超音波分子センサーおよびその使用
本発明は、超音波用造影剤としてのポリマーの使用に関する。本概念は、所定の分子または検体に特異的なポリマー中に、分子インプリントを有するということである。分子がポリマーに結合すると、分子は、標的結合状態と呼ばれる、超音波シグナルの増加を生じるコンフォメーション変化を誘導する。該方法は、例えば検体の定量的測定にも使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、超音波に基づく検出および定量方法ならびに被検物質の超音波検出に有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
超音波は、長い間に医学の分野で確立されており、主に、女性の妊娠胎児の状態をモニターするのを補助するための画像化方法として使用されている。超音波という用語は、ヒト耳によって知覚される周波数(ほぼ20Hz〜20kHzの範囲)より高い周波数を有する音波と定義され得る。超音波治療画像化および関連研究は、典型的に、1MHz〜10MHzの範囲で行なわれる。
【0003】
医学分野におけるこの技術の最初の適用は、Karl Theodore Dussik医師によるものであり得る。1952年、オーストリアで、彼は、医学超音波学の分野を開拓し、脳内への超音波の透過に関して行なった自身の研究について述べた。さらに、Ian Donald教授は、50年代末から60年代に、この技術の他の適用を調査した。腹部腫瘤に関して徹底的に試験した後、彼は、1958年、妊娠女性に対して、まさに最初の超音波治療の試行を行なった。
【0004】
医学的適用のための超音波技術は、使用の容易性および非侵襲的特徴のため、一般的になってきている。何年か後に、超音波プローブに対して多くの改善がなされ、より高度な画像の解像度が可能となっている。
【0005】
超音波が物体表面に当たると、その一部は、光がレンズを通過するのと同様に、反射するか、散乱するか、またはその物体を透過する。また、この音波は、表面に当たると減衰され、高周波数のほうが低周波数よりも影響を受ける。したがって、低周波数の音波は、完全に減衰される前に、より多くの物質層を横断することができる。
【0006】
超音波治療学において、超音波は、プローブ内部に配置された小さな圧電デバイスであるトランスデューサーによってもたらされる。このデバイスに電流を流すと、特定の周波数で振動し、プローブの方向に発出される超音波が生成される。また、プローブは超音波検出器として二役を演じる。超音波が圧電デバイスに当たると、振動し、電流が発生する。
【0007】
表面に当たることによる減衰を最小限にしつつ、高周波数の超音波が組織中に伝播することを確実にするため、臨床用超音波プローブは、分析される身体組織に水結合性(water-coupled)である必要がある。これは、超音波プローブとの充分な接触を提供するために患者の皮膚にすりこまれる物質である超音波ゲルを用いて達成される。
【0008】
画像は、組織層中に超音波が伝播したら、反射を分析することによって超音波から作製され得る。反射がプローブに戻るのにかかる時間は、超音波パルスが伝わる距離を示す。身体の1箇所をスキャンし、プローブに戻る多数の反射を聞くことにより、多重層の組織が知覚され得る。また、完全な画像は、身体のある部分をスキャンし、超音波反射からのデータを並べることにより作製され得る。
【0009】
医学分野への超音波画像化の組み込みにより、子宮における胎児管理に対する着実なアプローチが可能になった。しかしながら、この型の画像化はいくつかの欠点を有する。
【0010】
第1は、深度と解像度の兼ね合いである。前述のように、低周波数音(長波長)は物体内により深く伝わるが、高周波数(短波長)は、非常に微細な詳細を示し、画像化の解像度が増大する。
【0011】
可能な最良の解像度を得るためには、高周波数超音波を使用することが好ましい。しかしながら、かかる高周波数超音波は非常に速く減衰され、したがって、ヒト体内にあまり深く浸透しない。妥当な画像化能をなお提供しつつ、ある程度の組織および器官を横断させるため、周波数は低くなければなないが、それにより解像度が犠牲になる。
【0012】
第2の主な制限は、超音波治療によって提供される分子調整(modulation)の欠如に関する。超音波組織画像化は、身体内部の部分ならびに妊娠胎児の状態を示すことにおいて非常に有効であるが、現在の超音波法では、循環系または組織もしくは器官内の任意の特定の分子の濃度に関して調整が得られない。この調整が必要とされる場合は、他のより侵襲性の、しばしばあまり望ましくない手段が使用される。
【0013】
したがって、超音波デバイスを用いた検出の改善された方法の必要性が存在する。
【0014】
(発明の概要)
本発明の広い局面において、超音波スペクトル特性を用いて、被検物質を検出、同定および定量するための方法が提供される。該方法は、試料の超音波プロービングを用いて分子調整を有利に提供する。
【0015】
本発明の一態様において、
- 1つ以上の標的分子に結合するための1つ以上の標的結合部位を備える超音波分子センサーであって、標的結合状態および標的非結合状態を有し、超音波分子センサーへの1つ以上の標的分子の結合により、超音波シグナルにおける調整が引き起こされる超音波分子センサーを提供する工程;
- 超音波分子センサーと1つ以上の標的分子と接触させて標的結合状態の超音波分子センサーを生成する工程;および
- 1つ以上の超音波周波数で標的結合超音波分子センサーの超音波シグナルを得る工程、ここで、シグナルは、少なくとも1つの標的分子の存在を示す調整を含む、
を含む、超音波コントラスト促進方法が提供される。
【0016】
別の態様において、
- 被検物質を、1つ以上の被検物質を結合させるための1つ以上の被検物質結合部位を備える超音波分子センサーと接触させる工程、超音波センサーは、被検物質結合状態および被検物質非結合状態を有し、超音波分子センサーへの1つ以上の被検物質の結合により、超音波シグナルにおける調整が引き起こされる;;および
- 1つ以上の周波数における被検物質結合状態の超音波シグナルを得る工程、ここで、シグナルは、被検物質の存在を示す調整を含む、
を含む、被検物質の検出方法が提供される。
【0017】
また別の態様において、超音波分子センサーおよび超音波分子センサーに連結された被検物質結合部位を含む化合物;標的結合状態および標的非結合状態を有する化合物が提供され、ここで、標的非結合状態は実質的に超音波透過性であり、標的結合状態は超音波感受性であり、被検物質結合部位は、被検物質の分子が被検物質結合部位に結合すると特性周波数の検出可能な超音波シグナルを生じるのに充分な数であり、それにより、該化合物を標的結合状態にする。
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0019】
(発明の詳細な説明)
本明細書において、超音波分子センサーにより、適切に励起される際に、超音波シグナルを生成し得る任意の分子が意図される。本明細書において使用されるように、超音波分子センサーは、限定されないが、大きな有機分子、例えばポリマー、例えば、限定されないがヒドロゲルポリマー、例えば、ポリアクリルアミド、セルロース、アルギネートなど、非ヒドロゲルポリマーおよびデンドリマーを含む。
【0020】
標的分子により、超音波分子センサーに結合して超音波調整をもたらし得る分子が意図される。かかる標的分子としては、限定されないが、タンパク質、ホルモンなどの生体分子が挙げられ得る。
【0021】
被検物質により、本発明の方法によって分析的に測定される任意の分子が意図される。場合によっては、例えば、被検物質の濃度を測定するために所望される場合は、標的分子は被検物質であり得ることは認識されよう。
【0022】
被検物質の超音波画像化および定量においてコントラスト促進を提供するための超音波分子センサーを用いた超音波コントラスト促進のための方法が提供される。
【0023】
超音波周波数の測定を用いて被検物質を検出および定量するための方法が提供される。本発明の一局面において、被検物質を、該被検物質への結合部位を有する超音波分子センサーと接触させた場合、超音波で励起されると特性超音波スペクトルを示す超音波分子センサー被検物質組成物がもたらされることが都合よく見出された。特性超音波スペクトルにより、該組成物が特異な超音波スペクトルプロフィールを示すことが意図される。さらにまた、本発明は、スペクトルバンドを用いた被検物質の定量を提供する。
【0024】
被検物質の検出および定量に適した超音波分子センサーは、圧力励起されると超音波によって超音波スペクトルを示し、被検物質への結合部位を有する超音波分子センサーである。結合部位の性質は、検出される被検物質および超音波分子センサーの分子組成に応じて異なる。超音波分子センサーは、被検物質結合部位を組み込むために処理または誘導体化され得る。結合部位は、抗体またはその一部、タンパク質またはその一部、核酸、炭水化物、特定の物理化学特性を有する官能基などのいくつかの可能な型から選択され得る。例えば、レセプタータンパク質が超音波分子センサーにカップリングされ得、それにより、対応するリガンドの結合が可能となる。
【0025】
別のアプローチにおいて、結合部位は、超音波分子センサーをリガンドとともにインキュベートして結合部位を生成させることにより、分子的インプリンティング(imprinting)または拘束された自己集合によって作製され得る。
【0026】
超音波分子センサーは、超音波パルスによって励起されると超音波スペクトルを生じ得る限り、および超音波分子センサーへの被検物質の結合によって、被検物質の存在に特徴的なスペクトルがもたらされる限り、任意の適当な超音波分子センサーであり得る。
【0027】
好ましい態様において、超音波分子センサーは、限定されないが、被検物質への多数の結合部位を有するポリアクリルアミドおよびセルロースポリマーなどのヒドロゲルポリマーである。また、ポリマーはデンドリマーを含み得る。
【0028】
超音波分子センサーまたは超音波分子センサー-被検物質複合体からの超音波シグナルの検出は、超音波を生成し得る超音波分子センサー内での振動を誘導するための励起を必要とする。好ましい態様において、励起は、超音波、好ましくはパルス化超音波によってもたらされる。超音波は、透過または反射構造物(configuration)において検出され得る。構造物の選択は、分析される試料の性質に基づいて行なわれ得る。溶液は透過の検出を行ない易いが、例えば、個体における検出は、反射構造物の使用を必要とし得る。
【0029】
一態様において、透過の測定は、超音波分子センサー-被検物質複合体を励起して高周波数振動させ、それにより第2のトランスデューサーを用いて検出される超音波を生成させるトランスデューサーで生成させたパルス化超音波を用いて行なわれる。トランスデューサーは、好ましくは1〜10MHZで作動する。しかし、実際の励起周波数は、超音波分子センサーの型および超音波分子センサー-被検物質複合体が位置するトランスデューサーに対する深さに依存することは認識されよう。
【0030】
典型的に、例えば、超音波画像化に使用される場合のように、トランスデューサーは、基本ビームを送出し、本質的に同じ周波数範囲のバックビーム(back)をエコーとして(または透過幾何構造体の場合は透過シグナルとして)受ける。しかしながら、組織または分子複合体が波に応答して拡張および圧縮すると、音波は歪曲する。特定のエネルギーレベルに達した場合、この歪曲により、発せられた周波数の2倍、3倍またはそれ以上の調波と呼ばれるさらなる周波数の生成がもたらされる。調波周波数は、基本周波数とともにトランスデューサーに戻る。本発明において、エンハーモニック周波数(調波周波数以外の周波数)は、被検物質の検出および定量に有用であることがわかった。
【0031】
上記のように、超音波スペクトル内の一部の周波数バンドの強度は、被検物質の濃度に比例することが都合よく見出された。したがって、該方法はまた、被検物質の濃度と相関することが示された1つ以上の周波数バンドを用いた被検物質の定量を提供する。未知濃度の溶液中の被検物質の定量は、標準曲線を作成するか、内部標準を使用するか、またはいくつかの周波数の線形結合を確立して被検物質の濃度を算出する等式を得ることよりことにより行なわれ得る。
【0032】
したがって、本発明の方法を用いて被検物質を検出または定量するプロセスは、被検物質を、被検物質結合部位を有する適切な超音波分子センサーと接触させる工程および1つ以上の周波数の超音波シグナルを得、被検物質を検出または定量する工程を含み得る。被検物質の存在を検出するため、超音波シグナルを、その調整含量について検査する。調整により、特定周波数のシグナルの存在または非存在、周波数の強度、周波数シフトなどが意図される。被検物質が初めて分析された場合、被検物質なしでの薬剤のスペクトルとの比較を可能にし、したがって、スペクトル、被検物質の存在に特徴的な周波数を比較することによる同定を可能にするため、多数の周波数を含む超音波シグナルを得ることが必要であり得ることは認識されよう。単一の周波数は、被検物質を同定するのに充分な調整を提供し得るが、場合によっては、被検物質間を識別するのに2以上の周波数の相対強度が必要である。また、多数の周波数の使用は、検出の信頼性を増大させ得る。公知の被検物質の定量には、周波数の振幅(amplitude)が被検物質の濃度と相関することが示されている単一の周波数を使用することが可能であり得る。しかしながら、線形結合を用いて相関性を確立することは、より正確な結果をもたらし得る。
【0033】
