説明

超音波ホーン及びチップボンダ装置

【課題】吸着ノズルの交換が容易でありながらも、吸着ノズルの位置ずれを防止する。
【解決手段】超音波振動を、吸着ノズルを介して電子部品片に伝達して、電子部品片を相手側部材に超音波接合する超音波ホーンにおいて、長手方向が水平方向に沿うように配置され、長手方向の中心部が振動モードにおける腹となると共に、該中心部の両側の第1及び第2の位置が振動モードにおける節となる形状を呈するホーン本体と、第1及び第2の位置を介してホーン本体に連続形成されて、該ホーン本体を所定の箇所に固定する固定部と、を備え、吸着ノズルを着脱可能に保持する保持部は、ホーン本体の長手方向の中心部を垂直に貫通し、吸着ノズルが挿脱される保持孔と、ホーン本体の長手方向における該保持孔の両脇において、該長手方向に沿って垂直に貫通するスリットと、スリットを貫通するようにホーン本体を水平方向に貫通するボルト孔と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドバンプ等の接合材を利用して電子部品を組み立てる際に利用される超音波ホーン及びチップボンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を組み立てる際において、電子部品片を基板等の相手側部材に超音波接合するチップボンダ装置が広く利用されている。このチップボンダ装置は、電子部品片および相手側部材の間に金属製のスタッドバンプや鉛半田等の接合材を介在させておき、電子部品片を超音波振動させて接合材を溶かすことで、電子部品片を相手側部材に溶着させるものである。
【0003】
このチップボンダ装置は、電子部品片を超音波振動させる手段として、電子部品片を吸着する吸着ノズルが設けられる超音波ホーンと、この超音波ホーンに超音波振動を入力する超音波振動子と、を備えている。このようなチップボンダ装置では、超音波ホーンに入力された超音波振動が、吸着ノズルを介して電子部品片に伝達される。
【0004】
一般的に、吸着ノズルは、強度が弱く劣化が速いので、適宜交換できるように超音波ホーンに対して着脱可能に構成されている(特許文献1参照)。具体的に、吸着ノズルは、基端に外テーパ部を有しており、その外テーパ部が、超音波ホーンに形成されている貫通孔下部の内テーパ部に嵌め込まれる。そして、貫通孔上部からネジが挿入され、そのネジが、吸着ノズルの基端面に形成されているネジ孔にねじ込まれる。このように、外テーパ部が内テーパ部に嵌め込まれる構造を有しているので、吸着ノズルを超音波ホーンに対して強固に固定できる。また、吸着ノズルをネジで固定する構造を有しているので、ネジを緩めて外すことで、容易に吸着ノズルを交換できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−141374号公報(段落[0033]〜[0035]および図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているチップボンダ装置では、外テーパ部が内テーパ部に嵌め込まれる構造を有しているので、超音波ホーンの超音波振動等によってネジが少しでも緩むと、吸着ノズルがガタついて位置ずれが発生するという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、吸着ノズルの交換が容易でありながらも、吸着ノズルの位置ずれ防止を可能とする超音波ホーン及びチップボンダ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者の鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0009】
上記目的を達成する本手段は、電子部品片を吸着する吸着ノズルを着脱可能に保持する保持部と、超音波振動が入力される入力部と、を有し、前記入力部から入力された超音波振動を、前記保持部で保持する前記吸着ノズルを介して前記電子部品片に伝達して、前記電子部品片を、該電子部品片との間に金属製の接合材を介在させた相手側部材に超音波接合する超音波ホーンであって、長手方向が水平方向に沿うように配置され、長手方向の中心部が振動モードにおける腹となると共に、該中心部の両側の第1及び第2の位置が振動モードにおける節となる形状を呈するホーン本体部と、前記第1及び第2の位置を介して前記ホーン本体部に連続形成されて、該ホーン本体を所定の位置に固定する固定部と、を備え、前記保持部は、前記ホーン本体部における長手方向の中心部を垂直に貫通し、前記吸着ノズルが挿脱される保持孔と、前記ホーン本体部の長手方向における該保持孔の両脇において、該長手方向に沿って垂直に貫通するスリットと、前記スリットを通過するように前記ホーン本体部を水平方向に貫通し、ボルトの締付け又は緩めによって前記吸着ノズルを固定し又は該吸着ノズルの固定を解除するボルト孔と、を備えることを特徴とする超音波ホーンである。
【0010】
上記手段の超音波ホーンにおいて、ホーン本体は、長手方向の中心部が水平方向に括れた形状を呈することを特徴とすることが好ましい。
【0011】
上記手段の超音波ホーンは、前記保持孔に挿入された前記吸着ノズルの先端又は後端を当接させる当接部と、前記当接部及び前記ホーン本体部の間隔を一定に保つ間隔保持部と、を備える治具によって、前記吸着ノズルの垂直方向の位置決めがされることを特徴とすることが好ましい。
【0012】
上記手段の超音波ホーンは、前記吸着ノズルと比較して密度の高い材料からなることを特徴とすることが好ましい。
【0013】
上記手段の超音波ホーンは、前記スリットの両脇において垂直に貫通し、該スリットの幅と比較して大きい径を有する二つの貫通孔を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成する本手段は、中心軸を回転軸として回転可能に支持されるターレットと、出力軸に前記ターレットが接続されるターレット駆動モータと、前記ターレットの周方向に複数設けられて、電子部品片を保持し、該電子部品片を相手側部材に超音波接合する部品保持ユニットと、前記ターレットと前記部品保持ユニットの間に設けられて、前記部品保持ユニットを前記ターレットに対して上下方向に移動自在に案内する部品保持ユニット案内装置と、前記部品保持ユニットの上側に設けられ、前記部品保持ユニットを押圧することによって、該部品保持ユニットを下方向に移動させる部品保持ユニット駆動装置と、を備え、前記部品保持ユニットは、上記超音波ホーンと、前記超音波ホーンを超音波振動可能に支持するホーン支持部材と、前記ホーン支持部材を上下方向に摺動可能に支持するケースと、を備えることを特徴とするチップボンダ装置である。
【0015】
上記手段のチップボンダ装置において、前記部品保持ユニット駆動装置は、第1押下装置及び第2押下装置を備え、前記第1押下装置は、前記部品保持ユニット全体を、前記ターレットに対して下方向に押し下げるようにし、前記第2押下装置は、前記吸着ノズルを、前記部品保持ユニットの前記ケースに対して下方向に相対的に押し下げることを特徴とすることが好ましい。
