説明

走行玩具システム

【課題】 上側トラック部材の下にある自走牽引車の位置をすぐに確認することができる走行玩具システムを提供する。
【解決手段】 上側トラック部材5に、環状の2つの光透過領域5B及び5Cを設ける。自走牽引車21に発光手段47を設ける。2つの光透過領域5B及び5Cから、自走牽引車21に設けた発光手段47から放射された光を透過させる。上側トラック部材5の上から見ると、光透過領域の下のどこで発光手段47が発光しているかが分かる。その結果発光場所を探すことにより、自走牽引車21の存在位置を簡単に探すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下側トラック部材の上を自走する自走牽引車を利用して、上側トラック部材の表面上で被牽引体を牽引する走行玩具システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平7−47171号公報(特許文献1)には、下側トラック部材と、下側トラック部材の上に間隔をあけて配置され、下側トラック部材と対向する側に裏面を有し且つこの裏面と厚み方向に対向する側に表面を有する上側トラック部材と、駆動源を備えて下側トラック部材上を自走するキャリア(自走牽引車)と、キャリア(自走牽引車)と磁気吸引力を利用して連結されて上側トラック部材の表面を走行する移動体(被牽引体)とを備えた競馬ゲームに使用される遊技玩具(走行玩具システム)が開示されている。この従来の遊技玩具では、移動体(被牽引体)上に専用品として製造した馬の模造品を実装している。
【0003】
また米国特許第6012957号公報(特許文献2)には、上側トラック部材上を走行する四輪車を模した模造玩具と下側トラック部材上を走行する自走牽引車との間を磁力を利用して連結する走行玩具システムが示されている。
【0004】
また米国特許第6095892号公報(特許文献3)には、上側トラック部材上を走行する二輪車を模した模造玩具と下側トラック部材上を走行する自走牽引車との間を機械的な連結手段を利用して連結する走行玩具システムが示されている。
【特許文献1】特開平7−47171号公報
【特許文献2】米国特許第6012957号公報
【特許文献3】米国特許第6095892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に示された従来の走行玩具システムのように磁力を利用して、被牽引体を牽引する場合には、自走牽引車と被牽引体との間の連結が外れると、上側トラック部材の下にある自走牽引車の存在位置が直ぐに分からない問題がある。また特許文献3に示された従来の走行玩具システムのように、機械的連結手段が上側トラック部材の上に突出する構造にあっては、自走牽引車の存在位置は直ぐに分かる。しかしながらこの場合でも、上側トラック部材の上に機械的連結手段の一部が突出していると、その突出している部分に誤って外力を加えたときに、下側トラック部材上の自走牽引車が位置ずれを起こして自走牽引車が走行できなく問題が生じることがある。そのため機械的連結手段を採用する場合でも、機械的連結手段の一部が上側トラック部材上に突出しないことが好ましい。しかしながら機械的連結手段が上側トラック部材から突出していない状態では、特許文献1及び2に記載の従来の走行玩具システムと同様に、自走牽引車と被牽引体との間の連結が外れると、上側トラック部材の下にある自走牽引車の存在位置が直ぐに分からない問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、上側トラック部材の下にある自走牽引車の位置をすぐに確認することができる走行玩具システムを提供することにある。
【0007】
上記目的に加えて、本発明の他の目的は、自走牽引車と被牽引体との連結作業をスムーズに行える走行玩具システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が対象とする走行玩具システムは、下側トラック部材と、上側トラック部材と、自走牽引車とを有する。上側トラック部材は、下側トラック部材の上に間隔をあけて配置され、下側トラック部材と対向する側に裏面を有し且つ該裏面と厚み方向に対向する側に表面を有する。下側トラック部材及び上側トラック部材は、いずれも単体の部品として構成されていてもよいが、複数の部品が組み合わされて構成されていてもよい。