別の態様において、被検物質の存在ありまたはなしでの超音波分子センサーの超音波シグナル(音響特性)の変化は、例えば、超音波分子センサーの立体構造のフォールディングおよび/またはその剛性の変化によって引き起こされ得る。したがって、超音波分子センサーにおける分子変化は、音響特性の変化をもたらし得る。例えば、ポリマーの分子構造に対する分解効果のため、反応性分子、例えば、一酸化窒素などのフリーラジカルの存在を検出することが可能であり得る。超音波分子センサーは、かかる分子に対して感受性となるように設計され得ることは認識されよう。
【0034】
各々特性スペクトルを示す種々の超音波分子センサーが被検物質の検出に使用され得る。同様に、超音波分子センサーは、異なる被検物質に結合して特性スペクトルを生成し得る。同じ超音波分子センサーで得られた異なる被検物質のスペクトルを比較した場合、類似性は、被検物質の構造の類似性を示し得る。したがって、本発明の方法はまた、未知被検物質を同定するため、または同定を補助するために使用され得る。
【0035】
本発明の超音波分子センサーは種々の様式で使用され得る。一例として、混合物中の被検物質の検出および定量のために使用され得る。この特定の適用は、化学分析、環境分析などに有用である。生体適合性の超音波分子センサーを選択することにより、ヒトなどの被験体内の被検物質を検出および定量するために使用され得る。さらにまた、特定の解剖学的構造内の被検物質(またはより一般的には分子)を結合(bide)することにより造影剤としての機能を果たし得る。
【0036】
したがって、超音波分子センサーは、被検物質の検出のためにインビボで使用され得る。動物またはヒト体内で超音波分子センサーを使用する場合、本発明の超音波剤は、エーロゾル吸入、注射および経口摂取などの当該技術分野で周知の方法によって注入され得る。好ましくは、本発明の超音波分子センサーは、皮下(s.c)、腹腔内(i.p.)、動脈内(i.a.)または静脈内(i.v.)注射によって被験体に投与される。また、超音波分子センサーは、好ましくは、当業者に公知の技術によって滅菌され得る薬学的に許容され得る担体を用いて投与される。薬学的に許容され得る担体は、当業者に公知であり、生理食塩水溶液、リポソーム調製物などが挙げられ得る。また、試料は個体から得られ得、被検物質は試料中で直接測定され得る。
【0037】
超音波分子センサー-被検物質複合体は、実際の組成物および濃度ならびに物理化学的条件に応じて、種々の直径示す。超音波分子センサーおよび超音波分子センサー-被検物質複合体の大きさならびにその分子組成は、該化合物の薬力学的特性に影響を及ぼし得ることは認識されよう。薬力学的特性により、化合物の生体分布ならびに血中からのクリアランスまたは腎臓からの排出の速度論、安定性などの特性が意図される。当業者は、本発明の利点が充分利用されるように組成を最適化することができる。
【0038】
本発明の可能なインビボ使用のいくつかの例は、薬物の検出/定量、生理学的分子 (ホルモン、タンパク質、ビタミンなど)の検出/定量、器官内の温度検出(超音波分子センサーの相転移特性を使用)である。
【0039】
また、本発明の別の局面において、種々の試料から超音波測定値を得るための装置が提供される。該装置は、所定の周波数または周波数範囲での放射、検出が制御可能である超音波放射および検出トランスデューサーを備える。該装置は、周波数の関数として超音波シグナルを同定/記録するための分析装置/処理装置をさらに備える。分析装置/処理装置はまた、調波周波数とエンハーモニック周波数を同定または識別する手段を備え得る。好ましい態様において、該装置はまた、超音波シグナルに基づいて被検物質の濃度を計算するための処理装置を備える。該装置は、分析される試料に応じて透過モードまたは反射モードで機能を果たし得る。透過構造物は、水溶液などの試料に使用され得るが、反射は、ヒトなどの動物から測定値を得るためにより適している。
【0040】
本発明は、本発明を限定するためではなく、本発明を例示するために示した以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されよう。
【実施例】
【0041】
実施例1
ある種のポリマーゲルは、周囲環境における変化の形態の外部刺激に応答する。温度、pH、溶媒濃度、溶媒の型、電場および光は、調整した場合、これらのポリマーゲルに特性の変化を引き起こし得るいくつかのパラメータである。N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)は、かかるポリマーゲルの一例であり(図1)、ヒドロゲルとしても知られており、その特異な特性のため広く研究されている。
【0042】
この特別なヒドロゲルは、温度が臨界点を超えて上昇すると、容積および特性において印象的な大きな可逆変化を受け得る。この臨界温度Tcは、ShibayamaおよびTanakaによって調査され、34℃であることがわかった。Tc未満では、ヒドロゲルは、無色透明な溶液であり、水と類似した粘度を有する。分子レベルでは、その構造物は、凝縮したポリマー鎖の膨潤網目形態であり、溶媒分子は鎖間を自由に流動する。
【0043】
ヒドロゲルがTcより上まで加熱されると、膨潤網目が崩壊し、広いサイズ分布の凝縮したポリマー鎖(図2)の小さなドメインが形成される。その結果、ヒドロゲル溶液は、密集(populated)し、一部の領域は他の領域よりも多く崩壊するため、軽度に架橋した領域と重度に架橋した領域が不均一に混合した状態になる。この崩壊を受けるプロセスは、相転移、より技術的にはスピノーダル分解として知られており、この開始は、透明から混濁への変化である。
【0044】
破壊された相内に存在する空間的不均一性は、溶液を混濁させて、可視光を散乱させるだけでなく、ヒドロゲルの多くの特性、例えば、後のセクションに記載するような超音波特性も変化させる。また、温度を極めて低速(0.1℃/日)で上昇させた場合、試料はクエンチされないことに注目することも興味深い。その結果、溶液中に存在する小ドメインは、拡散するのに充分な時間を有し、ポリマー網目が平衡化し、Tc未満の温度で見られるものと非常に類似した特性を示す。これは、小さな濃度勾配によって引き起こされる小ドメインのゆっくりした移動を考慮すると、明白である。勾配が完全に拡散したら、ゲルは、その室温での状態と同様に均一で透明になる。
【0045】
ゲルを室温で膨潤性に維持する水素結合は、熱エネルギーによって強くなりすぎる。したがって、ポリマー鎖間の相互作用はより顕著になり、ゲル自体における崩壊が引き起こされる。ドメイン内部の容積は、崩壊中に溶媒分子が内部に捕捉されるため、最初は一定(等容変化)である。
【0046】
NIPAのこれらの特性は、改質ポリマー合成技術がロッド状の形態から種々の複雑な形態に変化するゲルの開発をもたらした形状記憶ゲルなどの多くの適用をもたらした。NIPAの他の興味深い機能としては、超音波の熱応答性減衰器、光学的スイッチ、およびフォトレジスト性(photoresistive)人工筋肉が挙げられる。
【0047】
ヒドロプロピルセルロース(HPC)がNIPAに類似した特性を示すようであるが、相転移は見た目には顕著でないことは、注目に値する。
【0048】
実施例2
Huの研究のNIPAヒドロゲルの合成手順を適合した。N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA、2g)およびN.N'-メチレン-ビス-アクリルアミド(MBA、0.033g)を、ほぼ50mLの水を含むフラスコに添加し、得られた溶液を完全に溶解するまで攪拌した。痕跡量の酸素があれば重合工程を損ない得るため、特注回転式エバポレータで回転させている間に窒素を溶液に吹き付けることにより酸素除去を行なった(図3)。一定の窒素流の下で溶液が蒸発するのを防ぐため、最初に水の入ったフラスコ内で泡立たせた。この方法は、単に溶液中で窒素を泡立たせるよりも効率的であることがわかり、一晩パージさせるのではなく、3時間しかかからなかった。
【0049】
パージが終了したら、テトラメチルエチレンジアミン(TMED、60μL)を重合促進剤として溶液に添加した。次いで、過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8、0.015g)を導入してラジカル重合を開始し、混合物を静かに攪拌した。約20分間放置した後、溶液は、やや曇った白色となり、NIPAヒドロゲルの存在を示した。溶液を45℃に加熱すると、相転移が誘導され、溶液は曇った白色となった。
【0050】
最初に水を多く添加しすぎると、重合溶液は、重合が良好であった場合ですら、なお無色透明であり得た。上記のように相転移を誘導するために熱を負荷すると、溶液は、程度は低いがそれでも不透明な白色となるはずであるため、ヒドロゲルの存在が確認される。
【0051】
実施例3
HPCヒドロゲルの合成手順は以下のとおりである。ヒドロプロピルセルロース(0.1g)を100mLの水を含むフラスコに添加した。この溶液のpHを水酸化カリウム(KOH)の添加により12に調整し、混合物を暗所で4日間攪拌した。
【0052】
この期間の経過後、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB、0.35g)を溶液に添加し、さらに1時間攪拌した。ジビニルスルホン(DVS、0.04g)をフラスコに添加し、内容物を55℃まで30秒間加熱し、重合を開始させた。次いで、溶液を濃塩酸(HCl)で急速に酸性化させ、重合を停止した。
【0053】
実施例4
この実験の目的の1つは、NIPAヒドロゲルのTCより上および下の温度で超音波スキャンを得、その超音波特性を特徴付けすることであった。
【0054】
この実験に使用した超音波システム全体は、5MHz臨床用超音波トランスデューサー、試料セル、シグナルパルス発生装置/増幅器(Panametrics Inc.)、SDS 200オシロスコープ(SoftDSP Co.)、マルチメータに接続された熱電対温度センサー、およびコンピュータから構成された。
【0055】
試料セルは、適当な水結合を起こすためにヒドロゲル試料と臨床用プローブ間に充分な接触を有するように変形されたフローセルから構成された(図4)。
【0056】
上記の図に示すように、この変形セルは加熱能を有さない。そのため、溶液を水浴中で65℃まで加熱し、試料セルに移すとほぼ10〜15℃低下し、28℃まで冷却中にデータを30秒ごとに記録した。
【0057】
同じ超音波トランスデューサーを用いてヒドロゲル試料をパルス処理(pulse)し、データを記録し、それにより反射率シグナルを測定した。この超音波データは、SoftDSP's Softscope取得プログラムを使用し、12.5MHzのサンプリングレート、シグナル減衰なし、および128平均/スキャンで、オシロスコープによって取得した。MatLabを用いてデータを入力し、データのフーリエ変換およびボックスカー平滑化の実施などのデータ処理を行なった。図5 AおよびBにまとめた反射率測定の結果は、NIPAヒドロゲルについて34℃において予測されたシャープなシグナル減衰を示し、Huの研究と一致する。
【0058】
第2の研究は、NIPAおよびHPCのハイドロゲルの両方の超音波的特徴をさらに探求することを目的とする。これは、透過データを測定する1つの実験パラメーター、この場合、2MHzの臨床的超音波プローブで試料をパルスすることおよび先に使用された5MHzのプローブを用いてシグナルを受けることをアレンジしなおすことにより達成された。得られたパラメーターは第1の研究から変化せずに残った。
【0059】
スキャンの結果により、図6AおよびBならびに図7AおよびBに示される反射率測定値よりもかなり多くの調節が提供された。このデータは以前行ったように平滑化し、周波数振幅の変化のみが可視化されるように平均が中心にあった。
【0060】
両方のハイドロゲルは、相転移の結果として、多重化超音波周波数相互作用を示した。周波数シフトは明確に可視であり、特定の箇所での周波数減衰(attenuation)、およびその他の箇所での周波数増幅により示された。別の興味深い結果は、調波相互作用が示されたが(パルス周波数の多重化を示す調波)、エンハーモニック相互作用も示されたことである。このことは、温度範囲でのわずかな周波数の振幅を見た場合に、より大きな程度で強調される。
【0061】
これらの実験は、反射率測定値および透過測定値の両方を使用して、ハイドロゲルの超音波特性をモニタリングすることによりハイドロゲルの相転移を検出することが可能であることを結論付けた。透過測定値により示された周波数シフトは調波シフトおよびエンハーモニックシフトの両方を示し、反射率測定値よりも多くの調節をもたらす。
【0062】
実施例5
次の工程は、分子的に感受性なハイドロゲルの作製、および臨床超音波システムによりテンプレート分子の種々の濃度を検出することができるかどうかという試験を必要とした。テンプレート分子としてテオフィリンを選択した。SeitzおよびLavineによりなされた研究によると、テオフィリン上にメタクリル酸(MAA)を誘引するいくつかの部位が存在するので、ハイドロゲル中の結合部位の完成にはMAAが適切であると思われた(図8)。
【0063】
手順のわずかな変更により合成がなされた。テオフィリンによりNIPAポリマーに分子インプリントを行う手段は以下のとおりである:発明者らは1.0gのNIPAモノマー、0.08gのN,N'-メチレン-bis-アクリルアミド(MBA)、0.08gメタクリル酸(MAA)および0.18gテオフィリンを99mLの蒸留水(dH2O)に添加して、完全な溶解を確実にするために3時間撹拌して均一な1重量%NIPA溶液を形成した。溶液中の酸素は窒素ガスによりパージした。発明者らは、次に15mgの過硫酸アンモニウムを添加して重合を開始させ、促進剤として60μLのテトラメチルエチレンジアミンを添加した。緩やかに撹拌して溶液を30分間重合させたままにした。一旦インプリントされたハイドロゲルが形成されると、連続的な塩化メチレン抽出によりテオフィリンテンプレートを除去した。テオフィリンの抽出は分光器により271nmで確認された。全ての化学物質はSigma-Aldrich(Ontario, Canada)から購入した。(図9の模式的構造を参照)。合成の残りをインプリントされていないNIPAと同様の方法で行なった。
