説明

超純水の製造方法および製造装置

【課題】超純水中のNa+イオン濃度を0.1ppt以下に抑制するとともに、TOC濃度を低減して、高純度の超純水を安定に効率よく製造する方法、およびその装置を提供する。
【解決手段】一次純水10を強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床を備えるイオン交換装置3に通して超純水を形成する超純水の製造方法であって、強酸性カチオン交換樹脂の交換容量が1.5〜2.5meq/mL、強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が0.5〜1.5meq/mL、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性アニオン交換樹脂の総体積に対するカチオン交換樹脂の体積の比率が、40%以上70%未満であることを特徴とする超純水の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体や液晶表示装置など電子デバイス産業分野に用いられる洗浄用の超純水の製造方法および製造装置に関し、詳しくは、一次純水を強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床を備えるイオン交換装置に通すことにより超純水を形成する超純水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の市水、地下水、工水等の原水から超純水を製造する超純水製造装置は、一般的に、原水から一次純水を製造する一次純水製造装置と、一次純水からさらに純度の高い二次純水(超純水ともいう、以下同じ)を製造する二次純水製造装置とから構成される。このうち、一次純水製造装置は、一般的に、凝集、浮上、濾過装置などから構成される前処理装置と、2床3塔式イオン交換塔、電気再生式脱塩装置、再生型混床式イオン交換装置などの脱塩処理装置と、真空脱気装置や膜脱気装置、窒素曝気装置など溶存酸素を除去する目的の脱気装置と、逆浸透膜分離装置と、混床式の再生型イオン交換装置とで構成される。また、二次純水製造装置は、一般的に、低圧紫外線酸化装置と、混床式イオン交換装置と、限外濾過膜分離装置とで構成される。ここで、一次純水の純度は、処理される原水の水質、装置の仕様にも影響されるが、一般的に、Na+イオン濃度が10〜100ppt程度、TOC(全有機炭素、以下同じ)濃度が数ppb程度である。
【0003】
このうち、二次純水製造装置における混床式イオン交換装置としては、非再生混床式のものが使用されている。この装置は、ボンベ型またはタンク型の容器に、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合されて充填されたものであり、一定期間使用された後、容器ごと交換して別途再生されて再使用される場合と、固定のタンク型容器内の樹脂のみを詰め替えて使用される場合がある。
【0004】
従来の、半導体などで問題となる純水からのNa+イオン汚染に対する対策として、二次純水製造装置のイオン交換装置に着目した事例がある。強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂の混床に純水を通過させた後、強酸性カチオン交換樹脂の単床に純水を通過させることにより、得られる超純水のNa+イオン濃度を10ppt以下に抑制している(たとえば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、アニオン交換樹脂については、アニオン交換樹脂の一部の溶出による純水のTOC濃度の増加を抑制することを目的として、アニオン交換樹脂の対アニオンを制御した事例がある(たとえば、特許文献2を参照)。
【0006】
しかし、特許文献1のイオン交換装置では、超純水中のNa+イオン濃度を10ppt以下にできるものの、昨今の半導体デバイスの洗浄水における不純物濃度の要求レベルは1ppt以下と厳しくなっており、かかる要求レベルに対して十分に満足できる純度が得られないという問題がある。また、特許文献2のアニオン交換樹脂に関しては、単独で使用される場合の性能向上であり、非再生混床式イオン交換装置としての最適解とはなり得ない問題があった。
【特許文献1】特開平6−86976号公報
