10の一部の動作が、第1の実施形態のものと異なる。
【0115】
具体的には、図3に示した構成において、垂直走査制御部103により生成される垂直走査信号SV2と、タイミング制御部100により生成されるタイミング信号S3が第1の実施形態ものと異なる。
【0116】
図12に、垂直走査信号SV2とタイミング信号S3の対応関係を示す。図12に示すように、垂直走査制御部103は、パルス幅の異なる2つの矩形波形よりなる波形パターンの繰り返しよりなる垂直走査信号SV2を生成する。タイミング制御部100は、垂直走査信号SV2の立ち上がりタイミングおよび立ち下りタイミングのそれぞれで矩形のパルスが生成されたタイミング信号S3を生成する。
【0117】
なお、水平走査信号SHと垂直走査信号SV1、SV2の関係は図4および図5に示したとおりである。
【0118】
図4、図5、および図12に示した条件で光源部11、垂直走査素子12a−1、12bおよび水平走査素子12a―2を駆動した場合、図13に示すように、複数のビームスポット1aからなる第1の水平走査ラインと、複数のビームスポット1bからなる第2の水平走査ラインと、複数のビームスポット1cからなる第3の水平走査ラインと、複数のビームスポット1dからなる第4の水平走査ラインが、同時に描画される。
【0119】
第1乃至第4の水平走査ラインの開始位置は、互いに異なる。このように、第1乃至第4の水平走査ラインの開始位置を不連続なものとすることで、上述した画像の端部における縦方向のギザギザが軽減して見える。
【0120】
(第3の実施形態)
ここでは、第2の実施形態で説明した、画像の端部がギザギザの形状に見えてしまうという問題を解決することができる別の形態について説明する。
【0121】
本発明の第3の実施形態である走査型表示装置は、第1の実施形態と同様、制御部10、光源部11および走査手段12を有するが、制御部10の一部の動作が、第1の実施形態のものと異なる。
【0122】
図14は、制御部10の構成を示すブロック図である。
【0123】
図14に示すように、制御部10は、タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102、103および水平走査制御部104を有する。タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102および水平走査制御部104は、第1の実施形態のものと同じである。
【0124】
垂直走査制御部103は、水平走査制御部104からの水平走査信号SHおよび同期信号S2をそれぞれ入力とし、水平走査信号SHに対する位相差をそれぞれ0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°とした、8つの垂直走査信号SV2を生成することができ、フレーム毎に、それら垂直走査信号SV2を順次切り換えて出力する。例えば、垂直走査制御部103は、nフレームにおいて、水平走査信号SHに対する位相差を0°または180°とした垂直走査信号SV2を出力し、(n+1)フレームにおいて、水平走査信号SHに対する位相差を135°または315°とした垂直走査信号SV2を出力し、(n+2)フレームにおいて、水平走査信号SHに対する位相差を90°または270°とした垂直走査信号SV2を出力し、(n+3)フレームにおいて、水平走査信号SHに対する位相差を45°または225°とした垂直走査信号SV2を出力する。
【0125】
図13に、4ライン同時描画において、nフレームから(n+3)フレームの4つのフレームについて、垂直走査信号SV2の水平走査信号SHに対する位相差を変化させた場合の描画状態を模式的に示す。
【0126】
図13に示すように、各フレームにおいて、第1乃至第4の水平走査ラインからなるライン群が形成される。
【0127】
nフレームにおいて、ライン群のうち、第1の水平走査ラインの開始位置が最も左端に配置されている。第2の水平走査ラインの開始位置は、第1の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第3の水平走査ラインの開始位置は、第2の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第4の水平走査ラインの開始位置は、第3の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置されている。
【0128】
(n+1)フレームにおいて、ライン群のうち、第4の水平走査ラインの開始位置が最も左端に配置されている。第3の水平走査ラインの開始位置は、第4の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第2の水平走査ラインの開始位置は、第3の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第1の水平走査ラインの開始位置は、第2の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置されている。
【0129】
(n+2)フレームにおいて、ライン群のうち、第3の水平走査ラインの開始位置が最も左端に配置されている。第4の水平走査ラインの開始位置は、第3の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第1の水平走査ラインの開始位置は、第4の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第2の水平走査ラインの開始位置は、第1の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置されている。
【0130】
(n+3)フレームにおいて、ライン群のうち、第2の水平走査ラインの開始位置が最も左端に配置されている。第1の水平走査ラインの開始位置は、第2の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第4の水平走査ラインの開始位置は、第2の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第3の水平走査ラインの開始位置は、第4の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置されている。
【0131】
上述のように、nフレームから(n+3)フレームの4つのフレームにおいて、ライン群における各水平走査ラインの開始位置をフレーム毎に変化させると、人間の眼には、残像現象により、各フレームにおけるライン群の画像が時間的に積分されたものとして見える。これにより、上述した画像の端部における縦方向のギザギザが軽減して見える。
【0132】
(第4の実施形態)
図15は、本発明の第4の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【0133】
図15に示すように、本実施形態の走査型表示装置は、垂直走査素子12bを2次元走査部12aからの光ビームが入射するように配置されている。この点以外は、第1の実施形態に記載のものと同じである。
【0134】
本実施形態の走査型表示装置では、光源部11からの光ビームは、2次元走査部12aによって水平方向および垂直方向に走査されるとともに、垂直走査素子12bによって、垂直方向に微小な角度で走査される。この構成によれば、垂直走査素子12b上におけるビームの位置ずれは、第1の実施形態のもより小さくなるので、画質が向上する。
【0135】
本実施形態において、第2または第3の実施形態で説明した構成を採用してもよい。
【0136】
(第5の実施形態)
図16は、本発明の第5の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【0137】
図16に示すように、本実施形態の走査型表示装置は、垂直走査素子12bの構成および配置が異なる以外は、第1の実施形態に記載のものと同様のものである。
【0138】
垂直走査素子12bは、垂直走査素子12b−R、12b−G、12b−Bを有する。
【0139】
垂直走査素子12b−Rは、光源11−Rの光路中の、コリメートレンズ110とミラー111の間に設けられおり、光源11−Rからの赤色の光ビームがコリメートレンズ110を介して入射する。
【0140】
垂直走査素子12b−Gは、光源11−Gの光路中の、コリメートレンズ110とダイクロイックミラー112の間に設けられおり、光源11−Gからの緑色の光ビームがコリメートレンズ110を介して入射する。
【0141】
垂直走査素子12b−Bは、光源11−Bの光路中の、コリメートレンズ110とダイクロイックミラー113の間に設けられおり、光源11−Bからの青色の光ビームがコリメートレンズ110を介して入射する。
【0142】
本実施形態の走査型表示装置では、光源11−Rからの赤色の光ビームは、垂直走査素子12b−Rによって微小な角度で垂直方向に走査され、その後、2次元走査部12aによって水平方向および垂直方向に走査される。光源11−Gからの緑色の光ビームは、垂直走査素子12b−Gによって微小な角度で垂直方向に走査され、その後、2次元走査部12aによって水平方向および垂直方向に走査される。光源11−Bからの青色の光ビームは、垂直走査素子12b−Bによって微小な角度で垂直方向に走査され、その後、2次元走査部12aによって水平方向および垂直方向に走査される。
【0143】
制御部10は、垂直走査素子12b−R、12b−G、12b−Bをそれぞれ制御するとともに、光源11−R、11−G、11−Bそれぞれの発光タイミングを制御する。これらの制御において、制御部10は、ダイクロイックミラー112、113の組立時に生じる光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれを補正する。
【0144】
図17に、制御部10の構成を示す。
【0145】
図17に示すように、制御部10は、タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102、103、水平走査制御部104およびテーブル105を有する。LD制御部101、垂直走査制御部102および水平走査制御部104は、第1の実施形態のものと同じである。
