説明

走行待機状態通知装置および走行待機状態通知装置要のプログラム

【課題】従来よりも効果的にドライバに走行待機状態であることに気付かせる。
【解決手段】走行待機状態通知装置は、車両のドライバがアクセル操作をすれば前記車両が動き出す走行待機状態にあるか否かを判定し(ステップ110)、走行待機状態にあると判定したとき、走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、ドライバが走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定し(ステップ130)、危険状態であると判定したことに基づいて、車両が走行待機状態であることをドライバに通知する(ステップ150〜170)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行待機状態通知装置要および走行待機状態通知装置要のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気モータを動力源として走行する電気自動車(EV)や、停車時に内燃機関(エンジン)の作動が停止するアイドリングストップ車両では、走行待機状態においてアイドリング音が発生せず、そのためドライバが走行待機状態であることに気付かずに誤ってアクセル操作をしてしまい、その結果車両が急発進してしまう恐れがあった。
【0003】
この対策として、特許文献1では、車両が走行待機状態にあるか否かを判定し、走行待機状態に入れば、直ちに車室内に所定の楽音を周期的に発生させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−268625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本願発明者の検討によれば、走行待機状態になって直ちに楽音を周期的に発生させても、それがドライバに走行待機状態であることに気付かせることの役に立つかと言えば、必ずしもそうではない。
【0006】
例えば、ドライバがスイッチを操作して車両を駐車状態から走行待機状態に移行させた直後は、ドライバ自身が走行待機状態であることを当然に知っているので、そのようなときにまで直ちに楽音を周期的に発生させる必要がない。
【0007】
ドライバに走行待機状態であることを認識させる必要がない時にまで楽音を発生させれば、ドライバに却って不快感を与えてしまい、また、車内の静粛性も損なわれる。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、従来よりも効果的にドライバに走行待機状態であることに気付かせる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両に搭載され、前記車両が走行待機状態であることをドライバに通知する走行待機状態通知装置であって、前記車両のドライバがアクセル操作をすれば前記車両が動き出す走行待機状態にあるか否かを判定する走行待機状態判定手段(110)と、前記走行待機状態判定手段(110)が前記走行待機状態にあると判定した場合、前記走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、または、前記ドライバの行動を検出するセンサの検出結果に基づいて、前記ドライバが前記走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定する危険状態判定手段(130)と、前記危険状態判定手段(130)が前記危険状態であると判定したことに基づいて、前記車両が前記走行待機状態であることを前記ドライバに通知する通知手段(150〜170、13)と、を備えた走行待機状態通知装置である。
【0010】
このように、走行待機状態通知装置は、車両が走行待機状態に入った後に、前記走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、または、前記ドライバの行動を検出するセンサの検出結果に基づいて、前記ドライバが走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定し、危険状態であると判定すると、車両が走行待機状態であることをドライバに通知するようになっている。したがって、ドライバ走行待機状態を意識している状況においてまで、車両が走行待機状態であることを無駄にドライバに通知してしまう可能性が低減される。したがって、従来よりも効果的にドライバに走行待機状態であることに気付かせることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の走行待機状態通知装置において、前記通知手段は(150〜170、13)は、前記車両の運転席に取り付けられた振動部を振動させることで、前記車両が前記走行待機状態であることを前記ドライバに通知することを特徴とする。
【0012】