【0064】
一旦ハイドロゲルが首尾よく形成されると、インプリントNIPAハイドロゲルからのテオフィリンの除去が必要であった。これはハイドロゲル溶液を分液漏斗に移し、15〜20mLの塩化メチレン(CH2Cl2)を添加することによりなされた(図10)。他の適用について塩化メチレンはカフェインの分離に既に使用されているので、塩化メチレンは抽出についての使用に有用な溶媒である。
【0065】
複数回の激しい撹拌および注意深い排出(venting)の際に、漏斗の全内容物は不透明な白色になった。全内容物を一晩沈殿させ、インプリントNIPAハイドロゲルを含む透明な上部の水層、ならびに塩化メチレンおよびテオフィリンを含む下部の不透明な白色層の2つの明確な層が形成された。下層を吸い取りインプリントNIPAハイドロゲルを単離した。
【0066】
効率的に吸い取れないほどに下層が厚い場合、大容量のピペットを用いて上層を除去した。インプリントNIPAおよびテオフィリンテンプレートの良好な分離の後、45℃まで加熱し、相転移が実際に起こったことを実証した。
【0067】
実施例6
この実験について、新しいアルミニウム製サンプルセルを設計および作製し、広域な10MHz超音波プローブを購入した(Optel Inc.)。サンプルセル温度をより正確に制御するために、新しい実験設備にMighty-Watt Cartridgeヒーター(Ogden Manufacturing Co.)および温度制御装置を取り付けた(図11)。
【0068】
試料マトリックス、milli-q水は容易に再生可能であったために、インプリントNIPAハイドロゲルを使用してテオフィリン較正曲線を作成するために外部標準法を選択した。それぞれの外部標準は、水中に7mLのインプリントNIPA、および5μL〜200μLの範囲の特定量の0.1054g/100mLテオフィリンストックを有した。これはテオフィリン濃度を4.1〜162.5μMの範囲に変更させる。
【0069】
SoftScopeプログラムの制限は、SoftDSPのオシロスコープソフトウェア開発キット、およびこの実験のために特別なソフトウェアを作成することを必要とした。データ取得プログラムはC++にコードされ、MatLabの取得パラメーターを受容するように構築された。結果的に、MatLabユーザーインターフェイスは取得パラメーターを設定および変化させるため、ならびにC++プログラムにより差し戻された超音波データをロードおよび処理するために作成された。
【0070】
標準は、2MHz臨床プローブ、および新しい広域帯10MHzプローブを使用して取得したシグナルを用いてパルスした。計画の第一パートと同様に温度範囲全体をスキャンする代わりに、試料を32℃、38℃および42℃でスキャンした。これらの3種類の温度でこれを3回、1標準当り合計で9回繰り返した。最終的に、シグナルを弱める(damping)ことなく1スキャン当り1500平均で、12.5MHzのサンプリング速度を使用した。結果のサンプルフーリエ変換を図12に示す。
【0071】
これらのフーリエ変換を各曲線下面積に関して標準化し、較正等式についての3種類の波長を選択するようにプログラムされたMatlabについての段階的マルチリニア回帰(MLR)スクリプトに入力した。このツールにより各回帰の可能性が反復的に算出され、最良のマルチリニアフィットが差し戻された。良好なマルチリニアフィットがデータと一致することを視覚化するための最も簡単な方法は、実際の標準のテオフィリン濃度に対して、MLRから推定されるテオフィリン濃度のプロットを検証することである。これらの比較は32℃、42℃で得られたデータ、および3点の取得温度の組み合わされたデータについて示される(図13A、BおよびC)。38℃でのデータは42℃で得られたものと極めて類似していたために示さない。しかし、それも組み合わされた温度解析に含んだ。さらなる較正曲線を図14に示す。
【0072】
これらの結果は、インプリントNIPAハイドロゲルを使用して、テオフィリン濃度の変化が例外的な精度で検出されたことを示す。これらの結果から、インプリントNIPAハイドロゲルを使用したテオフィリン溶液の濃度を決定する際に、温度が重要な要因ではなかったことも明らかであった。
【0073】
再現性を確認するために、2回目の反復実験を行なった今回は、テオフィリンを含まないブランク測定を含む1.7〜162.5μMのテオフィリン濃度を含むように、温度範囲を拡大した。これは、実質的にほぼ100の規模の変化をカバーした。データ取得条件は最初の実験と同じにし、結果は同様に処理した。図15A、BおよびCは、前述の3点の温度で得られたデータおよび全ての温度で組み合わされたデータを示す。
【0074】
各温度に対するMLRにより選択された周波数を以下に示す。これらの周波数での振幅に対するテオフィリンの濃度を計算するための等式を以下に示す。
【0075】
【0076】
較正実験により、インプリントNIPAハイドロゲルを使用したテオフィリン濃度の定量が可能であることが再度結論付けられた。また、これらの結果は温度に大きく依存しており、再現可能であると思われる。
【0077】
実施例7
カフェインおよびテオフィリンは、1つのメチル基および1つのπ-結合の位置を除いてほぼ同じ化学構造を共有している(図16)。テオフィリンと類似している他のいくつかの容易に入手可能な化合物が存在するので、このことは選択性試験についてカフェインを理想的なものにしている。この試験の目的は、テオフィリンインプリントNIPAハイドロゲルもカフェインに対して感受性であるかどうかを調べることであった。
【0078】
カフェインの濃度範囲を、カフェインを含まないブランク測定を含む16.5〜65.3μMに拡大すること以外はテオフィリンと同様にして、外部標準実験を考案した。テオフィリン較正試験と同じパラメーターを使用してデータを得た。
【0079】
標準化されたフーリエ変換の第1の観察の際に、同様の濃度のテオフィリンとカフェインの間の標準化されたスペクトルプロフィールに微妙な差が存在する(図17および18)。これは、特定の周波数が一方の化合物について他方よりもわずかに明白であることを示す。
【0080】
次の工程は、両方の化合物についての異なる周波数プロファイルを定量することであった。これは、テオフィリン較正等式およびテオフィリンについて選択された周波数での振幅を用いて、平均温度データについてのカフェイン標準の濃度を計算することにより決定された。以下に挙げられる表はこれらの計算の結果を示す。
【0081】
【0082】
テオフィリンについて選択された周波数での振幅は、カフェインの濃度の信頼性のある計算には使用できないということが明らかである。しかしながら、カフェインのデータを段階的なMLRプログラムに入力した場合に、較正等式が得られた。計算されたカフェインの濃度および実際のカフェインの濃度の比較は、この等式がきわめて正確であったことを示した。これは、MLRプログラムが異なる周波数を選択して、テオフィリンよりもカフェインの濃度を計算することのためである。3点の温度からのデータが平均された場合、選択された周波数は、テオフィリンについて選択されたものとは全く異なる5.7MHz、6.5MHzおよび4.2MHzの最大から最小までの有意な値である。較正等式を以下に示す。
【0083】
この実験は、テオフィリンインプリントNIPAハイドロゲルが完全にはテオフィリン選択的ではないことを示す。しかし、テオフィリン選択性は、依然として解析についての周波数の注意深い選択により達成される。これらの周波数は、カフェインについて選択されたものとは異なることを示しており、そのためテオフィリンおよびカフェインの両方の同時解析は、理論的には高度に可能である。
【0084】
カフェインについての較正曲線を図19および20に示し、カフェインの存在下でのテオフィリンについてのものを図21に示す。
【0085】
1つの薬剤を使用して被験物質の混合物中の1つの被験物質を区別および定量することが可能である。このことは図22〜25に示される。図22には、テオフィリンおよびカフェイン存在下のインプリントNIPAハイドロゲルのスペクトルを示す。周波数は、カフェイン存在下のテオフィリンについての較正曲線を確立するために使用されたものに由来した(図23)。テオフィリン存在下でカフェイン較正曲線を確立するために、同様の実験を行なった(図24、25)。以上のように、結果は、推定濃度および実際の濃度の間の非常に良好な相関関係示し、他の被験物質の存在下で1つの被験物質を定量することができるということを明確に示す。
【0086】
実施例8
ヒドロキシプロピルセルロースポリマーを使用して、同様の実験を行なった(図26)。HPCを架橋するための手順は、Liaoらの研究に基づく。1gのHPC粉末および0.1gのテオフィリンを48.9gのdH2Oに添加し、3日間撹拌して20mMのテオフィリンを含む均一な1重量%HPC溶液を形成した。次いで、40μLのジビニルスルホン(DVS)を該溶液に添加した。3時間撹拌した後、5滴の1M水酸化ナトリウムを溶液に添加し、pHを約12まで上げた。架橋反応は5時間続けた。
【0087】
次いで架橋ポリマーを、蒸留水に対して3日間かけて透析し、テオフィリン、塩化ナトリウム、および任意の遊離DVSを除去した。
【0088】
図27はテオフィリンの較正曲線を示す。化学構造がテオフィリンとほとんど同じであるために、干渉種としてカフェインを使用した。
【0089】
5組の分子インプリントHPC溶液を調製した。それぞれの組は、特有のカフェインの濃度を有し、テオフィリンの濃度は溶液ごとに異なった。同様に、カフェイン濃度は0〜10mMの範囲で一組目から順次上げていった(図28)。
【0090】
このデータは、カフェインの存在下でHPCポリマーの分子インプリントを使用してテオフィリンの濃度を測定することが可能であることを示す。
【0091】
実施例9
CMCおよびTNFα抗体をカップリングするための手順はWheatleyらの研究に基づく。0.5gのCMC粉末および0.84g NaClを49.5gの0.1Mリン酸バッファ、pH6.5に添加し、3日間撹拌して均一な1重量%CMC溶液を形成した。次いで、5mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および3mgのN-ヒドロキシ-スクシニミド(NHS)を溶液に添加して15分間混合した。続けて、20.6pmolのTNFα抗体を混合液に添加して、3時間かけてカップリングさせた。次いで、ポリマーを2日間かけて透析して反応しなかった任意のカップリング剤を除去し、最終的にpHを7.4(生理的pH)に調整した(図29)。
【0092】
この計画はセルロースポリマーの認識よりも、抗体中の分子認識部位に依存する。抗体は、生合成され、強力な特異的抗原認識部位を有し、典型的にnM-1の範囲の結合定数を有する、タンパク質または長鎖のアミノ酸である。これらは上述のEDCによりセルロースにカップリングする。
【0093】
図30は、TNFα抗体にカップリングしたCMCを使用して、タンパク質TNFαの濃度を測定することが可能であることを示す。
【0094】
図31は、生物学的/インビボ条件下での抗体カップリングCMCセンサー適用可能性を示す。血中で最も豊富なタンパク質でありかつ生理学的pHである生理学的濃度の血清アルブミンの存在下で、タンパク質TNFαの濃度を測定することが可能である。
【0095】
発明者らはこの研究のために、非セルロースデンドリマーを使用した(図32)。これらの(There)ポリマーは、その上に抗体が結合する非常に規則的な球を形成する。
【0096】
抗体をPAMAMデンドリマーにカップリングするために使用された手順は、0.01重量%ゲルを作製した(上述の1重量%CMCゲルとは異なり)以外はCMCと抗体のカップリングに使用される手順と同じである。
【0097】
図33は、TNFα抗体にカップリングしたPAMAMデンドリマーを使用してタンパク質TNFαの濃度を測定することが可能であることを示す。
【0098】
図34は、抗体カップリングデンドリマーがタンパク質TNFαに結合する場合に観察される周波数の特徴的な変化であると発明者が考えるものを示す。
【0099】
本発明は、その具体的な態様に関連して記載されるが、さらなる改変が可能であり、本出願は、一般的に、本発明の原則に従い、本発明が属する技術分野において公知かつ習慣的な実施内になされ、前述の本明細書中の実質的な特徴に適合され得、添付の特許請求の範囲の範囲内になされる本発明の開示から逸脱したものを含む本発明の任意の変更、使用または適用を含むことを目的とすることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)ヒドロゲルである。
【図2】図2は、ヒドロゲルの相転移の状態の図である。
【図3】図3は、ヒドロゲルの窒素パージ設備である。
【図4】図4は、流動試料セル実験設備である。
【図5】図5AおよびBは、NIPAの種々の温度での反射率の測定のFTである。
【図6】図6AおよびBは、NIPAの種々の温度での透過の測定のFTである。
【図7】図7AおよびBは、HPCの種々の温度での透過の測定のFTである。
【図8】図8は、テオフィリンインプリントNIPAヒドロゲルの図である。
【図9】図9は、テオフィリンを有するNIPA MIPポリマーの概略図である。
【図10】図10は、テオフィリンのないNIPA MIPポリマーの概略図である。
【図11】図11は、アルミニウム試料セル実験設備である。
