説明

超音波センサ

【課題】筐体の構造を変えることで用途に合った指向角を備える超音波センサの提供。
【解決手段】基壁21とこれを取り囲む周壁22とを備えた筐体2と、筐体2内に設けられる圧電素子3とを有しており、基壁21は周壁22と共に内部空間20を画成していると共に、内部空間20に面している内面211と、外面212とを有しており、内面211は、第1区画面213と、第1区画面213と周壁22の間に配置される第2区画面214と、第1区画面213と第2区画面214を繋ぐ連係面215とを有しており、第2区画面214と外面212との間の距離が、第1区画面213と外面213との間の距離よりも長くなっていることにより、第1区画面213と連係面215とで凹部210が画成されており、圧電素子3は凹部210に収容され且つ第1区画面213に固定されていることを特徴とした超音波センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関し、特に超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサは、超音波を送波してその反射を受波することで対象物体の位置や移動速度を検知するのに用いられることができ、例えば自動車における後方障害物の検知や衝突防止システムに広く利用されている。
【0003】
図1は、特許文献1に挙げたような、車両に搭載される超音波センサの従来例を示しており、金属製の筐体11と、筐体11内に設けられている圧電素子12を備えている。筐体11は基壁111を有しており、基壁111は、その周縁に配置されている肉薄部113と、肉薄部113に囲まれるように配置され肉薄部113から筐体11の内部空間へ僅かに突出している肉厚部112とを備えている。圧電素子12は肉厚部112上に設置されている。
【0004】
圧電素子12は電圧が印加されると、圧電効果によりその電圧の変化に応じて変形し、基壁111を振動させ、この振動により超音波が発生する。この超音波が検知対象物体に届き反射されると、この反射された超音波が基壁111に届き、基壁111が共振して再び振動する。この振動により圧電素子12が変形され、圧電効果により電気信号が発生する。この電気信号は圧電素子12に電気的に接続されている後端の回路(図示せず)により検出および解析され、センサから検知対象物体までの距離が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−326987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の超音波センサは一定の指向性を有している。つまり、従来の超音波センサは、超音波を全方向に均等な強度で送波することができず、また受波においても、全方向からの超音波を均等に受波することができない。このように超音波センサは、超音波を送波または受波できる方向ならびに角度、いわゆる指向角を有しているが、センサの使用目的によって求められる指向角は異なる。よって、使用目的に適した指向角を有していることが、超音波センサには望まれている。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、筐体の構造を変えることで使用目的に合った指向角を備える超音波センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
基壁と該基壁を取り囲む周壁とを備えた筐体と、該筐体内に設けられている圧電素子とを有した超音波センサであって、前記基壁は、前記周壁と共に内部空間を画成していると共に、該内部空間に面している内面と、前記内面の反対面となる外面とを有しており、前記内面は、第1区画面と、前記第1区画面と前記周壁の間に配置される第2区画面と、前記第1区画面と前記第2区画面を繋ぐ連係面とを有しており、前記第2区画面と前記外面との間の距離が、前記第1区画面と前記外面との間の距離よりも長くなっていることにより、前記第1区画面と前記連係面とで凹部が画成されており、前記圧電素子は、前記凹部に収容され且つ前記第1区画面に固定されていること
を特徴とした超音波センサを提供する。
【0009】
上記手段において、前記第2区画面と前記外面との間の距離に対する前記凹部の深さの比率は0%より大きく50%以下であることが好ましい。
【0010】
また、前記第1区画面と前記第2区画面を合わせた面積に対する前記第1区画面の面積の比率は、36%以上90%以下であることが好ましい。
【0011】
更に、前記凹部の深さは、0.05mmを超えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成によれば、圧電素子を配置するための基壁の内面に、所望の指向角が得られるようにその深さと大きさが調整された凹部が画成され、この凹部に圧電素子が収容されることによって、使用目的に適した指向角を有した超音波センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来例の超音波センサの局部断面図である。
【図2】本発明に係る超音波センサの一実施形態を示す上視図である。
【図3】図2におけるIII―III線に沿った局部拡大図である。
【図4】図3における各部の面積を示した図である。
【図5】本発明に係る超音波センサの水平指向角の変化を示したグラフである。
【図6】本発明に係る超音波センサの共振周波数の変化を示したグラフである。
【図7】本発明に係る超音波センサと従来例の超音波センサそれぞれの水平指向角を示す極座標図である。
【図8】本発明に係る超音波センサの水平指向角の変化を示すグラフである。