このように、運転席の振動を用いて通知することで、内燃機関を有する車両のアイドリング時に発生する振動と似た刺激をドライバに与えることができるので、ドライバは、車両が走行待機状態であることを経験的に認識することができ、それ故、通知を受けているにも関わらず走行待機状態であることを忘れてしまってアクセル操作を行ってしまう可能性が低下する。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の走行待機状態通知装置において、前記通知手段(150〜170、13)は、前記車両の車速が所定の閾値を超えたことに基づいて、前記車両が前記走行待機状態であることの通知を終了することを特徴とする。
【0014】
このようにすることで、待機状態を脱して走行状態になったと推定できる時点で警告を停止しドライバへの無駄な警告通知を止めることによって、快適な走行を可能とすることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の走行待機状態通知装置において、前記危険状態判定手段(130)は、前記走行待機状態判定手段(110)が前記走行待機状態にあると判定した後、前記走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、前記ドライバが走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定し、前記車両が前記メインスイッチの最後のオン以降まだ走行していない場合よりも、前記車両が前記メインスイッチの最後のオン以降走行したことがある場合の方が、前記所定時間が長いことを特徴とする。
【0016】
メインスイッチの最後のオン以降車両が走行していない場合の走行待機状態は、車両にドライバが搭乗してから走行開始するまでの時間帯に発生する。メインスイッチの最後のオン以降車両がしたことがある場合の走行待機状態は、信号待ち等、車両が一時停止したときに発生する。前者と後者を比べると、後者の方がドライバの緊張感が高い傾向にあるので、車両が走行待機状態にあることを忘れてしまうまでの時間が長くなる場合が多い。
【0017】
したがって、上記のように、メインスイッチの最後のオン以降車両が走行していない場合よりもメインスイッチの最後のオン以降車両が走行したことがある場合の方が、所定時間が長くなるようにすることで、無駄に走行待機状態の通知をしてしまう可能性を更に低減することができる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、車両に搭載され、前記車両のドライバがアクセル操作をすれば前記車両が動き出す走行待機状態であることをドライバに通知する走行待機状態通知装置に用いるプログラムであって、前記走行待機状態通知装置を、前記車両のドライバが前記走行待機状態にあるか否かを判定する走行待機状態判定手段(110)、前記走行待機状態判定手段(110)が前記走行待機状態にあると判定した場合、前記走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、または、前記ドライバの行動を検出するセンサの検出結果に基づいて、前記ドライバが前記走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定する危険状態判定手段(130)、および、前記危険状態判定手段(130)が前記危険状態であると判定したことに基づいて、前記車両が前記走行待機状態であることを前記ドライバに通知する通知手段(150〜170、13)として機能させるプログラムである。このように、本発明の特徴は、プログラムとしても捉えることができる。
【0019】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示す図である。
【図2】危険状態予測部の処理内容を示すフローチャートである。
【図3】走行待機状態通知装置の作動タイミングの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。この車載システムは、車両に搭載され、走行待機状態通知装置1、メインスイッチ2、サイドブレーキセンサ3、ブレーキペダルセンサ4、車速センサ5、シート振動部6、発音部7、表示部8を備えている。なお、この車両は、電気自動車である。電気自動車は、内燃機関であるエンジンを備えず、電動モータが発生する駆動力で車両を走行させる車両である。
【0022】
走行待機状態通知装置1は、車両に搭載され、車両が走行待機状態であることを必要に応じてドライバに通知する装置である。走行待機状態とは、車両が停止しており、かつ、車両のドライバがアクセル操作をすれば車両が動き出すような状態をいう。このような状態では、ドライバが無意識にアクセル操作をしてしまうと、意図せず車両が急発進してしまう恐れがある。
【0023】
特に、電気自動車では、このような事態が発生する可能性が高くなる。なぜなら、内燃機関であるエンジンを有さない電気自動車では、エンジンのアイドリング音が発生せず、また、クリープ力(ブレーキペダルを外せば、アクセル操作していなくても車両を走行させ始める力)が発生しないので、ブレーキペダルを踏まなくとも車両が動き出さないからである。
