走査電子顕微鏡
【課題】 試料内複数点の測定時に生じる像ドリフトを低減する。
【解決手段】 測長画像の取得後に測長画像取得より低倍走査での電子ビーム照射により除電を行う。その際に、走査領域が20μm角以上、200μm角以下の倍率に設定される。
【解決手段】 測長画像の取得後に測長画像取得より低倍走査での電子ビーム照射により除電を行う。その際に、走査領域が20μm角以上、200μm角以下の倍率に設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子ビームを用いた検査・計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームを用いた試料の観察・検査・計測に用いられる走査電子顕微鏡(SEM)は、電子源から放出された電子を加速し、静電または電磁レンズによって試料表面上に収束させて照射する。これを1次電子という。1次電子の入射によって試料からは2次電子や反射電子が発生する。これら2次電子や反射電子を、電子ビームを偏向して走査しながら検出することで、試料上の微細パターンや組成分布の走査画像を得ることができる。
【0003】
絶縁体を含む試料に電子ビームを照射すると絶縁体が帯電し、1次電子や2次電子の軌道に影響を与える。このために、得られる画像の明るさやコントラストが変化してしまうことになる。こうした現象に対処するために、特開2007−285966や特表2001−508592では画像取得の前や後に低倍走査で電子ビームを照射することで帯電を制御する方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−285966号公報
【特許文献2】特表2001−508592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、インプリント用マスクや回折光学素子などの絶縁体基板では、帯電の影響が特に出やすく、画像の明るさやコントラスト変化以外の現象も顕著になってくる。具体的には、ある測定点で画像を取得した後に、次の測定点に移動して画像を取得しようとすると、前の測定点での試料の帯電が次の測定点での画像取得中の像ドリフトを引き起こす現象が観測されている。その結果として、取得画像の解像度は大きく低下し、例えば測長用走査電子顕微鏡では正しいパターン寸法を計測することができなくなる。上記従来技術はこの問題に対する解答を示しておらず、また、解答を考察するための帯電制御の具体的な条件も提示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するには、測長画像の取得と次の位置での画像取得の間に、測長画像取得より低倍走査での電子ビーム照射を行い、この時の低倍走査での照射時の走査倍率が、走査領域20μm角以上、200μm角以下相当であることが有効である。
【0007】
また、走査倍率以外の条件が過剰な正帯電化を抑える方向に設定されることから低倍走査中に試料対向電極電圧とビームサイズと照射加速電圧の最低1つ以上の条件を変えることが効果的である。更に、低倍走査照射中に取得した2次電子信号や反射電子信号をモニターすることで、低倍走査照射時間の制御を行うことが良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果は画像取得の際に発生した帯電を低倍走査の電子ビーム照射で除電出来ることにある。結果として、絶縁体試料面内での複数点測長を安定して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る装置概要図である。
【図2】本発明の実施例1に係る測長手順の説明図である。
【図3A】従来の帯電現象を説明するための図である。
【図3B】本発明の実施例1に係る帯電現象を説明するための図である。
【図4A】本発明の実施例1に係る走査領域とドリフト低減効率の関係を示す図である。
【図4B】本発明の実施例1に係る走査倍率とドリフト低減効率の関係を示す図である。
【図5A】本発明の実施例2に係る低倍走査条件を示す図である。
【図5B】本発明の実施例2に係る低倍走査条件を示す図である。
【図6A】図5Aの低倍走査条件におけるドリフト量を示す図である。
【図6B】図5Bの低倍走査条件におけるドリフト量を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係る条件指定画面の図である。
【図8】本発明の実施例3に係る測長手順の説明図である。
【図9】本発明の実施例3に係る効果の説明図である。
【図10】本発明の実施例3に係る条件指定画面の図である。
【図11】本発明の実施例4に係る測長手順の説明図である。
【図12】本発明の実施例4に係るもう1つの測長手順の説明図である。
【図13A】本発明の実施例4に係る条件指定画面の図である。
【図13B】本発明の実施例4に係る条件指定画面の図である。
【図14】本発明の実施例5に係る測長手順の説明図である。
【図15A】従来の除電効果の説明図である。
【図15B】本発明の実施例1に係る除電効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1に実施例1の装置概要図を示す。電子銃101から放出された電子ビーム102はコンデンサレンズ103、130と電磁レンズ108により試料109上に結像される。本実施例では対物レンズは電磁レンズ108と、電磁レンズ108と試料109間の電場により生じる静電レンズにより、主に構成されている。そして試料109から放出される2次電子や反射電子104は中間にある検出器105により検出される。試料109上の電子ビームは走査偏向器106により2次元に走査され、装置全体の制御演算部118により画像処理して2次元画像を得ることが出来る。2次元画像は表示装置119に表示され、記録装置117に記録される。また試料109の直上には試料対向電極150が設置されており、試料109表面の電界(電位勾配)を制御している。また、電子銃101、第1コンデンサレンズ103、第2コンデンサレンズ130、走査偏向器106、ブースター電極152、電磁レンズ108、試料対向電極150、試料109はそれぞれ、電子銃制御部111、第1コンデンサレンズ制御部112、第2コンデンサレンズ制御部131、走査偏向器制御部114、ブースター電極制御部153、電磁レンズ制御部115、試料対向電極制御部151、試料電圧制御部116により制御される。
