説明

走査型電子顕微鏡の調整方法、及び走査電子顕微鏡

【課題】
本発明は、試料側の状態に由来する調整誤差を抑制し得る軸調整,非点補正法、及びこれを実現するためのSEMの提供を目的とする。
【解決手段】
上記目的を達成するための第1の態様では、標準サンプル上での自動軸調整結果と観察対象となるサンプル上での自動軸調整結果の最適値の差を求め、標準サンプル上で調整を行った最適値を補正する。上記目的を達成するための第2の態様では、標準サンプルにて最適なスティグマ値(非点補正信号)を取得し、その値をデフォルト設定値として記憶させ、観察対象サンプルのパターン高さに応じて、デフォルト値を重畳し、当該デフォルト値が重畳されたスティグマ値に基づいて、非点補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の調整方法、及び走査電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
SEMの装置性能を示す項目の一つとして分解能がある。分解能とは、識別できる2点間の最小距離を示しており、分解能が良い画像を取得するには光軸の調整を行うことが必須である。光軸の調整には主に軸調整と非点調整があるが、いずれも作業者の負担を減らすために、試料ステージに取り付けられた基準サンプルもしくは、観察対象となるサンプル上で、軸調整・非点調整を行う。また軸調整・非点調整に関して近年は、装置にて最適な状態を判断して調整することが可能となっている。例えば、特許文献1には画像処理技術を用いた自動軸調整技術が説明されている。更に、特許文献2には電子ビーム走査時のビームの軌道変化に基づいて、軸ずれを検出する技術が説明されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−22771号公報
【特許文献2】特開2000−195453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に説明されているような調整法によれば、SEMの状態の正確な把握と、当該状態把握に基づく精度の高い調整を自動的に行うことが可能である。しかしながら、試料側の状態に由来する以下のような調整誤差要因がある。
(1)自動軸調整を標準サンプルと観察サンプルで実施した場合、試料間の高さの差により軸調整及び非点調整の最適値に差が生じる。
(2)観察対象となるサンプル上での軸調整は、電子線照射を行うため、試料汚染が生じる。
(3)軸調整に適した形状が、観察対象となるサンプル上に必ずあるとは限らない。
【0005】
以下に、特に試料側の状態に由来する調整誤差を抑制し得る軸調整,非点補正法、及びこれを実現するためのSEMについて説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1の態様では、標準サンプル上での自動軸調整結果と観察対象となるサンプル上での自動軸調整結果の最適値の差を求め、標準サンプル上で調整を行った最適値を補正する。
【0007】
上述の走査型電子顕微鏡の調整方法は、試料ステージ上に備えられた標準サンプルを用いて軸調整を行い、アライメント偏向器の最適制御値を取得する工程と、試料ステージ上に保持された観察サンプルの高さの異なる複数の測定位置に対してそれぞれ軸調整を行い、各測定位置の高さと当該測定位置におけるアライメント偏向器の最適制御値の組の情報を取得する工程と、測定位置の高さと、標準サンプルと観察サンプルに対するアライメント偏向器の最適制御値の差の関係を補正カーブとして記憶する工程とを有する。この補正カーブは、実際の試料観察を行う前に予め取得しておく。
【0008】
次に、試料を観察するに際しては、試料ステージ上に備えられた標準サンプルを用いて軸調整を行い、アライメント偏向器の最適制御値を取得する工程と、観察すべき試料の高さを計測する工程と、予め記憶された補正カーブから、計測された高さに対応する前記最適制御値の差を求める工程と、標準サンプルを用いて取得したアライメント偏向器の最適制御値に補正カーブから求めた前記最適制御値の差を加算した値をアライメント偏向器に設定する工程とを有する。
【0009】
アライメント偏向器は、対物レンズの軸ずれを補正する偏向器、あるいは非点補正コイルの軸ずれを補正する偏向器とすることができる。また、補正カーブは、異なる観察条件(加速電圧や光学条件)に対してそれぞれ取得しておく。
【0010】