【特許文献2】特開2003−24800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、二次純水製造工程におけるイオン交換装置から流出する超純水中のNa+イオン濃度を0.1ppt以下に抑制するとともに、TOC濃度を低減して、高純度の超純水を安定に効率よく製造する方法、およびその装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一次純水を強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床を備えるイオン交換装置に通すことにより超純水を形成する超純水の製造方法であって、強酸性カチオン交換樹脂の交換容量が1.5〜2.5meq/mL(ミリエキバレント/ミリリットル、以下同じ)、強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が0.5〜1.5meq/mL、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性アニオン交換樹脂の総体積に対するカチオン交換樹脂の体積の比率が40%以上70%未満であることを特徴とする超純水の製造方法である。
【0009】
本発明にかかる超純水の製造方法においては、一次純水を低圧紫外線酸化装置に通し、上記イオン交換装置に通し、さらに限外濾過膜分離装置に通すことにより超純水を形成することができる。
【0010】
また、本発明は、一次純水から超純水を形成するための超純水の製造装置であって、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床を備えるイオン交換装置を含み、強酸性カチオン交換樹脂の交換容量が1.5〜2.5meq/mL、強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が0.5〜1.5meq/mL、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性アニオン交換樹脂の総体積に対するカチオン交換樹脂の体積の比率が、40%以上70%未満であることを特徴とする超純水の製造装置である。
【0011】
本発明にかかる超純水の製造装置においては、イオン交換装置に加えて、イオン交換装置の上流側に低圧紫外線酸化装置と、イオン交換装置の下流側に限外濾過膜分離装置とを含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、交換容量が1.5〜2.5meq/mLの強酸性カチオン交換樹脂と、交換容量が0.5〜1.5meq/mLの強塩基性アニオン交換樹脂とから構成され、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性アニオン交換樹脂の総体積に対する強酸性カチオン交換樹脂の体積の比率が40%以上70%未満である混床に、一次純水を通すことにより、Na+イオン濃度が0.1ppt以下でTOC濃度が低減した高純度の超純水が得られる。かかる超純水は、半導体や液晶表示装置など電子デバイスの洗浄用の純水として好ましく用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施形態1)
本発明にかかる超純水の製造装置の一実施形態は、図1を参照して、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床を備えるイオン交換装置3と、このイオン交換装置の上流側に低圧紫外線酸化装置2と、イオン交換装置の下流側に限外濾過膜分離装置4とが含まれる。これらの装置が、配管11,12,13,14,15,16,17で連結されている。また、各装置に純水を循環させるための送水ポンプ9が配管12に設けられている。
【0014】
ここで、上記イオン交換装置は、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床を含み、強酸性カチオン交換樹脂の交換容量が1.5〜2.5meq/mL、強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が0.5〜1.5meq/mL、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性交換樹脂の総体積に対する強酸性カチオン交換樹脂の体積の比率が40%以上70%未満であることを特徴とする。1次純水を上記イオン交換装置に通すことにより得られる2次純水である超純水のNa+イオン濃度を0.1ppt以下に抑制し、TOC濃度を低減することができる。
【0015】
上記イオン交換装置には、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床が含まれ、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性交換樹脂の総体積に対する強酸性カチオン交換樹脂の体積の比率(以下、強酸性カチオン樹脂の体積比率という)は40%以上70%未満である。
【0016】