【0011】
図2には本実施例の測長手順を示す。高倍走査、すなわち高い倍率による狭い領域での走査により試料上に形成されたパターンの測長画像を取得した後に、測長画像を取得した領域に低倍走査、すなわち低い倍率による広い領域での走査をすることで除電を行う。次にステージ移動により測長位置を移動し、高倍走査により測長画像を取得する。この手順を繰り返すことで除電しながら試料上の複数点の測長を行う。
【0012】
なお、測長画像の取得条件は試料へ照射される電子ビームの照射加速電圧が500V、電流が8pA、走査倍率が100,000倍、1フレームが40msecで加算フレーム数が16フレームである。照射電子ビームの加速電圧500Vは、電子源に−3,000Vの電圧を印加して試料に−2,500Vの電圧を印加することで実現している。
【0013】
図3及び図15を用いて電子ビームの照射による帯電状態の変化を説明する。まず、絶縁体試料に低加速高倍走査で電子ビームを照射すると、照射部(測長画像取得領域201)は初め正に帯電するものの、次第に帯電の方向が反転し、最終的には負に帯電する(図3A(a)、図15A(a))。この負帯電を放置したまま次の測長点(測長画像取得領域203)に移動して測長画像の取得を始めると、画像取得の際に発生する比較的高速な反射電子により負帯電領域から2次電子が放出される(図3A(b)、図15A(b))。これにより負帯電が徐々に緩和し、結果として測長画像取得中に像ドリフトが生じてしまう。その結果、取得画像の解像度は大きく低下し、正しい測長をすることができなくなる。そこで、本実施例では、測長画像取得済みの照射領域の負帯電を除電するために低倍走査での電子ビーム照射を実行している(図3B(b)、図15B(b))。低倍走査の照射条件は加速電圧が500V、電流が8pA、走査倍率が3,000倍、照射時間1秒である。低倍走査では、高倍照射と異なり、発生する2次電子により照射領域は正帯電する傾向があり、測長画像取得照射により生じた負帯電を除電する効果がある。この結果、次の測長画像取得の際には前の測長画像取得の影響は軽減されることになる(図3B(c)、図15B(c))。本実施例では前の測長と次の測長の間に、次の測長ポイントに移動する前にこの低倍走査を実行することにより測長画像取得の際の10秒間当たりの像ドリフトを300nmから50nm以下へと低減することが出来た。
【0014】
図4Aは照射時間あたりのドリフト低減効率と走査領域、図4Bはドリフト低減効率と走査倍率の関係を示した図である。低倍走査時の走査倍率は、走査領域が20μm角以上の倍率(本実施例の装置では5,000倍)から、走査領域が200μm角以下の倍率(本実施例の装置では500倍)で効果があり、これ以上の高い走査倍率や低い走査倍率での走査では必要な正帯電効果を得ることが出来ないことが分かる。低すぎる走査倍率で効率が低下する理由は、照射する電子ビームの密度が低くなるため、実質的に除電に寄与する電子数が小さくなるためである。
【0015】
また、高い再現性を得るための測長画像取得時の走査領域は1μm角(本実施例の装置では100,000倍の倍率)より小さいため、低倍走査の走査倍率は測長画像取得時よりも1桁以上小さいことが望ましい。
【実施例2】
【0016】
実施例2でも実施例1と同様の装置と測長手順を用いている。ただし、本実施形態では図5に示すように走査倍率以外の低倍走査の照射条件の一部を測長画像取得条件と変化させている。具体的には加速電圧と、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差と、照射ビームサイズである。図5Aに示すように測長画像取得の際は、加速電圧が500V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差が0V、照射ビームサイズが3nmφであるのに対して、図5Bに示すように低倍走査の際には加速電圧を300V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差を−50V、照射ビームサイズを100nmφとし、加速電圧と、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差を低くして、ビームサイズを大きくしている。なお、100nmφへのビームサイズの変更は焦点位置を変化させることで行っている。焦点変化は頻繁に行うことになるためにヒステリシスのない静電で行うことが望ましい。具体的にはブースター電極の電圧や試料の電圧を変化させて行うことになる。
【0017】
照射条件を変化させた効果を図6に示す。スループットの観点から低倍走査照射時間を1秒以内に、ドリフト量を30nm以下とすることが好ましい。図6Aは低倍走査時の試料対向電極電圧と試料電圧との電位差と、ビームサイズが測長画像取得時と同じ場合(すなわち図5Aの条件の場合)、図6Bは本実施例(すなわち図5Bの条件の場合)の場合である。図6Aの同じ条件でもドリフトの低減効果は明らかで、照射時間が0.4秒程度で瞬間的にドリフト量がほぼなくなっている。さらに照射時間を延ばすとドリフトは反転するが、2秒後に30nm以下に落ち着いている。図6Aは、精密な時間の制御でドリフト量を0にすることが可能であることを示しているが、除電の速度が速いので精密な時間の制御は容易ではない。制御性を考えるとこの照射条件は好ましくない。
【0018】
これに対して図6Bでは1秒間でドリフト量が30nm以下となっており、それ以降もドリフト量が増加する様子は見られない。従って、この条件を用いることで、スループットとドリフト抑制を同時に満足することが可能となる。
【0019】