【0024】
メインスイッチ2は、車両の主電源のオン、オフを切り替えるスイッチである。このメインスイッチ2がオンになると、上記電動モータに電力が供給可能となり、メインスイッチ2がオフになると、上記電動モータに電力が供給不可能となる。
【0025】
サイドブレーキセンサ3は、車両のサイドブレーキの作動状態を検出して走行待機状態通知装置1に出力するセンサである。具体的には、サイドブレーキがかかっているオン状態とサイドブレーキが解除となっているリリース状態とのどちらかを検出し、検出結果の検出信号を走行待機状態通知装置1に出力する。
【0026】
ブレーキペダルセンサ4は、車両のブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出し、検出結果の検出信号を走行待機状態通知装置1に出力する。車速センサ5は、車両の走行速度を検出し、検出結果の検出信号を走行待機状態通知装置1に出力する。
【0027】
シート振動部6は、車両の各座席(運転席、助手席、後部座席等)に取り付けられ、走行待機状態通知装置1からの制御に従って振動することで、当該座席に着座する乗員に振動を伝える。
【0028】
発音部7は、走行待機状態通知装置1からの制御に従って各種音を車室内に出力する装置(例えば、アンプおよびスピーカ)である。表示部8は、走行待機状態通知装置1からの制御に従って文字または画像をドライバに表示する画像表示装置である。
【0029】
ここで、走行待機状態通知装置1の構成について更に詳しく説明する。走行待機状態通知装置1は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備えたマイクロコンピュータであり、CPUがROM、フラッシュメモリに記録されたプログラムを実行することで、走行待機状態通知装置1が後述する処理を実現するようになっている。
【0030】
走行待機状態通知装置1が実現する処理を機能別に分けると、図1に示すように、タイマ部11、危険状態予測部12、警告制御部13に分けることができる。
【0031】
タイマ部11は、危険状態予測部12から時間が設定されると、設定された時間が満了するまで待ち、満了すると、満了信号を危険状態予測部12に出力する処理を実現する。
【0032】
危険状態予測部12は、メインスイッチ2、サイドブレーキセンサ3、車速センサ5、タイマ部11からの信号に基づいて、車両が走行待機状態にあるとき、ドライバが当該走行待機状態を意識していない危険状態にあるか否かを判定し、危険状態にあると判定した場合は、警告制御部13への警告信号をオフからオンとする。
【0033】
警告制御部13は、危険状態予測部12からの警告信号がオンとなっているとき、運転席のみのシート振動部6振動させるか、発音部7に音を出力させるか、表示部8に文字または画像を表示させることで、車両が走行待機状態であることをドライバに通知する。
【0034】
図2に、危険状態予測部12の処理の詳細をフローチャートで示す。危険状態予測部12は、この図2に示す処理を、メインスイッチ2のオン、オフに関わらず常に実行するようになっていてもよいし、メインスイッチ2のオン時に実行を開始するようになっていてもよい。
【0035】
まずステップ110では、車両が走行待機状態であるか否かを判定する。走行待機状態とは、車両が停止しており、かつ、車両のドライバがアクセル操作をすれば車両が動き出すような状態をいう。
【0036】
この判定は、所定の待機条件が満たされるか否かで判定する。待機条件は、「メインスイッチ2がオンの状態で、車両が停止しており、かつ、サイドブレーキがリリース状態である」という条件である。サイドブレーキがリリース状態であるか否かは、サイドブレーキセンサ3からの検出信号に基づいて判定する。車両が停止しているか否かは、車速センサ5からの検出信号に基づいて車速を算出し、算出した車速がゼロであるか否かで判定する。メインスイッチ2がオンであるか否かは、メインスイッチ2からの検出信号に基づいて特定することもできるが、この図2に示す処理がメインスイッチ2のオン時に実行開始されるようになっている場合は、メインスイッチ2からの検出信号を用いるまでもなく、常にメインスイッチ2がオンであると判定すればよい。
【0037】
なお、オートマチックトランスミッションを備えた車両では、ドライブレンジとしてパーキングレンジを選択すると、車両が走行できないようになっているが、本実施形態の車両は、このような機構を有していないものとする。
【0038】
そして、車両が走行待機状態にあると判定するまで、このステップ110の判定を繰り返し、走行待機状態にあると判定すると、続いてステップ120に進む。
【0039】
ステップ120では、タイマ部11に所定の時間T(例えば30秒)を設定する。この時間Tは、ドライバが自ら車両を走行待機状態にしがらも、走行待機状態となっていることを忘れてしまう時間として、あらかじめ経験的に決めてROM、フラッシュメモリに記憶しておいたものを用いる。