強酸性カチオン交換樹脂の体積比率が40%より小さいと、超純水中のNa+イオン濃度を0.1ppt以下にするのが困難になる。また、強塩基性アニオン交換樹脂の塩基性が強くなり、樹脂の加水分解が生じ、強塩基性アニオン交換樹脂の官能基として使われる有機系カチオン成分の溶出が大きくなる。この有機系カチオン成分の溶出を抑制するべき強酸性カチオン交換樹脂のカチオン交換能力が、体積比率が小さいことから小さくなるため、この有機系カチオン成分が流出し、超純水中のTOC濃度の低減が困難となる。
【0017】
強酸性カチオン交換樹脂の体積比率が70%以上となると、強酸性カチオン交換樹脂の官能基である有機系アニオン成分の溶出が大きくなる。この有機系アニオン成分の溶出を抑制するべき強塩基性アニオン交換樹脂のアニオン交換能力が、体積比率が小さいことから小さくなるため、この有機アニオン成分が流出し、超純水中のTOC濃度の低減が困難となる。
【0018】
また、Na+イオンの捕獲能力は、(1)式
R−SO3H + NaOH → R−SO3Na + H2O ・・・(1)
に示される不可逆反応よりも、純水中に微量に存在するCl-イオンの影響により(2)式
R−SO3H + NaCl ⇔ R−SO3Na + HCl ・・・(2)
に示される可逆反応に支配される。このため、純水の流通速度によっては、強酸性カチオン交換樹脂に捕獲されたNa+イオンが再度純水中に流出する傾向となる。
【0019】
上記の観点から、強酸性カチオン交換樹脂の体積比率は、45%以上50%以下であることが好ましい。
【0020】
強酸性カチオン交換樹脂は、交換容量が1.5〜2.5meq/mLのものであれば、特に制限はないが、樹脂の加水分解が少なく有機系アニオン成分の純水への溶出が少ない観点から、官能基としてスルホン酸を有するスチレン系樹脂が好ましく用いられる。強酸性カチオン樹脂の交換容量が1.5meq/mLより小さいとカチオン成分の捕獲能力が低下し純水中のNa+イオン濃度の低減が困難となる。強酸性カチオン樹脂の交換容量が1.5meq/mLより大きいと樹脂粒子間の凝集を起こしやすくなり結果的に純水中のNa+イオン濃度の低減が困難となる。
【0021】
また、強酸性カチオン交換樹脂は、R−H形99.9%以上の転換率を有する有効径が0.4〜0.6mm、樹脂粒子の均一粒径が1.5以下のものが好ましい。ここで、強酸性カチオン交換樹脂の転換率rcは、(3)式
c=100×(R-SO3Hの官能基数)/((R-SO3Naの官能基数)+(R-SO3Hの官能基総数))
・・・(3)
で定義される。また、イオン交換樹脂(カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の総称をいう、以下同じ)の粒子の大きさをふるいによって分級して、粒子径毎の分布の状態を正規分布とみなして対数確率グラフに直線としてプロットし、ふるい残留百分率累計値が90%および40%に対応するそれぞれのふるいの目開き(単位:mm)を求める。このとき、ふるい残留百分率累計値が90%に対応するふるいの目開きを有効径といい、有効径に対するふるい残留百分率累計値が90%に対応するふるいの目開きの比を均一係数という。
【0022】
強塩基性アニオン交換樹脂は、交換容量が0.5〜1.5meq/mLのものであれば、特に制限はないが、樹脂の加水分解が少なく有機系カチオン成分の純水への溶出が少ない観点から、官能基として4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂が好ましく用いられる。強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が0.5meq/mLより小さいと、アニオン成分の捕獲能力が低下する。また、強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が1.5meq/mLより大きいと、また、強塩基性アニオン交換樹脂の塩基性が強くなり、樹脂の加水分解が生じる。
【0023】
また、強塩基性アニオン交換樹脂は、R−OH型90%以上の転換率を有する有効径が0.4〜0.6mm、樹脂粒子の均一係数が1.5以下のものが好ましい。ここで、強塩基性アニオン交換樹脂の転換率raは、(4)式
a=100×(R-OHの官能基数)/((R-Clの官能基数)+(R-OHの官能基総数))
・・・(4)
で定義される。
【0024】
本発明の混床式イオン交換装置は、SV(空間速度、以下同じ)が30hr-1以上と幅広い条件で使用可能となるが、SVが50〜100hr-1で用いるのが好ましい。ここで、SV(空間速度)とは水を処理する速度の指標で、1時間に処理できる水の体積を濾過材であるイオン交換樹脂の体積(カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の合計体積)で割った値をいう。またイオン交換装置の容器形状は、特に限定されないが、少なくとも600mm以上の充填時の樹脂層高を持つ容器が好ましい。また、混床は、再生の際のNa+イオンの流出を防止するため、非再生混床が好ましく用いられる。
