超音波内視鏡
【課題】先端硬質長を短縮させて、体腔内への挿入性を向上させる超音波探触子を備えた超音波内視鏡を提供する。
【解決手段】超音波内視鏡は、挿入部を構成する可撓管部、湾曲部、先端硬性部2aのうち、先端部を構成する該先端硬性部2aの先端側に配置された超音波探触子12と、先端硬性部2aに処置用孔27の処置具導出口24を有する。超音波探触子12は、凸型の円弧状に配列される複数の超音波振動子9で構成され、複数の超音波振動子9の曲率中心を、処置具導出口24よりも基端側に配している。
【解決手段】超音波内視鏡は、挿入部を構成する可撓管部、湾曲部、先端硬性部2aのうち、先端部を構成する該先端硬性部2aの先端側に配置された超音波探触子12と、先端硬性部2aに処置用孔27の処置具導出口24を有する。超音波探触子12は、凸型の円弧状に配列される複数の超音波振動子9で構成され、複数の超音波振動子9の曲率中心を、処置具導出口24よりも基端側に配している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入部の先端に観察光学系と、処置具導出口と、複数の超音波振動子を配した、コンベックス型の探触子超音波内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内における超音波観察、或いは処置具類を使用して治療、処置を行う内視鏡として、内視鏡の先端にコンベックス型の超音波探触子を有する超音波内視鏡が知られている。コンベックス型の超音波探触子は、複数の超音波振動子を凸型の円弧状に並べて構成される。
【0003】
コンベックス型の超音波探触子を有する超音波内視鏡として、例えば特許文献1、特許文献2(図19参照)が示されている。これら超音波内視鏡においては、超音波探触子近傍の先端硬性部に観察光学系を備え、その観察光学系は、前方斜視方向に光軸を有する。
【0004】
超音波内視鏡においては、観察光学系で視認しながら、その観察部位の内部を超音波断層像として観察する位置関係が必須である。そして、超音波断層像によって処置具の挿入深さなどを確認するためには、処置具の操作範囲を考慮した超音波走査範囲が必要になる。
【0005】
そのため、特許文献1、2で示すように観察光学系が前方斜視の場合は、超音波探触子を先端硬性部の先端側に設けることによって、前方斜視の光軸と処置具の操作範囲とを超音波走査範囲内に収めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−131442号公報
【特許文献2】特開2004−350700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された超音波内視鏡では、先端硬性部に加え超音波探触子を含めた構造が、いわゆる内視鏡挿入部の硬質長になる。このため、超音波探触子を搭載していない通常の内視鏡に比べ、超音波内視鏡では先端硬質長が長くなる。このことにより、前記超音波内視鏡の体腔内への挿入には、熟練した技術が必要となる。
【0008】
また、特許文献2に記載された構造では、先端硬性部に斜面を設け、その斜面に超音波探触子を搭載している。このため、前記特許文献1に記載の超音波内視鏡に比べて先端硬質長は短くなっている。しかし、処置具導出口から導出される処置具を超音波走査範囲に収めることを可能にするため、超音波走査範囲が180度となる半円形状の超音波探触子を設けている。そのため、先端硬性部に加え、超音波探触子の曲率半径の2倍の長さを含めた構造が、先端硬質長になる。このことにより、通常の内視鏡に比べ、超音波内視鏡の先端硬質長が長くなるので、超音波内視鏡の体腔内への挿入には、熟練した技術が必要となる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、先端硬質長を短縮させて、体腔内への挿入性を向上させる超音波探触子を備えた超音波内視鏡を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による超音波内視鏡は、被検体に挿入される先端硬性部と、前記先端硬性部の先端面と、前記先端硬性部内に配置された処置具挿通用チャンネルと、前記処置具挿通用チャンネルの先端側の開口であって、前記先端面に配置された処置具導出口と、前記先端面のうち、前記処置具導出口から導出される処置具を観察可能な位置に配置され、曲率中心が前記処置具導出口よりも基端側となるように凸型の円弧状に配列された複数の超音波振動子と、を含んでいる。
【0011】
この構成によれば、複数の超音波振動子の曲率中心が処置具導出口よりも基端側、即ち、処置具導出口よりも後退している。したがって、超音波探触子の処置具導出口より先端側への最大突出量が半径寸法以下になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、先端硬質長を短縮させて、体腔内への挿入性を向上させる超音波探触子を備えた超音波内視鏡を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】超音波内視鏡の構成を説明する図
【図2】超音波内視鏡の先端部の構成を説明する斜視図
【図3】図2に示す先端部を正面から見た正面図
【図4】図3のA−A線断面図
【図5】複数の超音波振動子を配列して構成される超音波探触子、及び超音波探触子の超音波観測領域と、処置具導出口から導出された処置具との関係を説明する図
【図6】アーチファクトが現れた超音波画像例を示す図
【図7】図5に示す超音波探触子で描出された超音波画像例を示す図
【図8】ノーズピースの組織当接面と超音波探触子の音響レンズ面との関係を説明する図
【図9】超音波内視鏡の超音波観測領域の境界近傍に病変部が存在する状態を説明する図
【図10】図9に示す観察状態における超音波画像を示す図
【図11】エレベーション幅が連続的に変化する超音波探触子を備えた先端部を正面から見た正面図
【図12】図11のB−B線断面図
【図13】エレベーション幅の一部が連続的に変化する部分とを備える超音波探触子を含む先端部を正面から見た正面図
