説明

超音波探傷データを処理するためのプログラム、処理装置及び処理方法

【課題】デジタル演算処理による超音波探傷データの処理方法を提供し、技術者の能力の差による欠陥の評価のバラツキを抑制する。
【解決手段】超音波探傷データ処理プログラムは、被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データをデジタル演算処理によって処理するためのプログラムであり、探傷データから得られる超音波画像から被検体の形状像を消去するための処理を、探傷データに対して行う形状識別処理ステップ(S05)と、形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像を認識し、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像と前記被検体に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定ステップ(S06)と、同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定ステップ(S07)とを演算装置に実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷データを処理するためのプログラム、処理装置及び処理方法に関しており、特に、超音波探傷データのデジタル演算処理に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁その他の構造体を非破壊的に検査するための技術として、超音波探傷技術が知られている。超音波探傷技術は、構造体の内部に欠陥が存在すると、その欠陥によって超音波が反射されることを利用して構造体を検査する技術である。超音波探傷では、超音波ビームが走査されながら構造体に入射され、構造体の各位置から得られた反射波の強度(エコー高さ)が超音波画像として表示される。構造体に欠陥が存在すると、超音波画像には、欠陥に対応するエコー像(欠陥像)が表れる。超音波画像に欠陥像が写っていることにより、欠陥の存在を知ることができる。加えて、欠陥像の大きさから欠陥の大きさを概略的に判断することができる。このように、超音波探傷技術は、欠陥を評価するための有力な手法の一つである。
【0003】
現状の超音波探傷技術の一つの問題は、超音波画像から欠陥を正しく評価するためには、欠陥の評価を行う技術者に相当なスキルが要求されることである。これは、超音波画像がそのまま欠陥の構造を表しているとはいえないことに起因する。第1に、超音波画像には、欠陥像のみならず、構造体の形状に対応するエコー像(形状像)が表れる。例えば、
超音波は構造体の表面によって反射されるから、超音波画像には、構造体の表面に対応するエコー像が現れる。欠陥を正しく評価するためには、超音波画像に写っているエコー像のそれぞれを、欠陥像と形状像とに区別することが必要である。しかしながら、特に欠陥像と形状像とが近接したり重なったりしている場合には、これらを正しく区別することは難しい。
【0004】
加えて、欠陥像の形状も、欠陥の構造そのものを示しているとはいえない。これは、超音波が反射される方向が欠陥の向きに依存することに起因している。欠陥の向きによっては欠陥によって反射された超音波が探触子によって検出されないことがある。例えば、欠陥の延伸方向が3次元的に変化している場合には一つの欠陥が超音波画像において複数の欠陥像に分離して表れることがある。実際には1つの大きな欠陥がある場合でも、超音波画像では、複数の小さな欠陥像が表れることがあり得る。
【0005】
超音波探傷技術に従事する技術者は、超音波画像に写っているエコー像の形状や配置、検査対象の構造体の構造、その他の様々な要因を考慮して、形状像と欠陥像とを正しく識別し、更に、実際に存在する欠陥の形状を正しく推定して欠陥の大きさを判断することが求められる。しかしながら、このような判断を正しく行うことは、経験に乏しい技術者には難しい。このため、現状では、超音波探傷による欠陥の評価には、技術者の能力の差によるバラツキが避けがたい。
【0006】
技術者の能力の差による欠陥の評価のバラツキを抑制するためには、超音波探傷によって得られたデータ(探傷データ)を特定のデジタル演算処理によって処理することによって欠陥を評価することが有効である。特開2005−274444号公報は、探傷データをデジタル演算処理することによって欠陥を評価するための超音波探傷データの処理方法を開示している。公知のその超音波探傷データの処理方法は、超音波画像に現れている一対のエコー像を検出し、その一対のエコー像において輝度がピークを示す輝度ピーク座標を読み取り、その輝度ピーク座標のy座標差と画素分解能とから指示高さを演算するというものである。
【0007】
しかしながら、発明者の検討によれば、この公報に開示されている超音波探傷データの処理方法には、更に改良する余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−274444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、より改良されたデジタル演算処理による超音波探傷データの処理方法を提供し、これにより、技術者の能力の差による欠陥の評価のバラツキを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下に述べられる手段を採用する。その手段の記述には、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]の記載との対応関係を明らかにするために、[発明を実施するための形態]で使用される番号・符号が付加されている。但し、付加された番号・符号は、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲を限定的に解釈するために用いてはならない。
【0011】
本発明による超音波探傷データ処理プログラムは、被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データ(20)をデジタル演算処理によって処理するためのプログラムである。当該プログラムは、
