説明

超平滑で再利用可能な印刷可能シート、及びその製造方法

平滑又は超平滑な印刷可能シートの製造方法であって、該方法は、少なくとも一つの底面プラスチックフィルム(14)、一つの接着防止中間層(16)、及び一つの印刷可能な上面層(18)を有する多層構造(12)を調製し、基材(24)の一つの界面(30)、又は該印刷可能層の上面の界面(28)に接着剤を塗布し、及びこれらを積層するために、該基材を該印刷可能層に当接させ、次いで、該印刷可能層から該プラスチックフィルムを剥がすことを含み、該印刷可能層(18)は、該シートに平滑面又は超平滑面(22)を定める、ことを特徴とする前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑又は超平滑で再利用可能な印刷可能シートに関し、及びその製造方法にも関する。該シートは、包装、電子機器、光学機器又は印刷技術、例えば、印刷媒体などの多岐にわたる技術分野、特に、画像を印刷するための技術分野において利用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、紙の一方の面にプラスチックフィルムを積層することによって超平滑シートを製造することができ、該プラスチックフィルムは、紙に超平滑面をもたらしている。該基紙は、繊維性材料から作られており、及び、その界面には、約20マイクロメーター(μm)というレベルの比較的に大きな粗度が認められており、すなわち、その界面の各々には、20μmという範囲内の高さの突起や窪みがある。このような紙の一方の面にプラスチックフィルムを積層することで、その表面に非常に小さな粗度を付与するという役割が果たされることとなり、そして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた場合には、1μmというレベルの粗度が付与されている。
【0003】
紙は、比較的に高価な材料であり、及び大規模生産される材料でもあるので、再利用可能にすることは重要事項である。にもかかわらず、紙を基にした超平滑なシートは、プラスチックフィルムを利用しているため、再利用することができず、又は再利用することが困難であり、そのため、環境への配慮もなされておらず、また安価でもない。紙を基にしたシートを再利用する場合、これらシートは、製紙用パルプを形成するために、裁断され、及びパルパーにて水と一緒に混合される。これらシートがプラスチックフィルムを含んでいる場合には、これらフィルムがパルパー内で剥がされてしまい、及びそのプラスチック成分がパルプを汚染してしまうこととなる。
【0004】
したがって、当該技術分野の現状では、再利用可能な超平滑シート、好ましくは、全体的に再利用可能な超平滑シートを製造することは不可能である。
【0005】
さらに、そのような超平滑シートに印刷を施すことはできず、及び印刷を可能にするためには、該シートの該プラスチックフィルムに印刷可能な樹脂を定着させる必要がある。この技術は、特に、写真画像を印刷するための紙を基にしたシート(「樹脂塗工印画紙」として公知である)を製造する際に利用されており、そのようなシートは、約6000秒(s)のベック平滑度を有するポリエチレン(PE)フィルムを利用している。
【0006】
平滑シートは、一旦乾燥すれば紙に平滑面を形成する組成物を用いて、該紙の一方の面に塗工層を設けることによって製造することもできる。この技術は、プラスチックフィルムを必要とせずに、平滑シートの製造を可能にする。スクレーパー或いは塗布ブレード、エアナイフ、グラビア印刷、又はローラー(サイズプレス、フィルムプレスなど)を利用するカーテン塗工技術によって、該組成物は、該紙に塗工される。塗工用組成物の塗工を受ける該基紙の界面には、窪みと突起が幾重にも出現しており、該窪みは、塗工用組成物によって埋められることとなり、及び該突起は、塗工の最中にも形成されており、これらの作用によって、該紙の粗度を小さくすることが可能となっている。にもかかわらず、この技術では、例えば、カレンダー仕上げを行って実質的に平滑なものであっても、プラスチックフィルムで覆われたシートと同程度の平滑なシートの実現には至っていない。
【0007】
平滑で、かつ光沢を有するシートを製造するために現在利用されている方法は、非常に平滑で、かつクロム層で覆われた円柱面を有する機械式ローラーの手段によって、基紙に塗工用組成物を塗工する工程からなる。この方法で得られたシートのベック平滑度は、50sのレベルのものでしかなく、したがって、プラスチックフィルムを用いたシートの (PEフィルムを利用した場合で約6000sの) ベック平滑度よりも遙かに小さい。
【0008】
さらに、比較的に表面が粗い紙に組成物を塗工して平滑シートを得ることは困難である。前述した紙の界面での窪みが、大きすぎたり、或いは窪みの数が多すぎる場合には、該塗工用組成物が、すべての窪みを完全に埋めることはできず、或いは、そうしようとすれば、大量の該組成物が必要となってくる。
【0009】
このことは、例えば、比較的大きな嵩、例えば、1.10立方センチメートル/グラム(cm3/g)を超える嵩を有する紙が該当するが、そのような紙は、比較的に粗く、また、印刷に不向きな界面しか有していない。そのような紙の界面に組成物を塗工し、たとえ大量の組成物を使用したとしても、平滑シートが製造されることはなく、また、その嵩が顕著に小さくなる。さらに、カレンダー仕上げを行うことで、シートの平滑度の改善は可能となるが、嵩の減少は免れない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、従来技術において、満足できる条件下で、粗製紙、及び/又は、比較的に嵩の大きな紙から平滑シートを製造することは不可能であった。
【0011】
本発明の具体的な目的は、従来技術の問題点を解決するための手段、すなわち、簡便で、効率的で、しかも安価な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、超平滑であると本発明において認識がされている平滑なシートを製造するための方法を提案するものであって、該シートの平滑度は、該紙の粗度、或いは大抵の場合は利用した基紙の粗度とは無関係であり、及び、該シートは、プラスチックフィルムを含んでいないので、少なくともその一部は再利用可能であり、又は実際には生物分解が可能である。
【0013】
この目的を達成するために、本発明は、少なくとも一つの平滑な界面、及び、有利には、少なくとも一つの超平滑な界面を有する印刷可能シートの製造方法であって、該シートが、単一の層又は重なり合った複数の層に少なくとも一部が覆われている少なくとも一つの界面を有する基材、特に、紙製の基材を含み、該方法が:
a) 少なくとも好ましくは平滑なプラスチックフィルム、接着防止層、及び印刷可能層を含み、又はこれらによって構成されており、該接着防止層が、該プラスチックフィルムと該印刷可能層との間に位置している多層構造を調製又は提供し;
b) 基材の界面、及び/又は該プラスチックフィルムとは反対側に位置した該多層構造の界面に接着剤を塗布し、及び該基材の前記界面を、該多層構造の前記界面に当接して、該多層構造と該基材とを積層させ;及び
c) 該印刷可能層から該プラスチックフィルムを剥がして、該印刷可能層が、該シートの前記平滑面又は超平滑面を定める、工程を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の特定の態様において、該印刷可能シートの製造方法を実施する以前に、該多層構造は調製される。こうした状況下で、該印刷可能シートの製造方法を実施するために、該多層構造は提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】平滑又は超平滑な印刷可能シートを製造するための本発明の方法での詳細な工程図である。
【図2】本発明の方法の他の態様を示す詳細な工程図である。
【図3】本発明の方法の移送工程を実施するための手段の模式図である。
【図4】本発明の方法の移送工程を実施するための手段の模式図である。
【図5】基紙の界面を走査型電子顕微鏡(SEB)で観察して得た画像である。
【図6】本発明の方法によって得た平滑又は超平滑シートの界面を走査型電子顕微鏡(SEB)で観察して得た画像である。
【符号の説明】
【0016】
10、10' --- 印刷可能シート
12、12' --- 多層構造
14 --- プラスチックフィルム
16 --- 接着防止層
18 --- 印刷可能層
20、22、28、30、36 --- 界面
24 --- 基材
26 --- 接着剤
32、32' --- 積層体
33 --- プレコーティング
34 --- 増設層
40 --- 第一ローラー
42 --- 第二ローラー
44 --- 第三ローラー
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、該シートの平滑面又は超平滑面は、所謂「送り手」のプラスチックフィルム上に調製される印刷可能層によって定められ、この段階における前記印刷可能層は、多層構造の構成要素であり、そして、所謂「受け手」の基材へと移される。印刷可能層の平滑度、ひいてはシートの平滑度は、該多層構造のプラスチックフィルムの平滑度によって決定されるものであり、したがって、使用した基材の平滑度に左右されることはない。このようにして、本発明は、プラスチックフィルムの表面状態を任意の基材に移行させることを可能にする。換言すれば、本発明は、任意の基材、有利には、粗製紙、及び/又は、比較的大きな嵩、例えば、1.10cm3/gと同等またはそれを超える嵩を有する紙からの、平滑又は超平滑シートの製造を可能にし、かつこのようにして製造されるため、該シートはプラスチックフィルムを含まない。