【図9】本発明に係る超音波センサの共振周波数の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例について詳しく説明する。
【0015】
図2および図3に示したように、本発明の実施例に係る超音波センサは、筐体2と、圧電素子3と、封止材4とから構成されている。
【0016】
筐体2は基壁21と、基壁21の周囲に設けられている周壁22とを有しており、基壁21と周壁22とにより筐体2内に内部空間20が画成されている。なお、本実施例では筐体2の材料としてアルミニウムを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
基壁21は振動して超音波を生成することができるように作成されたものであり、内部空間20に面する内面211と、内面211の反対面となる外面212とを有している。
【0018】
内面211は、略中央に配置される第1区画面213と、第1区画面213と周壁22との間に配置される第2区画面214と、第1区画面213と第2区画面214とを繋ぐ連係面215とを有している。また、第1区画面213と外面212との間の距離が、第2区画面214と外面212との間の距離よりも短くなっていることにより、第1区画面213と連係面215とで基壁21の内面211側に凹部210が画成されており、圧電素子3は、この凹部210に収容され且つ第1区画面213に固定されている。なお、本実施例においては第2区画面214を略楕円形となるように設けた。
【0019】
ここで、凹部210の深さをh1とし、第2区画面214と外面212との間の距離をh2とすると、筐体2の共振周波数を超音波センサに適したものに保ちながら同時に良好な水平指向角を得るためには、h2に対するh1の比率は0%より大きく且つ50%以下であることが好ましい。また、良好なセンサ効果を得るために、凹部210の深さh1は0.05mmを超えることが好ましい。
【0020】
図4は、凹部210の上面図であり、第1区画面213の面積と、第2区画面214の面積とを概略的に示している。ここで第1区画面213の面積をA1、第2区画面214の面積をA2とすると、筐体2の共振周波数を超音波センサに適したものに保ちながら同時に良好な水平指向角を得るためには、A1+A2(第1区画面213と第2区画面214の面積を合わせた面積)に対するA1(第1区画面213の面積)の比率は36%以上であり且つ90%以下であることが好ましい。また、凹部210の底面面積(即ちA1)は、凹部210が圧電素子3を収納できるようにするため圧電素子3の底面よりも大であることが必須であるが、凹部210の存在が本発明にとって重要であるため、A1はA1とA2の和と同値であってはならない。
【0021】
圧電素子3はセラミックス材料によって、印加された電界に応じて変形することができるように作成されたものである。
【0022】
封止材4は内部空間20を充填して圧電素子3を覆っており、これにより圧電素子3が第1区画面213に固定される。
【0023】
以上の構成により、本発明に係る超音波センサは、電界が印加されることで圧電素子3が変形するのに伴い基壁21が振動し、基壁21の振動により超音波が送波される。或いは逆に、超音波を受波することで基壁21が振動し、基壁21の振動に伴い圧電素子3が変形し電界が発生する。
【0024】
なお、本発明に係る超音波センサは上記構成の他に、例えばキャパシタやワイヤ等の電子部品を含んでいるが、これらは周知の技術なのでここでは説明を省く。
【0025】
以下、本発明に係る超音波センサにおいて、上記h1、h2、A1、A2各パラメータを変化させることで、指向角及び共振周波数がどのように変化するかを調べた各種実験結果を、図5〜図9を参照に説明する。
【0026】
図5は本発明に係る超音波センサにおいて、第2区画面214と外面212との間の距離(h2)に対する凹部210の深さ(h1)の比率を変えることで水平指向角がどのように変化するかを調べた実験結果を示すグラフである。
【0027】
上記実験では、第2区画面214から30cm離れたところにマイクを設置し音圧を計った。本実験例における構成では、第2区画面214と外面212との間の距離(h2)を0.8mm、第1区画面213の面積(A1)を35mm、第2区画面214の面積(A2)を45mmとした。
【0028】
図5から見て取れるように、h2に対するh1の比率が0%の場合、つまり内面211に凹部210が形成されていない場合、水平指向角は83度であった。また、凹部210の深さ(h1)が大きくなるにつれて、水平指向角も大きくなり、h2に対するh1の比率が50%に達した場合、水平指向角は140度に達する。なお、55%を超えた場合には、水平指向角はほぼ180度になり、つまり水平指向角が得られなくなった。この結果が示すとおり、超音波センサの基壁21の内面211に、圧電素子3を収容するための凹部210を形成し、第2区画面214と外面212との間の距離(h2)に対する凹部210の深さ(h1)の比率(h1/h2)を適宜調整することにより、使用目的に合った水平指向角を備える超音波センサを提供することができる。
【0029】
図6は本発明に係る超音波センサにおいて、第2区画面214と外面212との間の距離(h2)に対する凹部210の深さ(h1)の比率を変えることで筐体2の共振周波数がどのように変化するかを調べた実験結果を示すグラフである。一般に、超音波センサは周波数が40kHz〜70kHzの範囲内の音波を用いるが、このうち周波数が低いほうが伝搬に伴う減衰が少ないため、超音波を長距離に伝搬させることができる。
【0030】
図6から見て取れるように、h2に対するh1の比率が0%の場合、つまり内面211に凹部210が形成されていない場合、筐体2の共振周波数はおよそ65kHzである。h2に対するh1の比率が上がるにつれて、つまり凹部210がより深くなるにつれて、筐体2の共振周波数は下がり、h2に対するh1の比率が50%に達すると、共振周波数はおよそ50kHzにまで下がる。
