説明

超電導磁場発生装置、スパッタガン及びスパッタリング成膜装置

【課題】超電導体からの強い磁場をプレートの前面側に発生させることができる超電導磁場発生装置、スパッタガン及びスパッタリング成膜装置を提供することを課題とする。
【解決手段】超電導磁場発生装置は、超電導遷移温度以下で外部に磁場を発する超電導体3と、超電導体3を冷却する冷却装置4と、超電導体3を収容する断熱容器5とを有する中央磁極2を有する。超電導体3の周囲に配置された強磁性体で形成された周縁磁極6と、中央磁極2と周縁磁極6とが存在する空間と磁場作用空間とを仕切るプレート7とを有する。プレート7のうち超電導体3に対面する中央部71は、窪み70を有するように、当該中央部71の周囲よりも厚みが薄く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超電導磁場発生装置、スパッタガン及びスパッタリング成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導磁場発生装置を搭載するスパッタリング成膜装置を例にとって従来技術について説明する。従来の永久磁石の代わり、超電導バルク磁石をスパッタガンに用いたマグネトロンスパッタリング成膜装置が特許文献1,2,3に報告されている。この装置の特徴は、従来の10倍以上の強力な磁場をターゲットの表面に生成してプラズマをターゲット表面に集中させることにより、高速成膜、低スパッタガス圧成膜、低ダメージ成膜などができることである。これらの特徴は、磁場が強いほどより顕著となる。
【0003】
超電導バルク磁石で形成されている超電導体は通常の永久磁石とは異なり、磁場を発生するのに超電導繊維温度以下に冷却する必要があるため、超電導体は、断熱が取れる真空容器に収納されて冷凍機で冷却される。超電導体を中央磁極とし、この周囲に軟磁性体を配置することにより、中央磁極から出て周囲磁極に入る磁場分布がこれら磁極の前面に形成される。
【0004】
スパッタガンは、薄膜の材料となるターゲットを取り付けるバッキングプレートの背面に上記中央磁極と周縁磁極とを配置することにより形成されており、ターゲットの前面に上述した磁場分布を形成してプラズマを集中させる。バッキングプレートは、成膜を行う成膜用真空チャンバに取付けられ、ターゲットの表面でプラズマを発生させる真空空間(この真空空間には通常はAr等のスパッタガスが大気圧以下で導入される)を保つための真空チヤンバを形成する壁の一部としての機能も併せもつ。
【0005】
特許文献1〜3に記載のスパッタリング成膜装置では、タ一ゲットの表面に強力な磁場を発生させるため、バッキングプレートの全体の厚みを薄くし、バッキングプレートと磁極との間にターゲットを間接冷却するために冷却水を流す層を設けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1及び2に記載の超電導磁場発生装置を搭載するスパッタリング成膜装置では、以下のような問題点があった。
【0007】
(A)超電導体から発生する磁場は、非常に強くヨーク材に使われる軟磁性体の飽和磁化を超えてしまうため、超電導体の前面にヨーク材を取り付けて、強磁場を導くには限界がある。従って、磁場の作用空間であるバッキングプレートの前面に強磁場を発生させるためには、超電導体を有する中央磁極をできるだけプレートの表面に近づける必要がある。しかし、従来の構造ではバッキングプレートの全体の厚みを薄くすることは、バッキングプレートの強度や冷却の点から限界があった。
【0008】
(B)ターゲットサイズが大きくなると、バッキングプレートのサイズも増加するため、バッキングプレートの全体の厚みを薄くしたときには、バッキングプレートが大気圧で変形し、ターゲットをバッキングプレートに取り付けられなくなるおそれがある。一方、パッキングプレートの厚みを厚くすると、パッキングプレートの変形を抑制できるものの、バッキングプレートの前面に強磁場を発生させるためには限界があり、ターゲットの表面の磁場が弱くなるおそれがある。
【特許文献1】特開平10−72667号公報
【特許文献2】特開2004−91872号公報 上記した特許文献によれば、超電導体からの強い磁場をプレートの前面側に発生させるには限界があった。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、超電導体からの強い磁場をプレートの前面側に発生させることができる超電導磁場発生装置、スパッタガン及びスパッタリング成膜装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1様相に係る超電導磁場発生装置は、超電導遷移温度以下で外部に磁場を発する超電導体と、超電導体を冷却する冷却装置と、超電導体を収容する断熱容器とを有する中央磁極と、
超電導体の周囲に配置され強磁性体を具備する周縁磁極と、
中央磁極と周縁磁極とが存在する空間と磁場作用空間とを仕切るプレートとを具備しており、
プレートのうち中央磁極に対面する中央部は、中央磁極の先端部に対面する部分に窪みを有すると共に、中央部の厚みは中央部の周囲の厚みよりも薄く設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
(2)第2様相に係るスパッタガンは、
超電導遷移温度以下で外部に磁場を発する超電導体と、超電導体を冷却する冷却装置と、超電導体を収容する断熱容器とを有する中央磁極と、
超電導体の周囲に配置された強磁性体で形成された周縁磁極と、
中央磁極と周縁磁極とが存在する空間と磁場作用空間とを仕切るプレートとを具備する超電導磁場発生装置を有するスパッタガンにおいて、
超電導磁場発生装置のプレートは、ターゲットを固定するバッキングプレートであり、超電導磁場発生は前記した様相に係る超電導磁場発生装置で行なわれることを特徴とするものである。
【0011】
(3)第3様相に係るスパッタリング成膜装置は、
成膜原料を含むターゲットを保持するターゲットホルダと成膜対象物を保持する成膜対象物ホルダとを有する減圧チャンバと、
ターゲットの表面の近傍の領域にプラズマを集中させる磁場を発生させるスパッタガンとを具備しており、
ターゲットから放出される成膜原料を成膜対象物の表面に被着させて成膜対象物に薄膜を形成するスパッタリング装置において、
スパッタガンは、前記した各様相に係る超電導磁場発生装置を有することを特徴とするものである。
【0012】
(4)各様相によれば、プレートのうち超電導体に対面する中央部は、中央磁極の先端部に対面する部分に窪みを有すると共に、プレートの中央部の厚みは当該中央部の周囲の厚みよりも薄く設定されている。このためプレートに中央磁極の超電導体をできるだけ近づけることができ、中央磁極の超電導体からの強い磁場をプレートの前面側に発生させるのに有利となる。従って、強い磁場で捕獲されるプラズマをプレートの前面の近くで閉じ込めるのに有利となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る超電導磁場発生装置、スパッタガン、スパッタリング成膜装置によれば、プレートのうち超電導体に対面する中央部は、中央磁極の先端部に対面する部分に窪みを有すると共に、プレートの中央部の厚みは当該中央部の周囲の厚みよりも薄く設定されている。このためプレートに中央磁極の超電導体をできるだけ近づけることができ、中央磁極の超電導体からの強い磁場をプレートの前面側に発生させるのに有利となる。従って、プレートに中央磁極の超電導体をできるだけ近づけることができ、強い磁場で捕獲されるプラズマをプレートの前面側で閉じ込めるのに有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る超電導磁場発生装置は、超電導遷移温度以下で外部に磁場を発する超電導体と、超電導体を冷却する冷却装置と、超電導体を収容する断熱容器とを有する中央磁極を有すると共に、更に、超電導体の周囲に配置された強磁性体を具備する周縁磁極と、中央磁極と周縁磁極とが存在する空間と磁場作用空間とを仕切るプレートとを有する。プレートのうち超電導体に対面する中央部は、超電導体の先端部に対面する部分に窪みを有すると共に、中央部の厚みは中央部の周囲の厚みよりも薄く設定されている。なお窪みの深さは、超電導体の厚みと同程度でも良いし、超電導体の厚みよりも大きくても良いし、超電導体の厚みよりも小さくても良い。
