説明

超吸収性ポリマーの製造のための方法

本発明は、(a)重合後に超吸収性ポリマーを提供するように選択されるモノマーの水性混合物を製造する工程、(b)反応器に前記モノマー混合物を供給する工程、(c)反応器中の水性モノマー混合物を遊離基重合に供して超吸収性ポリマーゲルを得る工程、及び(d)反応器から超吸収性ポリマーゲルを除去する工程、(e)反応器から除去された超吸収性ポリマーを処理して最終生成物を得る工程を含む、超吸収性ポリマーの製造のための方法であって、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含む塩基性水性媒体が超吸収性ポリマーゲルに供給される、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超吸収性ポリマーの製造のための方法に関する。
【0002】
吸水性ポリマーの製造は、例えば、"Modern Superabsorbent Polymer Technology"F.L.Buchholz and A.T.Graham,Wiley−VCH,1998又はUllmann’s Encyclopedia Industrial Chemistry,6th ed.vol.35 pp73−103にまとめられている。好ましい製造方法は、溶液重合又はゲル重合である。この技術を使用する場合、通常、モノマー混合物を製造し、それを非連続的に中和し、次いで重合反応器中に移送し、次いで非連続的に又は連続的に重合して、撹拌重合の場合に微粉砕されるポリマーゲルを形成する。続いてポリマーゲルを乾燥させ、粉砕し、篩にかけ、場合によって表面処理を適用する。
【0003】
連続重合の方法は、例えば、WO−A−01/38402、WO−A−03/004237、WO−A−03/022896及びWO−A−01/16197に記載されている。
【0004】
WO−A−03/022896は、第1の領域が、開始系を含む水性モノマー混合物が重合を開始するための条件下で供給される開始領域であり、第2の領域がゲル相領域であり、第3の領域が粒状化領域である少なくとも3つの領域を含む反応器系中における超吸収性ポリマーの製造のための連続的方法を開示している。好ましい実施形態もよれば、反応器は真空下で作動され、真空ラインに含まれるあらゆる水が凝縮され、凝縮物は第3の領域中におけるポリマーゲル流動性を増強するために第3の領域にリサイクルされる。
【0005】
EP−A1470905は、100部のポリマーにつき0.1〜30質量部の水を押出機に供給すると共に、スクリュー押出機で50〜70質量%における固形分を有する水和物ポリマーを分解することによって水和物ポリマーを分解するための方法を開示している。分解の生成物が相互の付着を誘発することが防止されるので、その生成物は、それが乾燥する際に集合の塊を形成しない。
【0006】
上記で考察された先行技術の参照中において示唆された対策が、乾燥方法における超吸収性ゲルポリマーの取扱いの多少の改善につながるにもかかわらず、超吸収性ポリマーの製造のための方法において超吸収性ポリマーゲルの加工性を更に改善する必要性が依然として産業界にある。従って、本発明の目的は、超吸収性ポリマーの製造のための方法であって、それによってポリマーゲル流動性が更に改善される方法を提供することである。
【0007】
この課題は、
(a)重合後に超吸収性ポリマーを提供するように選択されるモノマーの水性混合物を製造する工程、
(b)反応器に前記モノマー混合物を供給する工程、
(c)反応器中における水性モノマー混合物を遊離基重合に供して超吸収性ポリマーゲルを得る工程、
(d)反応器から超吸収性ポリマーゲルを除去する工程、
(e)反応器から除去された超吸収性ポリマーを処理して最終生成物を得る工程であって、
それによって炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含む塩基性水性媒体が超吸収性ポリマーゲルに供給される工程
を含む、超吸収性ポリマーの製造のための方法によって解決された。
【0008】
本発明の好適な実施形態によれば、処理工程(e)は、
(A)(B)による方法工程の内の少なくとも1つを行う場合に超吸収性ポリマーゲルを(B)による後続の方法工程に移送する工程;
(B)場合によって、任意の順序における以下の工程及びそれらの組み合わせの内のいずれか:
(1)超吸収性ポリマーゲルをサイジングする工程;
(2)超吸収性ポリマーゲルを粒状化する工程;
(3)ゲル保持タンク中における超吸収性ポリマーゲルを維持する工程;
(C)乾燥装置に超吸収性ポリマーゲルを移送する工程;及び
(D)超吸収性ポリマーゲルを乾燥させる工程;
を包含し、(c)及び(e(A)〜e(C))において定義された方法工程の内のいずれかにおいて塩基性水性媒体が超吸収性ポリマーゲルに供給される。
【0009】
好ましくは、前記方法のあらゆるステージから除去された少なくとも1種のオフガス流を排気前に塩基性水溶液とのスクラビングに供することから得られたスクラバー水溶液を塩基性水性媒体は含む。
【0010】
本発明の方法の進行において生成されるあらゆる排気流は、プラントの放出物を所要の基準に制限するために大気へのそれらの放出の前に処理され得る。かかる排気流は、モノマー溶液を脱酸素するために使用された不活性ガス流、反応器からの排気流、ゲルサイジングからの排気流及びゲル乾燥の操作から生じる主要なガス流であり得る。貯蔵タンク、特にアクリル酸タンクからの排気流、及び、場合によって、生成物後処理法からのガス流は、精製用スクラバーにも導かれ得る。排気流は、好ましくは、不活性ガスとしての二酸化炭素の使用のため又はそれぞれの排気流中における空気の存在のため、二酸化炭素を含有する。
【0011】
一実施形態によれば、スクラバーは、ラシヒリング等の充填材料がパックされた垂直カラムを含み、希釈された焼灼剤は、カラムのパッキング上に上部から噴霧され、スクラバーの底部の領域中にパッキング材料を通じて流れ落ちる。精製のため、排気流はカラムの底部に供給され、カラムの上部へのその途中でガス流はパッキングによって微細に分けられ、不純物は水性相によって回収される。
【0012】
