説明

超電導ケーブルの中間接続部

【課題】 小型化が可能な超電導ケーブルの中間接続部を提供する
【解決手段】 フォーマ200と、超電導導体201と、絶縁層202とを有する超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの中間接続部である。突き合わされる各フォーマ端部の外周に接続スリーブ300をはめ込んで、圧縮接続することにより接続スリーブ300の外径とフォーマ200の外径とを等しくしてフォーマ200同士を接続する。そして、この接続スリーブ300の外側で突き合わされる超電導導体201同士を、超電導ケーブルにおける超電導導体の外径と等しくして接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの中間接続部に関するものである。特に、サイズを小型化できる超電導ケーブルの中間接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、Bi系高温超電導テープ線などからなる超電導導体を具えた超電導ケーブルにおいて、ケーブルコアを1本具える単相ケーブルだけでなく、複数のケーブルコアを一括にした多心一括型の多相ケーブルが開発されつつある。図2に、3心一括型の三相超電導ケーブルを示す。この超電導ケーブル100は、断熱管101内に3本のケーブルコア102を撚り合わせて収納させた構成である。
【0003】
断熱管101は、外管101aと内管101bとからなる二重管の間に断熱材(図示せず)が配置され、かつ二重管内が真空引きされた構成である。このうち、外管101aの上には防食層104が形成されている。各ケーブルコア102は、中心から順にフォーマ200、超電導導体201、電気絶縁層202、シールド層203、保護層204を具えている。超電導導体201は、フォーマ200上に超電導線材を多層に螺旋状に巻回して構成される。電気絶縁層202は、半合成絶縁紙を巻回して構成される。シールド層203は、電気絶縁層202上に超電導導体201と同様の超電導線材を螺旋状に巻回して構成される。このシールド層203には、定常時、超電導導体201に流れる電流と逆向きでほぼ同じ大きさの電流が誘起される。この誘導電流により生じる磁場にて、超電導導体201から生じる磁場を打ち消し合い、ケーブルコア102外部への漏れ磁場をほぼゼロにすることができる。通常、内管101bと各ケーブルコア102とで囲まれる空間103が冷媒の流路となる。
【0004】
このような多相超電導ケーブルを用いて長距離に亘る線路を構築する場合、線路途中において、異なるケーブルから引き出したケーブルコア同士を接続する中間接続が必要となる。多相超電導ケーブルの中間接続部として、例えば、特許文献1に記載のものがある。この構造では、図3に示すように、接続箱500に収納した超電導導体201の端部同士をCuなどの常電導の接続スリーブ510にて接続し、これら超電導導体201の端部及び接続スリーブ510の外周にストレスコーン520を装着している。そして、このストレスコーン520をFRP製の支持棒530にて支持し、さらに接続箱内のケーブルコア102をFRP製の分岐部540にて支持している。
【0005】
【特許文献1】特開2000-340274号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の技術では、次のような問題があった。
【0007】
(1)中間接続部における発熱量が大きくなる。
上記の接続部では、接続スリーブに常電導材料を用いており、この箇所が超電導導体に比べて導体抵抗が大きくなり、接続部でジュール損による発熱を生じて、冷媒の冷却システムに負担がかかる。
【0008】
(2)中間接続部のサイズが大きくなる。
上記の接続部では、接続スリーブの外径が超電導導体よりも大きくなり、層方向に電界ストレスが発生するため、その緩和にストレスコーンを設ける必要がある。このストレスコーンは、例えば絶縁紙の巻回により形成される。そのため、径方向および長手方向に中間接続部が大きくなる。また、熱抵抗の大きい絶縁紙を大量に用いてストレスコーンを形成しているためストレスコーンの熱抵抗が大きく、上記ジュール損による接続スリーブの発熱とあいまって、中間接続部が冷却上の最大の障害になり得ることも考えられる。
【0009】
(3)中間接続部で冷媒の圧損が生じることがある。
上記の接続部では、ストレスコーンを設けて、FRP製の支持棒でストレスコーンを支持している。そのため、この支持棒が冷媒の流通に対して障害になり、圧損を生じる結果、接続部の冷却能力に影響が及ぶことがある。
【0010】