【図12】図12は、32℃における1.7μM テオフィリンを用いたインプリントNIPAヒドロゲルの試料FTである。
【図13】図13は、32℃(A)、42℃(B)および合わせた温度(C)におけるテオフィリン較正直線である。
【図14】図14はテオフィリン較正直線である。
【図15】図15は、32℃(A)、42℃(B)および合わせた温度(C)におけるテオフィリン較正直線である。
【図16】図16は、テオフィリンおよびカフェインの分子構造である。
【図17】図17は、16.5μM、32℃におけるテオフィリンおよびカフェインのFTである。
【図18】図18は、テオフィリンおよびカフェインのFTである。
【図19】図19は、合わせた温度におけるカフェイン較正直線である。
【図20】図20はカフェイン較正直線である。
【図21】図21は、カフェインの存在下のテオフィリン較正曲線である。
【図22】図22は、テオフィリン(theophilline)およびカフェインを用いたインプリントNIPAヒドロゲルのFTである。
【図23】図23は、カフェインの存在下のテオフィリンに対して誘導した標準曲線である。
【図24】図24は、テオフィリンおよびカフェインを用いたインプリントNIPAヒドロゲルのFTである。
【図25】図25は、テオフィリンの存在下のカフェインに対して誘導した標準曲線である。
【図26】図26は、HPCポリマーの概略図である。
【図27】図27は、HPCポリマーを用いたテオフィリン較正曲線である。
【図28】図28は、カフェインを用いたテオフィリン較正曲線である。
【図29】図29は、抗体を有するCMCポリマーの概略図である。
【図30】図30は、抗体結合ポリマーを用いたTNFα較正曲線である。
【図31】図31は、アルブミンの存在下のTNFα較正曲線である。
【図32】図32は、デンドリマーポリマーの概略図である。
【図33】図33は、抗体結合デンドリマーポリマーを用いたTNFα較正曲線である。
【図34】図34は、タンパク質の存在下のデンドリマーのFTである。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、超音波に基づく検出および定量方法ならびに被検物質の超音波検出に有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
超音波は、長い間に医学の分野で確立されており、主に、女性の妊娠胎児の状態をモニターするのを補助するための画像化方法として使用されている。超音波という用語は、ヒト耳によって知覚される周波数(ほぼ20Hz〜20kHzの範囲)より高い周波数を有する音波と定義され得る。超音波治療画像化および関連研究は、典型的に、1MHz〜10MHzの範囲で行なわれる。
【0003】
医学分野におけるこの技術の最初の適用は、Karl Theodore Dussik医師によるものであり得る。1952年、オーストリアで、彼は、医学超音波学の分野を開拓し、脳内への超音波の透過に関して行なった自身の研究について述べた。さらに、Ian Donald教授は、50年代末から60年代に、この技術の他の適用を調査した。腹部腫瘤に関して徹底的に試験した後、彼は、1958年、妊娠女性に対して、まさに最初の超音波治療の試行を行なった。
【0004】
医学的適用のための超音波技術は、使用の容易性および非侵襲的特徴のため、一般的になってきている。何年か後に、超音波プローブに対して多くの改善がなされ、より高度な画像の解像度が可能となっている。
【0005】
超音波が物体表面に当たると、その一部は、光がレンズを通過するのと同様に、反射するか、散乱するか、またはその物体を透過する。また、この音波は、表面に当たると減衰され、高周波数のほうが低周波数よりも影響を受ける。したがって、低周波数の音波は、完全に減衰される前に、より多くの物質層を横断することができる。
【0006】
超音波治療学において、超音波は、プローブ内部に配置された小さな圧電デバイスであるトランスデューサーによってもたらされる。このデバイスに電流を流すと、特定の周波数で振動し、プローブの方向に発出される超音波が生成される。また、プローブは超音波検出器として二役を演じる。超音波が圧電デバイスに当たると、振動し、電流が発生する。
【0007】
表面に当たることによる減衰を最小限にしつつ、高周波数の超音波が組織中に伝播することを確実にするため、臨床用超音波プローブは、分析される身体組織に水結合性(water-coupled)である必要がある。これは、超音波プローブとの充分な接触を提供するために患者の皮膚にすりこまれる物質である超音波ゲルを用いて達成される。
【0008】
画像は、組織層中に超音波が伝播したら、反射を分析することによって超音波から作製され得る。反射がプローブに戻るのにかかる時間は、超音波パルスが伝わる距離を示す。身体の1箇所をスキャンし、プローブに戻る多数の反射を聞くことにより、多重層の組織が知覚され得る。また、完全な画像は、身体のある部分をスキャンし、超音波反射からのデータを並べることにより作製され得る。
【0009】
医学分野への超音波画像化の組み込みにより、子宮における胎児管理に対する着実なアプローチが可能になった。しかしながら、この型の画像化はいくつかの欠点を有する。
【0010】
第1は、深度と解像度の兼ね合いである。前述のように、低周波数音(長波長)は物体内により深く伝わるが、高周波数(短波長)は、非常に微細な詳細を示し、画像化の解像度が増大する。
【0011】
可能な最良の解像度を得るためには、高周波数超音波を使用することが好ましい。しかしながら、かかる高周波数超音波は非常に速く減衰され、したがって、ヒト体内にあまり深く浸透しない。妥当な画像化能をなお提供しつつ、ある程度の組織および器官を横断させるため、周波数は低くなければなないが、それにより解像度が犠牲になる。
【0012】
第2の主な制限は、超音波治療によって提供される分子調整(modulation)の欠如に関する。超音波組織画像化は、身体内部の部分ならびに妊娠胎児の状態を示すことにおいて非常に有効であるが、現在の超音波法では、循環系または組織もしくは器官内の任意の特定の分子の濃度に関して調整が得られない。この調整が必要とされる場合は、他のより侵襲性の、しばしばあまり望ましくない手段が使用される。
【0013】
したがって、超音波デバイスを用いた検出の改善された方法の必要性が存在する。
【0014】
(発明の概要)
本発明の広い局面において、超音波スペクトル特性を用いて、被検物質を検出、同定および定量するための方法が提供される。該方法は、試料の超音波プロービングを用いて分子調整を有利に提供する。
【0015】
本発明の一態様において、
- 1つ以上の標的分子に結合するための1つ以上の標的結合部位を備える超音波分子センサーであって、標的結合状態および標的非結合状態を有し、超音波分子センサーへの1つ以上の標的分子の結合により、超音波シグナルにおける調整が引き起こされる超音波分子センサーを提供する工程;
- 超音波分子センサーと1つ以上の標的分子と接触させて標的結合状態の超音波分子センサーを生成する工程;および
- 1つ以上の超音波周波数で標的結合超音波分子センサーの超音波シグナルを得る工程、ここで、シグナルは、少なくとも1つの標的分子の存在を示す調整を含む、
を含む、超音波コントラスト促進方法が提供される。
【0016】
別の態様において、
- 被検物質を、1つ以上の被検物質を結合させるための1つ以上の被検物質結合部位を備える超音波分子センサーと接触させる工程、超音波センサーは、被検物質結合状態および被検物質非結合状態を有し、超音波分子センサーへの1つ以上の被検物質の結合により、超音波シグナルにおける調整が引き起こされる;;および
- 1つ以上の周波数における被検物質結合状態の超音波シグナルを得る工程、ここで、シグナルは、被検物質の存在を示す調整を含む、
を含む、被検物質の検出方法が提供される。
【0017】
また別の態様において、超音波分子センサーおよび超音波分子センサーに連結された被検物質結合部位を含む化合物;標的結合状態および標的非結合状態を有する化合物が提供され、ここで、標的非結合状態は実質的に超音波透過性であり、標的結合状態は超音波感受性であり、被検物質結合部位は、被検物質の分子が被検物質結合部位に結合すると特性周波数の検出可能な超音波シグナルを生じるのに充分な数であり、それにより、該化合物を標的結合状態にする。
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0019】
(発明の詳細な説明)
本明細書において、超音波分子センサーにより、適切に励起される際に、超音波シグナルを生成し得る任意の分子が意図される。本明細書において使用されるように、超音波分子センサーは、限定されないが、大きな有機分子、例えばポリマー、例えば、限定されないがヒドロゲルポリマー、例えば、ポリアクリルアミド、セルロース、アルギネートなど、非ヒドロゲルポリマーおよびデンドリマーを含む。
【0020】
標的分子により、超音波分子センサーに結合して超音波調整をもたらし得る分子が意図される。かかる標的分子としては、限定されないが、タンパク質、ホルモンなどの生体分子が挙げられ得る。
【0021】
被検物質により、本発明の方法によって分析的に測定される任意の分子が意図される。場合によっては、例えば、被検物質の濃度を測定するために所望される場合は、標的分子は被検物質であり得ることは認識されよう。
【0022】
被検物質の超音波画像化および定量においてコントラスト促進を提供するための超音波分子センサーを用いた超音波コントラスト促進のための方法が提供される。
【0023】
超音波周波数の測定を用いて被検物質を検出および定量するための方法が提供される。本発明の一局面において、被検物質を、該被検物質への結合部位を有する超音波分子センサーと接触させた場合、超音波で励起されると特性超音波スペクトルを示す超音波分子センサー被検物質組成物がもたらされることが都合よく見出された。特性超音波スペクトルにより、該組成物が特異な超音波スペクトルプロフィールを示すことが意図される。さらにまた、本発明は、スペクトルバンドを用いた被検物質の定量を提供する。
【0024】
被検物質の検出および定量に適した超音波分子センサーは、圧力励起されると超音波によって超音波スペクトルを示し、被検物質への結合部位を有する超音波分子センサーである。結合部位の性質は、検出される被検物質および超音波分子センサーの分子組成に応じて異なる。超音波分子センサーは、被検物質結合部位を組み込むために処理または誘導体化され得る。結合部位は、抗体またはその一部、タンパク質またはその一部、核酸、炭水化物、特定の物理化学特性を有する官能基などのいくつかの可能な型から選択され得る。例えば、レセプタータンパク質が超音波分子センサーにカップリングされ得、それにより、対応するリガンドの結合が可能となる。
【0025】
別のアプローチにおいて、結合部位は、超音波分子センサーをリガンドとともにインキュベートして結合部位を生成させることにより、分子的インプリンティング(imprinting)または拘束された自己集合によって作製され得る。
【0026】
超音波分子センサーは、超音波パルスによって励起されると超音波スペクトルを生じ得る限り、および超音波分子センサーへの被検物質の結合によって、被検物質の存在に特徴的なスペクトルがもたらされる限り、任意の適当な超音波分子センサーであり得る。
【0027】
好ましい態様において、超音波分子センサーは、限定されないが、被検物質への多数の結合部位を有するポリアクリルアミドおよびセルロースポリマーなどのヒドロゲルポリマーである。また、ポリマーはデンドリマーを含み得る。
【0028】
超音波分子センサーまたは超音波分子センサー-被検物質複合体からの超音波シグナルの検出は、超音波を生成し得る超音波分子センサー内での振動を誘導するための励起を必要とする。好ましい態様において、励起は、超音波、好ましくはパルス化超音波によってもたらされる。超音波は、透過または反射構造物(configuration)において検出され得る。構造物の選択は、分析される試料の性質に基づいて行なわれ得る。溶液は透過の検出を行ない易いが、例えば、個体における検出は、反射構造物の使用を必要とし得る。
【0029】
一態様において、透過の測定は、超音波分子センサー-被検物質複合体を励起して高周波数振動させ、それにより第2のトランスデューサーを用いて検出される超音波を生成させるトランスデューサーで生成させたパルス化超音波を用いて行なわれる。トランスデューサーは、好ましくは1〜10MHZで作動する。しかし、実際の励起周波数は、超音波分子センサーの型および超音波分子センサー-被検物質複合体が位置するトランスデューサーに対する深さに依存することは認識されよう。
【0030】
典型的に、例えば、超音波画像化に使用される場合のように、トランスデューサーは、基本ビームを送出し、本質的に同じ周波数範囲のバックビーム(back)をエコーとして(または透過幾何構造体の場合は透過シグナルとして)受ける。しかしながら、組織または分子複合体が波に応答して拡張および圧縮すると、音波は歪曲する。特定のエネルギーレベルに達した場合、この歪曲により、発せられた周波数の2倍、3倍またはそれ以上の調波と呼ばれるさらなる周波数の生成がもたらされる。調波周波数は、基本周波数とともにトランスデューサーに戻る。本発明において、エンハーモニック周波数(調波周波数以外の周波数)は、被検物質の検出および定量に有用であることがわかった。
【0031】
上記のように、超音波スペクトル内の一部の周波数バンドの強度は、被検物質の濃度に比例することが都合よく見出された。したがって、該方法はまた、被検物質の濃度と相関することが示された1つ以上の周波数バンドを用いた被検物質の定量を提供する。未知濃度の溶液中の被検物質の定量は、標準曲線を作成するか、内部標準を使用するか、またはいくつかの周波数の線形結合を確立して被検物質の濃度を算出する等式を得ることよりことにより行なわれ得る。