新たに製造される場合にスクラバーに適用されるスクラバー水は、排気流から全微量のアクリル酸及び他の不純物を確実に除去することができるために最高約5質量%の水酸化ナトリウムを含むことができる。しかし、最初に供給された水酸化ナトリウムの一部は、スクラバー中における希釈された焼灼剤と排気流中における二酸化炭素との接触から生じる炭酸塩又は炭酸水素塩に転化される。故に、スクラバーから除去されたスクラバー水は、幾らかの残留焼灼剤及び好ましくは4質量%〜10質量%の炭酸塩又は炭酸水素塩を含有する。スクラバー溶液の総固形物含有量は、約10質量%の範囲内であり得る。その部分は、ゲル乾燥機から排気流によって運び入れられた超吸収性微粒子塵から成ることができる。更に、モノマー混合物、とりわけアクリル酸において用いられるエチレン性不飽和モノマーは、最高4質量%の量で存在することができ;通常、それは、0.5〜2質量%のアクリル酸を含有する。最も重要な不純物としては、カルシウムイオン及び鉄イオン、酢酸及びギ酸、その抑制剤及び誘導体、並びに他の不純物が考えられる。
【0013】
スクラバー水をリサイクルする更なる懸念は、方法工程にリサイクルされる場合に最終生成物を変色させ得るその茶色の色である。
【0014】
ここで驚くべきことに、スクラバー水をポリマーゲルに塩基性水性媒体としてリサイクルすることができることが分かった。前述したように、スクラバー水は、4質量%〜10質量%の炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有し、故に本発明による炭酸塩又は炭酸水素塩のための源として十分に適している。驚くべきことに、方法の安定性及び/又は生成物の質におそらく悪影響を与えると考えられた多くの更なる不純物にもかかわらず、かかる悪影響を検出することはできなかった。
【0015】
従って、本発明は、価値がある材料を含有する全ての方法の流れが方法の安定性及び生成物の質を危うくすることなく方法に効果的にリサイクルされ得る超吸収性ポリマーの製造のための方法を提供するものである。
【0016】
本発明の方法は、バッチ法又は連続的方法として行うことができ、それによって、連続的方法が特に好ましい。好ましい実施形態において、モノマー混合物は反応器に連続的に供給され、超吸収性ポリマーは反応器から連続的に除去される。
【0017】
本発明は、遊離基重合法において超吸収性ポリマーを製造するための適切なモノマー混合物の重合を含む。本発明の方法によって製造される超吸収性ポリマーは、水膨潤性の及び軽度に架橋したポリマーであり、大量の液を吸収し得る公知の親水性ポリマーから選択され得る。好ましい吸水性ポリマーは、カルボキシル部分を含有する吸水性ポリマーである。好ましくは、吸水性ポリマー100g当たり少なくとも約0.01当量のカルボキシル基が存在する。好ましいカルボキシル含有吸水性ポリマーの中には、デンプン−アクリル酸又はポリビニルアルコールグラフトコポリマーの部分的に中和された生成物、アクリルアミドコポリマーの加水分解物の架橋生成物、ポリアクリル酸の部分的に中和された生成物及び部分的に中和されたポリアクリル酸の架橋生成物がある。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、モノマー混合物は、少なくとも1種のエチレン性不飽和酸と共有結合性架橋剤として機能する少なくとも2個のエチレン性不飽和基を担持する少なくとも1種のモノマーとを含む。適切なα,β−エチレン性不飽和酸としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸及び2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸が挙げられる。これらの酸を酸性形態で用いることができるが、α,β−エチレン性不飽和酸を、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩としてそれらの少なくとも部分的に中和された形態で用いることがより好ましい。
【0019】
好ましい不飽和酸としては、アルカリ金属又はアンモニウム塩等のそれらのそれぞれの塩の形態におけるアクリル酸及びメタアクリル酸が挙げられる。例えば、メチルメタアクリレート、メチルアクリレート、アクリルアミド若しくはメタクリルアミド又はポリエチレングリコールメチルエーテルの(メタ)アクリレート等の酸性モノマーのアルキルエステル等、場合によって微量の他の水溶性不飽和モノマーが、モノマー混合物中において存在し得る。モノマーは、モノマー水溶液の総質量に対して好ましくは10質量%〜80質量%の範囲に及ぶ量で水溶液中において用いられる。好ましくは、モノマーの量は、モノマー水溶液の総質量に対して15質量%〜60質量%の範囲に及ぶ。更に、例えばポリビニルアルコール、デンプン及び水溶性又は水膨潤性セルロースエーテル等のある種のグラフトポリマーを用いて、前記生成物を製造することができる。かかるグラフトポリマーは、用いられる場合、α,β−エチレン性不飽和モノマーに対して最高約10質量%の量で使用される。
【0020】
吸水性ポリマーは、好ましくは、それを水不溶性及び水膨潤性にするように軽度に共有結合架橋される。所望の架橋構造は、分子単位中において少なくとも2個の重合性二重結合を有する架橋剤をモノマー混合物中に含ませることによって得られ得る。架橋剤は、水溶性ポリマーを共有結合架橋するために有効な量で用いられる。架橋剤の好ましい量は、所望の荷重下吸収性((absorption under load)AUL)である吸収された液を保持する所望の程度の吸収能力及び所望の強度によって決定される。架橋剤は、有利には、使用されるα,β−エチレン性不飽和モノマー100質量部につき0.0005〜5質量部の範囲に及ぶ量で使用される。より好ましくは、その量は、100質量部のα,β−エチレン性不飽和モノマーにつき0.1質量部〜1質量部の範囲に及ぶ。通常、100部のモノマーにつき約5質量部超の量の架橋剤が使用される場合、ポリマーは、あまりに高い架橋密度を有し、低下した吸収能力及び増加したAAPを示す。架橋剤が100部のモノマーにつき0.0005質量部未満の量で使用される場合、ポリマーは、あまりに低い架橋密度を通常有し、吸収すべき液と接触する際、粘着性になり、より低い初期吸収速度を示す。
【0021】
共有結合架橋剤がα,β−エチレン性不飽和モノマーの水溶液中において好ましくは可溶である場合、かかる溶液中において架橋剤を単に分散させることができる。適切な分散剤の例としては、カルボキシメチルセルロース懸濁助剤、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコールが挙げられる。かかる分散剤は、有利には、α,β−エチレン性不飽和モノマーの総質量に対して0.0005と0.1質量%との間の濃度で提供される。
【0022】
