説明

超音波内視鏡用穿刺針装置

【課題】超音波内視鏡の先端近傍部が屈曲している内部管路に外周面に微小凹凸を有する穿刺針とシースを一緒に挿通したときに、穿刺針とシースの間に大きな摩擦抵抗を発生させることなく、穿刺針を超音波を利用して正確に認識できる超音波内視鏡用穿刺針装置を提供する。
【解決手段】穿刺針51の外周面の超音波プローブ12と反対側の領域の少なくとも一部に形成した、微小凹凸を具備する凹凸形成領域53と、該外周面の超音波プローブと対向する領域の少なくとも一部に形成した、該微小凹凸を具備しない凹凸非形成領域54と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波内視鏡の内部管路に挿入して使用する超音波内視鏡用穿刺針装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、挿入部の先端部に設けた超音波プローブと、操作部に突設した口金と、操作部と挿入部の内部に形成した口金から超音波プローブ側に延びて、その先端が挿入部の先端部の表面において開口する内部管路と、を具備する超音波内視鏡、及び、上記口金に着脱可能な穿刺針装置が開示してある。
この穿刺針装置は、本体部である筒状接続部と、筒状接続部の内部空間を通って外部に突出するシースと、シース内に進退可能に挿入した穿刺針と、筒状接続部に対してスライド可能でかつ穿刺針の一端部を固定状態で支持するスライダと、を具備している。
穿刺針装置を使用する際には、筒状接続部の先端部を口金に対して固定状態で接続する。すると、シース(及び穿刺針)が口金の内部を通って超音波内視鏡の内部管路に挿入し、シース(及び穿刺針)の先端部が内部管路の先端開口から外部に突出する。
この状態でスライダを筒状接続部に対して口金側にスライドさせると、穿刺針の先端部がシースの先端開口から突出して超音波プローブと対向する。穿刺針の先端部の外周面には超音波を反射させるための微小凹凸が形成してあるため、超音波プローブから超音波を発信すると、該超音波が該微小凹凸で反射して超音波プローブによって受信されるので、超音波内視鏡に接続したモニタには穿刺針の先端部の超音波画像が表示される。そのため術者はモニタを見ることにより、穿刺針の先端部の位置を認識しながら内視鏡術を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3904299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に超音波内視鏡の上記内部管路の先端部を除く部分の軸線は挿入部の軸線と平行であるが、内部管路の先端部の軸線は挿入部の軸線に対して傾斜しているため、該内部管路の先端部とその直後に位置する部分との接続部は屈曲形状となっている。従って、シースの先端部を内部管路の先端開口から外部に突出させると、シースの先端近傍部は該屈曲形状部において屈曲する。そのため、この状態でスライダを筒状接続部に対して口金側にスライドさせて穿刺針の先端部をシースの先端開口から突出させると、穿刺針の先端近傍部も内部管路及びシースの上記屈曲形状部に合わせて屈曲するため、穿刺針の先端部の外周面の一部がシースの先端開口の周縁部に圧接する。
しかし穿刺針の先端部の外周面全体には上記微小凹凸が形成してあるため、微小凹凸とシースとの間で大きな摩擦抵抗が発生し、穿刺針の操作(スライダの操作)が不円滑になるおそれがある。
【0005】
本発明は、超音波内視鏡の先端近傍部が屈曲している内部管路に外周面に微小凹凸を有する穿刺針とシースを一緒に挿通したときに、穿刺針とシースの間に大きな摩擦抵抗を発生させることなく、穿刺針を超音波を利用して正確に認識できる超音波内視鏡用穿刺針装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波内視鏡用穿刺針装置は、先端部に超音波プローブを備える超音波内視鏡に設けた口金に対して着脱可能な筒状接続部、該筒状接続部に設けた、該筒状接続部を上記口金に接続したときに該筒状接続部の軸線回りの回転を規制する回転規制手段と、一部が該筒状接続部内に位置すると共に先端が筒状接続部から突出し、かつ筒状接続部を上記口金に接続したときに上記超音波内視鏡の内部管路に進入する可撓性を有するシースと、該シース内に進退可能に挿入した、該シースの形状に沿って変形可能な円筒形状の穿刺針と、該穿刺針をその軸線回りに回転不能に支持し、該穿刺針の先端部がシースの先端から突出して上記超音波プローブと対向する突出位置と先端がシース内に収納される収納位置との間を該軸線方向に相対スライド可能かつ該軸線回りに相対回転不能として上記筒状接続部に支持したスライダと、を備える穿刺針装置において、上記穿刺針の外周面の上記超音波プローブと反対側の領域の少なくとも一部に形成した、微小凹凸を具備する凹凸形成領域と、該外周面の上記超音波プローブと対向する領域の少なくとも一部に形成した、該微小凹凸を具備しない凹凸非形成領域と、を設けたことを特徴としている。