【0025】
なお、本発明にかかる超純水の製造装置は、図1に示す構成のみに限定されるものではない。たとえば、送水ポンプの設置位置は、低圧紫外線酸化装置2の後(配管13)、非再生混床式イオン交換装置3の後(配管14)、または限外濾過膜分離装置4の後(配管16または17)であってもよい。また、循環による温度上昇などを抑制する目的で適時、熱交換装置を貯槽1の出口側に設けてもよい。
【0026】
(実施形態2)
本発明にかかる超純水の製造方法の一実施形態は、図1を参照して、一次純水10は、配管11を経由して貯水槽1に貯えられ、この貯水槽1から配管12を経由して低圧紫外線酸化装置2に送られる。低圧紫外線酸化装置2において、低圧紫外線ランプより出される185nmの紫外線により、純水中のTOCが有機酸、更にはCO2まで分解される。低圧紫外線酸化装置2から流出した純水は、配管13を経由して非再生混床式のイオン交換装置3に送られ、純水中の有機酸や無機イオン、金属イオンなどがイオン交換により除去される。このイオン交換装置3から流出した超純水は、配管14を経由して限外濾過膜分離装置4に送られ、限外濾過膜により分離された濃縮水は配管15より排出される。一方、限外濾過膜を透過した超純水は、配管16を経由してユースポイント21,22,23に供給され、余剰の超純水は配管17を経由して貯水槽1に返送される。本実施形態においては、各装置間の送水のために送水ポンプ9が用いられている。
【0027】
本実施形態の超純水の製造方法においては、イオン交換装置が強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成され、強酸性カチオン交換樹脂の交換容量が1.5〜2.5meq/mL、強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が0.5〜1.5meq/mL、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性アニオン交換樹脂の総体積に対するカチオン交換樹脂の体積の比率が、40%以上70%未満であることを特徴とすることにより、形成される超純水のNa+イオン濃度を0.1ppt以下に抑制し、TOC濃度を低減することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明にかかる超純水の製造装置および製造方法について、さらに具体的に説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に示す装置を用いて、一次純水の処理を行なった。ここで、非再生混床式のイオン交換装置3の容器内には、強酸性カチオン交換樹脂として三菱化学株式会社製SKT20と、強塩基性アニオン交換樹脂として三菱化学株式会社SAT20と、樹脂体積の合計が350L(リットル、以下同じ)で、かつ、強酸性カチオン交換樹脂の体積比率が40%となるように、均一に混合して充填した。ここで用いたイオン交換装置の容器の大きさは、内径800×高さ1000mmであった。水の流通条件はSVを100hr-1として、得られた超純水のNa+イオン濃度およびTOC濃度を測定したところ、それぞれ0.10pptおよび0.27ppbであった。結果を表1にまとめた。ここで、Na+イオン濃度の測定は、イオン交換樹脂を充填して流水開始から24hr後の超純水を採取し、ICP−MS(誘導結合プラズマ−質量スペクトル)分析装置により求めた。また、TOC濃度の測定は、Na+イオン濃度の分析と同様に採取した超純水を用い、固相抽出GC−MS(ガスクロマトグラフ−質量スペクトル)法により求めた。
【0030】
(実施例2)
強酸性カチオンの体積比率を45%としたこと以外は、実施例1と同様にして、一次純水の処理を行い、超純水を得た。超純水のNa+イオン濃度は0.10ppt未満、TOC濃度は0.25ppbであった。結果を表1にまとめた。
【0031】
(実施例3)
強酸性カチオンの体積比率を50%としたこと以外は、実施例1と同様にして、一次純水の処理を行い、超純水を得た。超純水のNa+イオン濃度は0.10ppt未満、TOC濃度は0.28ppbであった。結果を表1にまとめた。
【0032】
(実施例4)
強酸性カチオンの体積比率を64%としたこと以外は、実施例1と同様にして、一次純水の処理を行い、超純水を得た。超純水のNa+イオン濃度は0.10ppt未満、TOC濃度は0.35ppbであった。結果を表1にまとめた。
【0033】
(比較例1)
強酸性カチオンの体積比率を20%としたこと以外は、実施例1と同様にして、一次純水の処理を行い、超純水を得た。超純水のNa+イオン濃度は1.68ppt、TOC濃度は0.45ppbであった。結果を表1にまとめた。
【0034】
(比較例2)