従って、本発明の主目的は、サイズを小さくすることができる超電導ケーブルの中間接続部を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、接続部におけるジュール損の発生を抑制できる超電導ケーブルの中間接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、付き合わせた超電導導体同士を中間接続部とそれ以外の箇所で同一径となるように接続することで上記の目的を達成する。
【0013】
本発明中間接続部は、フォーマと、超電導導体と、絶縁層とを有する超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの中間接続部である。突き合わされる各フォーマ端部に接続スリーブをはめ込み、圧縮接続により接続スリーブの外径とフォーマの外径とを等しくしてフォーマ同士を接続する。そして、この接続スリーブの外側で突き合わされる超電導導体同士を、超電導ケーブルにおける超電導導体の外径と等しくして接続したことを特徴とする。
【0014】
突き合わせたフォーマ同士の外周に配置した導体接続スリーブを圧縮機により圧縮して、この接続スリーブの外径をフォーマと実質的に等外径に圧縮することで、接続箇所の径を大きくすることなくフォーマ同士の接続を行うことができる。そのため、フォーマ上に位置する超電導導体も接続部の箇所のみ径が大きくなることを抑制できる。その結果、ストレスコーンを用いる必要がなく、直接突き合わされた超電導導体同士あるいは一部をオーバーラップさせた超電導導体同士を接続することで、接続部のサイズ、特に外径を小さくすることができる。
【0015】
また、超電導導体同士を直接接続することができるため、常電導導体の接続スリーブを用いる必要がなく、ジュール損の発生を抑制することができる。
【0016】
ここで、フォーマの接続は、接続スリーブを用いた圧縮接続が好適である。そのため、圧縮接続が可能なように、フォーマは中実構造または撚り線構造が望ましい。例えば、複数の金属線を撚り合わせたものが挙げられる。
【0017】
接続スリーブには、圧縮接続が可能なように塑性変形が容易な金属スリーブが望ましい。代表的には、銅スリーブなどが利用できる。このスリーブの厚みは、例えば圧縮後において、上記フォーマの公称断面積の50%以上の断面積が確保できる寸法となるようにする。このような接続スリーブを用いることで、接続スリーブの外径とフォーマの外径とが実質的に一致するような圧縮接続を行った場合、接続箇所における通電容量や機械的強度を確保しやすくできる。
【0018】
超電導導体としては、銀などのマトリクス中にBi2223系などの超電導フィラメントが多数本埋め込まれた超電導線材をフォーマ上にらせん状に巻回した構成が挙げられる。この超電導線材は、通常、多層に巻回される。超電導導体同士の接続は、例えば半田付けにより行えばよい。超電導導体同士を常電導導体を介在させることなく直接接続することで、常電導導体を用いた場合のジュール損を回避できる。
【0019】
また、超電導導体の外側に補強絶縁層を設け、この補強絶縁層の外径を超電導ケーブルの絶縁層の外径と等しくすることが好ましい。補強絶縁層は、中間接続部において電気絶縁を確保する部材である。この補強絶縁材は、絶縁紙の巻回などで形成すれば良いが、ストレスコーンのように厚みを大きくしたり紡錘状に形成する必要がなく、従来の接続部に比べてサイズを大幅に縮小できる。
【0020】
本発明中間接続部で接続される超電導ケーブルは、さらにシールド層を有してもよい。例えば、絶縁層の上に超電導導体と同様の超電導線材をらせん状に巻回又は直線状に配置することでシールド層とする。その場合も、中間接続部における超電導導体の外側には上述した補強絶縁層を設ける。この補強絶縁層も、超電導ケーブルにおける絶縁層と同一外径としておく。そして、この補強絶縁層の外側で突き合わされるシールド層同士を、超電導ケーブルにおけるシールド層の外径と等しくして接続することが好ましい。この構成によれば、シールド層を有するケーブルにおいても、接続部の外径が大きくなることを抑制できる。シールド層同士の接続も、例えば半田付けにて行なえば良い。
【0021】
さらに、通常、超電導ケーブルは超電導導体を冷却する(シールド層を有する場合はシールド層も冷却する)冷媒の流路を有する。本発明中間接続部は、この超電導ケーブルの冷媒流路と同等の断面積が確保できる外ケースを有することが好適である。中間接続部においても超電導ケーブルの冷媒流路と同等の断面積を確保することで、接続部における冷媒の圧損を抑制できる。外ケースは、例えば中間接続部における補強絶縁層の外側を覆う断熱ケースで構成することが挙げられる。中間接続部にシールド層がある場合はシールド層の外側を覆う断熱ケースとすればよい。この外ケースは、超電導ケーブルの長手方向に分割可能な構成とすることが好ましい。外ケースを分割構造とすることで、狭い作業スペースでの中間接続部の組み立てを可能にすることができる。