【0007】
上記凹凸非形成領域が、上記超音波プローブ側の上記穿刺針の軸線を中心とする中心角180°の領域であり、上記凹凸形成領域が、上記超音波プローブと反対側の上記穿刺針の軸線を中心とする中心角180°の領域であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転規制手段を利用して筒状接続部を超音波内視鏡の口金に回転を規制した状態で接続したときに、超音波内視鏡の内部管路に挿入したシースの先端から穿刺針の先端部が突出すると、該先端部の外周面の凹凸非形成領域が超音波プローブと対向する。
一般的に超音波内視鏡の内部管路の先端部を除く部分の軸線は挿入部の軸線と平行であるが、内部管路の先端部の軸線は挿入部の軸線に対して傾斜しており、該内部管路の先端部とその直後に位置する部分との接続部は屈曲形状となっている。従って、シースの先端部を内部管路の先端開口から外部に突出させるとシースの先端近傍部が該屈曲形状部において屈曲するため、この状態で穿刺針の先端部をシースの先端開口から突出させようとすると、穿刺針の先端が内部管路及びシースの上記屈曲形状部に合わせて屈曲するため、穿刺針の外周面の凹凸非形成領域がシースの先端開口の周縁部に圧接することが多い。
しかし本発明の凹凸非形成領域は微小凹凸を具備していないため、穿刺針とシースの間に大きな摩擦抵抗が発生することはなく、術者はスライダを円滑に操作できる。
また穿刺針の外周面の凹凸形成領域には超音波を反射するための微小突起が形成してあるため、術者は穿刺針を正確に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態の超音波内視鏡と操作部最短状態の穿刺針装置の接続状態における側面図である。
【図2】操作部最短状態から伸張させた穿刺針装置の斜視図である。
【図3】口金の斜視図である。
【図4】口金の正面図である。
【図5】筒状接続部の斜視図である。
【図6】筒状接続部の正面図である。
【図7】図6のVII−VII矢線に沿う断面図である。
【図8】図1のVIII−VIII矢線に沿う、ロック部材が抜止位置に位置するときの断面図である。
【図9】ロック部材が挿脱許容位置に位置するときの図8と同様の断面図である。
【図10】図1のX−X矢線に沿う、ロック部材が抜止位置に位置するときの断面図である。
【図11】ロック部材が挿脱許容位置に位置するときの図10と同様の断面図である。
【図12】超音波内視鏡の先端部の一部を破断して示す拡大側面図である。
【図13】図12のXIII矢線方向見たときの超音波内視鏡の挿入部を省略して示す拡大図である。
【図14】変形例の図13と同様の拡大図である。
【図15】別の変形例の図13と同様の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態を説明する。なお、以下の説明中の前後方向は、超音波内視鏡10については挿入部13の先端部側を「前方」、操作部11側を「後方」と定義し、穿刺針装置30については穿刺針51の先端側を「前方」、スタイレット支持キャップ55側を「後方」としている。まず、穿刺針装置30を着脱可能な超音波内視鏡10の構造について説明する。
超音波内視鏡10は、操作部11と、操作部11から前方に延びかつ先端に超音波プローブ12を備える挿入部13と、共に操作部11から挿入部13と反対側に延びるライトガイド用チューブ及び超音波画像伝送用チューブ(いずれも図示略)と、を備え、ライトガイド用チューブと超音波画像伝送用チューブの端部には光源用コネクタと超音波画像用コネクタがそれぞれ設けてある。挿入部13の先端部近傍をなす湾曲部14は、操作部11に設けた湾曲操作レバー15の回転操作に応じて上下方向に湾曲する。操作部11には処置具挿通用突部16が突設してあり、処置具挿通用突部16の後端面には略円筒形状をなしかつ両端が開口する口金17が突設してある。