説明

超電導線材の製造装置および方法

【課題】安定化層線材と酸化物超電導層線材の種類によらず、これらを確実に接合して高品質の超電導線材を製造することが可能であり、かつ生産性および作業性の低下も生じない製造装置および方法の提供。
【解決手段】安定化層線材1と酸化物超電導層線材2とをハンダを介して接合することによってテープ状の超電導線材7を製造する装置であって、安定化層線材1および酸化物超電導層線材2をハンダ層を介して重ね合わせた被複合化材6をハンダの溶融温度以上に加熱する予熱手段3と、予熱手段3を経た被複合化材6を加圧して安定化層線材1と酸化物超電導層線材2とを接合させて超電導線材7を得る加圧手段4とを備えた製造装置。加圧手段4は、被複合化材6の移動方向に対し、その位置を調整可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵(SMES)、変圧器、モーター、発電機などへの適用が可能な超電導線材を製造する装置および方法に関し、詳しくは、イットリウム系酸化物超電導体等の酸化物超電導体を用いた酸化物超電導層線材と、安定化層線材とを、ハンダを介して接合してテープ状の超電導線材を製造する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イットリウム系酸化物超電導体等の酸化物超電導体を用いた超電導線材は、テープ状の金属基材の上に、酸化物超電導体の薄膜をコーティングすることによって作製される。
超電導体にあっては、臨界温度と臨界電流と臨界磁界の3つのパラメータで規定される臨界条件の範囲内において超電導状態が維持されるが、超電導体の使用条件によっては、超電導体の一部が常電導状態となって発熱し、超電導体の全体が常電導状態に転移するクエンチ現象を引き起こすおそれがある。
そこで、クエンチ現象を阻止するため、超電導体に良導電性の金属製の安定化層を複合して設け、通電中に超電導体の一部が常電導状態になった場合に、電流を安定化層に流すことができるような構成を採用し、超電導状態の安定化を図ることがなされている。
【0003】
安定化層を形成する装置としては、Agからなる安定化層をスパッタリングあるいは蒸着などの成膜法により形成する装置(例えば特許文献1参照)などがあるが、超電導体の特性によっては厚い安定化層が必要となるため、近年では、テープ状の安定化層線材を超電導層線材に接合することが検討されている。
安定化層線材を超電導層線材に接合する装置としては、超電導層線材と安定化層線材とを溶融ハンダに浸漬させてハンダにより接合する装置(特許文献2参照)、超電導層線材と安定化層線材とをハンダを介して重ね合わせて加熱・加圧ロールに通すことによって、超電導層線材と安定化層線材とを接合する装置(特許文献3参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−236652号公報
【特許文献2】特開2008−60074号公報
【特許文献3】特開2009−48987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の装置などのように、溶融ハンダに浸漬して形成したハンダ層を介して重ね合わせた複合線材を形成する技術では、超電導層線材と安定化層線材との接合が不十分になる場合があった。また、複合された線材全体がハンダに覆われるため、線材の幅や厚みが不均一になるおそれがあった。
また、特許文献3に記載の装置では、線材を加熱・加圧ロールに通すことによって、超電導層線材と安定化層線材とを密着させるとともにハンダを凝固させるが、線材の熱的な特性によっては、ハンダ凝固のタイミングが不適当となり、超電導層線材と安定化層線材との接合が不十分になるおそれがあった。
この問題は、線材の送り速度を制限したり、加熱、加圧等の条件設定の変更によってハンダ凝固のタイミングを調整すれば解決できることがあるが、その場合には生産性が低下したり、作業に手間がかかるなどの問題が生じていた。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、安定化層線材と酸化物超電導層線材の種類によらず、これらを確実に接合して高品質の超電導線材を製造することが可能であり、かつ生産性および作業性の低下も生じない製造装置および方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、安定化層線材と酸化物超電導層線材とをハンダを介して接合することによってテープ状の超電導線材を製造する装置であって、前記安定化層線材を送り出す第1送出手段と、前記酸化物超電導層線材を送り出す第2送出手段と、前記安定化層線材および酸化物超電導層線材をハンダ層を介して重ね合わせた被複合化材を前記ハンダの溶融温度以上に加熱する予熱手段と、前記予熱手段を経た被複合化材を加圧して前記安定化層線材と前記酸化物超電導層線材とを接合させて前記超電導線材を得る加圧手段と、を少なくとも備え、前記加圧手段が、前記被複合化材の移動方向に対し、その位置を調整可能である超電導線材の製造装置である。