【0146】
テーブル105は、ダイクロイックミラー112、113の組立時に生じる光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれを補正するためのデータを格納する。
【0147】
図18に、ダイクロイックミラー112、113の組立時に生じる光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれによるビームスポットの位置ずれを模式的に示す。
【0148】
組立精度が高くないため、図18に示すように、投射面13上において、赤色のビームスポット200Rと緑色のビームスポット200Gと青色のビームスポット200Bとの間で位置ずれが生じる場合がある。
【0149】
図18に示した例では、赤色のビームスポット200Rと比較して、青色のビームスポット200Bは、垂直方向にDVだけずれており、水平方向にDHだけずれている。垂直方向の位置ずれDVから、光源11−Rからの赤色の光ビームに対する光源11−Bからの青色の光ビームの垂直方向の角度ずれを算出することができる。水平方向の位置ずれDHから、光源11−Rからの赤色の光ビームに対する光源11−Bからの青色の光ビームの水平方向の角度ずれを算出することができる。
【0150】
同様にして、光源11−Rからの赤色の光ビームに対する光源11−Gからの緑色の光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれも算出することができる。図18に示した例では、赤色のビームスポット200Rに対する緑色のビームスポット200Gの位置ずれは水平方向のみであるので、光源11−Rからの赤色の光ビームに対する光源11−Gからの緑色の光ビームの水平方向の角度ずれが算出される。
【0151】
上述のようにして算出した、光源11−G、11−Bの光源11−R(基準となる光源)に対する垂直方向および水平方向の角度ずれ量がテーブル105に格納される。
【0152】
タイミング制御部100は、タイミング信号S3を生成するとともに、テーブル105に格納された光源の水平方向の角度ずれ量に基づいて、光源11−R、11−G、11−Bの間の発光タイミングを調整するための位相差を示す位相差信号S5を生成する。位相差信号S5は、タイミング信号S3とともにLD制御部101に供給される。
【0153】
また、タイミング制御部100は、テーブル105に格納された光源の垂直方向の角度ずれ量に基づいて、光源11−R、11−G、11−Bそれぞれに対応して設けられた垂直走査素子12b−R、12b−G、12b−Bの間の位相差を示す位相差信号S6を生成する。位相差信号S6は、垂直走査制御部103に供給される。
【0154】
次に、本実施形態の走査型表示装置の動作について説明する。ここでは、図18に示した位置ずれが生じており、テーブル105が、光源11−Gの光源11−Rに対する水平方向の角度ずれ量と、光源11−Bの光源11−Rに対する垂直方向および水平方向の角度ずれ量とを保持しているものと仮定する。
【0155】
タイミング制御部100は、テーブル105に格納された光源11−Gの水平方向の角度ずれ量に基づいて、光源11−Gの光源11−Rに対する位相差を示す第1の位相差信号を生成するとともに、テーブル105に格納された光源11−Bの水平方向の角度ずれ量に基づいて、光源11−Bの光源11−Rに対する位相差を示す第2の位相差信号を生成する。タイミング制御部100は、生成した第1および第2の位相差信号を含む位相差信号S5をLD制御部101に供給する。
【0156】
また、タイミング制御部100は、テーブル105に格納された光源11−Bの垂直方向の角度ずれ量に基づいて、垂直走査素子12b−Bの垂直走査素子12b−Rに対する位相差を示す位相差信号S6を生成し、それを垂直走査制御部103に供給する。
【0157】
LD制御部101は、画像信号S1とタイミング信号S3とに基づいて、赤用駆動信号、緑用駆動信号、青用駆動信号をそれぞれ生成する。そして、LD制御部101は、位相差信号S5に含まれている第1の位相差信号に基づいて、緑用駆動信号の赤用駆動信号に対する位相を調整するとともに、位相差信号S5に含まれている第2の位相差信号に基づいて、青用駆動信号の赤用駆動信号に対する位相を調整する。
【0158】
光源11−Rは、赤用駆動信号に従って点灯する。光源11−Gは、相調整後の緑用駆動信号に従って点灯する。光源11−Bは、位相調整後の青用駆動信号に従って点灯する。この動作により、光源11−R、11−G、11−Bの間の光ビームの水平方向の角度ずれが補正される。
【0159】
垂直走査制御部103は、同期信号S2に基づいて、垂直走査素子12b−R、12b−G、12b−Bに対する、赤用垂直走査信号、緑用垂直走査信号、青用垂直走査信号を生成する。そして、垂直走査制御部103は、タイミング制御部100からの位相差信号S6に基づいて、赤用垂直走査信号に対する青用垂直走査信号の位相を調整する。
【0160】
垂直走査素子12b−Rは、赤用垂直走査信号に従って動作する。垂直走査素子12b−Gは、緑用垂直走査信号に従って動作する。垂直走査素子12b−Bは、位相調整後の青用垂直走査信号に従って動作する。この動作により、光源11−R、11−G、11−Bの間の光ビームの垂直方向の角度ずれが補正される。
【0161】
本実施形態において、第2または第3の実施形態で説明した構成を採用してもよい。
【0162】
以上説明した各実施形態において、走査方向は、第1の方向とこの第1の方向と交差する第2の方向としてもよい。この場合、第1の方向を垂直走査方向とし、第2の方向を水平走査方向としてもよい、また、第1の方向を水平走査方向とし、第2の方向を垂直走査方向としてもよい。
【0163】
走査手段は、光ビームを第1の方向に走査する第1方向走査手段と、光ビームを第2の方向に走査する第2方向走査手段とを有していても良い。
【符号の説明】
【0164】
10 制御部
11 光源部
12 走査手段
13 投射面
12a 2次元走査部
12b 垂直走査素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを走査して被投射面上に画像を表示する走査型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ビームを水平方向および垂直方向に走査するとともに、水平走査において、往路と復路のそれぞれで描画を行う表示装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の表示装置は、補正走査装置、水平走査装置および垂直走査装置からなる走査系を有する。
【0004】
補正走査装置は、光源からの光ビームを垂直方向に走査する。補正走査装置からの光ビームは、水平走査装置に入射する。
【0005】
水平走査装置は、補正走査装置からの光ビームを水平方向に走査する。水平走査装置からの光ビームは、垂直走査装置に入射する。
【0006】
垂直走査装置は、水平走査装置からの光ビームを垂直方向に走査する。垂直走査装置からの光ビームは、投射面上に照射される。
【0007】
鋸波状の垂直駆動信号が垂直走査装置に供給され、正弦波状の水平駆動信号が水平走査装置に供給される。水平駆動信号の周波数は、垂直駆動信号に比べて十分に高い。
【0008】
補正走査装置は、投射面上の走査ラインの傾きを調整するものであって、その振れ幅は、水平走査装置や垂直走査装置と比較して十分に小さい。補正走査装置の駆動信号の周波数は、水平走査装置の水平駆動信号の2倍である。
【0009】
補正走査装置、水平走査装置および垂直走査装置として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーに代表される小型の共振ミラーを用いることができる。
【0010】
補正走査装置なしで、水平走査装置および垂直走査装置で走査した場合、図19に示すように、往路においては、右下がりの走査ライン300aが形成され、復路においては、左下がりの走査ライン300bが形成される。このように走査ラインが傾くと、投射面の端部近傍において、画素の間隔が小さくなり、その結果、隣接する画素が互いに重なって、画質が低下する場合がある。
【0011】
補正走査装置は、往路および復路のそれぞれで、走査ラインが水平になるように、垂直方向の走査角度を調整する。図20に、調整後の走査ラインを模式的に示す。図20に示すように、往路および復路のそれぞれで、略水平な走査ライン300が形成される。
【0012】
特許文献2には、スペックルの低減を目的に、水平方向の走査を行うポリゴンスキャナと、垂直方向の走査を行うガルバノスキャナと、ビームを垂直方向に微小な角度で振動させるビーム振動手段と、を有する画像表示装置が記載されている。
【0013】
上記の画像表示装置によれば、1水平走査期間に複数回、垂直方向にビームを振動させることでスペックルを低減する。ここで、スペックルとは、レーザ光のコヒーレンスに起因する斑点上のノイズである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4490019号
【特許文献2】国際公開2005/083492
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1、2に記載の表示装置においては、小型で高解像度の装置を提供することが困難であるという問題がある。以下に、高解像度化における問題を具体的に説明する。
【0016】
特許文献1に記載の表示装置において、水平走査装置の駆動信号の周波数を高くすることで、高解像度化を図ることができる。しかし、水平走査装置はMEMSミラー等の小型の共振ミラーよりなるので、その駆動速度及び動作周波数には限界があり、その限界を超えて解像度を高くすることはできない。例えば、WUXGA(1920×1200)の画面に対応する場合、水平走査装置の駆動周波数は36KHzであり、現状では、そのような駆動周波数で動作する小型の共振ミラーを提供することは困難である。
【0017】
また、水平走査装置の振れ角を小さくすると、1回の走査にかかる時間が短くなる。このため駆動周波数を大きくすることができるため、水平走査線数を増大し、解像度を高くすることができる。しかし、この場合は、水平走査装置の振れ角を小さくしたことによって画面が小さくなる。
