説明

超音波プローブ

【課題】十分な光量で、広い照明エリアに光を照射する。
【解決手段】光ファイバ21は、光源から出射した光を超音波プローブ10まで導光する。導光板11は、光ファイバ21と光学的に結合された光入射端から超音波振動子の近傍に配置された光出射端まで光を導光する。導光板11は、光入射端を含む第1の導光部と、光出射端を含む第2の導光部とを有数する。第1の導光部は、ガラスで形成され、入射された光を拡大させる。第2の導光部は、樹脂材料で形成され、光出射端から被検体に向けて光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブに関し、更に詳しくは、光音響イメージングに用いられる超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波プローブ(探触子)を用いる。超音波プローブから被検体(生体)に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波プローブでその反射音波を受信し、反射超音波が超音波プローブに戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、パルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。
【0004】
光音響イメージングでは、パルスレーザ光をレーザ光源から超音波プローブまで導光し、超音波プローブに設けられた光照射部からパルスレーザ光を照射することがある。光照射部を有する超音波プローブは、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1では、複数の光ファイバを用いて、レーザ光源からの光を超音波プローブまで導光する。各光ファイバの出力端は、被検体に光を照射する光照射部を構成する。特許文献1では、超音波の送信及び/又は検出を行う複数の超音波振動子が所定の配列間隔をあけて一次元的に配列されており、光照射部である各ファイバの出力端は、隣接する超音波振動子間の隙間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−12295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、光ファイバの出力端から被検体に光を照射している。光ファイバ出射端は細く、そこに光が集中するため、光ファイバ出射端における光のエネルギー密度は高くなる。特許文献1において、生体に対する安全基準(例えば波長500nmの光で20mJ/cm2)を満たしたエネルギー密度で光照射を行うためには、照射する光の量を少なくせざるを得ない。特許文献1では光ファイバ1本当たりの光量が限られるため、安全基準を満たしつつ、十分な光量で光照射を行うためには、光ファイバの本数を増加させる必要がある。また、特許文献1では光ファイバが所定の間隔を隔てて配列されており、光ファイバの直下と隣接する光ファイバの間とで照射される光にムラができるため、照明すべきエリアに均一に光を照射できない。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、十分な光量で、広い照明エリアに光を照射できる照明系を有する超音波プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、所定方向に沿って配列された複数の超音波振動子と、光源から出射した光をプローブ本体まで導光する光ファイバと、前記光ファイバと光学的に結合された光入射端から前記超音波振動子の近傍に配置された光出射端まで光を導光する導光手段とを備え、前記導光手段が、前記光入射端を含み、該光入射端から前記光出射端側に向けて光を導光する第1の導光部であって、ガラス材料で形成され、前記光入射端における入射光の断面積に比して前記第1の導光部の出射端での光の断面積を拡大させる第1の導光部と、前記光出射端を含み、前記第1の導光部により導光された光を前記光出射端まで導光する第2の導光部であって、樹脂材料で形成され、前記光出射端から被検体に向けて光を照射する第2の導光部とを有することを特徴とする超音波プローブを提供する。
【0009】
本発明では、前記第1の導光部が、テーパー状に形成された導光路を含む構成とすることができる。
【0010】
本発明では、前記第1の導光部が、少なくとも、前記入射光の前記光入射端での前記所定方向の幅に比して、導光された光の前記第1の導光部の出射端での前記所定方向の幅を拡大させる構成を採用できる。
【0011】
本発明では、前記第2の導光部が、前記超音波振動子内側方向に湾曲している構成を採用できる。