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1において、前記加圧手段が、その表面温度が前記ハンダ溶融温度より低い温度となるものである超電導線材の製造装置である。
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記加圧手段が、少なくとも表面が軟質材で構成されている超電導線材の製造装置である。
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のうちいずれか1項において、前記加圧手段の下流側に、前記超電導線材の移動方向を厚さ方向にずらせる方向変更手段が設けられている超電導線材の製造装置である。
【0008】
本発明の請求項5に記載の超電導線材の製造方法は、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の超電導線材の製造装置を用いて超電導線材を製造する方法であって、前記被複合化材を、前記予熱手段に導入して前記ハンダの溶融温度以上に加熱し、前記予熱手段を経た被複合化材を、前記加圧手段によって加圧して前記安定化層線材と前記酸化物超電導層線材とを接合させて前記超電導線材とするにあたって、前記加圧手段の位置を、前記ハンダが凝固する前に被複合化材を前記加圧手段に導入し、加圧下で前記ハンダを凝固させることができる位置とする超電導線材の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加圧手段が、被複合化材の移動方向に対し、その位置を調整可能であるので、線材の熱的特性に応じて加圧手段の位置を最適化することによって、好適な条件で線材を接合できる。
例えば、ハンダが凝固する前に被複合化材を加圧手段に導入し、加圧下でハンダを凝固させることができる条件で線材を接合できる。
従って、線材の種類によらず、安定化層線材と酸化物超電導層線材とが確実に接合された超電導線材が得られる。
また、加圧手段の位置調整によって線材の接合の際の条件を最適化できるため、ハンダ凝固のタイミング調整を目的として線材の送り速度を制限する必要はなく、生産性の低下は生じない。
さらには、予熱手段の温度や加圧手段の圧力等を変更する必要もないことから、容易な操作で短時間のうちに装置の設定変更が可能であり、作業性は良好である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の超電導線材の製造装置の一実施形態の構成図である。
【図2】図1に示す製造装置の要部を示す図である。
【図3】試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の超電導線材の製造装置の一実施形態の構成図である。図2は、図1に示す製造装置の要部を示す図である。
図1に示すように、この製造装置10は、安定化層線材1と酸化物超電導層線材2とをハンダを介して接合することによってこれらを複合化し、テープ状の超電導線材7を得る装置である。
製造装置10は、安定化層線材1を送り出す第1送出手段11と、酸化物超電導層線材2を送り出す第2送出手段12と、被複合化材6を加熱する予熱炉3(加熱炉)(予熱手段)と、被複合化材6を加圧して超電導線材7とする加圧ロール4(加圧手段)と、超電導線材7の移動方向を変更する方向変更ロール5(方向変更手段)とを備えている。
【0012】
安定化層線材1は、銅、Cu−Ni合金、Ni−Cr合金、ニッケル、ステンレス鋼等の金属からなるテープ状の基材を用いることができる。厚さは50μm〜200μmが好適である。
安定化層線材1の一方の面には、ハンダ層1a(例えば融点230℃)を、メッキ等により例えば2μm〜10μm程度の厚さに形成するのが好ましい。
ハンダ層1aを構成するハンダとしては、Sn系のもの(Sn−Cu系、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系など)が好適である。
