説明

超音波センサー及び超音波センサーの製造方法

【課題】ダイアフラムの共振周波数を容易に所望の値に設定することができると共に、製造工程における不具合を防止することができ、さらに開口部が形成された基部の表面を平滑にすることができる超音波センサー及び超音波センサーの製造方法を提供する。
【解決手段】開口部11aが形成された基部11と、基部11に設けられ開口部11aを閉塞する振動板2と、振動板2に設けられた圧電体3と、を備え、基部11及び振動板2の圧電体3が設けられた側と反対側が保護機能膜6によって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波センサー及び超音波センサーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイアフラム型の超音波センサーが知られている。従来の超音波センサーは、ダイアフラムの一方の面側に2つの電極で挟んだPZTセラミックスの薄膜層を有し、これらの電極から出力される電気信号を用いて超音波を検出する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1ではシリコン基板を強アルカリ性の液体とピロカテコールと水の混合液による異方性エッチングを行うことにより、0.7mm角のダイアフラム構造を作製している。
【特許文献1】2006−319945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の超音波センサーにおいては、シリコン基板をエッチングする際に所望の形状を得ることが困難である。特許文献1では、シリコン基板の両面を熱酸化し、片方の面の酸化膜をBHF(緩衝弗酸)によるエッチングで開口させ、開口を形成した酸化膜を介してシリコン基板を上記の混合液により異方性エッチングしている。
【0004】
そのため、基板の異方性エッチングが進行すると、エッチングにより基板に形成された開口部が基板の反対側の面に形成された酸化膜に到達し、酸化膜の基板側の面が開口部に露出される。開口部に露出した酸化膜は、上記の混合液によって僅かながらエッチングされる。これにより、基板の開口部を閉塞する酸化膜が設計値よりも目減りして薄くなってしまう。そのため、ダイアフラムとして機能する酸化膜において、所望の共振周波数を得ることが困難になるという課題がある。
【0005】
また、開口部の径を例えば400μmとし、開口部に露出した酸化膜の共振周波数を約300kHzと設定すると、必要な酸化膜の厚さは約3μmとなる。そのため、上記のように酸化膜が目減りして薄くなることを考慮して、酸化膜の厚さを設計値よりも厚く形成する必要がある。ところが、酸化膜の厚さが厚くなると、酸化膜を基板の表面に熱酸化によって形成する場合に基板に反りが発生して後の工程に不具合を生じてしまうという課題がある。
【0006】
また、異方性エッチングにおいては、基板の表面が浸食されて荒れた状態となってしまうという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ダイアフラムの共振周波数を容易に所望の値に設定することができると共に、製造工程における不具合を防止することができ、さらに開口部が形成された基部の表面を平滑にすることができる超音波センサー及び超音波センサーの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の超音波センサーは、超音波を発信又は受信する超音波センサーであって、開口部が形成された基部と、前記基部に設けられ前記開口部を閉塞する振動板と、該振動板に設けられた圧電体と、を備え、前記基部及び振動板の前記圧電体が設けられた側と反対側が保護機能膜によって覆われていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、基部の開口部を閉塞する振動板の厚さを保護機能膜の厚さによって補うことができる。したがって、基部の開口部を閉塞する振動板の厚さが設計値よりも目減りして薄くなった場合であっても、振動板を覆う保護機能膜の厚さを調整することで、振動板と保護機能膜からなるダイアフラムの共振周波数を容易に所望の値とすることができる。
また、振動板の厚さを変更せず、保護機能膜を厚くすることで振動板と保護機能膜からなるダイアフラムの共振周波数を低下させることができる。したがって、振動板を例えば熱酸化等によって形成する場合であっても、振動板の厚さ薄くして基部の反りを防止し、後の製造工程における不具合を防止することができる。
また、基部に開口部を形成する際に基部の表面が荒れた状態になった場合であっても、基部の表面を覆う保護機能膜によって基部の表面を平滑にすることができる。
【0010】
また、本発明の超音波センサーは、前記圧電体は前記振動板の前記基部とは反対側で前記開口部と平面的に重なる振動領域に設けられ、前記振動領域において、前記振動板と前記保護機能膜とが積層されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、圧電体に所定の電圧を印加して振動領域において振動板と保護機能膜からなるダイアフラムを振動させ、超音波を発信することができる。