【0015】
ここで、プレートのうち超電導体に対面する前記中央部の厚みをt1とし、前記プレートのうち当該中央部の周囲の厚みをt2とすると、t2/t1=1.3〜200に設定されている形態を採用できる。殊に、t2/t1=1.5〜100、または2〜80、または3〜50、または3〜20に設定されている形態を採用できる。t2/t1の上限値としては、200,または100,または80,または50,または30,または20を例示できる。この上限値と組み合わせ得る下限値としては、1.5,または2,または2.5,または3,または3.5,または4,5を例示できる。このようにプレートのうち超電導体に対面する中央部の厚みは薄く設定されているものの、当該中央部の周囲の厚みは当該中央部よりも厚く設定されているため、プレートの強度が確保され、プレートの圧力や熱による変形は抑制される。
【0016】
本発明によれば、プレートの中央部は非磁性体で形成されている形態を例示できる。これにより中央磁極からの磁場をプレートの前面に透過させ易くなっており、プレートの前面側にプラズマを形成させるのに有利となる。
【0017】
本発明によれば、プレートは、超電導体に対面する中央部と、中央部の外周側に配置されている中間部と、中間部の外周側に配置されている周縁部とを備えている形態を例示できる。プレートの周縁部は非磁性体で形成されている形態を例示できる。この場合、磁束が外方に飛散することが抑制される。
【0018】
本発明によれば、プレートの中間部は強磁性体で形成されている形態を例示できる。この場合、中央磁極の磁束を中間部を透過させ、良好な磁場分布を形成するのに有利である。本明細書では、強磁性体は永久磁石及び軟磁性体のうちの1種または2種をいう。
【0019】
本発明によれば、プレートの中間部を構成する強磁性体は、永久磁石と軟磁性体とで形成されており、永久磁石と軟磁性体は、プレートの面方向において互いに隣設されていない形態を採用することができる。この場合、永久磁石と軟磁性体は、プレートの面方向において互いに隣設されていないため、超電導体から発生される強い磁場をプレートの前面側に形成するのに有利となる。
【0020】
本発明によれば、中央磁極を構成する超電導体の外周側に永久磁石を配置する形態を採用することができる。この場合、超電導体から発生される磁束が周囲に飛散することが抑制され、磁場分布の中央と周囲とでバランスが良い強力な磁場分布をプレートの前面側に形成できる利点が得られる。このようにバランスが良い強力な磁場分布を形成できるため、成膜装置に適用した場合において、成膜速度の増加、成膜時間の短縮、膜のダメージの低減を図り得る。
【0021】
プレートの中間部が強磁性体で形成されている場合には、その強磁性体は軟磁性体で形成されている形態を例示できる。この場合、中央磁極の磁束を中間部を透過させるのに有利である。プレートの中間部を構成する強磁性体は、永久磁石と軟磁性体とで形成されており、永久磁石と軟磁性体は、プレートの面方向において互いに隣接していない形態を採用することができる。つまり、永久磁石と軟磁性体は、プレートの厚み方向に積層されている形態を例示できる。
【0022】
また本発明によれば、プレートの中間部は、非磁性体で形成された内側部と、強磁性体で形成された外側部とを備えている形態を例示できる。非磁性体で形成された内側部に冷却通路を形成すれば、外側部を構成する強磁性体の体積を確保するのに有利になる。
【0023】
本発明によれば、プレートの中間部を構成する外側部は、永久磁石と、永久磁石に積層された軟磁性体とを備えている形態を例示できる。このため、中央磁極を構成する超電導体から発せられる強力な磁場(磁束)を周縁磁極で効果的に吸収することができる。故に、プレートの中央と周囲とでバランスが取れた磁場分布がターゲットの表面に形成できる。
【0024】
本発明によれば、プレートの中間部は軟磁性体で形成されており、この軟磁性体は、プレートの径方向において、周縁磁極を構成する強磁性体の外周面と同一または内側に配設されている形態を例示できる。これにより中央磁極を構成する超電導体から発せられる強力な磁場(磁束)を周縁磁極で効果的に吸収することができる。故に、プレートの中央と周囲とでバランスが取れた磁場分布がターゲットの表面にできる。
【0025】
本発明によれば、周縁磁極はプレートに固定され、中央磁極は磁場を発生した状態で、プレートと周縁磁極とを結合した結合磁極に取り付ける構造を有する形態を例示できる。この場合、中央磁極の最終取付位置において、超電導体の上下対称面が、周縁磁極の上下対称面よりプレート側に近く配設されている形態を例示できる。この場合には、中央磁極の最終取付位置において、中央磁極に働く力がゼロまたはプレートに対して反発力を発揮するように中央磁極が配設されている形態を採用しやすい。このように中央磁極の最終取付位置において、中央磁極に働く力がゼロまたはプレートに対して反発力を発揮するようにすれば、中央磁極とプレートとの衝突が回避され易く、中央磁極とプレートの保護性を高めることができる。
【0026】
本発明によれば、プレートと周縁磁極とを結合した結合磁極には、中央磁極の取付位置を規定するガイドが具備されている形態を例示することができる。この場合、ガイドは、中央磁極を結合磁極に取り付ける際に、プレートに対して中央磁極を遠ざける反発力を発揮する位置、または、プレートに対して中央磁極を反発及び吸引させない位置を内包するように設定されている形態を採用することができる。これにより中央磁極を結合磁極に取り付ける際に、中央磁極がガイドに強く衝突することが避けられる。更に、中央磁極の超電導体がこれの最終取付位置に接近するとき、中央磁極がプレートから遠ざかる方向に反発力を発揮させる位置をガイドが内包していることが好ましい。この場合、中央磁極の超電導体がこれの最終取付位置に接近するとき、中央磁極にブレーキ作用を与えることができるため、中央磁極がプレートに強く衝突することが避けられる。
【0027】
本発明によれば、プレートは冷却媒体が流れる冷却通路を有する形態を例示できる。冷却通路によりプレートを冷却できる。冷却通路は、プレートの前面に形成されるプラズマの直下または直下近傍の領域に配設されていることが好ましい。
【0028】