【図14】図13のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1乃至図14は本発明の一実施形態に係り、図1は超音波内視鏡の構成を説明する図、図2は超音波内視鏡の先端部の構成を説明する斜視図、図3は図2に示す先端部を正面から見た正面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は複数の超音波振動子を配列して構成される超音波探触子、及び超音波探触子の超音波観測領域と、処置具導出口から導出された処置具との関係を説明する図、図6はアーチファクトが現れた超音波画像例を示す図、図7は図5に示す超音波探触子で描出された超音波画像例を示す図、図8はノーズピースの組織当接面と超音波探触子の音響レンズ面との関係を説明する図、図9は超音波内視鏡の超音波観測領域の境界近傍に病変部が存在する状態を説明する図、図10は図9に示す観察状態における超音波画像を示す図、図11はエレベーション幅が連続的に変化する超音波探触子を備えた先端部を正面から見た正面図、図12は図11のB−B線断面図、図13はエレベーション幅の一部が連続的に変化する部分とを備える超音波探触子を含む先端部を正面から見た正面図、図14は図13のC−C線断面図である。
【0016】
図1に示すように本実施形態の超音波内視鏡(以下、内視鏡とも記載する)1は、体腔内に挿入される細長の挿入部2と、この挿入部2の基端に設けられた操作部3と、この操作部3の側部から延出するユニバーサルコード4とを備えて構成されている。ユニバーサルコード4の他端には内視鏡コネクタ5が設けられている。内視鏡コネクタ5の側部からは超音波ケーブル6が延出している。超音波ケーブル6の他端には超音波コネクタ7が設けられている。
【0017】
挿入部2は、先端側から順に硬質部材で形成された先端硬性部2aと、湾曲自在に構成された湾曲部2bと、この湾曲部2bの基端から操作部3の先端に至る長尺で可撓性を有する可撓管部2cとを連接して構成されている。
操作部3には湾曲操作を行うためのアングルノブ3aが設けられている。また、操作部3には送気及び送水の操作を行う送気送水ボタン3bと、吸引を行う吸引ボタン3cとが設けられている。さらに、操作部3には処置具を体腔内に導くための処置具挿入口3dが設けられている。
【0018】
なお、符号10はコンベックス型の超音波走査面を有する超音波探触子からなる超音波ユニットである。超音波ユニット10は、内視鏡挿入軸方向に対して前方方向を走査する超音波走査範囲10Aを形成する。
【0019】
図2、図3に示すように挿入部2の先端硬性部2aには超音波による音響的画像情報を得るための超音波ユニット10が設けられている。超音波ユニット10は、筐体であるノーズピース11と、超音波探触子12とを備えて構成されている。超音波探触子12はノーズピース11の略中央部に形成された切り欠き部に一体的に配設されている。この図に示すようにノーズピース11を構成する組織当接面11a、及び超音波探触子12の音響レンズ面12aは、先端硬性部2aの先端面21よりも突出する形状で構成されている。
【0020】
図4、図5に示すように超音波探触子12は、例えば複数の超音波振動子9と、音響レンズ12aとで構成されている。複数の超音波振動子9は、凸型の円弧を形成するように配列されている。
【0021】
一方、先端硬性部2aの先端面21には、図2、図3に示すように観察光学系22を構成する観察窓22aと、照明光学系23を構成する照明窓23aと、穿刺針等の処置具が導出される処置具導出口24と、観察窓22aに向けて水や空気等の流体を噴出する送気送水ノズル25と、前方に向けて送水を行うための副送水チャンネル口26とが設けられている。なお、副送水チャンネル口26を設ける代わりに、該副送水チャンネル口26を第2処置具導出口として構成するようにしても良い。
【0022】
処置具導出口24の中心軸は、処置具導出口24から導出される処置具が超音波探触子12で得られる超音波走査範囲10A内に収まるように、超音波探触子12の中心線L2と同一直線上に配列してある。
【0023】
観察窓22a、照明窓23a、及び送気送水ノズル25は、処置具導出口24に対して例えば図中右側にまとめて配置され、超音波走査範囲10Aより外側に配置されている。そして、観察窓22aは、照明窓23a、送気送水ノズル25のうち、該送気送水ノズル25の配置位置を、超音波観測領域10Aから最も離れた位置となるように設定している。また、本実施形態においては、照明窓23a、観察窓22a、及び送気送水ノズル25の配置位置を、観察性能の向上、洗滌性の向上、及び内視鏡先端部外径寸法の小径化を図る目的を考慮して、一直線上に配置している。
【0024】
観察窓22aは、観察光学系22の観察視野範囲(図4の一点鎖線で示す符号22Aの範囲参照)を有している。照明窓23aは、照明光学系23の照明光照射範囲(図4の二点鎖線で示す符号23Aの範囲参照)を有している。観察視野範囲22A、照明光照射範囲23Aは、その範囲内に超音波探触子12が含まれないように構成される。
【0025】
なお、観察窓22a、及び照明窓23aは、先端面21より僅かに突出して構成された観察部用先端面21a内に設けられている。また、副送水チャンネル口26は、観察窓22a、照明窓23a、及び送気送水ノズル25が配置されている処置具導出口24を挟んで一面側とは反対側の他面側であって、超音波走査範囲10Aより外側に配置されている。この副送水チャンネル口26を第2処置具導出口として構成する場合、チャンネル径の寸法を使用する処置具に合わせて径寸法を設定する。
【0026】
このことによって、内視鏡観察下において2つの処置具を使用した手技を行える。このため、第2処置具導出口から突出させ、内視鏡観察下で使用する処置具と、処置具導出口24から突出させ、超音波診断下で使用する処置具とを組み合わせて、効率良く、診断、治療を行う構成が可能になる。
【0027】
図4に示すように先端硬性部2aの基端側には湾曲部2bを構成する先端湾曲駒8aが接続固定されている。先端湾曲駒8aには複数の湾曲駒(不図示)が連接されている。そして、これら湾曲駒をつなげて構成される湾曲部2bの中心を結ぶ直線が内視鏡挿入軸L1である。
【0028】
先端湾曲駒8aの所定位置には、上下左右用の湾曲ワイヤ8wのそれぞれの先端部が固設されている。したがって、術者が、アングルノブ3aを適宜操作することにより、その操作に対応する湾曲ワイヤ8wが牽引弛緩されて、湾曲部2bが湾曲動作するようになっている。これら複数の湾曲駒は湾曲ゴム8gによって被覆されている。湾曲ゴム8gの先端部は、先端硬性部2aに設けられる糸巻き接着部8hによって一体的に固定されている。