加速電圧を下げることは反射電子の放出率を低下させる。2次電子は試料帯電により2次電子が引き戻される現象により実質的な放出率が低下するが、反射電子ではその現象は起こりにくく、放出率が低下しにくい。そのために、加速電圧を下げることは過剰な正帯電化を抑制する方向に効果が現れる。また、試料対向電極電圧と試料電圧の電位差を負にすることは試料から放出された2次電子を試料に戻す効果があり、試料の過剰な正帯電化を抑える効果がある。更に、ビームサイズを大きくすることは、低倍走査でも隣接する走査ビームとの距離が短くなるため、2次電子の実効的な放出率が低下することになり、やはり過剰な正帯電化を抑制する効果がある。この結果、図6Aでみられた除電の行き過ぎを抑制することが可能となり、安定な除電を実現することが出来る。なお、本実施例では、加速電圧と、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差と、照射ビームサイズの3つの条件を変化させたが、それぞれ1つの条件を変化させることでも最終的な帯電を小さくする効果を得ることが出来る。
【0020】
図7は本実施例での低倍走査での照射の条件を設定する画面301である。パラメータとして、走査倍率302、加速電圧303、試料対向電極電圧305、ビームサイズ306、照射時間307を設定できるようになっている。なお、試料電位(試料電圧)304は加速電圧303を設定することで自動的に設定される。
【実施例3】
【0021】
実施例3でも実施例1と同様の装置を用いるが、測長手順は図8に従っている。図8と図2の差は低倍走査での照射が2つに分かれていることである。すなわち本実施例では低倍走査中に照射条件を変更している。図8から分かるように除電時間を短くするとドリフト量を0とするための時間管理が困難となり、安定にドリフト量を0とするためには照射時間が長くなる。そこで本実施例では高速除電と安定除電を両立させるために低倍走査の途中に照射条件を変化させている。具体的には条件1として測長画像取得と同じ条件(加速電圧:500V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差:0V、ビームサイズ:3nmφ)で0.3秒照射し、引き続き、条件2(加速電圧:300V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差:−50V、ビームサイズ:100nmφ)で1.0秒照射した。これにより全体で1.3秒の照射で除電が完了し、ドリフト量を10nm以下とすることが出来た。全照射時間は実施例2の2/3に短縮されていることになる。図9には横軸を条件2での照射時間とした結果を示す。全照射時間はこれに0.3秒加算した時間となる。
【0022】
図10は本実施例での低倍走査での照射の条件を設定する画面を表わした図である。設定画面では2つの条件の設定が可能であり、それぞれ独立に走査倍率402、412、加速電圧403、413、試料対向電極電圧405、415、ビームサイズ406、416、照射時間の設定が可能となっている。
【0023】
高速な除電を行なうためには、加速電圧を小さく、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差を0から正に、ビームサイズを小さくすることが有効である。
【0024】
一方、安定な除電を行なうためには、加速電圧を大きく、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差を負に、ビームサイズを大きくすることが有効である。
【実施例4】
【0025】
実施例4の手順を図11に示す。本実施例では低倍走査での照射の際に発生する2次電子や反射電子を検出することで除電の進行をモニターする。除電が終了したと判断した時に低倍走査での照射を終了し、次の測長位置への移動へと測長手順を進める。これまでの実施例では低倍走査での照射時間で除電を制御してきたが、材料の不均一性などで除電の速度にバラツキが生じる可能性がある。本実施例では除電の進行をモニターすることにより確実に除電を行うことを目指している。
【0026】
具体的には、得られた2次電子信号や反射電子信号により低倍走査画像を形成する。この画像には測長画像の取得の際に生じた負帯電部分が白い影となって表れる。この負帯電が2次電子を上方に向かって加速するために検出率が増加している。この白い影部は除電の進行に従い消失し、除電が終了したことを知ることができる。この時点で低倍走査を終了することで確実な除電を実行することが出来る。
【0027】
モニターの利用方法としては、図12に示すように指定時間の低倍走査終了後、終了直前に取得した2次電子信号や反射電子信号を用いて除電終了の判定を行う方法もある。この時まだ負帯電の信号が残っていれば追加の照射を行えば良い。この方法は時間制御を基本としながらも確実な除電を可能するもので、2次電子信号や反射電子信号を常にモニターする必要がなくなる利点がある。
【0028】
また、2次電子信号や反射電子信号のモニター方法としても全画像を用いる必要は必ずしもなく、測長画像取得の際の走査領域を含む比較的小さな領域からの信号のみを用いることでモニター感度を上げることも有効である。
【0029】
図13は本実施例での低倍走査での照射の条件を設定する画面を表わした図である。図13Aは照射時間を図11の手順を設定している画面で、照射時間を「AUTO」、モニターを「ON」に設定してあり、照射時間はモニターに従って決まることになる。図13Bは図12の手順を設定している画面で、照射時間を「0.3」秒に設定してあるが、モニターを「ON」としているために除電が不十分な場合は追加の照射が行われることになる。また図には示していないが、照射時間を指定して、モニターを「OFF」にすると照射時間を固定とすることが出来る。
【実施例5】
【0030】
実施例5の手順を図14に示す。本実施例では実施例3と同様に低倍走査中に照射条件を条件1(加速電圧:500V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差:0V、ビームサイズ:3nmφ)から条件2(加速電圧:500V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差:−50V、ビームサイズ:100nmφ)へと変更している。低倍走査での照射の際に発生する2次電子や反射電子によるモニターは条件1での照射の際に行い、除電が指定されたレベルまで進行したことを判定して、条件2での照射に移行する。この方法を用いれば最適なタイミングでの条件の変更が可能となる。
【符号の説明】
【0031】