上述の走査型電子顕微鏡の調整方法は、また、試料ステージ上に備えられた標準サンプルを用いて非点補正を行い、非点補正コイルの最適制御値を取得する工程と、試料ステージ上に保持された観察サンプルの高さの異なる複数の測定位置に対してそれぞれ非点補正を行い、各測定位置の高さと当該測定位置における非点補正コイルの最適制御値の組の情報を取得する工程と、測定位置の高さと、標準サンプルと観察サンプルに対する非点補正コイルの最適制御値の差の関係を補正カーブとして記憶する工程とを有する。この補正カーブは、実際の試料観察を行う前に予め取得しておく。
【0011】
次に、試料を観察するに際しては、試料ステージ上に備えられた標準サンプルを用いて軸調整を行い、非点補正コイルの最適制御値を取得する工程と、観察すべき試料の高さを計測する工程と、予め記憶された補正カーブから、計測された高さに対応する前記最適制御値の差を求める工程と、標準サンプルを用いて取得した非点補正コイルの最適制御値に補正カーブから求めた前記最適制御値の差を加算した値を非点補正コイルに設定する工程とを有する。補正カーブは、異なる観察条件(加速電圧や光学条件)に対してそれぞれ取得しておく。
【0012】
また、上記目的を達成するための第2の態様では、標準サンプルにて最適なスティグマ値(非点補正信号)を取得し、その値をデフォルト設定値として記憶させ、観察対象サンプルのパターン高さに応じて、デフォルト値を重畳し、当該デフォルト値が重畳されたスティグマ値に基づいて、非点補正を行う。
【発明の効果】
【0013】
上記軸調整法によれば、標準サンプルのみで正確に自動軸調整を行うことができ、軸調整に観察対象となるサンプルを必要としないため、常に最適かつ安定した光軸調整の状態、つまり装置性能が十分に発揮された高分解能な状態を維持することが可能となる。
【0014】
また、上記非点補正法においても、標準サンプルを用いた調整によって、試料の高さ等の変動に依らず、安定した非点補正が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、走査電子顕微鏡の概略構成図である。陰極1と第一陽極2の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により電圧が印加され、所定のエミッション電流で一次電子線4(電子ビーム)が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により加速電圧が印加され、陰極1から放出された一次電子線4が加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は、レンズ制御電源21で制御された収束レンズ5で収束され、絞り板8で一次電子線の不要な領域が除去された後に、レンズ制御電源22で制御された収束レンズ6、及び対物レンズ制御電源23で制御された対物レンズ7により、試料ステージ15上に保持された試料10に微小スポットとして収束される。対物レンズ7は、インレンズ方式,アウトレンズ方式、及びシュノーケル方式(セミインレンズ方式)など、種々の形態をとることができる。
【0016】
また、試料に電圧を印加して一次電子線を減速させるリターディング方式もとることが可能である。さらに、各々のレンズは、複数の電極で構成される静電型レンズで構成してもよい。試料ステージ15上には、軸調整用パターンが形成された標準サンプル16が設けられている。
【0017】
一次電子線4は走査コイル9で、試料10上を二次元的に走査される。走査コイル9は、走査コイル制御電源24によって制御される。一次電子線の照射で試料10から発生した二次電子等の二次信号12は、対物レンズ7の上部に進行した後、二次信号分離用直交電磁界(EXB)発生器11により、一次電子と分離されて二次信号検出器13に検出される。
【0018】
二次信号検出器13で検出された信号は、信号増幅器14で増幅された後、画像メモリ25に転送されて像表示装置26に試料像として表示される。走査コイル9の近傍もしくは同じ位置に1段の偏向コイル51(対物レンズ用調整器)が配置されており、対物レンズ7の軸ずれを補正する調整器として動作する。また、対物レンズ7と絞り板8との間には、X及びY方向の非点を補正するための多極からなる非点補正コイル52が配置される。非点補正コイル用制御電源32によって制御される非点補正コイル52の近傍、もしくは同じ位置には非点補正コイルの軸ずれを補正する調整器53(非点補正コイル調整器)が配置される。対物レンズ用調整器51は対物レンズ用調整器制御電源31によって制御され、非点補正コイル調整器53は非点補正コイル用調整器制御電源33によって制御される。コンピュータ40には、画像処理装置27,記憶装置41,入力装置42も接続されている。