【0018】
特許文献2に記載のものにおいては、ポリゴンスキャナやガルバノスキャナを用いているので、装置が大型化するという問題がある。ポリゴンスキャナやガルバノスキャナに代えてMEMSミラー等の小型の共振ミラーを用いることで小型化を図ることができるが、この場合は、上記の高解像度化における問題を生じる。
【0019】
本発明の目的は、高解像度化を図ることができる、小型の走査型表示装置、および画像表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の走査型表示装置は、
光ビームを出射する光源部と、
投射面上で光源部からの光ビームを、第1の方向および/または該第1の方向と交差する第2の方向に走査する走査手段と、
走査手段を制御し、光源部の発光タイミングを制御して、投射面上に複数の走査線からなる画像を表示させる制御部と、を有し、
走査手段は、
第1の走査周期で第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、
第1の走査周期より短い第2の走査周期で第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、
第2の走査周期より短い第3の走査周期で第1の方向の走査を行う、最大走査角が第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子と、を有し、
制御部は、第3の走査周期に同期して光源部の発光タイミングを制御し、第2の方向において、一端から他端へ向かう1度の走査で、2以上の走査線を描画させる。
【0021】
本発明の画像表示方法は、光源部からの光ビームを投射面上で第1の方向および/または該第1の方向と交差する第2の方向に走査し、光源部の発光タイミングを制御して、投射面上に複数の走査線からなる画像を表示させる画像表示方法であって、
第1の走査周期で第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、第1の走査周期より短い第2の走査周期で第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、第2の走査周期より短い第3の走査周期で第1の方向の走査を行う、最大走査角が第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子とを同期させて制御し、
第3の走査周期に同期して光源部の発光タイミングを制御し、第2の方向において、一端から他端へ向かう1度の走査で、2以上の走査線を描画させることを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、小型で高解像度の走査型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す走査型表示装置の光源部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す走査型表示装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す走査型表示装置にて用いられる第1の垂直走査信号と水平走査信号との対応関係を示すタイミングチャートである。
【図5】図1に示す走査型表示装置にて用いられる水平走査信号と第2の垂直走査信号との対応関係を示すタイミングチャートである。
【図6】図1に示す走査型表示装置における、第2の垂直走査信号とタイミング信号と往路または復路に同時に描画される2ラインの各画素の発光タイミングとの対応関係を示すタイミングチャートである。
【図7】2ライン同時描画の画像の一例を示す模式図である。
【図8】比較例としての1ライン描画の画像の一例を示す模式図である。
【図9】図1に示す走査型表示装置の第2の垂直走査素子の偏向角度を説明するための模式図である。
【図10】4ライン同時描画で、アスペクト比が1である場合のビームスポットの一例を示す模式図である。
【図11】4ライン同時描画で、アスペクト比が2である場合のビームスポットの一例を示す模式図である。
【図12】本発明の第2の実施形態である走査型表示装置にて用いられる第2の垂直走査信号とタイミング信号の対応関係を示すタイミングチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態の走査型表示装置で描画される水平走査ラインの模式図である。
【図14】本発明の第3の実施形態である走査型表示装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3の実施形態の走査型表示装置にて行われる4ライン同時描画における、nフレームから(n+3)フレームの4つのフレームについて、第2の垂直走査信号の水平走査信号に対する位相差を変化させた場合の描画状態を示す模式図である。
【図16】本発明の第5の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【図17】図16に示す走査型表示装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図18】図16に示す走査型表示装置のダイクロイックミラーの組立時に生じる光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれによるビームスポットの位置ずれを示す模式図である。
【図19】走査型表示装置における水平走査ラインの傾きを説明するための模式図である。
【図20】特許文献1に記載の表示装置による水平走査ラインの傾きの調整を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示す走査型表示装置は、レーザプロジェクタに代表される表示装置であって、光ビームを出力する光源部11と、光源部11からの光ビームを水平方向および垂直方向に走査する走査手段12と、走査手段12を制御するとともに、光源部11の発光タイミングを制御して投射面13上に画像を表示させる制御部10とを有する。
【0027】
投射面13には、透過型の拡散スクリーン、反射型の拡散スクリーン、反射型の半透明スクリーン、蛍光スクリーン等を用いることができる。
【0028】
走査手段12は、2次元走査部12aおよび垂直走査素子12bを有する。
【0029】
2次元走査部12aは、水平方向の走査を行う水平走査素子と、垂直方向の走査を行う垂直走査素子とを有する。2次元走査部12aは、これら水平走査素子および垂直走査素子を一体的に組み込んだ2次元走査素子であってもよい。2次元走査素子は、例えば、MEMSより構成してもよい。
【0030】
垂直走査素子12bは、光源部11と2次元走査部12aの間に配置されており、光源部11からの光ビームを垂直方向に走査するが、その最大走査角(ビームの振れ角の最大値)は、2次元走査部12aの垂直方向における最大走査角より十分に小さい。垂直走査素子12bで走査された光ビームは、2次元走査部12aに入射する。垂直走査素子12bとして、電気光学(EO)素子、音響光学(AO)素子、高速駆動レンズ、MEMSミラー等を用いることができる。
【0031】
光源部11は、図2に示すように、光源11R、11G、11B、第1乃至第3のコリメートレンズ110、ミラー111、およびダイクロイックミラー112、13を有する。
【0032】
光源11Rは、赤色の波長帯域にピーク波長を有する光源であり、例えば、発光色が赤色である、LEDや半導体レーザよりなる。また固体光源以外の場合は、光変調器を含む。
【0033】
光源11Gは、緑色の波長帯域にピーク波長を有する光源であり、例えば、発光色が緑色である、LEDや半導体レーザよりなる。また固体光源以外の場合は、光変調器を含む。
【0034】
光源11Bは、青色の波長帯域にピーク波長を有する光源であり、例えば、発光色が青色である、LEDや半導体レーザよりなる。また固体光源以外の場合は、光変調器を含む。
【0035】
光源11Rから出力された赤色のビーム光の進行方向に、第1のコリメートレンズ110、ミラー111が配置されている。光源11Rからの赤色のビーム光は、第1のコリメートレンズ110によって平行光束化された後、ミラー111に入射する。ミラー111は、入射した赤色のビーム光を所望の角度で反射する。
【0036】
光源11Gから出力された緑色のビーム光の進行方向に、第2のコリメートレンズ110、ダイクロイックミラー112が配置されている。光源11Gからの緑色のビーム光は、第2のコリメートレンズ110によって平行光束化された後、ダイクロイックミラー112の一方の面に入射する。
【0037】
ミラー111からの赤色の光ビームの中心光線は、第2のコリメートレンズ110によって平行光束化された緑色の光ビームの中心光線と直交しており、その交点に、ダイクロイックミラー112が配置されている。
【0038】
ダイクロイックミラー112は、赤色の波長の光を透過させ、それ以外の波長の光を反射する分光透過特性を有する。ミラー111からの赤色の光ビームは、ダイクロイックミラー112を透過する。第2のコリメートレンズ110からの緑色の光ビームは、ダイクロイックミラー112によって略90度の角度で反射され、その反射光は、赤色の光ビームの透過光と同じ方向に向かう。
【0039】
光源11Bから出力された青色のビーム光の進行方向に、第3のコリメートレンズ110、ダイクロイックミラー113が配置されている。光源11Bからの青色のビーム光は、第3のコリメートレンズ110によって平行光束化された後、ダイクロイックミラー113の一方の面に入射する。
【0040】
ダイクロイックミラー112からの赤色および緑色の光ビームの中心光線は、第3のコリメートレンズ110によって平行光束化された青色の光ビームの中心光線と直交しており、その交点に、ダイクロイックミラー113が配置されている。
【0041】
ダイクロイックミラー113は、赤色および緑色の波長の光を透過させ、それ以外の波長の光を反射する分光透過特性を有する。ダイクロイックミラー112からの赤色および緑色の光ビームは、ダイクロイックミラー113を透過する。第3のコリメートレンズ110からの青色の光ビームは、ダイクロイックミラー113によって略90度の角度で反射され、その反射光は、赤色および緑色の光ビームの透過光と同じ方向に向かう。