【0040】
すると、タイマ部11は、時間Tが設定された時点を起点とし、その起点から経過した時間が設定された時間Tとなるまで、すなわち、設定された時間Tが満了するまで待ち、満了すると、満了信号を危険状態予測部12に出力する。
【0041】
以上のようになっているので、タイマ部11への時間Tの設定タイミングは、(1)サイドブレーキがオン状態からリリース状態への変化、および(2)メインスイッチ2のオフからオンへの変化、の2つのうち、遅く実現した方のタイミングと一致することになる。
【0042】
ステップ120に続いて危険状態予測部12は、ステップ130で、タイマ部11からタイマ満了信号を受信したか否かによって、走行待機状態の開始から所定の時間Tが経過したか否か(タイマが満了したか否か)を判定し、経過したと判定するまで、この判定を繰り返す。
【0043】
ただし、その繰り返し中には、ステップ140を実行し、車速が閾値Vt(例えば3km/h)を越えたか否かを、車速センサ5からの検出信号に基づいて判定し、閾値Vtを超えていなければ、そのままステップ130に戻り、閾値Vtを超えていれば、ステップ110の車両が走行待機状態であるか否かの判定に戻る。これは、既に車両が走行を開始した場合には、走行待機状態でなくなったので、走行待機状態を通知する必要がなくなったからである。
【0044】
ステップ130で時間Tが経過したと判定すると、続いてステップ150で、警告制御部13への警告信号をオフからオンにする。これにより、警告制御部13は、シート振動部6、発音部7、表示部8の一部または全部を用いて、車両が走行待機状態であることをドライバに警告通知する。
【0045】
例えば、車両の座席のうち、運転席のみのシート振動部6を振動させ始める。運転席のみに限定するのは、車両が走行待機状態を通知する必要があるのは、基本的にドライバだけだからである。また例えば、発音部7を制御して、「車両が走行待機状態です」というアナウンス音声の繰り返し出力を始めてもよいし、周期的にチャイム音を出力させ始めてもよいし、エンジンのアイドリング音を模した音を出力させ始めてもよい。また例えば、表示部8に「車両が走行待機状態です」という文字を表示させてもよい。また、これら3つの例を適宜組み合わせてもよい。
【0046】
ステップ150に続いて、危険状態予測部12はステップ160に進み、車速が上記閾値Vtを超えるまで、すなわち、車両が走行開始するまで待つ。車速が閾値Vtを超えると、続いてステップ170で、警告制御部13への警告信号をオンからオフにし、その後、ステップ110の車両が走行待機状態であるか否かの判定に戻る。
【0047】
危険状態予測部12からの警告信号がオフになると、警告制御部13は、シート振動部6の振動を停止させる、発音部7の出力を停止する、表示部8の表示を終了する等の方法で、車両が走行待機状態であることの警告通知を終了する。
【0048】
以下、このような処理を行う走行待機状態通知装置1の具体的な作動タイミングについて、図3を用いて説明する。図3は、横軸を時間t、縦軸を車速Vとするグラフであり、実線21が車両の車速変化を表す。
【0049】
まず、時刻t0に車両にドライバが乗車し、時刻t1にメインスイッチ2をオンにしてサイドブレーキをリリース状態にしたとする。時刻t1から時刻t2の期間の車速は、ゼロである。したがって危険状態予測部12は、時刻t1において、ステップ110で走行待機状態であると判定し、続いてステップ120でタイマ部11に時間Tを設定する。
【0050】
その後、他の同乗者を待つ等々の理由で、ドライバがアクセル操作しないまま時間Tが経過したとする。すると、その時刻t2=t1+Tにおいて危険状態予測部12は、ステップ130でタイマが満了したと判定し、さらにステップ150で警告信号をオンに切り替える。これにより、警告制御部13が走行待機状態を知らせる警告通知を行う。
【0051】
このように、車両の発進前に、走行待機状態からしばらく経ってドライバが走行待機状態を忘れた頃に、警告制御部13が警告通知を行うので、ドライバは、適切なタイミングで警告通知を受けることができ、それにより、誤ってアクセル操作をしてしまう可能性が低下する。
【0052】
そして時刻t2の後、ドライバが意図してアクセル操作をすると、車両は走行し加速し始め、車速が閾値Vtに到達する。するとその直後の時点t3で、危険状態予測部12がステップ160で車速が閾値Vtを超えたと判定してステップ170に進み、警告信号をオフに切り替える。すると警告制御部13は、不必要になった走行待機状態であることの警告通知を終了する。
【0053】
その後、車両が減速し、時刻t4に、信号待ち等の目的で一時停止したとする。この場合、メインスイッチ2はオンのままで、サイドブレーキもリリース状態のままなので、直ちにステップ110で走行待機状態であると判定し、ステップ120でタイマ部11に時間Tを設定する。
【0054】