【0012】
あるいは、前記導光手段が、超音波振動子の超音波検出面に対して所定の角度で傾けて配置されてもよい。
【0013】
本発明の超音波プローブは、前記光ファイバ及び前記導光手段を複数備えることができる。その場合、前記複数の導光手段が、前記所定方向に沿って並べられる構成とすることができる。これに代えて、又は加えて、複数の導光手段が、前記所定方向とは直交する方向に前記超音波振動子を挟んで対向するように配置されていてもよい。
【0014】
あるいは、1つの導光手段の光入射端に、前記所定方向に沿って並べられた複数の光ファイバを光学的に結合することとしてもよい。その場合に、プローブ内に導光手段を2つ設け、2つの導光手段が前記超音波振動子を挟んで対向するように配置してもよい。
【0015】
前記導光手段には、平板状のコアを平面クラッドで挟み込んだスラブ型の導光板を用いることができる。または、光透過性を有する光透過部分と、該光透過部分を挟み込むように形成された反射部材とを含む導光手段を用いてもよい。
【0016】
本発明の超音波プローブでは、前記光入射端から前記第1の導光部と第2の導光部との境界までの距離が8mm以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の超音波プローブは、光及び超音波を透過するアダプタであって、前記超音波振動子の超音波検出面及び前記導光手段の光出射端を覆うように超音波プローブに取り付けられたアダプタを更に備えていてもよい。
【0018】
本発明の超音波プローブが、前記光出射端の光出射側に光を拡散させる拡散板を更に有する構成を採用することもできる。
【0019】
あるいは、前記第2の導光部の光出射側の端面、及び、前記第1の導光部との境界部分の端面のうちの少なくとも一方に、光を拡散させる拡散面が形成してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の超音波プローブでは、プローブ本体まで光を導光する光ファイバの出射端に導光手段を結合させ、導光手段を用いて超音波振動子の近傍まで光を導光し、そこから被検体に向けて光を照射する。導光手段は、第1の導光部と第2の導光部とを含む。第1の導光部で、光の断面積を光入射端における光の断面積よりも拡大することで、光ファイバの出射端から光照射を行う場合に比して、広い面積の光出射端から広いエリアに光照射を行うことができる。また、光入射端における光のエネルギー密度に比して、出射側での光のエネルギー密度を下げることができる。このため、光ファイバの出射端から被検体に対する光照射を行う場合に比して、光ファイバに入射する光の量を増やすことができ、安全基準を満しつつ、十分な光量で光照射を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の超音波プローブを含む光音響画像診断装置を示すブロック図。
【図2】(a)は、超音波プローブの側面方向の断面図、(b)は、超音波プローブの正面方向の断面図。
【図3】側面方向から見た導光板を示す図。
【図4】導光板の変形例を示す図。
【図5】本発明の第2実施形態の超音波プローブに用いられる導光板の斜視図。
【図6】第1の導光部と第2の導光部の境界面における光の分布を示す分布画像。
【図7】第1の導光部の長さと境界面における光のエネルギー密度の関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第3実施形態の超音波プローブの側面方向の断面図。
【図9】本発明の第4実施形態の超音波プローブの側面方向の断面図。
【図10】本発明の第5実施形態の超音波プローブの側面方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の超音波プローブ(超音波探触子)を含む光音響画像診断装置を示す。光音響画像診断装置は、超音波プローブ10、光源ユニット31、及び超音波ユニット32を備える。超音波プローブ10は、被検体に光を照射する光照射部と、少なくとも被検体からの超音波が検出可能な超音波振動子とを有する。光源ユニット31は、例えばパルスレーザ光を生成するレーザユニットであり、超音波プローブ10から被検体に対して照射すべき光を生成する。超音波ユニット32は、超音波プローブ10が検出した超音波信号に基づいて、光音響画像の生成を行う。
【0023】