第1送出手段11は、例えば安定化層線材1を繰り出し可能なローラである。
【0013】
酸化物超電導層線材2は、金属からなるテープ状の基材の上に、酸化物超電導体の薄膜が形成され、その上に、銀からなる安定化層が設けられた構造が好ましい。
基材の構成材料は、ニッケル合金(ハステロイなど)、ステンレス鋼、銅合金などが好ましい。
酸化物超電導体としては、YBaCu7−x、YBaCu、YBaCu、(Bi,Pb)CaSrCu、(Bi,Pb)CaSrCu、TlBaCaCu、TlBaCaCu、TlBaCaCuなどに代表される臨界温度の高い酸化物超電導体が好適である。
酸化物超電導体の薄膜は、パルスレーザ蒸着法(PLD法)等により形成することができる。
【0014】
基材と酸化物超電導体薄膜との間には、中間層を設けてもよい。
中間層は、酸化物超電導体薄膜の結晶配向性を制御するものである。中間層の好ましい材質としては、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物が例示できる。中間層は、単層でもよいし、複数層でもよい。例えば、GdZrからなる第1の中間層と、CeOからなる第2の中間層(キャップ層)とを形成することができる。
中間層の成膜法としては、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)、パルスレーザ蒸着法(PLD法)等が採用できる。
第2送出手段12は、例えば酸化物超電導層線材2を繰り出し可能なローラである。
【0015】
予熱炉3は、被複合化材6を前記ハンダの溶融温度(融点)以上に加熱できるように構成されている。図1および図2における符号3aは予熱炉3の入口であり、符号3bは予熱炉3の出口である。
予熱炉3は、被複合化材6を前記ハンダの溶融温度より30℃以上高温にできるものが好ましい。
【0016】
図2に示すように、加圧ロール4、4は、一対が設けられ、これらの間で被複合化材6を厚さ方向に押圧可能である。加圧ロール4、4が被複合化材6に加える圧力は100MPa以下とすることができる。
加圧ロール4、4は、被複合化材6の移動方向に対し、その位置(以下、移動方向位置という)を調整可能とされている。図示例では、加圧ロール4、4は所定範囲内で左右に移動でき、この範囲内で任意の位置に設置できる。
【0017】
加圧ロール4、4の位置決め構造は、特に限定されないが、例えば、図2に示すように、加圧ロール4、4の軸部4aを回転可能に支持する軸支フレーム9を備えた構造が可能である。
軸支フレーム9は被複合化材6の移動方向(図2における左右方向)に延在しており、この方向の任意の位置で軸部4aを支持することができる。
【0018】
加圧ロール4、4は、その表面温度を前記ハンダの溶融温度より低く設定できるものが好ましい。これによって、接触により被複合化材6を前記ハンダの溶融温度より低い温度に冷却できる。
加圧ロール4は、金属などの硬質材で構成してもよいが、少なくとも表面がシリコーンゴム等の樹脂などの軟質材からなる構成が望ましい。軟質材の使用によって、線材1、2に損傷が生じにくくなる。
【0019】
加圧ロール4、4は、予熱炉3の下流側(前記移動方向の下流側)に設置することができる。
図2に示すように、予熱炉3の出口3bから、加圧ロール4、4が被複合化材6を加圧する位置(加圧位置8)までの距離L1は、ハンダ層1aを構成するハンダの温度が、加圧位置8またはその近傍において溶融温度より低い温度にまで低下するように設定することができる。
【0020】
方向変更ロール5は、加圧ロール4、4の下流側に設けられて超電導線材7の移動方向をその厚さ方向にずらせるものである。
図1に示す例では、方向変更ロール5によって超電導線材7の移動方向は下方にずらされ、加圧ロール4、4から方向変更ロール5までの間で、超電導線材7は、水平方向に移動する被複合化材6とは異なり、斜め下方に移動する。
これによって、加圧位置8を通過した後に、超電導線材7が加圧ロール4から直ちに離れるのではなく、所定の長さ領域で加圧ロール4(図示例では2つの加圧ロール4のうち下方のもの)で接するため、ハンダの凝固が遅れた場合でも線材1、2を確実に接合させることができる。
方向変更ロール5は、超電導線材7を冷却する機能も有する。
なお、本発明の製造装置は、方向変更ロールがない構成も可能である。
【0021】
次に、製造装置10を用いて超電導線材7を製造する方法の一例を説明する。