【0032】
したがって、本発明の方法を用いて被検物質を検出または定量するプロセスは、被検物質を、被検物質結合部位を有する適切な超音波分子センサーと接触させる工程および1つ以上の周波数の超音波シグナルを得、被検物質を検出または定量する工程を含み得る。被検物質の存在を検出するため、超音波シグナルを、その調整含量について検査する。調整により、特定周波数のシグナルの存在または非存在、周波数の強度、周波数シフトなどが意図される。被検物質が初めて分析された場合、被検物質なしでの薬剤のスペクトルとの比較を可能にし、したがって、スペクトル、被検物質の存在に特徴的な周波数を比較することによる同定を可能にするため、多数の周波数を含む超音波シグナルを得ることが必要であり得ることは認識されよう。単一の周波数は、被検物質を同定するのに充分な調整を提供し得るが、場合によっては、被検物質間を識別するのに2以上の周波数の相対強度が必要である。また、多数の周波数の使用は、検出の信頼性を増大させ得る。公知の被検物質の定量には、周波数の振幅(amplitude)が被検物質の濃度と相関することが示されている単一の周波数を使用することが可能であり得る。しかしながら、線形結合を用いて相関性を確立することは、より正確な結果をもたらし得る。
【0033】
別の態様において、被検物質の存在ありまたはなしでの超音波分子センサーの超音波シグナル(音響特性)の変化は、例えば、超音波分子センサーの立体構造のフォールディングおよび/またはその剛性の変化によって引き起こされ得る。したがって、超音波分子センサーにおける分子変化は、音響特性の変化をもたらし得る。例えば、ポリマーの分子構造に対する分解効果のため、反応性分子、例えば、一酸化窒素などのフリーラジカルの存在を検出することが可能であり得る。超音波分子センサーは、かかる分子に対して感受性となるように設計され得ることは認識されよう。
【0034】
各々特性スペクトルを示す種々の超音波分子センサーが被検物質の検出に使用され得る。同様に、超音波分子センサーは、異なる被検物質に結合して特性スペクトルを生成し得る。同じ超音波分子センサーで得られた異なる被検物質のスペクトルを比較した場合、類似性は、被検物質の構造の類似性を示し得る。したがって、本発明の方法はまた、未知被検物質を同定するため、または同定を補助するために使用され得る。
【0035】
本発明の超音波分子センサーは種々の様式で使用され得る。一例として、混合物中の被検物質の検出および定量のために使用され得る。この特定の適用は、化学分析、環境分析などに有用である。生体適合性の超音波分子センサーを選択することにより、ヒトなどの被験体内の被検物質を検出および定量するために使用され得る。さらにまた、特定の解剖学的構造内の被検物質(またはより一般的には分子)を結合(bide)することにより造影剤としての機能を果たし得る。
【0036】
したがって、超音波分子センサーは、被検物質の検出のためにインビボで使用され得る。動物またはヒト体内で超音波分子センサーを使用する場合、本発明の超音波剤は、エーロゾル吸入、注射および経口摂取などの当該技術分野で周知の方法によって注入され得る。好ましくは、本発明の超音波分子センサーは、皮下(s.c)、腹腔内(i.p.)、動脈内(i.a.)または静脈内(i.v.)注射によって被験体に投与される。また、超音波分子センサーは、好ましくは、当業者に公知の技術によって滅菌され得る薬学的に許容され得る担体を用いて投与される。薬学的に許容され得る担体は、当業者に公知であり、生理食塩水溶液、リポソーム調製物などが挙げられ得る。また、試料は個体から得られ得、被検物質は試料中で直接測定され得る。
【0037】
超音波分子センサー-被検物質複合体は、実際の組成物および濃度ならびに物理化学的条件に応じて、種々の直径示す。超音波分子センサーおよび超音波分子センサー-被検物質複合体の大きさならびにその分子組成は、該化合物の薬力学的特性に影響を及ぼし得ることは認識されよう。薬力学的特性により、化合物の生体分布ならびに血中からのクリアランスまたは腎臓からの排出の速度論、安定性などの特性が意図される。当業者は、本発明の利点が充分利用されるように組成を最適化することができる。
【0038】
本発明の可能なインビボ使用のいくつかの例は、薬物の検出/定量、生理学的分子 (ホルモン、タンパク質、ビタミンなど)の検出/定量、器官内の温度検出(超音波分子センサーの相転移特性を使用)である。
【0039】
また、本発明の別の局面において、種々の試料から超音波測定値を得るための装置が提供される。該装置は、所定の周波数または周波数範囲での放射、検出が制御可能である超音波放射および検出トランスデューサーを備える。該装置は、周波数の関数として超音波シグナルを同定/記録するための分析装置/処理装置をさらに備える。分析装置/処理装置はまた、調波周波数とエンハーモニック周波数を同定または識別する手段を備え得る。好ましい態様において、該装置はまた、超音波シグナルに基づいて被検物質の濃度を計算するための処理装置を備える。該装置は、分析される試料に応じて透過モードまたは反射モードで機能を果たし得る。透過構造物は、水溶液などの試料に使用され得るが、反射は、ヒトなどの動物から測定値を得るためにより適している。
【0040】
本発明は、本発明を限定するためではなく、本発明を例示するために示した以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されよう。
【実施例】
【0041】
実施例1
ある種のポリマーゲルは、周囲環境における変化の形態の外部刺激に応答する。温度、pH、溶媒濃度、溶媒の型、電場および光は、調整した場合、これらのポリマーゲルに特性の変化を引き起こし得るいくつかのパラメータである。N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)は、かかるポリマーゲルの一例であり(図1)、ヒドロゲルとしても知られており、その特異な特性のため広く研究されている。
【0042】
この特別なヒドロゲルは、温度が臨界点を超えて上昇すると、容積および特性において印象的な大きな可逆変化を受け得る。この臨界温度Tcは、ShibayamaおよびTanakaによって調査され、34℃であることがわかった。Tc未満では、ヒドロゲルは、無色透明な溶液であり、水と類似した粘度を有する。分子レベルでは、その構造物は、凝縮したポリマー鎖の膨潤網目形態であり、溶媒分子は鎖間を自由に流動する。
【0043】
ヒドロゲルがTcより上まで加熱されると、膨潤網目が崩壊し、広いサイズ分布の凝縮したポリマー鎖(図2)の小さなドメインが形成される。その結果、ヒドロゲル溶液は、密集(populated)し、一部の領域は他の領域よりも多く崩壊するため、軽度に架橋した領域と重度に架橋した領域が不均一に混合した状態になる。この崩壊を受けるプロセスは、相転移、より技術的にはスピノーダル分解として知られており、この開始は、透明から混濁への変化である。
【0044】
破壊された相内に存在する空間的不均一性は、溶液を混濁させて、可視光を散乱させるだけでなく、ヒドロゲルの多くの特性、例えば、後のセクションに記載するような超音波特性も変化させる。また、温度を極めて低速(0.1℃/日)で上昇させた場合、試料はクエンチされないことに注目することも興味深い。その結果、溶液中に存在する小ドメインは、拡散するのに充分な時間を有し、ポリマー網目が平衡化し、Tc未満の温度で見られるものと非常に類似した特性を示す。これは、小さな濃度勾配によって引き起こされる小ドメインのゆっくりした移動を考慮すると、明白である。勾配が完全に拡散したら、ゲルは、その室温での状態と同様に均一で透明になる。
【0045】
ゲルを室温で膨潤性に維持する水素結合は、熱エネルギーによって強くなりすぎる。したがって、ポリマー鎖間の相互作用はより顕著になり、ゲル自体における崩壊が引き起こされる。ドメイン内部の容積は、崩壊中に溶媒分子が内部に捕捉されるため、最初は一定(等容変化)である。
【0046】
NIPAのこれらの特性は、改質ポリマー合成技術がロッド状の形態から種々の複雑な形態に変化するゲルの開発をもたらした形状記憶ゲルなどの多くの適用をもたらした。NIPAの他の興味深い機能としては、超音波の熱応答性減衰器、光学的スイッチ、およびフォトレジスト性(photoresistive)人工筋肉が挙げられる。
【0047】
ヒドロプロピルセルロース(HPC)がNIPAに類似した特性を示すようであるが、相転移は見た目には顕著でないことは、注目に値する。
【0048】
実施例2
Huの研究のNIPAヒドロゲルの合成手順を適合した。N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA、2g)およびN.N'-メチレン-ビス-アクリルアミド(MBA、0.033g)を、ほぼ50mLの水を含むフラスコに添加し、得られた溶液を完全に溶解するまで攪拌した。痕跡量の酸素があれば重合工程を損ない得るため、特注回転式エバポレータで回転させている間に窒素を溶液に吹き付けることにより酸素除去を行なった(図3)。一定の窒素流の下で溶液が蒸発するのを防ぐため、最初に水の入ったフラスコ内で泡立たせた。この方法は、単に溶液中で窒素を泡立たせるよりも効率的であることがわかり、一晩パージさせるのではなく、3時間しかかからなかった。
【0049】
パージが終了したら、テトラメチルエチレンジアミン(TMED、60μL)を重合促進剤として溶液に添加した。次いで、過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8、0.015g)を導入してラジカル重合を開始し、混合物を静かに攪拌した。約20分間放置した後、溶液は、やや曇った白色となり、NIPAヒドロゲルの存在を示した。溶液を45℃に加熱すると、相転移が誘導され、溶液は曇った白色となった。
【0050】
最初に水を多く添加しすぎると、重合溶液は、重合が良好であった場合ですら、なお無色透明であり得た。上記のように相転移を誘導するために熱を負荷すると、溶液は、程度は低いがそれでも不透明な白色となるはずであるため、ヒドロゲルの存在が確認される。
【0051】
実施例3
HPCヒドロゲルの合成手順は以下のとおりである。ヒドロプロピルセルロース(0.1g)を100mLの水を含むフラスコに添加した。この溶液のpHを水酸化カリウム(KOH)の添加により12に調整し、混合物を暗所で4日間攪拌した。
【0052】
この期間の経過後、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB、0.35g)を溶液に添加し、さらに1時間攪拌した。ジビニルスルホン(DVS、0.04g)をフラスコに添加し、内容物を55℃まで30秒間加熱し、重合を開始させた。次いで、溶液を濃塩酸(HCl)で急速に酸性化させ、重合を停止した。
【0053】
実施例4
この実験の目的の1つは、NIPAヒドロゲルのTCより上および下の温度で超音波スキャンを得、その超音波特性を特徴付けすることであった。
【0054】
この実験に使用した超音波システム全体は、5MHz臨床用超音波トランスデューサー、試料セル、シグナルパルス発生装置/増幅器(Panametrics Inc.)、SDS 200オシロスコープ(SoftDSP Co.)、マルチメータに接続された熱電対温度センサー、およびコンピュータから構成された。
【0055】
試料セルは、適当な水結合を起こすためにヒドロゲル試料と臨床用プローブ間に充分な接触を有するように変形されたフローセルから構成された(図4)。
【0056】
上記の図に示すように、この変形セルは加熱能を有さない。そのため、溶液を水浴中で65℃まで加熱し、試料セルに移すとほぼ10〜15℃低下し、28℃まで冷却中にデータを30秒ごとに記録した。
【0057】
同じ超音波トランスデューサーを用いてヒドロゲル試料をパルス処理(pulse)し、データを記録し、それにより反射率シグナルを測定した。この超音波データは、SoftDSP's Softscope取得プログラムを使用し、12.5MHzのサンプリングレート、シグナル減衰なし、および128平均/スキャンで、オシロスコープによって取得した。MatLabを用いてデータを入力し、データのフーリエ変換およびボックスカー平滑化の実施などのデータ処理を行なった。図5 AおよびBにまとめた反射率測定の結果は、NIPAヒドロゲルについて34℃において予測されたシャープなシグナル減衰を示し、Huの研究と一致する。
【0058】
第2の研究は、NIPAおよびHPCのハイドロゲルの両方の超音波的特徴をさらに探求することを目的とする。これは、透過データを測定する1つの実験パラメーター、この場合、2MHzの臨床的超音波プローブで試料をパルスすることおよび先に使用された5MHzのプローブを用いてシグナルを受けることをアレンジしなおすことにより達成された。得られたパラメーターは第1の研究から変化せずに残った。
【0059】
スキャンの結果により、図6AおよびBならびに図7AおよびBに示される反射率測定値よりもかなり多くの調節が提供された。このデータは以前行ったように平滑化し、周波数振幅の変化のみが可視化されるように平均が中心にあった。
【0060】
両方のハイドロゲルは、相転移の結果として、多重化超音波周波数相互作用を示した。周波数シフトは明確に可視であり、特定の箇所での周波数減衰(attenuation)、およびその他の箇所での周波数増幅により示された。別の興味深い結果は、調波相互作用が示されたが(パルス周波数の多重化を示す調波)、エンハーモニック相互作用も示されたことである。このことは、温度範囲でのわずかな周波数の振幅を見た場合に、より大きな程度で強調される。
【0061】
