説明

超細密フィン折り加工法

【課題】
銅にアルミナを入れて強化した材料は脆く硬いため、微細フィンを加工する段階でパンチが加工型から抜けなくなったり、薄板の加工曲げ部が異常に薄くなり亀裂などが生じて、加工が困難である。
【解決手段】
二つのパンチを図1に示すように交互に上下に動かすことにより、薄板から凸凹細密フィンを連続的に加工することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高圧で使用する超小型から大型熱交換器を利用する原子力産業、一般工業、自動車、宇宙航空等において使用される凸凹状の熱交換機用細密フィンを折る方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
従来、凸凹状の熱交換機用フィンを折る方法においては、薄板を一個のパンチで加工し、これを順次繰り返すことにより凸凹状のフィンを加工するハット法が一般的であるが、細密フィンを加工する場合、パンチが加工面にかじりつき、抜けなくなったりして細密フィンの加工が困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オフセットフィンを積層させたコンパクト熱交換器を高性能化するためには、熱伝導性の高い合金薄板をできるだけ細密に加工して凸凹状のオフセットフィンに加工することが効果的である。そこで、熱伝導性の高い銅材料を用いてフィンを加工することが効果的であるが、熱交換器を高圧で使用する揚合、銅を合金化し高強度化した薄板を使用してオフセットフィンを加工しなければならない。ところが、銅にアルミナを入れて強化した材料は脆く硬いため、微細フィンを加工する段階でパンチが加工型から抜けなくなったり、薄板の加工曲げ部が異常に薄くなり亀裂などが生じて、加工が困難である。
【問題点を解決するための手段】
【0004】
本発明においては、二つのパンチを図1に示すように交互に上下に動かすことにより、薄板から凸凹細密フィンを連続的に加工することができる。即ち、本発明は、上固定ダイズ、上可動ダイズ、下固定ダイズ、及び下可動ダイズを備えたダブルアクション加工機を使用し、下固定ダイズ及び下可動ダイズに乗せた被加工材料を上可動ダイズを下降させて固定し、下可動ダイズを上昇させて凹型折り曲げ部を成形し、次に上可動ダイズを下降させて前記凹型折り曲げ部の隣に凸型折り曲げ部を成形することにより、合金薄板から凸凹形状の熱交換機用細密フィンを折る方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明を図1に従って具体的に説明すると、被加工材料7に凸型折り曲げ部8を成形加工した後、被加工材料を1区画左に移動させる。下固定ダイズ1及び下可動ダイズ3上に乗せられた被加工材料の上に上固定ダイズ2を下降させて被加工材料を固定する。下可動ダイズ3を上昇させて凹型折り曲げ部9を成形する。次に、下可動ダイズをそのままにしておいた状態で上可動ダイズ4を下降させて凸型折り曲げ部10成形する。折り曲げ部9及び10が成形された後、全ダイズを上昇又は下降させて被加工材料を1区画左に移動させ、同じ成形加工工程を繰り返すことにより凸凹形状のフィンを作製する。
[発明の効果]
【0006】
本発明は、高温高圧で使用する超小型から大型熱交換器をできるだけコンパクトかつ軽量に製造できる技術であり、さらに複雑な微細加工も連続的に行なえることから、極めて広範な応用利用分野が期待される。
【実施例】
【0007】
通常のフィン加工においては、単純曲げ加工でフィン形状に加工されることなく、張力を受けながらの曲げ加工や曲げ・曲げ戻し加工などの複雑な加工工程を経てフィン形状に加工される。硬く脆い合金薄板を加工する揚合、張力を受けながらの曲げ加工では、材料にとって厳しい変形となり破断を招く恐れがあることから、本発明では後述するダブルアクション加工法を採用した。本加工法の特徴は片側材料流入を拘束せずに材料に張力が負荷するのを極力抑えることにより、板厚減少を抑制して割れを防止するところにある。
【0008】
図2にダブルアクション加工機を示す。本機には下固定ダイス1、上固定ダイス2、下可動ダイス3、上可動ダイス4の4個のダイスが組み込まれている。下可動ダイスは下可動プレート、上可動ダイスは上可動プレートに固定されており、上可動プレートは本機内蔵の上水圧シリンダー5で、下可動プレートは本機内蔵の下水圧シリンダー6によりガイドポストに導かれて上下に駆動される。