【0018】
したがって、本発明の方法によって調製したシートは、印刷可能であり、しかも、再利用可能でもある。
【0019】
本特許出願において、印刷可能シートの調製の際に用いる印刷可能シート又は基材とは、好ましくは、非剛性、及び/又は、可撓性の、薄い要素(500μmを超えない厚み)のことを意図している。
【0020】
印刷可能層又はシートという用語は、任意の印刷技術、特に、オフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、ドライトナー印刷、液体トナー印刷、電子写真術、リソグラフィーなどによる印刷に適した層又はシートのことを意図している。一般的に、印刷可能層は、顔料と少なくとも一つのバインダーとの混合物を含み、或いは以下のタイプの一種以上のポリマー;アクリル、ビニル、ポリウレタン、スチレン、澱粉、ポリビニルアルコール、エチレン、又はこれらの混合物を基にした印刷可能なワニスによって形成される。該印刷可能シート又は該印刷可能層の平滑又は超平滑な自由表面に、インクが定着する。再利用可能なシートとは、プラスチックフィルム、例えば、熱可塑性物質又は熱硬化性物質から作られたフィルムを含んでいないシートである。
【0021】
本発明の特徴によれば、印刷可能層に印刷を施しても、構造的変化を招くことはなく、及び、特に、その状態又は様相にまで(例えば、固体状態から液体状態へと移行し、次いで、固体状態に戻るような)変化が及ぶものではない。
【0022】
本発明の方法において調製または提供された本発明の多層構造は、特に、底面プラスチックフィルム、接着防止中間層、及び印刷可能な上面層を含んでおり、又はこれらから構成されている。該接着防止層は、該プラスチックフィルムの上面の少なくとも一部を覆っており、及び該印刷可能層は、該接着防止層の上面の少なくとも一部を覆っている。
【0023】
該プラスチックフィルムは、該印刷可能層を製造するための支持体としての役割を果たす。このフィルムは、最終製品、すなわち、シートには含まれないので、該シートは、再利用可能となる。該印刷可能層によって定められたシート上面の表面品質は、該プラスチックフィルムの前記上面の表面品質に呼応するので、(該印刷可能層の傍らに位置している)該フィルムの上面は、有利には、可能な限り平滑となる。換言すれば、該多層構造のプラスチックフィルムが平滑なほど、得られるシートも平滑となる。
【0024】
該プラスチックフィルムは、以下のプラスチック:ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);ポリ乳酸(PLA)を基にしたポリマー;及び、セルロースを基にした任意のポリマーなどから作られたフィルムから選択される。一例として、該フィルムは、約12μmの厚みを有している。
【0025】
有利には、該プラスチックフィルムは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、テフロン、シリカ、窒化ホウ素、ステアリン酸クロムクロリド、又は接着防止作用を示すその他の物質を含んでおらず、及び/又は、これらに覆われてもいない。
【0026】
該印刷可能層の傍らに位置しているフィルムの界面は、好ましくは、平滑であって、及びベックスケールで決定された10,000sを超える平滑度を有するものでもよい。
【0027】
該プラスチックフィルムの厚み、硬度、及び光沢転移温度は、該印刷可能層の性質に対して、ほんの僅かな影響しか与えず、或いはその影響は皆無である。該プラスチックフィルムの平滑度又は逆に粗度だけが、該印刷可能層の平滑度又は粗度に対して影響を及ぼす。該プラスチックフィルムが平滑なほど、該印刷可能層も平滑となる。にもかかわらず、当業者は、該プラスチックフィルムのいずれの性質が、該印刷可能層の表面状態に影響を与えるものであるのかを決定できておらず、及び該印刷可能層のために必要な最終平滑度に呼応してこれら諸性質を最適化することもできていない。
【0028】
該多層構造の接着防止層は、任意の技術で該プラスチックフィルムに対して設けてもよく、例えば、グラビア印刷などが利用できる。該接着防止層の作用は、該印刷可能層と該プラスチックフィルムとの間の接着を限定することと、上記方法の工程c)における該印刷可能層からの該プラスチックフィルムの分離と剥離を促すことである。該接着防止層は、前記防止層が置かれる該プラスチックフィルムの界面の平滑度と表面品質に対して、ほんの僅かな影響しか与えず、或いはその影響は皆無である。
【0029】
該接着防止層は、該印刷可能層よりも、該プラスチックフィルムに対して強力に接着させることができ、そうすることで、該印刷可能層からプラスチックフィルムを剥がす際、大半又はほぼ全ての接着防止層は、プラスチックフィルムに貼り付いたままとなる。にもかかわらず、プラスチックフィルムを剥がした後でもなお、一部又はほんの僅かな接着防止層が、該印刷可能層に残ってしまう場合がある。
【0030】
他の態様において、プラスチックフィルムを剥がした場合に、該印刷可能層の少なくとも一部分に該接着防止層を意図的に残そうとする場合は、該接着防止層を、該プラスチックフィルムよりも、該印刷可能層に対して強力に接着させることができる。
【0031】
さらに別の態様において、該プラスチックフィルムを剥がす際に、該接着防止層は、実質的に二つの区画、すなわち、該プラスチックフィルムに止まる第一の区画と該印刷可能層に止まる第二の区画へと分割されるよう意図される。
【0032】
該多層構造は、該プラスチックフィルムと該印刷可能層との間に重ね合わされた二層の接着防止層を有することができ、この二層は、該プラスチックフィルムが剥がされる間に、互いに分離する(該接着防止層の一方が、該プラスチックフィルムの方に残り、及び他方の接着防止層が、該印刷可能層の方に残る)ようにデザインされている。
【0033】
該シートを流延塗工のための支持体として用いる場合には、該印刷可能層に設けられた該接着防止層の一部又は全部を残すことが、特に好ましい。流延塗工とは、接着防止層が塗工された支持体に少なくとも一つのポリマー(ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)など)を押し出し、又は流延することからなる。該ポリマーは、シートに特定の(例えば、皮革に類似した)外観を付与するために、質感を有する表面を具備することができる。本発明のシートに接着防止層を残すことで、流延塗工のために、前記シートにおいて別の同様の層を設ける必要がなくなり、したがって、特に、流延塗工のための支持体を調製するために要する費用と時間の観点から好ましい。
【0034】
該接着防止層は、5μm以下の厚み、及び、好ましくは、1μm以下の厚みを有する。該接着防止層は、一種以上のシリコーン、一種以上のシロキサン、一種以上のポリシロキサン、又はこれらの誘導体、ウェルナー錯体、例えば、ステアリン酸クロムクロリド、又は、ポリエチレン、プロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンの蝋などから構成され得る。
【0035】
有利には、該接着防止層は、PVDFを含まない。
【0036】
該多層構造の印刷可能層は、印刷可能なワニス、紙用塗膜などから選択することができる。
【0037】
本特許出願において、印刷可能なワニスの用語は、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、ポリアミド、ニトロセルロース又はその他のセルロース、ポリビニルアルコール、澱粉などを基にした物質を指している。一般的に、この物質は、液体の形態で定着させてから、乾燥/加熱、又は紫外線(UV)照射、又は電子照射によって固化される。
【0038】
「紙用塗膜」の用語は、バインダーと顔料を含む組成物を指している。該バインダーは、アクリル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、ポリアミド、ニトロセルロース又はその他のセルロース、ポリビニルアルコール、澱粉、又はこれらの混合物を基にすることができる。該顔料は、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、タルク、シリカ、マイカ、真珠光沢粒子、プラスチック顔料(ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)など)、及びこれらの混合物から選択することができる。該顔料に対するバインダーの量は、乾燥重量で、約5%〜約50%の範囲、及び、好ましくは、8%〜25%の範囲にある。一般的に、インク吸収を改善する間隙を形成するために、紙用塗膜には、バインダーよりも比較的に多量の顔料が用いられている。これとは対照的に、熱転写層では、表面間隙の形成を回避するために、バインダーは、顔料よりも多めに用いられている。
【0039】