これらの実験は、反射率測定値および透過測定値の両方を使用して、ハイドロゲルの超音波特性をモニタリングすることによりハイドロゲルの相転移を検出することが可能であることを結論付けた。透過測定値により示された周波数シフトは調波シフトおよびエンハーモニックシフトの両方を示し、反射率測定値よりも多くの調節をもたらす。
【0062】
実施例5
次の工程は、分子的に感受性なハイドロゲルの作製、および臨床超音波システムによりテンプレート分子の種々の濃度を検出することができるかどうかという試験を必要とした。テンプレート分子としてテオフィリンを選択した。SeitzおよびLavineによりなされた研究によると、テオフィリン上にメタクリル酸(MAA)を誘引するいくつかの部位が存在するので、ハイドロゲル中の結合部位の完成にはMAAが適切であると思われた(図8)。
【0063】
手順のわずかな変更により合成がなされた。テオフィリンによりNIPAポリマーに分子インプリントを行う手段は以下のとおりである:発明者らは1.0gのNIPAモノマー、0.08gのN,N'-メチレン-bis-アクリルアミド(MBA)、0.08gメタクリル酸(MAA)および0.18gテオフィリンを99mLの蒸留水(dH2O)に添加して、完全な溶解を確実にするために3時間撹拌して均一な1重量%NIPA溶液を形成した。溶液中の酸素は窒素ガスによりパージした。発明者らは、次に15mgの過硫酸アンモニウムを添加して重合を開始させ、促進剤として60μLのテトラメチルエチレンジアミンを添加した。緩やかに撹拌して溶液を30分間重合させたままにした。一旦インプリントされたハイドロゲルが形成されると、連続的な塩化メチレン抽出によりテオフィリンテンプレートを除去した。テオフィリンの抽出は分光器により271nmで確認された。全ての化学物質はSigma-Aldrich(Ontario, Canada)から購入した。(図9の模式的構造を参照)。合成の残りをインプリントされていないNIPAと同様の方法で行なった。
【0064】
一旦ハイドロゲルが首尾よく形成されると、インプリントNIPAハイドロゲルからのテオフィリンの除去が必要であった。これはハイドロゲル溶液を分液漏斗に移し、15〜20mLの塩化メチレン(CH2Cl2)を添加することによりなされた(図10)。他の適用について塩化メチレンはカフェインの分離に既に使用されているので、塩化メチレンは抽出についての使用に有用な溶媒である。
【0065】
複数回の激しい撹拌および注意深い排出(venting)の際に、漏斗の全内容物は不透明な白色になった。全内容物を一晩沈殿させ、インプリントNIPAハイドロゲルを含む透明な上部の水層、ならびに塩化メチレンおよびテオフィリンを含む下部の不透明な白色層の2つの明確な層が形成された。下層を吸い取りインプリントNIPAハイドロゲルを単離した。
【0066】
効率的に吸い取れないほどに下層が厚い場合、大容量のピペットを用いて上層を除去した。インプリントNIPAおよびテオフィリンテンプレートの良好な分離の後、45℃まで加熱し、相転移が実際に起こったことを実証した。
【0067】
実施例6
この実験について、新しいアルミニウム製サンプルセルを設計および作製し、広域な10MHz超音波プローブを購入した(Optel Inc.)。サンプルセル温度をより正確に制御するために、新しい実験設備にMighty-Watt Cartridgeヒーター(Ogden Manufacturing Co.)および温度制御装置を取り付けた(図11)。
【0068】
試料マトリックス、milli-q水は容易に再生可能であったために、インプリントNIPAハイドロゲルを使用してテオフィリン較正曲線を作成するために外部標準法を選択した。それぞれの外部標準は、水中に7mLのインプリントNIPA、および5μL〜200μLの範囲の特定量の0.1054g/100mLテオフィリンストックを有した。これはテオフィリン濃度を4.1〜162.5μMの範囲に変更させる。
【0069】
SoftScopeプログラムの制限は、SoftDSPのオシロスコープソフトウェア開発キット、およびこの実験のために特別なソフトウェアを作成することを必要とした。データ取得プログラムはC++にコードされ、MatLabの取得パラメーターを受容するように構築された。結果的に、MatLabユーザーインターフェイスは取得パラメーターを設定および変化させるため、ならびにC++プログラムにより差し戻された超音波データをロードおよび処理するために作成された。
【0070】
標準は、2MHz臨床プローブ、および新しい広域帯10MHzプローブを使用して取得したシグナルを用いてパルスした。計画の第一パートと同様に温度範囲全体をスキャンする代わりに、試料を32℃、38℃および42℃でスキャンした。これらの3種類の温度でこれを3回、1標準当り合計で9回繰り返した。最終的に、シグナルを弱める(damping)ことなく1スキャン当り1500平均で、12.5MHzのサンプリング速度を使用した。結果のサンプルフーリエ変換を図12に示す。
【0071】
これらのフーリエ変換を各曲線下面積に関して標準化し、較正等式についての3種類の波長を選択するようにプログラムされたMatlabについての段階的マルチリニア回帰(MLR)スクリプトに入力した。このツールにより各回帰の可能性が反復的に算出され、最良のマルチリニアフィットが差し戻された。良好なマルチリニアフィットがデータと一致することを視覚化するための最も簡単な方法は、実際の標準のテオフィリン濃度に対して、MLRから推定されるテオフィリン濃度のプロットを検証することである。これらの比較は32℃、42℃で得られたデータ、および3点の取得温度の組み合わされたデータについて示される(図13A、BおよびC)。38℃でのデータは42℃で得られたものと極めて類似していたために示さない。しかし、それも組み合わされた温度解析に含んだ。さらなる較正曲線を図14に示す。
【0072】
これらの結果は、インプリントNIPAハイドロゲルを使用して、テオフィリン濃度の変化が例外的な精度で検出されたことを示す。これらの結果から、インプリントNIPAハイドロゲルを使用したテオフィリン溶液の濃度を決定する際に、温度が重要な要因ではなかったことも明らかであった。
【0073】
再現性を確認するために、2回目の反復実験を行なった今回は、テオフィリンを含まないブランク測定を含む1.7〜162.5μMのテオフィリン濃度を含むように、温度範囲を拡大した。これは、実質的にほぼ100の規模の変化をカバーした。データ取得条件は最初の実験と同じにし、結果は同様に処理した。図15A、BおよびCは、前述の3点の温度で得られたデータおよび全ての温度で組み合わされたデータを示す。
【0074】
各温度に対するMLRにより選択された周波数を以下に示す。これらの周波数での振幅に対するテオフィリンの濃度を計算するための等式を以下に示す。
【0075】
【0076】
較正実験により、インプリントNIPAハイドロゲルを使用したテオフィリン濃度の定量が可能であることが再度結論付けられた。また、これらの結果は温度に大きく依存しており、再現可能であると思われる。
【0077】
実施例7
カフェインおよびテオフィリンは、1つのメチル基および1つのπ-結合の位置を除いてほぼ同じ化学構造を共有している(図16)。テオフィリンと類似している他のいくつかの容易に入手可能な化合物が存在するので、このことは選択性試験についてカフェインを理想的なものにしている。この試験の目的は、テオフィリンインプリントNIPAハイドロゲルもカフェインに対して感受性であるかどうかを調べることであった。
【0078】
カフェインの濃度範囲を、カフェインを含まないブランク測定を含む16.5〜65.3μMに拡大すること以外はテオフィリンと同様にして、外部標準実験を考案した。テオフィリン較正試験と同じパラメーターを使用してデータを得た。
【0079】
標準化されたフーリエ変換の第1の観察の際に、同様の濃度のテオフィリンとカフェインの間の標準化されたスペクトルプロフィールに微妙な差が存在する(図17および18)。これは、特定の周波数が一方の化合物について他方よりもわずかに明白であることを示す。
【0080】
次の工程は、両方の化合物についての異なる周波数プロファイルを定量することであった。これは、テオフィリン較正等式およびテオフィリンについて選択された周波数での振幅を用いて、平均温度データについてのカフェイン標準の濃度を計算することにより決定された。以下に挙げられる表はこれらの計算の結果を示す。
【0081】
【0082】
テオフィリンについて選択された周波数での振幅は、カフェインの濃度の信頼性のある計算には使用できないということが明らかである。しかしながら、カフェインのデータを段階的なMLRプログラムに入力した場合に、較正等式が得られた。計算されたカフェインの濃度および実際のカフェインの濃度の比較は、この等式がきわめて正確であったことを示した。これは、MLRプログラムが異なる周波数を選択して、テオフィリンよりもカフェインの濃度を計算することのためである。3点の温度からのデータが平均された場合、選択された周波数は、テオフィリンについて選択されたものとは全く異なる5.7MHz、6.5MHzおよび4.2MHzの最大から最小までの有意な値である。較正等式を以下に示す。
【0083】
この実験は、テオフィリンインプリントNIPAハイドロゲルが完全にはテオフィリン選択的ではないことを示す。しかし、テオフィリン選択性は、依然として解析についての周波数の注意深い選択により達成される。これらの周波数は、カフェインについて選択されたものとは異なることを示しており、そのためテオフィリンおよびカフェインの両方の同時解析は、理論的には高度に可能である。
【0084】
カフェインについての較正曲線を図19および20に示し、カフェインの存在下でのテオフィリンについてのものを図21に示す。
【0085】
1つの薬剤を使用して被験物質の混合物中の1つの被験物質を区別および定量することが可能である。このことは図22〜25に示される。図22には、テオフィリンおよびカフェイン存在下のインプリントNIPAハイドロゲルのスペクトルを示す。周波数は、カフェイン存在下のテオフィリンについての較正曲線を確立するために使用されたものに由来した(図23)。テオフィリン存在下でカフェイン較正曲線を確立するために、同様の実験を行なった(図24、25)。以上のように、結果は、推定濃度および実際の濃度の間の非常に良好な相関関係示し、他の被験物質の存在下で1つの被験物質を定量することができるということを明確に示す。
【0086】
実施例8
ヒドロキシプロピルセルロースポリマーを使用して、同様の実験を行なった(図26)。HPCを架橋するための手順は、Liaoらの研究に基づく。1gのHPC粉末および0.1gのテオフィリンを48.9gのdH2Oに添加し、3日間撹拌して20mMのテオフィリンを含む均一な1重量%HPC溶液を形成した。次いで、40μLのジビニルスルホン(DVS)を該溶液に添加した。3時間撹拌した後、5滴の1M水酸化ナトリウムを溶液に添加し、pHを約12まで上げた。架橋反応は5時間続けた。
【0087】
次いで架橋ポリマーを、蒸留水に対して3日間かけて透析し、テオフィリン、塩化ナトリウム、および任意の遊離DVSを除去した。
【0088】
図27はテオフィリンの較正曲線を示す。化学構造がテオフィリンとほとんど同じであるために、干渉種としてカフェインを使用した。
【0089】
5組の分子インプリントHPC溶液を調製した。それぞれの組は、特有のカフェインの濃度を有し、テオフィリンの濃度は溶液ごとに異なった。同様に、カフェイン濃度は0〜10mMの範囲で一組目から順次上げていった(図28)。
【0090】
このデータは、カフェインの存在下でHPCポリマーの分子インプリントを使用してテオフィリンの濃度を測定することが可能であることを示す。
【0091】
実施例9
CMCおよびTNFα抗体をカップリングするための手順はWheatleyらの研究に基づく。0.5gのCMC粉末および0.84g NaClを49.5gの0.1Mリン酸バッファ、pH6.5に添加し、3日間撹拌して均一な1重量%CMC溶液を形成した。次いで、5mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および3mgのN-ヒドロキシ-スクシニミド(NHS)を溶液に添加して15分間混合した。続けて、20.6pmolのTNFα抗体を混合液に添加して、3時間かけてカップリングさせた。次いで、ポリマーを2日間かけて透析して反応しなかった任意のカップリング剤を除去し、最終的にpHを7.4(生理的pH)に調整した(図29)。
【0092】
この計画はセルロースポリマーの認識よりも、抗体中の分子認識部位に依存する。抗体は、生合成され、強力な特異的抗原認識部位を有し、典型的にnM-1の範囲の結合定数を有する、タンパク質または長鎖のアミノ酸である。これらは上述のEDCによりセルロースにカップリングする。
【0093】
図30は、TNFα抗体にカップリングしたCMCを使用して、タンパク質TNFαの濃度を測定することが可能であることを示す。
【0094】
図31は、生物学的/インビボ条件下での抗体カップリングCMCセンサー適用可能性を示す。血中で最も豊富なタンパク質でありかつ生理学的pHである生理学的濃度の血清アルブミンの存在下で、タンパク質TNFαの濃度を測定することが可能である。
【0095】
発明者らはこの研究のために、非セルロースデンドリマーを使用した(図32)。これらの(There)ポリマーは、その上に抗体が結合する非常に規則的な球を形成する。
【0096】
抗体をPAMAMデンドリマーにカップリングするために使用された手順は、0.01重量%ゲルを作製した(上述の1重量%CMCゲルとは異なり)以外はCMCと抗体のカップリングに使用される手順と同じである。
【0097】