その後、ドライバがアクセル操作しないまま時間Tが経過したとする。すると、その時刻t5=t4+Tにおいて危険状態予測部12は、ステップ130でタイマが満了したと判定し、さらにステップ150で警告信号をオンに切り替える。これにより、警告制御部13が走行待機状態を知らせる警告通知を行う。
【0055】
このように、車両の一時停止時においても、走行待機状態からしばらく経ってドライバが走行待機状態を忘れた頃に、警告制御部13が警告通知を行うので、ドライバは、適切なタイミングで警告通知を受けることができ、それにより、誤ってアクセル操作をしてしまう可能性が低下する。
【0056】
そして時刻t5の後、ドライバが意図してアクセル操作をすると、車両は走行し加速し始め、車速が閾値Vtに到達する。するとその直後の時点t6で、危険状態予測部12がステップ160で車速が閾値Vtを超えたと判定してステップ170に進み、警告信号をオフに切り替える。すると警告制御部13は、不必要になった走行待機状態であることの警告通知を終了する。
【0057】
以上説明した通り、走行待機状態通知装置1は、車両のドライバがアクセル操作をすれば前記車両が動き出す走行待機状態にあるか否かを判定し(ステップ110)、走行待機状態にあると判定したとき、走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、ドライバが走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定し(ステップ130)、危険状態であると判定したことに基づいて、車両が走行待機状態であることをドライバに通知する(ステップ150〜170、警告制御部13)。
【0058】
このようになっていることで、ドライバ走行待機状態を意識している状況においてまで、車両が走行待機状態であることを無駄にドライバに通知してしまう可能性が低減される。したがって、従来よりも効果的にドライバに走行待機状態であることに気付かせることができる。
【0059】
つまり、ドライバが走行待機状態であることを認識している時やサイドブレーキがオン状態の時(必ずしも危険状態でない時)でも警告通知が為され、その結果、ドライバを含む乗員に不快感を与えてしまう可能性を低減できる。また、走行待機状態であることの通知を音で行う場合は、電気自動車の利点である走行待機状態時の静粛性が無駄に損なわれてしまう可能性が低下する。
【0060】
また、車両の運転席に取り付けられた振動部のみを振動させることだけで、走行待機状態の警告通知を行う場合は、内燃機関を有する車両のアイドリング時に発生する振動と似た刺激をドライバに与えることができるので、ドライバは、車両が走行待機状態であることを経験的に認識することができ、それ故、通知を受けているにも関わらず走行待機状態であることを忘れてしまってアクセル操作を行ってしまう可能性が低下する。また、運転に関係ない同乗者に不快感を与えることなく、ドライバに危険状態を伝えることができる。
【0061】
また、走行待機状態通知装置1は、車両の車速が所定の閾値を超えたことに基づいて、車両が走行待機状態であることの通知を終了する。このようにすることで、待機状態を脱して走行状態になったと推定できる時点で警告を停止しドライバへの無駄な警告通知を止めることによって、快適かつ静粛な走行を可能とすることができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、走行待機状態通知装置1が危険状態予測部12のステップ110の処理を実行することで走行待機状態判定手段の一例に相当し、ステップ130の処理を実行することで危険状態判定手段の一例に相当し、ステップ150〜170の処理および警告制御部13の処理を実行することで通知手段の一例に相当する。
【0063】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0064】
(1)上記実施形態において、走行待機状態を通知するためにシート振動部6を振動させる場合は、振動させている期間中、常に同じ強度(振幅)で振動させるようになっていてもよいが、ドライバを驚かせたり違和感を与えたりする可能性を低下させるために、強度を徐々に強めたり弱めたりするようになっていてもよい。具体的には、振動開始時には強度をゼロから最大値まで段階的に増大させ、振動終了時には強度を最大値からゼロまで段階的に減少させるようにしてもよい。
【0065】
(2)また、上記実施形態では、タイマ部11に設定する時間Tは、一定値であったが、時間Tを状況に応じて変化させるようになっていてもよい。例えば、危険状態予測部12は、ステップ120で、車両がメインスイッチ2の最後のオン以降まだ走行していない場合よりも、車両がメインスイッチ2の最後のオン以降走行したことがある場合の方が、設定する時間Tとして長い時間を採用するようになっていてもよい。車両がメインスイッチ2の最後のオン以降まだ走行していないか、車両がメインスイッチ2の最後のオン以降走行したことがあるかについては、最後のメインスイッチ2のオン以降の車速の履歴を記憶したものを用いて判定すればよい。
