説明

走行装置を備えたチェーンブロック

【課題】片側に巻上機用減速機、もう片側に横行用減速機を配置する形態のトロリにおいてトロリーフレーム間の調整を容易にする。
【解決手段】左右一対のトロリフレーム1a、1bと、トロリフレームに軸着され、ロードシーブ8を駆動する駆動軸7と、走行レールを駆動する走行装置を備えたチェーンブロックにおいて、前記駆動軸7を軸受け9a、9bを介してトロリフレーム1a、1bに軸方向スライド可能に軸着し、左右一対のトロリフレーム1a、1bに、フレーム幅調整軸18を軸着し、前記調整軸18の一側を、一方のトロリフレーム1bにねじ機構18a、20を介してトロリフレーム1bを進退可能に螺合し、他側18bを、他方のトロリフレーム1aに回転可能に、かつ軸方向スライド不能に軸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レール上を駆動する走行装置を備えたチェーンブロックに関するもので、さらに詳しくは、トロリフレームのフレームの幅を調整可能としたチェーンブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人の出願に係る先行技術として、走行レール上を駆動する走行駆動装置を備えたチェーンブロックにおいて、走行レールの左右両側に配設され、走行車輪を軸着した左右トロリフレームと、前記走行車輪の下方で、トロリフレーム間にカラーを介して軸装され、ロードシーブを同軸上に軸承した駆動軸を有し、前記駆動軸で前記左右トロリフレームを前後揺動可能に連結し、カラーを変更することでトロリフレーム幅を変更することができるようにしたチェーンブロックが提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特願2006-92830号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この先行技術では、左右トロリフレーム間にロードシーブを軸承した駆動軸を軸装し、左右トロリフレームを前記駆動軸で揺動可能に連結し、両トロリフレームを駆動軸を中心に揺動可能に連結する構成としたので、各走行車輪には荷重が均等に掛かるため、走行レールの凹凸により走行車輪が上下に変動しても、トロリフレームは変動に追従して前後に揺動し、変動を吸収するので走行車輪を円滑に駆動することができるとともに、駆動軸をカラーを介してトロリフレームに軸装することで、走行レールの幅が変更しても、駆動軸に嵌合するカラーの長さを変更してトロリフレーム幅を変更することが可能となるという作用を有するが、トロリフレームの幅を変更するためにカラーを用いるため、トロリフレーム幅の微調整が困難であるとともに、ワッシャとの組み合せ方法の選択も難しく、走行レール幅の変更により、トロリフレーム幅を微調整することが難しいという課題を有していた。さらに、トロリを走行レールに上架する際には重量の大きいトロリフレームを手動で移動させなければならず、特にトロリフレームの片側に巻上機用減速機、もう片側に横行用減速機を配置する形態のトロリにおいてはとくに重量が重いのでフレーム間の調整が困難であるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記した課題を解決するもので、左右一対のトロリフレームと、ロードシーブを駆動する駆動軸と、走行レールを走行する走行装置を備えたチェーンブロックにおいて、前記トロリフレームに駆動軸とフレーム幅調整軸を軸着し、前記駆動軸は、軸受けを介してトロリフレームに軸方向スライド可能に、前記フレーム幅調整軸は、調整軸の一側が、一方のトロリフレームにねじ機構を介してトロリフレームを進退可能に、他側が、他方のトロリフレームに回転可能で軸方向スライド不能に軸着したことを特徴とする。
【0005】
また、前記調整軸の一側に雄ねじを形成し、前記雄ねじを一方のトロリフレームに嵌合する雌ねじに螺合したことを特徴とする。
【0006】
また、前記駆動軸にロードシーブとロードチェーンの係合をガイドするクサリガイドを軸受けを介して回転可能に軸着したことを特徴とする。
【0007】
また、前記クサリガイドとトロリフレーム間にトロリフレーム間の間隔規制用スリーブを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チェーンブロックの駆動軸を、軸受けを介してトロリフレームに軸方向スライド可能に軸着し、左右一対のトロリフレームに、フレーム幅調整軸を軸着し、前記調整軸の一側を、一方のトロリフレームにねじ機構を介してトロリフレームを進退可能に螺合し、他側を、他方のトロリフレームに回転可能に、かつ軸方向スライド不能に軸着したので、調整軸を回転することで、ねじ機構を介して一方のトロリフレームが進退し、駆動軸もトロリフレームの進退により軸方向にスライドするので、トロリフレーム間の間隔を容易かつ正確に調整することができる。さらに、重量の重いトロリを走行レール上に上架する際においても、調整軸を回転することでトロリフレーム幅を調整できるので、作業者の負担を軽減することができる。