【0009】
走行玩具システムは、自走牽引車と磁気的または機械的に連結されて上側トラック部材の表面を走行する被牽引体を備えている。被牽引体を自走牽引車と「磁気的に連結」する場合には、永久磁石の磁気吸引力を利用する。自走牽引車及び被牽引体の一方に永久磁石を固定し、他方に永久磁石の磁気吸引力で吸引される他の永久磁石または磁性体を固定すればよい。使用する永久磁石の保磁力は、上側トラック部材の厚みに応じて、適宜に選択すればよい。被牽引体を自走牽引車と「機械的に連結」する場合には、上側トラック部材に厚み方向に貫通して上側トラック部材に沿って連続して延びる貫通孔溝を上側トラック部材に形成する。そして自走牽引車と被牽引体とを、前述の貫通孔を貫通する連結部材を介して連結する。
【0010】
自走牽引車の構成及び動作原理は任意である。典型的な自走牽引車は、駆動源を備えて下側トラック部材上を自走する。自走牽引車の駆動源は、一般的には電気モータである。電気モータは、電池を電源として動作するように駆動装置を構成してもよい。しかし下側トラック部材に通電路が設けられる場合には、この通電路から供給される電力により電気モータを駆動するように駆動装置を構成してもよいのは勿論である。なお自走牽引車は、いわゆるスロットカーと同様に、コントローラによって、運転制御可能なものであってもよいが、スイッチのオン・オフだけで駆動・非駆動を決定し、運転制御をしないものでもよい。運転制御可能な自走牽引車の制御方法は、公知のスロットカーで使用されているものと同じものを用いればよい。上側トラック部材上を走行する被牽引体の構成も任意である。
【0011】
例えば、永久磁石を利用して被牽引体と自走牽引車とを連結した場合や、被牽引体と自走牽引車とを機械的な連結手段で連絵する場合に、機械的連結手段が上側トラック部材の下に配置される場合には、被牽引体と自走牽引車との連結が外れたときに、自走牽引車の位置が分からなくなる事態が発生する。このような事態に対処するために、本発明では、上側トラック部材として、被牽引体の走行方向に沿って連続的にまたは間隔あけて配置された光透過領域を備えたものを用いる。そして自走牽引車には、光透過領域を通して上側トラック部材の表面から認識可能な光を放射する発光手段を設ける。このようにすると、被牽引体と自走牽引車との間の連結が外れた場合であっても、自走牽引車の発光手段から発する光を光透過領域を通して確認することができる。そのため、自走牽引車の位置を簡単に確認できて、被牽引体と自走牽引車との間の再連結を短い時間でスムーズに行えるようになる。
【0012】
なお上側トラック部材を光を透過する材料により形成すれば(例えば、上側トラック部材を全体的に透明または半透明の材料で形成すれば)、連続的な光透過領域を簡単に得ることができる。この場合には、自走牽引車上に設ける発光手段の取付位置を厳密に定めなくても、上側トラック部材を通して発光手段の発光を確認することができる。
【0013】
光透過領域は、上側トラック部材を厚み方向に貫通する貫通孔によって構成してもよい。例えば、機械的連結手段を用いる場合には、上側トラック部材を厚み方向に貫通するスリット溝が形成されることになる。そこで、このスリット溝を通して、発光手段の発光を上側トラック部材の表面側に放射するようにしてもよいのは勿論である。
【0014】
発光手段としては、発光ダイオードや、ランプ等の公知の発光素子を用いることができる。また発光手段は、連続的に発光させても、また点滅させてもよい。発光手段を点滅させると、見る人の注意を引きやすいという利点がある。
【0015】
また発光手段を駆動する駆動回路は、発光手段を常時発光させるように構成してもよいが、自走牽引車と被牽引体との連結が解除されている期間だけ、発光手段を発光させるようにするのが好ましい。このように発光期間を限定すると、発光素子の寿命を延ばすことができるだけでなく、電力の節約に寄与する。
【0016】
さらに連結時に発光手段を消灯する場合には、自走牽引車と被牽引体とが連結されたときに、発光手段の消灯を目視で確認できるように、発光手段の取付位置を定めるのが好ましい。このようにすると発光手段の消灯を視認することにより、連結の完了を確認することができるので、利便性が高くなる。
【0017】
