説明

超音波プローブ

【課題】操作者の負担を軽減し、安定した姿勢に保持して超音波診断を行うことができる超音波プローブを提供することを目的とする。
【解決手段】 筐体2の一端部2aに形成された振動子アレイ収容部7に振動子アレイ3が収容され、他端部2bに振動子アレイ3の配列の中心線Cに直交する所定の方向Dへ向かって突出形成された突出部8に重量物であるバッテリ6が収容され、振動子アレイ収容部7と突出部8との間には信号処理基板4を収容する把持部9が形成され、振動子アレイ3の超音波送受信面3aを水平にしたときの超音波プローブ1全体の重心Gは、振動子アレイ3の配列の中心線Cから所定の方向Dへずれた位置に存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波プローブに関し、特に、プローブ操作の安定性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置では、片手で超音波プローブを把持して振動子アレイの超音波送受信面を被検体の表面に当接しつつ診断を行うが、高精度の超音波画像を得るためには、超音波プローブを安定した姿勢に保持することが必要となる。
ところが、超音波プローブにおいては、超音波送受信面が露出されるように筐体の最下部に振動子アレイが配置されるため、信号処理のための回路基板、電源供給のためのバッテリ等を内蔵している場合には、これらの内蔵部品を振動子アレイの上方に配置しなければならず、超音波プローブの重心位置が高くなって、超音波プローブの姿勢を安定させにくくなる。
【0004】
そこで、特許文献1には、筐体内に配設されている充填剤として、その配設箇所に応じて密度の異なる複数種類の充填剤を用いることにより、重心位置を低くした超音波プローブが開示されている。
また、特許文献2には、筐体のグリップ部にくぼみを形成し、操作者が持ちやすくすることで、操作性を向上しようとする超音波プローブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−30853号公報
【特許文献2】特開2002−65666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の超音波プローブでは、重心を筐体の下部へ位置させることはできるものの、通常、この種の超音波プローブの操作時には、振動子アレイの超音波送受信面を下方へ向けた状態で筐体を側方から把持することが多いため、重心が下方に存在するだけでは、操作性の著しい向上は見込めず、超音波プローブを安定した姿勢に長時間保持することが困難である。
また、特許文献2に記載の超音波プローブのように、筐体のグリップ部にくぼみを形成しても、操作者の手にかかる重量は変わらず、負担軽減につながらない。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、操作者の負担を軽減し、安定した姿勢に保持して超音波診断を行うことができる超音波プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る超音波プローブは、駆動信号に基づいて振動子アレイから超音波ビームを送信すると共に被検体による超音波エコーを振動子アレイで受信して信号処理基板に搭載された処理回路で受信信号を生成する超音波プローブであって、振動子アレイを収容する振動子アレイ収容部を一端部に有すると共に信号処理基板を振動子アレイの近傍に収容する筺体を備え、筺体は、振動子アレイの配列の中心線に直交する所定の方向へ突出する突出部を他端部側に有すると共に、突出部と振動子アレイ収容部との間に前記所定の方向から把持するための把持部を有し、振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心位置が振動子アレイの配列の中心線から前記所定の方向へずれたものである。
【0009】
好ましくは、振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心位置が把持部よりも前記所定の方向に向かう外側に存在している。
また、突出部内に重量物を収容することができる。
診断装置本体と無線通信を行う無線通信回路が搭載されると共に筺体内に収容された無線通信基板と、信号処理基板に搭載された処理回路および無線通信基板に搭載された無線通信回路に電源供給するバッテリとをさらに備えることもできる。バッテリは、重量物として突出部内に収容してもよい。
突出部を、把持部に対して振動子アレイの超音波送受信面と平行な面内で回転可能にしてもよい。この場合、信号処理基板は、把持部に固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、筺体が、振動子アレイの配列の中心線に直交する所定の方向へ突出する突出部を有すると共に、突出部と振動子アレイ収容部との間に把持部を有し、振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心位置が振動子アレイの配列の中心線から突出部が突出する所定の方向へずれているので、操作者の負担を軽減し、超音波プローブを安定した姿勢に保持して超音波診断を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波プローブの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る超音波プローブの操作時の様子を示す側面図である。
【図3】実施の形態1に係る超音波プローブの操作時の様子を示す平面図である。