【0009】
図3に代表的な上部ダイスの形状・寸法を示す。下可動ダイス3は下可動プレート、上可動ダイス4は上可動プレートに固定されており、上可動プレートは加工機内蔵の上油圧シリンダーで、下可動プレートは加工機内蔵の下油圧シリンダーにより4本のガイドポストに導かれて上下に駆動される。
【0010】
本ダブルアクショシ加工機を用いたフィン折り加工試験手順を下記に示す。
(1)ダブルアクション加工機を材料試験機のヘッド(ポルスタ)上に設置する。
(2)ダイス問隔調整ノブを回して上下ダイス間を成形後の試験材が通過可能な間隔(4〜8mm程度)に調整する。
(3)予め試験片の裏表に潤滑油(サルファ系極圧剤が添加されているもの)を塗布し、試験機入側よりガイドに沿って挿入する。その後、材料試験機ラムを駆動して、試験片を上下固定ダイスで固定する。
(4)下油シリンダに油圧を負荷して下可動ダイスを上昇させ、試験片を折り曲げる。さらに、下油圧シリンダの油圧力を保持したまま上油圧シリンダに油圧を負荷して上可動ダイスを降下させて試験片を折り曲げる。上油圧シリンダ、下油圧シリンダの順に除荷し、上可動ダイスを上昇、下可動ダイスを降下させる。材料試験機を除荷し、上下固定ダイス間隔を(2)で設定した値近傍になるまで試験機ラムを上昇させる。試験片を移動させ、次の加工位置を定める。試験の加工位置を確認した後、材料試験機ラムを駆動し、試験片を上下固定ダイスで固定する。以降(4)の手順を繰り返す。図4に上記手順で加工したフィンを示す。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明の方法は、耐熱高強度合金薄板から、図5に示されるようなストレートフィン又はオフセットフィン型の熱交換機用細密フィンを折ることができるので、高温ガス炉の中間熱交換器やガスタービン再生熱交換器の耐圧性能、熱交換効率ならびにコンパクト性を著しく向上できることによる、これら原子力プラントの経済性向上に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ダブルアクション加工法の加工手順を示す図である。
【図2】ダブルアクション加工機を示す図である。
【図3】ダブルアクション加工機上部ダイス代表的形状・寸法を示す図である。
【図4】ダブルアクション加工法により加工されたフィンを示す図である。
【図5】ストレートフィン又はオフセットフィンを示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1:下固定ダイズ
2:上固定ダイズ
3:下可動ダイズ
4:上可動ダイズ
5:上水圧シリンダ
6:下水圧シリンダ
7:被加工材料
8:凸型折り曲げ部
9:凹型折り曲げ部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱高強度合金薄板から凸凹状の熱交換機用細密フィンを折る方法。
【請求項2】
1対のダイスを交互に上下することにより、合金薄板から凸凹状のフィンを連続的に折ることからなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
耐熱合金薄板から凸凹状のフィンを折る際に、折り部に残留応力を極力残さないで折ることからなる請求項1記載の方法。
【請求項4】
耐熱合金薄板から厚み0.0mm以上×高さ1mm以上×幅1mm以上×ピッチ1mm以上×オフセット5mm以上のオフセット及びストレートフィンを加工する請求項1記載の方法。
【請求項5】
4MPa以上の差圧で耐えられる耐熱高強度合金薄板から加工したオフセットならびにストレートフィンを加工する請求項1記載の方法。
【請求項6】
脆く硬い合金薄板の室温から1000℃までの加工が可能である請求項1記載の方法。
【請求項7】
高温高圧で使用できるコンパクト熱交換器用細密オフセット及びストレートフィンを加工する請求項1記載の方法。



【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−15388(P2006−15388A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197500(P2004−197500)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000004097)日本原子力研究所 (55)