【0029】
先端硬性部2aの先端面21、及び観察部用先端面21aは、内視鏡挿入軸L1に対して直交して構成されている。先端硬性部2aには処置具導出口24を構成する処置具挿通用チャンネル孔(以下、処置具用孔と略記する)27、及び配置孔30が形成されている。
【0030】
なお、先端硬性部2aには、孔27、30の他に図示は省略しているが、観察光学系が設けられる貫通孔、照明光学系が設けられる貫通孔、送気送水ノズル25から噴出される流体を供給する送気送水用の貫通孔、副送水チャンネル口26を構成する貫通孔等が備えられている。
【0031】
処置具用孔27の長手方向中心軸L4は、内視鏡挿入軸L1に対して略平行に形成されている。配置孔30の長手方向中心軸L5は、内視鏡挿入軸L1に対して略平行に形成されている。また、超音波内視鏡1に備えられる観察光学系の光軸L6、及び照明光学系の光軸L7も内視鏡挿入軸L1に対して平行である。
【0032】
したがって、本実施形態の超音波内視鏡1に備えられている観察光学系は、観察視野を前方正面、言い換えれば内視鏡挿入軸L1の前方側である挿入方向に設定した、いわゆる直視型である。
【0033】
処置具用孔27の基端側には所定量傾斜して形成されたチューブ連結パイプ28の一端部が連通されている。チューブ連結パイプ28は、その他端部に処置具挿通用チャンネルを構成するチャンネルチューブ29の一端部を連通配置している。チャンネルチューブ29の他端部は、前記処置具挿入口3dに連通している。
【0034】
そして、処置具挿入口3dを介して挿通された処置具は、チャンネルチューブ29、チューブ連結パイプ28、処置具用孔27内をスムーズに移動して処置具導出口24から導出される。処置具導出口24から導出される処置具は、内視鏡挿入軸L1に対して平行に、挿入部2の挿入方向である前方に向けて導出される。
【0035】
つまり、処置具用孔27内に例えば処置具として穿刺針の先端部を配置した状態において、穿刺針を構成する針管を突出させる。すると、針管は、処置具導出口24から内視鏡挿入軸L1に対して略平行に、観察窓22aを通して観察されている前方正面に向かって突出される。
【0036】
一方、先端硬性部2aには配置孔30が設けられている。配置孔30内に超音波ユニット10が嵌合されて、ノーズピース11の当接面と先端硬性部2aの突き当て面36が当接することによって、超音波ユニット10の配置孔30に対する位置決めが行われる。超音波ユニット10の他端側からは、超音波探触子12に接続された超音波ケーブル34が導出している。
【0037】
先端硬性部2aの突き当て面36から先端に至る外形(図2の符号11bの面)は、超音波探触子12のエレベーション幅Wと当接面11aとを備えて、図2に示すように先端硬性部2aの先端外形寸法と略同寸法に設定されている。
【0038】
このため、超音波観察の際に超音波ユニット10を体組織に押し当てたとき、内視鏡挿入軸L1の方向に操作部3を把持する操作者の力量が確実に超音波ユニット10まで伝達される。このことによって、図8に示すように組織当接面11aと音響レンズ面12aとを略均一に体組織に密着させることができる。このように、超音波ユニット10の組織当接面11aと音響レンズ面12aとを体組織に対して安定した状態で押し当てて、良好な超音波観察像を得ることができる。
【0039】
図4、図5に示す超音波探触子12は、例えばバッキング材、圧電振動子、整合層、音響レンズを積層した複数の超音波振動子9を複数配列して構成される。複数の超音波振動子9は、処置具突出口に対して最も近位に配置されたて超音波を放射する第1超音波振動子9Fから処置具突出口から数えて最も遠方の最終超音波振動子9Lまで所定間隔pで配列されている。そして、図5に示すように超音波探触子12の円弧の曲率中心O1は、先端硬性部2aに設けられた処置具導出口24の開口面24aよりも基端側に位置するように構成されている。なお、超音波振動子9には、圧電素子の代わりにMUT(Micromachined Ultrasound Transducer)素子を使用してもよい。
【0040】
このように、超音波探触子12の円弧の曲率中心O1を、処置具導出口24の開口面24aより基端側に設けることによって、内視鏡1の先端硬質長が短くなる。このため、内視鏡の体腔内への挿入性が向上する。また、内視鏡1の観察視野範囲内に超音波探触子12が配置されない構成であるため、内視鏡画像の一部が超音波探触子12によって欠けるという不具合が解消される。さらに、内視鏡1の照明光照射範囲内にも超音波探触子12が入らないので、照明光の一部が超音波探触子12によって遮られることがなく、内視鏡1の観察視野範囲内に照明光が行き渡って、良好な内視鏡画像を得られる。
【0041】
超音波探触子12において、第1超音波振動子9Fの音線の中心軸LFの方向は、先端硬性部2aの先端面21(具体的には処置具導出口24を備える先端面21)を規準にして、該先端面21に対して角度θ1だけ先端側に傾いて設定されている。
【0042】
また、第1超音波振動子9Fの音線の中心軸LFの方向を角度θ1だけ先端側に傾けて設定する際、第1超音波振動子9Fの指向角θ2を考慮に入れている。具体的には、図5中の二点鎖線で囲まれた指向角内に超音波を反射しうる材質、例えば金属や硬質樹脂である先端硬性部2aの少なくとも一部、或いは送気送水ノズル25の少なくとも一部等、が入り込まないように角度θ1を設定している。角度θ1は、少なくとも、指向角θ2の半分の角度よりも大きく設定される。
【0043】
先端硬性部2aが指向角の範囲内にある場合、図6に示すようなアーチファクト42が現れる。しかし、本実施形態の構成によればアーチファクトが出現せず、図7に示すように処置具超音波像41aが超音波画像40中に明瞭に描写される。つまり、処置具導出口24から処置具41が僅かに突出された状態から該処置具41が病変部43に穿刺されるまでの処置具超音波像41aが超音波画像40中に明瞭に描出される。このような良好な視認性を得て、病変部43に対して処置具41を正確に導入することができる。
【0044】
一方、最終超音波振動子9Lが音線の中心軸LLの方向は、内視鏡挿入軸L1に対して平行、又は角度θ3だけ前方にいくにしたがって拡開するように設定されている。
【0045】