本発明によれば、超電導体は、溶融凝固法により作製されており、その主成分がRE−Ba−Cu−O(REはY,La,Nd,Sm,Eu,Gd,E r,Yb,Dy,Hoのうちの1種以上)で表される形態を例示できる。この場合、超電導体の構成材料を一旦融点以上に加熱して溶融し再び凝固させる溶融凝固法で、超電導体は合成されている。この製法によれば、超電導体において結晶粒が粗大で、かつ、超電導となる母相に絶縁相が微細に分散した組織を有することができる。このように微細に分散した絶縁相が磁場のピン止め点として働くため、捕捉磁場の大きい超電導体が得られ、超電導磁場発生装置としての性能が向上する利点が得られる。この超電導体は、超電導遷移温度以下に冷却して着磁すると、磁場を捕捉して強力な磁場を発生する磁石となる。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の実施例1について図1及び図2を参照して具体的に説明する。図1では複雑化を避けるため、ハッチングを適宜省略している。本実施例に係る超電導磁場発生装置1は中央磁極2を有する。中央磁極2は、超電導遷移温度以下で磁場を捕捉することにより外部に磁場を発する超電導体3と、超電導体3を冷却する冷却装置4と、超電導体3を収容する真空断熱室50をもつ真空断熱容器5(断熱容器)とを有する。上記した冷却装置4は、冷凍機40と、真空断熱容器5の真空断熱室50内に配置された寒冷部として機能するコールドヘッド41とをもつ。冷凍機40としては、無冷媒で冷却が可能な冷凍機、あるいは、有冷媒で冷却が可能な冷凍機を例示することができる。冷凍機40としては具体的にはGM冷凍機、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機などを例示することができる。
【0030】
超電導体3は円盤形状をなしており、その主成分がRE−Ba−Cu−Oの組成式で表されるバルク状(塊状)の超電導体で形成されている。REはY,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Er,Yb,Dy,Hoのうちの1種または2種以上を意味する。この場合、超電導体3の構成材料を一旦融点以上に加熱して溶融し再び凝固させる溶融凝固法で、超電導体3は合成されている。この製法によれば、超電導体3において結晶粒が粗大で、かつ、超電導となる母相に絶縁相が微細に分散した組織を有することができる。このように微細に分散した絶縁相が磁場のピン止め点として働くため、捕捉磁場の大きい超電導体3が得られ、超電導磁場発生装置1としての性能が向上する利点が得られる。この超電導体3は、超電導遷移温度以下に冷却して着磁すると、磁場を捕捉して強力な磁場を発生する磁石となる。超電導体3は上下方向に磁極を有する。具体的には本実施例では、図1に示すように、超電導体3の上面はN極とされ、超電導体3の下面はS極とされているが、逆としても良い。
【0031】
超電導体3は、真空断熱容器5の真空では断熱室50内において冷却装置4のコールドヘッド41に強磁性体としての下ヨーク42を介して固定されている。下ヨーク42は上記した超電導体3の下側に設けられている。下ヨーク42の材質は、飽和磁束密度または残留磁束密度の大きいものが好ましい。具体的には、下ヨーク42の材質としては、パーメンジュール(Fe−Co−V系)、電磁軟鉄(Fe)、珪素鋼板(Fe−Si系)、センダスト(Fe−Si−Al系)などの高透磁率材料を用いることができる。なお上記した強磁性体としての下ヨーク42としては、場合によっては、Nd−Fe−B系、Sm−Co系などの永久磁石材料を用いることができる。
【0032】
図1に示すように、周縁磁極6は、中央磁極2の周囲にリング形状に同軸的またはほぼ同軸的に配置されている。周縁磁極6の材質は下ヨーク42と同様な軟磁性体6aで形成されている。周縁磁極6は、真空断熱容器5の外方に配置されており、超電導体3及び下ヨーク42に対して同軸的とされている。なお本明細書では軟磁性体は高透磁率材料を意味する。
【0033】
図1に示すように、超電導体3の周囲には周縁磁極6がリング形状に配置されている。周縁磁極6は真空断熱容器5の外方に位置するように下ヨーク42の側方に配置されている。周縁磁極6は強磁性体としての軟磁性体6aで形成されている。周縁磁極6の材質は飽和磁束密度または残留磁束密度の大きいものが好ましい。周縁磁極6を構成する軟磁性体6aの材質としては、具体的には、パーメンジュール(Fe−Co−V系)、電磁軟鉄(Fe)、珪素鋼板(Fe−Si系)、センダスト(Fe−Si−Al系)などの高透磁率材料を用いることができる。
【0034】
図2に示すように、プレート7は中央磁極2の超電導体3と同軸的な盤状をなしており、中央磁極2と周縁磁極6とが存在する空間WBと、プラズマ500が発生する磁場作用空間WAとを仕切る仕切部材として機能する。図2に示すように、プレート7のうち、中央磁極2の先端部に存在する超電導体3に対面する部分に凹状の窪み70が形成されている。窪み70は中央磁極2の先端部を収容できる深さを有する。窪み70の深さは、超電導体3の厚みと同程度または超電導体3の厚みよりも大きく設定されている。
【0035】
本実施例によれば、プレート7のうち超電導体3に対面する部分である中央部71の厚みをt1とし、中央部71以外の厚みをt2とすると、t1はt2よりも厚みが薄く設定されている。ここでt2/t1=2〜50、2〜20、殊に3〜10に設定されている。なお、プレート7において、超電導体3に対面する部分である中央部71の前面(上面)、中間部72の前面(上面)、周縁部731の前面(上面)は、同一の高さを有する平坦面とされている。
【0036】
プレート7のうち超電導体3に対面する薄肉化された中央部71は、非磁性体で形成されている。これにより中央磁極2の超電導体3からの磁場をプレート7の前面7fに透過させ易くなっており、プレート7の前面7f側にプラズマ500を形成させるのに有利となる。本明細書に係る非磁性体としては、オーステナイト系の合金鋼(ステンレス鋼等)、あるいは、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、場合によってはセラミックス等を例示できる。但しこれに限定されるものではない。
【0037】
図1に示すように、プレート7は、非磁性体で形成された中央部71の他に、当該中央部71の外周側に設けられた強磁性体からなるリング形状の中間部72と、中間部72の外周側に設けられた非磁性体からなるリング形状の周縁部73とを備えている。このようにプレート7の周縁部73が非磁性体で形成されているため、超電導体3から発せられた磁束が外方に広く飛散することが抑制される。なお、中間部72及び周縁部73の厚みはt2とされている。前記したように中央部71の厚みt1は、中間部72及び周縁部73の厚みt2よりも薄く設定されている。
【0038】
図1に示すように、プレート7の中間部72は、中央部71に近いリング状の内側部74と、周縁部73に近いリング状の外側部75とで形成されている。内側部74は非磁性体74aで形成されている。このように窪み70の外周側は非磁性体74aで形成されている。プレート7の径方向におけるプラズマ500の位置に対応させたものである。プレート7の外側部75は強磁性体で形成されている。プレート7の中間部72を構成する外側部75の強磁性体は、永久磁石78と、永久磁石78を厚み方向に挟持する上側軟磁性体79a及び下側軟磁性体79bとで形成されている。上記したような構造を採用しているため、永久磁石78を用いているとしても、プレート7を構成する中央部71、中間部72、周縁部73を溶接やロウ付け等の接合手段で一体的に接合しやすく、プレート7を一体化させ易い利点が得られる。永久磁石78、上側軟磁性体79a及び下側軟磁性体79bはリング状をなしており、同軸的に形成されている。なお、図1に示すように、周縁磁極6を構成する軟磁性体6aの内径は、永久磁石78の内径よりも小さく設定されている。
【0039】
なお図1に示すように永久磁石73は上下方向に磁極を有する。具体的には本実施例では永久磁石73の上面の磁極(S極)は超電導体3の上面の磁極(N極)と逆の極とされており、かつ、永久磁石73の下面の磁極(N極)は超電導体3の下面の磁極(S極)と逆の極とされている。なお、S極をN極とし、N極をS極としても良い。