【図4】実施の形態1に係る超音波プローブを有する超音波診断装置の内部構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態2に係る超音波プローブの操作時の様子を示す側面図である。
【図6】実施の形態3に係る超音波プローブの操作時の様子を示す側面図である。
【図7】実施の形態3に係る超音波プローブの操作時の様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波プローブ1を示す。この超音波プローブ1は、筐体2を有し、この筐体2内に、振動子アレイ3と、信号処理基板4と、無線通信基板5と、バッテリ6とが内蔵されている。
筐体2は、その一端部2aに、振動子アレイ3を収容するための振動子アレイ収容部7を有している。振動子アレイ3は、超音波送受信面3aを有しており、この超音波送受信面3aが筐体2の一端部2aから外方を向くように、振動子アレイ収容部7の内部に収容されている。
一方、筐体2の他端部2b側には、振動子アレイ3の配列の中心線Cに直交する所定の方向Dへ向かって突出する突出部8が形成されており、この突出部8の内部にバッテリ6が収容されている。
【0013】
さらに、筐体2には、振動子アレイ収容部7と突出部8との間に把持部9が形成されている。把持部9は、図2および図3に示されるように、突出部8が突出している所定の方向Dから操作者が筐体2を把持するためのものである。
筐体2内において、信号処理基板4は、振動子アレイ3の直上で且つ振動子アレイ3の近傍に配置され、主に把持部9の内部に収容されている。また、無線通信基板5は、信号処理基板4の上部に配置され、これら信号処理基板4と無線通信基板5は、概ね振動子アレイ3の配列の中心線C上に位置している。
【0014】
これに対して、突出部8内に収容されたバッテリ6は、振動子アレイ3の配列の中心線Cから所定の方向Dへ大きくずれた位置に配置されている。このバッテリ6は、超音波プローブ1を構成する部材の中でも大きな重量を有しており、このため、振動子アレイ3の超音波送受信面3aを水平にしたときの超音波プローブ1全体の重心Gは、振動子アレイ3の配列の中心線Cから所定の方向Dへずれた位置に存在する。より具体的には、図1に示されるように、重心Gの位置は、把持部9の外周部よりも所定の方向Dに向かう外側に存在している。
【0015】
ここで、図4に、実施の形態1に係る超音波プローブ1を有する超音波診断装置の内部構成を示す。超音波プローブ1に診断装置本体10が無線通信により接続されている。
【0016】
超音波プローブ1は、1次元又は2次元の振動子アレイ3を構成する複数の超音波トランスデューサ11を有し、これらトランスデューサ11にそれぞれ対応して受信信号処理部12が接続され、さらに受信信号処理部12にパラレル/シリアル変換部13を介して無線通信部14が接続されている。また、複数のトランスデューサ11に送信駆動部15を介して送信制御部16が接続され、複数の受信信号処理部12に受信制御部17が接続され、無線通信部14に通信制御部18が接続されている。そして、パラレル/シリアル変換部13、送信制御部16および受信制御部17および通信制御部18にプローブ制御部19が接続されている。
さらに、プローブ制御部19には、バッテリ制御部20を介してバッテリ6が接続されている。
【0017】
図1に示した超音波プローブ1の信号処理基板4には、受信信号処理部12、パラレル/シリアル変換部13、送信駆動部15、送信制御部16、受信制御部17、プローブ制御部19およびバッテリ制御部20が搭載され、無線通信基板5には、無線通信部14および通信制御部18が搭載されている。
【0018】
複数のトランスデューサ11は、それぞれ送信駆動部15から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ11は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや単結晶、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0019】
送信駆動部15は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部16によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ11から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ11に供給する。
【0020】
各チャンネルの受信信号処理部12は、受信制御部17の制御の下で、対応するトランスデューサ11から出力される受信信号に対して直交検波処理または直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成する。受信信号処理部12は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことによりサンプルデータを生成してもよい。
パラレル/シリアル変換部13は、複数チャンネルの受信信号処理部12によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0021】
無線通信部14は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部14は、診断装置本体10との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体10に送信すると共に、診断装置本体10から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部18に出力する。通信制御部18は、プローブ制御部19によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部14を制御すると共に、無線通信部14が受信した各種の制御信号をプローブ制御部19に出力する。