【0016】
上記手段のチップボンダ装置において、前記部品保持ユニット駆動装置は、前記ターレットから独立した状態で設けられ、少なくとも電子部品片供給装置から前記電子部品片が供給される位置上、及び前記電子部品片を前記相手側部材に超音波接合する位置上に固定配置されることを特徴とすることが好ましい。
【0017】
上記手段のチップボンダ装置は、前記超音波ホーンを回転させるホーン回転装置を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0018】
上記手段のチップボンダ装置において、前記部品保持ユニットは、前記ホーン支持部材を上方に付勢するホーン付勢装置と、前記ホーン支持部材の上下方向の位置を検出するホーン位置検出装置と、を備えることを特徴とすることが好ましい。
【0019】
上記手段のチップボンダ装置において、前記部品保持ユニットにおける前記ホーン付勢装置は、前記ホーン支持部材側に固定配置されるホーン側マグネットと、前記ホーン側マグネットと対向して、前記ケース側に固定配置されるケース側マグネットと、を備え、前記ホーン側マグネット及び前記ケース側マグネットは、相互に吸着又は反発することで、前記ホーン支持部材を上方に付勢することを特徴とすることが好ましい。
【0020】
上記手段のチップボンダ装置において、前記超音波ホーンは、該超音波ホーンの振動方向が前記ターレットの径方向となるように設けられていることを特徴とすることが好ましい。
【0021】
上記手段のチップボンダ装置において、前記部品保持ユニット駆動装置は、前記部品保持ユニットの真上に対して前記ターレットの半径方向にオフセットされた状態で配置されることを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、吸着ノズルの交換が容易でありながらも、吸着ノズルの位置ずれ防止が可能となるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るチップボンダ装置の全体構造を示す平面図である。
【図2】同チップボンダ装置の全体構造を示す正面図である。
【図3A】同チップボンダ装置の全体構造を示す側面図である。
【図3B】同チップボンダ装置の(a)平面図、及び(b)ターレットの開放状態を示す図である。
【図4】(a)(b)同チップボンダ装置の部品保持ユニットを側面から見た断面図、及び部品保持ユニット駆動装置並びに部品保持ユニット案内装置の側面図である。
【図5A】(a)超音波ホーンの側面図であり、(b)超音波ホーンの下面図である。
【図5B】(a)超音波ホーンの振動系を示す下面図であり、(b)及び(c)超音波ホーンの振動状態を示す要部拡大下面図である。
【図6】超音波ホーンの外観斜視図である。
【図7】図5A(a)における矢視II方向から視た超音波ホーンの断面図である。
【図8A】(a)〜(d)は超音波ホーンの側面図である。
【図8B】図5(b)における矢視III方向から視た超音波ホーンの断面図であり、別の形態に係る吸着ノズルが取り付けられている場合を示す。
【図9】(a)は、図4(a)における矢印I方向から見たチップボンダ装置のホーン回転装置の平面図であり、(b)同ホーン回転装置の右側面図であり、(c)は、図9(a)における矢視IV−IV方向から見た同ホーン回転装置の正面図である。
【図10】同チップボンダ装置のスライダ移動装置の圧電素子によってホーン回転用スライダを移動させる状態を示す図である。
【図11】同チップボンダ装置の部品保持ユニットにおける、マグネットを利用したホーン保持部材の位置検出方法を示す図である。
【図12】(a)〜(d)は同チップボンダ装置の電子部品片供給装置及び基板供給装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1、図2及び図3Aは本発明の実施の形態に係るチップボンダ装置100の全体構成が示されている。
【0026】
チップボンダ装置100は、ターレット10と、ターレット駆動モータ20と、部品保持ユニット30と、ホーン回転装置40と、部品保持ユニット案内装置50と、部品保持ユニット駆動装置80と、部品保持ユニット駆動装置80及びターレット駆動モータ20が配置される駆動装置基台90と、この駆動装置基台90が保持される脚部95を備えて構成される。なお、ここでは、部品保持ユニット30の吸着ノズル33により電子部品片98を吸着する位置を供給位置Uと呼び、吸着された電子部品片98をウエハ基板610に溶着する位置を溶着位置Wと呼ぶことにする。
【0027】
トレイ96に載置された電子部品片98は、X−Yテーブルから構成される電子部品片供給装置89によりX−Y方向に移動されて供給位置Uに供給される。電子部品片98の供給位置Uでの位置決めは、上方に配置される供給位置確認カメラ92で撮影した電子部品片98の画像データに基づいて、主制御部(図示省略)が電子部品片供給装置89をX−Y方向に移動することにより行われる。
【0028】
溶着位置Wは、チップボンダ装置100の主軸を挟んで、電子部品片供給装置89と略反対側(ターレット10の回転移動経路に沿って180度の位相差を有する場所)に位置している。そこには、ウエハ基板610が載置される加熱プレート97と、この加熱プレート97をX−Y方向に移動させる基板供給装置88が設けられており、基板搬送装置(図示省略)によって、ウエハ基板610が搬送される。基板供給装置88は、加熱プレート97に載置されたウエハ基板610を位置決めする。この位置決めは、上方に配置される溶着位置確認カメラ94で撮影したウエハ基板610の画像データに基づいて、主制御部(図示省略)が基板供給装置88をX−Y方向に移動することにより行われる。
【0029】
部品保持ユニット30の回転移動経路上の供給位置Uと溶着位置Wの途中(ここでは供給位置Uから90度の位相差を有する場所)には、下側から部品保持ユニット30を撮影する吸着位置確認カメラ93が設けられている。吸着位置確認カメラ93は、吸着ノズル33に吸着保持された電子部品片98の角度を撮影して、撮影した画像データを主制御部に送信する。そして、主制御部は、その画像データに基づいて、ホーン回転装置40を動作させて、電子部品片98が所定の角度になるように吸着ノズル33を回転制御する。吸着ノズル33により吸着保持された電子部品片98の吸着状態(角度)を確認する位置を、ここでは吸着状態確認位置Vと言う。
【0030】
また、部品保持ユニット30の回転移動経路上の溶着位置Wと供給位置Uの途中(ここでは溶着位置Wから90度の位相差を有する場所)には研磨装置98が設けられている。研磨装置98は、吸着ノズル33の先端が当接することで、この先端を自動的に研磨する。従って、部品保持ユニット30が、溶着位置Wや供給位置Uで、供給作業や溶着作業を行っている間に、他の部品保持ユニット30の吸着ノズル33を研磨してメンテナンスを行うことが可能となる。なお、この研磨装置98によって吸着ノズル33を研磨する位置を、ここでは研磨位置Tと言う。