加圧ロール4、4の位置は、線材1、2の特性に応じて、ハンダ層1aを構成するハンダの温度が加圧位置8またはその近傍において溶融温度より低い温度にまで低下するように予め設定される。
【0022】
安定化層線材1のハンダ層1aの面と、酸化物超電導層線材2の銀安定化層の面とを向かい合わせにして重ね合わせた状態として、これら線材1、2を入口3aから予熱炉3内に導入し、ハンダ溶融温度以上の温度(例えば250℃以上)に加熱した。
【0023】
この被複合化材6を予熱炉3の出口3bから導出し、ハンダが凝固する前に一対の加圧ロール4、4間(加圧位置8)に導入して、加圧するとともにハンダ溶融温度より低い温度(例えば加圧ロール4表面で160〜220℃)に冷却することができる。
これによって、加圧下でハンダを凝固させることができるため、安定化層線材1と酸化物超電導層線材2とが確実に接合された超電導線材7を効率よく連続生産することが可能である。
【0024】
安定化層線材1および酸化物超電導層線材2の熱的な特性、例えば熱容量、熱伝導率は、厚さや材質により変化する。特に、安定化層線材1の基材の厚さは熱的特性に及ぼす影響が大きい。
このため、線材1、2の熱的特性によっては、ハンダの凝固が早まりまたは遅れることが考えられるが、その場合には、加圧ロール4、4の移動方向位置を調整することで、安定化層線材1と酸化物超電導層線材2との接合が不十分になるのを防ぐことができる。
【0025】
例えば、熱容量が小さい線材1、2は、予熱炉3を出た後の温度低下が速いが、この場合には加圧ロール4、4を予熱炉3に比較的近い位置(図2に符号4Aで示す位置)に配置する。
これによって、ハンダが凝固する前に被複合化材6を加圧ロール4、4に導入し、加圧下でハンダを凝固させることができる。
一方、熱容量が大きい線材1、2は、予熱炉3を出た後の温度低下が遅いが、この場合には加圧ロール4、4を予熱炉3から比較的離れた位置(図2に符号4Bで示す位置)に配置する。
これによって、ハンダの温度が凝固点に近い温度まで低下してから被複合化材6を加圧ロール4、4に導入し、加圧下でハンダを凝固させることができる。
【0026】
このように、製造装置10では、加圧ロール4、4の位置を調整可能であるため、線材1、2の熱的特性に応じて加圧ロール4、4の位置を最適化することによって、好適な条件で線材1、2を接合できる。
このため、ハンダ凝固のタイミング調整を目的として線材1、2の送り速度を制限する必要はなく、生産性の低下は生じない。
また、加圧ロール4、4の位置調整によって、線材1、2の接合の際の条件を最適化できるため、予熱炉3の温度や加圧ロール4、4の圧力等を変更する必要がないことから、容易な操作で短時間のうちに装置の設定変更が可能であり、作業性は良好である。
以上より、製造装置10では、線材1、2の種類によらず、線材1、2を確実に接合して高品質の超電導線材7を製造することが可能であり、しかも生産性および作業性の低下が生じることはない。
【実施例】
【0027】
(実施例1〜3)
厚さ0.1mmのハステロイC276からなる基材上に、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)により厚さ1μmのGdZrからなる中間層を成膜し、その上にパルスレーザ蒸着法(PLD法)により厚さ0.5μmのCeOからなるキャップ層を形成し、その上にPLD法によりイットリウム系酸化物超電導体(YBaCu7−x)からなる厚さ2μmの酸化物超電導薄膜を形成し、その上に、銀からなる厚さ7μmの銀安定化層を形成して酸化物超電導層線材2を得た。酸化物超電導層線材2の幅は5mmとし、長さは1mとした。
【0028】
厚さ0.1mmの銅からなるテープ状の基材の一方の面にメッキにより厚さ2μmのSn系ハンダ層1aを形成した。
安定化層線材1の幅は5mmとし、長さは1mとした。
【0029】
図1および図2に示す製造装置10を用いて、次のようにして超電導線材7を製造した。
安定化層線材1のハンダ層1aの面と、酸化物超電導層線材2の銀安定化層の面とを向かい合わせにして重ね合わせた状態として入口3aから予熱炉3内に導入した。
予熱炉3内の温度は、ハンダの溶融温度プラス30℃に設定した。
この被複合化材6を予熱炉3の出口3bから導出し、加圧ロール4、4によって加圧するとともにハンダ溶融温度より低い温度に冷却した。加圧ロール4、4の表面温度はハンダの溶融温度マイナス40℃に設定した。