このことによって、処置具導出口24から突出された処置具41が内視鏡挿入軸L1に対して略平行に前方に向かって突出されたとき、処置具41は超音波走査範囲10Aの中央付近を移動し続ける。また、拍動などで穿刺前に内視鏡1が移動してしまって、例えば図9に示すように内視鏡挿入軸L1よりも外側に病変部43が存在する場合であっても、超音波走査範囲10Aの辺縁に病変部43が位置することによって、図10に示すように超音波画像40中の縁に病変部43が表示される。
【0046】
つまり、内視鏡1と病変部43との相対位置がずれてしまった場合でも、超音波走査範囲10Aが内視鏡挿入軸L1を超えた角度まで存在しているため、病変部43を見失うことが防止される。したがって、操作者が手元操作を行って、内視鏡1と病変部43との位置ずれの修正を容易に行うことができる。その後、病変部43に対して処置具41を導入する。
【0047】
上述した実施形態においては、超音波探触子12のエレベーション幅を図3示すように寸法Wで設定している。言い換えれば、超音波探触子12を構成する複数の超音波振動子9のエレベーション幅は寸法Wで統一されていた。これに対して、図11、図12に示す構成の超音波探触子12Aでは、第1超音波振動子9Fのエレベーション幅WFと最終超音波振動子9Lのエレベーション幅WLとを異なる寸法に設定している。
【0048】
具体的には、第1超音波振動子9Fから最終超音波振動子9Lに向かうにしたがって、つまり図12中のAからBに向かうにしたがって超音波振動子9のエレベーション幅が徐々(連続的)に幅狭になる設定である。したがって、図11に示すように超音波探触子12Aは二点鎖線に示す図3で示した超音波探触子12に比べて小型で、正面から見て台形形状に形作られる。
【0049】
このように超音波探触子12Aを構成した超音波ユニット10Aにおいては、エレベーション幅が幅狭になるにしたがって、原理上、放射される超音波ビームが拡散しやすくなり、且つ、感度が低下する。しかし、本実施形態においては、ノーズピース11Aの形状を、超音波探触子12Aのエレベーション幅の変化に合わせて、小さく設定している。
【0050】
このことによって、二点鎖線に示す図3に示されていたノーズピース11の外形に比べ、ノーズピース11Aが小さくなって内視鏡1の先端部の小径化を図れる。このことによって、内視鏡の挿入性の向上を図ることができる。
【0051】
なお、図13、図14に示す構成の超音波探触子12Bでは、第1超音波振動子9Fから第n超音波振動子9nまでを同一寸法に設定している。つまり、図14中のCからDの範囲のエレベーション幅はWで統一されている。これに対して、第(n+1)超音波振動子9(n+1)と最終超音波振動子9Lとではエレベーション幅が異なる。具体的には、第(n+1)超音波振動子9(n+1)から最終超音波振動子9Lに向かうにしたがって、つまり図14中のEからFに向かうにしたがって超音波振動子9のエレベーション幅が徐々に幅狭になる設定である。したがって、図13に示すように超音波探触子12Bは二点鎖線に示す図3で示した超音波探触子12に比べて小型で、正面から見てホームベース形状に形作られる。
【0052】
このことによって、二点鎖線に示す図3に示されていたノーズピース11の外形に比べ、ノーズピース11Bを小さくして内視鏡1の先端部の小径化を図れる。また、超音波探触子12Bを構成する超音波ユニット10Bにおいては、エレベーション幅がAからBの範囲においてエレベーション幅が同一寸法であるので、超音波ユニット10と同様の画質の超音波画像を得られる。
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…超音波内視鏡 2a…先端硬性部 9、9F、9L…超音波振動子10…超音波ユニット 10A…超音波走査範囲 11……ノーズピース11a…組織当接面 12…超音波探触子 12a…音響レンズ面21…先端面 22…観察光学系 22a…観察窓 22A…観察視野範囲 23…照明光学系 23a…照明窓23A…照明光照射範囲 24…処置具導出口 25…送気送水ノズル27…処置具用孔 41…処置具
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入部の先端に観察光学系と、処置具導出口と、複数の超音波振動子を配した、コンベックス型の探触子超音波内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内における超音波観察、或いは処置具類を使用して治療、処置を行う内視鏡として、内視鏡の先端にコンベックス型の超音波探触子を有する超音波内視鏡が知られている。コンベックス型の超音波探触子は、複数の超音波振動子を凸型の円弧状に並べて構成される。
【0003】
コンベックス型の超音波探触子を有する超音波内視鏡として、例えば特許文献1、特許文献2(図19参照)が示されている。これら超音波内視鏡においては、超音波探触子近傍の先端硬性部に観察光学系を備え、その観察光学系は、前方斜視方向に光軸を有する。
【0004】
超音波内視鏡においては、観察光学系で視認しながら、その観察部位の内部を超音波断層像として観察する位置関係が必須である。そして、超音波断層像によって処置具の挿入深さなどを確認するためには、処置具の操作範囲を考慮した超音波走査範囲が必要になる。
【0005】
そのため、特許文献1、2で示すように観察光学系が前方斜視の場合は、超音波探触子を先端硬性部の先端側に設けることによって、前方斜視の光軸と処置具の操作範囲とを超音波走査範囲内に収めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−131442号公報
【特許文献2】特開2004−350700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された超音波内視鏡では、先端硬性部に加え超音波探触子を含めた構造が、いわゆる内視鏡挿入部の硬質長になる。このため、超音波探触子を搭載していない通常の内視鏡に比べ、超音波内視鏡では先端硬質長が長くなる。このことにより、前記超音波内視鏡の体腔内への挿入には、熟練した技術が必要となる。
【0008】