適切な共有結合架橋剤としては、CH2=CHCO−、CH2=C(CH3)CO−及びCH2=CH−CH2−から成る群から選択される2〜4個の基を1個の分子中に有する化合物が挙げられる。例示的な共有結合架橋剤としては、ジアリルアミン;トリアリルアミン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールのジアクリレート及びジメタクリレート;トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールのトリアクリレート及びトリメタクリレート;ペンタエリスリトールのテトラ−アクリレート及びテトラメタクリレート;アリルメタクリレート;及びテトラアリルオキシエタン;並びに3〜30個のエチレンオキシド単位を有するトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの高度にエトキシル化された誘導体のアクリレート、例えば、ペンタエリスリトールの高度にエトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、テトラ−アクリレート及びテトラメタクリレート、並びにアリルメタクリレートが挙げられる。共有結合架橋剤の混合物が用いられ得る。
【0023】
重合は、重合前に中和されていない又は完全に若しくは部分的に中和された酸性モノマーを用いて実施され得る。中和は、酸性モノマー中に存在する酸性基の10%〜95%を中和するのに十分な量の塩基をモノマー水溶液に接触させることによって都合よく達成される。好ましくは、塩基の量は、酸性モノマー中に存在する酸性基の40%〜85%、最も好ましくは55%〜80%を中和するのに十分である。
【0024】
モノマーの酸性基を中和するために有用な適切な化合物としては、重合法に対する有害な効果を有することなく酸性基を十分に中和するそれらの塩基が挙げられる。かかる化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及び炭酸水素塩が挙げられる。
【0025】
従来のビニル添加重合開始剤が水溶性モノマー及び架橋剤の重合において使用され得る。重合を開始するのにモノマー溶液中で十分に可溶な遊離基重合開始剤が好ましい。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び他のアルカリ金属過硫酸塩等の水溶性過硫酸塩、過酸化水素、並びに2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)塩酸塩等の水溶性アゾ化合物が用いられ得る。酸化成分として用いられ得る過酸化水素又は過硫酸ナトリウム等のいわゆる酸化還元開始剤系は、亜硫酸塩、アミン又はアスコルビン酸等の還元物質と組み合わせられ得る。用いられる開始剤の量は、α,β−エチレン性不飽和モノマーの総質量に対して0.01質量%〜1質量%、好ましくは0.01質量%〜0.5質量%の範囲に及ぶことができる。
【0026】
更に、超吸収性ポリマーの微粒子を製造方法中にリサイクルすることが可能であり、好ましくもある。微粒子として、製品仕様によって定義される通りの所望の適用にはあまりに小さいそれらの粒子が考えられる。故に、この望ましくない生成分率が粒状ポリマーから除去される。微粒子の分率は、EDANA Standard Test Method WSP 220.2(5)を用いて篩にかけることによって決定され得る。微粒子超吸収性ポリマーを加熱するための流動層を適用することによって微粒子を生成することもできる。熱風流によって、最高約300μmの直径を有する粒子が水簸され得る。300μm未満又は200μm未満の粒径を有するポリマー粒子が本発明による微粒子として定義される。
【0027】
微粒子は、本発明による方法のあらゆるステージにリサイクルされ得るが、以下でより詳細に考察されるように、微粒子をモノマー混合物中にリサイクルすることが特に好ましい。更に、以下で考察されるように、前記方法の間の適切なポイントにおいて他の適切な添加剤をモノマー混合物に加えることができる。他の添加剤は、例えば、アルカリ金属塩素酸塩、ポリエチレングリコール、ジエチレントリアミン五酢酸の五ナトリウム塩の水溶液(Versenex 80)、水不溶性有機又は無機粉末、例えばシリカ又は酸化亜鉛等の水不溶性金属酸化物、界面活性剤、分散助剤、銀塩等の臭気を制御するための剤又は他の加工助剤から選択され得る。
【0028】
限定されることを望むものではないが、本発明は、超吸収性ポリマーの製造のための最も好ましいエチレン性不飽和酸としてのアクリル酸に関してより詳細に考察される。しかし、当業者は、異なるモノマー又はモノマーの混合物を用いて同じ方法を行うことができることを理解する。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、液体水性モノマー混合物は、好ましくは、統合された緩衝容器を有する循環ラインにおいて連続的に製造されるモノマー水溶液である。幾つかの製造ラインは、モノマー溶液を製造するためのこの系から出ることができる。循環ラインの上流側において、脱イオン水による、又は好ましくはプロセス水による50%〜約20%への焼灼剤(水酸化ナトリウム水溶液)の希釈のための及び添加剤の添加のための統合された熱交換器を有するインライン混合系が提供される。
【0030】
モノマー溶液の循環は、ポンプによって強制される。ポンプは、モノマー溶液を緩衝容器の底面から吸引し、循環ライン及び少なくとも1つの統合熱交換器を介してそれを容器の頂部側に運搬する。容器の排出ポイントと循環ポンプとの間に、最初に希釈された焼灼剤が流れ方向で循環ラインに注入され、その後、総必要量のアクリル酸の少なくとも一部が注入される。好ましくは、緩衝容器中におけるモノマー溶液が、アクリル酸のアクリル酸ダイマー及びオリゴマーをアクリル酸及びβ−ヒドロキシプロピオン酸に分解させる少なくともpH8を有するように、総必要量のアクリル酸の70%以下がこのポイントにおいて注入される。重合前におけるモノマー溶液中における不飽和酸、とりわけアクリル酸の全体の中和度(DN)は、50%〜85%、より好ましくは65%と75%との間である。使用されたアクリル酸が低ダイマー濃度を有する場合、所望の中和度のために必要とされるアクリル酸の70%超又は全てでも、前記方法のこのポイントにおいて供給することができる。
【0031】
アクリル酸添加ポイントと熱交換器との間の循環ラインにおけるモノマー溶液は、最高80℃の温度に達することができる。熱交換器は、4℃〜40℃で残りの循環ラインにおける及び緩衝容器中における溶液の温度を制御する。グリコール−水系による又は他の冷却媒体によるいずれかの冷却水によって熱交換器を作動させることができる。