【0019】
また、図1に示す走査電子顕微鏡には、図示しない試料高さ測定装置(Zセンサ)が設けられている。Zセンサは、例えば、レーザ光を発生する発光素子と、当該発光素子から放出されたレーザ光を試料上の所定の個所(一次電子線の照射個所)に集光させるための第1の集光レンズ、試料によって反射されたレーザ光を集光する第2の集光レンズ、及び第2の集光レンズによって集光されたレーザ光を受光するポジションセンサを備えている。試料の高さはポジションセンサによる反射レーザ光の受光位置の変化によってモニタされ、その情報は、上述のコンピュータ40に伝達される。
【実施例1】
【0020】
以下に軸調整を実現するために必要な補正カーブの取得方法を、図2のフローチャートにより説明する。はじめに、試料ステージ15に備え付けられた標準サンプル16を用いて自動軸調整を実施し(S11)、対物レンズ用調整器51のX,Y(AlX1,AlY1)方向の最適値、非点補正コイル調整器53のXX,XY,YX,YY(StAlXX1,StAlXY1,StAlYX1,StAlYY1)方向の最適値、非点補正コイルのX,Y(StX1,StY1)方向の最適値を取得する(S12)。
【0021】
自動軸調整方法は、例えば、特開2003−22771号公報に記載されている。
【0022】
次に、図4のように試料ステージ15上にて高さを一定方向に変動させた観察サンプル54において、図5のように傾斜方向にそった複数の測定箇所56を用いて自動軸調整を実施する(S13)。実行後の対物レンズ用調整器51のX,Y(AlX2,AlY2)方向の最適値、非点補正コイル調整器53のXX,XY,YX,YY(StAlXX2,StAlXY2,StAlYX2,StAlYY2)方向の最適値、非点補正コイル52のX,Y(StX2,StY2)方向の最適値及び自動軸調整実施位置の高さを対物レンズ電流値より取得する(S14,S15)。
【0023】
次に、標準サンプル16と観察サンプル54での各種調整器の最適値の差をオフセット値としてそれぞれ取得する。たとえば、対物レンズ用調整器51のX値の場合DiffAlX=AlX1−AlX2とする。取得した差(オフセット値)を取得した複数の測定値の高さ情報より高さとオフセット値(DiffAlX)を用いてカーブを描き、これを補正カーブとする(S16)。
【0024】
補正カーブの一例を図6に示す。各観察条件(使用加速電圧・光学条件)において補正カーブを求め、対物レンズ用調整器51のX,Y、非点補正コイル調整器53のXX,XY,YX,YY、非点補正コイル52のX,Yに対して、それぞれ独自に補正カーブを作成することにより、常に最適かつ安定した光軸調整の状態を保つことができる。
【0025】
図3に、観察時の補正カーブを用いて補正を行う場合の軸調整シーケンスを示す。予め標準サンプルにて自動軸調整を実施し、各種調整器の最適値を取得する(S21)。観察試料を試料室へ搬入する(S22)。搬入の際に観察サンプルの高さを、レーザを用いた高さ計測センサ(Zセンサ)を用いて計測する(S23)。各種調整器のオフセット値を、補正カーブより使用観察条件と計測された高さから算出する(S24)。予め取得した標準サンプルでの最適値へ上記オフセット値を加え、調整器へ設定する(S25)。例えば、対物レンズ用調整器のXの場合、補正カーブより観察サンプルでのDiffAlXを求め、予め標準サンプルであわせておいたAlX1へDiffAlXを加えた値を最適値として設定する。
【0026】
なお、上記それぞれ対物レンズ用調整器のX,Y、非点補正コイル調整器のXX,XY,YX,YY、非点補正コイルのX,Yで同様のDiff値の算出を行い、個別に最適値を算出する。
【0027】
以上の作業を試料搬入終了前に行うことにより、試料搬入直後に正確な軸調整が行われ、装置性能が十分に発揮された状態で観察を開始することが可能となる(S26)。
【実施例2】
【0028】