また、特許文献2に記載された構造では、先端硬性部に斜面を設け、その斜面に超音波探触子を搭載している。このため、前記特許文献1に記載の超音波内視鏡に比べて先端硬質長は短くなっている。しかし、処置具導出口から導出される処置具を超音波走査範囲に収めることを可能にするため、超音波走査範囲が180度となる半円形状の超音波探触子を設けている。そのため、先端硬性部に加え、超音波探触子の曲率半径の2倍の長さを含めた構造が、先端硬質長になる。このことにより、通常の内視鏡に比べ、超音波内視鏡の先端硬質長が長くなるので、超音波内視鏡の体腔内への挿入には、熟練した技術が必要となる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、先端硬質長を短縮させて、体腔内への挿入性を向上させる超音波探触子を備えた超音波内視鏡を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による超音波内視鏡は、被検体に挿入される先端硬性部と、前記先端硬性部の先端面と、前記先端硬性部内に配置された処置具挿通用チャンネルと、前記処置具挿通用チャンネルの先端側の開口であって、前記先端面に配置された処置具導出口と、前記先端面のうち、前記処置具導出口から導出される処置具を観察可能な位置に配置され、曲率中心が前記処置具導出口よりも基端側となるように凸型の円弧状に配列された複数の超音波振動子と、を含んでいる。
【0011】
この構成によれば、複数の超音波振動子の曲率中心が処置具導出口よりも基端側、即ち、処置具導出口よりも後退している。したがって、超音波探触子の処置具導出口より先端側への最大突出量が半径寸法以下になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、先端硬質長を短縮させて、体腔内への挿入性を向上させる超音波探触子を備えた超音波内視鏡を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】超音波内視鏡の構成を説明する図
【図2】超音波内視鏡の先端部の構成を説明する斜視図
【図3】図2に示す先端部を正面から見た正面図
【図4】図3のA−A線断面図
【図5】複数の超音波振動子を配列して構成される超音波探触子、及び超音波探触子の超音波観測領域と、処置具導出口から導出された処置具との関係を説明する図
【図6】アーチファクトが現れた超音波画像例を示す図
【図7】図5に示す超音波探触子で描出された超音波画像例を示す図
【図8】ノーズピースの組織当接面と超音波探触子の音響レンズ面との関係を説明する図
【図9】超音波内視鏡の超音波観測領域の境界近傍に病変部が存在する状態を説明する図
【図10】図9に示す観察状態における超音波画像を示す図
【図11】エレベーション幅が連続的に変化する超音波探触子を備えた先端部を正面から見た正面図
【図12】図11のB−B線断面図
【図13】エレベーション幅の一部が連続的に変化する部分とを備える超音波探触子を含む先端部を正面から見た正面図
【図14】図13のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1乃至図14は本発明の一実施形態に係り、図1は超音波内視鏡の構成を説明する図、図2は超音波内視鏡の先端部の構成を説明する斜視図、図3は図2に示す先端部を正面から見た正面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は複数の超音波振動子を配列して構成される超音波探触子、及び超音波探触子の超音波観測領域と、処置具導出口から導出された処置具との関係を説明する図、図6はアーチファクトが現れた超音波画像例を示す図、図7は図5に示す超音波探触子で描出された超音波画像例を示す図、図8はノーズピースの組織当接面と超音波探触子の音響レンズ面との関係を説明する図、図9は超音波内視鏡の超音波観測領域の境界近傍に病変部が存在する状態を説明する図、図10は図9に示す観察状態における超音波画像を示す図、図11はエレベーション幅が連続的に変化する超音波探触子を備えた先端部を正面から見た正面図、図12は図11のB−B線断面図、図13はエレベーション幅の一部が連続的に変化する部分とを備える超音波探触子を含む先端部を正面から見た正面図、図14は図13のC−C線断面図である。
【0016】
図1に示すように本実施形態の超音波内視鏡(以下、内視鏡とも記載する)1は、体腔内に挿入される細長の挿入部2と、この挿入部2の基端に設けられた操作部3と、この操作部3の側部から延出するユニバーサルコード4とを備えて構成されている。ユニバーサルコード4の他端には内視鏡コネクタ5が設けられている。内視鏡コネクタ5の側部からは超音波ケーブル6が延出している。超音波ケーブル6の他端には超音波コネクタ7が設けられている。
【0017】
挿入部2は、先端側から順に硬質部材で形成された先端硬性部2aと、湾曲自在に構成された湾曲部2bと、この湾曲部2bの基端から操作部3の先端に至る長尺で可撓性を有する可撓管部2cとを連接して構成されている。
操作部3には湾曲操作を行うためのアングルノブ3aが設けられている。また、操作部3には送気及び送水の操作を行う送気送水ボタン3bと、吸引を行う吸引ボタン3cとが設けられている。さらに、操作部3には処置具を体腔内に導くための処置具挿入口3dが設けられている。
【0018】
なお、符号10はコンベックス型の超音波走査面を有する超音波探触子からなる超音波ユニットである。超音波ユニット10は、内視鏡挿入軸方向に対して前方方向を走査する超音波走査範囲10Aを形成する。
【0019】
図2、図3に示すように挿入部2の先端硬性部2aには超音波による音響的画像情報を得るための超音波ユニット10が設けられている。超音波ユニット10は、筐体であるノーズピース11と、超音波探触子12とを備えて構成されている。超音波探触子12はノーズピース11の略中央部に形成された切り欠き部に一体的に配設されている。この図に示すようにノーズピース11を構成する組織当接面11a、及び超音波探触子12の音響レンズ面12aは、先端硬性部2aの先端面21よりも突出する形状で構成されている。
【0020】
図4、図5に示すように超音波探触子12は、例えば複数の超音波振動子9と、音響レンズ12aとで構成されている。複数の超音波振動子9は、凸型の円弧を形成するように配列されている。
【0021】