【0040】
上記したようにプレート7を構成する中央部71、中間部72、周縁部73は一体化されているため、プレート7を真空チャンバの隔壁の一部として利用したときであっても、プレート7を介してのリークが抑えられる。また、図1に示すように永久磁石78と上側軟磁性体79a及び下側軟磁性体79bがプレート7の径内方向に隣接しているのではなく、プレート7の厚み方向に積層されて構成されている。このため、プレート7の前面7fにおいて、中央と周囲とでバランスが取れたループ状の磁場分布が得られ易い。
【0041】
図1に示すように、プレート7は、冷却媒体としての冷却液が流れる空洞リング状の冷却通路77を内蔵している。冷却媒体としての冷却液が冷却通路77に流れると、プレート7はその内部から冷却される。冷却通路77は、プレート7の前面7fに形成されるプラズマ500の直下または直下近傍の領域に配設されている。プラズマ500で加熱されるプレート7の部位の昇温を抑制するためである。具体的には、冷却通路77は、プレート7の中間部72のうち、非磁性体74aからなる内側部74においてこれの厚み方向の中間域に形成されている。このように冷却通路77はプレート7のうち非磁性体74aからなる内側部74に形成されており、永久磁石78を有する外側部75には形成されていないため、必要な磁場分布を形成する永久磁石78の必要容積を確保するのに有利となる。冷却通路77は永久磁石78の面78iに直接的に対面しているため、永久磁石78の面78iを効果的に冷却することができ、ひいては永久磁石78の過熱に伴う磁力低下が抑制される。
【0042】
本実施例では、超電導磁場発生装置1の対象物として機能する成膜処理用の対象物80がプレート7の前面7fに取り付けられている。対象物80はプレート7のうち中央部71から中間部72にかけて取り付けられている。なお、対象物80の外周部はプレート7の周縁部73には到達していない。
【0043】
図1から理解できるように、プレート7の背面7r(下面)では、超電導体3、下ヨーク42、周縁磁極6、プレート7の中間部72の永久磁石78がループ状の磁路を形成する。すなわち、中央磁極2を構成する超電導体3の磁極から発した磁束がプレート7の前面7f(上面)に出て、永久磁石78、周縁磁極6、下ヨーク42を透過し、超電導体3に戻るループ状の磁場分布510を形成する。
【0044】
本実施例はスパッタリング成膜装置に適用することができる。この場合には、上述したような磁場分布により、ターゲットなる対象物80の上面である表面付近にプラズマ500が集中する。スパッタリング成膜時には、放電により対象物80が加熱され、ひいてはプレート7が加熱される。プレート7の内部に形成されている冷却通路77を流れる冷却媒体としての冷却水により、プレート7を介して対象物80は間接的に冷却される。対象物80の昇温加熱は、プラズマ500が集中している場所(即ち、対象物80がスパッタされて消耗する場所)が最も激しい。このため図1に示すように冷却通路77はプレート7においてプラズマ発生位置またはこれの近傍の領域位置に形成されており、対象物80及びプレート7の過熱が抑制されている。
【0045】
本実施例によれば、周縁磁極6は図略の取付具を介してプレート7の背面側に固定されている。そして中央磁極2は磁場を発生した状態で、プレート7と周縁磁極6とを結合した結合磁極に取り付けられる構造を有する。超電導体3の最終取付位置では、超電導体3の上下対称面3xが、周縁磁極6よりもプレート7側に近く配設されている。超電導体3の上下対称面3xは、超電導体3の厚みを均等且つ対称に分割する仮想的な面をいう。
【0046】
以上説明した本実施例によれば、図2に示すように、プレート7の中央部71の厚みt1をプレート7の他の部位の厚みt2よりも薄肉化している。このため、超電導体3からの強い磁場をプレート7の前面7f側に発生させることができ、プレート7の前面7f側にプラズマ500を閉じ込めるのに有利となる。このため対象物80のサイズが大きくなっても、より強い磁場を発生することができる。
【0047】
また本実施例によれば、プレート7の中央部71のみを薄肉にし、中央部71の外周囲に存在する中間部72及び周縁部73を厚肉とする構造になっている。このようにプレートのうち超電導体3に対面する中央部71の厚みは薄く設定されているものの、当該中央部71の周囲の厚みは当該中央部71よりも厚く設定されているため、プレート7全体の強度が確保され、プレート7の圧力や熱による変形は抑制される。この結果、中央磁極2と周縁磁極6とが存在する空間WBと、プラズマ500が発生する磁場作用空間WAとの間で圧力差が生じるときであっても、プレート7の変形は抑制される。この結果、対象物80が大きくなってプレート7の径サイズが増加したとしても、プレート7の全体の強度が確保され易く、プレート7の変形等を抑制できる。
【0048】
本実施例によれば、中央磁極2の超電導体3の外周側に、起磁体となる永久磁石78がリング状に配置されているため、超電導体3から発生される磁束が周囲に飛散することが抑制され、磁場分布の中央と周囲とでバランスが良い強力な磁場分布をプレート7の前面7f側に形成できる。このようにバランスが良い強力な磁場分布を形成できるため、成膜装置に適用した場合において、成膜速度の増加、成膜時間の短縮、膜のダメージの低減を図り得る。
【0049】
加えて本実施例によれば、プレート7の中間部72を構成する強磁性体は、永久磁石78と軟磁性体79a,79bを備えており、永久磁石78と軟磁性体79a,79bは、プレート7の厚み方向に積層しているものの、プレート7の面方向において互いに隣設されていない。このように永久磁石78と軟磁性体79a,79bは、プレート7の面方向において互いに隣設されていないため、超電導体3から発生される強い磁場をプレート7の前面7f側に形成するのに有利となる。
【0050】
ところで、プレート7の冷却能に限界があるときには、対象物80に大電力を投入して成膜することができない。冷却能を増加させるべく冷却通路77の厚みを厚くすると、超電導体3と対象物80との距離が増加し、対象物80の表面の磁場が弱くなるおそれがある。この点本実施例によれば、プレート7自体に冷却通路77を形成しているため、プレート7の冷却能を良好に確保できる。故に、対象物80に大電力を投入して成膜することも可能となる。
【0051】
また本実施例によれば、図1に示すように、プレート7のうちプラズマ500が集中しない中央磁極2の中央部71に冷却通路77を設けず、プレート7のうち中央磁極2の外周側に位置する中間部72の上面側においてプラズマが集中する部位または当該部位の近傍の領域に、冷却通路77を形成している。その結果、プレート7のうち加熱され易い部分を効果的に冷却でき、プレート7の熱変形を効果的に抑制できる。このようにプレート7の熱変形を効果的に抑制できるため、前述したようにプレート7の中央部71を薄肉化することができ、超電導体3からの強い磁場をプレート7の前面7f(上面)側に発生させることができる。
【0052】
本実施例によれば、図1に示すように、磁場作用空間WAに最も近い構造物であるプレート7を構成する中間部72に、起磁体として機能する永久磁石78を組み込んで、周縁磁極6の一部(延長部)として利用している。このため、中央磁極2を構成する超電導体3から発せられる強力な磁場(磁束)を周縁磁極6で効果的に吸収することができる。故に、プレート7の中央と周囲とでバランスが取れた磁場分布が対象物80の表面にできる。その結果、本実施例に係る超電導磁場発生装置1をスパッタリング成膜装置に適用したときであっても、速い成膜速度、短い成膜時間が得られ、成膜された膜のダメージが低減される利点が得られる。