図33は、TNFα抗体にカップリングしたPAMAMデンドリマーを使用してタンパク質TNFαの濃度を測定することが可能であることを示す。
【0098】
図34は、抗体カップリングデンドリマーがタンパク質TNFαに結合する場合に観察される周波数の特徴的な変化であると発明者が考えるものを示す。
【0099】
本発明は、その具体的な態様に関連して記載されるが、さらなる改変が可能であり、本出願は、一般的に、本発明の原則に従い、本発明が属する技術分野において公知かつ習慣的な実施内になされ、前述の本明細書中の実質的な特徴に適合され得、添付の特許請求の範囲の範囲内になされる本発明の開示から逸脱したものを含む本発明の任意の変更、使用または適用を含むことを目的とすることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)ヒドロゲルである。
【図2】図2は、ヒドロゲルの相転移の状態の図である。
【図3】図3は、ヒドロゲルの窒素パージ設備である。
【図4】図4は、流動試料セル実験設備である。
【図5】図5AおよびBは、NIPAの種々の温度での反射率の測定のFTである。
【図6】図6AおよびBは、NIPAの種々の温度での透過の測定のFTである。
【図7】図7AおよびBは、HPCの種々の温度での透過の測定のFTである。
【図8】図8は、テオフィリンインプリントNIPAヒドロゲルの図である。
【図9】図9は、テオフィリンを有するNIPA MIPポリマーの概略図である。
【図10】図10は、テオフィリンのないNIPA MIPポリマーの概略図である。
【図11】図11は、アルミニウム試料セル実験設備である。
【図12】図12は、32℃における1.7μM テオフィリンを用いたインプリントNIPAヒドロゲルの試料FTである。
【図13】図13は、32℃(A)、42℃(B)および合わせた温度(C)におけるテオフィリン較正直線である。
【図14】図14はテオフィリン較正直線である。
【図15】図15は、32℃(A)、42℃(B)および合わせた温度(C)におけるテオフィリン較正直線である。
【図16】図16は、テオフィリンおよびカフェインの分子構造である。
【図17】図17は、16.5μM、32℃におけるテオフィリンおよびカフェインのFTである。
【図18】図18は、テオフィリンおよびカフェインのFTである。
【図19】図19は、合わせた温度におけるカフェイン較正直線である。
【図20】図20はカフェイン較正直線である。
【図21】図21は、カフェインの存在下のテオフィリン較正曲線である。
【図22】図22は、テオフィリン(theophilline)およびカフェインを用いたインプリントNIPAヒドロゲルのFTである。
【図23】図23は、カフェインの存在下のテオフィリンに対して誘導した標準曲線である。
【図24】図24は、テオフィリンおよびカフェインを用いたインプリントNIPAヒドロゲルのFTである。
【図25】図25は、テオフィリンの存在下のカフェインに対して誘導した標準曲線である。
【図26】図26は、HPCポリマーの概略図である。
【図27】図27は、HPCポリマーを用いたテオフィリン較正曲線である。
【図28】図28は、カフェインを用いたテオフィリン較正曲線である。
【図29】図29は、抗体を有するCMCポリマーの概略図である。
【図30】図30は、抗体結合ポリマーを用いたTNFα較正曲線である。
【図31】図31は、アルブミンの存在下のTNFα較正曲線である。
【図32】図32は、デンドリマーポリマーの概略図である。
【図33】図33は、抗体結合デンドリマーポリマーを用いたTNFα較正曲線である。
【図34】図34は、タンパク質の存在下のデンドリマーのFTである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 1つ以上の標的分子を結合するための1つ以上の標的結合部位を含む超音波分子センサーを提供する工程、前記超音波分子センサーは標的結合状態および標的非結合状態を有し、前記超音波分子センサーへの前記1つ以上の標的分子の結合により超音波シグナルの調整が生じる;
- 前記超音波分子センサーと前記1つ以上の標的分子を接触させて標的結合状態の超音波分子センサーを生成する工程;ならびに
- 1つ以上の超音波周波数で、標的結合超音波分子センサーの超音波シグナルを得る工程、シグナルは少なくとも1つの標的分子の存在を示す調整を含む、
を含む、超音波コントラスト促進方法。
【請求項2】
シグナルが少なくとも1つの標的分子の存在を示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
調整が2つ以上の周波数の相対的強度値である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
調整が1つ以上の周波数のシフトである、請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
1つ以上の周波数がエンハーモニック周波数を含む、請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の周波数が1〜10Mhzに含まれる、請求項1〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の標的分子を定量することをさらに含む、請求項1〜6いずれか記載の方法。
【請求項8】
定量する工程が、標的分子の存在に特徴的な少なくとも1つの周波数のシグナル振幅を使用して標準曲線を作製する工程を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
定量する工程が、標的分子の濃度と相関する多重化周波数でのシグナル振幅の線形結合を確立することを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
標的分子結合部位が、アプタマー、抗体、抗体の可変領域、レセプター、核酸、タンパク質もしくはその一部、炭水化物、分子インプリントおよびそれらの組合せから選択される、請求項1〜9いずれか記載の方法。
【請求項11】
2つ以上の標的分子が同時に検出される、請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
標的分子を検出するために2つ以上の超音波分子センサーが使用される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
標的分子の検出がインサイチュである、請求項1〜12いずれか記載の方法。
【請求項14】
前記インサイチュ検出がインビボまたはインビトロである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記検出が被験体から得られた試料中で行なわれる、請求項1〜14いずれか記載の方法。
【請求項16】
前記試料が血液試料である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
被験体における標的分子の検出のために、超音波分子センサーが被験体に投与される、請求項13または14記載の方法。
【請求項18】
前記投与が経腸および非経口のいずれかから選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
非経口投与が皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、動脈内(i.a.)および静脈内(i.v.)の注射から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
超音波分子センサーがポリマーである、請求項1〜19いずれか記載の方法。
【請求項21】
ポリマーがハイドロゲルポリマーである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
ハイドロゲルポリマーがポリアクリルアミド、セルロースおよびアルギネートから選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ポリマーがデンドリマーである、請求項20記載の方法。
【請求項24】
標的分子の超音波検出のための超音波分子センサーの使用。
【請求項25】
超音波分子センサーがポリマーである、請求項24記載の使用。
【請求項26】
ポリマーがハイドロゲルポリマーである、請求項25記載の使用。
【請求項27】
ハイドロゲルポリマーがポリアクリルアミド、セルロースおよびアルギネートから選択される、請求項25記載の使用。
【請求項28】
ポリマーがデンドリマーである、請求項25記載の使用。
【請求項29】
前記標的分子が被験体中に存在する、請求項24〜28いずれか記載の使用。
【請求項30】
超音波分子センサーおよび該超音波分子センサーと連結した被験物質結合部位を含む化合物であって、標的結合状態および標的非結合状態を有し、前記標的非結合状態が超音波に対して実質的に透過性であり、前記標的結合状態が超音波感受性であり、被験物質結合部位が、被験物質の分子が被験物質結合部位に結合する場合に特性(charaterisitic)周波数で検出可能な超音波シグナルを生成するために充分な数であり、それによって前記化合物を標的結合状態にする、化合物。
【請求項31】
被験物質結合部位が分子インプリンティングにより生成される、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
被験物質結合部位がアプタマー、抗体、抗体の可変領域、レセプター、核酸、タンパク質もしくはその一部、炭水化物、分子インプリントおよびそれらの組合せから選択される、請求項30または31記載の化合物。
【請求項33】
約10ナノメートル〜約1000ミクロンの直径を有する、請求項30〜32いずれか記載の化合物。
【請求項34】
請求項30〜33いずれか記載の化合物および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
【請求項35】
- 1つ以上の被験物質を結合させるために、被験物質と、1つ以上の被験物質結合部位を含む超音波分子センサーを接触させる工程、前記超音波分子センサーは被験物質結合状態および被験物質非結合状態を有し、前記1つ以上の被験物質の前記超音波分子センサーへの結合により超音波シグナルの調整が生じる;ならびに
- 1つ以上の周波数において被験物質結合状態の超音波シグナルを得る工程、該シグナルは被験物質の存在を示す調整を含む、
を含む、被験物質を検出するための方法。
【請求項36】
シグナルが被験物質の量を示す、請求項35記載の方法。
【請求項37】
調整が2つ以上の周波数の相対的強度値である、請求項35または36記載の方法。
【請求項38】
調整が1つ以上の周波数のシフトである、請求項35〜37いずれか記載の方法。
【請求項39】
1つ以上の周波数がエンハーモニック周波数を含む、請求項35〜38いずれか記載の方法。
【請求項40】
1つ以上の周波数が1〜10Mhzに含まれる、請求項35〜39いずれか記載の方法。
【請求項41】
被験物質を定量する工程をさらに含む、請求項35〜40いずれか記載の方法。
【請求項42】
定量する工程が、被験物質の存在に特徴的な少なくとも1つの周波数のシグナル振幅を使用して標準曲線を確立することを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
定量する工程が、被験物質の濃度と相関する多重化周波数でのシグナル振幅の線形結合を作成することを含む、請求項41記載の方法。
【請求項44】
被験物質結合部位が、アプタマー、抗体、抗体の可変領域、レセプター、核酸、タンパク質もしくはその一部、炭水化物、分子インプリントおよびそれらの組合せから選択される、請求項35〜43いずれか記載の方法。
【請求項45】
2つ以上の被験物質が同時に検出される、請求項35〜44いずれか記載の方法。
【請求項46】
被験物質を検出するために2つ以上の超音波分子センサーが使用される、請求項35〜45いずれか記載の方法。
【請求項47】
被験物質の検出がインサイチュである、請求項35〜46いずれか記載の方法。
【請求項48】
前記インサイチュ検出がインビボまたはインビトロである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記検出が被験体から得られた試料中で行なわれる、請求項35〜48いずれか記載の方法。
【請求項50】
前記試料が血液試料である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
被験体における被験物質の検出のために、超音波分子センサーが被験体に投与される、請求項35〜48いずれか記載の方法。
【請求項52】
前記投与が経腸および非経口のいずれかから選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
非経口投与が皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、動脈内(i.a.)および静脈内(i.v.)の注射から選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
超音波分子センサーがポリマーである、請求項35〜53いずれか記載の方法。
【請求項55】
ポリマーがハイドロゲルポリマーである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
ハイドロゲルポリマーがポリアクリルアミド、セルロースおよびアルギネートから選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
ポリマーがデンドリマーである、請求項54記載の方法。
