説明

超電導ケーブル用プーリングアイ

【課題】小型化を実現することができる超電導ケーブル用プーリングアイを提供する。
【解決手段】超電導ケーブル用プーリングアイ1は、把持金具10と、支持金具20と、丸ナット30と、接続金具40と、アイ部50と、を備える。把持金具10は、一端側にケーブルコアのフォーマ111を把持する把持穴部11と他端側に雄ネジが形成された雄ネジ部12とを有する。支持金具20は、把持金具10の雄ネジ部12が挿通される複数の挿通孔21を有する。丸ナット30は、把持金具10の雄ネジ部12に螺合して把持金具10を支持金具20に固定する。接続金具40は、支持金具20に接続され、支持金具20が固定される。アイ部50は、接続金具40の先端に設けられ、牽引具が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブル用プーリングアイに関する。特に、小型化を実現することができる超電導ケーブル用プーリングアイに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、既存の常電導ケーブル(例、OFやCVケーブル)と比較して、大容量の電力を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、超電導ケーブルを布設し、実際の送電線に利用する実証試験が行われつつある。
【0003】
超電導ケーブルは、超電導導体層を有するケーブルコアを二重管構造の断熱管内に収納し、この断熱管内に冷媒(例、液体窒素(LN2))を流通させることで、超電導導体層を冷却して超電導状態とする構造のものが代表的である(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
図6は、超電導ケーブルの代表的な基本構造を示す概略図である。超電導ケーブル100は、3心のケーブルコア110が撚り合わされた状態で断熱管120内に一括に収納された3心一括型の構造である。断熱管120は、ステンレス製の内管121と外管122とからなる二重管構造のコルゲート管であり、両管121、122の間が真空引きされると共に、その間にスーパーインシュレーション(商品名)などの断熱材が配置されている。また、断熱管120(外管122)の表面には防食層125が形成されている。一方、ケーブルコア110は、中心から順にフォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、シールド層114、保護層115を同軸状に配置した構造である。通常、フォーマ111は、絶縁被覆を施した銅素線を複数本撚り合わせて形成されている。また、超電導導体層112は、フォーマ111上にテープ状の超電導線材を複数本スパイラル状に巻き付けて形成されており、送電電圧に応じてケーブルコアの径方向に超電導線材を積層して2層以上の多層構造としてもよい。電気絶縁層113の厚さは、送電電圧に応じて適宜設計されている。
【0005】
一般的に、断熱管内にケーブルコアが収納された超電導ケーブルを製造する場合、撚り合わされた複数のケーブルコアを供給しながら、これらケーブルコアを覆うように断熱管の素材となる板材を丸めて溶接して管状に形成することが行われている(特に、特許文献1参照)。この場合、断熱管の形成と同時に複数のケーブルコアが断熱管内に収納される。
【0006】
また、超電導ケーブルを実用化する上で、既存の地中管路内に布設された常電導ケーブルのリプレイスとして利用することが検討されている。超電導ケーブルを管路に布設する場合、超電導ケーブルの一端に取り付けたプーリングアイを牽引することで、管路内に超電導ケーブルを引き入れることが知られている(特に、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−67950号公報
【特許文献2】特開2007−179746号公報
【特許文献3】特開2009−124855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来は、発電所から一次変電所までの一次送電線、或いは一次変電所から二次変電所までの二次送電線といった基幹送電用途に超電導ケーブルを利用することを想定している。そのため、ケーブルコアに高電圧(例えば22kV以上)が課電されることから、電気絶縁層の厚さを厚くしている。例えば、66kV級では、電気絶縁層の厚さが6mm〜7mm程度、ケーブルコアの外径が35mm〜40mm程度に設計されている。今後は更なるCO2削減のため、配電用変電所以降の低電圧(例えば6.6kV以下)を送電するような、大規模ビルや工場などの産業用途の配電にも超電導ケーブルを利用することが考えられる。しかし、産業用配電用途に超電導ケーブルを利用することは具体的に検討されていない。
【0009】