【0031】
上記のように、チップボンダ装置100は、ターレット10を回転することにより、部品保持ユニット30に設けられた吸着ノズル33を供給位置U、吸着状態確認位置V、溶着位置W、研磨位置Tの順番に搬送することができるようになっている。
【0032】
ターレット10は、円盤形状、又は5角形又は6角形等の多角形形状の円板状部材である。ターレット10は、自身の中心軸を回転軸として、ターレット駆動モータ20に回転可能に同軸状態で支持される。この結果、ターレット10は、ターレット駆動モータ20の回転に連動して回転する。また、ターレット10は、上述した形状に限定されるものではなく、例えば、円筒の外周面から外側に向かって放射状に突出するように形成された複数の凸部(アーム)を有する星型又はヒトデ型等であっても好ましい。
【0033】
ターレット駆動モータ20は、DDモータ(ダイレクト・ドライブ・モータ)を用いており、ターレット10の回転方向の位置決めを高い角度精度で行う。
【0034】
図3B(a)に示されるように、このターレット駆動モータ20は、上方の駆動装置基台90に固定されている。この駆動装置基台90は、脚部95によって揺動自在に保持されている。従って、ターレット10をメンテナンスする際は、図3B(b)に示されるように、脚部95に対して駆動装置基台90を上方に揺動させることで、ターレット10の全体を上方に開放する。
【0035】
部品保持ユニット30は、ターレット10の周方向に等間隔で複数(ここでは4個)設けられるとともに、下側には、吸着ノズル33を有する超音波ホーン32を備えている。なお、この部品保持ユニット30は、ターレット10の外周において、半径方向外側に突出するように配置されている。このようにすることで、複数の部品保持ユニット30の周方向の間に空間Sを確保する。結果、供給位置Uの上方に配置される供給位置確認カメラ92は、部品保持ユニット30が存在しないタイミングを見計らって、空間Sを介して電子部品片供給装置89を上方から撮像して、電子部品片98の位置決めを行う。同様に、溶着位置Wの上方に配置される溶着位置確認カメラ94は、部品保持ユニット30が存在しないタイミングを見計らって、空間Sを介してウエハ基板610を撮像し、ウエハ基板610に形成されているスタッドバンプ270B等を検出して、電子部品片98を正しい位置に溶着するようになっている。なお、電子部品片98及びウエハ基板610の間に介在させる接合材は、スタッドバンプ270Bに限定されず、鉛半田等であってもよい。
【0036】
なお、部品保持ユニット30をターレット10半径方向内側に配置する場合は、ターレット10に開口を形成するなどして、同様な空間Sを確保すれば良い。即ち、空間Sを確保するためにターレット10を切り欠けば良い。
【0037】
部品保持ユニット30は、吸着ノズル33で電子部品片98を吸着保持したり、超音波ホーン32の超音波振動により、吸着保持した電子部品片98をウエハ基板610に超音波接合したりする。この吸着ノズル33は、内部に吸入経路33Aが形成されており、特に図示しない真空ポンプと接続されている。真空ポンプは、吸入経路33Aを介して吸着ノズル33の先端に負圧を発生させる。これにより、吸着ノズル33が電子部品片33Aを吸着する。
【0038】
部品保持ユニット30は、図4に示されるように、ケース31と、超音波ホーン32と、ホーン支持部材34と、ホーン付勢装置36と、ホーン位置検出装置38と、超音波振動子(図示省略)を備えて構成される。超音波振動子は、超音波発振器(図示省略)により、60kHz帯、具体的には63kHz程度の周波数を有する電気信号を与えられ、機械的な振動エネルギーに変換する。超音波ホーン32は、超音波振動子により、超音波振動が入力される。なお、部品保持ユニット30は、超音波振動子を備えずに構成されても良い。この場合、超音波ホーン32は、超音波発振器により電気信号を与えられ、機械的な振動エネルギーに変換する。すなわち、超音波ホーン32には、電気信号の形式で超音波振動が入力される。
【0039】
ケース31の内部の収容空間31Aには、後述するホーン支持部材34の軸部34C、ホーン付勢装置36、ホーン位置検出装置38が収容される。更に、ケース31には摺動通路31Bが形成されており、ホーン支持部材34の軸部34Cが、スライド可能に挿通される。なお、収容空間31Aと摺動通路31Bは連通して形成され、摺動通路31には、軸部34Cを上下方向に摺動可能、且つ軸中心に回転可能に支持する支持部材35が設けられている。本実施形態では支持部材35としてボールベアリングが用いられている。この支持部材35は、摺動通路31Bにおける上下2か所に設けられている。これによって、ホーン支持部材34は、ケース31に対し、上下方向及び回転方向のどちらにも可動できる。また、収容空間31Aの下側には、ケース側マグネット36Bをケース31に固定するためのケース側マグネット固定部31Dが設けられている。
【0040】
超音波ホーン32のホーン本体部32Xは、図5A(a)、(b)、図5B(a)、(b)、(c)及び図6に示されるように、図4の矢印I方向(上下方向)から見て、概略直方体形状で、長手方向の中心部近傍が括れた形状になっている。このホーン本体部32Xは、SUS304等のステンレスで成型されており、8.0[g/cm]程度の密度を有する。また、超音波ホーン32は、括れている部分の略中心に吸着ノズル33が端面から下方向に突出配置されている。この吸着ノズル33は、従来の超硬(密度:14.0[g/cm]程度)のものに代えたものであって、ホーン本体部32と比較して密度の低いジルコニアやアルミナ等の材料で成型されている。従来の吸着ノズルは、ホーン本体部32Xと比較して密度が高く、使用時に保持孔37Aの下端部分を破壊する傾向を有しているが、本実施形態の吸着ノズル33は、ホーン本体部32Xと比較して密度が低く、使用時に保持孔37Aの下端部分を破壊することを防止する。
【0041】
ホーン本体部32Xには、長手方向及び幅方向に対象の4箇所に薄板状の連結部32Bが形成され、更にこの連結部32Bには固定部32Aが形成される。この固定部32Aは、ホーン支持部材34のホーン取付部34Aにボルト32AAで固定される。したがって、超音波ホーン32は、ホーン支持部材34のホーン取付部34Aに対して固定部32Aのみで接続されており、その他の部分では接触していない構造となっている。特にホーン本体部32Xは、薄板状の連結部32Bによって保持されるので、ホーン支持部材34への固定による振動減衰は殆どなく、入力部となる長手方向の端部から超音波振動子(図示省略)によって入力される超音波振動を確実に行うことができる。なお、ホーン本体部32Xにおける連結部32Bが形成される位置は、振動モードにおいて最も振動(振幅)が少ない点が設定されている。また、ホーン本体部32Xにおける長手方向の中心部は、振動モードにおいて最も振動(振幅)が大きい点が設定されている。