【0066】
メインスイッチの最後のオン以降車両が走行していない場合の走行待機状態は、車両にドライバが搭乗してから走行開始するまでの時間帯に発生する。メインスイッチの最後のオン以降車両がしたことがある場合の走行待機状態は、信号待ち等、車両が一時停止したときに発生する。前者と後者を比べると、後者の方がドライバの緊張感が高い傾向にあるので、車両が走行待機状態にあることを忘れてしまうまでの時間が長くなる場合が多い。
【0067】
したがって、上記のように、メインスイッチ2の最後のオン以降車両が走行していない場合よりもメインスイッチ2の最後のオン以降車両が走行したことがある場合の方が、所定時間が長くなるようにすることで、無駄に走行待機状態の通知をしてしまう可能性を更に低減することができる。
【0068】
また、同様な観点から、車両の駐車時においても、ステップ120で設定する時間Tとして、車両がメインスイッチ2の最後のオン以降まだ走行していない場合に比べて長い時間を採用してもよい。これは、車両の駐車時には、ドライバは走行待機状態であることを強く意識するはずだからである。なお、車両の駐車時であるか否かは、例えば、車両のシフト位置が後退位置となっているか否かによって判断すればよい。
【0069】
(3)また、上記実施形態のステップ130においては、ドライバが走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを、走行待機状態の開始から所定の時間Tが経過したか否かに基づいて判定しているが、必ずしもこのようになっておらずともよい。
【0070】
例えば、ステップ130では、ドライバの行動を検出するセンサの検出結果に基づいて、危険状態であるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0071】
例えば、ブレーキペダルセンサ4の検出信号に基づいて、ドライバがブレーキペダルを踏み込んでいるか否かを判定し、踏み込んでいれば危険状態でないと判定し、踏み込んでいなければ危険状態であると判定してもよい。このようにするのは、ドライバがブレーキペダルを踏んでいるということは、走行待機状態であることをドライバが意識している可能性が高いからである。
【0072】
また例えば、ドライバの顔を撮影するカメラ(図示せず)が車室内に搭載されている場合、ステップ130では、そのカメラの撮影結果の画像に基づいて、周知の画像認識技術でドライバの視線方向を検知し、検知した視線方向が車両の前方の所定範囲から外れている状態が基準時間(上記の時間Tよりも短い例えば5秒)以上続けば、危険状態であると判定し、そうでない場合に危険状態でないと判定するようになっていてもよい。このようにするのは、ドライバが持続的によそ見をしているような場合は、走行待機状態であることを忘れている可能性が高いからである。
【0073】
また例えば、ドライバの頭部を撮影するカメラ(図示せず)が車室内に搭載されている場合、ステップ130では、そのカメラの撮影結果の画像に基づいて、周知の画像認識技術でドライバの顔の向きを検知し、検知した顔の向きが車両の前方の所定範囲から外れている状態が基準時間(上記の時間Tよりも短い例えば5秒)以上続けば、危険状態であると判定し、そうでない場合に危険状態でないと判定するようになっていてもよい。このようにするのは、ドライバが持続的によそ見をしているような場合は、走行待機状態であることを忘れている可能性が高いからである。
【0074】
また例えば、車両のステアリングハンドルに設けられた接触センサ(図示せず)からの検出信号に基づいて、ドライバがステアリングハンドルを握っているか否かを判定し、握っている場合は危険状態でないと判定し、握っていない場合は危険状態であると判定するようになっていてもよい。このようにするのは、ドライバがステアリングハンドルを握っているということは、運転しようという意図があるということなので、そのような場合のアクセル操作は、ドライバが車両を走行させようと意図したものである可能性が高いからである。
【0075】
また例えば、運転席の着座部(臀部および大腿部が当たる部分)の複数位置に設けられた複数の接触検知型着座センサ(図示せず)に基づいて、ドライバが運転席に正しい姿勢で着座しているか否かを周知の方法で判定し、握っている場合は危険状態でないと判定し、正しい姿勢で着座していない状態が基準時間(上記の時間Tよりも短い例えば5秒)以上続けば、危険状態であると判定し、そうでない場合に危険状態でないと判定するようになっていてもよい。このようにするのは、ドライバが持続的に体勢をくずしているような場合は、走行待機状態であることを忘れている可能性が高いからである。
【0076】
なお、これら列挙した方法を適宜複合して、危険状態であるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0077】