101−電子銃、102−電子ビーム、103−コンデンサレンズ、104−2次電子や反射電子、105−検出器、106−電磁偏向器、108−電磁レンズ、109−試料、110−ホルダー、111−電子銃制御部、112−コンデンサレンズ制御部、114−走査偏向器制御部、115−電磁レンズ制御部、116−試料電圧制御部、117−記憶装置、118−装置全体の制御演算部、119−表示装置、150−試料対向電極、151−試料対向電極制御部、152−ブースター電極、153−ブースター電極制御部、201−測長画像取得領域、202−低倍走査照射領域、203−次の測長画像取得領域、301、401,601、611−照射条件設定画面、302、402,412、602、612−走査倍率、303,403,413、603、613−加速電圧、304,404,414、604、614−試料電圧、305,405,415、605、615−試料対向電極電圧、306,406,416、606、616−ビームサイズ、307,407,417、607、617−照射時間、501−電子ビーム、502−サイズを変えた電子ビーム、608、618−モニター、1601−入射電子、1602−負帯電、1603−反射電子、1604−2次電子
【技術分野】
【0001】
電子ビームを用いた検査・計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームを用いた試料の観察・検査・計測に用いられる走査電子顕微鏡(SEM)は、電子源から放出された電子を加速し、静電または電磁レンズによって試料表面上に収束させて照射する。これを1次電子という。1次電子の入射によって試料からは2次電子や反射電子が発生する。これら2次電子や反射電子を、電子ビームを偏向して走査しながら検出することで、試料上の微細パターンや組成分布の走査画像を得ることができる。
【0003】
絶縁体を含む試料に電子ビームを照射すると絶縁体が帯電し、1次電子や2次電子の軌道に影響を与える。このために、得られる画像の明るさやコントラストが変化してしまうことになる。こうした現象に対処するために、特開2007−285966や特表2001−508592では画像取得の前や後に低倍走査で電子ビームを照射することで帯電を制御する方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−285966号公報
【特許文献2】特表2001−508592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、インプリント用マスクや回折光学素子などの絶縁体基板では、帯電の影響が特に出やすく、画像の明るさやコントラスト変化以外の現象も顕著になってくる。具体的には、ある測定点で画像を取得した後に、次の測定点に移動して画像を取得しようとすると、前の測定点での試料の帯電が次の測定点での画像取得中の像ドリフトを引き起こす現象が観測されている。その結果として、取得画像の解像度は大きく低下し、例えば測長用走査電子顕微鏡では正しいパターン寸法を計測することができなくなる。上記従来技術はこの問題に対する解答を示しておらず、また、解答を考察するための帯電制御の具体的な条件も提示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するには、測長画像の取得と次の位置での画像取得の間に、測長画像取得より低倍走査での電子ビーム照射を行い、この時の低倍走査での照射時の走査倍率が、走査領域20μm角以上、200μm角以下相当であることが有効である。
【0007】
また、走査倍率以外の条件が過剰な正帯電化を抑える方向に設定されることから低倍走査中に試料対向電極電圧とビームサイズと照射加速電圧の最低1つ以上の条件を変えることが効果的である。更に、低倍走査照射中に取得した2次電子信号や反射電子信号をモニターすることで、低倍走査照射時間の制御を行うことが良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果は画像取得の際に発生した帯電を低倍走査の電子ビーム照射で除電出来ることにある。結果として、絶縁体試料面内での複数点測長を安定して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る装置概要図である。
【図2】本発明の実施例1に係る測長手順の説明図である。
【図3A】従来の帯電現象を説明するための図である。
【図3B】本発明の実施例1に係る帯電現象を説明するための図である。
【図4A】本発明の実施例1に係る走査領域とドリフト低減効率の関係を示す図である。
【図4B】本発明の実施例1に係る走査倍率とドリフト低減効率の関係を示す図である。
【図5A】本発明の実施例2に係る低倍走査条件を示す図である。
【図5B】本発明の実施例2に係る低倍走査条件を示す図である。
【図6A】図5Aの低倍走査条件におけるドリフト量を示す図である。
【図6B】図5Bの低倍走査条件におけるドリフト量を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係る条件指定画面の図である。
【図8】本発明の実施例3に係る測長手順の説明図である。
【図9】本発明の実施例3に係る効果の説明図である。
【図10】本発明の実施例3に係る条件指定画面の図である。
【図11】本発明の実施例4に係る測長手順の説明図である。
【図12】本発明の実施例4に係るもう1つの測長手順の説明図である。
【図13A】本発明の実施例4に係る条件指定画面の図である。
【図13B】本発明の実施例4に係る条件指定画面の図である。
【図14】本発明の実施例5に係る測長手順の説明図である。
【図15A】従来の除電効果の説明図である。