【0053】
超電導磁場発生装置1を立ち上げる際には、プレート7に周縁磁極6を固定した状態で、プレート7の中央部71の下側の窪み70の内に、着磁した中央磁極2(冷凍機40+超電導体3+真空断熱容器5)を下から上に向けて挿入することになる。
【0054】
なお本実施例では、プレート7を構成する中央部71、プレート7を構成する中間部72の内側部74は、非磁性体74aで形成されているが、これに限定されるものではなく、対象物80の表面の磁場分布形状を補正するためにこれらの部分に強磁性体(永久磁石または軟磁性体)を用いることにしても良い。また周縁磁極6は、中央磁極2の真空断熱容器5の外方に配置されているが、これに限らず、中央磁極2の外周側であれば、真空断熱容器5内または冷凍機40に固定されていても良い。
【実施例2】
【0055】
図3は実施例2を示す。本実施例は基本的には実施例1と同様の構成、作用効果を有する。本実施例に係る超電導磁場発生装置1では、プレート7の中間部72を構成する強磁性体として軟磁性体を用い、且つ、周縁磁極6として永久磁石61を用いている。以下、実施例1と異なる点を中心として説明を加える。プレート7は盤状をなしており、中央磁極2と周縁磁極6とが存在する空間WBと、プラズマ500が発生する磁場作用空間WAとを仕切る仕切部材として機能する。プレート7のうち超電導体3に対面する中央部71の厚みをt1とし、当該中央部71の外周側の厚みをt2とすると、t1はt2よりも厚みが薄く設定されている。ここでt2/t1=2〜50、2〜20、殊に3〜10に設定されている。
【0056】
本実施例においても、プレート7のうち超電導体3に対面する薄肉化された中央部71は、非磁性体で形成されている。これにより中央磁極2からの磁場をプレート7の前面7fに透過させ易くなっており、プレート7の上面側にプラズマ500を形成させるのに有利となる。
【0057】
図3に示すように、プレート7は、非磁性体で形成された中央部71の他に、当該中央部71の外周側に設けられたリング形状の中間部72と、中間部72の外周側に設けられた非磁性体から成るリング形状の周縁部73とを備えている。図3に示すように、プレート7の中間部72は、中央部71に近い内側部74と、周縁部73に近い外側部75とで形成されている。内側部74は中央部71と同様に非磁性体74aで形成されている。外側部75は強磁性体としての軟磁性体75cで形成されている。この軟磁性体75cは、バーメンジュール(Fe−Co−V)、電磁軟鉄(Fe)、珪素鋼板(Fe-Si)等の軟磁性体で形成されている。
【0058】
図3に示すように周縁磁極6は下ヨーク42に対して同軸的なリング形状をなしており、リング状の永久磁石61と、永久磁石61の下面に積層されたリング状の軟磁性体62とから構成されている。永久磁石61は、リング形状をなす一体物でも良いし、瓦状や板状等の複数の永久磁石片をリング状に並設して組みつけて形成しても良い。なお永久磁石61は上下方向に磁極を有する。具体的には本実施例では永久磁石61の上面の磁極(S極)は超電導体3の上面の磁極(N極)と逆の極とされており、かつ、永久磁石61の下面の磁極(N極)は超電導体3の下面の磁極(S極)と逆の極とされている。なお、S極及びN極は逆にしても良い。
【0059】
周縁磁極6は図略の取付具によりプレート7側に固定されている。超電導磁場発生装置1を立ち上げる際には、周縁磁極6が固定されているプレート7の中央部71の下側に形成されている窪み70の内に、着磁した中央磁極2(冷凍機40+超電導体3+真空断熱容器5)を下から上方に向けて挿入することになる。
【0060】
本実施例によれば、プレート7の中央部71の厚みt1をプレート7の他の部位の厚みt2よりも薄肉化している。このため、超電導体3からの強い磁場をプレート7の前面7f側に発生させることができ、プラズマ500を閉じ込めるのに有利となる。このため対象物80の径サイズが大きくなっても、より強い強磁場を発生することができる。
【0061】
またプレート7の中央部71のみを薄肉にし、中央部71の外周囲に存在する中間部72及び周縁部73を厚肉とする構造になっている。このようにプレート7のうち超電導体3に対面する中央部71の厚みは薄く設定されているものの、当該中央部71の周囲の厚みは当該中央部71よりも厚く設定されているため、プレート7全体の強度が確保され、プレート7の圧力や熱による変形は抑制される。この結果、対象物80が大きくなってもプレート7の中間部72及び周縁部73の厚みを変える必要がなく、プレート7の全体の強度が確保され易い。
【0062】
本実施例によれば、図3に示すように、中央磁極2の超電導体3の外周側に、周縁磁極6の永久磁石61がリング状に配置されているため、超電導体3から発生される磁束が周囲に飛散することが抑制され、磁場分布の中央と周囲とでバランスが良い強力な磁場分布をプレート7の前面7f側に形成できる。このようにバランスが良い強力な磁場分布を形成できるため、成膜装置に適用した場合において、成膜速度の増加、成膜時間の短縮、膜のダメージの低減を図り得る。
【0063】
更に本実施例によれば、次の効果が得られる。即ち、一般的に永久磁石は昇温すると、磁力が低下する傾向がある。使用の際には、プラズマ500の影響により対象物80と共にプレート7は昇温しがちである。この点について本実施例によれば、永久磁石61はプレート7自体に内蔵されておらず、プレート7の下側に配置されているので、超電導磁場発生装置1を、スパッタガン等として用いたときに起こる対象物80の温度上昇やプレート7の温度上昇に起因する永久磁石の磁力低下の問題を抑えることができる。
【0064】
また永久磁石は61はプレート7に内蔵されていないので、周縁磁極6を構成する永久磁石61の大きさや位置の変更が可能である。故に本実施例に係る超電導磁場発生装置1の用途に応じて磁場分布の変更が可能である。
【実施例3】
【0065】
図4は実施例3を示す。本実施例は基本的には実施例1と同様の構成、作用効果を有する。本実施例においても、プレート7のうち超電導体3に対面する中央部71の厚みをt1とし、当該中央部71の外周囲の部位の厚みをt2とすると、t1はt2よりも厚みが薄く設定されている。ここでt2/t1=2〜50、2〜20、殊に3〜10に設定されている。プレート7は、ターゲットとなる対象物80を保持するターゲットホルダであるバッキングプレートとして機能することができる。本実施例によれば、プレート7のうち超電導体3に対面する薄肉化された中央部71は、非磁性体で形成されている。これにより中央磁極2からの磁場をプレート7の前面7fに透過させ易くなっており、プレート7の前面7f側にプラズマ500を形成させるのに有利となる。
【0066】
図4に示すように、プレート7は、非磁性体で形成された中央部71の他に、当該中央部71の外周側に設けられたリング形状の中間部72と、中間部72の外周側に設けられた非磁性体から成るリング形状の周縁部73とを備えている。実施例2と異なる主な点は以下の通りである。
【0067】
図4に示すように、プレート7の中間部72の外側部75を構成する軟磁性体75cを、プレート7の径方向において、周縁磁極6を構成する永久磁石61の外周面と同一位置または内側に配置している。換言すれば、プレート7の中間部72を構成する軟磁性体75cの外周面の外径D4は、周縁磁極6を構成する永久磁石61の外周面の外径D5と同一または小さくなるように設定されている。このため、プレート7の前面7fにおいて、より狭い範囲(より小さ半径範囲内)に閉じた磁場分布を形成できる利点が得られる。したがって、プレート7の前面7f、つまり対象物80の表面に平行となる磁場の強度を強くできる。
