説明

超短波治療器用導子

【課題】渦巻き状に形成されたコイルによる導子を従来のインピーダンスと同様の値を保持させたまま、利用者の装着する患部に対して導子の装着面が完全に密着させることができる超短波治療器用導子を提供する。
【解決手段】本発明の超短波治療器用導子は、治療器本体とコードを介して接続され、人体の局部に当てられて超短波を照射する超短波治療器用導子であり、フェルト材で構成された巻芯部1と、該巻芯部1に、所定の巻数にて、耐熱性の高い絶縁部材に被覆された導線2を螺旋状に巻いて形成したコイルとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数10〜50MHzの超短波帯の電磁波を人体に照射し、体内に発生する透熱効果により温熱治療を行う超短波治療器に用いられる導子の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来より公知の超短波治療器の構成ブロック図である。図において、発振回路1は、出力となる超短波の基本周波数、即ちISM(Industrial Scientific and Medical equipment)で高周波利用医療機器に割り当てられている周波数、例えば27.12MHzや13.56MHz、40.68MHzで発振を行っている。尚、ISMで高周波利用医療機器に割り当てられている周波数のうち、2.45GHzはマイクロ波と呼ばれ、超短波に比較して高い周波数帯域となっている。増幅回路12は、発振回路11で出力された信号を充分な電圧に増幅させるものであり、電力増幅回路13は、増幅回路12の出力信号を規定電力に増幅する。
【0003】
出力整合回路14は、人体インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの整合調整をとり、出力基本周波数に対する高調波成分を除外すると共に、導子16に対し最大効率で電力を供給する。調整手段15は、容量を可変するバリコン等を用いて、出力整合回路14の伝送線路の特性インピーダンスを調整する。導子16は、渦巻きコイルを形成した1個の電極板を有し、渦電流によるジュール熱の作用により患部の深いところまで温熱作用を発揮する。
【0004】
このように構成された装置においては、まず導子16を固定ベルト(図示せず)によって患部に固定する。すると肩、腰、ひざなどの患部が導子16と当接する。超短波治療器にかかる負荷インピーダンスは、人体各部の誘電率又は損失の相違により異なってくるので、調整手段15を用いて出力整合回路14のインピーダンスを調整して、治療対象となる人体部分のインピーダンスに整合させる。そして超短波治療器による超短波治療を開始する。
【0005】
尚、導子16の他の形式として、2個対になる導子に間に挟まれた人体に対して超短波の連続透射を行い、高周波加熱により患部に温熱作用を発揮するコンデンサ型や、本出願人の提案にかかる特許文献1や特許文献2に開示したものが知られている。特許文献2の導子は、基本的には平面の基板に固定したコイル型で、テープ状の電極を腕や脚部に対し、装着面が患部に密着するよう巻きつけて、ラセン電界法を用いて超短波治療を行っている。
【特許文献1】実公平3−21254号公報
【特許文献2】特公平6−49080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の超短波治療器の平面型コイル型の導子は、絶縁被覆された導線が平面基板に径方向に渦巻き状に巻いた状態で(図2(b)参照)導線収容部材に収容された状態で構成されている。
このため、従来の導子は、肩や腰のように広い患部に対して、表面が患部皮膚と密着し、1回の導子固定により効率良く超短波治療が可能な装着面となっているが、手や足の部分のように平坦な面が狭い患部に対しては、導子の導子の装着面が大きすぎ、導子の装着面が患部からはみ出て、患部に対して有効な加熱が不十分であり、かつ固定させにくいという問題がある。
【0007】
このため、手や足の部分のように狭い患部に対しては、効率の良い治療を行うため、導子の装着面が患部に完全に密着するように面積を小さくする必要がある。
そこで、渦巻き状のコイルを小型化しようとする場合、巻数を少なくして面積を小型化しようとすると、同一の超短波治療器を利用することを考えると、同調に必要な所定のインピーダンスを従来と同様としようとすると、コンデンサ部品を設けて、インピーダンスの調整を行うことが考えられる。
しかしながら、コンデンサ部品を設けることにより、構造が複雑となり壊れやすく、製造コストも上昇することと、かつ人体の患部に装着するパッド部分であるため、装着時にコンデンサ部品を設けた事による凹凸により、利用者が不快感を感じることとなる。
【0008】
したがって、渦巻き状のコイルのインピーダンスの調整は、コイルの導線の巻数と、導線の内径と、巻間隔とにより行う必要がある。
このとき、渦巻き状のコイルに対し、外被径の細い(被覆の薄い)導線を使用すると、芯線間が狭くなることで、さらに導子のパット部が小さくなり、かつインピーダンスも所望にできる。