【図15B】本発明の実施例1に係る除電効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1に実施例1の装置概要図を示す。電子銃101から放出された電子ビーム102はコンデンサレンズ103、130と電磁レンズ108により試料109上に結像される。本実施例では対物レンズは電磁レンズ108と、電磁レンズ108と試料109間の電場により生じる静電レンズにより、主に構成されている。そして試料109から放出される2次電子や反射電子104は中間にある検出器105により検出される。試料109上の電子ビームは走査偏向器106により2次元に走査され、装置全体の制御演算部118により画像処理して2次元画像を得ることが出来る。2次元画像は表示装置119に表示され、記録装置117に記録される。また試料109の直上には試料対向電極150が設置されており、試料109表面の電界(電位勾配)を制御している。また、電子銃101、第1コンデンサレンズ103、第2コンデンサレンズ130、走査偏向器106、ブースター電極152、電磁レンズ108、試料対向電極150、試料109はそれぞれ、電子銃制御部111、第1コンデンサレンズ制御部112、第2コンデンサレンズ制御部131、走査偏向器制御部114、ブースター電極制御部153、電磁レンズ制御部115、試料対向電極制御部151、試料電圧制御部116により制御される。
【0011】
図2には本実施例の測長手順を示す。高倍走査、すなわち高い倍率による狭い領域での走査により試料上に形成されたパターンの測長画像を取得した後に、測長画像を取得した領域に低倍走査、すなわち低い倍率による広い領域での走査をすることで除電を行う。次にステージ移動により測長位置を移動し、高倍走査により測長画像を取得する。この手順を繰り返すことで除電しながら試料上の複数点の測長を行う。
【0012】
なお、測長画像の取得条件は試料へ照射される電子ビームの照射加速電圧が500V、電流が8pA、走査倍率が100,000倍、1フレームが40msecで加算フレーム数が16フレームである。照射電子ビームの加速電圧500Vは、電子源に−3,000Vの電圧を印加して試料に−2,500Vの電圧を印加することで実現している。
【0013】
図3及び図15を用いて電子ビームの照射による帯電状態の変化を説明する。まず、絶縁体試料に低加速高倍走査で電子ビームを照射すると、照射部(測長画像取得領域201)は初め正に帯電するものの、次第に帯電の方向が反転し、最終的には負に帯電する(図3A(a)、図15A(a))。この負帯電を放置したまま次の測長点(測長画像取得領域203)に移動して測長画像の取得を始めると、画像取得の際に発生する比較的高速な反射電子により負帯電領域から2次電子が放出される(図3A(b)、図15A(b))。これにより負帯電が徐々に緩和し、結果として測長画像取得中に像ドリフトが生じてしまう。その結果、取得画像の解像度は大きく低下し、正しい測長をすることができなくなる。そこで、本実施例では、測長画像取得済みの照射領域の負帯電を除電するために低倍走査での電子ビーム照射を実行している(図3B(b)、図15B(b))。低倍走査の照射条件は加速電圧が500V、電流が8pA、走査倍率が3,000倍、照射時間1秒である。低倍走査では、高倍照射と異なり、発生する2次電子により照射領域は正帯電する傾向があり、測長画像取得照射により生じた負帯電を除電する効果がある。この結果、次の測長画像取得の際には前の測長画像取得の影響は軽減されることになる(図3B(c)、図15B(c))。本実施例では前の測長と次の測長の間に、次の測長ポイントに移動する前にこの低倍走査を実行することにより測長画像取得の際の10秒間当たりの像ドリフトを300nmから50nm以下へと低減することが出来た。
【0014】
図4Aは照射時間あたりのドリフト低減効率と走査領域、図4Bはドリフト低減効率と走査倍率の関係を示した図である。低倍走査時の走査倍率は、走査領域が20μm角以上の倍率(本実施例の装置では5,000倍)から、走査領域が200μm角以下の倍率(本実施例の装置では500倍)で効果があり、これ以上の高い走査倍率や低い走査倍率での走査では必要な正帯電効果を得ることが出来ないことが分かる。低すぎる走査倍率で効率が低下する理由は、照射する電子ビームの密度が低くなるため、実質的に除電に寄与する電子数が小さくなるためである。
【0015】
また、高い再現性を得るための測長画像取得時の走査領域は1μm角(本実施例の装置では100,000倍の倍率)より小さいため、低倍走査の走査倍率は測長画像取得時よりも1桁以上小さいことが望ましい。
【実施例2】
【0016】
実施例2でも実施例1と同様の装置と測長手順を用いている。ただし、本実施形態では図5に示すように走査倍率以外の低倍走査の照射条件の一部を測長画像取得条件と変化させている。具体的には加速電圧と、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差と、照射ビームサイズである。図5Aに示すように測長画像取得の際は、加速電圧が500V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差が0V、照射ビームサイズが3nmφであるのに対して、図5Bに示すように低倍走査の際には加速電圧を300V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差を−50V、照射ビームサイズを100nmφとし、加速電圧と、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差を低くして、ビームサイズを大きくしている。なお、100nmφへのビームサイズの変更は焦点位置を変化させることで行っている。焦点変化は頻繁に行うことになるためにヒステリシスのない静電で行うことが望ましい。具体的にはブースター電極の電圧や試料の電圧を変化させて行うことになる。
【0017】
照射条件を変化させた効果を図6に示す。スループットの観点から低倍走査照射時間を1秒以内に、ドリフト量を30nm以下とすることが好ましい。図6Aは低倍走査時の試料対向電極電圧と試料電圧との電位差と、ビームサイズが測長画像取得時と同じ場合(すなわち図5Aの条件の場合)、図6Bは本実施例(すなわち図5Bの条件の場合)の場合である。図6Aの同じ条件でもドリフトの低減効果は明らかで、照射時間が0.4秒程度で瞬間的にドリフト量がほぼなくなっている。さらに照射時間を延ばすとドリフトは反転するが、2秒後に30nm以下に落ち着いている。図6Aは、精密な時間の制御でドリフト量を0にすることが可能であることを示しているが、除電の速度が速いので精密な時間の制御は容易ではない。制御性を考えるとこの照射条件は好ましくない。
【0018】