【0022】
プローブ制御部19は、診断装置本体10から伝送される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
バッテリ5は、超音波プローブ1の電源として機能し、信号処理基板4および無線通信基板5に搭載された各部に電力を供給する。バッテリ制御部20は、バッテリ6から超音波プローブ1内への電力供給を制御する。
また、超音波プローブ1は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の走査方式が採用される。
【0023】
一方、診断装置本体10は、無線通信部21を有し、この無線通信部21にシリアル/パラレル変換部22を介してデータ格納部23が接続され、データ格納部23に画像生成部24が接続されている。さらに、画像生成部24に表示制御部25を介して表示部26が接続されている。また、無線通信部21に通信制御部27が接続され、シリアル/パラレル変換部13、画像生成部24、表示制御部25および通信制御部27に本体制御部28が接続されている。さらに、本体制御部28には、オペレータが入力操作を行うための操作部29と、動作プログラムを格納する格納部30がそれぞれ接続されている。
【0024】
無線通信部21は、超音波プローブ1との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ1に送信する。また、無線通信部21は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部27は、本体制御部28によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部21を制御する。
シリアル/パラレル変換部22は、無線通信部21から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部23は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部22によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
画像生成部24は、データ格納部23から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部24は、整相加算部31と画像処理部32とを含んでいる。
【0025】
整相加算部31は、本体制御部28において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0026】
画像処理部32は、整相加算部31によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部32は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
表示制御部25は、画像生成部24によって生成される画像信号に基づいて、表示部26に超音波診断画像を表示させる。表示部26は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部25の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
本体制御部28は、操作者により操作部29から入力された各種の指令信号等に基づいて、診断装置本体10内の各部の制御を行うものである。
【0027】
このような診断装置本体10において、シリアル/パラレル変換部22、画像生成部24、表示制御部25、通信制御部27および本体制御部28は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。上記の動作プログラムは、格納部30に格納される。格納部30における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROMまたはDVD−ROM等を用いることができる。
【0028】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
まず、図2および図3に示されるように、突出部8が突出している所定の方向Dから操作者が筐体2を把持し、筐体2の振動子アレイ収容部7に収容されている振動子アレイ3の超音波送受信面3aを被検体の表面に当接した状態で診断が開始される。上述したように、振動子アレイ3の超音波送受信面3aを水平にしたときの超音波プローブ1全体の重心Gは、振動子アレイ3の配列の中心線Cから把持側、すなわち、所定の方向Dへずれた位置に存在しており、操作者は、重量物であるバッテリ6が収容された突出部8を手の上に位置させながら重心Gの位置を抱えるようにして把持部9を把持することとなる。このため、操作者の負担が軽減され、操作者は、極めて安定性よく超音波プローブ1を把持することができ、長時間にわたっても超音波プローブ1を被検体に対して安定した姿勢に保持することが可能となる。
【0029】