また、振動領域のダイアフラムに入射した超音波によりダイアフラムが振動し、圧電体が変形する。したがって、超音波によるダイアフラムの振動を電気信号に変換して外部に出力することができる。
【0012】
また、本発明の超音波センサーは、前記保護機能膜の厚さは、前記振動領域における前記振動板及び前記保護機能膜の共振周波数に基づいて決定されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、保護機能膜の膜厚を調整し、前記振動板と前記保護機能膜からなるダイアフラムの共振周波数を所望の値にすることができる。
【0014】
また、本発明の超音波センサーは、前記基部はシリコンにより形成され、前記振動板はシリコン酸化物により形成されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、基部の表面を熱酸化させて振動板を形成することができる。これにより、超音波センサーの製造工程を容易にして、生産性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の超音波センサーは、前記保護機能膜はシリコン酸化物により形成されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、保護機能膜を例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を用いた化学気相成長(CVD)法等により所定の膜厚に精密に形成し、振動板と保護機能膜からなるダイアフラムの共振周波数を所望の値にすることができる。また、振動板がシリコン酸化物により形成されている場合には、振動板と保護機能膜との結合を強固にすることができると共に、ダイアフラムの固有振動数の設定を容易にすることができる。
【0018】
また、本発明の超音波センサーの製造方法は、超音波を発信又は受信する超音波センサーの製造方法であって、シリコンからなる基部の表面に酸化膜を形成する工程と、前記基部の前記酸化膜とは反対側に、前記酸化膜を露出させる開口部を形成する工程と、前記基部の前記酸化膜とは反対側に前記基部及び前記酸化膜を覆う保護機能膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
このように製造することで、基部の開口部を閉塞する振動板の厚さを保護機能膜の厚さによって補うことができる。したがって、基部の開口部を閉塞する振動板の厚さが設計値よりも目減りして薄くなった場合であっても、振動板を覆う保護機能膜の厚さを調整することで、振動板と保護機能膜からなるダイアフラムの共振周波数を容易に所望の値とすることができる。
また、保護機能膜を厚くすることで振動板と保護機能膜からなるダイアフラムの共振周波数を低下させることができ、振動板の厚さを従来よりも薄くすることができる。したがって、振動板を例えば熱酸化等によって形成する場合であっても、振動板の厚さ薄くして基部の反りを防止し、後の製造工程における不具合を防止することができる。
また、基部に開口部を形成する際に基部の表面が荒れた状態になった場合であっても、基部の表面を覆う保護機能膜によって基部の表面を平滑にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や部材毎に縮尺を適宜変更している。
図1は本実施形態のPDA(Personal Data Assistance)100の構成を模式的に表す斜視図である。図2は本実施形態のPDA100が備える超音波センサーアレイ10の構成を模式的に表す分解斜視図である。図3は本実施形態の超音波センサーアレイ10の制御部40の構成を模式的に表すシステム構成図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のPDA100は本体30に表示部20を備えている。表示部20は例えば液晶パネルや有機ELパネル等からなり、本体30内部に収容された演算・制御部に接続され、種々の操作画像やその他の情報を表示するように構成されている。また、本体30の外周には、超音波センサーアレイ10が設置されている。超音波センサーアレイ10は、例えば人間の手、指、入力用のペン等の形状や動作を検出してPDA100への入力とする入力装置として機能する。
【0022】
図2に示すように、超音波センサーアレイ10は複数の開口部11aがアレイ状に形成された基部11を備えている。基部11は例えば単結晶シリコン基板等により形成されている。開口部11aの各々には、超音波センサー1が設けられている。すなわち、超音波センサーアレイ10は基部11の一面に複数の超音波センサー1がアレイ状に配置された構成となっている。
【0023】