探傷データ(20)から得られる超音波画像から被検体(2)の形状に対応する形状像を消去するための処理を、探傷データ(20)に対して行う形状識別処理ステップ(S05)と、
形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像(51)を認識し、前記欠陥像(51)のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像(51)と前記被検体(2)に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定ステップ(S06)と、
同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像(51)から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定ステップ(S07)
とを演算装置(17)に実行させる。
【0012】
前記形状識別処理ステップ(S05)は、
前記超音波画像に表れているエコー像(41)に対して、前記エコー像(41)を包囲する矩形の領域である欠陥候補領域(42)を定義する欠陥候補領域定義ステップ(S22)と、
欠陥候補領域(42)のうち、被検体(2)の形状データに基づいて設定された形状識別ゲート領域(34)に重なる領域を、形状候補領域(43)として抽出する抽出ステップ(S23)と、
形状候補領域(43)に含まれているエコー像(41)が、エコー高さのピーク(45a、45b)を複数有する場合に、その形状候補領域(43)をエコー高さの分布の谷の部分を境界となるように分割する分割ステップ(S25〜S28)と、
前記分割ステップ(S25〜S28)の後、形状候補領域(43)の位置を代表する代表点(46)を設定する代表点設定ステップ(S29)と、
代表点(46)が被検体(2)の形状データに基づいて設定された形状識別ゲート領域(34)に含まれるとき、前記エコー像(41)を消去されるべき形状像であると判定する形状判定ステップ(S32)
とを備えることが好ましい。
【0013】
代表点設定ステップ(S29)は、
エコー像(41)に対して、エコー高さが所定値以上であるピークに対応するエコーピーク領域(47)を認識するステップ(S41、S42)と、
エコーピーク領域(47)の中心を代表点(46)として設定するステップ(S45)
とを備えることが好ましい。
【0014】
その代わりに、代表点設定ステップ(S29)は、
形状候補領域(43)の内部のエコー高さのデータのうち”0”でない有効値データの、前記超音波探傷に用いられるビームの路程方向についての平均値である路程方向平均値の分布を算出するステップと、
前記有効値データの、前記路程方向に垂直な垂直方向についての平均値である垂直方向平均値の分布を算出するステップと、
前記代表点(46)を、前記路程方向平均値の分布のピークの位置にある路程方向に延伸する直線と、前記垂直方向平均値のピークの位置にある前記垂直方向に延伸するラインの交点として定義するステップ
とを備えることも好ましい。
【0015】
分割ステップ(S25〜S28)は、前記超音波探傷に用いられるビームの路程方向に前記形状候補領域(43)を分割する路程方向分離ステップ(S25)を含むことが好ましい。この場合、分割ステップ(S25〜S28)は、更に、路程方向分離ステップ(S25)の後に、前記Bスコープ画像において前記路程方向に垂直な方向に前記形状候補領域(43)を更に分割する垂直方向分離ステップ(S27)を含むことが好ましい。
【0016】
この場合、垂直方向分離ステップ(S27)は、
前記形状候補領域(43)の前記路程方向におけるエコー高さの最大値の、前記路程方向に垂直な垂直方向の分布を示す最大値曲線を抽出する最大値曲線抽出ステップと、
前記形状候補領域(43)を、前記最大値曲線が極小を示す部分を境界として分割するステップ
とを含むことが好ましい。
【0017】
分割ステップ(S25〜S28)は、
前記Bスコープ画像において前記超音波探傷に用いられるビームの路程方向と垂直な方向に前記形状候補領域を分割する垂直方向分離ステップ(S25’)と、
前記垂直方向分離ステップの後に、前記路程方向前記形状候補領域を更に分割する垂直方向分離ステップ(S27’)とを含むことも好適である。
【0018】
この場合、前記路程方向分離ステップ(S27’)は、
前記形状候補領域の前記垂直方向におけるエコー高さの最大値の、前記路程方向の分布を示す最大値曲線を抽出する最大値曲線抽出ステップと、
前記形状候補領域を、前記最大値曲線の谷の部分を境界として分割するステップ
とを含むことが好ましい。
【0019】
前記同一性判定ステップ(S06)は、
前記欠陥像(51)の位置を代表する代表点(53)を定める欠陥像代表点設定ステップ(S52)と、
前記代表点(53)の間の距離から、前記欠陥像(51)のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを判断する判断ステップ(S53、S54)
とを具備することが好ましい。
【0020】
この判断ステップ(S53、S54)は、同一の断面の2つの欠陥像(51)の前記代表点の間の距離から、前記2つの欠陥像(51)が同一の欠陥に起因するか否かを判断するステップを含むことがあり、また、異なる断面の2つの欠陥像(51)の前記代表点の間の前記断面に平行な面内方向における距離から、前記2つの欠陥像(51)が同一の欠陥に起因するか否かを判断するステップを含むことがある。
【0021】
欠陥像代表点設定ステップ(S52)は、欠陥像(51)のうちの、エコー高さが所定値以上であるエコーピーク領域を囲むように矩形領域(52)を定めるステップと、矩形領域(52)の対角線の交点を前記代表点(53)として定めるステップとを備えることが好ましい。その代わりに、欠陥像代表点設定ステップ(S52)は、欠陥像(51)の内部のエコー高さの、前記超音波探傷に用いられるビームの路程方向についての平均値である路程方向平均値の分布を算出するステップと、