また、今後は、ケーブルコアと断熱管とを別個に作製し、断熱管内に撚り合わされた複数のケーブルコアを引き入れることで、超電導ケーブルを製造することが考えられる。この場合、複数のケーブルコアの各端部をプーリングアイで一括して把持し、断熱管内に複数のケーブルコアを引き入れることが考えられる。しかし、従来のプーリングアイは、断熱管内に複数のケーブルコアを引き入れることを想定して設計されておらず、それを実現する構造も提案されていない。
【0010】
具体的には、上記した低電圧送電を想定して超電導ケーブルを設計した場合は、上記した高電圧送電を想定した超電導ケーブルに比較して、電気絶縁層を薄く、ケーブルコアの外径も小さくすることが可能であるため、その分断熱管の小型化が図られる。そのため、断熱管内に挿入できると共に、引き入れ時の摩擦抵抗を小さくするため、プーリングアイの構造(特に外径)をできる限り小さくすることが望まれる。よって、プーリングアイの小型化を実現する構造が必要である。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、小型化を実現することができる超電導ケーブル用プーリングアイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の超電導ケーブル用プーリングアイは、フォーマと超電導導体層と電気絶縁層とを有する複数のケーブルコアの各端部を一括して把持するものであり、把持金具と、支持金具と、ナットと、接続金具と、アイ部と、を備える。把持金具は、棒状体であり、一端側にケーブルコアから露出させたフォーマを把持する把持穴部と他端側に雄ネジが形成された雄ネジ部とを有する。支持金具は、円板状体であり、同一円周上に等間隔に形成されて把持金具の雄ネジ部が挿通される複数の挿通孔を有する。ナットは、支持金具の挿通孔に把持金具の雄ネジ部が挿通された状態で、雄ネジ部に螺合して把持金具を支持金具に固定する。接続金具は、支持金具に接続され、支持金具が固定される。アイ部は、接続金具のケーブルコアが配置される側とは反対側に設けられ、牽引具が取り付けられる環状の部分である。そして、ナットが、丸ナットであることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、把持金具を支持金具に固定するナットに丸ナットを使用することで、プーリングアイの外径をできる限り小さくすることができ、小型化を実現することができる。プーリングアイの外径を小さくすることを考えた場合、複数のケーブルコアの各フォーマを把持する各把持金具を集合させ、同一円周上に等間隔に配置する。そして、これら把持金具の雄ネジ部を支持金具に形成された各挿通孔にそれぞれ挿通し、ナットを用いて各把持金具を支持金具に固定することが考えられる。
【0014】
従来、このようなナットには通常、六角ナットが使用されている。ナットの強度は、材質や呼び径(内径)が同じであれば、最も薄い部分の厚さで大凡決まる。なお、ここでいう厚さとは、ナットの内外径差の肉厚のことをいい、中心を通る直線を引き、この直線と内周及び外周との交点の2点間の距離である。六角ナットは外形が六角形であり、厚さが不均一である。そのため、所定の強度を維持するためには、最も薄い部分(隣り合う角部間の中間部分)の厚さを確保する必要があり、その他の部分も厚さが厚くなる。即ち、ナットの最大外径が大きくなる。これに対し、丸ナットは外形が円形であり、厚さが均一であるため、六角ナットと同じ強度を維持する場合、六角ナットに比較して最大外径が小さくなる。つまり、丸ナットを使用することで、六角ナットを使用する場合に比較して、各把持金具を支持金具に固定したときのナット全てを包絡する包絡円の外径を小さくすることができ、プーリングアイの小型化を図ることができる。
【0015】
丸ナットには、ナットを締め付けるときに使う穴を側面又は上面に設けておくとよい。この穴に係合するフックを有する専用工具(例、フックスパナ)を用いて、穴にフックを引っ掛けて丸ナットを回転させることで、丸ナットの締め外しを確実に行うことができる。
【0016】
本発明の超電導ケーブル用プーリングアイの一形態としては、ケーブルコアにおける電気絶縁層の厚さが3mm以下であることが挙げられる。
【0017】