診断時には、超音波プローブ1の送信駆動部15から供給される駆動信号に従って振動子アレイ3を構成する複数のトランスデューサ11から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ11から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部12に供給されてサンプルデータが生成され、パラレル/シリアル変換部13でシリアル化された後に無線通信部14から診断装置本体10へ無線伝送される。診断装置本体10の無線通信部21で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部22でパラレルのデータに変換され、データ格納部23に格納される。さらに、データ格納部23から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部24で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部25により超音波診断画像が表示部26に表示される。
【0030】
このように、実施の形態1によれば、超音波プローブ1の把持の安定性が向上し、操作者の負担が軽減され、熟練者でなくても超音波プローブ1を安定した姿勢に保持して超音波診断を行い、高精度の超音波画像を得ることが可能となる。
【0031】
実施の形態2
図5に実施の形態2に係る超音波プローブ41を示す。この超音波プローブ41は、実施の形態1の超音波プローブ1において、筐体2の代わりに筐体42を用いたものである。この筐体42は、実施の形態1における筐体2と同様の全体形状を有しているが、振動子アレイ収容部7と把持部9が形成された第1の筐体部43と、突出部8が形成された第2の筐体部44とに分割されており、第2の筐体部44が第1の筐体部43に対して振動子アレイ3の超音波送受信面3aとほぼ平行な面P内で振動子アレイ3の配列の中心線Cの回りに回転可能に構成されている。
【0032】
図5に示されるように、信号処理基板4の一部が第2の筐体部44の内部に位置しているが、信号処理基板4は、第1の筐体部43の把持部9に固定されており、第1の筐体部43に対して第2の筐体部44を回転させても、第2の筐体部44と共に回転しないように構成されている。これは、振動子アレイ3で受信した受信信号を処理する回路が信号処理基板4に搭載されているので、振動子アレイ3と信号処理基板4との電気的な接続関係を高精度に維持することが好ましいからである。
【0033】
無線通信基板5については、信号処理基板4と共に第1の筐体部43の把持部9に固定されて第2の筐体部44の回転に関わらないように構成してもよく、あるいは、第2の筐体部44内に固定されて第2の筐体部44と共に回転するように構成することもできる。
突出部8内に収容されているバッテリ6は、第2の筐体部44の回転に伴い、第1の筐体部43に対して回転する。
【0034】
このように、互いに回転可能な第1の筐体部43および第2の筐体部44に分割された筐体42を用いることにより、把持部9が形成されている第1の筐体部43に対する、重量物であるバッテリ6を内蔵する第2の筐体部44の回転角度に応じて超音波プローブ41の把持の安定性が変化する。そこで、操作者によって斜めから把持する等、超音波プローブ41の把持の仕方が異なる場合、および、被検体の診断部位に応じて動子アレイ3の超音波送受信面3aを水平ではなく傾斜あるいは直立させて診断を行う場合等において、個々の操作者が超音波プローブ41を把持したときに、最も優れた安定性を示すような回転角度に第2の筐体部44を回転させ、この状態で診断を行うことができる。
このため、操作者による把持の仕方および診断時の超音波プローブ41の姿勢等に関わらずに、超音波プローブ41を安定した姿勢に保持して超音波診断を行うことが可能となる。
【0035】
なお、筐体42は、第1の筐体部43に対して第2の筐体部44を回転させたときに、所定の回転角度毎にクリックされる等、選択された回転角度を所定の強さで保持する機構を有していることが好ましい。スナップ式あるいは固定ネジを用いて所望の回転角度で第2の筐体部44を第1の筐体部43にロックするようにしてもよい。
また、この実施の形態2では、第2の筐体部44が第1の筐体部43に対して振動子アレイ3の配列の中心線Cの回りに回転可能に構成されていたが、これに限るものではなく、振動子アレイ3の超音波送受信面3aとほぼ平行な面P内で回転可能であればよい。
【0036】
実施の形態3
図6および図7に実施の形態3に係る超音波プローブ51を示す。この超音波プローブ51に用いられた筐体52は、実施の形態2における筐体42と同様に、第1の筐体部53と、第1の筐体部53に対して振動子アレイ3の超音波送受信面3aとほぼ平行な面P内で回転可能な第2の筐体部54から構成されている。
【0037】
第1の筐体部53には、振動子アレイ3を収容する振動子アレイ収容部55と、振動子アレイ収容部55の上部に位置し且つ振動子アレイ収容部55に連結固定された把持部56が形成されている。
把持部56内には、振動子アレイ3の直上で且つ振動子アレイ3の近傍に信号処理基板4が配置され、信号処理基板4の上部に無線通信基板5が配置されている。これら信号処理基板4と無線通信基板5は、概ね振動子アレイ3の配列の中心線C上に位置しており、第1の筐体部53の把持部56に固定され、第1の筐体部53に対して第2の筐体部54を回転させても、第2の筐体部54と共に回転しないように構成されている。
【0038】
一方、第2の筐体部54には、突出部57が形成されている。この突出部57は、実施の形態1および2における突出部8と異なり、振動子アレイ3の配列の中心線Cに直交する方向だけでなく、下方すなわち第1の筐体部53側へも向かって延びており、斜め下方へ突出している。このような突出部57内に重量物である図示しないバッテリが収容されており、その結果、振動子アレイ3の超音波送受信面3aを水平にしたときの超音波プローブ51全体の重心は、振動子アレイ3の配列の中心線Cから外方へずれた位置に存在している。