【0032】
緩衝容器及び循環ラインは、適切な型のステンレス鋼から成る。生成物側面上における表面には、場合によって、適切な被膜(Teflon、PTFE、カムレジスト(cam−resist)等)が後不動態化されるか又は提供される。場合によって、容器及びラインは、PE又はPP等の適切なプラスチックから成る。
【0033】
連続的に作動された重合法のためのモノマー溶液の量は、最後の熱交換器の後で焼灼剤の注入の前の流れ方向においてモノマー製造系の循環ラインから連続的に取られ、反応器に移送される。このポイントにおいて、一般に、溶存酸素を含有するモノマー溶液が溶存酸素で飽和する。移送ラインは、循環ラインと同一の材料及び構成であり得る。移送されたモノマー溶液は、好ましくは約4℃〜35℃の温度を有し、本発明の一実施形態において反応器へのその移送速度は、循環ラインの流速の5%〜50%の分率に等しい。遊離基重合法に対する酸素の抑制効果を回避するため、モノマー混合物は、好ましくは、水性モノマー混合物から溶存酸素を除去するためにモノマー混合物を通じて不活性ガス流を導くことによって脱酸素される。更に、モノマー混合物は、反応器に不活性ガス流中において供給される。脱酸素及び供給流のための適切な不活性ガスは、先行技術から公知の不活性ガス、例えば、窒素、二酸化炭素又はアルゴン等の貴ガスであり、それによって窒素が特に好ましい。
【0034】
このポイントにおいてモノマー溶液中のエチレン性不飽和酸、例えばアクリル酸の依然として不明の可能性がある分率は、好ましくは総必要量の約30%である。残りのモノマー、架橋剤、過酸化水素、過硫酸ナトリウム及び場合によって共開始剤等の必要な開始剤の少なくとも一部、並びに場合によって更なる必要な添加剤が適切な位置で移送ラインに注入され得る。
【0035】
酸化還元開始系が使用される場合、過酸化水素等の開始系の酸化成分は流れの方向における移送ラインの早期のポイントで加えられ、アスコルビン酸又はその塩等の開始系の還元成分は移送ラインのちょうど最後で、即ちモノマー混合物が反応器に入るポイントの直前で加えられる。場合によって、還元成分を直接反応器に加えることもできる。代わりに、還元成分をモノマー混合物の投入ポイントに近接した位置で反応器に直接注入して、それが反応器中におけるモノマー混合物と均質化する。しかし、移送ラインにおけるより良好な均質化のため、反応器中への投入の直前の移送ラインのちょうど最後で還元成分を加えることが好ましい。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態によれば、添加の順序は、以下の順序であってよい。モノマー溶液が循環ラインから回収された後、前述したように、所望の中和度を達成するため及び酸性液体水性モノマー混合物を得るため、例えばアクリル酸の残りの量を加える。次いで、架橋剤を加え、その後、場合によって、例えば塩素酸ナトリウムを加え、その後過酸化水素及び/又は過硫酸ナトリウム等の酸化還元開始系の酸化成分を加える。その後、場合によって、上記定義の通りの超吸収性ポリマーの微粒子を加える。最後に、反応器中への投入の直前の移送ラインの最後で、アスコルビン酸等の酸化還元開始剤の還元成分を注入する。代わりに、還元成分をモノマー混合物の投入ポイントに近接した位置で反応器に直接注入して、それが反応器中におけるモノマー混合物と均質化する。本発明の好ましい一実施形態によれば、移送ラインは、モノマー溶液中における加えられた成分の均質分布を得るために少なくとも1つの、好ましくは幾つかのインラインミキサを備える。インラインミキサは、乱流を提供するための適切なサイズの偏心配置された穿孔を有する少なくとも1つの円板の形態であることができる。好ましくは、それらの円板の内の幾つかは、均質のモノマー溶液が達成されるように孔が互い違いに配列されるように直列に挿入される。
【0037】
更に、不活性ガス供給流は、重合反応器からの酸素含有気相の除去を容易にするために反応器中におけるヘッド空間中に導入され得る。脱酸素及び供給流のための上記記載のものと同じ不活性ガスを用いることができる。
【0038】
微粒子がモノマー溶液に加えられる場合、前記方法にリサイクルすべき微粒子の部分は、反応塊中におけるエチレン性不飽和酸、例えばアクリル酸の質量に対して2質量%〜20質量%、好ましくは5質量%〜18質量%である。モノマー溶液中への微粒子のリサイクルの利点は、分散した微粒子を含有するモノマー溶液の重合によって得られたポリマーマトリックス中において粒子が統合され、堅固に結合するようになるということである。特に、粉砕、篩にかけること及びポリマー後処理等の下流における方法の作動において、かかるリサイクルされた微粒子はポリマー生成物からもはや分離しない。
【0039】
重合は更なる抑制剤によって通常防止され、商業的に入手可能なアクリル酸は約200ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)によって一般に安定化される。しかし、MEHQが存在する場合であっても、例えばモノマー溶液中における鉄等の微量の金属イオンによって、剪断力によって、特に開始剤の作用によって引き起こされるモノマー溶液の望ましくない早期重合が起きる可能性がある。このことは、モノマー溶液製造系中における汚損及び反応器への移送ラインの即時の閉塞さえ引き起こし得る。更に、鉄イオン等の微量の金属イオンの効果に拮抗するために、金属イオンをキレート化し得るキレート剤をモノマー混合物に加えることができる。
【0040】
本発明の連続的方法のための反応器として、先行技術から公知の通りの超吸収性ポリマーの連続的溶液及びゲル重合のためのあらゆる適切な反応器が用いられ得る。所望の時間枠の中で反応器を通じて反応塊を混合、混練及び送付し得る反応器が特に好ましい。連続混練機及び押出機が特に好ましい。容器の軸に沿って容器の内容物を運搬するために少なくとも部分的に機能する2つ以上のスクリュー又は混練軸を含むそれらの反応器が本発明の目的のために特に有利である。好ましい一実施形態において、軸の内の一方は混練軸としての役割を果たし、他方は洗浄軸としての役割を果たす。2つの軸の回転速度は、その速度が両軸について同じであり得るが異なってよい。好ましくは、これらの軸は逆方向で回転し、軸の半径は重複する。好ましい実施形態において、2つの軸は互いに少なくとも実質的に平行である。しかし、2つ超の軸を有する容器、同じ方向で回転する軸を有する容器、軸の半径が重複しない容器、軸が少なくとも実質的に平行でない容器又はこれらのあらゆる組み合わせを適用することも可能である。適切な反応器は、例えば、List AG社(CH−4422 Alsdorf,Switzerland)から入手可能であり、とりわけ、Opposite−Rotating−Processor(ORP)のConti−Version、Discoterm Conti(DTP)、Co−Rotating Processor(CRP)及び(AP)、並びにCRK型の加工機が適切である。適切な混練機反応器は、Buss AG社(Hohenrainstrasse 10,4133 Pratteln(Switzerland))から入手可能である。他の適切な反応器は、DE−OS3432690に記載されている反応器である。また、重合が連続的に行われる無端コンベヤベルトを有するベルト反応器を開示しているDE−OS3544770において記載されている通りの装置も重合には特に好ましい。