上述したように、高電圧送電を想定した超電導ケーブルの場合は、電気絶縁層が厚く、ケーブルコアの外径も大きい。この場合、ナットを含む各把持金具に対して、各ケーブルコアの外径が大きくなるため、ナットを含む全ての把持金具を包絡する包絡円の外径より、全てのケーブルコアを包絡する包絡円の外径の方が大きくなる。よって、丸ナットを使用して、プーリングアイを小型化するメリットが小さい。一方、低電圧送電を想定した超電導ケーブルの場合は、電気絶縁層が薄く、ケーブルコアの外径も小さい。具体的には、電気絶縁層の厚さが3mm以下、ケーブルコアの外径が20mm以下である。この場合、ナットを含む各把持金具に対して、各ケーブルコアの外径が小さくなるため、ナットを含む全ての把持金具を包絡する包絡円の外径より、全てのケーブルコアを包絡する包絡円の外径の方が小さくなる。つまり、複数のケーブルコアの各端部をプーリングアイで一括して把持したとき、プーリングアイにおける把持金具の部分の外径が大きくなることから、ケーブルコア群の断熱管への挿入や引き入れ時の摩擦抵抗が大きくなり易い。よって、丸ナットを使用して、プーリングアイの外形をできる限り小さくする本発明の効果をより享受することができる。なお、ここでいう低電圧とは、6.6kV以下のことをいい、例えば3kV〜4kVである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の超電導ケーブル用プーリングアイは、把持金具を支持金具に固定するナットに丸ナットを使用することで、プーリングアイの外径をできる限り小さくすることができ、小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係る超電導ケーブル用プーリングアイの概略構成を示す概略縦半断面図である。
【図2】図1に示す超電導ケーブル用プーリングアイにおける把持金具を示す概略縦断面図である。
【図3】図1に示す超電導ケーブル用プーリングアイにおける支持金具を示す概略図であり、(A)は概略平面図、(B)は概略縦半断面図である。
【図4】図1に示す超電導ケーブル用プーリングアイにおけるナットを示す概略図あり、(A)は概略横断面図、(B)は概略縦断面図である。
【図5】図1に示す超電導ケーブル用プーリングアイにおける接続金具を示す概略図であり、(A)は概略縦半断面図、(B)概略底面図である。
【図6】超電導ケーブルの基本構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。また、図中において同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0021】
[実施形態1]
図1に示す超電導ケーブル用プーリングアイ1は、把持金具10と、支持金具20と、丸ナット30と、接続金具40と、アイ部50と、を備える。ここでは、図6に示す構造の3心のケーブルコアの各端部を一括して把持する場合を例に説明する。以下、各構成部材について詳しく説明する。
【0022】
把持金具10は、棒状体であり、一端側に把持穴部11と他端側に雄ネジ部12とを有する(図2参照)。把持穴部11は、ケーブルコアの端部を段剥ぎ処理して露出させたフォーマ111が挿通される把持穴11hが形成された円筒状の部分である。そして、把持穴部11の把持穴11hにフォーマ111を挿通し、把持穴部11を外周側から圧縮することで、把持穴部11(把持金具10)がフォーマ111を把持する(図1参照)。この例では、3心のケーブルコアの各フォーマ111にそれぞれ把持金具10が取り付けられる。雄ネジ部12は、雄ネジ12bが形成された円柱状の部分である。
【0023】
支持金具20は、円板状体であり、同一円周上に等間隔に形成された3つの挿通孔21を有する(図3参照)。各挿通孔21には、3心のケーブルコアの各フォーマ111を把持する各把持金具10の雄ネジ部12がそれぞれ挿通される(図1参照)。挿通孔21は、雄ネジ部12の外径より大きく、遊びがあることで、支持金具20に対する把持金具10の位置を調整できるようになっている。また、支持金具20の外周には、雄ネジ24が形成されていると共に、ネジ穴25が形成されている。この例では、ネジ穴25が周方向に等間隔に3つ形成されている。
【0024】
丸ナット30は、支持金具20の挿通孔21に把持金具の雄ネジ部12が挿通された状態で、雄ネジ部12に螺合して把持金具10を支持金具20に固定する。この例では、一対の丸ナット30で把持金具10を支持金具20に固定している。具体的には、把持金具10の雄ネジ部12を支持金具20の挿通孔21に挿通する前に一方の丸ナット30を雄ネジ部12に螺合した後、雄ネジ部12を挿通孔21に挿通し、他方の丸ナット30を雄ネジ部12に螺合する。そして、両ナット30で支持金具20を挟むようにして、両ナット30を締め付けることで、把持金具10を支持金具20に固定する。丸ナット30の側面には、引掛穴31が形成されている(図4参照)。この引掛穴31に係合するフックを有する例えばフックスパナなどの工具を用いて、引掛穴31にフックを引っ掛けて丸ナット30を回転させることで、丸ナット30を締め付けることができる。この例では、丸ナット30の側面に6つの引掛穴31が等間隔に設けられている。
【0025】