図3及び図4等に示すように、口金17の外周面の先端部近傍には、円の両側部を該円の中心点に関して対称をなす一対の円弧(2つの円弧の長さは同一)に沿って切り落とした非円形形状の鍔部(回転規制手段)18が一体的に突設してある。また、口金17の外周面には鍔部18と軸線方向の位置をずらして正面視円形の環状フランジ19が突設してある。この環状フランジ(フランジ)19(及びその鍔部18側の面)は口金17の軸線に対して直交している。さらに、操作部11及び挿入部13の内部には、一端が口金17に接続し他端が挿入部13に超音波プローブ12の直後に位置させて形成した処置具用開口21に接続する内部管路20(図1参照)が設けてある。内部管路20の前端部20a及び後端部を除く部分は挿入部13の軸線と平行に延びているが、図12に示すように内部管路20の前端部20aの近傍部は屈曲しており、内部管路20の前端部20aの軸線は挿入部13の軸線に対して傾斜している。
超音波画像用コネクタを超音波診断装置(図示略)に接続すると共に超音波診断装置をCRTモニタに接続し、さらに超音波プローブ12にゴム製のバルーン(図示略)を被せた上で、該超音波診断装置の超音波スイッチを押すと、超音波プローブ12の表面から被検部に向けて超音波が発信され、被検部によって反射された超音波を超音波プローブ12が受信する。挿入部13、操作部11及び超音波画像伝送用チューブの内部には超音波プローブ12と超音波画像用コネクタを接続する超音波画像伝送用ケーブル(図示略)が設けてあるので、超音波プローブ12が受信した超音波画像は超音波診断装置により電気的に処理された上でCRTモニタに表示される。
【0011】
続いて穿刺針装置30の構造について説明する。
穿刺針装置30は硬質樹脂(PC(ポリカーボネイト)や、ノリル等のEOG滅菌可能な樹脂材料)によって成形した略円筒形状の筒状接続部31を有している。筒状接続部31の内部空間の前部を除く部分は断面円形のスライダ支持孔32となっており、筒状接続部31の後部にはスライダ支持孔32と外部空間を連通する雌ねじ孔33が貫通孔として形成してある。スライダ支持孔32の前端部は、スライダ支持孔32より小径かつ同心をなす中間円形孔34と連通しており、筒状接続部31の前端部には口金17の環状フランジ19と同じ断面形状である倒れ防止用凹部35が凹設してある。中間円形孔34と倒れ防止用凹部35の間には、正面形状が口金17の鍔部18と同一であり、かつ中間円形孔34及び倒れ防止用凹部35より小寸である非円形孔(回転規制手段)36が中間円形孔34及び倒れ防止用凹部35と同心をなすように形成してある。倒れ防止用凹部35の底面(後面)は筒状接続部31の軸線に対して直交する平面である挿入規制面(挿入規制部)37となっている。筒状接続部31の前部には、筒状接続部31を筒状接続部31の軸線に対して直交する方向に貫通する互いに平行な一対の貫通支持孔38A、38Bが形成してある。
【0012】
筒状接続部31のスライダ支持孔32には、筒状接続部31の後端開口から硬質樹脂(PC等)からなる筒状部材である第1スライダ40がスライド自在かつ自身の軸線回りに相対回転不能として挿入してある。第1スライダ40は前後両端が開口しており、その外径はスライダ支持孔32の径と略同一である。第1スライダ40の後端部にはスライダ支持孔32より大径の筒状部材である硬質樹脂製の第1ストッパ部材41が固定してある。従って第1スライダ40は、第1ストッパ部材41が筒状接続部31の後端面に当接する最大押込位置(突出位置)と、図示を省略したストッパによってそれ以上の後方移動が規制される最大引出位置(収納位置)との間を筒状接続部31に対してスライド可能であり、かつスライダ支持孔32に挿入(螺合)した第1固定ねじ部材43のボルトの先端面(内端面)を第1スライダ40の外周面に圧接することにより、第1スライダ40の筒状接続部31に対する位置を固定可能である。第1ストッパ部材41の内面には樹脂等の可撓性材料からなり両端が開口するシース44の後端部が、第1スライダ40と同心状態で固定してある。このシース44の前部はスライダ支持孔32、中間円形孔34、非円形孔36及び倒れ防止用凹部35を通って筒状接続部31の前方に突出している。そのため、シース44の筒状接続部31に対する突出量は、第1スライダ40及び第1ストッパ部材41の筒状接続部31に対するスライド位置を変化させることにより調整可能である。
【0013】