本発明は、走行玩具システムに利用する玩具用トラック構造体として把握することもできる。この玩具用トラック構造体は、前述の下側トラック部材と、上側トラック部材とから構成される。そして上側トラック部材は、被牽引体の走行方向に沿って連続的にまたは間隔あけて配置された光透過領域を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被牽引体と自走牽引車との間の連結が外れた場合であっても、自走牽引車の発光手段から発する光を光透過領域を通して確認することができるため、自走牽引車の位置を簡単に確認できて、被牽引体と自走牽引車との間の再連結を短い時間でスムーズに行えるようになる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照して、本発明の走行玩具システムの実施の形態を詳細に説明する。図1は、走行玩具システム1の実施の形態の一例の構成を示す図であり、図2は図1の主要部を分解して示す分解斜視図である。また図3は、図1の走行玩具システム1を正面側から見た状態の拡大図を示している。これらの図において、走行玩具システム1は、下側トラック部材3と、上側トラック部材5とを備えている。図2に示すように、下側トラック部材3は、ベース部3Aと環状のトラック部3Bとを備えている。トラック部3Bは、公知のスロットカー玩具のトラックと同じ構造を有している。すなわち下側トラック部材3のベース部3Aは、絶縁樹脂製のプレート部材7に、環状の2本の案内用溝部9が形成された構造を有している。プレート部材7には、案内用溝部9に沿って2本の給電用レール部材11及び13が配置されている。案内用溝部9と給電用レール部材11及び13とによりトラック部3Bが構成されている。2本の給電用レール部材11及び13の一方がプラス電極となり、他方がマイナス電極となる。これらの給電用レール部材11及び13には、図1に示した駆動装置15から直流電圧が印加されている。なお図1及び図2には、電気的な配線は図示を省略してある。図1に示すように、二人のプレイヤがそれぞれ使用するスロットル17、17´(以降、単にスロットル17と記載する)のボタン19、19´(以降、単にボタン19と記載する)を操作することにより、2台の自走牽引車21、21´(以降、単に自走牽引車21と記載する)の運転がそれぞれ別個に制御される。自走牽引車21の運転制御は、公知のスロットカー玩具で使用されている運転制御方法と同じである。例えばボタン19を押すと、対応する自走牽引車21が動き、ボタン19の操作量に応じてこの自走牽引車21の速度が速くなり、ボタン19を離すと自走牽引車21が停止する。なお自走牽引車21の構造については、後に詳しく説明する。
【0020】
下側トラック部材3と上側トラック部材5との間には、16個のスペーサ23が配置されている。これらのスペーサ23は、下側トラック部材3のベース部3Aの外周縁と内周縁とに沿い、周方向に等しい間隔を開けて配置される。スペーサ23の下端には、下側トラック部材3に設けられた嵌合孔25に嵌合される突起(図示せず)が一体に形成されている。またスペーサ23の上端には、嵌合孔23Aが形成されており、上側トラック部材5の底面部の外周部には、スペーサ23に設けられた嵌合孔23Aに嵌合される突起(図示せず)が一体に設けられている。これら突起と嵌合孔23A及び25との嵌合により、上側トラック部材5は、スペーサ23により下側トラック部材3の上に支持される。
【0021】
環状の上側トラック部材5は、一枚の板によって形成されていてもよいし、複数枚の板が組み合わされて構成されていてもよい。上側トラック部材5には、環状の2つの光透過領域5B及び5Cが設けられている。光透過領域5B及び5Cは、光が透過するものであれば、透明体であっても、半透明体であっても、また貫通孔であってもよい。本実施の形態では、2つの光透過領域5B及び5Cは半透明のプラスチック材料により形成されている。2つの光透過領域5B及び5Cからは、後述する自走牽引車21に設けた、発光ダイオード等からなる発光手段47(図5)からの光が透過する。その結果、上側トラック部材5の上から見ると、光透過領域の下のどこで発光手段47が発光しているかが分かる。すなわち発光場所を探すことにより、自走牽引車21の存在位置を簡単に探すことができる。なお上側トラック部材5を形成する際に使用する板材の材質は任意である。しかしながらこの板材としては、上側トラック部材5の表面5A上を被牽引体27が滑りながらスムーズに走行できるように、表面の摩擦抵抗が大きくないものを用いることが好ましい。