超音波プローブ10は、例えば複数の超音波振動子が所定方向に配列されたアレイ部と、操作者がプローブを使用する際に握る握り部とを有している。超音波振動子の配列は、一次元的配列でも、二次元的配列でもよい。超音波プローブ10は、光ファイバ21を介して光源ユニット31と接続される。光ファイバ21は、例えば複数本の光ファイバを含む。光源ユニット31で生成されたパルスレーザ光は、光ファイバ21により超音波プローブ10に導光され、超音波プローブ10の光照射部から被検体に照射される。また、超音波プローブ10は、電気ケーブル22を介して超音波ユニット32と接続される。超音波プローブ10が検出した超音波信号は、電気ケーブル22により超音波ユニット32に伝送され、超音波ユニット32で処理される。
【0024】
図2(a)は、超音波プローブ10の側面方向の断面図であり、(b)は、正面方向の断面図である。なお、図2では、電気ケーブル22を省略して図示している。同図(a)に示すように、超音波プローブ10は、被検体と接触する側の面に超音波振動子12を有している。超音波振動子12の両脇には、導光路又は導波路を形成する導光板(導光手段)11a、11dが配置される。導光板11aの光入射端は光ファイバ21aと光学的に結合され、導光板11dの光入射端は光ファイバ21dと光学的に結合される。光ファイバ21a、21dには、例えば石英ファイバや中空ファイバを用いることができる。光ファイバ21a、21dに、複数本の光ファイバが束ねられたバンドルファイバを用いることもできる。
【0025】
導光板11a、11dの光入射端とは反対側の面は、光出射端を構成する。光出射端は、超音波振動子の近傍に配置される。導光板11a、11dは、光入射端から入射された光を光出射端まで導光する。導光板11a、11dは、例えば平板状のコアを平面クラッドで挟み込んだスラブ型の導光板である。コアとクラッドは屈折率が異なり、境界面で全反射を起こして光はほぼロスなく進行する。あるいは、平板状のコアに反射膜をコートして導波しても良いし、空気との屈折率差による全反射で光を導波してもよい。導光板11a、11dの両面に反射シートを貼り付けてもよい。導光板11a、11dの光出射端には、光拡散板13が設けられる。光拡散板13の光出射面が、超音波プローブ10の光照射部を構成する。
【0026】
導光板11aと導光板11dとは、超音波振動子12を挟んで、超音波振動子12が配列された方向とは直交する方向に対向している。図2(b)に示すように、超音波振動子12の導光板11aが配置される側には、導光板11aを含めた3つの導光板11a〜11cが配置される。導光板11a〜11cは、超音波振動子12が配列された方向に沿って並べられる。光ファイバ21bは導光板11bと光学的に結合され、光ファイバ21cは導光板11cと光学的に結合される。図2(b)においては図示されていないが、超音波振動子12の導光板11dが配置される側にも、導光板11dを含めた3つの導光板が配置される。それら3つの導光板も、超音波振動子12が配列された方向に沿って並べられ、対応する光ファイバが光学的に結合される。
【0027】
図3は、導光板11を示す。図3では、導光板11を側面方向(図2(a)と同じ方向)から見た図で示している。導光板11は、光入射端51を含む第1の導光部41と、光出射端52を含む第2の導光部42とを有する。第1の導光部41は、光入射端51から入射された光を、光入射端51から光出射端52側に向けて導光する。第2の導光部42は、第1の導光部41により導光された光を光出射端52まで導光する。
【0028】
第1の導光部41は、ガラス材料で形成される。第1の導光部41は、例えばテーパー形状に形成された導光路を含む。第1の導光部41は、光入射端51における入射光の断面積に比して、第1の導光部41の出射端での光の断面積を拡大させる。第1の導光部41は、例えば、少なくとも、光入射端51での入射光の超音波振動子の配列方向の幅に比して、導光された光の第1の導光部41の出射端での超音波振動子の配列方向の幅を拡大させる。一方、第2の導光部42は、樹脂材料、例えばアクリルで形成される。第2の導光部42は、光出射端52から被検体に向けて光を照射する。
【0029】
光源ユニット31(図1)から出射した光は、光ファイバ21を通り、超音波プローブ10まで導光される。光ファイバ21は複数の光ファイバを含んでおり、各光ファイバは、対応する導光板11の光入射端51(図3)と光学的に結合される。光入射端51から導光板11に入射した光は、導光板11に入射した光は、テーパー状に形成された第1の導光部41を、光の範囲を拡大させながら進行する。第1の導光部41を通過した光は第2の導光部42に入射し、光出射端52まで導光される。導光された光は、光出射端52から、光拡散板13(図2)を介して被検体に照射される。
【0030】