【0022】
本発明中間接続部は、単心超電導ケーブルの接続は勿論、3心より合わせ超電導ケーブルの各心の接続にも利用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明中間接続部によれば、フォーマの接続部の外径をフォーマの外径と同等に形成できるため、中間接続部のサイズを小さくすることができる。また、超電導導体同士を常電導導体を介して接続する必要がないため、ジュール損による発熱を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
本発明中間接続部の説明に先だって、接続される超電導ケーブルの構成を説明する。この中間接続部で接続される超電導ケーブルも、図2で説明した超電導ケーブル100と同様の構成である。つまり、断熱管101内に3心のコア102が収納されている。各コア102は、中心から順にフォーマ200、超電導導体201、絶縁層202、シールド層203、保護層204を具えている。フォーマ200は複数の銅線を多層に撚り合せて構成している。超電導導体201は、フォーマ200上に超電導線材を多層に螺旋状に巻回して構成される。この超電導線材は、銀マトリクス中にBi2223系超電導フィラメントが多数本埋め込まれて形成される。絶縁層202は絶縁紙とポリプロピレンフィルムとを接合した半合成紙を超電導導体201上に巻回して構成している。また、シールド層203は、超電導導体201に用いたものと同様の超電導線材を絶縁層202上に多層に巻回して構成している。
【0026】
次に、上記の超電導ケーブル100同士を接続する中間接続部を図1に示す。このような超電導ケーブル同士を接続する際、断熱管の端部から各コアを一定長露出しておくと共に、コアの端部において、各層の長さ調整を行なう。具体的には、フォーマ200、超電導導体201、シールド層203は切断端部までの長さとしておき、絶縁層202は切断端部から一定長さ分除去する。この絶縁層202の除去を行なうには、超電導線材の巻回により構成されたシールド層203の端部を一旦ほぐして広げ、絶縁層202を露出させる。その状態で一定長さ分の絶縁層202を除去する。この除去される長さは、後述するフォーマ200に対する接続スリーブ300の圧縮作業が十分に行える程度の長さとしておく。その他、図示していないが、超電導ケーブルの端部から超電導導体、絶縁層、シールド層を一定長切断しておいてフォーマのみを一定長露出しても良い。この場合、超電導導体同士、シールド層同士を接続するには、各々接続用超電導線材を別途介在させる。
【0027】
一対の超電導ケーブル同士の接続には、まず後述する外ケース310の半体311,312を、3心コアの集合体の端部にはめ込み、この外ケース310をコアの端部から離れる位置に一旦逃がしておく。図1ではコアは1心しか示していない。
【0028】
次に、圧縮後において、フォーマ200の公称断面積の50%以上の断面積が確保できる厚さの接続スリーブ300を用意し、このスリーブ300の各端部からフォーマ200を挿入する。ここではタフピッチ銅棒(1100BD)製で、フォーマの外径よりも若干大きな内径を有するスリーブ300を用いた。その状態で接続スリーブ300を圧縮して、フォーマ200同士を接続する。この接続により、スリーブはフォーマに食い込んで圧縮後における接続スリーブ300の外径と圧縮箇所以外のフォーマの外径とは実質的に同等となる。
【0029】
続いて、接続されたフォーマ200の上で、超電導導体201を半田付けにて接続する。接続スリーブ表面とフォーマ表面との間に段差が形成されていないため、一旦ほぐして開いていた超電導線材を巻き戻して若しくは別の接続用超電導線材を用意して接続すれば、超電導導体201自体も接続スリーブ300を覆う位置とそれ以外の箇所で外径が異なることを回避できる。その上、常電導材料を介在して超電導導体の接続を行う必要もなく、接続部でのジュール損に伴う発熱を抑制することができる。
【0030】
次に、接続された超電導導体201上に補強絶縁層320を形成する。超電導ケーブルの各コアのうち、絶縁層202は端部から一定長さ分が除去されているため、この除去されている箇所に例えば絶縁紙を巻回して補強絶縁層320を形成すればよい。この補強絶縁層320の外径もコアの絶縁層202の外径に合わせておく。超電導導体あるいはこの導体と電気的に接続された箇所が部分的に径方向に膨らんで接続されていないため、ストレスコーンを形成する必要はなく、コアの絶縁層202と同等の厚さの補強絶縁層320でも必要な電気絶縁は確保できる。
【0031】