これに対して図6Bでは1秒間でドリフト量が30nm以下となっており、それ以降もドリフト量が増加する様子は見られない。従って、この条件を用いることで、スループットとドリフト抑制を同時に満足することが可能となる。
【0019】
加速電圧を下げることは反射電子の放出率を低下させる。2次電子は試料帯電により2次電子が引き戻される現象により実質的な放出率が低下するが、反射電子ではその現象は起こりにくく、放出率が低下しにくい。そのために、加速電圧を下げることは過剰な正帯電化を抑制する方向に効果が現れる。また、試料対向電極電圧と試料電圧の電位差を負にすることは試料から放出された2次電子を試料に戻す効果があり、試料の過剰な正帯電化を抑える効果がある。更に、ビームサイズを大きくすることは、低倍走査でも隣接する走査ビームとの距離が短くなるため、2次電子の実効的な放出率が低下することになり、やはり過剰な正帯電化を抑制する効果がある。この結果、図6Aでみられた除電の行き過ぎを抑制することが可能となり、安定な除電を実現することが出来る。なお、本実施例では、加速電圧と、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差と、照射ビームサイズの3つの条件を変化させたが、それぞれ1つの条件を変化させることでも最終的な帯電を小さくする効果を得ることが出来る。
【0020】
図7は本実施例での低倍走査での照射の条件を設定する画面301である。パラメータとして、走査倍率302、加速電圧303、試料対向電極電圧305、ビームサイズ306、照射時間307を設定できるようになっている。なお、試料電位(試料電圧)304は加速電圧303を設定することで自動的に設定される。
【実施例3】
【0021】
実施例3でも実施例1と同様の装置を用いるが、測長手順は図8に従っている。図8と図2の差は低倍走査での照射が2つに分かれていることである。すなわち本実施例では低倍走査中に照射条件を変更している。図8から分かるように除電時間を短くするとドリフト量を0とするための時間管理が困難となり、安定にドリフト量を0とするためには照射時間が長くなる。そこで本実施例では高速除電と安定除電を両立させるために低倍走査の途中に照射条件を変化させている。具体的には条件1として測長画像取得と同じ条件(加速電圧:500V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差:0V、ビームサイズ:3nmφ)で0.3秒照射し、引き続き、条件2(加速電圧:300V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差:−50V、ビームサイズ:100nmφ)で1.0秒照射した。これにより全体で1.3秒の照射で除電が完了し、ドリフト量を10nm以下とすることが出来た。全照射時間は実施例2の2/3に短縮されていることになる。図9には横軸を条件2での照射時間とした結果を示す。全照射時間はこれに0.3秒加算した時間となる。
【0022】
図10は本実施例での低倍走査での照射の条件を設定する画面を表わした図である。設定画面では2つの条件の設定が可能であり、それぞれ独立に走査倍率402、412、加速電圧403、413、試料対向電極電圧405、415、ビームサイズ406、416、照射時間の設定が可能となっている。
【0023】
高速な除電を行なうためには、加速電圧を小さく、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差を0から正に、ビームサイズを小さくすることが有効である。
【0024】
一方、安定な除電を行なうためには、加速電圧を大きく、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差を負に、ビームサイズを大きくすることが有効である。
【実施例4】
【0025】
実施例4の手順を図11に示す。本実施例では低倍走査での照射の際に発生する2次電子や反射電子を検出することで除電の進行をモニターする。除電が終了したと判断した時に低倍走査での照射を終了し、次の測長位置への移動へと測長手順を進める。これまでの実施例では低倍走査での照射時間で除電を制御してきたが、材料の不均一性などで除電の速度にバラツキが生じる可能性がある。本実施例では除電の進行をモニターすることにより確実に除電を行うことを目指している。
【0026】
具体的には、得られた2次電子信号や反射電子信号により低倍走査画像を形成する。この画像には測長画像の取得の際に生じた負帯電部分が白い影となって表れる。この負帯電が2次電子を上方に向かって加速するために検出率が増加している。この白い影部は除電の進行に従い消失し、除電が終了したことを知ることができる。この時点で低倍走査を終了することで確実な除電を実行することが出来る。
【0027】
モニターの利用方法としては、図12に示すように指定時間の低倍走査終了後、終了直前に取得した2次電子信号や反射電子信号を用いて除電終了の判定を行う方法もある。この時まだ負帯電の信号が残っていれば追加の照射を行えば良い。この方法は時間制御を基本としながらも確実な除電を可能するもので、2次電子信号や反射電子信号を常にモニターする必要がなくなる利点がある。
【0028】
また、2次電子信号や反射電子信号のモニター方法としても全画像を用いる必要は必ずしもなく、測長画像取得の際の走査領域を含む比較的小さな領域からの信号のみを用いることでモニター感度を上げることも有効である。
【0029】
図13は本実施例での低倍走査での照射の条件を設定する画面を表わした図である。図13Aは照射時間を図11の手順を設定している画面で、照射時間を「AUTO」、モニターを「ON」に設定してあり、照射時間はモニターに従って決まることになる。図13Bは図12の手順を設定している画面で、照射時間を「0.3」秒に設定してあるが、モニターを「ON」としているために除電が不十分な場合は追加の照射が行われることになる。また図には示していないが、照射時間を指定して、モニターを「OFF」にすると照射時間を固定とすることが出来る。
【実施例5】
【0030】