【0042】
また、超音波ホーン32のホーン本体部32Xには、図5A(a)、(b)、図5B(a)、(b)、(c)、図6及び図7に示されるように、吸着ノズル33を着脱可能に保持する保持部37を有している。ホーン本体部32Xには、保持部37として、ホーン本体部32Xにおける長手方向の中心部を垂直に貫通し、吸着ノズル33が下方から挿脱される保持孔37Aと、ホーン本体部32Xの長手方向における保持孔37Aの両脇において、ホーン本体部32Xの長手方向に沿って垂直に貫通するスリット37Bと、このスリット37Bを通過するようにホーン本体部32Xを側方から水平方向に貫通するボルト孔37Cと、スリット37Bの両脇において垂直に貫通し、該スリット37Bの幅と比較して大きい径を有する二つの貫通孔37Eと、が形成されている。ボルト孔37Cは、ボルト37Dの締付け又は緩めによってスリット37Bの幅を調整し、保持孔37Aの径を大小させる。これにより、保持孔37Aに吸着ノズル33を固定すること、及び保持孔37Aから吸着ノズル33を取り外すことが可能となる。
【0043】
ホーン本体部32Xには、図5B(a)に示されるように、本体部全体の第1振動系と、二つの貫通孔37Eの間を主とする第2振動系と、を備えている。ホーン本体部32Xは、第1振動系及び第2振動系の双方により振動する。第2振動系は、図5B(b)に示される、一方(図面左側)の貫通孔37Eの径がホーン本体部32Xの長手方向に縮んで短手方向に伸び、他方(図面右側)の貫通孔37Eの径がホーン本体部32Xの長手方向に伸びて短手方向に縮む第1状態と、図5B(c)に示される、一方(図面左側)の貫通孔37Eの径がホーン本体部32Xの長手方向に伸びて短手方向に縮み、他方(図面右側)の貫通孔37Eの径がホーン本体部32Xの長手方向に縮んで長手方向に伸びる第2状態と、を繰り返すことで水平面方向に振動する。第2の振動系は、貫通孔37Eの径を大きくし、ホーン本体部32Xの長手方向に沿う側面から貫通孔37Eまでの肉厚を減らすことで、水平面方向に大きく振動できる。第2の振動系による振動は、水平面方向の振動であり、吸着ノズル33の先端が揺動することが防止される。
【0044】
ここで、図8Aを参照して、ホーン本体部32Xへの吸着ノズル33の取付け手順について説明する。なお、ホーン本体部32Xに対する吸着ノズル33の位置決めは、専用の治具39を用いて行われる。治具39は、保持孔37Aに挿入された吸着ノズル33の先端又は後端を当接させる当接部39Aと、この当接部39Aの両端から延設し、当接部39A及びホーン本体部32Xの間隔を一定に保つ間隔保持部39Bとを備え、断面コの字形状を呈している。
【0045】
まず、図8A(a)に示されるように、吸着ノズル33をホーン本体部32Xの下方から保持孔37Aに挿入する。そして、治具39における間隔保持部39Bの端部をホーン本体部32Xの下面に当接させると共に、当接部39Aを吸着ノズル33の先端に当接させる(図8A(b)参照)。これにより、吸着ノズル33の垂直方向の位置決めがされる。また、図8A(b)に示されるように、ボルト37Dをボルト孔37Cに挿入すると共に締め付ける(図8A(c)参照)。これにより、保持孔37Aに吸着ノズル33が固定される。さらに、図8A(c)に示されるように、ホーン本体部32Xから治具39を取り外すことで、ホーン本体部32Xへの吸着ノズル33の取付けが完了する(図8A(d)参照)。
【0046】
なお、ホーン本体部32Xからの吸着ノズル33の取外しは、ボルト孔37Cに挿入されているボルト37Dを緩めることで可能となる(図示省略)。
【0047】
ところで、図8Bに示されるように、吸着ノズル33の中ほど先端寄りに、フランジ33Bを形成するようにしてもよい。フランジ33Bは、吸着ノズル33がホーン本体部32Xの保持孔37Aに挿入された場合に、吸着ノズル33の後端側の面がホーン本体部32Xの下面に当接する。このように、フランジ33Bが治具39と同様に機能し、吸着ノズル33の垂直方向の位置決めがされるので、治具39を用いなくてよい。
【0048】
また、本実施形態では、超音波ホーン32は、吸着ノズル33の近辺が括れた形状になっており、更に、ターレット10の周方向と垂直方向に超音波振動するように配設されている。即ち、超音波ホーン32の長手方向が、ターレット10の半径方向に向くようにして配置される。この結果、吸着ノズル33におけるターレット10の周方向の前後に余裕空間が形成されるので、例えば、ターレット10の周方向に沿って、より多くの部品保持ユニット30を配置することも可能になる。また、既に述べたように、このターレット10の上方に配置される供給位置確認カメラ92や溶着位置確認カメラ94が撮像する際、超音波ホーン32が半径方向に延在すれば邪魔にならないで済む。即ち、供給位置確認カメラ92や溶着位置確認カメラ94、ターレット10によって周方向に移動する超音波ホーン32(部品保持ユニット30)が存在していない間に、そのトレイ96上の電子部品片98やウエハ基板610を画像認識する。
【0049】
図4に戻って、ホーン支持部材34は、上述した軸部34Cと、この軸部34Cの下端に連続形成されるホーン取付部34Aを有している。ホーン取付部34Aは軸部34Cに対して径方向に拡張している。また、ホーン支持部材34の上端側(第2押下装置70側)には、ターレット10の半径方向内側に向かって延在する拡張プレート34Dを備える。この拡張プレート34Dの上面が第2押下装置70に押下される受圧部34Bとなる。このように、半径方向に延在する拡張プレート34Dを配置することで、部品保持ユニット駆動装置80を半径方向にオフセットして配置することが可能となっている。また、受圧部34B(拡張プレート34D)の下側には、ホーン側マグネット固定部34Dが設けられ、ホーン付勢装置36のホーン側マグネット36Aが固定される。ホーン取付部34Aの外側面には、ホーン回転装置40と係合する概略L形状の係合部34Eが設けられている。
【0050】
ホーン付勢装置36は、ホーン側マグネット36Aと、このホーン側マグネット36Aよりも下側に配置されるケース側マグネット36Bを有して構成されている。ホーン側マグネット36Aは、環状に形成され、ホーン支持部材34の軸部34Cに挿通されるとともに、ホーン支持部材34の途中に形成されている突起に固定される。この突起がホーン側マグネット固定部となる。ケース側マグネット36Bは、環状に形成され、ホーン支持部材34の軸部34Cに対して遊びを持った状態で挿通されるとともに、ケース31の収容空間31Aに形成されたケース側マグネット固定部31Cに固定されている。ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bは、同じ磁極が互いに対向(例えば、S極とS極又はN極とN極が対向)するように配置されている。ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bは互いに反発する。この反発力により、ホーン支持部材34は、ケース31に対して、上側に付勢されて磁気浮上する。