【0041】
ベルト反応器が本発明の方法において用いられる場合、コンベヤベルト上におけるゲルへの塩基性水性媒体の添加は原則として可能であるが、均質化に伴う困難に直面する可能性がある。代わりに、他の上記の反応器の場合と同様に、塩基性水性媒体は、例えば押出機中におけるゲルサイジングの間又はゲル粒状化工程の間、保持タンク中において、反応器から保持タンクへの移送の間にベルト反応器からそれを除去した後でゲルに加えられ得る。
【0042】
本発明の方法における好ましい実施形態によれば、反応器は、少なくとも3つの領域を包含して使用され、ここで第1の領域は開始領域であり、第2の領域はゲル相領域であり、第3の領域は粒状化領域であり、それによってモノマー混合物は開始領域に供給され、本発明による塩基性水性媒体は第2及び/又は第3の領域に供給される。上で考察されたように、とりわけ2つの軸を有する連続混練機を使用する場合、溶液が反応器の1つの領域に供給されるように移送ラインの入口接続部が反応器の供給端において設置され、それは、2つの軸の間の中央の反応器の内側にあってこの領域中における反応塊と均質に混合される。本発明の好ましい一実施形態において、圧力差が移送ラインと反応器との間において適用され、反応器が準大気圧力の下で作動される。以下で考察されるように、気相が液相から反応器中への投入の際に分離し、真空系及び排気系を介して更なる加工に誘導される。
【0043】
反応器には、総反応器体積の1リットルにつき0.5kg/時〜5kg/時、好ましくは1.2kg/時〜3.5kg/時の速度でモノマー溶液が連続的に装入され得る。反応器に供給されたモノマー混合物は、通常4℃〜35℃の温度を有する。経済的理由のため、温度は、好ましくは20℃超である。これは、溶液を冷却するためのエネルギーを節約し、重合の間の反応塊の温度は、他の工程によって確実に制御され得る。
【0044】
以下のオプションを用いて、系の中への総エネルギー投入量を制御することができる。従って型を選択し、モノマー溶液中におけるモノマーの濃度を調整することによって生成された総重合熱を制御するオプションがある。モノマー供給材料の温度を上記で与えられる通りの温度範囲の中で提供することができ、蒸気を反応器の開始領域中に注入することができ、最後に反応器の外被及び軸を介した加熱のオプションがある。これは、開始及び重合の速度があまりに大きく低下し、それによって十分なモノマー転化に必要とされる反応器中におけるあまりに長い滞留時間をもたらすように、モノマー供給材料が反応器中における開始領域をあまりに大きく冷却する場合、必要とされ得る。
【0045】
外被及び軸を介して冷却することによって反応塊からエネルギーを除去することができ、反応塊中に存在する水の部分の蒸発によって非常に効率的な冷却が達成される。最も効率的な冷却は、反応器中における減圧下での蒸発によって達成される。従って、準大気圧力下での反応器の作動は、任意の更なる相分離装置なしでの反応器中へのモノマー混合物の投入の際の気相の迅速且つ安全な分離の上記で考察された効果に加えて、効率的な温度制御の利益を有する。系のエネルギーのかなりの部分は、反応器から排出された際にゲルによって除去することもできる。その量は、ゲル及びその温度の熱容量に依存する。
【0046】
モノマー濃度は、反応温度を制御するためには通常使用されない。経済的理由のため、溶解性の限界によって通常与えられる最も高い可能なレベルに濃度を上げることが望ましい。従って、温度制御のため、全ての他のオプションが残っている。最も好ましくは、反応器の様々な領域中における所望の温度が好ましくは指定されるオプションの組み合わせが適用される。好ましくは、反応器の第1の領域中における反応塊は50℃〜100℃、好ましくは65℃〜90℃の温度を有し、第2の領域中においては、65℃〜110℃、好ましくは80℃〜100℃の温度(ピーク温度)であり、及び最終領域中においては、100℃未満、好ましくは95℃未満の温度である。様々な領域中におけるこれらの温度は、温度が個別に調整され得る幾つかのセグメントに反応器の外被及び軸が分けられるということによって確実に調整され得る。これは、反応器の開始領域及び最終領域の温度制御を可能にする。第2の領域中におけるどこかに出現するピーク温度は、所望の温度に対して対応する圧力の下での蒸発によって好ましくは確実に制御される。
【0047】
反応器の軸は、好ましくは、作動限界値の約50%の速度で作動される。混練器具によって生成される剪断力は、30%以下の分率の6mm超のゲル粒子を含有する3mm〜5mmの質量平均ゲル粒径を有する易流動性ゲルが得られるようにヒドロゲルの十分な粒状化を可能にする。本発明の塩基性水性媒体の添加のため、ゲル流動性が特に改善される。
【0048】
十分な転化が起きるまで反応塊は反応器中にとどまることが必要であり、ゲルは所望の程度にサイジングされ、更なる温度制御は必要でない。このポイントにおいて、転化は、少なくとも90%、より好ましくは95%、最も好ましい99%超の程度に達した。これは、3分間〜40分間、より好ましくは4分間〜20分間の流量に応じて滞留時間に相関する。総反応器体積1リットル当たり0.5kg/時〜5kg/時のモノマー溶液の流量が可能である。
【0049】
ゲルは、反応器の供給又は開始領域に対して反対の端に位置する反応器の最終領域から排出される。反応器の好ましい実施形態を用いて、洗浄軸の側面におけるハウジング中の開口部を通じて、調節し得る堰の上の洗浄軸によってゲルが反応器から拭き取られる。
【0050】