【0009】
さらに、駆動軸にロードシーブとロードチェーンの係合をガイドするクサリガイドを軸受けを介して相対回転可能に設け、前記クサリガイドとトロリフレーム間にトロリフレーム間の間隔規制用スリーブを設けたので、予め走行レール幅に見合うスリーブを用意しておくことで、トロリフレーム間の間隔をさらに正確に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図1〜3を参照して説明する。
【0011】
図において、1a、1bは走行レール2の下部フランジ2aの左右両側に配設された左右トロリフレームで、左右トロリフレーム1a、1bの前後、両側には、走行レール2の下部フランジ2a上を走行する走行車輪3が装着されている。4は一方のトロリフレーム1bの側部に取設された巻上げ用ギヤボックス、5は他方のトロリフレーム1aの側部に取設された走行用ギヤボックス、6はトロリフレーム1aの側部に取設された制御箱取付ブラケット、7は左右フレーム1a、1bに軸受け9a、9bを介して軸装され、軸方向にスライド可能に嵌合する駆動軸で、一端は後記するロードギヤ12とスプライン結合し、他端はトロリフレーム1aに軸受け9aを介して軸方向にスライド可能に軸支されている。8は駆動軸7に回転不能に取設されたロードシーブ、9a、9bは左右フレーム1a、1bに嵌合するベアリング受け10a、10bに装着され、駆動軸7を軸承する軸受け、11はベアリング受け10aの外側端面に取着されたエンドプレート、12は駆動軸7とスプライン結合13し、軸方向に相対スライド可能に嵌合しているロードギヤ、12aはロードギヤのボス部、14は巻上げ用モータ16のモータ軸15と同軸上に設けたピニオンで、減速歯車を介してロードキヤに連接している。17はロードギヤ12のボス部12aに嵌合された軸受、18はフレーム幅調整軸で、一側には雄ねじ18aが形成され、一方のトロリフレーム1bにボス部20aで嵌合する雌ねじ20に螺合している。調整軸18の他側18bは他方のトロリフレーム1aに嵌合する軸受19に回転自在に、かつ軸方向スライド不能に軸支されている。調整軸18の雄ねじ18aの先端18cは六角形に形成され、レンチ等で調整軸18を回動できるようになっている。レンチ等で調整軸18を回動すると、調整軸18の雄ねじ18aに螺合している雌ねじ20が進退し、雌ねじ20を介してトロリフレーム1bが進退し、トロリフレーム1a、1b間の間隔を拡縮する。21は回り止めナットである。22、22はロードシーブ8に巻回されるロードチェーン25をガイドするクサリガイドで、ロードシーブ8の中央で左右に2分割され、それぞれは軸受け23、23を介して駆動軸7に回転可能に軸承されている。クサリガイド22、22は駆動軸7の左右から駆動軸7に挿嵌され、ロードシーブ8の外周で分割面が結合され、軸受け23、23でロードシーブ8を挟装するように構成されている。クサリガイド22、22は分割面の反対側にボス部22a、22aが設けられており、該ボス部22a、22aの内周に軸受け23、23が嵌合し、外周にトロリフレーム間の間隔規制用スリーブ24、24が嵌合されている。スリーブ24、24はトロリフレーム1a、1bとクサリガイド22、22間でクサリガイドのボス部22a、22aに嵌挿されて、トロリフレーム1a、1b間の間隔を規制する。本実施の形態では、スリーブ24、24はトロリフレーム1a、1bに嵌合したベアリング受け10a、10bの端面とクサリガイド22、22の側面間に配置され、クサリガイド22、22のボス部22a、22aの外周に嵌合している。本実施の形態では、スリーブ24、24でクサリガイド22、22の位置を規制することで、ロードシーブ8をクサリガイド22、22を介してトロリフレーム1a、1b間の所定位置(本実施の形態では中央位置)に位置を規制する。
【0012】
図において、25はロードチェーン、26はフック、27は走行用ギヤボックス5に固設された走行駆動装置、28は制御箱取付ブラケット6に固設された制御箱である。
【0013】