【0051】
ホーン位置検出装置38は、ホーン側マグネット36A又はケース側マグネット36Bの磁界変化を検出して電気信号に変換する。なお、本実施形態ではホーン位置検出装置38としてホール素子が用いられている。図4において、ホーン位置検出装置38は、ホーン側マグネット36Aに近接するように、ケース31の収容空間31Aの側壁に設けられる。図11(a)に示されるように、ホーン側マグネット36Aは、上下方向にS極とN極が分極しており、磁界Bがホーン位置検出装置38側に作用する。ホーン位置検出装置38は、水平方向の磁界Xの強度変化を検出する。図11(b)のように、ホーン側マグネット36Aが上昇すると、ホーン位置検出装置38に作用する磁界Bの強さが変化するので、その位置変化を極めて素早く検出することができる。このように、ホーン位置検出装置38は、ホーン側マグネット36Aとの距離の変化に基づく磁界変動を検出して、その変化を電気信号に変換する。また、ホーン位置検出装置38は、電気信号を主制御部(図示省略)に送信する。主制御部は、ホーン位置検出装置38から受信した電気信号に基づいて、ケース31に対するホーン支持部材34の上下方向の高さ変動を検出できる。この結果、溶着時において、部品保持ユニット30全体を下降させて、電子部品片98がウエハ基板610に接触した瞬間を、極めて正確に検出することができる。
【0052】
図9を用いてホーン回転装置40について説明する。図9(a)は、図4の矢印I方向から見たホーン回転装置40の平面図であり、図9(b)は、同ホーン回転装置40の右側面図であり、図9(c)は、図9(a)における矢視IV−IV方向から見た同ホーン回転装置40の正面図である。
【0053】
ホーン回転装置40は、ホーン支持部材34の係合部34Eと係合するホーン回転用スライダ42を左右(図9(a)の矢印D又はE方向)にスライドさせることによって、ホーン支持部材34を回転させる。この結果、吸着ノズル33を、吸着方向に対して垂直面内で回転(図9(a)の矢印F又はG方向)させる。ホーン回転装置40は、上述したホーン回転用スライダ42と、ホーン回転用スライダ42を一方からスライド自在に支持するスライダ支持装置44と、スライダ支持装置44と連動して、ホーン回転用スライダ42を吸着方向と垂直面内でスライドさせるスライダ移動装置46と、ホーン回転用スライダ42のスライド量を検出するスライダ位置検出装置48を有して構成されている。
【0054】
ホーン回転用スライダ42は概略Cリング形状の板部材である。ホーン回転用スライダ42は、支持面42Aと被駆動面42Bを有している。支持面42Aは、スライダ支持装置44におけるベアリング44Aと接触する部位となる。
【0055】
また、ホーン回転用スライダ42の被駆動面42Bは、スライダ移動装置46の圧電素子47に形成される凸部47Aと当接する。従って、ホーン回転用スライダ42は、ベアリング44Aと凸部47Aによって挟持されていることになる。圧電素子47の凸部47Aが、ホーン回転用スライダ42の被駆動面42Bを、両者間の摩擦抵抗によってスライドさせるようになっている。
【0056】
スライダ支持装置44は、ボールベアリングなどのベアリング44Aと、板ばね44Bと、押えネジ44Cと、板ばね固定台44Dと、軸台44Eと、保持軸44Fと、台座41を有して構成される。
【0057】
台座41は、方形の筒状に構成されており、内部にスライダ移動装置46の圧電素子47が収容される。この台座41には、2個の軸台44E、44Eが設けられている。この軸台44E、44Eには、保持軸44Fが離反可能な状態で保持される構造となっている。保持軸44Fにはベアリング44Aが設けられる。
【0058】
板ばね固定台44Dは、台座41の略中央に設けられる。板ばね44Bは、2本の押えネジ44C、44Cにより板ばね固定台44Dに固定される。板ばね44Bの弾性力によって、保持軸44Fが、軸台44E側に押さえ付けられる。
【0059】
詳細に、保持軸44Fは、軸台44Eに対して図9(c)の上下方向に移動可能に設けられている。板ばね44Bによって保持軸44Fを軸台44E側に押さえ付けることによって、ベアリング44Aがホーン回転用スライダ42側に付勢される。この結果、ホーン回転用スライダ42は、スライダ移動装置46の凸部47Aとベアリング44Aで挟み込まれる。この結果、凸部47Aが移動しない限り、ホーン回転用スライダ42はスライドができない状態となる。なお、板ばね44B、押さえネジ44C、板ばね固定台44Dによって、いわゆる押圧装置を構成する。
【0060】
スライダ移動装置46は、台座41側に振動可能に支持される圧電素子47を備える。この圧電素子47は、詳細には一対の圧電素子片47Bが内蔵されており、各圧電素子片47Bに対して、相互に90度位相ずらした周期電圧を加えるようになっている。
【0061】
圧電素子47には、ホーン回転用スライダ42方向に突出する凸部47Aが設けられている。上述の2つの圧電素子片47Bに対して、90度の位相差を有する電圧を印加すると、図10に示されるように、この凸部47Aが楕円軌道に沿って高速で回転運動する。この回転方向は、適宜反転させることができる。この凸部47Aの楕円軌道を利用すれば、ホーン回転用スライダ42を図10の左右両方向に移動させることができる。
【0062】
以上の結果、周期的に変化するプラス電圧又はマイナス電圧を圧電素子47に連続的に入力することで、ホーン回転用スライダ42をスライドさせて、吸着ノズル33を所定の角度だけ回転させることができる。
【0063】
なお、図9に示されるように、ホーン回転装置40は、マグネット48Aとホール素子48Bを有して構成されるスライダ位置検出装置48を備えている。マグネット48Aはホーン回転用スライダ42側に設けられており、ホール素子48Bは台座41側に設けられている。マグネット48Aとホール素子48Bは対向しており、ホーン回転用スライダ42が左右方向に移動した場合、マグネット48Aとホール素子48Bの距離が変化してホール素子48B周囲の磁界も変動する。ホール素子48Bでは、この磁界変動を検出して電気信号に変換して主制御部(図示省略)に送信する。主制御部では、ホール素子48Bから受信した電気信号に基づいて、ホーン回転用スライダ42のスライド位置を検出する。主制御部は、検出した位置情報に基づいて、ホーン回転用スライダ42を左右方向に移動させるように制御する。なお、ホール素子49Bや圧電素子47を動作させるための電源や回路などは、台座41に固定されている基板ボックス49に内装されている。
【0064】