【0031】
図7は本発明に係る超音波センサを実験例とし、従来例に示したような凹部を備えていない超音波センサを比較例とし、それぞれの水平指向角を比較して示した極座標図である。基壁21と直交する線を原線(図示における0度)とし、音圧強度の減衰量(単位dB)を−90度から90度に渡って計測した結果を動径座標で示した。
【0032】
本実験例では上記h1、h2、A1、A2の各数値を以下のように定めた。
h1=0.11mm
h2=0.64mm
A1=40mm
A2=40mm
【0033】
図7から見て取れるように、本発明に係る実験例は比較例よりも大きな指向角を有している。
【0034】
図8は本発明に係る超音波センサにおいて、第1区画面213と第2区画面214の面積を合わせた面積(A1+A2)に対する第1区画面213の面積(A1)の比率を変えることで水平指向角がどのように変化するかを調べた実験結果を示すグラフである。なお本実験例においてはh1を0.11mm、h2を0.64mmとし、またA1とA2の和は固定のものとし、A1の値を変化させた。
【0035】
図8から見て取れるように、A1とA2の和に対するA1の比率が大きくなるにつれ、水平指向角も大きくなる。このように、第1区画面213と第2区画面214の面積を合わせた面積に対する第1区画面213の面積の比率を調整することによっても、使用目的に合った所望の指向角を備える超音波センサを提供することができる。
【0036】
図9は本発明に係る超音波センサにおいて、第1区画面213と第2区画面214の面積を合わせた面積(A1+A2)に対する第1区画面213の面積(A1)の比率を変えることで筐体2の共振周波数がどのように変化するかを調べた実験結果を示すグラフである。
【0037】
図9が示すとおり、A1とA2の和に対するA1の比率と共振周波数とはほぼ反比例するが、当該比率が36%〜90%の範囲内であれば、共振周波数は常に61.5kHz以下である。
【0038】
以上、総括すると、本発明に係る超音波センサは、基壁21の内面211に外面212との距離がそれぞれ異なる第1区画面213と第2区画面214とを設けることにより凹部210を画成し、圧電素子3をこの凹部210に配置することにより、更には上述のように第2区画面214と外面212との間の距離に対する凹部210の深さの比率、および第1区画面213と第2区画面214の面積を合わせた面積に対する第1区画面213の面積の比率をそれぞれ適宜調整することにより、超音波センサに使用目的に適した所望の指向角を持たせることができる。
【0039】
以上、本発明を具体的な実施例に則して詳細に説明したが、本発明は上記実施例及び添付図面に限定されるものではなく、最も広い解釈の範囲に含まれる種々の変更を網羅していることが意図されていると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る超音波センサは、用途に適した指向角を有することができるので、例えば車両に備えられる衝突防止センサやパーキングセンサ等各種対象物検知センサとして利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
2 筐体
20 内部空間
21 基壁
210 凹部
211 内面
212 外面
213 第1区画面
214 第2区画面
215 連係面
22 周壁
3 圧電素子
4 封止材
A1 第1区画面の面積
A2 第2区画面の面積
h1 凹部の深さ
h2 第2区画面と外面との間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基壁と該基壁を取り囲む周壁とを備えた筐体と、該筐体内に設けられている圧電素子とを有した超音波センサであって、
前記基壁は、前記周壁と共に内部空間を画成していると共に、該内部空間に面している内面と、前記内面の反対面となる外面とを有しており、
前記内面は、第1区画面と、前記第1区画面と前記周壁の間に配置される第2区画面と、前記第1区画面と前記第2区画面を繋ぐ連係面とを有しており、
前記第2区画面と前記外面との間の距離が、前記第1区画面と前記外面との間の距離よりも長くなっていることにより、前記第1区画面と前記連係面とで凹部が画成されており、
前記圧電素子は、前記凹部に収容され且つ前記第1区画面に固定されていること
を特徴とした超音波センサ。
【請求項2】
前記第2区画面と前記外面との間の距離に対する前記凹部の深さの比率が0%より大きく50%以下であることを特徴とした請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記第1区画面と前記第2区画面を合わせた面積に対する前記第1区画面の面積の比率が、36%以上90%以下であること
を特徴とした請求項1または2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記凹部の深さが、0.05mmを超えること
を特徴とした請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−235445(P2012−235445A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19554(P2012−19554)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(500059553)同致電子企業股▲ふん▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】