該印刷可能層で(バインダー及び/又は顔料として)使用したプラスチック物質は、砕けやすく、及び再利用時に紙パルプを汚染しない。対照的に、プラスチックフィルムは、該紙パルプを懸濁液に投入してもなお、凝集性を保っており、及びフィルターを目詰まりさせてしまう。この点に関して、水溶性バインダー(澱粉、ポリビニルアルコール(PVA)など)は、再利用の最中に水に分散しているので、特に好ましい。
【0040】
該紙用塗膜は、分散剤、及び/又は、流動性改質剤、及び/又は、染料、及び/又は、展着剤或いは表面剤、及び/又は、導電性添加剤も含むことができる。該導電性添加剤は、該シートの表面抵抗率を小さくするために使用することができる。
【0041】
好ましくは、該印刷可能層は、接着防止剤、及び/又は、該層の表面エネルギーを小さくすることが可能な物質、例えば、シリコーン系物質など、PVDF、PP、テフロン、シリカ、窒化ホウ素などの物質を含んでいない。このタイプの薬剤又は物質は、熱転写によって層に印刷を施すために必要であって、特に、紙に印字リボンが絡み付くことを回避するために必要である。したがって、本発明の印刷可能層は、熱転写印刷には適していないといえる。
【0042】
該印刷可能層は、互いに重なり合った複数の副層から作ることができ、各副層は、印刷可能であり、及び上記したタイプのもの(印刷可能なワニス、紙用塗膜など)から選択される。
【0043】
該印刷可能層は、30μm以下、好ましくは、15μm以下、及び、より好ましくは、10μm以下の厚みを有することができる。その坪量(すなわち、1平方メートル当たりのグラム重量(g/m2))は、有利には、30g/m2以下、好ましくは、15g/m2以下、及び、より好ましくは10g/m2以下である。一例として、該印刷可能層は、以下に併記をした数値以下である厚みと坪量を有することができる:10μm及び10g/m2;3μm及び10g/m2;2μm及び10g/m2;5μm及び5g/m2;3μm及び5g/m2;2μm及び5g/m2;5μm及び2g/m2;3μm及び2g/m2;又は2μm及び2g/m2
【0044】
該印刷可能層は、任意の技術で該接着防止層上に設けてもよく、例えば、グラビア印刷などが利用できる。
【0045】
該印刷可能層は、液体状態又は半液体状態で該接着防止層上に設けることができ、次いで、乾燥、加熱、又は電子照射或いは紫外線照射によって固化される。固化及び/又は乾燥を終えた後に、該接着防止層を介して該プラスチックフィルムの平滑面と当接している該印刷可能層は、平滑な該プラスチックフィルムの傍らに界面を出現させる。
【0046】
該印刷可能層は、基材上に移される前に、とりわけ、該プラスチックフィルムによって付与された前記層の表面状態の改変を回避するために、このようにして乾燥及び/又は固化される。換言すれば、該多層構造は、該基材上に該印刷可能層が移される前に調製され、及び該印刷可能層は、該基材上に移される間、すなわち、本発明の方法の工程b)及びc)を行っている間は、固体及び/又は乾燥状態にある。よって、該印刷可能層の表面状態は、該構造を調製している間に作られることとなる。
【0047】
したがって、本発明の方法にあっては、該印刷可能層は、基材とは関係なく製造される。このことは、特に、本願発明の方法を、標準的な工業用ツールで実用可能とし、よって、至適な生産効率が実現されることとなる。
【0048】
該シートの平滑面は、約900s又は1000sを超えるベック平滑度、好ましくは、2000sを超え、及びより好ましくは5000sを超えるベック平滑度を有することができる。本特許出願において、界面が、約900s又は1000sを超えるベック平滑度、有利には、2000sを超え、及びより好ましくは5000sを超えるベック平滑度を示す場合に、界面が平滑又は超平滑であると称する。
【0049】
該平滑面は、70%を超える光沢度、及び、好ましくは、80%を超える光沢度を有することができ、該光沢度は、例えば、75°で、TAPPI(登録商標)T480 om-92法を用いて計測される。該光沢度は、プラスチックフィルムを含む樹脂塗工印画紙の光沢度と同等であるか、又は超える場合もある。
【0050】
該多層構造は、該プラスチックフィルムとは反対側の面にある該印刷可能層に設けられた少なくとも一つの増設層を含むことができ、該増設層の自由界面又は該プラスチックフィルムから最も離間した増設層の自由界面には、工程b)において、接着剤が塗布され、及び該基剤の前述した界面に対して当接されるよう利用される。
【0051】
該増設層は、機能性又は非機能性である。一例として、該増設層を、絶縁体(誘電体)とすることができ、或いは該増設層は、(ガス、例えば、酸素、液体、例えば、水、油脂などに対する)バリアを形成することもできる。
【0052】
該多層構造が、単一の増設層を含む場合、該増設層は、該印刷可能層の上面、すなわち、該多層構造のプラスチックフィルムの反対側の面に位置する該印刷可能層の界面に設けられる。この増設層は、いずれの種類のものでもよく、したがって、印刷可能である必要はない。該多層構造が、二つ以上の増設層を含む場合、これら増設層は、互いに重なり合うこととなり、及び前述した該印刷可能層の上面に設けられる。該印刷可能層に該増設層を設けるために使用する技術は、前述したタイプのものでも、或いはその他のタイプのいずれの技術でもよい。
【0053】
したがって、該多層構造は、前述した三要素(プラスチックフィルム、接着防止層、及び印刷可能層)に加えて、1種以上の任意で印刷可能な増設層を、該印刷可能層(該プラスチックフィルムの反対側の面)に設けることができる。該多層構造は、該プラスチックフィルムから最も離間した層(すなわち、該印刷可能層、又は該増設層の一つ)を覆う接着剤の層又はフィルムも含むことができる。
【0054】
そして、本発明の方法の工程b)は、該印刷可能層が設けられる該基材の界面、又は該プラスチックフィルムの反対側の面に位置する該多層構造の界面に接着剤を塗布し、及びこれらの界面を互いに当接させて、互いにしっかりと固定する、ことからなる。
【0055】
該基材は、紙、透写紙、カード用紙、及び、コート紙又はプレコート紙から選択することができる。該紙は、1.10cm3/gと同等またはそれを超える嵩、好ましくは、1.2cm3/gと同等またはそれを超える嵩、より好ましくは、1.3cm3/gと同等またはそれを超える嵩、より具体的には、1.4cm3/gと同等またはそれを超える嵩、及びさらになお具体的には、1.5cm3/gと同等またはそれを超える嵩という比較的に大きな嵩を有するものが使用できる。
【0056】
本発明の方法は、従来技術では不可能であった顕著な嵩と平滑度を有するシートの製造を可能にする。従来技術では、大きな嵩と良好な表面品質を兼ね備えたシートを作ることは不可能である。嵩の大きな基材は、安価な材料から作ることができる。使用する紙パルプは、紙と一緒に、セルロース繊維、バインダー、及び少量の充填剤、及び/又は、添加物、例えば、澱粉を含むことができる。
【0057】
本発明の特定の態様において、本発明の方法は、基紙の嵩の若干の減少、約2%〜5%程度の嵩の減少をもたらす。
【0058】
嵩が大きく、かつ本発明の方法によって製造された平滑又は超平滑なシートは、良好な印刷適性を示し、また、坪量も小さいので、それにより、軽量ではあるものの、比較的に大きな剛性を保って包装することが可能となる。
【0059】
本発明の方法の工程b)では、基材をライニングするための界面、又は該印刷可能層の自由界面、又は該多層構造の増設層の自由界面に、適切な接着剤が塗布される。
【0060】
他の態様において、該基材と該多層構造との前述した二つの界面は、同時に塗布され、或いは、他方の塗布を終えた後に一方が塗布される。
【0061】
塗工作業は、前述した界面に接着剤の層を設けることからなり、任意の技術を用いてもよく、例えば、グラビア印刷が利用される。該接着剤として、感熱式、非感熱式、UV硬化型、又は化学反応に関与するタイプのものがある。該接着剤は、液状又は非液状の形態で、前述した界面又は前述した界面の各々に塗工することができる(例えば、該接着剤は、熱接着フィルムとすることができる)。一例として、該接着剤は、以下のポリマー:アクリル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、ポリアミド、ニトロセルロース又はその他のセルロース、ポリビニルアルコール、又は澱粉から選択される。定着した接着剤の層又はそれらの各々は、10μm以下、好ましくは、3μm以下の厚みを有することがある。
【0062】
本発明の特定の態様において、該接着剤は、該多層構造が作られている間に、上記した該多層構造の界面に塗工される。次いで、該接着剤は、該多層構造の主要部を形成する。該接着剤は、該多層構造が(受け手の)基材に対して当接している間に、加熱することによって活性化される層である感熱式活性化接着剤層によって形成することができる。
【0063】
該接着剤の性質及び(フィルム及び/又は紙への)接着プロセスは、該紙の最終表面状態に対して相応の影響を与えることがある。例えば、該紙と該印刷可能層との間に間隙が形成されることを回避しつつ、該接着剤を均質に塗工することは重要である。
【0064】
塗工された接着剤の均質性に関して、接着剤の過不足が生じると、最終シートに表面粗度が出現してしまうので、様々な箇所にそのような接着剤の過不足が生じないようにするために、好ましくは、接着剤は均質に塗工される。有利には、該接着剤は、支持体(フィルム又は紙)の全面に拡散させて、適切な表面張力と流動性を付与する。