一方、先端硬性部2aの先端面21には、図2、図3に示すように観察光学系22を構成する観察窓22aと、照明光学系23を構成する照明窓23aと、穿刺針等の処置具が導出される処置具導出口24と、観察窓22aに向けて水や空気等の流体を噴出する送気送水ノズル25と、前方に向けて送水を行うための副送水チャンネル口26とが設けられている。なお、副送水チャンネル口26を設ける代わりに、該副送水チャンネル口26を第2処置具導出口として構成するようにしても良い。
【0022】
処置具導出口24の中心軸は、処置具導出口24から導出される処置具が超音波探触子12で得られる超音波走査範囲10A内に収まるように、超音波探触子12の中心線L2と同一直線上に配列してある。
【0023】
観察窓22a、照明窓23a、及び送気送水ノズル25は、処置具導出口24に対して例えば図中右側にまとめて配置され、超音波走査範囲10Aより外側に配置されている。そして、観察窓22aは、照明窓23a、送気送水ノズル25のうち、該送気送水ノズル25の配置位置を、超音波観測領域10Aから最も離れた位置となるように設定している。また、本実施形態においては、照明窓23a、観察窓22a、及び送気送水ノズル25の配置位置を、観察性能の向上、洗滌性の向上、及び内視鏡先端部外径寸法の小径化を図る目的を考慮して、一直線上に配置している。
【0024】
観察窓22aは、観察光学系22の観察視野範囲(図4の一点鎖線で示す符号22Aの範囲参照)を有している。照明窓23aは、照明光学系23の照明光照射範囲(図4の二点鎖線で示す符号23Aの範囲参照)を有している。観察視野範囲22A、照明光照射範囲23Aは、その範囲内に超音波探触子12が含まれないように構成される。
【0025】
なお、観察窓22a、及び照明窓23aは、先端面21より僅かに突出して構成された観察部用先端面21a内に設けられている。また、副送水チャンネル口26は、観察窓22a、照明窓23a、及び送気送水ノズル25が配置されている処置具導出口24を挟んで一面側とは反対側の他面側であって、超音波走査範囲10Aより外側に配置されている。この副送水チャンネル口26を第2処置具導出口として構成する場合、チャンネル径の寸法を使用する処置具に合わせて径寸法を設定する。
【0026】
このことによって、内視鏡観察下において2つの処置具を使用した手技を行える。このため、第2処置具導出口から突出させ、内視鏡観察下で使用する処置具と、処置具導出口24から突出させ、超音波診断下で使用する処置具とを組み合わせて、効率良く、診断、治療を行う構成が可能になる。
【0027】
図4に示すように先端硬性部2aの基端側には湾曲部2bを構成する先端湾曲駒8aが接続固定されている。先端湾曲駒8aには複数の湾曲駒(不図示)が連接されている。そして、これら湾曲駒をつなげて構成される湾曲部2bの中心を結ぶ直線が内視鏡挿入軸L1である。
【0028】
先端湾曲駒8aの所定位置には、上下左右用の湾曲ワイヤ8wのそれぞれの先端部が固設されている。したがって、術者が、アングルノブ3aを適宜操作することにより、その操作に対応する湾曲ワイヤ8wが牽引弛緩されて、湾曲部2bが湾曲動作するようになっている。これら複数の湾曲駒は湾曲ゴム8gによって被覆されている。湾曲ゴム8gの先端部は、先端硬性部2aに設けられる糸巻き接着部8hによって一体的に固定されている。
【0029】
先端硬性部2aの先端面21、及び観察部用先端面21aは、内視鏡挿入軸L1に対して直交して構成されている。先端硬性部2aには処置具導出口24を構成する処置具挿通用チャンネル孔(以下、処置具用孔と略記する)27、及び配置孔30が形成されている。
【0030】
なお、先端硬性部2aには、孔27、30の他に図示は省略しているが、観察光学系が設けられる貫通孔、照明光学系が設けられる貫通孔、送気送水ノズル25から噴出される流体を供給する送気送水用の貫通孔、副送水チャンネル口26を構成する貫通孔等が備えられている。
【0031】
処置具用孔27の長手方向中心軸L4は、内視鏡挿入軸L1に対して略平行に形成されている。配置孔30の長手方向中心軸L5は、内視鏡挿入軸L1に対して略平行に形成されている。また、超音波内視鏡1に備えられる観察光学系の光軸L6、及び照明光学系の光軸L7も内視鏡挿入軸L1に対して平行である。
【0032】
したがって、本実施形態の超音波内視鏡1に備えられている観察光学系は、観察視野を前方正面、言い換えれば内視鏡挿入軸L1の前方側である挿入方向に設定した、いわゆる直視型である。
【0033】
処置具用孔27の基端側には所定量傾斜して形成されたチューブ連結パイプ28の一端部が連通されている。チューブ連結パイプ28は、その他端部に処置具挿通用チャンネルを構成するチャンネルチューブ29の一端部を連通配置している。チャンネルチューブ29の他端部は、前記処置具挿入口3dに連通している。
【0034】
そして、処置具挿入口3dを介して挿通された処置具は、チャンネルチューブ29、チューブ連結パイプ28、処置具用孔27内をスムーズに移動して処置具導出口24から導出される。処置具導出口24から導出される処置具は、内視鏡挿入軸L1に対して平行に、挿入部2の挿入方向である前方に向けて導出される。
【0035】
つまり、処置具用孔27内に例えば処置具として穿刺針の先端部を配置した状態において、穿刺針を構成する針管を突出させる。すると、針管は、処置具導出口24から内視鏡挿入軸L1に対して略平行に、観察窓22aを通して観察されている前方正面に向かって突出される。
【0036】
一方、先端硬性部2aには配置孔30が設けられている。配置孔30内に超音波ユニット10が嵌合されて、ノーズピース11の当接面と先端硬性部2aの突き当て面36が当接することによって、超音波ユニット10の配置孔30に対する位置決めが行われる。超音波ユニット10の他端側からは、超音波探触子12に接続された超音波ケーブル34が導出している。
【0037】
先端硬性部2aの突き当て面36から先端に至る外形(図2の符号11bの面)は、超音波探触子12のエレベーション幅Wと当接面11aとを備えて、図2に示すように先端硬性部2aの先端外形寸法と略同寸法に設定されている。
【0038】
このため、超音波観察の際に超音波ユニット10を体組織に押し当てたとき、内視鏡挿入軸L1の方向に操作部3を把持する操作者の力量が確実に超音波ユニット10まで伝達される。このことによって、図8に示すように組織当接面11aと音響レンズ面12aとを略均一に体組織に密着させることができる。このように、超音波ユニット10の組織当接面11aと音響レンズ面12aとを体組織に対して安定した状態で押し当てて、良好な超音波観察像を得ることができる。