しかしながら、導線の線間容量が増加し過ぎると、誘電損による発熱が導線間で起こるため、患部の内面を加熱するためのエネルギーを消費することとなり、患部の治療の効率を低下させることとなる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、従来の渦巻き状に形成されたコイルによる導子を従来のインピーダンスと同様の値を保持させたまま、利用者の装着する患部に対して導子の装着面が完全に密着させることができる超短波治療器用導子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の超短波治療用導子は、治療器本体とコードを介して接続され、人体の局部に当てられて超短波を照射する超短波治療器用導子であり、フェルト材で構成された巻芯部と、該巻芯部に、所定の巻数にて、耐熱性の高い絶縁部材に被覆された導線を螺旋状に巻いて形成したコイルとを有することを特徴とする。
このように構成された装置においては、フェルト材等で構成された巻芯部に、導線を螺旋状に巻いて、コイルを形成させているため、平板の2次元平面にて渦巻き状に導線を巻いて構成する場合に比較して、同一のインピーダンスを有してコイルを小型に形成できる。
このため、本発明によれば、導子自体を小型化することができ、すなわち、患部に密着させる導子の装着面の面積を小さくでき、患部に装着面全体を密着させることが可能となり、患部の加熱を効率的に行うことができる。
【0011】
本発明の超短波治療用導子は、前記コイルが断面を楕円形状として形成されていることを特徴とする。
ここで、コイルは一般的には真円で形成するが、本発明は導子の装着面が凹凸となることにより、利用者が不快感を持たないように、装着面がほぼ平面となるように、断面が長方形の巻芯部にコイルを、断面が長円形状となるように巻いている。
これにより、本発明によれば、長円の長径に平行な導子面を装着面とすることで、患部に対してほぼ平面に近い装着面とすることができ、利用者が不快感を持たず、かつ長円の短径方向に柔軟に可動させることができるため、装着時において装着面の形状を装着対象の形状に合わせて、適時変形させることが可能である。
【0012】
本発明の超短波治療用導子は、前記楕円の長径が装着対象の幅に対応していることを特徴とする。
本発明によれば、患部に導子の装着面全体を密着させることが可能となり、患部の加熱を効率的に行うことができる。
【0013】
本発明の超短波治療用導子は、前記コイルが断面を長円形状として形成されていることを特徴とする。
ここで、コイルは一般的には真円で形成するが、本発明は導子の装着面が凹凸となることにより、利用者が不快感を持たないように、装着面がほぼ平面となるように、断面が長方形の巻芯部にコイルを、断面が楕円形状となるように巻いている。
これにより、本発明によれば、楕円の長径に平行な導子面を装着面とすることで、患部に対してほぼ平面に近い装着面とすることができ、利用者が不快感を持たず、かつ楕円の短径方向に柔軟に可動させることができるため、装着時において装着面の形状を装着対象の形状に合わせて適時変形させることが可能である。
【0014】
本発明の超短波治療用導子は、前記長円の長径が装着対象の幅に対応していることを特徴とする。
本発明によれば、患部に導子の装着面全体を密着させることが可能となり、患部の加熱を効率的に行うことができる。
【0015】
本発明の超短波治療用導子は、前記導線を被覆する絶縁部材を互いに密着させて相対移動を規制する固定部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、フェルト材等で構成された巻芯部に、導線を螺旋状に巻いて、コイルを形成させているため、平板の2次元平面にて渦巻き状に導線を巻いて構成する場合に比較して、同一のインピーダンスを有してコイルを小型に形成できる。
また、本発明によれば、導子自体を小型化することができ、すなわち、患部に密着させる導子の装着面の面積を小さくでき、患部に装着面(以下、患部当接面)全体を密着させることが可能となり、患部の加熱を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態を説明する構成図である。図1(a)は正面からみた平面図であり、図1(b)は図1(a)における方向Aから見た側面図である。図において、コイル型パッド導子10は、フェルト材芯部(巻芯部)1に導線2が螺旋状に巻かれ、巻かれた導線2を固定する固定テープ(固定部材)3が設けられている。上記導線2は耐熱性の高い絶縁部材に被覆された絶縁電線である。また、導線2は絶縁性の被覆が密着する状態で、フェルト芯部1の断面の垂直方向に、コイルの軸が平行となるように巻かれている。また、コイル型パッド導子10は、図示しないが、例えば、患部当接面と反対側とが、縫い付けられた帯状の布(ポリエステル製フェルト)で覆われ、固定ベルトにより患部に固定されるようになっている。
【0018】
ここで、コイル型パッド導子10は、幅Wが人間の手や足の部分の幅を、複数の人間から採取した寸法の平均値とし、奥行きHはこの値及び厚さtから導線2の巻数を調整して、この巻数と導線2の外径とから求まる。
ケーブル5は、一端がコイル型パッド導子10に固定され、他端がプラグ(図示せず)を介して超短波治療器4本体に接続されるもので、長さは1〜2mとなっている。
コイル型パッド導子10は、ケーブル5及び上記プラグを介して、超短波治療器4(図3の超短波治療器4と同様)から超短波出力電力が供給される。
【0019】
ここで、フェルト芯材部1は、ポリエステル製フェルト等が用いられており、導線2が螺旋状に巻かれた際、長円形状または楕円形状のコイルを形成するように、断面が長方形の形状に形成されている。これにより、導線2により形成される長円形状または楕円形状のコイルの長径が概略Wとなり、短径が概略tの寸法となる。