【0065】
該接着剤の塗工方法も、重要である。可能な限り均質な塗膜をもたらす塗工方法、例えば、グラビア印刷(リバースロール又は接触塗工)が好ましい。塗工方法は、好ましくは、紙の間隙又は紙の表面の凹凸を可能な限り埋めるものが選択される。例えば、紙が、約20μmの平均表面粗度(例えば、Sa)を有している場合には、間隙を埋めるために、該接着剤は、少なくとも10μmの厚みで塗工される。該紙の粗度がさほど大きくない場合には、好ましくは、接着剤の塗工は、該紙に対して行われる。該紙への塗工が十分でない場合には、該紙の表面と該印刷可能層との間に間隙が形成されてしまう。印刷の際に、これらの間隙は、圧力が加われば陥没してしまい、或いは牽引力が加われば剥離してしまうなど、該紙の弱点となってしまう。
【0066】
有利には、該紙及び/又は該印刷可能層に塗工された該接着剤の厚みは、該紙の平均表面粗度(例えば、Ra又はSa)の少なくとも半分と同等である。本発明の態様において、該接着剤は、工程b)において基材の少なくとも一つの界面に塗工され、及び塗工された接着剤層の厚みは、該基材の界面の平均粗度の少なくとも半分、及び、好ましくは、前記平均粗度と同等である。
【0067】
該接着剤は、水性基剤、溶媒基剤を含むことができ、或いは溶媒を含んでおらず、及び二つの成分、或いは一方の成分だけを含む。
【0068】
該接着剤は、該印刷可能層(又は増設層)を、該基材に固定することを可能にし、及び、必要に応じて、該基材表面の凸凹の埋め合わせも可能にする。具体的には、該接着剤は、該基材をライニングするために界面の窪みの埋め合わせを行い、したがって、前記界面を平坦にすることが可能であり、その一方で、該基材の性質、例えば、嵩などに影響は及ばない。
【0069】
次に、本発明の方法の工程b)は、該基材の前述した界面を、該多層構造の前述した界面に対して当接して、両者を積層することからなる。次いで、該印刷可能層は、まず、該接着剤を介して一方の面に(可能であれば、一つ以上の増設層と共に)設けられた該基材と、次に、該接着防止層を介して他方の面に設けられた該プラスチックフィルムとによって挟まれることとなる。
【0070】
該多層構造に該基材を接着するために用いた該接着剤が、感熱式接着剤である場合、該基材は、該多層構造に対して、例えば、約50℃〜200℃の範囲の所定の温度において、熱い内に当接される。他の態様において、該基材は、常温下で、該多層構造に対して当接及び結合することもできる。
【0071】
該基材と印刷可能層との間での該接着剤の良好な接着性を確保するために、わずかな圧力でも必要とする場合がある。
【0072】
にもかかわらず、塗布及び結合を行っている間に用いた温度及び/又は圧力は、該印刷可能層の性質、特に、該プラスチックフィルムの傍らに位置するその界面の表面状態に影響を及ぼすことはない。例えば、該印刷可能層は、高温に曝されても軟化してはならず、これはすなわち、軟化をしてしまうと、該プラスチックフィルムの傍らに位置するその界面の表面品質の変化と劣化を招くことによる。
【0073】
次に、本発明の方法の工程c)は、該印刷可能層(及び、必要に応じて、該多層構造での前述した増設層)が該基材に残るようにして、該印刷可能層及び該基材から該プラスチックフィルムを剥がすことからなる。このようにして、該印刷可能層、及び、必要に応じて、該増設層は、「送り手」の該多層構造のプラスチックフィルムから「受け手」の基材へと送られる。
【0074】
先に説明した通り、少なくとも幾つかの、及び、有利には、殆ど又は全ての該接着防止層が、該プラスチックフィルムに残り、該プラスチックフィルムが剥がされている間に、該接着防止層は、該印刷可能層から剥がされることとなる。したがって、該プラスチックフィルムの傍らに位置した該印刷可能層の界面は露出し、前記界面は、該シートの平滑面を定めることとなる。
【0075】
該基材及び該多層構造が連続ストリップの形態である場合は、下記する手順にしたがって、該多層構造の印刷可能層は、本発明の方法の工程b)及びc)を行っている間に、該基材へと移される。
【0076】
該多層構造及び該基材は、逆方向に回転している二つの平行かつ隣接した機械的ローラーの間に通されて、一緒に積層することができる。製造物の厚みは、特に、ローラー間の距離に対応している。一旦、該接着剤を乾燥又は固化させてから、該プラスチックフィルムは、別の機械的ローラーによって動かされて、該シートから剥がされる。
【0077】
他の態様において、該多層構造又は該基材のいずれかに接着剤を塗布し、該接着剤を乾燥させ、その後、所定の温度及び圧力の下で、これら二つの要素の一方を他方に当接することが可能である。
【0078】
工程b)に先駆けて、本発明の方法は、1種以上の熱可塑性ポリマー(少なくともポリスチレン、ポリウレタン、アクリルなど)、又は顔料(カオリン、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタンなど、及びこれらの混合物など)と少なくとも一つのバインダー(アクリル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、ポリアミド、ニトロセルロース又はその他のセルロース、澱粉、又はPVA:を基にしたバインダーなど)との混合物を含んだ少なくとも一つの平滑塗工剤でプレコートされた、前述した基材の界面も含むことができる。
【0079】
このプレコートされた基材の界面は、その平滑度を増大させるために、工程b)に先駆けて、カレンダー仕上げすることもできる。
【0080】
本発明の方法は、電気的及び/又は光学的特性を有するインクでシートを印刷する追加工程を含むことができる。
【0081】
本発明は、少なくともプラスチックフィルム、接着防止層、及び印刷可能層を含み、又はこれらによって構成されており、該接着防止層が、該プラスチックフィルムと該印刷可能層との間に位置している多層構造を調製する方法も提供する。
【0082】
本発明は、上記した方法によって調製したシートに印刷をする方法も提供するものであって、該印刷方法は、該シートの印刷可能層の状態に変化を及ぼさずに印刷をする工程、すなわち、印刷の間に前記層の軟化又は融解を起こさずに印刷をする工程を含む。一例として、該シートは、オフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、ドライトナー、液体トナー、電子写真術、リソグラフィーなどによって印刷することができる。
【0083】
本発明は、少なくとも一つの平滑面を有する流延塗工のためのシートの製造方法であって、該シートが、単一の層又は重なり合った複数の層の少なくとも一部を覆っている少なくとも一つの界面を有する基材、特に、紙製の基材を含み、該方法が:
a) 少なくともプラスチックフィルム、接着防止層、及び流延塗工のための層を含み、又はこれらによって構成されており、該接着防止層が、該プラスチックフィルムと流延塗工のための該層との間に位置している多層構造を調製又は提供し;
b) 基材の界面、及び/又は該プラスチックフィルムとは反対側に位置した該多層構造の界面に接着剤を塗布し、及び該基材の前記界面を、該多層構造の前記界面に当接して、該多層構造と該基材とを積層させ;及び
c) 流延塗工のための該層から該プラスチックフィルムを剥がして、該印刷可能層が、該シートの前記平滑面を定める、工程を含む方法も提供する。
【0084】
一例として、流延塗工のための該層は、PVAの層である。流延塗工のための該層が、接着防止性を有する場合もある。
【0085】
本発明は、平滑、及び、有利には、超平滑な少なくとも一つの界面を有する印刷可能シートであって、該シートが、前記平滑面又は超平滑面を定める印刷可能層を含む一つ以上の層の少なくとも一部を覆っている少なくとも一つの界面を有する基材、特に、紙製の基材を含み、該シートは、前記平滑面又は超平滑面が、約900sよりも大きい、又は約1000sよりも大きい、好ましくは、2000sよりも大きい、及び、より好ましくは、5000sよりも大きいベック平滑度を有している、ことを特徴とする前記印刷可能シートも提供する。
【0086】
該シートの平滑面又は超平滑面は、70%を超える光沢度、及び、好ましくは、80%を超える光沢度を有することができ、該光沢度は、例えば、75°で、TAPPI(登録商標)T480 om-92法を用いて計測される。
【0087】
該シートの該印刷可能層は、30μm以下、好ましくは、15μm以下、及び、より好ましくは、10μm以下の厚みを有することができる。該印刷可能層の坪量は、30g/m2以下、好ましくは、15g/m2以下、及び、より好ましくは10g/m2以下である。一例として、該印刷可能層は、以下に併記をした数値以下である厚みと坪量を有することができる:10μm及び10g/m2;3μm及び10g/m2;2μm及び10g/m2;5μm及び5g/m2;3μm及び3g/m2;2μm及び5g/m2;5μm及び2g/m2;3μm及び2g/m2;又は2μm及び2g/m2
【0088】
本発明は、電気的又は光学的部品を製造するための前述した印刷可能シートの使用であって、当該シートが、電気的及び/又は光学的特性を有するインクの手段で印刷されている、ことを特徴とする使用も提供する。
【0089】