【0039】
図4、図5に示す超音波探触子12は、例えばバッキング材、圧電振動子、整合層、音響レンズを積層した複数の超音波振動子9を複数配列して構成される。複数の超音波振動子9は、処置具突出口に対して最も近位に配置されたて超音波を放射する第1超音波振動子9Fから処置具突出口から数えて最も遠方の最終超音波振動子9Lまで所定間隔pで配列されている。そして、図5に示すように超音波探触子12の円弧の曲率中心O1は、先端硬性部2aに設けられた処置具導出口24の開口面24aよりも基端側に位置するように構成されている。なお、超音波振動子9には、圧電素子の代わりにMUT(Micromachined Ultrasound Transducer)素子を使用してもよい。
【0040】
このように、超音波探触子12の円弧の曲率中心O1を、処置具導出口24の開口面24aより基端側に設けることによって、内視鏡1の先端硬質長が短くなる。このため、内視鏡の体腔内への挿入性が向上する。また、内視鏡1の観察視野範囲内に超音波探触子12が配置されない構成であるため、内視鏡画像の一部が超音波探触子12によって欠けるという不具合が解消される。さらに、内視鏡1の照明光照射範囲内にも超音波探触子12が入らないので、照明光の一部が超音波探触子12によって遮られることがなく、内視鏡1の観察視野範囲内に照明光が行き渡って、良好な内視鏡画像を得られる。
【0041】
超音波探触子12において、第1超音波振動子9Fの音線の中心軸LFの方向は、先端硬性部2aの先端面21(具体的には処置具導出口24を備える先端面21)を規準にして、該先端面21に対して角度θ1だけ先端側に傾いて設定されている。
【0042】
また、第1超音波振動子9Fの音線の中心軸LFの方向を角度θ1だけ先端側に傾けて設定する際、第1超音波振動子9Fの指向角θ2を考慮に入れている。具体的には、図5中の二点鎖線で囲まれた指向角内に超音波を反射しうる材質、例えば金属や硬質樹脂である先端硬性部2aの少なくとも一部、或いは送気送水ノズル25の少なくとも一部等、が入り込まないように角度θ1を設定している。角度θ1は、少なくとも、指向角θ2の半分の角度よりも大きく設定される。
【0043】
先端硬性部2aが指向角の範囲内にある場合、図6に示すようなアーチファクト42が現れる。しかし、本実施形態の構成によればアーチファクトが出現せず、図7に示すように処置具超音波像41aが超音波画像40中に明瞭に描写される。つまり、処置具導出口24から処置具41が僅かに突出された状態から該処置具41が病変部43に穿刺されるまでの処置具超音波像41aが超音波画像40中に明瞭に描出される。このような良好な視認性を得て、病変部43に対して処置具41を正確に導入することができる。
【0044】
一方、最終超音波振動子9Lが音線の中心軸LLの方向は、内視鏡挿入軸L1に対して平行、又は角度θ3だけ前方にいくにしたがって拡開するように設定されている。
【0045】
このことによって、処置具導出口24から突出された処置具41が内視鏡挿入軸L1に対して略平行に前方に向かって突出されたとき、処置具41は超音波走査範囲10Aの中央付近を移動し続ける。また、拍動などで穿刺前に内視鏡1が移動してしまって、例えば図9に示すように内視鏡挿入軸L1よりも外側に病変部43が存在する場合であっても、超音波走査範囲10Aの辺縁に病変部43が位置することによって、図10に示すように超音波画像40中の縁に病変部43が表示される。
【0046】
つまり、内視鏡1と病変部43との相対位置がずれてしまった場合でも、超音波走査範囲10Aが内視鏡挿入軸L1を超えた角度まで存在しているため、病変部43を見失うことが防止される。したがって、操作者が手元操作を行って、内視鏡1と病変部43との位置ずれの修正を容易に行うことができる。その後、病変部43に対して処置具41を導入する。
【0047】
上述した実施形態においては、超音波探触子12のエレベーション幅を図3示すように寸法Wで設定している。言い換えれば、超音波探触子12を構成する複数の超音波振動子9のエレベーション幅は寸法Wで統一されていた。これに対して、図11、図12に示す構成の超音波探触子12Aでは、第1超音波振動子9Fのエレベーション幅WFと最終超音波振動子9Lのエレベーション幅WLとを異なる寸法に設定している。
【0048】
具体的には、第1超音波振動子9Fから最終超音波振動子9Lに向かうにしたがって、つまり図12中のAからBに向かうにしたがって超音波振動子9のエレベーション幅が徐々(連続的)に幅狭になる設定である。したがって、図11に示すように超音波探触子12Aは二点鎖線に示す図3で示した超音波探触子12に比べて小型で、正面から見て台形形状に形作られる。
【0049】
このように超音波探触子12Aを構成した超音波ユニット10Aにおいては、エレベーション幅が幅狭になるにしたがって、原理上、放射される超音波ビームが拡散しやすくなり、且つ、感度が低下する。しかし、本実施形態においては、ノーズピース11Aの形状を、超音波探触子12Aのエレベーション幅の変化に合わせて、小さく設定している。
【0050】
このことによって、二点鎖線に示す図3に示されていたノーズピース11の外形に比べ、ノーズピース11Aが小さくなって内視鏡1の先端部の小径化を図れる。このことによって、内視鏡の挿入性の向上を図ることができる。
【0051】
なお、図13、図14に示す構成の超音波探触子12Bでは、第1超音波振動子9Fから第n超音波振動子9nまでを同一寸法に設定している。つまり、図14中のCからDの範囲のエレベーション幅はWで統一されている。これに対して、第(n+1)超音波振動子9(n+1)と最終超音波振動子9Lとではエレベーション幅が異なる。具体的には、第(n+1)超音波振動子9(n+1)から最終超音波振動子9Lに向かうにしたがって、つまり図14中のEからFに向かうにしたがって超音波振動子9のエレベーション幅が徐々に幅狭になる設定である。したがって、図13に示すように超音波探触子12Bは二点鎖線に示す図3で示した超音波探触子12に比べて小型で、正面から見てホームベース形状に形作られる。
【0052】