本実施形態では、光ファイバの出射端からそのまま被検体に向けて光を照射するのに代えて、プローブ本体まで光を導光する光ファイバの出射端に導光板11を結合させ、導光板11を用いて超音波振動子の近傍まで光を導光し、そこから被検体に向けて光を照射する。導光板11は、第1の導光部41と第2の導光部42とを含んでいる。第1の導光部41で、光の断面積を光入射端51における光の断面積よりも拡大することで、光ファイバの出射端から光照射を行う場合に比して、広い面積から光照射を行うことができる。また、光照射面積が広がった分だけ、光入射端51における光のエネルギー密度に比して、出射側での光のエネルギー密度を下げることができる。このため、光ファイバの出射端から被検体に対する光照射を行う場合に比して、光ファイバに入射する光の量を増やすことができ、安全基準を満しつつ、十分な光量で光照射を行うことができる。
【0031】
本実施形態では、導光板11により、超音波振動子12が配列された方向に光の幅を広げている。導光板11を用いずに光ファイバから光を照射したとすると、光は超音波振動子12の配列方向に離散的に照射されることになるため、光ファイバの直下は光が多く照射される一方で、隣接する光ファイバの間はあまり光が照射されない。本実施形態では、超音波振動子12が配列された方向に光の幅を広げているため、1本の光ファイバから超音波振動子12の配列方向の広い範囲に光を照射することができる。このため、光ファイバから直接光照射を行う場合に比べて、超音波振動子12の配列方向の照明ムラを解消でき、広い照明エリアにほぼ均一に光を照射できる。
【0032】
ここで、光出射端52から出射する光の量を増加させるためには、光ファイバにより多くの光を入射する必要があり、光ファイバの出射端及び光入射端51でのエネルギー密度が高くなる。この部分でのエネルギー密度が高くなると、光入射端51が損傷するおそれが出てくる。そこで、本実施形態では、光入射端51を含む第1の導光部41をガラス材料で形成している。ガラスを用いることで、光入射端51に高いエネルギー密度で光が入射したときでも、光入射端51(第1の導光部41)の損傷を防ぐことができる。一方、本実施形態では、第2の導光部42を樹脂材料で形成している。樹脂材料は加工が容易であるという利点がある。
【0033】
図4(a)及び(b)は、導光板11の変形例を示している。図4(a)は、導光板11を側面方向(図2(a)と同じ方向)から見た図で示し、図4(b)は、導光板11を正面方向(図2(b)と同じ方向)から見た図で示している。図4(a)に示すように、この例では、第2の導光部42は湾曲している。また、図4(b)に示すように、第2の導光部42は、光出射端52に向けて、超音波振動子の配列方向に光を拡大させる。この場合、図2(b)に示すように第2の導光部42を直線状(長方形の板状)に形成する場合に比して、光出射端52での光の均一性を向上できる効果が期待できる。光入射端51を含む第1の導光部41は図3と同様である。
【0034】
図4に示す導光板11の第2の導光部42は、例えば全反射を満たす範囲で、超音波振動子12の内側方向に湾曲している。図2(a)に示すように、超音波振動子12のサイドから被検体に向けて光を照射する場合、特に超音波振動子12の直下に光が届きにくいことがある。図4に示すような、超音波振動子内側方向に湾曲した導光板11を用い、光出射端52から斜め方向に光が出射させることで、超音波振動子12のサイドに配置した導光板11から、超音波振動子12の直下に対して光を照射しやすくなる。第2の導光部42は、樹脂で形成されているため、このような3次元的な加工も容易である。
【0035】
なお、図2(a)及び(b)では、光ファイバと導光板との組を複数配置したが、光ファイバ及び導光板は、必ずしも複数配置される必要はない。例えば、1本の光ファイバで光源ユニット31(図1)から超音波プローブ10まで光を導光し、超音波プローブ10内に、超音波振動子12が配列された範囲に光の幅を広げる導光板11を1つ設けてもよい。また、複数の導光板は、必ずしも超音波振動子12の両側に配置されている必要はない。例えば超音波振動子12の一方の側に、超音波振動子12の配列方向に沿って複数の導光板11を並べ、超音波振動子12の片方の側から光照射を行うことも可能である。
【0036】
次いで、本発明の第2実施形態を説明する。図5は、本発明の第2実施形態の超音波プローブで用いられる導光板を示している。本実施形態における導光板60も、第1実施形態における導光板11と同様に、ガラスで形成された第1の導光部61と、樹脂で形成された第2の導光部62とを有する。第1実施形態では、例えば3本の光ファイバ21a〜21cに対して、3つの導光板11a〜11c(図2(b))を対応させていた。これに対し、本実施形態では、1つの導光板60の光入射端に、複数の光ファイバ21を光学的に結合させる。