本発明のシートは、例えば、無線自動識別(RFID)チップ、表示システム又は検出システムなどを製造するために、電子的に該シートに直接使用できる有機性電子インクにも対応することができる。
【0090】
従来技術において、RFIDチップは、ポリエチレンテレフタレート(PET)のプラスチックフィルムで形成したシート上に作られている。にもかかわらず、そのようなプラスチックフィルムは、機械的強度及び温度挙動のいずれも芳しくなく、それ故に、該チップへの応用が制限され、及び比較的高温下でインクを使って印刷をすることも妨げられている。さらに、PETから作られたフィルムの再利用は容易ではない。これに対して、本発明のシートの基材を、紙製とした場合には、該シートは、良好な機械的強度と温度挙動を示す。
【0091】
電気的特性を有するインクで印刷をしたシートは、有利には、可撓性の基材と導電性が僅かであるか或いは皆無である印刷可能層とを含む。このタイプのシートは、導電性又は半導電性有機インクを用いて、薄層有機フィルムトランジスターの製造のために利用することができる。
【0092】
本発明のシートは、導波管やホログラムパターンなどの光学的部品の製造のために利用することもできる。
【0093】
一例として、上記した方法は、工程a)に先駆けて、例えば、エッチングによって、該接着防止層及び該印刷可能層を受け入れる該プラスチックフィルムの界面に窪み又は突起のある模様を設けるための予備工程を含み、該印刷可能層は、該プラスチックフィルムの前述した界面の圧痕を取り込むために、これら模様の形状と密着させることができる。
【0094】
こうした状況が故に、該フィルムの表面状態を該印刷可能層へ移行することは、平滑面の移行と該プラスチックフィルムの模様の移行の双方を含む。該印刷可能層に移された模様それ自体は、外観が平滑で、かつ正確に区画がされた表面及び/又は壁面を有する。したがって、本発明の方法は、前述したタイプの光学的部品の製造において特に有利である。
【0095】
最後に、本発明は、写真画像印刷、包装作業、及び/又は、流延塗工のための前述した印刷可能シートの使用を提供する。
【0096】
添付した図面を参照しつつ、以下の例示目的の実施例の開示を勘案することによって、本発明の理解を深めることができ、及び本発明のさらに詳細な内容、その他の特徴及び効果についても明らかになる。
【0097】
図1を参照すると、そこには、その全体が再利用可能である平滑又は超平滑な印刷可能シート10を製造するための本発明の方法での工程a)、b)、及びc)の詳細な工程図が示されている。
【0098】
本発明の方法の工程a)は、底面プラスチックフィルム14、接着防止中間層16、及び印刷可能な上面層18を含む多層構造12を調製することからなる。この構造12は、単一の工程、又は複数の連続する工程で調製することができる。
【0099】
接着防止層16及び印刷可能層18は、例えば、カーテン塗工技術を用いて、プラスチックフィルム14に同時に設けることができる。
【0100】
他の態様において、接着防止層16は、プラスチックフィルム14の上に設けられており、次いで、印刷可能層18は、該接着防止層の上に設けられる。
【0101】
プラスチックフィルム14の上面側の界面20の状態は、(接着防止層16を介して)印刷可能層18の底部界面22へと受け継がれる。このようにして、該印刷可能層の界面22の表面特性は、プラスチックフィルム14の界面20の表面特性によって定められることとなる。
【0102】
一例として、Altimet社から市販されているAltisurf500型トポグラフィー計測機器を用いて、フィルム及び紙の粗度を試験した。最初に試験をしたフィルムの粗度(例えば、Sa)は、1μmであった。このフィルムは、Arjowiggins社から市販されているBristol(登録商標)ペーパーに印刷可能層を移すために使用した。前記印刷可能層に関して測定をして得られた粗度は、1.1μmであった。二番目のフィルムの粗度は、0.5μmであった。このフィルムは、別のBristol(登録商標)ペーパーに印刷可能層を移すために使用した。前記印刷可能層に関して測定をして得られた粗度は、0.7μmであった。したがって、このフィルムの粗度(又は表面状態)は、該フィルムから該印刷可能層へとしっかりと受け継がれていた。該印刷可能層を乾燥及び/又は固化した後に、界面22の表面特性は「不変」であり、及び本発明のその他の工程が行われている間、特に、ライニングされる基材24、例えば、紙の上に印刷可能層18を移している間は影響が及ばないようにされている。
【0103】
印刷可能層18は、印刷可能なワニス、又は樹脂、又はバインダー及び顔料を含む紙用塗膜から作ることができる。他の態様において、該印刷可能層は印刷可能なワニス及び紙用塗膜から選択された2種以上の副層を含むことができる。該印刷可能層が、二つの副層、すなわち、印刷可能なワニス及び紙用塗膜を含む場合、該印刷可能なワニスは、該紙層の上側又は下側に位置しており、これにより、前述した該印刷可能層の底面22は、該印刷可能なワニス又は該紙用塗膜によって定められることとなる。
【0104】
本発明の方法の工程b)は、印刷可能層18の上面28或いはライニングのために基材24の底面30に、又は界面28及び30の双方に接着剤26の層又は膜を設け、次いで、多層構造12と基材24を積層して積層体32を形成するために、これらの界面28及び30を、互いに当接することからなる。
【0105】
本発明の方法の工程c)は、印刷可能層18からプラスチックフィルム14及び接着防止層16を剥がして、層18(及び接着剤26)だけを基材24上に残すことからなる。
【0106】
工程b)及びc)は、同時に行うことができ、或いは順々に行うことができる。順々に行う場合は、プラスチックフィルム14を剥がす際に、接着剤26を、有利には、乾燥及び/又は固化状態とする。
【0107】
工程c)の最終段階で、印刷可能層18の界面22は露出され、この時の界面は、平滑又は超平滑となっている。
【0108】
にもかかわらず、接着防止層16の一部は、プラスチックフィルムが剥がされた後もなお、印刷可能層18の界面22に残ったままの場合がある。
【0109】
層18は、任意の適切な技術を利用した印刷にも適しており、シート10の平滑面又は超平滑面22にインクが定着することとなる。
【0110】
他の態様において、基材24は、コート紙又はプレコート紙、すなわち、その一方の面に、1種以上の熱可塑性ポリマー、又は顔料とバインダーの混合物を含むコーティング又はプレコーティング33が設けられた紙を利用することができる。このコーティング又はプレコーティング33は、前述した基材の界面30上に設けるためのものであって、及び、有利には、カレンダー仕上げによって平滑にされる。次いで、これは、印刷可能層18の界面28と結合することとなる。
【0111】
図2は、多層構造12'が、印刷可能層18の上面28に設けられた増設層34も含んでいる点が図1に関連して前述した方法とは異なっている、本発明の方法での別の態様を示している。
【0112】
重なり合った複数の増設層34は、印刷可能層18の界面28上に(同時に、又は連続して)設けることができる。増設層34の各々は、印刷可能であっても、或いは印刷不可能であってもよい。
【0113】
工程b)において、基材24の底面30、又は増設層34(構造12'が複数の増設層を含む場合には、該プラスチックフィルムから最も離間した層)の上面36は、接着剤26に覆われている。他の態様において、これら界面30及び36の双方は、接着剤26に覆われている。
【0114】
工程c)において、多層構造12'及び基材24は積層されて、ライニング又は積層された積層体32'を形成し、次いで、プラスチックフィルム14と該接着防止層を剥がすことで、シート10'の印刷可能層18での平滑面又は超平滑面22が露出されることとなる。
【0115】
図1の場合と同様に、図2のシートは、その平滑度を改善するために、界面30が予めプレコーティングされている基材24を含むことができる。このプレコーティング33は、図1に関連して記載したものと同じタイプのものである。
【0116】
図3及び図4は、本発明の方法の移行工程c)で利用した手段を示す模式図である。
【0117】
第一ローラー40は、(プラスチックフィルム14、接着防止層16、及び印刷可能層18から構成されており、任意に、1つ以上の増設層34を含む)多層構造12の連続ストリップを駆動する役割を担っている。第一ローラー40と平行で、かつ近接している第二ローラー42は、基材24の連続ストリップを駆動する役割を担っている。
【0118】
ローラー40及び42は、逆方向に回転しており、及びローラーの間を多層構造12と基材24が通れるだけの僅かな間隔が両者の間には開けられており、そこを通過する間に、それらを積層するために、互いが所定のレベルの圧力を受けることとなる。
【0119】
この積層工程に先駆けて、又はこの積層工程を行っている間に、接着剤26を、前述したようにして、多層構造12及び/又は基材24に設けることができる。積層工程を行っている間に接着剤26を塗布する場合には、ローラーの間に通す以前に、図3の太い矢印で模式的に示したようにして、構造12と該基材との間に接着剤を注入することもできる。
【0120】
第三ローラー44は、基材24及び印刷可能層18によって形成されたシート10を一方向に駆動しており、その一方で、シート10からプラスチックフィルム14及び接着防止層16を分離するために、それらは別の方向へと駆動される。