接続金具40は、支持金具20に接続され、支持金具20が固定される。この例では、接続金具40は、キャップ状であり、開口端内周には、支持金具20の外周に形成された雄ネジ24に螺合する雌ネジ44が形成されている(図5参照)。そして、支持金具20の雄ネジ24を接続金具40の雌ネジ44に螺合することで、接続金具40が支持金具20に接続される。また、接続金具40には、接続金具40と支持金具20とが接続された状態において、支持金具20の外周に形成されたネジ穴25に対応する位置に貫通する収容孔45が形成されている。そして、ネジ穴25と収容孔45とを位置合わせした状態で、子ネジ42(図1参照)をネジ穴25に挿し込むことで、接続金具40に対して支持金具20が回転しないように固定される。収容孔45には子ネジ42の頭部が収容され、子ネジ42の頭部が接続金具40の外周面から突出しないようになっている。さらに、接続金具40の先端(ケーブルコアが配置される側とは反対側)には、ボルト部41が設けられている。
【0026】
アイ部50は、接続金具40のケーブルコアが配置される側とは反対側に設けられ、牽引具が取り付けられる環状の部分である。この例では、アイナット51で形成されている。具体的には、接続金具40のボルト部41に六角ナット55を螺合した後、アイナット51を螺合し、六角ナット55を締め付けることで、アイナット51を接続金具40のボルト部41に固定している。牽引具としては、例えばフックやワイヤなどが挙げられる。
【0027】
[試験例1]
上記した実施形態1に係る超電導ケーブル用プーリングアイを用いて、断熱管内に撚り合わされた3心のケーブルコアを引き入れる引き入れ作業を行った。ケーブルコアは、低電圧送電用に設計したものであり、ケーブルコア及び断熱管の諸元は次のとおりである。
(ケーブルコア)
フォーマの外径:9mm
電気絶縁層の厚さ:2mm
ケーブルコアの外径:21mm(3心の包絡円の外径:45.5mm)
(断熱管)
断熱管の内径:54mm
断熱管の長さ:30m
【0028】
その結果、断熱管内に撚り合わされた3心のケーブルコアを引き入れることができた。また、引き入れ時の摩擦抵抗が小さく、引き入れ作業が容易であることが確認できた。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、複数のケーブルコアを断熱管内に一括に収納された構造の超電導ケーブルに対し、超電導ケーブルの一端に本発明のプーリングアイを取り付けて、超電導ケーブルの布設に利用してもよい。具体的には、本発明のプーリングアイを用いて、複数のケーブルコアの各端部をプーリングアイで一括して把持すると共に、プーリングアイの接続金具に断熱管の端部を保護管などを介して連結して、管路内に超電導ケーブルを引き入れることが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の超電導ケーブル用プーリングアイは、例えば、超電導ケーブルの製造、布設に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 超電導ケーブル用プーリングアイ
10 把持金具
11 把持穴部 11h 把持穴
12 雄ネジ部 12b 雄ネジ
20 支持金具
21 挿通孔
24 雄ネジ 25 ネジ穴
30 丸ナット
31 引掛穴
40 接続金具
41 ボルト部 42 子ネジ
44 雌ネジ 45 収容孔
50 アイ部
51 アイナット 55 六角ナット
100 超電導ケーブル
110 ケーブルコア
111 フォーマ 112 超電導導体層 113 電気絶縁層
114 シールド層 115 保護層
120 断熱管
121 内管 122 外管 125 防食層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマと超電導導体層と電気絶縁層とを有する複数のケーブルコアの各端部を一括して把持する超電導ケーブル用プーリングアイであって、
棒状体であり、一端側に前記ケーブルコアから露出させた前記フォーマを把持する把持穴部と他端側に雄ネジが形成された雄ネジ部とを有する把持金具と、
円板状体であり、同一円周上に等間隔に形成されて前記把持金具の雄ネジ部が挿通される複数の挿通孔を有する支持金具と、
前記支持金具の前記挿通孔に前記把持金具の雄ネジ部が挿通された状態で、前記雄ネジ部に螺合して前記把持金具を前記支持金具に固定するナットと、
前記支持金具に接続され、前記支持金具が固定される接続金具と、
前記接続金具の前記ケーブルコアが配置される側とは反対側に設けられ、牽引具が取り付けられる環状のアイ部と、を備え、
前記ナットが、丸ナットであることを特徴とする超電導ケーブル用プーリングアイ。
【請求項2】
前記ケーブルコアにおける前記電気絶縁層の厚さが3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル用プーリングアイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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