図4に戻って、部品保持ユニット案内装置50は、ターレット10と部品保持ユニット30の間に設けられている。この部品保持ユニット案内装置50は、ターレット10外周において上下方向に配設されるレール52と、レール52に対してスライド可能に係合するスライド本体54と、このスライド本体54に固定されるテーブル56と、このテーブル56を常に上方に付勢する部品保持ユニット上方付勢装置58を有して構成される直動装置である。
【0065】
テーブル56は、L型の板状部材であり、L型の1面には、部品保持ユニット30のケース31が固定され、他の面には、第1押下装置60に押下げられる受圧部56Aが形成される。したがって、第1押下装置60の押圧部材68がテーブル56の受圧部56Aを押し下げると、テーブル56とともに部品保持ユニット30全体が下方向に案内される。
【0066】
部品保持ユニット上方付勢装置58は、このテーブル56をターレット10に対して、上方向に常に付勢する装置である。詳細に、部品保持ユニット上方付勢装置58は、ターレット10の上面に固定される外筒58Aと、ターレット10とテーブル56の間に配置される圧縮ばね58Cと、この圧縮ばね58Cを保持する軸部材58Bを有して構成されている。軸部材58Bの上端はテーブル56側に固定されており、同下端は、外筒58Aの内部にスライド可能に挿入される。また、圧縮ばね58Cは、一端ターレット10に当接され、他端はテーブル56に当接されて、圧縮状態で配設されている。したがって、圧縮ばね58Cは、テーブル56を上方向に付勢させる。これにより、部品保持ユニット30は、部品保持ユニット駆動装置80からの外力が付与されない限り、常に上方側で静止するようになっている。
【0067】
部品保持ユニット駆動装置80は、第1押下装置60、及び第2押下装置70を有して構成されている。なお、部品保持ユニット駆動装置80は、駆動装置基台90に搭載されている。この部品保持ユニット駆動装置80は、吸着位置Uと、溶着位置Wの上方において、半径方向にオフレットした状態でそれぞれ配置される。なお、本実施形態では、部品保持ユニット駆動装置80が半径方向内側にオフセット配置されることで、部品保持ユニット30の真上の空間が開放される。この結果、例えば、供給位置確認カメラ92の撮像方向に対して、部品保持ユニット駆動装置80が干渉することを回避できる。
【0068】
第1押下装置60は、モータ62と、カム64と、第2押下装置案内機構66と、押圧部材68を有して構成されている。
【0069】
第2押下装置案内機構66は、レール66Aと、スライド本体66Bと、テーブル66Cと、カム受け部材66Dを有して構成される直動装置である。レール66Aは、駆動装置基台90のレール取付部90Aに上下方向に設けられる。レール66Aには、スライド本体66Bがスライド可能に係合される。スライド本体66Bにはテーブル66Cが固定されている。また、テーブル66Cには、第2押下装置70、カム受け部材66D、及び押圧部材68が固定されている。
【0070】
カム64は、モータ62の出力軸62Aに固定された扁平のカムであり、1回転の任意の位置でカム受け部材66Dに当接して、カム受け部材66Dを押し下げる。したがって、第1押下装置60は、カム受け部材66Dを押し下げることで、テーブル66Cを押し下げる。
【0071】
押圧部材68は、テーブル66Cの下側に突出するように設けられた棒状部材である。この押圧部材68は、部品保持ユニット案内装置50のテーブル56に形成された受圧部56Aを押し下げる。したがって、押圧部材68は、テーブル56とともに部品保持ユニット30全体を押し下げることができる。
【0072】
第2押下装置70は、第1押下装置60のテーブル66Cに固定された基台76と、基台76に固定されるボイスコイルモータ74を有して構成される。ボイスコイルモータ74は、入力された電圧に応じて、予め設定されている圧力(付勢力)で、先端側に設けられた出力軸72を移動させることが出来る。ボイスコイルモータ74の出力軸72は、部品保持ユニット30に設けられたホーン支持部材34の受圧部34Bの上に配置されている。したがって、ボイスコイルモータ74は、出力軸72を下降することによって、ホーン支持部材34の拡張プレート34D(受圧部34B)を任意の力で押圧できるようになっている。なお既に述べたように、拡張プレート34Dは半径方向内側に拡張されているので、この結果、ボイスコイルモータ74を半径方向内側にオフセット配置することができる。
【0073】
図4(a)に示されるように、部品保持ユニット駆動装置80は、第1押圧装置60によって部品保持ユニット30全体を押し下げる。そして、電子部品片98がウエハ基板610に当接した瞬間、ホーン保持部材34は、ケース31に対して上方に相対移動する。ホーン保持部材34がケース31に対して上方に相対移動すると、ホーン位置検出装置38は、その移動を極めて素早く検出して、電気信号を主制御部(図示省略)へ送信し、第1押圧装置60を停止する。なお、本実施形態では、ホーン保持部材34が、磁力(ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bの反発力)によって磁気浮上していることから、ホーン保持部材34に対して極めて小さい外力が付加される場合でも、ケース31に対して素早く相対移動できる。従って、マグネットによる磁気浮上と、このマグネットを磁気を利用した位置検出によって、極めてコンパクトな構成としながらも、ウエハ基板610及びスタッドバンプ270Bへの衝撃を緩和することが出来る。
【0074】
ホーン位置検出装置38によってホーン保持部材34の相対移動が検知された後、第2押下装置70のボイスコイルモータ74の出力軸72下降させる。ボイスコイルモータ74の出力軸72により、ホーン支持部材34の受圧部34Bに所定の押圧力を加える。この押圧力としては、例えば、最初は0からスタートして線形的に力を増大して最終的には4ニュートン[N]になるように印加する。これにより、ホーン支持部材34に固定された吸着ノズル33に所定の押圧力が付与され、所定の圧力で電子部品片98をスタッドバンプ270Bに押しつけることができる。この押圧力の増大に連動して、超音波振動の振幅も0から線形的に増大させるようにすることで、安定的に電子部品片98とスタッドバンプ270Bが溶着する。なお、ボイスコイルモータ74によるホーン支持部材34の押圧力は、ボイスコイルモータ74に入力する電圧により任意に設定することができる。
【0075】
<溶接動作>
【0076】
次に、図12を参照して、チップボンダ装置100による、電子部品片98の搭載工程の動作について説明する。なお、この図12では、チップボンダ装置100において、部品保持ユニット30を6個備えるようにした場合を例示する。
【0077】