反応器と前記方法の下流における次のユニットとの間にポリマーゲル用緩衝液格納部を有することが、スムーズな製造条件のために好ましい。所望の量の緩衝材料を維持することに加えて、容器は、99%超、更により好ましくは99.5%超の転化率へのポリマーゲルの更なる転化を可能にするための保持タンクとしても役立つ。それは、添加剤がポリマーに装入され、混入され得る更なる場所を更に提供する。その容器の設計は、それが適切な撹拌のための及びゲルの所望の温度を維持するための器具を提供する限り重要でない。好ましくは、格納部は、所望の温度でゲルを維持するために断熱され、実質的なプラグ流れを可能にし、及びポリマーゲルが連続的且つ確実に装入され、排出されるように設計される。格納部は、水平に又は垂直に配置された容器、単一の若しくは多数のスクリューコンベヤ又は移動ベルトであり得る。格納部は、上流及び下流における多重製造ライン法に役立つことができる。幾つかのゲル乾燥機に1つの緩衝容器からゲルが与えられる場合、ゲル流れを適切に分割するために適切な数の接合部が設置される。
【0051】
得られたポリマーを、当該技術分野において周知の工程を用いて、典型的には事前にサイジングし、乾燥させる。適切な乾燥工程としては、流動層乾燥機、回転乾燥機、強制空気オーブン、通過循環排気乾燥機及びベルト乾燥機が挙げられる。幾つかの例において、乾燥は、2つ以上のステージにおいて出現する(即ちマルチステージ乾燥)。乾燥の完了後、ポリマーを更にサイジングして、好ましくは2mm未満、より好ましい1mm未満の重量平均直径を有する粒子を形成する。好ましくは、最終ポリマー生成物は、少なくとも300μmの重量平均粒径を有する。
【0052】
乾燥及びサイジングの後、通常、超吸収性ポリマーは、例えば、超吸収性ポリマーの意図された商業的使用のために許容され得ないあまりに小さい粒径を有する粒子を除去するために篩にかけることによって分級される。
【0053】
これらの微粒子は本発明の方法のあらゆるポイントにリサイクルされ得るが、前述したように、これらの微粒子がモノマー混合物にリサイクルされ得る場合、それは本発明の方法の特定の利点である。
【0054】
更に、乾燥粒子は、先行技術において公知であるように、生成物の性質を改善するために熱処理又は表面処理され得ることが望ましい。例えば、乾燥粒子は、WO93/05080及び/又はUS5,629,377において説明されている手法に従って熱処理され得る。かかる熱処理は、好ましくは、少なくとも170℃、より好ましくは少なくとも180℃、最も好ましくは少なくとも190℃の温度で実施される。かかる熱処理は、好ましくは、250℃未満、より好ましくは240℃未満の温度で実施される。熱処理の方法は重要でない。例えば、強制空気オーブン、流動層加熱器、パドル乾燥機及び加熱スクリューコンベヤが成功して用いられ得る。所望により、加熱されたポリマーは、取扱いの容易さのために再加湿され得る。ポリマー粒子の吸収性を改善する方法は、ポリマー粒子を表面架橋することであり得る。表面架橋のための手法は、当該技術分野において周知であり、例えばUS4,734,478及びUS4,466,983において記載されている。これらの手法は、ポリマー粒子のモジュラス及び/又は荷重下吸収量を増加させることができる。アルミニウム塩又はシリカ等の添加剤の組み込みによって表面改質を達成することもできる。
【0055】
上で考察されたように、本発明の好ましい実施形態により、反応器を準大気圧力下で作動させ、温度制御が水の蒸発を適用する場合、前記方法において凝縮物が生成される。重合反応によって生成される凝縮物の総体積は、方法の条件に依存する。これらの条件は、最終エネルギーバランスを決定し、故に温度制御系中において蒸発が有する部分を決定する。系中における総エネルギー量は、エネルギーを加えるか又はエネルギーを系から除去するエネルギーの流れのバランスである。エネルギーの流れを加えることは、重合及び供給の流れ(それらの温度に依存する)、反応器中への外被からの熱伝達、混合エネルギーの散逸及び場合によって蒸気注入である。エネルギーを除去する流れは、その所定の熱容量に従い、ゲル排出温度に応じて排出されるゲルのエネルギー、反応器から外被への熱伝達及び蒸発によって消費されたエネルギーである。上記で考察された好ましい条件下で、蒸発させるべき水の量は、反応塊中に存在する水に対して約8%〜80%である。それを反応器から除去し、別々に処理することができるか、又はそれを凝縮させ、反応器中におけるゲルに戻すか若しくはゲルが乾燥するまで方法の下流の工程の内のいずれかに戻すことができる。代わりに、それを、方法の適切な上流の工程の内のいずれかに、好ましくは酸化還元開始剤の還元成分と一緒に反応器の第1の領域に又はモノマー溶液の製造のためのユニットにリサイクルすることができる。
【0056】
経済的理由のため、ゲルの固形物含有量を最大にし、故に凝縮物の蒸発の必要性を生じさせないためにゲルから蒸発した水の留分を除去することが一方で好ましい。しかし、凝縮物の少なくとも一部をゲルにリサイクルすることはその粘着性を低下させ、従って流動挙動を改善することが分かった。驚くべきことに、本発明者(ら)によって、炭酸塩又は炭酸水素塩含有スクラバー水溶液をゲルにリサイクルすることにより、凝縮物をリサイクルすることと比較して流動挙動が一層更に改善されることが分かった。
【0057】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、スクラバーのために使用すべき焼灼剤を希釈するために凝縮物流が適用される。凝縮物は、0.5%〜2%の濃度で主成分としてアクリル酸を含有する。更に、酢酸及びプロピオン酸等の微量の他の有機酸がある。以下で考察されるように、適用される場合、MEHQ等の抑制剤、並びにその誘導体及び分解生成物が存在し得、また、前記酸と機器の金属表面との接触から又は他の源から生じ得る微量の金属イオン、即ちFeイオンも存在し得る。
【0058】
当該技術分野における予想に反して、驚くべきことに、超吸収性ポリマーの製造のための連続的方法において得られる塩基性スクラバー水溶液が、多くの不純物が存在するにもかかわらず、方法の安定性及び生成物の質に支障を来すことなくゲル流動性を改善するためにゲルにリサイクル可能であることが見出された。このことにより、モノマー又はポリマー微粒子等のスクラバー溶液の価値がある成分を利用することができ、方法及び/又は生成物に悪影響を与えることなく廃棄費用を最小限に抑えることができる。
【0059】
ここで本発明を以下の実施例を参照して更に詳細に示す。
【0060】
実施例
実施例及び表において報告される生成物パラメータを以下のように測定する。
【0061】
実施例のために用いられる分析方法
CRC(遠心分離保持能力)