【0068】
更に、プレート7の中間部72を構成する軟磁性体75cの外径D4が、周縁磁極6を構成する永久磁石61の外径D5よりも小さいと、閉じた磁場分布をさらに狭い範囲に形成できる。したがって、プレート7の前面7f、つまり対象物80の表面に平行となる磁場の強度を強くできる。故に、対象物80の外径が小さい場合であっても、対象物80が存在するところ(永久磁石の外径よりも内側の位置)にプラズマ500を集約させることがでてきる利点が得られる。
【実施例4】
【0069】
図5及び図6は実施例4を示す。本実施例は基本的には実施例1と同様の構成、作用効果を有する。本実施例はスパッタリング成膜処理を行うためのスパッタガンに適用している。本実施例においても、中央磁極2、周縁磁極6及びプレート7の構成は、実施例3と基本的には同一である。従ってプレート7は、非磁性体で形成された中央部71の他に、当該中央部71の外周側に設けられた軟磁性体72eで形成されたリング形状の中間部72と、中間部72の外周側に設けられた非磁性体から成るリング形状の周縁部73とを備えている。プレート7の中間部72は軟磁性体72eのみで形成されている。この軟磁性体72eは、バーメンジュール(Fe−Co−V)、電磁軟鉄(Fe)、珪素鋼板(Fe-Si)等で形成されている。
【0070】
図5に示すように、周縁磁極6は下ヨーク42に対して同軸的なリング形状をなしており、リング状の永久磁石61と、永久磁石61の下面に積層されたリング状の軟磁性体62とから構成されている。軟磁性体72eで形成された中間部72と永久磁石61との間にはリング形状の支持材120が介在している。周縁磁極6をプレート7に取り付けるとき、軟磁性体で形成された中間部72と永久磁石61とが衝突することを支持材120が抑制する。このためプレート7の薄肉部分などの変形が抑制される。
【0071】
本実施例によれば、プレート7のうち超電導体3に対面する中央部71の厚みは薄く設定されているものの、当該中央部71の周囲の厚みは当該中央部71よりも厚く設定されているため、プレート7全体の強度が確保され、プレート7の圧力や熱による変形は抑制される。この結果、中央磁極2と周縁磁極6とが存在する空間WBと、プラズマ500が発生する磁場作用空間WAとの間で圧力差が生じるときであっても、プレート7の熱変形は抑制される。この結果、対象物80が大きくなってプレート7の径サイズが増加したとしても、プレート7の全体の強度が確保され易く、プレート7の熱変形等を抑制できる。なお磁場作用空間WAは一般的には高真空雰囲気とされ、空間WBは大気圧雰囲気とされるため、空間WBと磁場作用空間WAとでは圧力差が発生し易い。
【0072】
本実施例によれば、支柱100及び下プレート101は、本実施例に係る超電導磁場発生装置1に設けられている。支柱100及び下プレート101はフランジ102を固定する部材である。下プレート101の上面に支柱100が設置されている。支柱100の上面にはリング形状のフランジ102が設けられている。フランジ102はスパッタガンをスパッタリング成膜装置に取り付けるための部材として機能できる。フランジ102は、スパッタ成膜時に後述するターゲット押さえ部材130がプラズマ中のイオンでスパッタされて不純物として薄膜に混入するのを防止するためのシールド102aを有する。
【0073】
図5に示すように、真空断熱容器5のうち超電導体3に対面する先端壁部とプレート7の下面との間には、リング状の第1絶縁スペーサ105が設けられている。フランジ102とプレート7との間には、リング状の第2絶縁スペーサ106が設けられている。プレート7の周縁部73は第2絶縁スペーサ106を介してフランジ102に気密的に宛われている。第1絶縁スペーサ105、第2絶縁スペーサ106は、プレート7及び周縁磁極6を中央磁極2から電気的に絶縁するための部材であり、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等の樹脂材料で形成されている。第2絶縁スペーサ106とフランジ102との間、第2絶縁スペーサ106とプレート7との間にはシール部材のOリング108が介在している。下プレート101の挿入孔を通した図略の取付具が支柱100に取り付けられることにより、プレート7の周縁部73は第2絶縁スペーサ106の下面106rに気密的に圧着されている。
【0074】
図5に示すように、下プレート101の取付孔103には、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等の樹脂材料で形成された筒形状のガイド107が嵌め込まれた状態で設けられている。ガイド107は、中央磁極2を案内させるためのガイド面108をもつ筒部109と、筒部109と一体的をなすように筒部109の外径方向に延設された取付片部110とを備えている。ガイド107は、中央磁極2を取り付ける際に中央磁極2を径方向位置を案内する位置決め用部材として機能できる。ターゲット押さえ部材130がプレート7の前面7fに設けられている。ターゲット押さえ部材130は、対象物80をプレート7に密着させて固定する部材である。上記した構成を有する本実施例によれば、プレート7及び周縁磁極6は、その他の部材から電気的に絶縁されている。
【0075】
周縁磁極6はプレート7側に固定されている。超電導磁場発生装置1を立ち上げる際には、周縁磁極6が固定されているプレート7の中央部71の下側の窪み70の内に、着磁した中央磁極2(冷凍機40+超電導体3+真空断熱容器5)を下から上方に向けて挿入することになる。図6はガイド107を利用して中央磁極2をプレート7に向けて挿入する過程を示す。図6における位置(a)は、中央磁極2の先端部に存在する超電導体3がガイド107の入口107kからガイド107内に少し入った位置を示す。図6における位置(b)は、中央磁極2の先端部に存在する超電導体3の上下対称面3xと永久磁石61の上下対称面61xとの位置が挿入方向(高さ方向)において一致する位置を示す。ここで、超電導体3の上下対称面3xは、超電導体3においてこれの厚みが上下対称となる仮想面をいう。また永久磁石61の上下対称面61xは、永久磁石61においてこれの厚みが上下対称となる仮想面をいう。更に、図6における位置(c)は、中央磁極2の先端部に存在する超電導体3が最終的に取り付けられる最終取付位置を示す。本実施例に係る超電導磁場発生装置1によれば、図6に示すように、中央磁極2の超電導体3の最終取付位置は、中央磁極2の超電導体3の上下対称面3xの位置が、周縁磁極6を構成する永久磁石61の上下対称面61xの位置よりも高くなるように設定されている。
【0076】
図7は、中央磁極2をガイド107内に挿入することにより、中央磁極2の超電導体3をプレート7の中央部71に近づけたときにおいて、中央磁極2に働く力を磁場解析した結果を示すグラフである。図7において特性線Fは中央磁極2に働く力を示す。図7の横軸は距離zを示す。距離zは、中央磁極2の先端部に存在する超電導体3の先端面と永久磁石61の下面との間の距離を意味する。図7の縦軸は中央磁極2に働く力(吸引力及び反発力)を示す。図7の縦軸において、0よりも上側は、中央磁極2に吸引力が働くことを示す。0よりも下側は、中央磁極2に反発力が働くことを示す。
【0077】
図7の特性線Fに示すように、上下方向においてプレート7よりも遠方に中央磁極2の超電導体3が存在するときには、つまり距離zが大きいときには、弱い反発力F1が中央磁極2に働く領域FAが存在する。このように中央磁極2を結合磁極に取り付ける際に、プレート7に対して中央磁極2を遠ざける反発力を発揮する領域FAをガイド107が内包するように設定されている。これにより中央磁極2を結合磁極に取り付ける際に、中央磁極2がガイド107に強く衝突することが避けられる。