これによって、安定化層線材1と酸化物超電導層線材2とが接合された超電導線材7を得た。
線材1、2の送り速度は、25m/h(実施例1)、50m/h(実施例2)、または100m/h(実施例3)とした。
【0030】
実施例1〜3で得られた超電導線材7について、線材1、2が互いに接合された部分の幅(接合幅)を測定し、全幅に対する割合を算出した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1より、線材1、2の送り速度によって接合幅が変化することがわかる。
【0033】
(実施例4〜6)
厚さ0.1mm(実施例4)、厚さ0.3mm(実施例5)、または厚さ0.5mm(実施例6)の銅からなるテープ状基材の一方の面にメッキにより厚さ2μmのSn系ハンダ層1aを形成した安定化層線材1を用意した。
酸化物超電導層線材2は実施例1と同様のものを用いた。線材1、2の送り速度は100m/hとした。
その他の試験条件は実施例1と同様として、超電導線材7を製造した。
予熱炉3の出口3bから加圧ロール4、4の加圧位置8までの距離L1(図2参照)を0〜15cmの範囲で変化させたときの線材1、2の接合幅を測定し、全幅に対する割合を算出した。結果を図3に示す。
【0034】
図3より、比較的厚い基材を用いた安定化層線材1を使用する場合には、距離L1が短すぎる場合、長すぎる場合のいずれも接合幅は狭くなるが、距離L1を最適な値に設定することで接合幅は極大となることがわかる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・安定化層線材、1a・・・ハンダ層、2・・・酸化物超電導層線材、3・・・予熱炉(予熱手段)、4・・・加圧ロール(加圧手段)、5・・・方向変更ロール(方向変更手段)、6・・・被複合化材、7・・・超電導線材、10・・・製造装置、11・・・第1送出手段、12・・・第2送出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化層線材と酸化物超電導層線材とをハンダを介して接合することによってテープ状の超電導線材を製造する装置であって、
前記安定化層線材を送り出す第1送出手段と、
前記酸化物超電導層線材を送り出す第2送出手段と、
前記安定化層線材および酸化物超電導層線材をハンダ層を介して重ね合わせた被複合化材を前記ハンダの溶融温度以上に加熱する予熱手段と、
前記予熱手段を経た被複合化材を加圧して前記安定化層線材と前記酸化物超電導層線材とを接合させて前記超電導線材を得る加圧手段と、を少なくとも備え、
前記加圧手段は、前記被複合化材の移動方向に対し、その位置を調整可能であることを特徴とする超電導線材の製造装置。
【請求項2】
前記加圧手段は、その表面温度が前記ハンダ溶融温度より低い温度となるものであることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の製造装置。
【請求項3】
前記加圧手段は、少なくとも表面が軟質材で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の超電導線材の製造装置。
【請求項4】
前記加圧手段の下流側に、前記超電導線材の移動方向をその厚さ方向にずらせる方向変更手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の超電導線材の製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の超電導線材の製造装置を用いて超電導線材を製造する方法であって、
前記被複合化材を、前記予熱手段に導入して前記ハンダの溶融温度以上に加熱し、
前記予熱手段を経た被複合化材を、前記加圧手段によって加圧して前記安定化層線材と前記酸化物超電導層線材とを接合させて前記超電導線材とするにあたって、
前記加圧手段の位置を、前記ハンダが凝固する前に被複合化材を前記加圧手段に導入し、加圧下で前記ハンダを凝固させることができる位置とすることを特徴とする超電導線材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−14404(P2011−14404A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158014(P2009−158014)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】