EDANA、標準試験:WSP241.2(05)
遠心分離後の食塩溶液中における液保持能力の重量決定
【0062】
ゲル−流動−指数(GFI)
超吸収性ゲル流動挙動の評価のために、それを反応器又は押出機から排出する際にこの方法を用いる。流動特性をゲル流動指数(GFI)として決定する。それは、篩塔に組み立てた一組の適切な篩を通じてゲル粒状体の流動を定量する。
【0063】
機器及び材料
− 20cmの直径並びに25mm、20mm、16mm、10mm及び8mmのメッシュサイズを有する篩
− 篩塔を担持するためのプラスチックトレイ(長さ30cm、幅25cm、高さ5cm)
− 2リットルのプラスチック袋
− 輸送及び短期間の貯蔵の間の袋中の試料を採取し、それを所望の温度で維持するための断熱ボックス
− 500mlプラスチックビーカー
− 秤
【0064】
手法
篩を積み重ねて篩塔を形成し、プラスチックトレイ内にそれを配置する(下記の図を参照)。
【0065】
試料が分析を必要とする源から採取したゲル試料をプラスチック袋中に配置し、それを、測定まで所望の温度で維持するための断熱ボックス中に直ちに入れる。プラスチック袋中の試料から200gの部分を慎重にプラスチックビーカー中に秤量し、篩塔の上部の篩上に広げる。ゲルに触れないようにするか、押さないように、且つゲルの天然の重量流動挙動に影響を及ぼさないために篩にいかなる振動も与えないように注意しなければならない。
【0066】

【0067】
ゲル試料を篩に2分間通して、その後、篩上のゲルの部分を秤量することによって決定する。
【0068】
計算
トレイ中におけるそれぞれ様々な篩上のゲル部分の質量を以下の式:
【数1】

[式中、Wiは、篩上のゲルの質量を表し、αiは、篩の関連の重み係数を表し、ここで前記係数は、25mm篩については0であり、20mm篩については0.2であり、16mm篩については0.4であり、10mm篩については0.6であり、8mm篩については0.8であり、トレイ中におけるゲル質量については1,0であり、及びWtotは、計量した総ゲル質量を表す]に投入して篩上の秤量した質量(Wi weighed)を得る。
【0069】
最後に秤量部分を合計することによってゲル流動指数を得る。
【数2】

正確さのために、前記手法を繰り返し、報告されたGFIは2つの測定値の平均を表す。
【0070】
比較例1:
比較例1のために、List AG(CH)からのツインスクリュー反応器型ORP10バッチを使用した。その反応器にモノマー溶液を充填する前に、反応器を通して窒素を押し流すことによって反応器に不活性ガス雰囲気を供給し、それを50℃に予熱した。
【0071】
1687.4gのアクリル酸(99.8%活性)をNaOHの2538.9gの24%活性水溶液で70%に中和し、更に354.3gの脱イオン水で希釈した。混合物の温度を常に35℃未満に維持する。この混合物に、分子中に平均して15EO単位を有する4.6g(2700ppm b.o.AA)のHE−TMPTA及び10.12g(6000ppm b.o.AA)のPEG600を加えた。モノマー溶液をプラスチック容器中に回収し、その中に140.3グラムの微粒子(6.5%b.o.AA)を分散させた。容器は封管を備え、それを通して溶液を窒素流の助けにより15分間脱酸素した。その後、酸素の排出下でそれを反応器に移送した。移送の間、1.97の30%活性過酸化水素溶液(350ppm活性b.o.AA)及び50.6gの5%活性過硫酸ナトリウム溶液(1500ppm b.o.AA)を移送ラインに注入した。モノマー移送を終了する直前に、6.8gの1%活性アスコルビン酸溶液(40ppm b.o.AA)を移送ラインに注入した。
【0072】
重合の開始が直ちに起こり、反応塊の温度が上昇し、反応器の温度(外被及び軸加熱)を80℃に設定した。反応塊は、開始26分後に70℃の最大温度に達し、更に30分間この温度で維持した。酸素を排出するため及び反応器からあらゆる蒸気を運び出すために、全ての重合及び保持期間の間に窒素ガススウィープ流は反応器のヘッド空間を通過した。前記方法に蒸気凝縮物をリサイクルしなかった。反応器の油圧式駆動の圧力を記録し、その平均を、開始の間際に始まり排出の時に終了する時間から計算した。
【0073】
その後、ゲルを反応器から排出し、8mm孔を有するダイプレートを有するミート粉砕機(Bizerba製)中においてサイジングした。800グラムの粉砕ゲルの一部を、金属スクリーンから製造されたバスケット中において約6cmの厚さを有する層として配置し、流動層乾燥機の試料チャンバ中において調整し、そこで180℃の温度を有する熱風の上流側においてそれを20分間乾燥した。得られた乾燥ポリマーを手動で破砕し、パイロットサイズロールミル(Bauermeister製)中において粉砕し、150〜850μmの間の粒径を有する留分を得るために篩にかけた。結果を以下の第2表にまとめる。
【0074】
比較例2:
微粒子を反応器中におけるゲル中に加え、5分後にそれを反応器から排出し、撹拌を継続することによって均質に混合したことを除いて、比較例1を繰り返した。
【0075】
比較例3:
粘性反応塊が粒状化し始め、粗い塊に分解した後、微粒子を反応器中における反応塊中に加え、継続した撹拌によって均質に混合したことを除いて、比較例1を繰り返した。
【0076】
比較例4:
反応器を出た蒸気を凝縮し、回収し(347g)、反応器中におけるゲルに戻してリサイクルし、5分後にそれを反応器から排出し、撹拌を継続することによって均質に混合したことを除いて、比較例2を繰り返した。
【0077】
結果を第1表にまとめる。
【0078】
実施例1及び2:
比較例1及び2を繰り返したが、更に、337.5gの水を配合中において省略し、代わりに、通常の生成から得られるものと同じ質量のスクラバー水(20%b.o.AA)に置き換えた。それを反応器中のゲルに混合した。結果を第1表において報告する。
【0079】
【表1】

*スクラバー水の代わりに凝縮物を用いた。
【0080】
結果は、反応器中のゲルへのスクラバー水のリサイクルは吸収能力に有意に影響しないが、反応器中におけるゲル流動性を有意に改善し、押出後のゲル流動性を一層より有意に改善することを実証する。更に、結果は、塩基性でない又は比較例4における通りの炭酸塩を含有しない水若しくは水溶液を加えることはポリマーゲル流動性をわずかに改善するだけであるが、一方で実施例2における通りの炭酸塩含有スクラバー水を用いて流動性は著しく改善されることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合後に超吸収性ポリマーを提供するように選択されるモノマーの水性混合物を製造する工程、