【0121】
図5及び図6は、それぞれ、基材又は紙24の界面、及び本発明の方法によって製造したシート10の平滑面又は超平滑面を走査型電子顕微鏡(SEB)で観察して得た画像である。
【0122】
この実施例の基紙(図5)は、絡ませたセルロース繊維から作られており、また、これらの繊維は、粗表面を定めている。この界面での粗度Szは、約19.7μmであり、この数値は、表面層の最上点から最下点に至る厚みの最大値が、19.7μmに等しいことを示している。
【0123】
本発明のシート(図6)は、その印刷可能層によって定められた平滑面又は超平滑面を有しており、その粗度Szは、1.01μmのレベルであって、この数値は、プラスチックフィルムで覆われた従来技術の紙における1.5μmのレベルの粗度Szに匹敵するものである。
【0124】
本発明のシートに関する1.01μmという粗度に関するこの数値は、例示目的のものでしかなく、及び本発明の実施態様の特定の実施例を示すものでしかない。
【0125】
本発明を例示するその他の実施例を、以下に説明する。
【実施例】
【0126】
(実施例1)
オフセット印刷可能な平滑又は超平滑シートの調製
【0127】
オフセット印刷のための本発明の平滑又は超平滑シートは、以下の組成を有する印刷可能層Aから調製された:
【表1】

【0128】
印刷可能層Aは、50重量%の最終濃度を有しており、及びBrookfield(登録商標)粘度計の助けを借りて測定した100センチポアズ(cps)の粘度を有していた。
【0129】
該層Aは、ステアリン酸クロムクロリドを基にした接着防止層で予め覆われていたPETプラスチックフィルムの一方の面に設けられた。該層Aは、約10g/m2で、該フィルム上に設けられた。次いで、該層Aは、オーブン内で、70℃で、乾燥された。これにより、PETプラスチックフィルム、ステアリン酸クロムクロリドの接着防止層、及び印刷可能層Aから構成された多層構造が得られた。
【0130】
該層Aの自由界面、すなわち、該プラスチックフィルムとは反対側に位置する界面に、National Starch社から市販されているSuper-Lok(登録商標)364接着剤を塗布した。該接着剤は、3g/m2で、該層A上に設けられた。該層Aの塗布した界面を、Arjowiggins社によって製造販売されている335g/m2のBristol(登録商標)ペーパーによって形成した基材に対して当接をし、次いで、集成体は、オーブン内で、70℃で、乾燥された。そして、本発明の方法の工程b)が、終了となった。
【0131】
その後、基紙に印刷可能層Aと該接着剤だけを残すために、該プラスチックフィルムと該接着防止層を(工程c)の間に)剥がした。
【0132】
このように調製したシートは、オフセット印刷に適していた。熱転写印刷には適していなかった。このことは、Canon Selphy CP800熱転写プリンターを用いて、実施例1で得たシートについて実施した印刷試験によって確認がされている。イエロー、シアン、及びマゼンタの移行は芳しくなく、及びブラックは全く移行しなかった。最終画像は、満足のゆくものではなかった。
【0133】
(実施例2)
軽量紙又は比較的に嵩の大きい紙からのオフセット印刷可能な平滑又は超平滑シートの調製
【0134】
実施例2の印刷可能層Aは、実施例1に記載されたものと同じ手順および同じ条件下で調製され、及び、Arjowiggins社から市販されているElementa(登録商標)バルク軽量紙に塗布された。この軽量紙の当初の嵩は、1.4(cm3/g)であった。
【0135】
(実施例3)
プレコーティングされた支持紙からのオフセット印刷可能な平滑又は超平滑シートの調製
【0136】
実施例3の印刷可能層Aは、実施例1に記載されたものと同じ手順および同じ条件下で調製され、及び、Arjowiggins社から市販されているMaine Gloss(登録商標)プレコート紙に塗布された。このプレコート紙の当初のベック平滑度は、400sであった。
【0137】
(実施例4)
オフセット印刷可能な平滑又は超平滑着色シートの調製
【0138】
オフセット印刷のための本発明の平滑又は超平滑シートは、以下の組成を有する印刷可能層Bから調製された:
【表2】

【0139】
印刷可能層Bは、50重量%の最終濃度を有しており、及びBrookfield(登録商標)粘度計の助けを借りて測定した100cpsの粘度を有していた。
【0140】
該層Bは、ステアリン酸クロムクロリドを基にした接着防止層で予め覆われていたPETプラスチックフィルムの一方の面に設けられた。該層Bは、約10g/m2で、該フィルム上に設けられた。次いで、該層Bは、オーブン内で、70℃で、乾燥された。これにより、PETプラスチックフィルム、ステアリン酸クロムクロリドの接着防止層、及び印刷可能層Bから構成された多層構造が得られた。
【0141】
該層Bの自由界面、すなわち、該プラスチックフィルムとは反対側に位置する界面に、National Starch社から市販されているSuper-Lok(登録商標)364接着剤を塗布した。該接着剤は、3g/m2で、該層B上に設けられた。該層Bの塗布した界面を、Arjowiggins社によって製造販売されている335g/m2のBristol(登録商標)ペーパーによって形成した基材に対して当接をし、次いで、集成体は、オーブン内で、70℃で、乾燥された。
【0142】
その後、基紙に印刷可能層Bと該接着剤だけを残すために、該プラスチックフィルムと該接着防止層を剥がした。
【0143】
得られた紙には、非常に均質な着色が施されていた。
【0144】
(実施例5)
オフセット印刷可能で、表面抵抗率の小さい平滑又は超平滑シートの調製
【0145】
オフセット印刷のための表面抵抗率の小さい本発明の平滑又は超平滑シートは、以下の組成を有する印刷可能層Cから調製された:
【表3】

【0146】
印刷可能層Cは、50重量%の最終濃度を有しており、及びBrookfield(登録商標)粘度計の助けを借りて測定した100cpsの粘度を有していた。
【0147】
該層Cは、ステアリン酸クロムクロリドを基にした接着防止層で予め覆われていたPETプラスチックフィルムの一方の面に設けられた。該層Cは、約10g/m2で、該フィルム上に設けられた。次いで、該層Cは、オーブン内で、70℃で、乾燥された。これにより、PETプラスチックフィルム、ステアリン酸クロムクロリドの接着防止層、及び印刷可能層Cから構成された多層構造が得られた。
【0148】
該層Cの自由界面、すなわち、該プラスチックフィルムとは反対側に位置する界面に、National Starch社から市販されているSuper-Lok(登録商標)364接着剤を塗布した。該接着剤は、3g/m2で、該層C上に設けられた。該層Cの塗布した界面を、Arjowiggins社によって製造販売されている335g/m2のBristol(登録商標)ペーパーによって形成した基材に対して当接をし、次いで、集成体は、オーブン内で、70℃で、乾燥された。
【0149】
その後、基紙に印刷可能層Cと該接着剤だけを残すために、該プラスチックフィルムと該接着防止層を剥がした。
【0150】
このようにして得た紙の抵抗率は、比較的小さく、3×107のレベルであった。この抵抗率は、実施例Aの紙での約1×1010のレベルの抵抗率に満たないものである。
【0151】
(実施例6)
インクジェット印刷のための平滑又は超平滑シートの調製
【0152】
インクジェット印刷のための本発明の平滑又は超平滑シートは、以下の組成を有する印刷可能層Dから調製された:
【表4】

【0153】
印刷可能層Dは、14重量%の最終濃度を有しており、及びBrookfield(登録商標)粘度計の助けを借りて測定した50cpsの粘度を有していた。
【0154】
該層Dは、ステアリン酸クロムクロリドを基にした接着防止層で予め覆われていたPETプラスチックフィルムの一方の面に設けられた。該層Dは、約15g/m2で、該フィルム上に設けられた。次いで、該層Dは、オーブン内で、70℃で、乾燥された。これにより、PETプラスチックフィルム、ステアリン酸クロムクロリドの接着防止層、及び印刷可能層Dから構成された多層構造が得られた。
【0155】
該層Dの自由界面、すなわち、該プラスチックフィルムとは反対側に位置する界面に、National Starch社から市販されているSuper-Lok(登録商標)364接着剤を塗布した。該接着剤は、3g/m2で、該層D上に設けられた。該層Dの塗布した界面を、Arjowiggins社によって製造販売されている335g/m2のBristol(登録商標)ペーパーによって形成した基材に対して当接をし、次いで、集成体は、オーブン内で、70℃で、乾燥された。
【0156】
その後、基紙に印刷可能層Dと該接着剤だけを残すために、該プラスチックフィルムと該接着防止層を剥がした。
【0157】
結果:実施例1〜6で調製した様々なシートについて分析を行い、各シートでの以下のパラメーター:坪量、厚み、嵩、平滑度、光沢度、抵抗率、及び印刷適性について評価を行った。
【0158】
評価は、以下のようにして行った:
・坪量は、最大で2220グラム(g)の重量を示すSartorius(登録商標)スケールの手段によって、0.1gの精度で、ISO 536 (1976)規格を用いて計測が行われた;