【0022】
本実施の形態では、2つの光透過領域5B及び5Cは、連続した環状形状を呈しているが、2つの光透過領域5B及び5Cは複数の光透過部分が不連続に並ぶ構造であってもよい。複数の光透過部分を不連続に環状に並べる場合には、光透過部分を貫通孔とすると、簡単に光透過領域を構成することができる。
【0023】
本実施の形態によれば、後述する被牽引体27と自走牽引車21との間の連結が外れた場合であっても、自走牽引車21の発光手段47から発する光を光透過領域を通して確認することができる。そのため、自走牽引車21の位置を簡単に確認できて、被牽引体27と自走牽引車21との間の再連結を短い時間で行えるようになる。
【0024】
なお理解を容易にするために図1乃至図3には、被牽引体27のみを示しており、被牽引体27上には模造玩具を実装していない。なお図4には、理解を容易にするために、下側トラック部材3及び上側トラック部材5を透明なものとして示し、被牽引体27上に支持された四輪車の模造玩具ITを破線で示してある。
【0025】
次に図5(A)乃至(D)を中心にして、図3及び図4を参照しながら、本実施の形態で使用する自走牽引車21について説明する。図5(A)は、自走牽引車21の斜視図を示しており、図5(B)は自走牽引車21の底面図を示している。また図5(C)及び(D)は、自走牽引車21の部品の一部の平面図及び正面図をそれぞれ示している。自走牽引車21は、牽引車本体29内に駆動源を備えて下側トラック部材3上を自走する。なお自走牽引車21の駆動源は、図示しない電気モータである。本実施の形態では、電気モータを駆動する駆動装置は、下側トラック部材3に設けられた通電路としての給電用レール部材11及び13から供給される電力により電気モータを駆動するように構成されている。自走牽引車21は、さらに牽引車本体29の後方側に設けられて駆動源によって駆動される駆動車軸31と、駆動車軸31の両端に取り付けられて下側トラック部材3上を回動する一対の駆動車輪33とを備えている。また図4及び図5(B)に示すように、牽引車本体29の底面部には、駆動車軸31よりも前方側の位置に設けられて、図2に示した案内用溝部9に嵌合されるピン部材35が固定されている。また牽引車本体29の底面部には、駆動源への給電のために、一対のレール部材11及び13と接触する一対のブラシ部材37が設けられている。牽引車本体29内の駆動装置には、これらのブラシ部材37から直流電力が供給される。
【0026】
牽引車本体29は、前方側に板状部29Aを備えており、この板状部29Aには、上下方向に延びる軸部39[図5(D)参照]を中心にして所定の角度範囲を回動する回動体41が回転自在に嵌合される被嵌合部29B[図5(A)及び図4参照]が一体に設けられている。この例では、軸部39は回動体41に固定されている。回動体41は、軸部39が固定された基部41Aと、後述する永久磁石が固定される本体部41Bとを備えている。回動体41の本体部41Bには、一対のローラ部材43が回動自在に支持されている。一対のローラ部材43は、上側トラック部材5の裏面5Dと接触する。なおこの例では、一対のローラ部材43を設けているが、三輪車の前輪のように、1つのローラ部材だけを設けてもよいのは勿論である。回動体41の本体部41B内には、一対のローラ部材43の間に永久磁石45が固定されている。この永久磁石45は、後に詳しく説明する被牽引体27に設けた磁性体との間に磁気吸引力を発生して、自走牽引車21と被牽引体27とを磁気的に連結するための作用を発揮する。なお本体部41Bには、磁気吸引力を弱めないようにするため、永久磁石45の中心部と対応する位置に貫通孔41Cが形成されている。一対のローラ部材43を採用すると、永久磁石45の吸引力で回動体41が上側トラック部材5の裏面5D側に引きあげられた状態になったときに、ローラ部材43が上側トラック部材5の裏面5Dと回転接触する。その結果、永久磁石45として保持力の大きな永久磁石を用いても、永久磁石45が裏面5Dと接触するのを防止できる。
【0027】