【0042】
光源部11からの赤色、緑色、青色の光ビームはそれぞれ、垂直走査素子12bに入射する。
【0043】
制御部10は、2次元走査部12aおよび垂直走査素子12bを制御するとともに、光源11R、11G、11Bそれぞれの発光タイミングを制御して投射面13上に画像を表示させる。
【0044】
図3は、制御部10の構成の一例を示すブロック図である。図3には、2次元走査部12aが垂直走査素子12a―1および水平走査素子12a―2からなる場合の制御部10の構成が示されている。
【0045】
図3を参照すると、制御部10は、タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102、103および水平走査制御部104を有する。
【0046】
画像信号S1が、外部装置からLD制御部101に供給される。外部装置は、例えばパーソナルコンピュータ等の映像供給装置である。画像信号S1は、赤色、緑色、青色の各色の画像信号を含む。例えば、各色の画像が時分割で表示される場合、画像信号S1として、それぞれの色の画像信号が時分割で供給される。各色の画像が同時に表示される場合は、画像信号S1は、それぞれの色の画像信号を含む。
【0047】
同期信号S2は、画像信号S1に基づく画像の表示における垂直同期および水平同期をとるための信号(垂直同期信号および水平同期信号)であって、外部装置から制御部10に供給される。同期信号S2は、タイミング制御部100、垂直走査制御部101、102および水平走査制御部103のそれぞれに供給される。
【0048】
例えば、各色の画像が時分割で表示される場合は、同期信号S2として、それぞれの色の画像信号に対応する同期信号が時分割で供給される。各色の画像が同時に表示される場合は、同期信号S2として、各色の画像信号に共通の同期信号が供給される。
【0049】
タイミング制御部100は、同期信号S2に基づいて、光源11R、11G、11Bそれぞれの発光タイミングを示すタイミング信号S3を生成する。タイミング信号S3は、タイミング制御部100からLD制御部100に供給される。
【0050】
LD制御部100は、画像信号S1とタイミング制御部100からのタイミング信号S3とに基づいて、光源11R、11G、11Bをそれぞれ駆動するための駆動信号S4を生成する。駆動信号S4は、光源11Rを駆動する赤用駆動信号、光源11Gを駆動する緑用駆動信号、光源11Bを駆動する青用駆動信号を含む。
【0051】
光源部11では、光源11Rが赤用駆動信号に従って点灯し、光源11Gが緑用駆動信号に従って点灯し、光源11Bが青用駆動信号に従って点灯する。
【0052】
垂直走査制御部102は、同期信号S2に含まれる垂直同期信号に基づいて垂直走査素子12a―1を動作させるための垂直走査信号SV1を生成する。垂直走査素子12a―1は、垂直走査制御部102からの垂直走査信号SV1に従って垂直走査を行う。
【0053】
垂直走査制御部103は、同期信号S2に含まれる水平同期信号に基づいて垂直走査素子12bを動作させるための垂直走査信号SV2を生成する。垂直走査素子12bは、垂直走査制御部103からの垂直走査信号SV2に従って垂直走査を行う。
【0054】
水平走査制御部104は、同期信号S2に含まれる水平同期信号に基づいて水平走査素子12a―2を動作させるための水平走査信号SHを生成する。水平走査素子12a―2は、水平走査制御部104からの水平走査信号SHに従って水平走査を行う。
【0055】
図4は、垂直走査信号SV1と水平走査信号SHとの対応関係を示すタイミングチャートである。
【0056】
図4に示すように、垂直走査信号SV1は鋸波状の信号であって、1フレームの表示期間TFにおいて振幅値が徐々に増大し、その後、垂直ブランキング期間TVBにおいて、振幅値が急激に減少する。
【0057】
垂直ブランキング期間TVBは、例えば、上部から下部まで画面を描画した後に、次の画面を描画するために上部へ戻るための垂直帰線期間を含む。垂直ブランキング期間TVBは、表示期間TFに対して十分に短い。表示期間TFに垂直ブランキング期間TVBを加算した期間が垂直走査信号SV1の周期であり、画面上の1フレームに一致する。垂直走査信号SV1の動作周波数は、画面のリフレッシュレート(例えば、30Hz、60Hz、120Hz・・・)に等しい。
【0058】
一方、水平走査信号SHは正弦波状の信号であって、その周期は、垂直走査信号SV1の周期に比較して十分に小さい。
【0059】
図5は、水平走査信号SHと垂直走査信号SV2との対応関係を示すタイミングチャートである。図6は、垂直走査信号SV2と、タイミング信号S3と往路または復路に同時に描画される2ラインの各画素の発光タイミングとの対応関係を示すタイミングチャートである。図5において、水平走査信号SHは、図4に示したものを部分的に拡大したものであり、図6において、垂直走査信号SV2は、図5に示したものを部分的に拡大したものである。なお、便宜上、図5に示す垂直走査信号SV2は、矩形の部分を破線で模式的に示している。
【0060】
図5に示すように、水平走査信号SHの周期は、1水平表示ライン期間THに水平ブランキング期間THBを加算して2倍した期間に等しい。
【0061】
図5および図6に示すように、垂直走査信号SV2は、矩形形状の信号であって、その周期は、水平走査信号SHの周期より十分に短い。
【0062】
1水平表示ライン期間THにおいて、垂直走査信号SV2の矩形波形の立ち上がり後または立下り後の信号レベルが徐々に増大し、その後、水平ブランキング期間THBにおいて、垂直走査信号SV2の信号レベルが急激に減少する。換言すると、垂直走査信号SV2は全体で、鋸波状の信号を形成しており、この鋸波状の信号の周期の2倍は、水平走査信号SHの周期に等しい。
【0063】
図6に示す例では、1つの光源、例えば光源11Rについて、タイミング信号S3と、NラインおよびN+1ラインの2ラインを描画する際のそれぞれのライン上の画素における発光タイミングを示している。
【0064】
タイミング信号S3は、垂直走査周波数Sv2の立ち上がりタイミングおよび立ち下りタイミングそれぞれでパルスが生成されたものである。タイミング信号S3の周期は、垂直走査周波数Sv2の周期の半分である。
【0065】
例えば、Nラインでは、タイミング信号S3の偶数番目のパルスの立ち上がりタイミング(すなわち、垂直走査信号SV2の矩形波形の立ち上がりのタイミング)で光源11Rが発光する。一方、N+1ラインでは、タイミング信号S3の奇数番目のパルスの立ち上がりタイミング(垂直走査信号SV2の矩形波形の立ち下がりのタイミング)で光源11Rが発光する。ここでは、各画素における発光時間(パルス幅)は、垂直走査信号SV2の矩形の波形の幅に略一致するように、タイミング信号S3と画像信号S1とに基づいて駆動信号S4が生成されている。
【0066】
本実施形態の走査型表示装置では、タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102、垂直走査制御部103、および水平走査制御部104がそれぞれ、図4〜図6に示したような関係を有する、タイミング信号S3、駆動信号S4(赤用駆動信号、緑用駆動信号および青用駆動信号を含む)、垂直走査信号SV1、垂直走査信号SV2、および水平走査信号SHを生成する。なお図4と図5、及び図6のSV2の縦軸は各制御部102〜104に印加する電圧を示すが、図6のS3、Nライン及びN+1ラインの縦軸はタイミングのみを示している。
【0067】
光源11R、11G、11Bが駆動信号S4に従って動作するとともに、垂直走査素子12a―1、垂直走査素子12b、および水平走査素子12a―2がそれぞれ、垂直走査信号SV1、垂直走査信号SV2、および水平走査信号SHに従って動作する。これにより、投射面13上では、光源11R、11G、11Bそれぞれについて、往路および復路のそれぞれで、同時に、2ラインの描画(2ライン同時描画)が行われる。
【0068】
図7に、2ライン同時描画の画像の一例を示し、図8に、比較例として、垂直走査素子12bなしの1ライン描画の画像の一例を示す。
【0069】
図8に示す比較例では、垂直走査素子12bが停止しており、垂直走査素子12a―1および水平走査素子12a―2による走査が行われる。この場合は、左端から右端へ向かう往路時は、右下がりの直線に沿って複数のビームスポット1が形成され、これにより、右下がりの1本の走査ラインが形成される。一方、右端から左端へ向かう復路時は、左下がりの直線に沿って複数のビームスポット1が形成され、これにより、左下がりの1本の走査ラインが形成される。
【0070】
一方、本実施形態の走査型表示装置では、垂直走査素子12a―1および水平走査素子12a―2に加えて、垂直走査素子12bが動作し、この垂直走査素子12bの動作に同期して光源部11の発光タイミングを制御することで、図7に示すような2ライン同時描画が行われる。
【0071】
左端から右端へ向かう往路において、垂直走査素子12bによって光ビームが垂直方向に微小な角度で往復走査され、この走査に同期して光源部11が発光することで、上側にビームスポット1aが形成され、下側にビームスポット1bが形成される。ビームスポット1a、1bは、往路において交互に複数形成される。これにより、複数のビームスポット1aよりなる第1の水平走査ライン(例えば、図6に示したNライン)と、複数のビームスポット1bよりなる第2の水平走査ライン(例えば、図6に示したN+1ライン)とが、同時に形成される。
【0072】
右端から左端へ向かう復路においても、上記の往路と同様に、第1および第2の水平走査ラインが同時に形成される。
【0073】
このように、往路と復路のそれぞれで、複数の水平走査ラインを同時に描画することができるので、比較例と比較して、解像度を高くすることができる。
【0074】
また、本実施形態の走査型表示装置によれば、図5に示したように、垂直走査信号SV2は全体で鋸波状に変化するような波形になっており、これにより、図8に示した水平走査ラインの傾きを抑制し、ほぼ水平な走査ラインを描画することができる。
【0075】
以下に、その原理を具体的に説明する。
【0076】
図9は、垂直走査素子12bの偏向角度を説明するための模式図である。図9には、垂直走査素子12bから投写面13までの走査系の部分を、垂直走査方向と直交する方向から見た状態が模式的に示されている。