第1スライダ40の内部空間には、第1スライダ40の内径より小径の硬質樹脂(PC等)からなる筒状部材である第2スライダ45がスライド自在に挿入してある。第2スライダ45は前後両端が開口しており、第2スライダ45の後端部には硬質樹脂(PC(ポリカーボネイト)やノリル等)からなる後端固定部材46が固定してある。後端固定部材46は後部が前部に比べて小径の筒状部材であり、後端固定部材46の後部の外周面には雄ねじが形成してある。さらに、第2スライダ45の外周面には第2スライダ45に対してスライド可能な硬質樹脂製(PC等)の第2ストッパ部材48がスライド自在に装着してある。第2ストッパ部材48には、第2ストッパ部材48を径方向に貫通する雌ねじ孔(図示略)が形成してあり、この雌ねじ孔には第1固定ねじ部材43と同様の第2固定ねじ部材49が挿入(螺合)してある。従って、第2ストッパ部材48の第2スライダ45に対するスライド位置は、第2固定ねじ部材49のボルトの先端面(内端面)を第2スライダ45の外周面に圧接することにより固定可能である。第2スライダ45及び後端固定部材46は、第2ストッパ部材48が第1ストッパ部材41の後端面に当接する押込位置と、図示を省略したストッパによって第2スライダ45の第1スライダ40及び第1ストッパ部材41に対するそれ以上の後方移動が規制される最大引出位置との間を第1スライダ40及び第1ストッパ部材41に対してスライド可能である。さらに、第2ストッパ部材48の第2スライダ45に対するスライド位置を調整することにより、上記押込位置を調整することも可能である。後端固定部材46の内面には可撓性を有する中空の金属材からなりかつ後端が開口する円筒形状の穿刺針51の後端部が同心状態で固定してあり、該穿刺針51の前端には開口52が形成してある。さらに図12、図13に示すように穿刺針51の前端部の外周面にはサンドブラスト等を利用することによって、超音波プローブ12から発射された超音波を反射するための微小凹凸が形成してある。この微小凹凸は該前端部の外周面全体に形成してあるのではなく、穿刺針51を前方(開口52側)から穿刺針51の軸線に沿って見たときに第1固定ねじ部材43側に位置する半円周領域(該軸線を中心とする中心角180°の領域)である凹凸形成領域53にのみ形成してあり、該前端近傍部の外周面の残りの領域は微小凹凸が形成されていない凹凸非形成領域54となっている。穿刺針51はシース44の内部にスライド可能に挿通してあるので、第2スライダ45(後端固定部材46)の第1スライダ40に対するスライド位置を変化させることにより、穿刺針51の前端部をシース44の前端開口から出没させることが出来る。
さらに、後端固定部材46の後部の上記雄ねじには、硬質樹脂製(例えばPOM等)の筒状部材であるスタイレット支持キャップ55の内周面に形成した雌ねじが着脱可能に螺合してある。スタイレット支持キャップ55には可撓性部材であるスタイレット56の後端が固定してあり、スタイレット56は穿刺針51の後端開口から穿刺針51の内部空間に相対移動可能に挿入してある。
【0014】
筒状接続部31の貫通支持孔38A、及び、貫通支持孔38Bには硬質樹脂のロック部材60が設けてある。
ロック部材60は貫通支持孔38Aと貫通支持孔38Bにそれぞれ挿入した棒状部材でありかつ真鍮もしくはSUS等の金属材料からなる一対のスライド部材61と、各スライド部材61の一方の端部どうしを接続する硬質樹脂(例えばPC等)からなる摘み部66と、スライド部材61の他方の端部どうしを接続する硬質樹脂(例えばPC等)からなる摘み部68と、を具備している。
図8及び図9に示すように、一対のスライド部材61は貫通支持孔38A、38Bと同じ断面形状であるストッパ部62と、貫通支持孔38A、38Bより断面形状が小さい(細い)通過許容部63とを有しており、ストッパ部62の先端部にはストッパ部62より狭幅の係合突部64が突設してあり、通過許容部63の先端部には通過許容部63より狭幅の係合突部65が突設してある。摘み部66には係合突部64が着脱自在に嵌合可能な一対の取付孔67が形成してあり、摘み部68には係合突部65が着脱自在に嵌合可能な一対の取付孔69が形成してある。
ロック部材60を筒状接続部31に装着するには、摘み部66の取付孔67に一対の係合突部64をそれぞれ嵌合した状態で、一対の通過許容部63及び係合突部65を貫通支持孔38Aと貫通支持孔38Bにそれぞれ挿入する。そして、各係合突部65を貫通支持孔38A、38Bの外側に突出させた後に、各係合突部65に摘み部68の取付孔69を嵌合する。このようにロック部材60は、スライド部材61と摘み部66と摘み部68からなる簡単な構造なので、部品点数が少なく組み付け作業は容易である。また、組み付けと逆の手順により簡単に分離することも出来る。