(b)反応器に前記モノマー混合物を供給する工程、
(c)反応器中における水性モノマー混合物を遊離基重合に供して超吸収性ポリマーゲルを得る工程、及び
(d)反応器から超吸収性ポリマーを除去する工程、
(e)反応器から除去された超吸収性ポリマーを処理して最終生成物を得る工程
を含む、超吸収性ポリマーの製造のための方法であって、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含む塩基性水性媒体が超吸収性ポリマーゲルに供給される、方法。
【請求項2】
処理工程(e)が、
(A)(B)による方法工程の少なくとも1つを行う場合に超吸収性ポリマーゲルを(B)による後続の方法工程に移送する工程;
(B)場合によって、任意の順序における以下の工程及びそれらの組み合わせの内のいずれかである工程であって:
(1)超吸収性ポリマーゲルをサイジングする工程;
(2)超吸収性ポリマーゲルを粒状化する工程;
(3)ゲル保持タンク中における超吸収性ポリマーゲルを維持する工程;
(C)乾燥装置に超吸収性ポリマーゲルを移送する工程;及び
(D)超吸収性ポリマーゲルを乾燥させる工程
を包含し、(c)及び(e(A)〜e(C))において定義された方法工程の内のいずれかにおいて塩基性水性媒体が超吸収性ポリマーゲルに供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法のあらゆるステージから除去された少なくとも1種のオフガス流を排気前に塩基性水溶液とのスクラビングに供することから得られたスクラバー水溶液を前記塩基性水性媒体が含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記水性モノマー混合物が移送ラインを介して前記反応器に供給され、前記反応器が少なくとも3つの領域を包含し、ここで第1の領域が開始領域であり、第2の領域がゲル相領域であり、第3の領域が粒状化領域であり、モノマー混合物が開始領域に供給される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
スクラバー水溶液が、反応器の第2若しくは第3の領域中におけるゲルに、又はそれらのあらゆる組み合わせにリサイクルされる、請求項3に依存する限りにおいて請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のオフガス流が、炭酸塩又は炭酸水素塩含有スクラバー水溶液をもたらす二酸化炭素を含有する、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
更に、
− 反応器中への投入の前に炭酸塩又は炭酸水素塩含有スクラバー水溶液の少なくとも一部を水性モノマー混合物中に導入する工程であって、それによって二酸化炭素及びモノマー混合物中に事前に溶解した酸素の少なくとも一部を含む気相を形成し、前記気相が液相中において分散している工程;
− 反応器中への投入の直前又は直後に気体/液体混合物を少なくとも部分的相分離に供する工程;及び
− 分離された気相をオフガス流として少なくとも部分的に除去する工程
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
遊離基重合が酸化還元開始剤によって開始され、開始剤の酸化成分が、工程(a)におけるモノマー混合物に加えられ、開始剤の還元成分が、反応器中へのモノマー混合物の投入前にモノマー混合物に加えられるか、又は反応器中へのモノマー混合物の投入の直後に直接反応器に加えられる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が連続的方法であり、前記モノマー混合物が連続的に反応器に供給され、前記超吸収性ポリマーが前記反応器から連続的に除去される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器が、連続混練機及び押出機又はベルト反応器から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記モノマー混合物が、少なくとも1種のエチレン性不飽和酸と少なくとも2個のエチレン性不飽和基を担持する少なくとも1種のモノマーとを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記オフガス流が、
− モノマー貯蔵タンク及びモノマー移送ラインからの排気流;
− モノマー混合物の脱酸素化からの排気流;
− 反応器からの排気流;
− 超吸収性ポリマーゲルサイジングからの排気流;
− 超吸収性ポリマーゲル乾燥からの排気流;
− 超吸収性ポリマー生成物の後処理操作からの排気流;又は
− あらゆるそれらの組み合わせ
に由来する、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記スクラバー水溶液が、
− アルカリ金属水酸化物;
− アルカリ金属炭酸塩及び/又は炭酸水素塩;
− エチレン性不飽和及び場合によって飽和した酸のアルカリ金属塩;
− 超吸収性ポリマー塵
− 場合によってアルカリ金属以外の金属イオン;及び
− 場合によって重合抑制剤、それらの誘導体及び/又は分解生成物
を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
得られた超吸収性ポリマーが、表面後架橋、熱処理及び/又は添加剤によって表面改質される、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−505274(P2012−505274A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530397(P2011−530397)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007038
【国際公開番号】WO2010/040467
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(511088151)エボニック シュトックハウゼン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Stockhausen GmbH
【住所又は居所原語表記】Baekerpfad 25, D−47805 Krefeld, Germany
【Fターム(参考)】