【0077】
図9において、S、H、V、SCはそれぞれ、垂直走査素子12b、水平走査素子12a―2、垂直走査素子12a―1、投写面13それぞれの位置を示す。Hxは垂直走査素子12bと水平走査素子12aの間の距離を示し、Hyは水平走査素子12a―2と垂直走査素子12a―1の間の距離を示し、SCxは垂直走査素子12a―1と投射面13の間の距離を示す。θは、垂直走査素子12bによる光ビームの偏向角度、ψは垂直走査素子12a―1による光ビームの偏向角度を示す。
【0078】
1ライン走査の場合、水平走査素子12a―2上でのずれHyは、以下の式で与えられる。
【0079】
【数1】
【0080】
垂直走査素子12a―1上でのずれVyは、以下の式で与えられる。
【0081】
【数2】
【0082】
投射面13上でのずれSCxは、以下の式で与えられる。
【0083】
【数3】
【0084】
で与えられる。
【0085】
一方、nライン同時描画の場合、投写面13上でのずれSCy(n)は、以下の式で与えられる。
【0086】
【数4】
【0087】
ここで、Lyは水平方向に1ライン走査したときの垂直走査素子12bの最大走査幅(例えば、図7に示した、ビームスポット1aからなる走査ラインの中心線とビームスポット1bからなる走査ラインの中心線との間隔)、nはライン数、Mは最大ライン数である。また、不連続の場合は、
Ly(n)=(0.5−(N−1)/(M−1)×Ly
である。ここで、N=1,2,...,nの中の任意の数値である。
【0088】
垂直走査制御部103の偏向角度θの最大値が、上記の条件における、ずれSCy(n)の範囲内となるように、垂直走査信号SV2の鋸波状の変化部分の傾きを決定する。これにより、複数ライン同時描画において、ほぼ水平な走査ラインを描画することができ、ほぼ長方形の画面を提供することができる。
【0089】
例えば、投射角ψが±40°であり、解像度がXGA(1024×768)であり、投射距離が300mmである場合、スクリーンサイズは、504mm(=300mm×tan40×2)であり、水平1ラインの間隔は、0.66mm(=504mm÷768本)である。この場合、垂直方向における最大シフト量は、±0.33(=0.66mm÷2)である。垂直走査素子12bと水平走査素子12a−2との距離Hxは10mm、水平走査素子12a−2と垂直走査素子12a−1との距離Vxは6mmである。
【0090】
上記の条件において、垂直走査素子12bの偏向角度θを±0.04°とすると、ほぼ水平な走査ラインを形成することができる。
【0091】
また、水平走査素子12a−2上でのずれ量Hyは0.006mmであり、垂直走査素子12a−1上でのずれ量Vyは0.011mmであり、投射面13上でのずれ量ΔSCyは0.368mmである。垂直走査制御部103の最大偏向角度である±0.04°は、ずれ量ΔSCyである0.368mmの範囲内であり、隣接する走査ライン間で、ビームスポットの一部が重なることはない。
【0092】
また、本実施形態の走査型表示装置によれば、複数の水平走査ラインを同時に描画することにより、高解像度化に加えて、以下のような効果を奏することもできる。
【0093】
nライン描画を同時に行う場合、水平走査素子12a―2の速度(動作周波数)は、
[ライン数]×[リフレッシュレート]÷2÷n
で与えられる。垂直走査素子12bの速度(動作周波数)は、
[水平走査素子12a―2の速度]×n×水平解像度
で与えられる。
【0094】
例えば、2ライン同時描画によりXGA(1024×768)の解像度を実現する場合、リフレッシュレートが60Hzであると、水平走査素子12a―2の速度は、11.52KHz(=768本×60Hz÷2÷2)であり、垂直走査素子12bの速度は約23.64MHz(=11.52KHz×2×1024)である。これらの速度を満たすために、水平走査素子12a―2はMEMSミラー等により実現可能であり、垂直走査素子12bは、電気光学(EO)素子や音響光学(AO)素子等に実現可能である。
【0095】
また、3ライン同時描画によりWUXGA(1920×1200)の解像度を実現する場合、リフレッシュレートが60Hzであると、水平走査素子12a―2の速度は、12KHz(=1200本×60Hz÷2÷3)であり、垂直走査素子12bの速度は69.1MHz(=12KHz×3×1920)である。これらの速度を満たすために、水平走査素子12a―2はMEMSミラー等により実現可能であり、垂直走査素子12bは、電気光学(EO)素子や音響光学(AO)素子等に実現可能である。
【0096】
一方、垂直走査素子12bを用いない構成においては、例えば、WUXGAの解像度を実現する場合、水平走査素子12a―2の速度は、36KHz(=1200本×60Hz÷2)である。このような速度の水平走査素子12a―2をMEMSミラーで実現することは困難である。
【0097】
また、10ライン同時描画により4K2K(DCI 4096×2160)の解像度を実現する場合、リフレッシュレートが120Hzであると、水平走査素子12a―2の速度は、25.92KHz(=2160本×120Hz÷2÷10)であり、垂直走査素子12bの速度は、約1.06GHz(=25.92KHz×10×4096)である。これらの速度を満たすために、水平走査素子12a―2はMEMSミラー等により実現可能であり、垂直走査素子12bは、電気光学(EO)素子や音響光学(AO)素子等に実現可能である。
【0098】
一方、垂直走査素子12bを用いない構成においては、例えば、4K2Kの解像度を実現する場合、水平走査素子12a―2の速度は、259.2KHz(=2160本×120Hz÷2)である。このような速度の水平走査素子12a―2をMEMSミラーで実現することは困難である。
【0099】
以上のように、本実施形態によれば、垂直走査素子12a―1および水平走査素子12a―2に加えて、垂直走査素子12bを用いることで、水平走査素子12a―2の速度に対する設計の余裕度が増大し、それにより、走査系のコストを削減することが可能となる。
【0100】
なお、本実施形態の走査型表示装置は、本発明の一例であり、その構成は適宜に変更することができる。
【0101】
例えば、高解像度化の観点からすると、垂直走査素子103によって生成される垂直走査信号SV2は、信号レベル全体が鋸波状に変化するものでなくてもよい。すなわち、垂直走査素子103は、図6に示した例において、傾きを持たない垂直走査信号SV2を生成してもよい。ただし、この場合は、往路および復路のうちの一方でのみ描画が行われる。
【0102】
また、図6に示した例では、タイミング制御部100は、垂直走査信号SV2の周期の1/2の周期のタイミング信号S3を生成しているが、これに限定されない。例えば、タイミング制御部100は、垂直走査信号SV2の周期を3以上の整数の値で割った値を周期とするタイミング信号S3を生成してもよい。
【0103】
本実施形態の走査型表示装置において、投射面13に投射される光ビームのアスペクト比は適宜に設定することができる。ここで、光ビームのアスペクト比は、光ビームの長軸方向と短軸方向の広がり角度の比である。ここでは、垂直方向の広がり角度に対する水平方向の広がり角度の比である。
【0104】
図10に、4ライン同時描画で、アスペクト比が1である場合のビームスポットの一例を示す。図10に示すように、複数のビームスポット1aからなる第1の水平走査ラインと、複数のビームスポット1bからなる第2の水平走査ラインと、複数のビームスポット1cからなる第3の水平走査ラインと、複数のビームスポット1dからなる第4の水平走査ラインが、同時に描画される。ビームスポット1a〜1dの形状は、いずれも略真円状である。
【0105】
図10に示したものでは、垂直方向において、ビームスポット1a〜1dからなる縦ラインが形成される。この縦ラインは、一定の間隔で水平方向に並んでいる。この場合は、縦ラインの間の隙間が目視され、それにより画質が低下する。
【0106】
図11に、4ライン同時描画で、アスペクト比が2である場合のビームスポットの一例を示す。図10に示すように、複数のビームスポット1aからなる第1の水平走査ラインと、複数のビームスポット1bからなる第2の水平走査ラインと、複数のビームスポット1cからなる第3の水平走査ラインと、複数のビームスポット1dからなる第4の水平走査ラインが、同時に描画される。ビームスポット1a〜1dの形状は、いずれも横長の楕円の形状である。
【0107】
図11に示したものでは、垂直方向において、ビームスポット1a〜1dからなる縦ラインが形成されるが、ビームスポットの形状が横長であるため、縦ライン間の隙間は目視されない。したがって、図10に示したものと比較して、縦ライン間の隙間が目立たないため、画質が向上する。
【0108】
シリンドリカルレンズ等の光学系を用いて、光源部11からの光ビームのアスペクト比を変えることができる。具体的には、光ビームを垂直方向において集光し、水平方向においては集光しないように、シリンドリカルレンズを配置することで、図11に示したような横長の形状の光ビームを得ることができる。この他、光源がLD等の光源よりなる場合は、出射面に、出射光の広がり方向を制御する凹凸構造を形成し、その凹凸構造の凹部または凸部の配置を、所望のアスペクト比が得られるように設定してもよい。
【0109】
アスペクト比は、1以上、同時描画ライン数未満が望ましい。この範囲によれば、隣接するビームスポットの重なりによる画質低下を抑制することができる。
【0110】
また、垂直走査素子12bの位置は、図1に示した位置に限定されない。光源部11からの光ビームが、2次元走査部12aを介して垂直走査素子12bに入射するように構成してもよい。また、光源11−R、11−G、11−Bのそれぞれの光路に垂直走査素子12bを配置してもよい。
【0111】
図3に示した構成において、垂直走査素子12a―1と水平走査素12a―2は逆の配置であってもよい。
【0112】
(第2の実施形態)
第1の実施形態のものにおいては、例えば、図10や図11に示した4ライン同時描画を行った場合、第1乃至第4の走査ラインからなるライン群の左右の端部は、斜めのカットされた直線形状になっている。このため、第1乃至第4の走査ラインからなるライン群を垂直方向に並べて画像を構成すると、それぞれのライン群の端部がギザギザの形状に見えてしまう。