【0015】
続いて穿刺針装置30の口金17に対する着脱要領と穿刺針装置30の使用要領について説明する。
超音波内視鏡10から分離されている穿刺針装置30を超音波内視鏡10の口金17に接続するには、まず摘み部68を筒状接続部31に対して摘み部66側に押圧することにより、ロック部材60を図9及び図11に示す挿脱許容位置に移動させる。次いで、筒状接続部31を口金17と同軸上に位置させかつ筒状接続部31の非円形孔36の向きを口金17の鍔部18と同じ向きにした上で筒状接続部31の倒れ防止用凹部35を口金17に接近させ、倒れ防止用凹部35を口金17の鍔部18に被せる。図9に示すように、一対の通過許容部63間の間隔は非円形孔36及び鍔部18の同方向の寸法より長い。従って、筒状接続部31をさらに口金17側に接近させて口金17を筒状接続部31内の所定位置まで挿入すれば、鍔部18は一対の通過許容部63間を通って筒状接続部31の非円形孔36に嵌合し、かつ環状フランジ19の周面が倒れ防止用凹部35の内周面である環状面に面接触すると共に環状フランジ19の鍔部18側の面が挿入規制面37に面接触する(図9及び図11参照)。この状態で摘み部66を筒状接続部31に対して摘み部68側に押圧して図8に示す抜止位置まで移動させれば、一対のストッパ部62が鍔部18の環状フランジ19側の面に接触する(図8及び図10参照)。
このような状態になると、筒状接続部31の口金17に対する脱出方向(スタイレット支持キャップ55側への移動)は一対のストッパ部62と口金17の当接によって規制され、筒状接続部31の口金17への挿入方向(シース44及び穿刺針51の先端側への移動)は環状フランジ19と挿入規制面37の当接によって規制されるので、筒状接続部31の口金17に対する軸線方向への移動は完全に防止される。さらに、互いに同一形状かつ非円形形状である鍔部18と非円形孔36が互いに嵌合するので、筒状接続部31の口金17に対する軸線回りの回転も完全に防止される。しかも、口金17に鍔部18とは軸線方向位置をずらして形成した環状フランジ19と挿入規制面37が面接触し、かつ環状フランジ19の周面が倒れ防止用凹部35の内周面に面接触するので、筒状接続部31の口金17に対する倒れも完全に防止される。
【0016】
このように穿刺針装置30を口金17(超音波内視鏡10)に対して固定すると、図12、図13に示すようにシース44の前端部が内部管路20の内部を通って処置具用開口21の外部に突出するので、シース44の前端近傍部は内部管路20の前端近傍の屈曲部において屈曲し、シース44の前端部は前端部20aと略平行をなしながら処置具用開口21から外部に突出する。この状態で第1スライダ40を筒状接続部31に対して上記最大押込位置側にスライドさせると穿刺針51がシース44に対して前方にスライドするので、図12に示すように穿刺針51の前端部がシース44の前端開口から外部に突出する。穿刺針51はシース44の形状に合わせて変形可能なので、穿刺針51はシース44の屈曲部を通過するときに該屈曲部の形状に合わせて屈曲する。そのため穿刺針51の前端部はシース44の前端部と略平行となり、さらに穿刺針51の前端部の凹凸非形成領域54がシース44の前端開口の超音波プローブ12側の部分(図12、図13に点Aで示した部分)に摺接する。しかし凹凸非形成領域54には上記微小凹凸が形成されていないため、穿刺針51とシース44の間に大きな摩擦抵抗が発生することはなく、術者は第1スライダ40(及び穿刺針51)を円滑に操作できる。
その一方で、超音波プローブ12から発射された超音波は穿刺針51の凹凸形成領域53によって反射され超音波プローブ12によって受信されるので、CRTモニタには穿刺針51の前端部の超音波画像が明瞭に表示される。しかも凹凸形成領域53は穿刺針51の外周面の半円周領域(穿刺針51の軸線を中心とする超音波プローブ12と反対側の中心角180°の領域)に形成してあるので、CRTモニタには穿刺針51の前端部の幅全体の形状が表示される。このように術者はCRTモニタを見ることにより穿刺針51の前端部の位置及び形状を正確に認識できるので、内視鏡術を正確に行うことが可能である。
【0017】