強酸性カチオンの体積比率を30%としたこと以外は、実施例1と同様にして、一次純水の処理を行い、超純水を得た。超純水のNa+イオン濃度は0.68ppt、TOC濃度は0.31ppbであった。結果を表1にまとめた。
【0035】
(比較例3)
強酸性カチオンの体積比率を71%としたこと以外は、実施例1と同様にして、一次純水の処理を行い、超純水を得た。超純水のNa+イオン濃度は0.03ppt、TOC濃度は0.65ppbであった。結果を表1にまとめた。
【0036】
(比較例4)
樹脂体積の合計を500Lとし、かつ、強酸性カチオン交換樹脂の体積比率を28%としたこと以外は、実施例1と同様にして、一次純水の処理を行い、超純水を得た。超純水のNa+イオン濃度は0.80ppt、TOC濃度は0.33ppbであった。結果を表1にまとめた。
【0037】
【表1】

【0038】
表1において、実施例1〜4および比較例1〜3から明らかなように、強酸性カチオン交換樹脂の体積比率が40%以上70%未満の混床を備えるイオン交換装置により得られた超純水は、Na+イオン濃度が0.10ppt以下であり、また、TOC濃度も低減した。また、実施例1と比較例4とを対比すると、強酸性カチオン交換樹脂の充填量が各々140Lと同体積であっても、強酸性カチオン交換樹脂の体積比率が異なれば、得られる超純水中のNa+イオン濃度が異なり、強酸性カチオン交換樹脂の体積比率が40%以上70%未満の範囲内にある実施例1の場合の方が、Na+イオン濃度が低くなっている。このことから、Na+イオン濃度に影響を及ぼすのは、強酸性カチオン交換樹脂の充填量ではなく、強酸性カチオン交換樹脂の体積比率であることがわかる。
【0039】
以上のことから、混床中の樹脂総体積に対する強酸性カチオン交換樹脂の体積比率が、超純水中のNa+イオン濃度およびTOC濃度と大きな相関があることが明白である。混床中の樹脂総体積に対する強酸性カチオン交換樹脂の体積比率を40%以上70%未満とすることにより、Na+イオン濃度が0.10ppt以下でTOC濃度も低く、電子デバイスの洗浄に適した、高純度の超純水が得られる。
【0040】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかる超純水の製造装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1 貯水槽、2 低温紫外線酸化装置、3 イオン交換装置、4 限外濾過膜分離装置、9 送水ポンプ、10 一次純水、11,12,13,14,15,16,17 配管、21,22,23 ユースポイント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水を強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床を備えるイオン交換装置に通して超純水を形成する超純水の製造方法であって、
前記強酸性カチオン交換樹脂の交換容量が1.5〜2.5meq/mL、
前記強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が0.5〜1.5meq/mL、
前記強酸性カチオン交換樹脂および前記強塩基性アニオン交換樹脂の総体積に対する前記カチオン交換樹脂の体積の比率が、40%以上70%未満であることを特徴とする超純水の製造方法。
【請求項2】
前記一次純水を低圧紫外線酸化装置に通し、前記イオン交換装置に通し、さらに限外濾過膜分離装置に通して超純水を形成する請求項1に記載の超純水の製造方法。
【請求項3】
一次純水から超純水を形成するための超純水の製造装置であって、
強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とで構成される混床を備えるイオン交換装置を含み、
前記強酸性カチオン交換樹脂の交換容量が1.5〜2.5meq/mL、
前記強塩基性アニオン交換樹脂の交換容量が0.5〜1.5meq/mL、
前記強酸性カチオン交換樹脂および前記強塩基性アニオン交換樹脂の総体積に対する前記カチオン交換樹脂の体積の比率が、40%以上70%未満であることを特徴とする超純水の製造装置。
【請求項4】
前記イオン交換装置に加えて、前記イオン交換装置の上流側に低圧紫外線酸化装置と、前記イオン交換装置の下流側に限外濾過膜分離装置とを含む請求項3に記載の超純水の製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−167816(P2007−167816A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372619(P2005−372619)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】