【0113】
ここでは、上記の画像の端部がギザギザの形状に見えてしまうという問題を解決することができる形態について説明する。
【0114】
本発明の第2の実施形態である走査型表示装置は、第1の実施形態と同様、制御部10、光源部11および走査手段12を有するが、制御部10の一部の動作が、第1の実施形態のものと異なる。
【0115】
具体的には、図3に示した構成において、垂直走査制御部103により生成される垂直走査信号SV2と、タイミング制御部100により生成されるタイミング信号S3が第1の実施形態ものと異なる。
【0116】
図12に、垂直走査信号SV2とタイミング信号S3の対応関係を示す。図12に示すように、垂直走査制御部103は、パルス幅の異なる2つの矩形波形よりなる波形パターンの繰り返しよりなる垂直走査信号SV2を生成する。タイミング制御部100は、垂直走査信号SV2の立ち上がりタイミングおよび立ち下りタイミングのそれぞれで矩形のパルスが生成されたタイミング信号S3を生成する。
【0117】
なお、水平走査信号SHと垂直走査信号SV1、SV2の関係は図4および図5に示したとおりである。
【0118】
図4、図5、および図12に示した条件で光源部11、垂直走査素子12a−1、12bおよび水平走査素子12a―2を駆動した場合、図13に示すように、複数のビームスポット1aからなる第1の水平走査ラインと、複数のビームスポット1bからなる第2の水平走査ラインと、複数のビームスポット1cからなる第3の水平走査ラインと、複数のビームスポット1dからなる第4の水平走査ラインが、同時に描画される。
【0119】
第1乃至第4の水平走査ラインの開始位置は、互いに異なる。このように、第1乃至第4の水平走査ラインの開始位置を不連続なものとすることで、上述した画像の端部における縦方向のギザギザが軽減して見える。
【0120】
(第3の実施形態)
ここでは、第2の実施形態で説明した、画像の端部がギザギザの形状に見えてしまうという問題を解決することができる別の形態について説明する。
【0121】
本発明の第3の実施形態である走査型表示装置は、第1の実施形態と同様、制御部10、光源部11および走査手段12を有するが、制御部10の一部の動作が、第1の実施形態のものと異なる。
【0122】
図14は、制御部10の構成を示すブロック図である。
【0123】
図14に示すように、制御部10は、タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102、103および水平走査制御部104を有する。タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102および水平走査制御部104は、第1の実施形態のものと同じである。
【0124】
垂直走査制御部103は、水平走査制御部104からの水平走査信号SHおよび同期信号S2をそれぞれ入力とし、水平走査信号SHに対する位相差をそれぞれ0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°とした、8つの垂直走査信号SV2を生成することができ、フレーム毎に、それら垂直走査信号SV2を順次切り換えて出力する。例えば、垂直走査制御部103は、nフレームにおいて、水平走査信号SHに対する位相差を0°または180°とした垂直走査信号SV2を出力し、(n+1)フレームにおいて、水平走査信号SHに対する位相差を135°または315°とした垂直走査信号SV2を出力し、(n+2)フレームにおいて、水平走査信号SHに対する位相差を90°または270°とした垂直走査信号SV2を出力し、(n+3)フレームにおいて、水平走査信号SHに対する位相差を45°または225°とした垂直走査信号SV2を出力する。
【0125】
図13に、4ライン同時描画において、nフレームから(n+3)フレームの4つのフレームについて、垂直走査信号SV2の水平走査信号SHに対する位相差を変化させた場合の描画状態を模式的に示す。
【0126】
図13に示すように、各フレームにおいて、第1乃至第4の水平走査ラインからなるライン群が形成される。
【0127】
nフレームにおいて、ライン群のうち、第1の水平走査ラインの開始位置が最も左端に配置されている。第2の水平走査ラインの開始位置は、第1の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第3の水平走査ラインの開始位置は、第2の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第4の水平走査ラインの開始位置は、第3の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置されている。
【0128】
(n+1)フレームにおいて、ライン群のうち、第4の水平走査ラインの開始位置が最も左端に配置されている。第3の水平走査ラインの開始位置は、第4の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第2の水平走査ラインの開始位置は、第3の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第1の水平走査ラインの開始位置は、第2の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置されている。
【0129】
(n+2)フレームにおいて、ライン群のうち、第3の水平走査ラインの開始位置が最も左端に配置されている。第4の水平走査ラインの開始位置は、第3の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第1の水平走査ラインの開始位置は、第4の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第2の水平走査ラインの開始位置は、第1の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置されている。
【0130】
(n+3)フレームにおいて、ライン群のうち、第2の水平走査ラインの開始位置が最も左端に配置されている。第1の水平走査ラインの開始位置は、第2の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第4の水平走査ラインの開始位置は、第2の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置され、第3の水平走査ラインの開始位置は、第4の水平走査ラインの開始位置よりも右側に配置されている。
【0131】
上述のように、nフレームから(n+3)フレームの4つのフレームにおいて、ライン群における各水平走査ラインの開始位置をフレーム毎に変化させると、人間の眼には、残像現象により、各フレームにおけるライン群の画像が時間的に積分されたものとして見える。これにより、上述した画像の端部における縦方向のギザギザが軽減して見える。
【0132】
(第4の実施形態)
図15は、本発明の第4の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【0133】
図15に示すように、本実施形態の走査型表示装置は、垂直走査素子12bを2次元走査部12aからの光ビームが入射するように配置されている。この点以外は、第1の実施形態に記載のものと同じである。
【0134】
本実施形態の走査型表示装置では、光源部11からの光ビームは、2次元走査部12aによって水平方向および垂直方向に走査されるとともに、垂直走査素子12bによって、垂直方向に微小な角度で走査される。この構成によれば、垂直走査素子12b上におけるビームの位置ずれは、第1の実施形態のもより小さくなるので、画質が向上する。
【0135】
本実施形態において、第2または第3の実施形態で説明した構成を採用してもよい。
【0136】
(第5の実施形態)
図16は、本発明の第5の実施形態である走査型表示装置の構成を示すブロック図である。
【0137】
図16に示すように、本実施形態の走査型表示装置は、垂直走査素子12bの構成および配置が異なる以外は、第1の実施形態に記載のものと同様のものである。
【0138】
垂直走査素子12bは、垂直走査素子12b−R、12b−G、12b−Bを有する。
【0139】
垂直走査素子12b−Rは、光源11−Rの光路中の、コリメートレンズ110とミラー111の間に設けられおり、光源11−Rからの赤色の光ビームがコリメートレンズ110を介して入射する。
【0140】
垂直走査素子12b−Gは、光源11−Gの光路中の、コリメートレンズ110とダイクロイックミラー112の間に設けられおり、光源11−Gからの緑色の光ビームがコリメートレンズ110を介して入射する。
【0141】
垂直走査素子12b−Bは、光源11−Bの光路中の、コリメートレンズ110とダイクロイックミラー113の間に設けられおり、光源11−Bからの青色の光ビームがコリメートレンズ110を介して入射する。
【0142】
本実施形態の走査型表示装置では、光源11−Rからの赤色の光ビームは、垂直走査素子12b−Rによって微小な角度で垂直方向に走査され、その後、2次元走査部12aによって水平方向および垂直方向に走査される。光源11−Gからの緑色の光ビームは、垂直走査素子12b−Gによって微小な角度で垂直方向に走査され、その後、2次元走査部12aによって水平方向および垂直方向に走査される。光源11−Bからの青色の光ビームは、垂直走査素子12b−Bによって微小な角度で垂直方向に走査され、その後、2次元走査部12aによって水平方向および垂直方向に走査される。
【0143】
制御部10は、垂直走査素子12b−R、12b−G、12b−Bをそれぞれ制御するとともに、光源11−R、11−G、11−Bそれぞれの発光タイミングを制御する。これらの制御において、制御部10は、ダイクロイックミラー112、113の組立時に生じる光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれを補正する。
【0144】
図17に、制御部10の構成を示す。
【0145】