実施例5の手順を図14に示す。本実施例では実施例3と同様に低倍走査中に照射条件を条件1(加速電圧:500V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差:0V、ビームサイズ:3nmφ)から条件2(加速電圧:500V、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差:−50V、ビームサイズ:100nmφ)へと変更している。低倍走査での照射の際に発生する2次電子や反射電子によるモニターは条件1での照射の際に行い、除電が指定されたレベルまで進行したことを判定して、条件2での照射に移行する。この方法を用いれば最適なタイミングでの条件の変更が可能となる。
【符号の説明】
【0031】
101−電子銃、102−電子ビーム、103−コンデンサレンズ、104−2次電子や反射電子、105−検出器、106−電磁偏向器、108−電磁レンズ、109−試料、110−ホルダー、111−電子銃制御部、112−コンデンサレンズ制御部、114−走査偏向器制御部、115−電磁レンズ制御部、116−試料電圧制御部、117−記憶装置、118−装置全体の制御演算部、119−表示装置、150−試料対向電極、151−試料対向電極制御部、152−ブースター電極、153−ブースター電極制御部、201−測長画像取得領域、202−低倍走査照射領域、203−次の測長画像取得領域、301、401,601、611−照射条件設定画面、302、402,412、602、612−走査倍率、303,403,413、603、613−加速電圧、304,404,414、604、614−試料電圧、305,405,415、605、615−試料対向電極電圧、306,406,416、606、616−ビームサイズ、307,407,417、607、617−照射時間、501−電子ビーム、502−サイズを変えた電子ビーム、608、618−モニター、1601−入射電子、1602−負帯電、1603−反射電子、1604−2次電子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源から放出された電子ビームを走査する走査偏向器と、試料を設置するステージと、前記電子ビームを走査しながら前記ステージ上に設置した前記試料に照射し、前記試料から発生する2次電子信号や反射電子信号を検出する検出器と、検出した前記2次電子信号や反射電子信号に基づいて画像処理する画像処理部とを備え、パターン寸法を測長する走査電子顕微鏡において、
所定の走査倍率でパターン寸法を測長した後に、次に測長する走査領域に移動する前に、測長時よりも低い走査倍率で、且つ正帯電化が促進される走査倍率範囲で、前記測長した走査領域を含み、それよりも広い走査領域に前記電子ビームを走査しながら照射した後に、次に測長する走査領域に前記ステージを移動するように制御する制御演算部を備えることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、前記測長時よりも低い走査倍率とは、走査領域が20μm角以上、200μm角以下の倍率範囲であることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、前記走査倍率範囲以外の電子ビーム照射条件を、正帯電化を抑制する値に設定することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項3に記載の走査電子顕微鏡において、前記試料の直上に前記試料の表面の電界を制御する試料対向電極を備え、
前記走査倍率以外の電子ビーム照射条件は、前記電子ビームの照射加速電圧、前記試料対向電極電圧と試料電圧との電位差、前記電子ビームのビームサイズであり、少なくとも1つ以上の条件を正帯電化を抑制する値に設定することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項4に記載の走査電子顕微鏡において、前記電子ビームの照射加速電圧が、前記測長画像取得時より低いことを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項4に記載の走査電子顕微鏡において、前記試料対向電極電圧と試料電圧との電位差が負の値であることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項4に記載の走査電子顕微鏡において、前記ビームサイズが前記測長画像取得時より大きなことを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、所定の走査倍率でパターン寸法を測長した後に、次に測長する走査領域に移動する前に、測長時よりも低い走査倍率で、且つ正帯電化が促進される走査倍率範囲で、前記測長した走査領域を含み、それよりも広い走査領域に前記電子ビームを走査しながら照射中に、前記電子ビームの照射加速電圧、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差、前記電子ビームのビームサイズのうち、少なくとも1つ以上の条件を再設定することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、所定の走査倍率でパターン寸法を測長した後に、次に測長する走査領域に移動する前に、測長時よりも低い走査倍率で、且つ正帯電化が促進される走査倍率範囲で、前記測長した走査領域を含み、それよりも広い走査領域に前記電子ビームを照射中に、前記試料から発生する2次電子信号や反射電子信号に基づいて、前記低い走査倍率での前記電子ビームの照射時間を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項9に記載の走査電子顕微鏡において、前記取得した画像をモニターし、測長画像取得時よりも低い走査倍率での前記電子ビームによる照射の全照射時間において制御を行うことを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項11】
請求項9に記載の走査電子顕微鏡において、前記取得した画像をモニターし、測長画像取得時よりも低い走査倍率での前記電子ビームによる照射中の照射条件の切り替えまでの照射時間を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項12】