【0039】
突出部57が斜め下方へ突出しているので、図6に示されるように、操作者が第1の筐体部53の把持部56を把持したときに、重量物であるバッテリが収容された突出部57が操作者の手の上に位置し、操作者は安定性よく超音波プローブ1を把持することができる。また、診断中に、何らかの原因で操作者による把持力が弱まったり、操作者の手が筐体52から滑っても、突出部57が操作者の指に掛かるため、超音波プローブ51の落下のおそれが抑制される。
【0040】
また、互いに回転可能な第1の筐体部53および第2の筐体部54に分割された筐体52を用いているので、実施の形態2と同様に、操作者による把持の仕方および診断時の超音波プローブ51の姿勢等に関わらずに、超音波プローブ51を安定した姿勢に保持して超音波診断を行うことが可能となる。
なお、突出部57内にバッテリを収容するだけのスペースがない場合には、第2の筐体部54内の突出部57以外の領域にバッテリを配置し、超音波プローブ51全体の重心位置を突出部57に振動子アレイ3の配列の中心線Cから外方へずらすために、突出部57内に何らかの重量物を収容することもできる。
【0041】
上述した実施の形態1〜3では、超音波プローブ1,41,51と診断装置本体10とが互いに無線通信により接続されていたが、これに限るものではなく、接続ケーブルを介して超音波プローブ1,41,51が診断装置本体10に接続されていてもよい。この場合には、超音波プローブ1,41,51において、無線通信部14および通信制御部18が搭載された無線通信基板5とバッテリ6とが不要になると共に、診断装置本体10の無線通信部21および通信制御部27も不要となる。このため、バッテリ6の代わりに突出部8および57の内部に何らかの重量物を収容すればよい。
【符号の説明】
【0042】
1,41,51 超音波プローブ、2、42,52 筐体、2a 一端部、2b 他端部、3 振動子アレイ、3a 超音波送受信面、4 信号処理基板、5 無線通信基板、6 バッテリ、7,55 振動子アレイ収容部、8,57 突出部、9,56 把持部、10 診断装置本体、11 トランスデューサ、12 受信信号処理部、13 パラレル/シリアル変換部、14 無線通信部、15 送信駆動部、16 送信制御部、17 受信制御部、18 通信制御部、19 プローブ制御部、20 バッテリ制御部、21無線通信部、22 シリアル/パラレル変換部、23 データ格納部、24 画像生成部、25 表示制御部、26 表示部、27 通信制御部、28 本体制御部、29 操作部、30 格納部、31 整相加算部、32 画像処理部、43,53 第1の筐体部、44,54 第2の筐体部、D 所定の方向、C 振動子アレイの配列の中心線、G 重心、P 超音波送受信面と平行な面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号に基づいて振動子アレイから超音波ビームを送信すると共に被検体による超音波エコーを前記振動子アレイで受信して信号処理基板に搭載された処理回路で受信信号を生成する超音波プローブであって、
前記振動子アレイを収容する振動子アレイ収容部を一端部に有すると共に前記信号処理基板を前記振動子アレイの近傍に収容する筺体を備え、
前記筺体は、前記振動子アレイの配列の中心線に直交する所定の方向へ突出する突出部を他端部側に有すると共に、前記突出部と前記振動子アレイ収容部との間に前記所定の方向から把持するための把持部を有し、
前記振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心位置が前記振動子アレイの配列の中心線から前記所定の方向へずれていることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心位置が前記把持部よりも前記所定の方向に向かう外側に存在する請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記突出部内に重量物が収容されている請求項1または2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
診断装置本体と無線通信を行う無線通信回路が搭載されると共に前記筺体内に収容された無線通信基板と、
前記信号処理基板に搭載された前記処理回路および前記無線通信基板に搭載された前記無線通信回路に電源供給するバッテリと
をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記バッテリが重量物として前記突出部内に収容されている請求項4に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記突出部は、前記把持部に対して前記振動子アレイの超音波送受信面と平行な面内で回転可能である請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記信号処理基板は、前記把持部に固定されている請求項6に記載の超音波プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−65881(P2012−65881A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213757(P2010−213757)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】