【請求項58】
被験物質の超音波検出のための超音波分子センサーの使用。
【請求項59】
超音波分子センサーがポリマーである、請求項58記載の使用。
【請求項60】
ポリマーがハイドロゲルポリマーである、請求項59記載の使用。
【請求項61】
ハイドロゲルポリマーがポリアクリルアミド(polyacrilamid)、セルロールおよびアルギネートから選択される、請求項60記載の使用。
【請求項62】
前記被験物質が被験体中に存在する、請求項58〜61いずれか記載の使用。
【請求項63】
被験物質-超音波分子センサー複合体の超音波検出のための装置であって、
i) 超音波パルスを生成するトランスデューサー;
ii) 超音波を検出するトランスデューサー;および
iii) 被験物質-超音波分子センサー複合体により発せられる超音波周波数を同定するための手段
を含む装置。
【請求項64】
被験物質の濃度を算出する手段をさらに含む、請求項63記載の装置。
【請求項65】
調波周波数およびエンハーモニック周波数を同定するための手段をさらに含む、請求項63または64記載の装置。
【請求項66】
2つ以上の周波数の相対的強度を比較するための手段をさらに含む、請求項63〜65いずれか記載の装置。
【請求項1】
- 1つ以上の標的分子を結合するための1つ以上の標的結合部位を含む超音波分子センサーを提供する工程、前記超音波分子センサーは標的結合状態および標的非結合状態を有し、前記超音波分子センサーへの前記1つ以上の標的分子の結合により超音波シグナルの調整が生じる;
- 前記超音波分子センサーと前記1つ以上の標的分子を接触させて標的結合状態の超音波分子センサーを生成する工程;ならびに
- 1つ以上の超音波周波数で、標的結合超音波分子センサーの超音波シグナルを得る工程、シグナルは少なくとも1つの標的分子の存在を示す調整を含む、
を含む、超音波コントラスト促進方法。
【請求項2】
シグナルが少なくとも1つの標的分子の存在を示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
調整が2つ以上の周波数の相対的強度値である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
調整が1つ以上の周波数のシフトである、請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
1つ以上の周波数がエンハーモニック周波数を含む、請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の周波数が1〜10Mhzに含まれる、請求項1〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の標的分子を定量することをさらに含む、請求項1〜6いずれか記載の方法。
【請求項8】
定量する工程が、標的分子の存在に特徴的な少なくとも1つの周波数のシグナル振幅を使用して標準曲線を作製する工程を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
定量する工程が、標的分子の濃度と相関する多重化周波数でのシグナル振幅の線形結合を確立することを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
標的分子結合部位が、アプタマー、抗体、抗体の可変領域、レセプター、核酸、タンパク質もしくはその一部、炭水化物、分子インプリントおよびそれらの組合せから選択される、請求項1〜9いずれか記載の方法。
【請求項11】
2つ以上の標的分子が同時に検出される、請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
標的分子を検出するために2つ以上の超音波分子センサーが使用される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
標的分子の検出がインサイチュである、請求項1〜12いずれか記載の方法。
【請求項14】
前記インサイチュ検出がインビボまたはインビトロである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記検出が被験体から得られた試料中で行なわれる、請求項1〜14いずれか記載の方法。
【請求項16】
前記試料が血液試料である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
被験体における標的分子の検出のために、超音波分子センサーが被験体に投与される、請求項13または14記載の方法。
【請求項18】
前記投与が経腸および非経口のいずれかから選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
非経口投与が皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、動脈内(i.a.)および静脈内(i.v.)の注射から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
超音波分子センサーがポリマーである、請求項1〜19いずれか記載の方法。
【請求項21】
ポリマーがハイドロゲルポリマーである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
ハイドロゲルポリマーがポリアクリルアミド、セルロースおよびアルギネートから選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ポリマーがデンドリマーである、請求項20記載の方法。
【請求項24】
標的分子の超音波検出のための超音波分子センサーの使用。
【請求項25】
超音波分子センサーがポリマーである、請求項24記載の使用。
【請求項26】
ポリマーがハイドロゲルポリマーである、請求項25記載の使用。
【請求項27】
ハイドロゲルポリマーがポリアクリルアミド、セルロースおよびアルギネートから選択される、請求項25記載の使用。
【請求項28】
ポリマーがデンドリマーである、請求項25記載の使用。
【請求項29】
前記標的分子が被験体中に存在する、請求項24〜28いずれか記載の使用。
【請求項30】
超音波分子センサーおよび該超音波分子センサーと連結した被験物質結合部位を含む化合物であって、標的結合状態および標的非結合状態を有し、前記標的非結合状態が超音波に対して実質的に透過性であり、前記標的結合状態が超音波感受性であり、被験物質結合部位が、被験物質の分子が被験物質結合部位に結合する場合に特性(charaterisitic)周波数で検出可能な超音波シグナルを生成するために充分な数であり、それによって前記化合物を標的結合状態にする、化合物。
【請求項31】
被験物質結合部位が分子インプリンティングにより生成される、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
被験物質結合部位がアプタマー、抗体、抗体の可変領域、レセプター、核酸、タンパク質もしくはその一部、炭水化物、分子インプリントおよびそれらの組合せから選択される、請求項30または31記載の化合物。
【請求項33】
約10ナノメートル〜約1000ミクロンの直径を有する、請求項30〜32いずれか記載の化合物。
【請求項34】
請求項30〜33いずれか記載の化合物および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
【請求項35】
- 1つ以上の被験物質を結合させるために、被験物質と、1つ以上の被験物質結合部位を含む超音波分子センサーを接触させる工程、前記超音波分子センサーは被験物質結合状態および被験物質非結合状態を有し、前記1つ以上の被験物質の前記超音波分子センサーへの結合により超音波シグナルの調整が生じる;ならびに
- 1つ以上の周波数において被験物質結合状態の超音波シグナルを得る工程、該シグナルは被験物質の存在を示す調整を含む、
を含む、被験物質を検出するための方法。
【請求項36】
シグナルが被験物質の量を示す、請求項35記載の方法。
【請求項37】
調整が2つ以上の周波数の相対的強度値である、請求項35または36記載の方法。
【請求項38】
調整が1つ以上の周波数のシフトである、請求項35〜37いずれか記載の方法。
【請求項39】
1つ以上の周波数がエンハーモニック周波数を含む、請求項35〜38いずれか記載の方法。
【請求項40】
1つ以上の周波数が1〜10Mhzに含まれる、請求項35〜39いずれか記載の方法。
【請求項41】
被験物質を定量する工程をさらに含む、請求項35〜40いずれか記載の方法。
【請求項42】
定量する工程が、被験物質の存在に特徴的な少なくとも1つの周波数のシグナル振幅を使用して標準曲線を確立することを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
定量する工程が、被験物質の濃度と相関する多重化周波数でのシグナル振幅の線形結合を作成することを含む、請求項41記載の方法。
【請求項44】
被験物質結合部位が、アプタマー、抗体、抗体の可変領域、レセプター、核酸、タンパク質もしくはその一部、炭水化物、分子インプリントおよびそれらの組合せから選択される、請求項35〜43いずれか記載の方法。
【請求項45】
2つ以上の被験物質が同時に検出される、請求項35〜44いずれか記載の方法。
【請求項46】
被験物質を検出するために2つ以上の超音波分子センサーが使用される、請求項35〜45いずれか記載の方法。
【請求項47】
被験物質の検出がインサイチュである、請求項35〜46いずれか記載の方法。
【請求項48】
前記インサイチュ検出がインビボまたはインビトロである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記検出が被験体から得られた試料中で行なわれる、請求項35〜48いずれか記載の方法。
【請求項50】
前記試料が血液試料である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
被験体における被験物質の検出のために、超音波分子センサーが被験体に投与される、請求項35〜48いずれか記載の方法。
【請求項52】
前記投与が経腸および非経口のいずれかから選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
非経口投与が皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、動脈内(i.a.)および静脈内(i.v.)の注射から選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
超音波分子センサーがポリマーである、請求項35〜53いずれか記載の方法。
【請求項55】
ポリマーがハイドロゲルポリマーである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
ハイドロゲルポリマーがポリアクリルアミド、セルロースおよびアルギネートから選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
ポリマーがデンドリマーである、請求項54記載の方法。
【請求項58】
被験物質の超音波検出のための超音波分子センサーの使用。
【請求項59】
超音波分子センサーがポリマーである、請求項58記載の使用。
【請求項60】
ポリマーがハイドロゲルポリマーである、請求項59記載の使用。
【請求項61】
ハイドロゲルポリマーがポリアクリルアミド(polyacrilamid)、セルロールおよびアルギネートから選択される、請求項60記載の使用。
【請求項62】
前記被験物質が被験体中に存在する、請求項58〜61いずれか記載の使用。
【請求項63】
被験物質-超音波分子センサー複合体の超音波検出のための装置であって、
i) 超音波パルスを生成するトランスデューサー;
ii) 超音波を検出するトランスデューサー;および
iii) 被験物質-超音波分子センサー複合体により発せられる超音波周波数を同定するための手段
を含む装置。
【請求項64】
被験物質の濃度を算出する手段をさらに含む、請求項63記載の装置。
【請求項65】
調波周波数およびエンハーモニック周波数を同定するための手段をさらに含む、請求項63または64記載の装置。
【請求項66】
2つ以上の周波数の相対的強度を比較するための手段をさらに含む、請求項63〜65いずれか記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公表番号】特表2009−529668(P2009−529668A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557844(P2008−557844)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000506
【国際公開番号】WO2007/105047
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507281890)マギル ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000506
【国際公開番号】WO2007/105047
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507281890)マギル ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
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