・厚みは、MTS MI20マイクロメータの手段によって、ISO 534 (1988)規格を用いて計測が行われた;
・嵩(又は、単位重量当たりの体積)は、NFQ 03-017規格を用いて計測が行われた;
・ベック平滑度は、Buchel(登録商標)131 ED装置の手段によって、ISO 5627 (1984)規格を用いて計測が行われた;
・光沢度は、Byk-Gardner(登録商標)マイクロ-光沢度75°モデル4553装置の手段によって、TAPPI(登録商標)T480 om-92法を用いて、75°で計測が行われた;
・表面抵抗率は、フィリップスPM2525マルチメーター装置の手段によって、ASTM D257-83法を用いて計測が行われた;
・オフセット印刷適性は、CTP No.9法を用いるポロメトリックインク吸収試験によって評価がされた;この「ポロメトリックインク」試験は、紙の吸収能力、及び該紙へのインクの浸透速度を正確に計測する役割を果たしており;黒色染料を用いて調合された特殊なインクを紙に落とし、及びインクの挙動を経時的に観察することを基本としている;及び
・インクジェット印刷試験は、Epson 2400及びCanon ip 8500インクジェットプリンターを用いて実施がされた。
【0159】
以下の表は、実施例1〜6のシートに関して実施をしたすべての計測と分析についてまとめたものである。
【表5】

【0160】
印刷可能層(A〜D)を支持体上に移動することで、該支持体の坪量と厚みが増大している。坪量の増大は、層Aで、約30g/m2〜40g/m2、層Bで、126g/m2、層Cで、41g/m2、及び層Dで、24g/m2である。厚みの増大は、層Aで、約20μm〜33μm、層Bで、60μm、層Cで、64μm、及び層Dで、84μmである。該支持体の坪量と厚みの増大は、実質的に、接着剤の塗布と該印刷可能層を該支持体に移したことに起因するものである。
【0161】
紙の嵩が1.10cm3/gと同等またはそれを超える場合に、嵩が比較的に大きな紙であると言われている。上記実施例においてElementa(登録商標)バルク紙だけが、大きな嵩(1.4cm3/g)を有していた。
【0162】
支持体上に印刷可能層Aを設けると、その嵩は小さくなる。該支持体が、もともと、実施例2のElementa(登録商標)バルクのような大きな嵩を有している場合に、該支持体に該層Aを移してみると、その嵩は少し(約5%)だけ小さくなった。しかしながら、該層Aを有するElementa(登録商標)バルク支持体の嵩は、(1.33cm3/g、すなわち、1.10cm3/gを超えており)非常に大きいままであった。
【0163】
支持体上に印刷可能層Bを設けると、その嵩は小さくなったが、支持体に印刷可能層Cを設けても、その嵩には殆ど影響が認められなかった。支持体に印刷可能層Dを設けると、その嵩は大きくなったが、これは、該印刷可能層が、非常に多孔性に富んだインクジェット層であるので、低密度となっていることが原因である。
【0164】
Bristol(登録商標)及びElementa(登録商標)バルク紙は、当初は、100sにも満たない比較的に小さな平滑度しか有していなかった。炭酸カルシウム及びスチレンブタジエンラテックスを基にしたプレコーティングをすることで、プレコーティングをしたMaine Gloss(登録商標)層は、当初は、400sという比較的に良好な平滑度を有していた。
【0165】
本発明の方法の手段によって、印刷可能層を支持体上に移すことで、上述したように、該支持体に、平滑面又は超平滑面を付与される結果となる。
【0166】
該印刷可能層Aを紙製の支持体上に移すことで、その平滑度を顕著に増大させることができる。該印刷可能層Aが、嵩の大きな紙に対して非常に大きな平滑度(実施例2での5035s)を付与できることが認められている。したがって、本発明の方法は、嵩と平滑度のいずれもが大きい紙を提供することが可能である。
【0167】
該支持体の当初の平滑度が大きいほど、該層Aが移された該支持体の平滑度も大きくなることも認められている。Maine Gloss(登録商標)ペーパー上に移された該層Aは、9436sという非常に大きな平滑度を持った紙を実現できる。
【0168】
Bristol(登録商標)支持体に該層Dを移すことで、その平滑度を、約1000sにまで増大することができる。
【0169】
実施例1〜6で調製した全てのシートは、80%を超える高い光沢度を示した。したがって、本発明の方法は、平滑度と光沢度のいずれもが顕著な紙シートの実現を可能にしている。
【0170】
該層Cでの導電性添加剤の存在は、該シートの表面抵抗率を顕著に減少させる役割を果たす。実施例5のシートの表面抵抗率は、実施例1〜4のシートの表面抵抗率よりも約1000倍も小さかった。この添加剤は、該シートの導電性を増大させるので、導電性シートの実現も可能である。
【0171】
実施例1〜5で調製をしたシートのオフセット印刷適性に関して、ポロメトリックインクを用いた試験では、該紙は、時間の経過と共に光学密度の増大が認められなくとも、インクを塗布した後に、比較的に良好な光学密度の数値を示していたので、インクの吸収は限定的であったものと認められる。
【0172】
インクジェット印刷に適した紙、例えば、実施例6で調製をした紙に関して、Epson及びCanon インクジェットプリンターを用いて行った試験では、インクの定着が良好でなかったにもかかわらず、許容可能な結果が得られている。
【0173】
(実施例7)
印刷可能な樹脂又はワニスを含む平滑又は超平滑な印刷可能シートの調製
【0174】
本発明の平滑又は超平滑シートは、以下の組成を有するアクリル印刷可能な樹脂又はワニスEによって形成された印刷可能層から調製された。このシートは、オフセット印刷に適していた。
【表6】

【0175】
印刷可能なワニスEは、50重量%の最終濃度を有しており、及びBrookfield(登録商標)粘度計の助けを借りて測定した50cpsの粘度を有していた。
【0176】
該ワニスEは、ステアリン酸クロムクロリドを基にした接着防止層で予め覆われていたPETプラスチックフィルムの一方の面に塗布された。該ワニスは、約5g/m2で、該フィルム上に設けられた。次いで、該ワニスは、オーブン内で、70℃で、乾燥された。これにより、PETプラスチックフィルム、ステアリン酸クロムクロリドの接着防止層、及びアクリルワニスから構成された多層構造が得られた。
【0177】
該ワニスの自由界面に、National Starch社から市販されているSuper-Lok(登録商標)364接着剤を塗布した。該接着剤は、3g/m2で、該ワニス上に設けられた。該ワニスにおいて塗布をした界面を、Arjowiggins社によって製造販売されている335g/m2のBristol(登録商標)ペーパーによって形成した基材に対して当接をし、次いで、集成体は、オーブン内で、70℃で、乾燥された。次いで、基紙に該印刷可能なワニスと該接着剤だけを残すために、該プラスチックフィルムと該接着防止層は、(工程c)において)剥がされた。
【0178】
以下の表は、実施例7で調製をしたシートに関して実施をした計測と分析についてまとめたものである。
【表7】

【0179】
該支持体上に該印刷可能なワニスEを移しても、該支持体の坪量、厚み、及び嵩には殆ど変化が認められなかった。このように移すことで、非常に高い平滑度(>10,000s)及び光沢度(99%)を有するシートの調製が可能となった。しかしながら、該シートの印刷適性は、該印刷可能層に顔料が含まれていなかったので、実施例1〜6で調製をしたシートの印刷適性ほど良好ではなかった。
【0180】
(実施例8)
オフセット印刷、インジゴ印刷、又は、導電性インクを用いた印刷に適している平滑又は超平滑な印刷可能シートの調製
【0181】
本実施例において調製をした各シートは、該多層構造の接着防止層に(接触塗工によって)設けられた第一層(A、B又はC)、及び該第一層に(接触塗工によって)設けられた第二層(A)からなる二つの印刷可能層AA、AB、又はACを含んでいた。該第一層、すなわち、該多層構造のプラスチックフィルムに近接した層は、印刷を行っている間にインクを直接に受けるための層であった。この層は、印刷方法に応じて印刷適性を定める層である。該第二層は、該支持体に対して良好な接着性を示す該第一層を提供し、かつ(印刷可能な該第一層への該接着剤の浸透を妨げるために)該接着剤に対するバリアを形成するプレコーティングであった。
【0182】
使用した該プラスチックフィルムは、12μmの厚みを有するPETフィルムであった。オフセット印刷可能なシートを調製するための該印刷可能層は、第一層B及び第二層Aであった。HPインジゴ印刷に適したシートを調製するための該印刷可能層は、第一層C及び第二層Aであった。導電性インク(プリント電子部品)によって印刷可能なシートを調製するための該印刷可能層は、第一層A及び第二層Aであった。調製された該多層構造は; PET/接着防止層/A及びA、又は、C及びA、又はB及びAの層を含むタイプのものであった。A、B、及びCの層は、 6g/m2で設けた。
【0183】
これらの層の組成は、以下の表に、詳細に記載してある。
【表8】

【表9】

【表10】

【0184】
三つの多層構造、及びArjowiggins社から市販されている200g/m2のOpale(登録商標)ペーパーの各々には、二液型ポリウレタン接着剤が、10g/m2で、塗布されていた。