図7に、非点調整のための補正カーブを作成する過程を示すフローチャートを示す。あらかじめ、標準サンプル(装置調整用サンプル)にてサンプル高さ(Zセンサの検出結果)に応じた最適なスティグマ値を取得し、その値をデフォルト値として登録しておく。この値は、Zセンサの検出結果(LSB値)と一対一の関係とし、フォーカス条件ごとにデフォルト値(0°,45°,90°,135°の各方向)を記憶しておくようにする。2組の四極子レンズを組み合わせた八極子レンズの場合、1の四極子レンズに供給する電流I1と、他の四極子レンズに供給する電流I2の調整によって、非点補正を行うため、フォーカス条件ごとに、I1とI2の条件(電流値)を記憶しておき、それをデフォルト値とすることができる。
【0029】
なお、フォーカス条件ごとの各スティグマ調整方向のデフォルト値は、図4,図5に図示するように、試料を傾斜させる等して、積極的に高さを変えて取得するようにしても良いし、傾斜させないテストサンプル等の複数点について高さ測定を行い、フォーカス条件ごとのデフォルト値を収集するようにしても良い。
【0030】
また、ウェーハ上の観察したい位置に移動した際のOBJ(対物レンズ)電流値(LSB値)に応じて、実際のスティグマ調整値に上述のデフォルト値を重畳するような補正手段とする。なお、対物レンズが静電レンズである場合には、電圧値となる。上述の例では、サンプル高さに応じてあらかじめ取得しておいたスティグマ値を重畳するため、スティグマ調整に適したパターン(○もしくは□のような各方向成分が抽出しやすい形状)が存在しない領域でも補正可能である。また、前述のようなパターンが存在する領域では、レシピと呼ばれるウェーハ自動観察測定処理中の自動非点補正機能(AST,高速AST)も有効であるから、これらの機能との使い分けをすることで、より効果的なスティグマ値の補正が可能となる。
【0031】
特にウェーハの縁部近傍には、測定対象となるラインパターンが存在するものの、非点補正に適した0°,45°,90°,135°の方向に直交するエッジを持つパターンが存在しないことがある。即ち、ウェーハの縁部からある程度離間した領域では、スティグマ調整用のパターンを用いた非点補正を行い、ウェーハ縁部から所定距離の範囲内では、上述の高さ測定、或いはフォーカス制御量に基づく、スティグマ調整を行うことが望ましい場合がある。このような場合には、ウェーハの縁部から所定距離の範囲では、自動的に試料の高さ等に基づく、スティグマ調整が行われるよう設定し、それ以外の領域では、測定個所近傍でスティグマ調整用の視野の選択を行うような設定が行えるようにすると良い。
【0032】
より具体的には、走査電子顕微鏡による測定条件が記録されたレシピの設定を行う際に、測定点(Measurement Point:MP)が、上記ウェーハ縁部から所定距離範囲内に存在する場合には、スティグマ調整法を上述のように自動的に設定し、それ以外の領域にMPを設定する場合には、オペレータに、スティグマ調整をどこで行うかを設定させるように、設定画面を表示するようにする。このような構成によれば、レシピ設定時の手間を簡略化することが可能となる。
【0033】
また、半導体デバイスの設計データには、試料上にどのようなパターンが形成されているかが、登録されているため、MPの設定に応じて、その近傍に適当なスティグマ調整用パターンが存在するか否かを、設計データを参照して判断し、適当なパターンが存在する場合には、そのパターンを調整用パターンの候補として表示するようにし、適当なパターンが存在しない場合には、上述の高さ計測等に基づくスティグマ調整を選択する旨の表示を行うようにすると良い。
【0034】
設計データに基づいて、スティグマ調整用パターンを選択する場合には、MPから所定の距離範囲(例えば一次電子線の偏向器によるイメージシフト可能な範囲)内に、所定の設定倍率におけるSEMの視野(Field Of View:FOV)を設定したとき(スティグマ調整に要する倍率を設定したとき)に、そのFOV内に、所定の条件を持つ閉図形、或いは所定の条件を持つ線分が存在するか否かに基づいて判断する。
【0035】
より具体的には、SEMの視野内に、視野中心から0°,45°,90°,135°方向の直線に、直交する線分を持つ閉図形(例えば正八角形)が含まれているような場合、或いは当該閉図形が持つ線分と同等の線分が、FOV内に含まれているか否かを判断する。
【0036】
以上のような構成によれば、オペレータがMPごとにスティグマ調整用の視野を選択することなく、自動的、或いは半自動的にスティグマ調整用の視野を選択することが可能になる。
【0037】