【0078】
更に、中央磁極2の超電導体3がガイド107内に少し入った位置(a)では、中央磁極2に働く力はほぼゼロとなり、吸引力も反発力も中央磁極2に作用しない。ガイド107は当該位置(a)も内包している。
【0079】
中央磁極2をガイド107内に更に進入させて中央磁極2の超電導体3をプレート7の中央部71に近づけると、中央磁極2に次第に吸引力F2が働く領域FBが存在する。そして、超電導体3の上下対称面3xの位置と永久磁石61の上下対称面61xの位置とが一致する位置(b)付近においては、図7に示すように、中央磁極2に働く吸引力及び反発力は再びゼロ付近またはゼロとなる。このように中央磁極2に働く吸引力及び反発力がゼロ付近またはゼロになる位置(b)は、中央磁極2の超電導体3の最終取付位置(c)の直前である。この結果、中央磁極2の超電導体3の最終取付位置(c)の直前において、中央磁極2の取り付け操作が容易となる。
【0080】
なお、上記したように中央磁極2に働く吸引力及び反発力がゼロ付近またはゼロになる位置(b)は、超電導体3や永久磁石61に取り付けるヨーク材の材質・形犬・場所等により多少変わるものの、磁場の発生源である超電導体3の上下対称面3xと永久磁石61の上下対称面61xとが一致する位置が一つの目安となる。磁場の発生源である超電導体3と永久磁石61の形状や磁気的特性が上下対称でない場合には、両者間に働く力がゼロとなる位置を両者の高さが一致した位置とみなす。
【0081】
更に、上記した位置(b)よりも中央磁極2をガイド107内に更に進入させて超電導体3をプレート7の中央部71に接近させると、中央磁極2をプレート7の中央部71から遠ざける反発力F3(中央磁極2を下向きに付勢する力)が再び中央磁極2に働くようになる。このように中央磁極2をプレート7の中央部71に接近させるときには、中央磁極2に反発力F3が働くため、中央磁極2の挿入操作に対してブレーキが作用することになる。従って、中央磁極2の超電導体3をこれの最終取付位置(c)に取り付ける際に、中央磁極2がプレート7の肉薄な中央部71に衝突することが抑制され、プレート7の肉薄な中央部71及び中央磁極2の破損が抑えられる。
【0082】
換言すれば、本実施例によれば、中央磁極2と周縁磁極6との間に働く力が反発力から吸引力に変わる位置(a)よりも下方に向けて、ガイド107の下端を延ばしている。このため、中央磁極2がプレート7の肉薄な中央部71に急激に引き付けられることが抑制され、中央磁極2を最終取付位置(c)に安全に移動させることができる。
【0083】
上記したように本実施例によれば、中央磁極2の超電導体3がこれの最終取付位置(c)に接近するとき、中央磁極2がプレート7から遠ざかる方向に反発力を中央磁極2に発揮させることにより中央磁極2にブレーキをかける位置をガイド107が内包している。
【実施例5】
【0084】
図8は実施例5を示す。本実施例は、超電導磁場発生装置1をマグネトロンスパッタリング成膜装置200に組み付けた適用例を示す。超電導磁場発生装置1は中央磁極2を有する。中央磁極2は、超電導遷移温度以下で磁場を捕捉するとこにより外部に磁場を発する超電導体3と、超電導体3を冷却する冷却装置4と、超電導体3を収容する真空断熱容器5とを有する。更に、超電導体3の周囲に配置された強磁性体としての軟磁性体6aで形成された周縁磁極6が設けられている。中央磁極2と周縁磁極6とが存在する空間WBと磁場作用空間WAとを仕切るプレート7が設けられている。冷却装置4は真空断熱容器5の下部に設けられており、冷却装置4の下部に昇降部300が設けられている。昇降部300は台車301に載せられている。昇降部300は、超電導磁場発生装置1を搭載しており、超電導体3を収容する超電導磁場発生装置1を矢印Y1,Y2方向に昇降させるものであり、伸縮可能なパンタグラフ構造をもつジャッキで構成されている。
【0085】
図8に示すように、スパッタリング成膜装置200は、基台201と、基台201の上側に設置され図略のポンプにより減圧状態(例えば10-4〜10-5Torr程度)に維持される成膜室202をもつ減圧チャンバ203と、磁場の作用で対象物80の表面の近傍の領域にプラズマ500を集中させるスパッタガンとなる超電導磁場発生装置1を具備する。減圧チャンバ203は、成膜原料を含むターゲットなる対象物80を保持するように成膜室202の下部に設けられた対象物80を保持するターゲットホルダとして機能するプレート7と、成膜対象物210を保持するように成膜室202の上部に設けられた成膜対象物ホルダ211とを有する。
【0086】
上記した超電導磁場発生装置1をスパッタリング成膜装置200に組み付けるときには、図8に示すように、超電導バルク磁石とされた超電導体3をもつ超電導磁場発生装置1を、減圧チャンバ203の挿入空間の下方に配置する。次に、超電導磁場発生装置1の昇降部300を上昇作動させて真空断熱容器5を超電導体3と共に矢印Y1方向に上昇させ、図9に示すように真空断熱容器5の先端壁をプレート7の中央部71の窪み70に挿入し、中央磁極2の先端をターゲットホルダとしてのプレート7に接近または接触させる。このようにすれば、超電導体3で形成された超電導バルク磁石の磁気回路が成膜室202のうち対象物80の付近に形成される。
【0087】
成膜時には、先ず、図略の真空排気装置により、成膜室202を不純物ガスが残留しないように高真空(例えば10-6Torr台)に排気する。次に、真空排気をしながら図略のガス導入ポートからスパッタガスを導入し、例えば数ミリTorrのスパッタガスの雰囲気にする。この状態で、対象物80と成膜対象物210との間に所定の電圧(例えば数KV)を印加する。この場合、一般的には、対象物80をマイナスとし、成膜対象物210をプラスとなるように電圧を印加させる。これにより成膜室202内においてプラズマ放電を発生させる。プラズマ500中の電子は磁場によって運動をしながら、スパッタガス分子(一般的にはアルゴンであるが、これに限定されるものではない)をイオン化する。このプラズマ500状のスパッタガスイオンは、対象物80の表面において集束されるため、加速されて対象物80の表面に衝突する。これにより対象物80の表面より対象物80の構成物質をスパッタさせて、成膜対象物210の表面に堆積させ、大きな成膜速度で薄膜を成膜対象物に形成することができる。この場合、超電導体32の強磁場によりプラズマ500を対象物80付近に集中させることができる利点が得られる。このため成膜室202において高真空での放電が可能となり、成膜速度の向上を図ることができ、薄膜中の不純物が低減し、薄膜の成膜品質の向上、生産性の向上を図ることができる。なお対象物80をマイナスとし、成膜対象物210をプラスとなるように電圧を印加させるとしているが、これに限らず、対象物80と成膜対象物210との間に交流電圧を印加することにしても良い。
【0088】
その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は超電導体による磁場発生源を有する分野に利用することができる。例えば、スパッタリング成膜装置、エッチング装置に限らず、例えば、超電導磁場発生装置は磁気分離装置、磁場プレス機、核磁気共鳴装置、発電機、モータ等の強磁場利用装置にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施例1に係り、超電導体をもつ超電導磁場発生装置の断面図である。