次に、補強絶縁層320の上に、一旦ほぐして開いていた超電導線材を巻き戻して若しくは別の接続用超電導線材を用意してシールド層203を被せる。そして、この超電導線材同士若しくはシールド層を構成する超電導線材と接続用超電導線材とを溶接して接続する。このシールド層203の接続により、シールド層203自身も補強絶縁層320を覆う位置とそれ以外の箇所で外径が異なることを回避できる。以上のようにコアの各層を接続すれば、接続部の外径を超電導ケーブルのコアの外径と同等にでき、接続部のサイズを極力小さくすることができる。
【0032】
さらに、一旦コアの端部から離れる方向に逃がしていた外ケースの半体311,312を補強絶縁層320が形成された位置の外側に引き戻して接続する。この半体311,312は、一端が小径で他端が太径の断熱構造を有する円筒体である。この半体311,312の太径側開口部同士を突き合わせて、溶接やフランジを用いたボルトによる締め付けで一体化する。この半体311,312の接合により、両端部が小径で中間部が太径の外ケース310が形成される。図1では図示していないが、外ケース310の両端部は、超電導ケーブルの断熱管101(図2)の端部と接続される。
【0033】
外ケース310の小径箇所の内径は、超電導ケーブルの断熱管の内径以上を確保しておく。外ケース310の内側とシールド層外側との間の空間は冷媒流路となるため、前記外ケース310の内径確保により、超電導ケーブル内と同等の冷媒流路断面積が確保でき、接続部での冷媒の圧損を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明中間接続部は、電力輸送路などに利用される超電導ケーブル線路において、超電導ケーブル同士の接続箇所として利用することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明中間接続部の部分縦断面図である。
【図2】(A)は本発明接続部により接続される超電導ケーブルの断面図、(B)は同ケーブルコアの段剥ぎ状態を示す斜視図である。
【図3】従来の中間接続部の部分断面図である。
【符号の説明】
【0036】
100 三相超電導ケーブル 101 断熱管 101a 外管 101b 内管
102 ケーブルコア 103 空間 104 防食層
200 フォーマ 201 超電導導体 202 絶縁層 203 シールド層
204 保護層
300 接続スリーブ 310 外ケース 311、312 半体 320 補強絶縁層
500 接続箱 510 常電導接続スリーブ 520 ストレスコーン
530 支持棒 540 分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマと、超電導導体と、絶縁層とを有する超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの中間接続部であって、
突き合わされる各フォーマ端部に接続スリーブをはめ込み、圧縮接続により接続スリーブの外径とフォーマの外径とが等しくなるようにフォーマ同士を接続し、
この接続スリーブの外側で突き合わされる超電導導体同士を、超電導ケーブルにおける超電導導体の外径と等しくして接続したことを特徴とする超電導ケーブルの中間接続部。
【請求項2】
超電導導体の外側に補強絶縁層を設け、この補強絶縁層の外径を超電導ケーブルの絶縁層の外径と等しくしたことを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの中間接続部。
【請求項3】
前記超電導ケーブルは、シールド層を有し、
前記補強絶縁層の外側で突き合わされるシールド層同士を、超電導ケーブルにおけるシールド層の外径と等しくして接続したことを特徴とする請求項2に記載の超電導ケーブルの中間接続部。
【請求項4】
前記超電導ケーブルは超電導導体を冷却する冷媒の流路を有し、
前記中間接続部は、この超電導ケーブルの冷媒流路と同等の断面積が確保できる外ケースを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超電導ケーブルの中間接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−258192(P2007−258192A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163446(P2007−163446)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【分割の表示】特願2004−60779(P2004−60779)の分割
【原出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】