以下に、測定対象ウェーハの高さ計測に基づいて、スティグマ調整を行う例について説明する。
【0038】
具体的には、まず、標準サンプルの高さを、Zセンサを用いて測定する。この際、予め標準サンプルの高さが登録されている場合には、この工程を省略することができる。そして、標準サンプルを用いて、スティグマ調整を行い、その際の調整値を、I10,I20として、記憶する。このときに用いられる標準サンプルは、例えば正八角形のような0°,45°,90°,135°の方向に、鮮鋭度(sharpness)が十分に評価可能なパターンが含まれていることが望ましい。仮に正八角形でなくとも、八角形に相当する線分が含まれているパターンや、真円のような上記各方向への鮮鋭度が評価可能なパターンでの代用も可能である。
【0039】
以上のように、標準サンプルを用いた非点補正を行った後、観察対象ウェーハを試料室へ搬入する。なお、標準サンプルを用いたデフォルト値取得は、観察対象ウェーハを試料室に搬入した後でも可能である。次に、観察対象ウェーハのサンプル高さをZセンサ(高さ計測センサ)を用いて計測する。観察対象ウェーハと標準サンプルとのオフセット量(LSB値)を計測されたサンプル高さから算出する。そして、最適なスティグマ値に前述のオフセット量を重畳する。例えば、X方向のスティグマ補正コイルの場合、観察対象ウェーハのオフセット量(Diff_StigmaX)を算出し、あらかじめ取得しておいたデフォルト値(StigmaX)にオフセット量(Diff_StigmaX)を重畳して最適なスティグマ値として設定する。これはY方向のスティグマ補正コイルの場合も同様である。
【0040】
以上のような作業を異なる試料高さごとに行い、図6に図示するような補正カーブが作成可能となるまで継続する。補正カーブを作成した後、当該データを記憶装置41に登録し、当該登録データに基づいて、その後の非点調整が行われる。
【0041】
以上の作業を実施することにより、非点ずれの発生しやすいウェーハエッジの観察測定時や、ウェーハ高さが面内で均一でないウェーハ(例えば中凸または中凹形状のような反りがあり、測定位置により非点や軸が大きくずれるウェーハ、ローカルあるいはグローバルに電荷を帯びている試料)の観察測定時に、スティグマ値が最適な状態に設定されるため、装置性能が十分に発揮された状態で、観察対象ウェーハの観察を行うことが可能となる。
【0042】
また、画像の4方向への鮮鋭度を測定し、その鮮鋭度の測定に基づいて、スティグマ調整を行うか、上述のように試料の高さ測定に基づいて、スティグマ調整を行うかの判断を、デバイスの設計データ等に基づいて決定するようにすれば、容易に多数点のスティグマ条件設定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図2】補正カーブを取得するための処理フロー図。
【図3】補正カーブを用いた調整法の処理フロー図。
【図4】補正カーブを取得するために傾斜したサンプルを示す図。
【図5】サンプルにおける補正カーブの取得箇所を示す図。
【図6】補正カーブの取得例を示す図。
【図7】非点調整のための補正カーブを作成する過程を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
1 陰極
2 第一陽極
3 第二陽極
4 一次電子線
5 第一収束レンズ
6 第二収束レンズ
7 対物レンズ
8 絞り板
9 走査コイル
10 試料
11 二次信号分離用直交電磁界(EXB)発生器
12 二次信号
13 二次信号用検出器
14 信号増幅器
15 試料ステージ
16 軸調整用パターン
20 高圧制御電源
21 第一収束レンズ制御電源
22 第二収束レンズ制御電源
23 対物レンズ制御電源
24 走査コイル制御電源
25 画像メモリ
26 画像表示装置
27 画像処理装置
31 対物レンズ用調整器制御電源
32 非点補正コイル用制御電源
33 非点補正コイル用調整器制御電源
40 コンピュータ
51 対物レンズ用調整器
52 非点補正コイル
53 非点補正コイル用調整器
54 観察サンプル
56 測定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸調整を行うアライメント偏向器を調整する走査型電子顕微鏡の調整方法において、
試料ステージ上に備えられた標準サンプルを用いて軸調整を行い、前記アライメント偏向器の最適制御値を取得する工程と、