永久磁石を利用して被牽引体27と自走牽引車21とを連結した場合には、両者の連結が外れたときに、自走牽引車21の位置が分からなくなる事態が発生する。このような事態に対処するために、本実施の形態では、自走牽引車21の牽引車本体29の上壁部には、発光ダイオードからなる発光手段47が、上側トラック部材5に向かって光を放射するように設けられている。発光手段47の取付位置は、上側トラック部材5に設けた光透過領域5Bまたは5Cの下面に光を照射できる位置であればどこでもよい。例えば図6に示すように、牽引車本体29の側面に、発光手段47を設けてもよい。図6の例を採用する場合には、上側トラック部材5に設ける光透過領域の形成位置もずらすことになる。図6の例における発光手段47の取付位置(または光透過領域の形成位置)は、被牽引体27が適正位置に置かれている状態において、光透過領域5B及び5Cが被牽引体27によって覆われない位置である。このような構成を採用する場合には、自走牽引車21と被牽引体27との磁力による連結が外れている場合にのみ、発光手段47を発光させ、自走牽引車21と被牽引体27とが磁力で連結されている場合には、発光手段47の発光を停止するように発光手段47の駆動回路48(図7)を構成することができる。発光手段47の発光と発光の停止とを制御するために、図6の例では、回動体41にホール素子Hを設けている。このホール素子Hは、被牽引体27に設けられた後述する永久磁石75の磁束を検出する。ホール素子Hが被牽引体27の永久磁石75の磁束を検出していないときには、図7に示す駆動回路48は電源回路50から発光手段47に電流を通電する。そしてホール素子Hが被牽引体27の永久磁石75の磁束を検出すると、駆動回路48は発光手段47への通電を停止する。このようにすると光透過領域5Bまたは5Cを通して発光手段47の発光の停止を目視で確認することにより、連結の完了を確認することができる。また連結が外れているときだけ、発光手段47が発光するため、発光手段47の発光時間を短くすることができ、発光手段47の寿命を延ばすことができる。またこのようにすると、消費電力を少なくすることができる。
【0028】
次に上側トラック部材5の上を自走牽引車21により牽引されて走行する被牽引体27について、図8乃至図10を用いて詳しく説明する。図8(A)及び(B)は、本実施の形態で用いる、被牽引体27を表側から見た斜視図及び被牽引体27を裏側から見た斜視図である。また図9(A)乃至(C)は、被牽引体27の平面図、裏面図及び右側面図である。被牽引体27は、改造が施されていない市販の模造玩具(本実施の形態では、図4の四輪車の模造玩具IT)と部分的に係合する4つの係合部51A乃至51Dを有えたアタッチメント53を備えている。このアタッチメント53は、市販の模造玩具ITの寸法に応じて4つの係合部51の位置関係を変更し得るように構成されている。4つの係合部51A乃至51Dは、改造が施されていない市販の模造玩具ITと部分的に係合して(嵌め合いを含む)、模造玩具を支持できるものであれば、どのような形状または構造であってもよい。この例では、アタッチメント53上に模造玩具を置く動作をするだけで(またはアタッチメント53上に模造玩具を乗せるだけで)、模造玩具の一部と4つの係合部51A乃至51Dの係合が完了するように、係合部51の構造が定められている。
【0029】
このアタッチメント53が対象とする市販の模造玩具ITは、図4に破線で示すように、2本の車軸にそれぞれ2つの車輪が装着されている四輪車の模造玩具である。そのためアタッチメント53の4つの係合部51A乃至51Dは、2本の車軸S1及びS2(図4参照)とそれぞれ係合するように構成されている。これらの係合部51A乃至51Dを用いると、係合部51A乃至51Dは、車軸S1及びS2に固定された車輪H(図4参照)の内側に位置して車軸S1及びS2と係合することになる。そのため、車輪を有する模造玩具ITを被牽引体27上に動かない状態で確実に装着することができる。また車軸S1及びS2と係合する係合部51A乃至51Dは、車輪Hによって覆われることになるため、走行中の被牽引体27を見る者が、被牽引体27の存在を意識する率が少なくなる。
【0030】