各々の超音波センサー1にはそれぞれ配線(図示略)が接続され、各配線は基部11に接続されたフレキシブルプリント基板12を介して制御基板13の端子部13aに接続されている。制御基板13には演算部、記憶部等からなる制御部40が設けられている。制御部40は、超音波センサー1に入力する入力信号を制御すると共に、超音波センサー1から出力された出力信号を処理するように構成されている。
【0024】
図3に示すように、制御部40は超音波センサーアレイ10に接続され、主に制御・演算部41と、記憶部42と、超音波発生部43と、超音波検出部44と、送受信を切り替えるT/Rスイッチ45とを備えている。超音波発生部43は、サイン波を発生させるサイン波発生部43aと、個々の超音波センサー1に設けられサイン波の位相を変化させる移相部43bと、ドライバー43cとにより構成されている。超音波検出部44は、主に増幅部44aと、A/D変換部44bとにより構成されている。
【0025】
制御・演算部41は、超音波センサーアレイ10による超音波の発信時には、サイン波発生部43aによりサイン波を発生させ、移相部43bによりサイン波を個々の超音波センサー1に対応する位相に変化させる。また、制御・演算部41は、超音波センサーアレイ10の超音波の受信時には、T/Rスイッチ45を切り換えて超音波センサーアレイ10から出力された出力信号を増幅部44aに伝送させる。また、制御・演算部41は、記憶部42に記憶された情報をPDA100の制御・演算部(図示略)に出力可能に構成されている。
【0026】
図4は、図2に示す超音波センサーアレイをA−A’線で切断し、超音波センサー1の一つを拡大した拡大断面図である。
ここで、図2では基部11に設けられた開口部11aの形状を平面視で矩形状に表したが、以下では開口部11aの形状が平面視で円形状である場合について説明する。
【0027】
図4に示す本実施形態の超音波センサー1は、超音波を発信又は受信する超音波センサーである。超音波センサー1は、開口部11aが形成された基部11と、基部11の開口部11aを閉塞するように設けられた振動板2と、振動板2の基部11と反対側に設けられた圧電体3と、圧電体3に接続された下部電極4及び上部電極5とを備えている。
基部11に形成された開口部11aの深さdは、例えば約180μm〜200μm程度である。
【0028】
振動板2は、基部11側に設けられ例えばSiOにより形成された第1酸化膜2aと、第1酸化膜2aの基部11とは反対側に積層され例えばZrOにより形成された第2酸化膜2bとの二層構造となっている。第1酸化膜2aは例えば単結晶シリコン基板の表面を熱酸化させることにより約2μm程度の厚さに形成されている。第2酸化膜2bは例えばCVD(化学気相成長)法等により例えば約400nm程度の厚さに形成されている。
【0029】
振動板2が開口部11aと平面的に重なって開口部11aに露出された領域は、振動板2の振動領域Vとなっている。開口部11aの径Dは振動領域Vの振動板2の固有振動数に応じて例えば約100μm〜数百μm程度の範囲で適宜設定されている。
振動板2の振動領域Vで基部11と反対側の面には下部電極4が設けられている。
【0030】
下部電極4は、超音波センサーアレイ10の制御部40に接続された配線(図示略)に接続されている。下部電極4は例えばIr等の導電性金属材料により約200nm程度の厚さに形成されている。下部電極4上には下部電極4を覆うように振動領域V及びその境界の外側に圧電体3が設けられている。
【0031】
圧電体3は振動板の基部11とは反対側で開口部11aと平面的に重なる振動領域Vに島状に設けられている。圧電体3は例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、BaTiO(チタン酸バリウム)等により形成されている。圧電体3の上には上部電極5が形成されている。
【0032】
上部電極5は例えばIr等の導電性金属材料により形成され、圧電体3に接触して電気的に接続されている。上部電極5の厚さは例えば約50nm程度となっている。また、上部電極5は配線7a,7bを介して超音波センサーアレイ10の制御部40に接続されている。
【0033】
基部11及び振動板2の圧電体3が設けられた側と反対側は保護機能膜6によって覆われており、振動領域Vにおいて振動板2と保護機能膜6とが積層されている。すなわち、振動領域Vにおいて振動板2と保護機能膜6とが超音波センサー1のダイアフラム8を形成している。
【0034】
保護機能膜6は例えばSiO等のシリコン酸化物により形成されている。保護機能膜6は例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を用いた化学気相成長(CVD)法等により形成され、厚さTは振動領域Vにおけるダイアフラム8の共振周波数に基づいて決定されている。
【0035】
具体的には、ダイアフラム8の径Dが例えば約400μm程度の場合に、ダイアフラム8の共振周波数を300kHzに設定すると、必要なダイアフラム8の厚さTdは約3μm程度となる。そのため、振動領域Vにおける振動板2の厚さTvが例えば約2μm程度の場合には、保護機能膜6の厚さTは、予め設定したダイアフラム8の共振周波数に基づいて約1μm程度に決定される。