【0037】
図5において、導光板60の長手方向は、超音波振動子12(図2(a)及び(b))が配列された方向に対応している。4本の光ファイバ21は、超音波振動子の配列方向に沿って、例えば等間隔で並べられており、それら4本の光ファイバ21が、導光板60の光入射端に光学的に結合されている。超音波プローブが、導光板60を2つ備え、それら2つの導光板が超音波振動子を挟んで対向するように配置されていてもよい。
【0038】
導光板60(第1の導光部61及び第2の導光部62)は、例えば直方体形状に形成される。第1の導光部61の光を導光する方向の長さをAとし、第2の導光部62の光を導光する方向の長さをBとする。第1の導光部61は、入射端側から入射した光を、光の断面積を拡大させつつ第2の導光部62側に導光する。例えば第1の導光61の長さが11mmであり、光ファイバ21のファイバコア径が0.3mmで、ファイバ出射光がNA(開口数)0.22相当であるとすると、第1の導光部61は、光の断面積をφ0.3mm=7×10−4cmからφ2.8mm=0.062cmまで拡大させる。第2の導光部62は、第1の導光部61により導光された光を、超音波振動子近傍の光出射端まで導光する。
【0039】
図6は、第1の導光部61と第2の導光部62との境界部分における光の分布画像を示す。導光板60として、横40mm×縦3mmの断面をもつ導光板を考える。光ファイバ21のファイバコア径は0.3mmで、ファイバ出射光はNA(開口数)0.22相当であるとする。また、第1の導光部61の屈折率は、1.45程度であるとする。図6は、第1の導光部61の長さAが12mmのときの光の分布画像、言い換えれば、導光板60の光入射端から12mmだけ離れた断面における光の分布を示している。分布画像において、黒い部分は光が弱い部分に対応し、白い部分は光が強い部分に対応している。
【0040】
図7は、光入射端からの距離と光のエネルギー密度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は、光入射端から第1の導光部61と第2の導光部62との境界面まで距離、つまり、第1の導光部61の長さを表す。縦軸は、第1の導光部61と第2の導光部62との境界部分の断面における光のエネルギー密度の最大値(例えば1mm×1mmの領域における平均エネルギー密度が最も高い部分におけるエネルギー密度)を表す。ファイバへの入力エネルギーとして、12.5mJと10mJの2つを考えた。図7を参照すると、第1の導光部61の長さが短いほど、エネルギー密度の最大値が大きくなることがわかる。これは、第1の導光部61の長さが短いほど、光の断面積が狭いためである。
【0041】
ここで、第2の導光部62に入射する光のエネルギー密度が高すぎると、第2の導光部62を構成する樹脂、例えばポリカーボネートが損傷を受けるおそれがある。ポリカーボネートの耐熱基準(温度など)や実験結果などから、180mJ/cm以上のエネルギー密度の光が入射すると、樹脂が損傷することがわかっている。図7を参照すると、第1の導光部61の長さが、光ファイバへの入力エネルギーが12.5mJの場合で11mm、光ファイバへの入力エネルギーが10mJの場合で8mmよりも短いと、第1の導光部61と第2の導光部62との境界部分でエネルギー密度が180mJ/cm(しきい値レベル)を超えるところが現れる。実用的に光ファイバに入力可能なエネルギーは10mJ程度であることから、第1の導光部61の長さは8mm以上が望ましい。第2の導光部62の長さに関しては、測定対象などに応じて適宜選択すればよく、特に制限はない。
【0042】
本実施形態では、1つの導光板60に対して複数の光ファイバを結合させる。このようにする場合でも、導光板60がガラスで形成された第1の導光部61と樹脂で形成された第2の導光部62とを含むことにより、第1実施形態と同様な効果が得られる。また、第1の導光部61の長さを8mm以上とすることで、第2の導光部62に入射する光のエネルギー密度をしきい値レベルよりも低くすることができ、第2の導光部62の損傷を防ぐことができる。
【0043】
続いて、本発明の第3実施形態を説明する。図8は、本発明の第3実施形態の超音波プローブの側面方向の断面を示す。超音波プローブ10は、超音波振動子12を挟んで対向する2つの導光板70を備える。導光板70は、ガラスで形成された第1の導光部71と樹脂で形成された第2の導光部72とを有する。第1の導光部71は、図3に示す第1の導光部41又は図5に示す第1の導光部61に対応する。また、第2の導光部72は、図3に示す第2の導光部42又は図5に示す第2の導光部62に対応する。第2の導光部72は、超音波振動子方面に湾曲している。