(4)また、オートマチックトランスミッションを備えた車両のように、走行待機状態通知装置1を搭載する車両が、ドライブレンジとしてパーキングレンジを選択できるようになっている場合は、ドライブレンジセンサ(図示せず)からの検出信号に基づいて、パーキングレンジが選択されているか否かも判定し、待機条件としては、「メインスイッチ2がオンの状態で、車両が停止しており、かつ、サイドブレーキがリリース状態であり、かつパーキングレンジが選択されていない」という条件を採用するようになっていてもよい。
【0078】
(5)また、上記実施形態では、走行待機状態通知装置1を搭載する車両として、電気自動車を例示しているが、走行待機状態通知装置1は、電気自動車以外の車両に搭載しても有効な場合がある。例えば、エンジンの動力で走行する車両であっても、車両の停止時にはエンジンの回転を停止するアイドリングストップ機能を有するアイドリングストップ車両であれば、電気自動車と同様に、走行待機状態をドライバが忘れてしまう可能性がある。したがって、アイドリングストップ車両に走行待機状態通知装置1を搭載しても、上記と同様な効果を得ることができる。
【0079】
(6)また、上記の実施形態において、走行待機状態通知装置1のCPUがプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 走行待機状態通知装置
2 メインスイッチ
3 サイドブレーキセンサ
4 ブレーキペダルセンサ
5 車速センサ
6 シート振動部
7 発音部
8 表示部
11 タイマ部
12 危険状態予測部
13 警告制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両が走行待機状態であることをドライバに通知する走行待機状態通知装置であって、
前記車両のドライバがアクセル操作をすれば前記車両が動き出す走行待機状態にあるか否かを判定する走行待機状態判定手段(110)と、
前記走行待機状態判定手段(110)が前記走行待機状態にあると判定した場合、前記走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、または、前記ドライバの行動を検出するセンサの検出結果に基づいて、前記ドライバが前記走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定する危険状態判定手段(130)と、
前記危険状態判定手段(130)が前記危険状態であると判定したことに基づいて、前記車両が前記走行待機状態であることを前記ドライバに通知する通知手段(150〜170、13)と、を備えた走行待機状態通知装置。
【請求項2】
前記通知手段(150〜170、13)は、前記車両の運転席に取り付けられた振動部を振動させることで、前記車両が前記走行待機状態であることを前記ドライバに通知することを特徴とする請求項1に記載の走行待機状態通知装置。
【請求項3】
前記通知手段(150〜170、13)は、前記車両の車速が所定の閾値を超えたことに基づいて、前記車両が前記走行待機状態であることの通知を終了することを特徴とする請求項1または2に記載の走行待機状態通知装置。
【請求項4】
前記危険状態判定手段(130)は、前記走行待機状態判定手段(110)が前記走行待機状態にあると判定した後、前記走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、前記ドライバが走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定し、
前記車両が前記メインスイッチの最後のオン以降まだ走行していない場合よりも、前記車両が前記メインスイッチの最後のオン以降走行したことがある場合の方が、前記所定時間が長いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の走行待機状態通知装置。
【請求項5】
車両に搭載され、前記車両のドライバがアクセル操作をすれば前記車両が動き出す走行待機状態であることをドライバに通知する走行待機状態通知装置に用いるプログラムであって、前記走行待機状態通知装置を、
前記車両のドライバが前記走行待機状態にあるか否かを判定する走行待機状態判定手段(110)、
前記走行待機状態判定手段(110)が前記走行待機状態にあると判定した場合、前記走行待機状態の開始から所定時間が経過したか否かに基づいて、または、前記ドライバの行動を検出するセンサの検出結果に基づいて、前記ドライバが前記走行待機状態を意識していない危険状態であるか否かを判定する危険状態判定手段(130)、および
前記危険状態判定手段(130)が前記危険状態であると判定したことに基づいて、前記車両が前記走行待機状態であることを前記ドライバに通知する通知手段(150〜170、13)として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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