【0036】
次に、本実施形態のPDA100、超音波センサーアレイ10及び超音波センサー1の作用について説明する。
図1に示すように、PDA100において人間の手や指の形状や動作を検出する際には、超音波センサーアレイ10により検出領域に超音波を発信する。
【0037】
まず、超音波センサーアレイ10の制御部40により、発信用の超音波センサー1の上部電極5と下部電極4との間に電圧を印加する。
具体的には、図3に示すように制御部40のサイン波発生部43aによりサイン波を発生させ、移相部43b、ドライバー43c、T/Rスイッチ45を介して超音波センサーアレイ10の各々の超音波センサー1の第1下部電極14aに少しずつ位相をずらしたサイン波電圧を印加する。
【0038】
図4に示すように振動板2の振動領域Vに形成された圧電体3は、上部電極5と下部電極4との間にサイン波電圧が印加されると、振動板2の面方向に伸長されたり圧縮されたりする。
圧電体3が振動板2の面方向に伸長されると、振動板2の圧電体3側が面方向に伸長され、振動板2の振動領域Vが基部11側に凸(図の下方向に凸)となるように撓む。
【0039】
また、圧電体3が振動板2の面方向に圧縮されると、振動板2の圧電体3側が面方向に圧縮され、振動板2の振動領域Vが基部11側に凹(図の上方向に凸)となるように撓む。
これにより、ダイアフラム8の振動領域Vが振動板2の法線方向に振動し、各々の超音波センサー1の振動領域Vからサイン波電圧の周期に応じた振動数の超音波が発信される。
【0040】
このとき、各々の超音波センサー1の第1下部電極4aに少しずつ位相をずらしたサイン波電圧を印加することで、各々の超音波センサー1の振動領域Vのダイアフラム8は、少しずつ位相がずれた状態で振動する。
各々の超音波センサー1の振動領域Vのダイアフラム8が少しずつ位相のずれた状態で振動することで、各々の超音波センサー1から発せられる超音波が干渉する。この超音波の干渉により、超音波の進行方向がダイアフラム8の法線方向に対して傾いた状態となり、超音波に指向性が付与される。
【0041】
この超音波の指向性の変化を利用し、各々の超音波センサー1の圧電体3に印加するサイン波電圧の位相のずれを変化させることで、図1に示す超音波センサーアレイ10から発信される超音波の方向を変化させ、PDA100の検出領域を走査する。
【0042】
このとき、図1に示すように検出領域内に例えば人間の手や指が存在すると、超音波センサーアレイ10から発信された超音波は人間の手や指によって反射する。人間の手や指によって反射した超音波が超音波センサーアレイ10の受信用の超音波センサー1に到達すると、超音波センサー1の振動領域Vのダイアフラム8が振動する。振動領域Vのダイアフラム8が振動すると、圧電体3が振動板2の面方向の伸縮に伴って伸縮され、圧電体3に電位差が発生する。
【0043】
圧電体3に発生した電位差は、上部電極5及び下部電極に接続された配線(図示略)によって超音波センサー1の出力信号として超音波センサーアレイ10の制御部40に伝送される。超音波センサーアレイ10の制御部40に伝送された個々の超音波センサー1からの出力信号は、T/Rスイッチ45、増幅部44a、A/D変換部44bを介して記憶部42に記憶される。制御・演算部41は、記憶部42に記憶された個々の超音波センサー1の出力信号から検出領域の人間の手や指までの距離や移動速度を算出して出力する。
【0044】
PDA100の演算制御部(図示略)は超音波センサーアレイ10から出力された人間の手や指までの距離や移動速度から手や指の状態や動作を認識し、予め登録された手や指の状態や動作と比較する。比較の結果、検出した人間の手や指の状態や動作が予め登録されたものと一致すれば、PDA100の演算制御部は人間の手や指の形状や動作を所定の入力として認識し、例えば表示部20に画像を表示させる等、予め登録された所定の動作を実行する。
したがって、本実施形態のPDA100によれば、超音波センサーアレイ10を入力装置として機能させることができる。
【0045】
ここで、超音波センサーアレイ10が備える超音波センサー1は、基部11及び振動板2の圧電体3が設けられた側と反対側が保護機能膜6によって覆われ、振動領域Vにおいて、振動板2と保護機能膜6とが積層されてダイアフラム8を形成している。そのため、基部11の開口部11aを閉塞する振動板2の厚さTvを保護機能膜6の厚さTによって補うことができる。したがって、振動板2の厚さTvが設計値よりも目減りして薄くなった場合であっても、振動板2を覆う保護機能膜6の厚さTを調整することで、振動板2と保護機能膜6からなるダイアフラム8の共振周波数を容易に所望の値とすることができる。
【0046】
また、振動板2の厚さTvを変更せず保護機能膜6の厚さTを厚くすることで、振動板2と保護機能膜6からなるダイアフラム8の共振周波数を低下させることができる。したがって、振動板2を例えば熱酸化等によって形成する場合であっても、振動板2の厚さTを薄くして基部11の反りを防止し、後の製造工程における不具合を防止することができる。