【0044】
本実施形態では、超音波プローブ10は、樹脂ゲルアダプタなどのアダプタ14を更に備える。アダプタ14は、光透過性を有すると共に、超音波透過性も有する。アダプタ14は、超音波振動子12の超音波検出面、及び、導光板70の光出射面を覆うように超音波プローブ10に取り付けられる。導光板70によって導光された光は、アダプタ14を介して、被検体に照射される。アダプタ14を用いることで、光を照射しにくい超音波振動子直下の領域に、より光を照射しやすくなる。その他の点は、第1又は第2実施形態と同様である。
【0045】
引き続いて、本発明の第4実施形態を説明する。図9は、本発明の第4実施形態の超音波プローブの側面方向の断面を示す。超音波プローブ10は、超音波振動子12を挟んで対向する2つの導光板80を備える。導光板80は、ガラスで形成された第1の導光部81と樹脂で形成された第2の導光部82とを有する。第1の導光部81は、図3に示す第1の導光部41又は図5に示す第1の導光部61に対応する。また、第2の導光部82は、図3に示す第2の導光部42又は図5に示す第2の導光部62に対応する。
【0046】
第2の導光部82の光出射側の端面には、光拡散面が形成されている。例えば第2の導光部82の光出射側の端面は、光を拡散させるための凹凸が形成されている。光出射側に代えて、又はこれに加えて、第2の導光部62の光入射側(第1の導光部81との境界側)の端面に光拡散面を形成してもよい。第2の導光部62に光を拡散する機能を持たせることで、光拡散板13(図2)を別途に設ける必要がなくなる。
【0047】
また、本実施形態では、第2の導光部を超音波振動子内側方向に湾曲させるのに代えて、導光板80を、導光板80から出射した光が超音波振動子12の内側方向に向けて進行するように、超音波振動子12の超音波検出面に対して所定の角度で傾けて配置している。このように傾けて配置することで、導光板80の光出射面から超音波振動子12の直下方向に光を出射することができる。
【0048】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。図10は、本発明の第5実施形態の超音波プローブの側面方向の断面を示す。超音波プローブ10は、超音波振動子12を挟んで対向する2つの導光板90を備える。導光板90は、ガラスで形成された第1の導光部91と樹脂で形成された第2の導光部92とを有する。第1の導光部91は、図3に示す第1の導光部41又は図5に示す第1の導光部61に対応する。また、第2の導光部92は、図3に示す第2の導光部42又は図5に示す第2の導光部62に対応する。第2の導光部62の光入射側及び光出射側の端面のうちの少なくとも一方に、拡散面が形成されていてもよい。
【0049】
導光板90は、光透過性を有する光透過部分と、光透過部分を挟み込むように形成された反射部材とを含む。図10においては、第1の導光部91が光透過部分に対応し、反射膜93が反射部材に対応する。反射膜93には、無機材料やアルミニウムなどを用いることができる。図10では、第1の導光部91に対して反射膜93を設けているが、第2の導光部92に対して反射膜93を設ける構成も可能である。コアとなる光透過部分を反射膜93で挟み込むのに代えて、コアとなる光透過部分を、それよりも屈折率が低い材料で挟み込むこと構成とすることも可能である。低屈折材料にはサイトップなどの有機材料を用いることができる。そのような構成でも、光ファイバ側から入射した光が導光板側面から漏れ出ることを防ぐことができる。
【0050】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の超音波プローブは、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10:超音波プローブ
11:導光板
12:超音波振動子
13:光拡散板
14:アダプタ
21:光ファイバ
22:電気ケーブル
31:光源ユニット
32:超音波ユニット
41:第1の導光部
42:第2の導光部
51:光入射端
52:光出射端
60、70、80、90:導光板
61、71、81、91:第1の導光部
62、72、82、92:第2の導光部
93:反射膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って配列された複数の超音波振動子と、
光源から出射した光をプローブ本体まで導光する光ファイバと、