本実施の形態のチェーンブロックにおいては、駆動軸7は、軸受け9a、9bを介してトロリフレーム1a、1bに駆動軸7の軸方向にスライド可能に軸支されており、トロリフレーム1a、1bには、フレーム幅調整軸18が軸着され、前記調整軸18の一側には、雄ねじ18aが形成され、一方のトロリフレーム1bに嵌合する雌ねじ20に螺合し、他側は、他方のトロリフレーム1aに回転可能に、かつ軸方向スライド不能に軸支した構成となっているので、トロリフレーム幅を調整する際に、調整軸18を回転すると、トロリフレーム1bに嵌合する雌ねじ20を介してトロリフレーム1bが進退し、駆動軸7もトロリフレーム1bの進退により軸方向にスライドするので、トロリフレーム間の間隔を調整できる。
【0014】
また、トロリ本体を走行レールに配置する際には、トロリフレーム1a、1bの間隔を走行車輪3、3の間隔が走行レール幅より広くなるように設定しておき、片側の車輪を走行レールに載せ、レンチで調整軸18を回転し、トロリフレームの間隔を狭めて、他方の車輪を走行レールに載せ、さらに調整軸18を回転して走行車輪3、3の車輪ツバと走行レールの間隔を所定量に調整する。走行車輪の間隔の調整終了後、回り止めナット21を締着し、調整軸18の回転を防止する。
【0015】
また、駆動軸7に、軸受け9a、9bを介して回転可能にクサリガイド22、22を軸着し、クサリガイド22、22とトロリフレーム1a、1b間に、トロリフレーム1a、1bの間隔規制用スリーブ24、24を設けたので、予め走行レール幅に調整されたスリーブ24、24を用意しておき、トロリ本体を走行レールに配置し、調整軸18の回転がスリーブ24、24により規制されるまで調整軸18を回転することで、トロリフレーム1a、1bの間隔がスリーブ24、24の幅により規制されるのでより正確にトロリフレーム1a、1bの間隔を調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のチェーンブロックは、ロードシーブを駆動する駆動軸を軸受けを介してトロリフレームに軸方向スライド可能に軸支し、左右一対のトロリフレームに、フレーム幅調整軸を軸着し、前記調整軸の一側を、一方のトロリフレームにねじ機構を介してトロリフレームを進退可能に螺合し、他側を、他方のトロリフレームに回転可能に、かつ軸方向スライド不能に軸着した構成を有するので、調整軸を回転することで、トロリフレーム幅をレール幅に合わせて正確かつ容易に調整でき、特に巻上機用減速機、横行用減速機を備えた重量の重いチェーンブロックのトロリフレームの調整に適用すると特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のチェーンブロックの断面図。
【図2】図1の正面図。
【図3】図1の左側面図。
【符号の説明】
【0018】
1a、1b トロリフレーム
2 走行レール
3 走行車輪
7 駆動軸
8 ロードシーブ
9a、9b 軸受け
10a、10b ベアリング受け
18 調整軸
18a 雄ねじ
18b 他側
18c 先端
19 軸受け
20 雌ねじ
21 回り止めナット
22 クサリガイド
23 軸受け
24 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のトロリフレームと、ロードシーブを駆動する駆動軸と、走行レールを走行する走行装置を備えたチェーンブロックにおいて、前記トロリフレームに駆動軸とフレーム幅調整軸を軸着し、前記駆動軸は、軸受けを介してトロリフレームに軸方向スライド可能に、前記フレーム幅調整軸は、調整軸の一側が、一方のトロリフレームにねじ機構を介してトロリフレームを進退可能に、他側が、他方のトロリフレームに回転可能で軸方向スライド不能に軸着したことを特徴とする走行装置を備えたチェーンブロック。
【請求項2】
前記調整軸の一側に雄ねじを形成し、前記雄ねじを一方のトロリフレームに嵌合する雌ねじに螺合したことを特徴とする請求項1記載の走行装置を備えたチェーンブロック。
【請求項3】
前記駆動軸にロードシーブとロードチェーンの係合をガイドするクサリガイドを軸受けを介して回転可能に軸着したことを特徴とする請求項1記載の走行装置を備えたチェーンブロック。
【請求項4】
前記クサリガイドとトロリフレーム間にトロリフレーム間の間隔規制用スリーブを設けたことを特徴とする請求項3記載の走行装置を備えたチェーンブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−195489(P2008−195489A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32127(P2007−32127)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)
【Fターム(参考)】