【0047】
また、基部11の表面を覆う保護機能膜6を形成することで、基部11に開口部11aを形成する際に基部11の表面が荒れた状態になった場合であっても、保護機能膜6によって基部11の表面を平滑にすることができる。
また、基部11の表面をシリコン酸化物からなる保護機能膜6によって覆うことで、超音波センサー1の耐薬品性を向上させることができる。
【0048】
また、超音波センサー1は、圧電体3が振動板2の基部11とは反対側で開口部11aと平面的に重なる振動領域Vに設けられている。そのため、圧電体3によってダイアフラム8を振動させ、超音波を発信することができる。また、振動領域Vのダイアフラム8に入射した超音波によりダイアフラム8が振動し、圧電体3が変形する。したがって、超音波によるダイアフラム8の振動を電気信号に変換して出力することができる。
【0049】
また、超音波センサー1は、保護機能膜6の厚さTが振動領域Vにおけるダイアフラム8の共振周波数に基づいて決定されている。すなわち、保護機能膜6の厚さTを調整することで、振動板2と保護機能膜6からなるダイアフラム8の共振周波数を所望の値にすることができる。
【0050】
また、超音波センサー1は、単結晶シリコン基板により形成された基部11を備え、振動板2はSiO等のシリコン酸化物により形成された第1酸化膜2aと、ZrO等により形成された第2酸化膜2bとにより形成されている。そのため、基部11の表面を熱酸化させて振動板2の第1酸化膜2aを形成することができる。これにより、超音波センサー1の製造を容易にして、生産性を向上させることができる。
【0051】
また、超音波センサー1は、保護機能膜6がSiO等のシリコン酸化物により形成されている。そのため、保護機能膜6を例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を用いた化学気相成長(CVD)法等により所定の厚さTに精密に形成し、振動板2と保護機能膜6からなるダイアフラム8の共振周波数を所望の値にすることができる。
【0052】
また、保護機能膜6と振動板2の第1酸化膜2aの材質が等しくなり、保護機能膜6と振動板2とを強固に結合させることができる。また、保護機能膜6と振動板2の第1酸化膜2aの材質を同一とすることで、密度を略等しくしてダイアフラム8の共振周波数の設定を容易にすることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の超音波センサー1によれば、ダイアフラム8の共振周波数を容易に所望の値に設定することができる。加えて、製造工程における不具合を防止することができ、さらに開口部11aが形成された基部11の表面を平滑にすることができる。
【0054】
次に、図4を用いて本実施形態の超音波センサー1の製造方法について説明する。
まず、基部11となる単結晶シリコン基板を用意し、表面を熱酸化することで図4に示す第1酸化膜2aを形成する。このとき、第1酸化膜2aの膜厚は例えば約2μm程度に形成する。
【0055】
次に、第1酸化膜2aの表面に例えばTEOSを用いたCVD法等により第2酸化膜2bを形成し、第1酸化膜2aと第2酸化膜2bからなる振動板2を形成する。このとき、第2酸化膜2bの膜厚は、各々の超音波センサー1の共振周波数に対応して例えば約1μm程度に形成する。
【0056】
次に、単結晶シリコン基板の振動板2が形成された面と反対側の面に、フォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法により露光・現像して基部11の開口部11aの平面形状に対応する開口部を有するレジストパターンを形成する。
次に、振動板2の振動領域Vに公知の方法により下部電極4、圧電体3、上部電極5、配線7a,7b等を形成する。
次いで、レジストパターンを介して単結晶シリコン基板の振動板2が形成された面と反対側の面を異方性エッチングすることで開口部11aを形成し、開口部11aに振動板2の第1酸化膜2aを露出させ、基部11を形成する。異方性エッチングは例えばドライエッチングにより行うことができる。
【0057】
このような異方性エッチングにおいては、開口部11aが第1酸化膜2aに到達すると、第1酸化膜2aがエッチングされて第1酸化膜2aの膜厚が目減りする場合がある。また、開口部11aを形成する際に、例えば開口部11aの内側面等、基部11の表面が荒れて平滑性が低下してしまう場合がある。
【0058】
そこで、本実施形態では、単結晶シリコン基板を異方性エッチングして開口部11aを有する基部11を形成した後、基部11の第1酸化膜2aが形成された面とは反対側の面に基部11及び第1酸化膜2aを覆う保護機能膜6を形成する。保護機能膜6は例えばTEOSを用いたCVD法等により形成することができる。このとき、保護機能膜6の膜厚は、振動領域Vのダイアフラム8が所望の固有振動数となるように、振動板2の厚さTvを考慮して設定する。本実施形態では、ダイアフラム8の厚さTdが約3μm程度となるように膜厚を計測しながら保護機能膜6を形成する。