なお、図12(a)において、供給位置Uにある部品保持ユニットを部品保持ユニット30Aと定義し、これを基準に時計回りに部品保持ユニット30B〜30Fと定義する。供給位置Uに対して60度進んだ位置が吸着状態確認位置Vとなっており、更に120度進んだ位置が溶着位置Wとなる。更に60度進んだ位置が研磨位置Tとなる。
【0078】
まず、電子部品片供給装置89は、電子部品片98を所定の供給位置Uに移動させる。この時、主制御部(図示省略)は、供給位置確認カメラ92により、電子部品片供給装置89により供給された電子部品片98の位置を撮影し、撮影した画像データに基づいて、電子部品片98が所定の位置に供給されたか否かを判定する。主制御部は、電子部品片98が所定の供給位置Uからずれていると判定した場合、電子部品片供給装置89を制御し、電子部品片98を所定の供給位置Uに移動させる。なお、供給位置確認カメラ92による電子部品片98の撮像は、上方に部品保持ユニット30B〜30Fが存在していないタイミングを計って実行される。
【0079】
図12(a)に示されるように、チップボンダ装置100は、部品保持ユニット30Aの吸着ノズル33によって、供給位置Uに供給される電子部品片98を吸着保持する。吸着保持完了後、更に、ターレット10を60度回転させて、部品保持ユニット30Aの電子部品片98を吸着状態確認位置Vに搬送する(図12(b)参照)。そして、主制御部は、吸着状態確認位置Vに搬送された電子部品片98の吸着角度を吸着位置確認カメラ93により下側から撮影する。主制御部は、撮影した画像データに基づいて、電子部品片98が所定の角度とずれているか否かを判定する。主制御部(図示省略)は、電子部品片98の保持角度が所定の角度からずれていると判定した場合、ホーン回転装置40を駆動し、吸着ノズル33を回転させて電子部品片98の角度を調整する。
【0080】
なお、この時、チップボンダ装置100は、電子部品片供給装置89により供給位置Uに供給された次の電子部品片98を、部品保持ユニット30Bの吸着ノズル33により吸着保持する。
【0081】
チップボンダ装置100は、ターレット10をさらに120度回転させて、部品保持ユニット30Aの吸着ノズル33に吸着保持された電子部品片98を、基板供給装置88によって溶着位置Wに供給されたウエハ基板610の真上に搬送する(図12(c)参照)。主制御部は、溶着位置確認カメラ94により、基板供給装置88により供給されたウエハ基板610のスタッドバンプ270Bの位置を撮影し、撮影した画像データに基づいて、スタッドバンプ270Bが所定の溶着位置Wに配置されているか否かを判定する。主制御部は、スタッドバンプ270Bが所定の溶着位置Wからずれていると判定した場合、基板供給装置88を制御し、ウエハ基板610を移動させる。なお、溶着位置確認カメラ94によるスタッドバンプ270Bの撮像は、上方に部品保持ユニット30B〜30Fが存在していないタイミングを計って実行される。この状態で、部品保持ユニット30Aの電子部品片98とスタッドバンプ270Bを超音波接合する。
【0082】
なお、この時、前述と同様に、主制御部は、吸着状態確認位置Vにおいて、吸着位置確認カメラ93で、部品保持ユニット30Cの電子部品片98を撮影することにより、電子部品片98の角度を検査及び調整する。また、部品保持ユニット30Dでは、電子部品片供給装置89により供給位置Uに供給された電子部品片98を吸着する。
【0083】
その後チップボンダ装置100は、図12(d)に示されるように、ターレット10をさらに60度回転させて、超音波接合作業が完了した部品保持ユニット30Aを研磨位置Tに搬送する。この研磨位置Tでは必要に応じて吸着ノズル33の先端を研磨する。吸着ノズル33の先端は、超音波接合によって偏って摩耗しやすいため、所定回数の溶着作業を行うと平滑度が悪化する。従って、このように定期的に研磨することで、先端を常に水平に維持する。なお、この研磨作業は、毎回実行しても良いが、予め設定した周期で実行することが好ましい。なお、部品保持ユニット30Aの吸着ノズル33を研磨している最中でも、部品保持ユニット30Bは、溶着位置Wにおいて電子部品片98をウエハ基板610に超音波接合することができる。
【0084】
その後、チップボンダ装置100は、部品保持ユニット30B〜30Fについて、上記と同様の動作を繰り返し行い、電子部品片98のウエハ基板610への超音波接合を行う。
【0085】
チップボンダ装置100において、ウエハ基板610の全てのスタッドバンプ270Bに対して電子部品片98を超音波接合した後、このウエハ基板610は、基板搬送装置(図示省略)によって後続する工程の装置に搬送される。
【0086】
以上、本実施形態のチップボンダ装置100によれば、ホーン本体部32Xに対して吸着ノズル33がボルト37Dで固定されているため、吸着ノズル33の交換が容易でありながらも、吸着ノズル33の位置ずれを防止できる。
【0087】
更にこのチップボンダ装置100はターレット構造になっており、ターレット10の周方向に複数の超音波ノズル33が配置された構造となっている。この結果、電子部品片98の供給や、電子部品片98をウエハ基板610に搭載する作業を極めて高速で行うことができる。結果、先行する工程の装置からチップボンダ装置100に、ウエハ基板610を直接搬送しても、両者の動作サイクルタイムの差が小さくなるので、組み立て作業を効率化することができる。
【0088】
また、電子部品片98の吸着作業や溶着作業等を行っている最中に、チップボンダ装置100の研磨位置Tにおいて吸着ノズル33のメンテナンスを行うことも可能となっている。結果、チップボンダ装置100の可動停止時間を小さくできるので、先行する工程の装置とチップボンダ装置100の間で連続作業させても、稼働効率の低下を抑制できる。
【0089】
また、このチップボンダ装置100は、供給位置Uと溶着位置Wの上側に、部品保持ユニット駆動装置80を、ターレット10から独立して固定配置している。したがって、部品保持ユニット駆動装置80を、全ての部品保持ユニット30に対応させて1つずつ設ける必要はなくなり、ターレット10の重量を軽くすることができる。この結果、ターレット10のイナーシャを小さくできるので、ターレットの回転程度を向上させることができる。
【0090】
更に、チップボンダ装置100のホーン付勢部材36は、ホーン側マグネット36Aとケース側マグネット36Bの反発力又は吸引力でホーン支持部材34を上方向に磁気浮上させている。この結果、バネ等で保持する場合と比較して、ホーン支持部材34を小さい外力で素早く移動させることが可能となる。従って、電子部品片98をスタッドバンプ270Bに接触させる際に、ウエハ基板610に作用する衝撃を吸収することが可能となる。ウエハ基板610側にスタッドバンプ270Bをまとめて形成しておき、そこに電子部品片98を連続的に搭載する手法の場合、本実施形態のチップボンダ装置100の上記磁気浮上構造によって、ウエハ基板610に作用する衝撃を極めて小さくすることは、電子部品の品質向上に大きく貢献する。