穿刺針装置30による処置が完了した場合や、口金17に穿刺針装置30とは別の処置具を挿入したい場合は、まず摘み部68を筒状接続部31に対して摘み部66側に押圧することにより、ロック部材60を図9及び図11に示す挿脱許容位置まで移動させる。すると、上述のように一対のストッパ部62が鍔部18の環状フランジ19側の面から側方に移動し口金17の鍔部18が一対の通過許容部63間を通過可能になる。従って、筒状接続部31をその軸線に沿ってスタイレット支持キャップ55側に移動させると、口金17の鍔部18が非円形孔36から脱出するので、筒状接続部31の口金17からの取り外し作業が完了する。
【0018】
以上、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば凹凸形成領域53の形成範囲を変更してもよい。凹凸形成領域53は穿刺針装置30を超音波内視鏡10の口金17に接続(固定)したときにシース44の上記点A部と摺接(接触)しない部分に形成すればよいので、例えば図14に示すように穿刺針51の軸線を中心とする中心角が180°より大きい領域に凹凸形成領域53を形成してもよい。また図15に示すように、穿刺針51の軸線を中心とする中心角が180°より小さい領域に凹凸形成領域53を形成してもよい。
また穿刺針装置30を口金17に対して回転を規制した状態で固定するための構成(回転規制手段)は上記実施形態のものでなくてもよく、例えば筒状接続部31の先端部と口金17とに形成した互いに螺合するねじ溝であってもよい。
さらに凹凸形成領域53の微小凹凸をサンドブラスト以外の製法で形成してもよい。
【符号の説明】
【0019】
10 超音波内視鏡
11 操作部
12 超音波プローブ
13 挿入部
14 湾曲部
15 湾曲操作レバー
16 処置具挿通用突部
17 口金
18 鍔部(回転規制手段)
19 環状フランジ(フランジ)
20 内部管路
20a 前端部
21 処置具用開口
30 穿刺針装置
31 筒状接続部
32 スライダ支持孔
33 雌ねじ孔
34 中間円形孔
35 倒れ防止用凹部
36 非円形孔(回転規制手段)
37 挿入規制面(挿入規制部)
38A 38B 貫通支持孔
40 第1スライダ
41 第1ストッパ部材
43 第1固定ねじ部材
44 シース
45 第2スライダ
46 後端固定部材
48 第2ストッパ部材
49 第2固定ねじ部材
51 穿刺針
52 開口
53 凹凸形成領域
54 凹凸非形成領域
55 スタイレット支持キャップ
56 スタイレット
60 ロック部材
61 スライド部材
62 ストッパ部
63 通過許容部
64 65 係合突部
66 68 摘み部
67 69 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に超音波プローブを備える超音波内視鏡に設けた口金に対して着脱可能な筒状接続部と、
該筒状接続部に設けた、該筒状接続部を上記口金に接続したときに該筒状接続部の軸線回りの回転を規制する回転規制手段と、
一部が該筒状接続部内に位置すると共に先端が筒状接続部から突出し、かつ筒状接続部を上記口金に接続したときに上記超音波内視鏡の内部管路に進入する可撓性を有するシースと、
該シース内に進退可能に挿入した、該シースの形状に沿って変形可能な円筒形状の穿刺針と、
該穿刺針をその軸線回りに回転不能に支持し、該穿刺針の先端部がシースの先端から突出して上記超音波プローブと対向する突出位置と先端がシース内に収納される収納位置との間を該軸線方向に相対スライド可能かつ該軸線回りに相対回転不能として上記筒状接続部に支持したスライダと、
を備える穿刺針装置において、
上記穿刺針の外周面の上記超音波プローブと反対側の領域の少なくとも一部に形成した、微小凹凸を具備する凹凸形成領域と、
該外周面の上記超音波プローブと対向する領域の少なくとも一部に形成した、該微小凹凸を具備しない凹凸非形成領域と、
を設けたことを特徴とする超音波内視鏡用穿刺針装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波内視鏡用穿刺針装置において、
上記凹凸非形成領域が、上記超音波プローブ側の上記穿刺針の軸線を中心とする中心角180°の領域であり、
上記凹凸形成領域が、上記超音波プローブと反対側の上記穿刺針の軸線を中心とする中心角180°の領域である超音波内視鏡用穿刺針装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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