【0059】
このように製造することで、基部11の開口部11aを閉塞する振動板2の厚さTvを保護機能膜6の厚さTによって補うことができる。したがって、基部11の開口部11aを閉塞する振動板2の厚さTvが設計値よりも目減りして薄くなった場合であっても、振動板2を覆う保護機能膜6の厚さTを調整することで、振動板2と保護機能膜6からなるダイアフラム7の共振周波数を容易に所望の値とすることができる。
【0060】
また、振動板2の厚さTvを変更せず、保護機能膜6を厚くすることで振動板2と保護機能膜6からなるダイアフラム7の共振周波数を低下させることができる。したがって、振動板2を熱酸化等によって形成する場合であっても、振動板2の厚さTvを薄くして基部11の反りを防止することができる。したがって、例えばフォトレジストの異常露光等、後の製造工程における不具合を防止することができる。
また、基部11に開口部11aを形成する際に基部11の表面が荒れた状態になった場合であっても、基部11の表面を覆う保護機能膜6によって基部11の表面を平滑にすることができる。
【0061】
このとき、基部11の表面に保護機能膜6が形成されているので、基部11の耐薬品性を向上させることができる。
以上により、本実施形態の超音波センサー1を製造することができる。また、複数の超音波センサー1を基部11にアレイ状に形成することで、図2に示すような超音波センサーアレイ10を製造することができる。
【0062】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、振動板の材料としては、シリコン酸化物以外にも、ニッケル、クロム、アルミニウムのような金属材料及び、それらの酸化物であるセラミック材料、シリコン、有機樹脂を用いた高分子有機物等を用いることができる。
また、酸化膜は基板表面の熱酸化以外に、CVD、スパッタリング、蒸着、塗布等により形成してもよい。
また、保護機能膜は酸化物ではなく、SiN等の窒化物により形成してもよい。
また、基部に形成する開口部の平面形状は矩形状や円形状に限られない。
また、PDAは複数の超音波センサーアレイを備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第一実施形態におけるPDAの斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態における超音波センサーアレイの斜視図である。
【図3】図2に示す超音波センサーアレイの制御部のシステム構成図である。
【図4】図2のA−A’線に沿う超音波センサーの断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 超音波センサー、2 振動板、2a 第1酸化膜(酸化膜)、2b 第2酸化膜(酸化膜)、3 圧電体、6 保護機能膜、11 基部、11a 開口部、T 厚さ、V 振動領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発信又は受信する超音波センサーであって、
開口部が形成された基部と、前記基部に設けられ前記開口部を閉塞する振動板と、該振動板に設けられた圧電体と、を備え、
前記基部及び振動板の前記圧電体が設けられた側と反対側が保護機能膜によって覆われていることを特徴とする超音波センサー。
【請求項2】
前記圧電体は前記振動板の前記基部とは反対側で前記開口部と平面的に重なる振動領域に設けられ、
前記振動領域において、前記振動板と前記保護機能膜とが積層されていることを特徴とする請求項1記載の超音波センサー。
【請求項3】
前記保護機能膜の厚さは、前記振動領域における前記振動板及び前記保護機能膜の共振周波数に基づいて決定されていることを特徴とする請求項2記載の超音波センサー。
【請求項4】
前記基部はシリコンにより形成され、前記振動板はシリコン酸化物により形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の超音波センサー。
【請求項5】
前記保護機能膜はシリコン酸化物により形成されていることを特徴とする請求項4記載の超音波センサー。
【請求項6】
超音波を発信又は受信する超音波センサーの製造方法であって、
シリコンからなる基部の表面に酸化膜を形成する工程と、
前記基部の前記酸化膜とは反対側に、前記酸化膜を露出させる開口部を形成する工程と、
前記基部の前記酸化膜とは反対側に前記基部及び前記酸化膜を覆う保護機能膜を形成する工程と、を有することを特徴とする超音波センサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−147658(P2010−147658A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320953(P2008−320953)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】