このことによって、二点鎖線に示す図3に示されていたノーズピース11の外形に比べ、ノーズピース11Bを小さくして内視鏡1の先端部の小径化を図れる。また、超音波探触子12Bを構成する超音波ユニット10Bにおいては、エレベーション幅がAからBの範囲においてエレベーション幅が同一寸法であるので、超音波ユニット10と同様の画質の超音波画像を得られる。
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…超音波内視鏡 2a…先端硬性部 9、9F、9L…超音波振動子10…超音波ユニット 10A…超音波走査範囲 11……ノーズピース11a…組織当接面 12…超音波探触子 12a…音響レンズ面21…先端面 22…観察光学系 22a…観察窓 22A…観察視野範囲 23…照明光学系 23a…照明窓23A…照明光照射範囲 24…処置具導出口 25…送気送水ノズル27…処置具用孔 41…処置具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に挿入される先端硬性部と、
前記先端硬性部の先端面と、
前記先端硬性部内に配置された処置具挿通用チャンネルと、
前記処置具挿通用チャンネルの先端側の開口であって、前記先端面に配置された処置具導出口と、
前記先端面のうち、前記処置具導出口から導出される処置具を観察可能な位置に配置され、曲率中心が前記処置具導出口よりも基端側となるように凸型の円弧状に配列された複数の超音波振動子と、
を含むことを特徴とする超音波内視鏡。
【請求項2】
前記処置具挿通用チャンネルの長手方向中心軸を、内視鏡挿入軸に対して平行に設定したことを特徴とする請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項3】
前記先端面は、内視鏡挿入軸に垂直であることを特徴とする請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項4】
前記複数の超音波振動子のうち最も基端側に配置された第1超音波振動子の音線の中心軸を、前記曲率中心を通過して内視鏡挿入軸に垂直に交わる線よりも先端方向に傾けて設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波内視鏡。
【請求項5】
前記第1超音波振動子の音線の中心軸と前記先端面とで構成される角θ1と、前記第1超音波振動子から放射される超音波の指向角θ2との間の関係を、少なくとも
θ1 > θ2/2
の関係としたことを特徴とする請求項4に記載の超音波内視鏡。
【請求項6】
前記複数の超音波振動子のうち最も基端側に配置された第1超音波振動子から数えて最も遠方の最終超音波振動子の音線の中心軸を、内視鏡挿入軸に対して、平行に設定したことを特徴とする請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項7】
前記複数の超音波振動子が円弧形状を形成する際に、最も基端側に配置された第1超音波振動子から数えて最も遠方の最終超音波振動子が、前記曲率中心を通過する内視鏡挿入軸に平行な線を越えるまで超音波振動子を配置し、
前記最終超音波振動子の音線の中心軸を、前記内視鏡挿入軸に対して、交差するように設定したことを特徴とする請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項1】
被検体に挿入される先端硬性部と、
前記先端硬性部の先端面と、
前記先端硬性部内に配置された処置具挿通用チャンネルと、
前記処置具挿通用チャンネルの先端側の開口であって、前記先端面に配置された処置具導出口と、
前記先端面のうち、前記処置具導出口から導出される処置具を観察可能な位置に配置され、曲率中心が前記処置具導出口よりも基端側となるように凸型の円弧状に配列された複数の超音波振動子と、
を含むことを特徴とする超音波内視鏡。
【請求項2】
前記処置具挿通用チャンネルの長手方向中心軸を、内視鏡挿入軸に対して平行に設定したことを特徴とする請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項3】
前記先端面は、内視鏡挿入軸に垂直であることを特徴とする請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項4】
前記複数の超音波振動子のうち最も基端側に配置された第1超音波振動子の音線の中心軸を、前記曲率中心を通過して内視鏡挿入軸に垂直に交わる線よりも先端方向に傾けて設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波内視鏡。
【請求項5】
前記第1超音波振動子の音線の中心軸と前記先端面とで構成される角θ1と、前記第1超音波振動子から放射される超音波の指向角θ2との間の関係を、少なくとも
θ1 > θ2/2
の関係としたことを特徴とする請求項4に記載の超音波内視鏡。
【請求項6】
前記複数の超音波振動子のうち最も基端側に配置された第1超音波振動子から数えて最も遠方の最終超音波振動子の音線の中心軸を、内視鏡挿入軸に対して、平行に設定したことを特徴とする請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項7】
前記複数の超音波振動子が円弧形状を形成する際に、最も基端側に配置された第1超音波振動子から数えて最も遠方の最終超音波振動子が、前記曲率中心を通過する内視鏡挿入軸に平行な線を越えるまで超音波振動子を配置し、
前記最終超音波振動子の音線の中心軸を、前記内視鏡挿入軸に対して、交差するように設定したことを特徴とする請求項1に記載の超音波内視鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−48933(P2013−48933A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−250332(P2012−250332)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2006−160192(P2006−160192)の分割
【原出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2006−160192(P2006−160192)の分割
【原出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]