図17に示すように、制御部10は、タイミング制御部100、LD制御部101、垂直走査制御部102、103、水平走査制御部104およびテーブル105を有する。LD制御部101、垂直走査制御部102および水平走査制御部104は、第1の実施形態のものと同じである。
【0146】
テーブル105は、ダイクロイックミラー112、113の組立時に生じる光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれを補正するためのデータを格納する。
【0147】
図18に、ダイクロイックミラー112、113の組立時に生じる光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれによるビームスポットの位置ずれを模式的に示す。
【0148】
組立精度が高くないため、図18に示すように、投射面13上において、赤色のビームスポット200Rと緑色のビームスポット200Gと青色のビームスポット200Bとの間で位置ずれが生じる場合がある。
【0149】
図18に示した例では、赤色のビームスポット200Rと比較して、青色のビームスポット200Bは、垂直方向にDVだけずれており、水平方向にDHだけずれている。垂直方向の位置ずれDVから、光源11−Rからの赤色の光ビームに対する光源11−Bからの青色の光ビームの垂直方向の角度ずれを算出することができる。水平方向の位置ずれDHから、光源11−Rからの赤色の光ビームに対する光源11−Bからの青色の光ビームの水平方向の角度ずれを算出することができる。
【0150】
同様にして、光源11−Rからの赤色の光ビームに対する光源11−Gからの緑色の光ビームの垂直方向および水平方向の角度ずれも算出することができる。図18に示した例では、赤色のビームスポット200Rに対する緑色のビームスポット200Gの位置ずれは水平方向のみであるので、光源11−Rからの赤色の光ビームに対する光源11−Gからの緑色の光ビームの水平方向の角度ずれが算出される。
【0151】
上述のようにして算出した、光源11−G、11−Bの光源11−R(基準となる光源)に対する垂直方向および水平方向の角度ずれ量がテーブル105に格納される。
【0152】
タイミング制御部100は、タイミング信号S3を生成するとともに、テーブル105に格納された光源の水平方向の角度ずれ量に基づいて、光源11−R、11−G、11−Bの間の発光タイミングを調整するための位相差を示す位相差信号S5を生成する。位相差信号S5は、タイミング信号S3とともにLD制御部101に供給される。
【0153】
また、タイミング制御部100は、テーブル105に格納された光源の垂直方向の角度ずれ量に基づいて、光源11−R、11−G、11−Bそれぞれに対応して設けられた垂直走査素子12b−R、12b−G、12b−Bの間の位相差を示す位相差信号S6を生成する。位相差信号S6は、垂直走査制御部103に供給される。
【0154】
次に、本実施形態の走査型表示装置の動作について説明する。ここでは、図18に示した位置ずれが生じており、テーブル105が、光源11−Gの光源11−Rに対する水平方向の角度ずれ量と、光源11−Bの光源11−Rに対する垂直方向および水平方向の角度ずれ量とを保持しているものと仮定する。
【0155】
タイミング制御部100は、テーブル105に格納された光源11−Gの水平方向の角度ずれ量に基づいて、光源11−Gの光源11−Rに対する位相差を示す第1の位相差信号を生成するとともに、テーブル105に格納された光源11−Bの水平方向の角度ずれ量に基づいて、光源11−Bの光源11−Rに対する位相差を示す第2の位相差信号を生成する。タイミング制御部100は、生成した第1および第2の位相差信号を含む位相差信号S5をLD制御部101に供給する。
【0156】
また、タイミング制御部100は、テーブル105に格納された光源11−Bの垂直方向の角度ずれ量に基づいて、垂直走査素子12b−Bの垂直走査素子12b−Rに対する位相差を示す位相差信号S6を生成し、それを垂直走査制御部103に供給する。
【0157】
LD制御部101は、画像信号S1とタイミング信号S3とに基づいて、赤用駆動信号、緑用駆動信号、青用駆動信号をそれぞれ生成する。そして、LD制御部101は、位相差信号S5に含まれている第1の位相差信号に基づいて、緑用駆動信号の赤用駆動信号に対する位相を調整するとともに、位相差信号S5に含まれている第2の位相差信号に基づいて、青用駆動信号の赤用駆動信号に対する位相を調整する。
【0158】
光源11−Rは、赤用駆動信号に従って点灯する。光源11−Gは、相調整後の緑用駆動信号に従って点灯する。光源11−Bは、位相調整後の青用駆動信号に従って点灯する。この動作により、光源11−R、11−G、11−Bの間の光ビームの水平方向の角度ずれが補正される。
【0159】
垂直走査制御部103は、同期信号S2に基づいて、垂直走査素子12b−R、12b−G、12b−Bに対する、赤用垂直走査信号、緑用垂直走査信号、青用垂直走査信号を生成する。そして、垂直走査制御部103は、タイミング制御部100からの位相差信号S6に基づいて、赤用垂直走査信号に対する青用垂直走査信号の位相を調整する。
【0160】
垂直走査素子12b−Rは、赤用垂直走査信号に従って動作する。垂直走査素子12b−Gは、緑用垂直走査信号に従って動作する。垂直走査素子12b−Bは、位相調整後の青用垂直走査信号に従って動作する。この動作により、光源11−R、11−G、11−Bの間の光ビームの垂直方向の角度ずれが補正される。
【0161】
本実施形態において、第2または第3の実施形態で説明した構成を採用してもよい。
【0162】
以上説明した各実施形態において、走査方向は、第1の方向とこの第1の方向と交差する第2の方向としてもよい。この場合、第1の方向を垂直走査方向とし、第2の方向を水平走査方向としてもよい、また、第1の方向を水平走査方向とし、第2の方向を垂直走査方向としてもよい。
【0163】
走査手段は、光ビームを第1の方向に走査する第1方向走査手段と、光ビームを第2の方向に走査する第2方向走査手段とを有していても良い。
【符号の説明】
【0164】
10 制御部
11 光源部
12 走査手段
13 投射面
12a 2次元走査部
12b 垂直走査素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出射する光源部と、
投射面上で前記光源部からの光ビームを、第1の方向および/または該第1の方向と交差する第2の方向に走査する走査手段と、
前記走査手段を制御し、前記光源部の発光タイミングを制御して、前記投射面上に複数の走査線からなる画像を表示させる制御部と、を有し、
前記走査手段は、
第1の走査周期で前記第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、
前記第1の走査周期より短い第2の走査周期で前記第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、
前記第2の走査周期より短い第3の走査周期で前記第1の方向の走査を行う、最大走査角が前記第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子と、を有し、
前記制御部は、前記第3の走査周期に同期して前記光源部の発光タイミングを制御し、前記第2の方向において、一端から他端へ向かう1度の走査で、2以上の走査線を描画させる、走査型表示装置。
【請求項2】
前記第2の走査素子は、往路および復路のそれぞれで走査を行い、
前記制御部は、前記往路および復路のそれぞれの走査で、2以上の走査線を描画させる、請求項1に記載の走査型表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第3の走査周期を2以上の正の整数の値で割った値である周期で、前記光源部の発光タイミングを制御する、請求項1または2に記載の走査型表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の走査周期を有する第1の走査信号を生成して前記第1の走査素子に供給する第1の走査制御部と、
前記第2の走査周期を有する第2の走査信号を生成して前記第2の走査素子に供給する第2の走査制御部と、
前記第3の走査周期を有する第3の走査信号を生成して前記第3の走査素子に供給する第3の走査制御部と、
前記光源部の発光タイミングを示すタイミング信号を生成し、該タイミング信号に基づく駆動信号を前記光源部に供給する光源制御部と、を有し、
前記タイミング信号の周期は、前記第3の走査周期を2以上の正の整数の値で割った値である、請求項1から3のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項5】
前記第3の走査信号は、前記第3の走査周期を有する矩形波の信号であり、該矩形波の信号全体が、鋸波状の波形とされ、該鋸波状の波形の周期が前記第2の走査周期の半分の周期に一致する、請求項4に記載の走査型表示装置。
【請求項6】
前記第3の走査制御部は、前記第3の走査周期毎に、前記第2の走査信号に対する前記第3の走査信号の位相を制御する、請求項4に記載の走査型表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の走査線の描画開始位置を不連続に変化させる、請求項4に記載の走査型表示装置。
【請求項8】
前記光ビームが前記第1および第2の走査素子を介して前記第3の走査素子に入射する、請求項1から7のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項9】
発光色が異なる第1乃至第3の光源と、
前記第1の光源からの第1の色の光と前記第2の光源からの第2の色の光を合成する第1の色合成手段と、
前記第1の色合成手段からの前記第1および第2の色の合成光と前記第3の光源からの第3の色の光を合成する第2の色合成手段と、をさらに有し、
前記第3の走査素子は、
前記第1の光源と前記第1の色合成手段との間に配置された前記第1の光源用の走査素子と、
前記第2の光源と前記第2の色合成手段との間に配置された前記第2の光源用の走査素子と、
前記第3の光源と前記第2の色合成手段との間に配置された前記第3の光源用の走査素子と、を有し、
前記制御部は、
前記第1の走査周期を有する第1の走査信号を生成して前記第1の走査素子に供給する第1の走査制御部と、