【図2】実施例1に係り、プレートの断面図である。
【図3】実施例2に係り、超電導体をもつ超電導磁場発生装置の断面図である。
【図4】実施例3に係り、超電導体をもつ超電導磁場発生装置の断面図である。
【図5】実施例4に係り、超電導体をもつ超電導磁場発生装置をスパッタガンに適用した断面図である。
【図6】実施例4に係り、超電導体をもつ超電導磁場発生装置をスパッタガンに適用した断面図である。
【図7】実施例4に係り、超電導体をもつ中央磁極を取り付けるときにおいて中央磁極に働く力を示すグラフである。
【図8】実施例5に係り、超電導体をもつ中央磁極を有する超電導磁場発生装置をスパッタリング成膜装置に組み付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0091】
図中、1は超電導磁場発生装置、2は中央磁極、3は超電導体、3xは上下対称面、4は冷却装置、5は真空断熱容器、6は周縁磁極、61は永久磁石、62は軟磁性体、7はプレート、70は窪み、71は中央部、72は中間部、73は周縁部、74は内側部、75は外側部、77は冷却通路、78は永久磁石、80は対象物、200はスパッタリング成膜装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導遷移温度以下で外部に磁場を発する超電導体と、前記超電導体を冷却する冷却装置と、前記超電導体を収容する断熱容器とを有する中央磁極と、
前記超電導体の周囲に配置された強磁性体で形成された周縁磁極と、
前記中央磁極と前記周縁磁極とが存在する空間と磁場作用空間とを仕切るプレートとを具備しており、
前記プレートのうち前記中央磁極に対面する中央部は、前記中央磁極の先端部に対面する部分に窪みを有すると共に、前記中央部の厚みは前記中央部の周囲の厚みよりも薄く設定されていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項2】
請求項1において、前記プレートのうち前記超電導体に対面する前記中央部の厚みをt1とし、前記プレートのうち当該中央部の周囲の厚みをt2とすると、t2/t1=1.3〜200に設定されていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記プレートの中央部は非磁性体で形成されていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記プレートは、前記超電導体に対面する中央部と、前記中央部の外周側に配置されている中間部と、前記中間部の外周側に配置されている周縁部とを備えていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項5】
請求項4において、前記プレートの周縁部は非磁性体で形成されていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項6】
請求項4または5において、前記プレートの中間部は強磁性体を備えていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項7】
請求項6において、前記プレートの前記中間部を構成する強磁性体は、永久磁石と軟磁性体とで形成されており、前記永久磁石と前記軟磁性体は、プレートの面方向において互いに隣設されていないことを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項8】
請求項6において、前記プレートの前記中間部は、非磁性体で形成された内側部と、強磁性体で形成された外側部とを備えており、
前記プレートの前記中間部を構成する外側部は、永久磁石と、前記永久磁石の厚み方向に積層された軟磁性体とを備えていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項9】
請求項4において、前記プレートの前記中間部は軟磁性体で形成されており、前記軟磁性体は、前記プレートの径方向において、前記周縁磁極を構成する前記強磁性体の外周面と同一または内側に配設されていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項において、前記周縁磁極は前記プレートに固定され、前記中央磁極は磁場を発生した状態で、前記プレートと前記周縁磁極とを結合した結合磁極に取り付ける構造を有することを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項11】
請求項10において、前記中央磁極の前記超電導体の上下対称面が、前記周縁磁極の上下対称面より前記プレート側に近く配設されていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において、前記中央磁極の最終取付位置において、前記中央磁極に働く力がゼロまたは前記プレートに近づく方向に対して反発力を発揮するように前記中央磁極が配設されていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれか一項において、前記プレートと前記周縁磁極とを結合した結合磁極には、前記中央磁極の取付位置を規定するガイドが具備されており、
前記ガイドは、前記中央磁極を前記結合磁極に取り付ける際に、前記プレートに対して前記中央磁極を遠ざける反発力を発揮する位置、または、前記プレートに対して前記中央磁極を反発及び吸引させない位置を内包するように設定されていることを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項14】
請求項1〜12のうちのいずれか一項において、前記プレートは冷却媒体が流れる冷却通路を有することを特徴とする超電導磁場発生装置。
【請求項15】
請求項14において、前記冷却通路は、前記プレートの前面に形成されるプラズマの直下または直下近傍の領域に配設されていることを特徴とするスパッタガン。
【請求項16】
超電導遷移温度以下で外部に磁場を発する超電導体と、前記超電導体を冷却する冷却装置と、前記超電導体を収容する断熱容器とを有する中央磁極と、
前記超電導体の周囲に配置された強磁性体で形成された周縁磁極と、
前記中央磁極と前記周縁磁極とが存在する空間と磁場作用空間とを仕切るプレートとを具備する超電導磁場発生装置を有するスパッタガンにおいて、
前記超電導磁場発生装置の前記プレートは、ターゲットを固定するバッキングプレートであり、
前記超電導磁場発生は請求項1〜15のうちのいずれか一項に記載の超電導磁場発生装置で行われることを特徴とすることを特徴とするスパッタガン。
【請求項17】
成膜原料を含むターゲットを保持するターゲットホルダと成膜対象物を保持する成膜対象物ホルダとを有する減圧チャンバと、
前記ターゲットの表面の近傍の領域にプラズマを集中させる磁場を発生させるスパッタガンとを具備しており、
前記ターゲットから放出される成膜原料を前記成膜対象物の表面に被着させて前記成膜対象物に薄膜を形成するスパッタリング成膜装置において、
前記スパッタガンは、請求項1〜請求項15のうちのいずれか一項からなる超電導磁場発生装置を有することを特徴とするスパッタリング成膜装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−124760(P2006−124760A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313049(P2004−313049)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】