これにより、コイル型パッド導子10の患部当接面は、長円または楕円の短径方向に垂直な平面、すなわち幅Wと奥行きHとがなす平面となり、装着対象の患部面に対して密着性を持たせることとなる。また、上記コイルが楕円形状または長円形状に形成されているため、真円のコイルと異なり、短径方向に対し、コイル型パッド導子10に、導線の剛性に対応した柔軟性を持たせることが可能となる。
【0020】
導線2は、誘電率が低く耐熱性の高い絶縁部材、例えばシリコン樹脂等で被覆されると共に、渦巻き状に巻かれたもので、ターン数を例えば30から35ターンとする。シリコン樹脂は、塩化ビニルに比較して誘電率が低く、損失が少ない。固定テープ3は、導線2を布テープ等の柔軟性に富む材料であり、導線2の奥行き方向に対する相対的変位を規制するものである。
【0021】
上述したように形成することにより、図2(a)に示すように、本発明のコイル型パッド導子10のコイル部分は導線をソレノイド状(空芯コイル状)に、フェルト材芯部1に巻いている。このため、超短波治療器4から供給されるコイルから発生する磁界は、コイルの一端から患部内を通過してコイルの他端に向かうようになるため、患部に対して平行に発生することになる。これにより、患部において発生する渦電流によるジュール熱の作用により患部の深いところに対して、温熱作用を与える。このとき、患部面にコイルの軸が平行となるよう、コイル型パッド導子10が患部に装着される。
一方、図2(b)に示す従来の平面基板に渦巻き状に形成されたコイルの場合、超短波治療器4から供給されるコイルから発生する磁界は、図2(a)と同様に、コイルの一端から患部内を通過してコイルの他端に向かうようになるが、患部に対して垂直に発生することになる。
【0022】
このように構成されたコイル型パッド導子10の導線2に用いる絶縁電線の選定過程を説明する。導線2とケーブル5とを含めたインダクタンス及び容量は、超短波治療器4本体の供給する超短波とインピーダンス整合がとれている必要がある。絶縁電線の絶縁材には、天然ゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンラバー、塩化ビニル、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びシリコン樹脂、シリコンゴム等が用いられている。そこで、ケーブル5にはポリエチレン絶縁電線を用い、導線2にはシリコン絶縁電線を用いたところ、優れたインピーダンス整合がとれた。
【0023】
他方、ケーブル5にはポリエチレン絶縁電線を用い、導線2には塩化ビニル絶縁電線、ポリエチレン絶縁電線、又はブチルゴム絶縁電線を用いたところ、インピーダンス整合がとれず導子が発熱した。従って、導線2に用いる絶縁電線には誘電率が低く、耐熱性の高い絶縁部材である、例えばシリコン樹脂又はシリコンゴムで被覆された電線を用いると、誘電率が低い為に電力の損失が少なく、熱を持たない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態によるコイル型パッド導子の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態と従来例とのコイル構造を説明する概念図である。
【図3】超短波治療器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
1…フェライト材芯部
2…導線
3…固定テープ
4…超短波治療器
5…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療器本体とコードを介して接続され、人体の局部に当てられて超短波を照射する超短波治療器用導子であり、
フェルト材で構成された巻芯部と、
該巻芯部に、所定の巻数にて、耐熱性の高い絶縁部材に被覆された導線を螺旋状に巻いて形成したコイルと
を有することを特徴とする超短波治療器用導子。
【請求項2】
前記コイルが断面を楕円形状として形成されていることを特徴とする請求項1記載の超短波治療用導子。
【請求項3】
前記楕円の長径が装着対象の幅に対応していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超短波治療用導子。
【請求項4】
前記コイルが断面を長円の形状として形成されていることを特徴とする請求項1記載の超短波治療用導子。
【請求項5】
前記長円の長径が装着対象の幅に対応していることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の超短波治療用導子。
【請求項6】
前記導線を被覆する絶縁部材を互いに密着させて相対移動を規制する固定部材を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の超短波治療器用導子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−333937(P2006−333937A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159314(P2005−159314)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(591032518)伊藤超短波株式会社 (69)
【Fターム(参考)】