前記第2の走査周期を有する第2の走査信号を生成して前記第2の走査素子に供給する第2の走査制御部と、
前記第3の走査周期を有する第3の走査信号を生成して前記第1乃至第3の光源用の走査素子に供給する第3の走査制御部と、
前記第1乃至第3の光源の発光タイミングを示す第1乃至第3のタイミング信号を生成し、該第1乃至第3のタイミング信号に基づく第1乃至第3の駆動信号を前記第1乃至第3の光源に供給する光源制御部と、
前記第1乃至第3の光源のいずれか1つの光源を基準とし、残りの光源について、該光源からの光ビームの前記基準とした光源からの光ビームに対する前記第1および第2の方向それぞれにおける角度ずれ量を示すデータが保持されたテーブルと、を有し、
前記光源制御部は、前記第2の方向の角度ずれ量に応じて、前記基準とした光源のタイミング信号に対する前記残りの光源のタイミング信号の位相を制御し、
前記第3の走査制御部は、前記第1の方向の角度ずれ量に応じて、前記基準とした光源用の走査素子に供給される前記第3の走査信号に対する前記残りの光源用の走査素子に供給される前記第3の走査信号の位相を制御する、請求項1から3のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項10】
前記光ビームの、前記第1の方向の広がり角度に対する前記第2の方向の広がり角度の比が1より大きい、請求項1から9のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記走査手段の制御に同期させて前記光源部の発光タイミングの制御を行う、請求項1から10のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項12】
前記走査手段は、前記光ビームを前記第1の方向に走査する第1方向走査手段と、前記光ビームを前記第2の方向に走査する第2方向走査手段とを有する、請求項1から11のいずれかに記載の走査型表示装置。
【請求項13】
光源部からの光ビームを投射面上で第1の方向および/または該第1の方向と交差する第2の方向に走査し、前記光源部の発光タイミングを制御して、前記投射面上に複数の走査線からなる画像を表示させる画像表示方法であって、
第1の走査周期で前記第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、前記第1の走査周期より短い第2の走査周期で前記第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、前記第2の走査周期より短い第3の走査周期で前記第1の方向の走査を行う、最大走査角が前記第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子とを同期させて制御し、
前記第3の走査周期に同期して前記光源部の発光タイミングを制御し、前記第2の方向において、一端から他端へ向かう1度の走査で、2以上の走査線を描画させる、画像表示方法。
【請求項1】
光ビームを出射する光源部と、
投射面上で前記光源部からの光ビームを、第1の方向および/または該第1の方向と交差する第2の方向に走査する走査手段と、
前記走査手段を制御し、前記光源部の発光タイミングを制御して、前記投射面上に複数の走査線からなる画像を表示させる制御部と、を有し、
前記走査手段は、
第1の走査周期で前記第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、
前記第1の走査周期より短い第2の走査周期で前記第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、
前記第2の走査周期より短い第3の走査周期で前記第1の方向の走査を行う、最大走査角が前記第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子と、を有し、
前記制御部は、前記第3の走査周期に同期して前記光源部の発光タイミングを制御し、前記第2の方向において、一端から他端へ向かう1度の走査で、2以上の走査線を描画させる、走査型表示装置。
【請求項2】
前記第2の走査素子は、往路および復路のそれぞれで走査を行い、
前記制御部は、前記往路および復路のそれぞれの走査で、2以上の走査線を描画させる、請求項1に記載の走査型表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第3の走査周期を2以上の正の整数の値で割った値である周期で、前記光源部の発光タイミングを制御する、請求項1または2に記載の走査型表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の走査周期を有する第1の走査信号を生成して前記第1の走査素子に供給する第1の走査制御部と、
前記第2の走査周期を有する第2の走査信号を生成して前記第2の走査素子に供給する第2の走査制御部と、
前記第3の走査周期を有する第3の走査信号を生成して前記第3の走査素子に供給する第3の走査制御部と、
前記光源部の発光タイミングを示すタイミング信号を生成し、該タイミング信号に基づく駆動信号を前記光源部に供給する光源制御部と、を有し、
前記タイミング信号の周期は、前記第3の走査周期を2以上の正の整数の値で割った値である、請求項1から3のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項5】
前記第3の走査信号は、前記第3の走査周期を有する矩形波の信号であり、該矩形波の信号全体が、鋸波状の波形とされ、該鋸波状の波形の周期が前記第2の走査周期の半分の周期に一致する、請求項4に記載の走査型表示装置。
【請求項6】
前記第3の走査制御部は、前記第3の走査周期毎に、前記第2の走査信号に対する前記第3の走査信号の位相を制御する、請求項4に記載の走査型表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の走査線の描画開始位置を不連続に変化させる、請求項4に記載の走査型表示装置。
【請求項8】
前記光ビームが前記第1および第2の走査素子を介して前記第3の走査素子に入射する、請求項1から7のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項9】
発光色が異なる第1乃至第3の光源と、
前記第1の光源からの第1の色の光と前記第2の光源からの第2の色の光を合成する第1の色合成手段と、
前記第1の色合成手段からの前記第1および第2の色の合成光と前記第3の光源からの第3の色の光を合成する第2の色合成手段と、をさらに有し、
前記第3の走査素子は、
前記第1の光源と前記第1の色合成手段との間に配置された前記第1の光源用の走査素子と、
前記第2の光源と前記第2の色合成手段との間に配置された前記第2の光源用の走査素子と、
前記第3の光源と前記第2の色合成手段との間に配置された前記第3の光源用の走査素子と、を有し、
前記制御部は、
前記第1の走査周期を有する第1の走査信号を生成して前記第1の走査素子に供給する第1の走査制御部と、
前記第2の走査周期を有する第2の走査信号を生成して前記第2の走査素子に供給する第2の走査制御部と、
前記第3の走査周期を有する第3の走査信号を生成して前記第1乃至第3の光源用の走査素子に供給する第3の走査制御部と、
前記第1乃至第3の光源の発光タイミングを示す第1乃至第3のタイミング信号を生成し、該第1乃至第3のタイミング信号に基づく第1乃至第3の駆動信号を前記第1乃至第3の光源に供給する光源制御部と、
前記第1乃至第3の光源のいずれか1つの光源を基準とし、残りの光源について、該光源からの光ビームの前記基準とした光源からの光ビームに対する前記第1および第2の方向それぞれにおける角度ずれ量を示すデータが保持されたテーブルと、を有し、
前記光源制御部は、前記第2の方向の角度ずれ量に応じて、前記基準とした光源のタイミング信号に対する前記残りの光源のタイミング信号の位相を制御し、
前記第3の走査制御部は、前記第1の方向の角度ずれ量に応じて、前記基準とした光源用の走査素子に供給される前記第3の走査信号に対する前記残りの光源用の走査素子に供給される前記第3の走査信号の位相を制御する、請求項1から3のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項10】
前記光ビームの、前記第1の方向の広がり角度に対する前記第2の方向の広がり角度の比が1より大きい、請求項1から9のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記走査手段の制御に同期させて前記光源部の発光タイミングの制御を行う、請求項1から10のいずれか1項に記載の走査型表示装置。
【請求項12】
前記走査手段は、前記光ビームを前記第1の方向に走査する第1方向走査手段と、前記光ビームを前記第2の方向に走査する第2方向走査手段とを有する、請求項1から11のいずれかに記載の走査型表示装置。
【請求項13】
光源部からの光ビームを投射面上で第1の方向および/または該第1の方向と交差する第2の方向に走査し、前記光源部の発光タイミングを制御して、前記投射面上に複数の走査線からなる画像を表示させる画像表示方法であって、
第1の走査周期で前記第1の方向の走査を行う第1の走査素子と、前記第1の走査周期より短い第2の走査周期で前記第2の方向の走査を行う第2の走査素子と、前記第2の走査周期より短い第3の走査周期で前記第1の方向の走査を行う、最大走査角が前記第1の走査素子よりも小さい第3の走査素子とを同期させて制御し、
前記第3の走査周期に同期して前記光源部の発光タイミングを制御し、前記第2の方向において、一端から他端へ向かう1度の走査で、2以上の走査線を描画させる、画像表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−72989(P2013−72989A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211590(P2011−211590)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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