四輪車の模造玩具の車輪を上側トラック部材5の表面5Aと接触させてもよいが、多くの車両の模造玩具では、車軸の向きを変えることができない。そのために、車輪が接触している状態で被牽引体27を走行させると、車輪自体が抵抗となる場合があり、例えばドリフト走行等ができない状態となる。そのため本実施の形態で用いる被牽引体27では、アタッチメント53に市販の構造玩具が支持された状態で、模造玩具の車輪が上側トラック部材5の表面と接触しないように構成するのが好ましい。そこでこの被牽引体27では、車軸と係合する4つの係合部51A乃至51Dは、それぞれ、車軸が嵌る溝部57を備えた板状部54と、この板状部54の下側端部と一体に形成されて板状部54と直交する方向に延びるベース52とを備えている。溝部57は、上方向と横方向両側に向かって開口し、上方向に向かって開口する開口部55から車軸が挿入される構造を有している。4つの係合部51A乃至51Dをこのようにすると、車両の模造玩具ITを被牽引体27上に置く動作をするだけで、2本の車軸をそれぞれ2つの係合部51A及び51B並びに51C及び51Dに簡単に係合させることができる。その結果、被牽引体27を上側トラック5上に置いた状態で、車両の模造玩具ITの交換を簡単に行える。
【0031】
本実施の形態で用いるアタッチメント53は、市販の模造玩具が、前方車軸と後方車軸にそれぞれ2つの車輪が装着されている四輪車の模造玩具を支持するための専用のアタッチメントであり、しかもこのアタッチメント53は、1本の車軸の両端に固定される2つの車輪間のトレッド寸法及び2本の車軸間のホイルベース寸法の相違に応じて、4つの係合部51A乃至51Dの位置関係を変更できるように構成されている。
【0032】
具体的には、アタッチメント53は、第1の構造部材59と、第2の構造部材61と調整可能連結機構63とを備えている。第1の構造部材59は、前方車軸S1(図4)の、2つの車輪Hと隣接する両端部分と係合する2つの係合部51A及び51Bと、第1の支持体65と、2つの係合部51A及び51B間の寸法を調整可能な機能を持って2つの係合部51A及び51Bを第1の支持体65に支持させる2つの係合部支持機構67A及び67Bとを備えている。また第2の構造部材61は、後方車軸S2(図4)の、2つの車輪と隣接する両端部分と係合する2つの係合部51C及び51Dと、第2の支持体69と、2つの係合部51C及び51D間の寸法を調整可能に2つの係合部51C及び51Dを第2の支持体69に支持させる2つの係合部支持機構67C及び67Dとを備えている。そして調整可能連結機構63は、第1の構造部材59と第2の構造部材61とを、両者間の距離を調整可能な機能を持って連結するように構成されている。このアタッチメント53では、係合部支持機構67A乃至67Dの調整機能により、2つの係合部51A及び51B間と2つの係合部51C及び51D間の寸法(トレッド寸法)を調整することができる。また調整可能連結機構63により第1の構造部材59及び第2の構造部材61間の寸法(ホイルベース寸法)を調整することができる。係合部支持機構67A乃至67Dの構造は任意である。図10(A)乃至(E)には、4つの係合部支持機構67A乃至67Dを用いて、4つの係合部51A乃至51Dの位置関係を変更する場合の複数のバリエーションを示してある。
【0033】
本実施の形態では、係合部支持機構67A乃至67Dとして4つのリンクが4つの節により連結された四節平行リンク機構を用いている。その結果、2つの係合部51A及び51Bまたは2つの係合部51C及び51Dを上側トラック部材5の表面に沿ってスライドさせる動作を行うことにより、2つの係合部間の位置調整(トレッド寸法調整)を簡単に行うことができる。また本実施の形態で用いる四節平行リンク機構では、図8(A)及び図9(A)に代表して符号を付すように、四節平行リンク機構の第1及び第2の節J1及びJ2をベース52に設け、四節平行リンク機構の第3及び第4の節J3及びJ4を支持体65及び69に設ける。そして2本のリンクL1及びL2で後述するベース52を支持するため、係合部支持機構67A乃至67Dの機械的強度を高めることができる。
【0034】