【0091】
とりわけこのチップボンダ装置100は、ホール素子を備えるホーン位置検出装置38を用いて、ケース31に対するホーン支持部材34の位置を高精度で検出する。結果、吸着ノズル33に吸着保持される電子部品片98がスタッドバンプ270Bの先端に接触した瞬間を、高精度且つ素早く検出できる。
【0092】
また、超音波ホーン32は、ターレット10の半径方向に超音波振動するように配置されている。したがって、ターレット10上において周方向の空間効率が高められるので、超音波ホーン32の配置数を増やすことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の電子部品組み立て方法等は、電子部品を組み立てる様々な工程に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 ターレット
20 ターレット駆動モータ
30 部品保持ユニット
37 保持部
37A 保持孔
37B スリット
37C ボルト孔
37D ボルト
39 治具
39A 当接部
39B 間隔保持部
40 ホーン回転装置
50 部品保持ユニット案内装置
60 第1押下装置
70 第2押下装置
80 部品保持ユニット駆動装置
98 電子部品片
100 チップボンダ装置
610 ウエハ基板
U 供給位置
V 吸着状態確認位置
W 溶着位置
T 研磨位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品片を吸着する吸着ノズルを着脱可能に保持する保持部と、超音波振動が入力される入力部と、を有し、前記入力部から入力された超音波振動を、前記保持部で保持する前記吸着ノズルを介して前記電子部品片に伝達して、前記電子部品片を、該電子部品片との間に金属製の接合材を介在させた相手側部材に超音波接合する超音波ホーンであって、
長手方向が水平方向に沿うように配置され、長手方向の中心部が振動モードにおける腹となると共に、該中心部の両側の第1及び第2の位置が振動モードにおける節となる形状を呈するホーン本体部と、
前記第1及び第2の位置を介して前記ホーン本体部に連続形成されて、該ホーン本体を所定の位置に固定する固定部と、
を備え、
前記保持部は、
前記ホーン本体部における長手方向の中心部を垂直に貫通し、前記吸着ノズルが挿脱される保持孔と、
前記ホーン本体部の長手方向における該保持孔の両脇において、該長手方向に沿って垂直に貫通するスリットと、
前記スリットを通過するように前記ホーン本体部を水平方向に貫通し、ボルトの締付け又は緩めによって前記吸着ノズルを固定し又は該吸着ノズルの固定を解除するボルト孔と、
を備えることを特徴とする超音波ホーン。
【請求項2】
前記ホーン本体部は、長手方向の中心部が水平方向に括れた形状を呈することを特徴とする、
請求項1に記載の超音波ホーン。
【請求項3】
前記保持孔に挿入された前記吸着ノズルの先端又は後端を当接させる当接部と、前記当接部及び前記ホーン本体部の間隔を一定に保つ間隔保持部と、を備える治具によって、前記吸着ノズルの垂直方向の位置決めがされることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の超音波ホーン。
【請求項4】
前記吸着ノズルと比較して密度の高い材料からなることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波ホーン。
【請求項5】
前記スリットの両脇において垂直に貫通し、該スリットの幅と比較して大きい径を有する二つの貫通孔を備えることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波ホーン。
【請求項6】
中心軸を回転軸として回転可能に支持されるターレットと、
出力軸に前記ターレットが接続されるターレット駆動モータと、
前記ターレットの周方向に複数設けられて、電子部品片を保持し、該電子部品片を相手側部材に超音波接合する部品保持ユニットと、
前記ターレットと前記部品保持ユニットの間に設けられて、前記部品保持ユニットを前記ターレットに対して上下方向に移動自在に案内する部品保持ユニット案内装置と、
前記部品保持ユニットの上側に設けられ、前記部品保持ユニットを押圧することによって、該部品保持ユニットを下方向に移動させる部品保持ユニット駆動装置と、
を備え、
前記部品保持ユニットは、
請求項1乃至5のいずれかに記載の超音波ホーンと、
前記超音波ホーンを超音波振動可能に支持するホーン支持部材と、
前記ホーン支持部材を上下方向に摺動可能に支持するケースと、
を備えることを特徴とするチップボンダ装置。
【請求項7】
前記部品保持ユニット駆動装置は、第1押下装置及び第2押下装置を備え、
前記第1押下装置は、前記部品保持ユニット全体を、前記ターレットに対して下方向に押し下げるようにし、
前記第2押下装置は、前記吸着ノズルを、前記部品保持ユニットの前記ケースに対して下方向に相対的に押し下げることを特徴とする、
請求項6に記載のチップボンダ装置。
【請求項8】
前記部品保持ユニット駆動装置は、前記ターレットから独立した状態で設けられ、少なくとも電子部品片供給装置から前記電子部品片が供給される位置上、及び前記電子部品片を前記相手側部材に超音波接合する位置上に固定配置されることを特徴とする、
請求項6又は7に記載のチップボンダ装置。
【請求項9】
前記超音波ホーンを回転させるホーン回転装置を備えることを特徴とする、
請求項6乃至8のいずれかに記載のチップボンダ装置。
【請求項10】
前記部品保持ユニットは、
前記ホーン支持部材を上方に付勢するホーン付勢装置と、
前記ホーン支持部材の上下方向の位置を検出するホーン位置検出装置と、
を備えることを特徴とする、
請求項6乃至9のいずれかに記載のチップボンダ装置。
【請求項11】
前記部品保持ユニットにおける前記ホーン付勢装置は、
前記ホーン支持部材側に固定配置されるホーン側マグネットと、
前記ホーン側マグネットと対向して、前記ケース側に固定配置されるケース側マグネットと、を備え、
前記ホーン側マグネット及び前記ケース側マグネットは、相互に吸着又は反発することで、前記ホーン支持部材を上方に付勢することを特徴とする、
請求項10に記載のチップボンダ装置。
【請求項12】
前記超音波ホーンは、該超音波ホーンの振動方向が前記ターレットの径方向となるように設けられていることを特徴とする、
請求項6乃至11のいずれかに記載のチップボンダ装置。
【請求項13】
前記部品保持ユニット駆動装置は、前記部品保持ユニットの真上に対して前記ターレットの半径方向にオフセットされた状態で配置されることを特徴とする、
請求項6乃至12のいずれかに記載のチップボンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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