【0185】
得られたシートは、それらの用途、すなわち、オフセット印刷、デジタルHPインジゴ印刷、及び導電性インク(プリント電子部品)に応じて良好な印刷適性を示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの平滑面(22)を有する印刷可能シート(10)の製造方法であって、該シートが、単一の層又は重なり合った複数の層の少なくとも一部を覆っている少なくとも一つの界面を有する基材(24)、特に、紙製の基材を含み、該方法が:
a) 少なくともプラスチックフィルム(14)、接着防止層(16)、及び印刷可能層(18)を含み、又はこれらによって構成されており、該接着防止層が、該プラスチックフィルムと該印刷可能層との間に位置している多層構造(12)を調製又は提供し;
b) 基材の界面(30)、及び/又は該プラスチックフィルムとは反対側に位置した該多層構造の界面(28)に接着剤を塗布し、及び該基材の前記界面を、該多層構造の前記界面に当接して、該多層構造と該基材とを積層させ;及び
c) 該印刷可能層から該プラスチックフィルムを剥がして、該印刷可能層(18)が、該シートの前記平滑面(22)を定める、工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記印刷可能層(18)が、工程b)及び/又は工程c)において、固体状態であり、及び/又は、乾燥していることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基材(24)が、紙;透写紙;カード用紙;及び、コート紙或いはプレコート紙から選択されることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記紙が、1.10cm3/gと同等或いはそれ以上、好ましくは、1.2cm3/gと同等或いはそれ以上、及び、さらに好ましくは、1.3cm3/gと同等或いはそれ以上の嵩を有することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程b)に先駆けて、前記基材の界面が、一つ以上の熱可塑性ポリマー、又は顔料と少なくとも一つのバインダーとの混合物を含む少なくとも一つの平滑層でプレコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程b)に先駆けて、前記基材のプレコーティングされた層が、その平滑度を改善するためにカレンダー仕上げされていることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記プラスチックフィルム(14)が、ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);ポリ乳酸(PLA)を基にしたポリマー;又は、セルロースを基にした任意のポリマーから作られたフィルムから選択されるフィルムであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記接着防止層(16)が、シリコーン;シロキサン;ポリシロキサン、又はこれらの誘導体;ウェルナー錯体、例えば、ステアリン酸クロムクロリド;又は以下の蝋:ポリエチレン、プロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、又はこれらの混合物を基にしていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程c)において、前記プラスチックフィルム(14)が剥がされている間に、前記接着防止層(16)の少なくともその一部が、前記印刷可能層(18)から剥がされることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程c)において、前記プラスチックフィルム(14)が剥がされている時に、前記接着防止層(16)が、前記印刷可能層(18)にとどまっていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記印刷可能層(18)が、顔料及び少なくとも一つの印刷可能なワニス或いはバインダー、例えば、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、ポリアミド、ニトロセルロース或いはその他のセルロース、ポリビニルアルコール、澱粉、又はこれらの混合物を基にしているバインダーとの混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記多層構造(12')が、前記印刷可能層(18)の前記プラスチックフィルム(14)とは反対側に設けられた少なくとも一つの増設層(34)を含み、前記増設層の自由界面、又は該プラスチックフィルムから最も離間した増設層の自由界面が、工程b)において、接着剤が塗布され、及び前記基材の界面に対して当接されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記シート(10)を、電気的及び/又は光学的特性を有するインクで印刷をすることからなる追加工程を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記シート(10)の平滑面(22)が、約900sよりも大きい、又は約1000sよりも大きい、好ましくは、2000sよりも大きい、及び、より好ましくは、5000sよりも大きいベック平滑度を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記シート(10)の平滑面(22)が、70%よりも大きい、及び、好ましくは、80%よりも大きい光沢度を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記印刷可能層(18)が、30μm以下、好ましくは、15μm以下、及びより好ましくは、10μm以下の厚み、及び/又は30g/m2以下、好ましくは、15g/m2以下、及び、より好ましくは、10g/m2以下の坪量を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
工程a)に先駆けて、例えば、エッチングによって、前記接着防止層及び前記印刷可能層を受け入れる前記プラスチックフィルムの界面に窪み及び/又は突起のある模様を設けることからなる予備工程を含み、前記印刷可能層が、前記プラスチックフィルムの界面に圧痕を取り込むために、これら模様の形状と密着していることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
工程b)において、前記接着剤が、前記基材の少なくとも一つの界面に塗布され、及び塗布した接着剤の厚みが、前記基材の界面での平均粗度の少なくとも半分、及び、好ましくは、前記平均粗度と同等であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
少なくとも一つの平滑面(22)を有する印刷可能シート(10)であって、該シートが、単一の層又は重なり合った複数の層の少なくとも一部を覆っている少なくとも一つの界面を有する基材(24)、特に、紙製の基材を含み、該シートの前記平滑面を定める印刷可能層(18)を有しており、該シートは、前記平滑面が、約900sよりも大きい、又は1000sよりも大きい、好ましくは、2000sよりも大きい、及び、より好ましくは、5000sよりも大きいベック平滑度を有している、ことを特徴とする前記印刷可能シート。
【請求項20】
前記平滑面(22)が、70%よりも大きい、及び、好ましくは、80%よりも大きい光沢度を有することを特徴とする、請求項19記載の印刷可能シート。
【請求項21】
前記印刷可能層(18)が、30μm以下、好ましくは、15μm以下、及び、より好ましくは、10μm以下の厚み、及び/又は30g/m2以下、好ましくは、15g/m2以下、及び、より好ましくは、10g/m2以下の坪量を有することを特徴とする、請求項19又は20記載の印刷可能シート。
【請求項22】
電気的及び/又は光学的部品を製造するための請求項19〜21のいずれか1項記載の印刷可能シートの使用であって、当該シートが、電気的及び/又は光学的特性を有するインクの手段で印刷されている、前記使用。
【請求項23】
写真画像印刷、包装作業、及び/又は、流延塗工のための請求項19〜21のいずれか1項記載の印刷可能シートの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−515628(P2013−515628A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545398(P2012−545398)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052879
【国際公開番号】WO2011/077048
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511087109)アルジョ ウイグギンス フイネ パペルス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】