前記試料ステージ上に保持された観察サンプルの高さの異なる複数の測定位置に対してそれぞれ軸調整を行い、各測定位置の高さと当該測定位置における前記アライメント偏向器の最適制御値の組の情報を取得する工程と、
前記測定位置の高さと、前記標準サンプルと前記観察サンプルに対する前記アライメント偏向器の最適制御値の差の関係を補正カーブとして記憶する工程と
を有することを特徴とする走査型電子顕微鏡の調整方法。
【請求項2】
請求項1記載の走査型電子顕微鏡の調整方法において、
試料ステージ上に備えられた標準サンプルを用いて軸調整を行い、前記アライメント偏向器の最適制御値を取得する工程と、
観察すべき試料の高さを計測する工程と、
予め記憶された前記補正カーブから、前記計測された高さに対応する前記最適制御値の差を求める工程と、
前記標準サンプルを用いて取得した前記アライメント偏向器の最適制御値に前記補正カーブから求めた前記最適制御値の差を加算した値を前記アライメント偏向器に設定する工程と
を有することを特徴とする走査型電子顕微鏡の調整方法。
【請求項3】
請求項1記載の走査型電子顕微鏡の調整方法において、前記アライメント偏向器は、対物レンズの軸ずれを補正するものであることを特徴とする走査型電子顕微鏡の調整方法。
【請求項4】
請求項1記載の走査型電子顕微鏡の調整方法において、前記アライメント偏向器は、非点補正コイルの軸ずれを補正するものであることを特徴とする走査型電子顕微鏡の調整方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の走査型電子顕微鏡の調整方法において、異なる観察条件に対してそれぞれ前記補正カーブを求めることを特徴とする走査型電子顕微鏡の調整方法。
【請求項6】
非点補正コイルを調整する走査型電子顕微鏡の調整方法において、
試料ステージ上に備えられた標準サンプルを用いて非点補正を行い、前記非点補正コイルの最適制御値を取得する工程と、
前記試料ステージ上に保持された観察サンプルの高さの異なる複数の測定位置に対してそれぞれ非点補正を行い、各測定位置の高さと当該測定位置における前記非点補正コイルの最適制御値の組の情報を取得する工程と、
前記測定位置の高さと、前記標準サンプルと前記観察サンプルに対する前記非点補正コイルの最適制御値の差の関係を補正カーブとして記憶する工程と
を有することを特徴とする走査型電子顕微鏡の調整方法。
【請求項7】
請求項6記載の走査型電子顕微鏡の調整方法において、
試料ステージ上に備えられた標準サンプルを用いて軸調整を行い、前記非点補正コイルの最適制御値を取得する工程と、
観察すべき試料の高さを計測する工程と、
予め記憶された前記補正カーブから、前記計測された高さに対応する前記最適制御値の差を求める工程と、
前記標準サンプルを用いて取得した前記非点補正コイルの最適制御値に前記補正カーブから求めた前記最適制御値の差を加算した値を前記非点補正コイルに設定する工程と
を有することを特徴とする走査型電子顕微鏡の調整方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の走査型電子顕微鏡の調整方法において、異なる観察条件に対してそれぞれ前記補正カーブを求めることを特徴とする走査型電子顕微鏡の調整方法。
【請求項9】
電子源と、
当該電子源から放出される電子ビームを調整する光学素子と、
当該光学素子の光軸に対し、前記電子ビームの軸合わせを行う偏向器と、当該偏向器を制御する制御装置を備えた走査電子顕微鏡において、
前記電子ビームが照射される試料上の高さを測定する高さ測定装置を備え、前記制御装置は、当該高さ測定装置によって測定された試料高さに応じた前記偏向器による軸調整条件を記憶していることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項10】
電子源と、
当該電子源から放出される電子ビームの非点補正を行う非点補正器と、当該非点補正器を制御する制御装置を備えた走査電子顕微鏡において、
前記電子ビームが照射される試料上の高さを測定する高さ測定装置を備え、
前記制御装置は、当該高さ測定装置によって測定された試料高さに応じた前記非点補正器による非点補正条件を記憶していることを特徴とする走査電子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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