また本実施の形態では、上側トラック部材5の表面5Aと対向するベース52の裏面及び支持体65及び69の裏面には、それぞれ表面5A上をスライドする凸部71を形成してある。このようにすると4つの係合部51A乃至51Dのベース52の裏面に設けた凸部71と第1及び第2の支持体65及び69の裏面に設けた凸部71とが、広く分散した状態で、上側トラック部材5の表面5Aと接触する。その結果、被牽引体27が高速で上側トラック部材5の表面5A上を走行した場合でも、被牽引体27が傾いたり、転倒したりすることがない。また複数の凸部71による実質的な点接触で被牽引体27を支えるため、摩擦抵抗が著しく大きくなることもない。さらに本実施の形態のように、複数の凸部71を利用した場合には、被牽引体27に車輪やローラを設ける場合と比べて、被牽引体27の存在が目立たなくなる。
【0035】
またこのアタッチメント53の調整可能連結機構63は、細長いフレーム73を備えている。そしてこのフレーム73の一端に第1の構造部材59の第1の支持体65が固定され、第2の構造部材61の第2の支持体69がフレーム73にスライド可能に装着されている。このような構造の調整可能連結機構63を用いると、図11(A)乃至(C)に示すように、フレーム73に沿った第2の支持体69のスライド動作により、第1の構造部材59と第2の構造部材61との間の寸法(ホイールベース寸法)を簡単に調整することができる。またフレーム73が存在するため、機械的強度も確保することができる。
【0036】
本実施の形態では、磁気的に(磁気の吸引力を利用して)自走牽引車21と被牽引体27とを連結する。そこで前述のように、自走牽引車21には、上側トラック部材5の裏面5Dと対向する位置に永久磁石45を固定した(図5参照)。そこで図8(B)及び図9(B)に示すように、被牽引体27の第1の支持体65には、上側トラック部材5の表面5Aと対向するように、永久磁石45の磁気吸引力で吸引される永久磁石75を固定している。この例では、永久磁石75は、第1の支持体65の内部に埋設された状態で、第1の支持体65に固定されている。そして第1の支持体65には、磁気吸引力を弱めないようにするために、永久磁石75を露出させる貫通孔65Aが形成されている。このような構造を用いると、被牽引体27の前端を中心にして、被牽引体27が引っ張られるようになるため、被牽引体27の後方端部が左右に揺れ動くドリフト走行を実現することができる。
【0037】
上記実施の形態では、自走牽引車21と被牽引体27とが磁気的に連結されている。しかしながら被牽引体を自走牽引車と機械的に連結する場合には、図12に示すように、上側トラック部材105に厚み方向に貫通して上側トラック部材105に沿って連続して延びる貫通孔105Dを形成する。そして自走牽引車127と被牽引体121とを、前述の貫通孔105Dを貫通する連結部材(122,128)を介して連結すればよい。なおこの場合には、自走牽引車121側の一方の連結構造半部122は、上側トラック部材105に設けた貫通孔105Dから表面側に突出しない構造とする。そして被牽引体127は、貫通孔105Dに嵌合されて、自走牽引車121側の一方の連結構造半部122と連結される他方の連結構造半部128を備えた構造とすればよい。このような機械的な連結構造を採用する場合でも、本発明の効果を発揮することができる。
【0038】
なお上側トラック部材5の上方から上側トラック部材5を見たときに、光透過領域5B及び5Cを通して自走牽引車21の存在を確認できる程度の透明度を光透過領域が有している場合や、光透過領域が貫通孔である場合には、仮に発光手段47が発光していない場合でも、目視により自走牽引車の確認が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の走行玩具システムの実施の形態の一例の構成を示す図である。
【図2】図1の主要部を分解して示す分解斜視図である。
【図3】図1の走行玩具システムを正面側から見た状態の拡大図である。
【図4】自走牽引車と被牽引体との関係を説明するために用いる図である。
【図5】(A)乃至(D)は、自走牽引車の斜視図、底面図、自走牽引車の部品の平面図及び正面図である。
【図6】自走牽引車の変形例を示す斜視図である。
【図7】発光手段を駆動するための構成するため
【図8】(A)及び(B)は、本実施の形態で用いる、被牽引体を表側から見た斜視図及び被牽引体を裏側から見た斜視図である。
【図9】(A)乃至(C)は、被牽引体の平面図、裏面図及び右側面図である。
【図10】(A)乃至(E)は、4つの係合部支持機構を用いて、4つの係合部の位置関係を変更する場合の複数のバリエーションを示す図である。