前記光ファイバと光学的に結合された光入射端から前記超音波振動子の近傍に配置された光出射端まで光を導光する導光手段とを備え、
前記導光手段が、
前記光入射端を含み、該光入射端から前記光出射端側に向けて光を導光する第1の導光部であって、ガラス材料で形成され、前記光入射端における入射光の断面積に比して前記第1の導光部の出射端での光の断面積を拡大させる第1の導光部と、
前記光出射端を含み、前記第1の導光部により導光された光を前記光出射端まで導光する第2の導光部であって、樹脂材料で形成され、前記光出射端から被検体に向けて光を照射する第2の導光部とを有することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記第1の導光部が、テーパー状に形成された導光路を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記第1の導光部が、少なくとも、前記入射光の前記光入射端での前記所定方向の幅に比して、導光された光の前記第1の導光部の出射端での前記所定方向の幅を拡大させるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記第2の導光部が、前記超音波振動子内側方向に湾曲していることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記導光手段が、超音波振動子の超音波検出面に対して所定の角度で傾けて配置されていることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記光ファイバ及び前記導光手段を複数備え、前記複数の導光手段が前記所定方向に沿って並べられていることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記複数の導光手段が、前記所定方向に並べられるのに代えて、又はこれに加えて、前記所定方向とは直交する方向に前記超音波振動子を挟んで対向するように配置されることを特徴とする請求項6に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記光ファイバを複数備え、1つの導光手段の光入射端に、前記所定方向に沿って並べられた複数の光ファイバが光学的に結合されていることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記導光手段を少なくとも2つ備え、2つの導光手段が前記超音波振動子を挟んで対向するように配置されることを特徴とする請求項8に記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記導光手段が、平板状のコアを平面クラッドで挟み込んだスラブ型の導光板であることを特徴とする請求項1から9何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項11】
前記導光手段が、光透過性を有する光透過部分と、該光透過部分を挟み込むように形成された反射部材とを含むことを特徴とする請求項1から9何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項12】
前記光入射端から前記第1の導光部と第2の導光部との境界までの距離が8mm以上であることを特徴とする請求項1から11何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項13】
光及び超音波を透過するアダプタであって、前記超音波振動子の超音波検出面及び前記導光手段の光出射端を覆うように超音波プローブに取り付けられたアダプタを更に備えたことを特徴とする請求項1から12何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項14】
前記光出射端の光出射側に光を拡散させる拡散板を更に有することを特徴とする請求項1から13何れかに記載の超音波プローブ。
【請求項15】
前記第2の導光部の光出射側の端面、及び、前記第1の導光部との境界部分の端面のうちの少なくとも一方に、光を拡散させる拡散面が形成されていることを特徴とする請求項1から13何れかに記載の超音波プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−179350(P2012−179350A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16061(P2012−16061)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】