電子源から放出された電子ビームを走査する走査偏向器と、試料を設置するステージと、前記電子ビームを走査しながら前記ステージ上に設置した試料に照射し、前記試料から発生する2次電子信号や反射電子信号を検出する検出器と、検出した前記2次電子信号や反射電子信号に基づいて画像処理する画像処理部とを備え、パターン寸法を測長する走査電子顕微鏡において、
所定の走査倍率でパターン寸法を測長した後に、次に測長する走査領域に移動する前に、測長時よりも1桁以上低い走査倍率で、且つ正帯電化が促進される走査倍率範囲で、前記測長した走査領域を含み、それよりも広い走査領域に前記電子ビームを走査しながら照射した後に、次に測長する走査領域にステージ移動することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項1】
電子源から放出された電子ビームを走査する走査偏向器と、試料を設置するステージと、前記電子ビームを走査しながら前記ステージ上に設置した前記試料に照射し、前記試料から発生する2次電子信号や反射電子信号を検出する検出器と、検出した前記2次電子信号や反射電子信号に基づいて画像処理する画像処理部とを備え、パターン寸法を測長する走査電子顕微鏡において、
所定の走査倍率でパターン寸法を測長した後に、次に測長する走査領域に移動する前に、測長時よりも低い走査倍率で、且つ正帯電化が促進される走査倍率範囲で、前記測長した走査領域を含み、それよりも広い走査領域に前記電子ビームを走査しながら照射した後に、次に測長する走査領域に前記ステージを移動するように制御する制御演算部を備えることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、前記測長時よりも低い走査倍率とは、走査領域が20μm角以上、200μm角以下の倍率範囲であることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、前記走査倍率範囲以外の電子ビーム照射条件を、正帯電化を抑制する値に設定することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項3に記載の走査電子顕微鏡において、前記試料の直上に前記試料の表面の電界を制御する試料対向電極を備え、
前記走査倍率以外の電子ビーム照射条件は、前記電子ビームの照射加速電圧、前記試料対向電極電圧と試料電圧との電位差、前記電子ビームのビームサイズであり、少なくとも1つ以上の条件を正帯電化を抑制する値に設定することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項4に記載の走査電子顕微鏡において、前記電子ビームの照射加速電圧が、前記測長画像取得時より低いことを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項4に記載の走査電子顕微鏡において、前記試料対向電極電圧と試料電圧との電位差が負の値であることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項4に記載の走査電子顕微鏡において、前記ビームサイズが前記測長画像取得時より大きなことを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、所定の走査倍率でパターン寸法を測長した後に、次に測長する走査領域に移動する前に、測長時よりも低い走査倍率で、且つ正帯電化が促進される走査倍率範囲で、前記測長した走査領域を含み、それよりも広い走査領域に前記電子ビームを走査しながら照射中に、前記電子ビームの照射加速電圧、試料対向電極電圧と試料電圧との電位差、前記電子ビームのビームサイズのうち、少なくとも1つ以上の条件を再設定することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項1に記載の走査電子顕微鏡において、所定の走査倍率でパターン寸法を測長した後に、次に測長する走査領域に移動する前に、測長時よりも低い走査倍率で、且つ正帯電化が促進される走査倍率範囲で、前記測長した走査領域を含み、それよりも広い走査領域に前記電子ビームを照射中に、前記試料から発生する2次電子信号や反射電子信号に基づいて、前記低い走査倍率での前記電子ビームの照射時間を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項9に記載の走査電子顕微鏡において、前記取得した画像をモニターし、測長画像取得時よりも低い走査倍率での前記電子ビームによる照射の全照射時間において制御を行うことを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項11】
請求項9に記載の走査電子顕微鏡において、前記取得した画像をモニターし、測長画像取得時よりも低い走査倍率での前記電子ビームによる照射中の照射条件の切り替えまでの照射時間を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項12】
電子源から放出された電子ビームを走査する走査偏向器と、試料を設置するステージと、前記電子ビームを走査しながら前記ステージ上に設置した試料に照射し、前記試料から発生する2次電子信号や反射電子信号を検出する検出器と、検出した前記2次電子信号や反射電子信号に基づいて画像処理する画像処理部とを備え、パターン寸法を測長する走査電子顕微鏡において、
所定の走査倍率でパターン寸法を測長した後に、次に測長する走査領域に移動する前に、測長時よりも1桁以上低い走査倍率で、且つ正帯電化が促進される走査倍率範囲で、前記測長した走査領域を含み、それよりも広い走査領域に前記電子ビームを走査しながら照射した後に、次に測長する走査領域にステージ移動することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【公開番号】特開2013−65420(P2013−65420A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202560(P2011−202560)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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