【図11】(A)乃至(C)は、調整可能連結機構の動作態様を示す図である。
【図12】機械的連結構造の例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 走行玩具システム
3 下側トラック部材
5 上側トラック部材
5B,5C 光透過領域
9 案内用溝部
11,13 給電用レール部材
15 駆動装置
17 スロットル
21 自走牽引車
23 スペーサ
27 被牽引体
45 永久磁石
47 発光手段
51A乃至51D 係合部
53 アタッチメント
59 第1の構造部材
61 第2の構造部材
63 調整可能連結機構
65 第1の支持体
67A乃至67D 係合部支持機構
69 第2の支持体
73 フレーム
75 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側トラック部材と、
前記下側トラック部材の上に間隔をあけて配置され、前記下側トラック部材と対向する側に裏面を有し且つ該裏面と厚み方向に対向する側に表面を有する上側トラック部材と、
駆動源を備えて前記下側トラック部材上を自走する自走牽引車と、
前記自走牽引車と磁気的または機械的に連結されて前記上側トラック部材の前記表面を走行する被牽引体とを備え、
前記上側トラック部材は、前記被牽引体の走行方向に沿って連続的にまたは間隔あけて配置された光透過領域を備えており、
前記自走牽引車には、前記光透過領域を通して前記上側トラック部材の前記表面から認識可能な光を放射する発光手段が設けられていることを特徴とする走行玩具システム。
【請求項2】
前記上側トラック部材が、光を透過する性質を有する材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項3】
前記光透過領域は、前記上側トラック部材を厚み方向に貫通する貫通孔によって構成されている請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項4】
前記発光手段は、点滅状態で発光する請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項5】
前記発光手段を駆動する駆動回路は、前記自走牽引車と前記被牽引体との連結が解除されている期間、前記発光手段を発光させることを特徴とする請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項6】
前記自走牽引車と前記被牽引体とが連結されたときに、前記発光手段の消灯を目視で確認できるように、前記発光手段の取付位置が定められている請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項7】
下側トラック部材と、
前記下側トラック部材の上に間隔をあけて配置され、前記下側トラック部材と対向する側に裏面を有し且つ該裏面と厚み方向に対向する側に表面を有する上側トラック部材とを備え、前記下側トラック部材上を自走牽引車が走行し、前記上側トラック部材上を前記自走牽引車により牽引される被牽引体が走行する玩具装置用トラック構造体であって、
前記上側トラック部材は、前記被牽引体の走行方向に沿って連続的にまたは間隔あけて配置された光透過領域を備えていることを特徴とする玩具装置用トラック構造体。
【請求項8】
前記光透過領域は、前記上側トラック部材の上方から上側トラック部材を見たときに、前記光透過領域を通して前記自走牽引車の存在を確認できる程度の透明度を有している請求項7に記載の玩具装置用トラック構造体。
【請求項9】
前記上側トラック部材が、光を透過する性質を有する材料により形成されていることを特徴とする請求項7に記載の玩具装置用トラック構造体。
【請求項10】
前記光透過領域は、前記上側トラック部材を厚み方向に関する貫通孔によって構成されている請求項7に記載の玩具装置用トラック構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−289750(P2008−289750A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139779(P2007−139779)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】