前記欠陥像の内部のエコー高さの、前記路程方向に垂直な垂直方向についての平均値である垂直方向平均値の分布を算出するステップと、
前記代表点(53)を、前記路程方向平均値の分布のピークの位置にある路程方向に延伸する直線と、前記垂直方向平均値のピークの位置にある前記垂直方向に延伸するラインの交点として定義するステップ
とを備えることも好ましい。
【0022】
前記超音波探傷において、所定の走査方向に沿って探触子(6)を走査しながら、複数の断面について探傷データ(20)が取得される場合、当該超音波探傷データ処理プログラムは、更に、前記複数の断面のうちの対象断面の探傷データ(20)を、前記対象断面の前記走査方向前方及び/又は前記走査方向後方に隣接する所定数の隣接断面の探傷データを用いて修正する断面間強調処理ステップ(S10)を演算装置(17)に実行させることが好ましい。この場合、形状識別処理ステップ(S05)では、被検体(2)の形状に対応する形状像を消去するための処理が、修正された前記探傷データ(20)について行われる。その代わりに、断面間強調処理ステップ(S10)では、前記形状識別処理ステップが行われた後の探傷データ(20)を、隣接断面の探傷データを用いて修正する処理が行われてもよい。
【0023】
断面間強調処理ステップ(S10)では、前記対象断面の各位置のエコー高さのデータが前記隣接断面の同一位置のエコー高さに応じて増加されるように前記対象断面の前記探傷データが修正されることが好ましい。
【0024】
断面間強調処理ステップ(S10)が行われる場合、寸法同定ステップ(S07)では、同一の欠陥に対応する欠陥像(51)が現れている連続した断面の数と、前記対象断面の前記探傷データの修正に用いられた前記隣接断面の数に基づいて、前記同一の欠陥の長さが同定されることが好ましい。
【0025】
当該超音波探傷データ処理プログラムは、更に、探触子(6)と被検体(2)との間のカップリングが正しく保たれていたか否かを判断するカップリングチェックステップを前記演算処理に実行させることが好ましい。この場合、カップリングチェックステップは、被検体(2)の所定の監視範囲(32)内の各位置におけるエコー高さと閾値とを比較することにより、探触子(6)が自動的に走査されている間において探触子(6)と被検体(2)との間のカップリングが正しく保たれていたか否かを判断するステップを備え、前記閾値は、探触子(6)と対照用構造体との間のカップリングが得られている状態で探触子(6)によって対照用構造体に超音波を入射して測定された、対照用構造体の所定の健全部(31)の各位置におけるエコー高さから決定されていることが好ましい。この場合、対照用構造体と被検体(2)とは、同一物であることが好ましい。
【0026】
本発明による超音波探傷データ処理装置は、被検体(2)に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データ(20)をデジタル演算処理によって処理するための超音波探傷データ処理装置である。当該超音波探傷データ処理装置は、探傷データ(20)から得られる超音波画像から被検体(2)の形状に対応する形状像を消去するための処理を、探傷データ(20)に対して行う形状識別処理手段(17、18)と、形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像(51)を認識し、欠陥像(51)のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像(51)と前記被検体(2)に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定手段(17、18)と、同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像(51)から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定手段(17、18)とを具備する。
本発明による超音波探傷データ処理方法は、被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データ(20)をデジタル演算処理によって処理するためのプログラムである。当該超音波探傷データ処理方法は、
探傷データ(20)から得られる超音波画像から被検体(2)の形状に対応する形状像を消去するための処理を、探傷データ(20)に対して行う形状識別処理ステップ(S05)と、
形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像(51)を認識し、前記欠陥像(51)のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像(51)と前記被検体(2)に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定ステップ(S06)と、
同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像(51)から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定ステップ(S07)
とを備えている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、より改良されたデジタル演算処理による超音波探傷データの処理方法を提供し、これにより、技術者の能力の差による欠陥の評価のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明による超音波探傷データの処理方法の第1の実施形態において使用される自動超音波探傷システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、自動超音波探傷システムに含まれる超音波探傷データ処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図1の自動超音波探傷システムによって探傷データを取得する手順を示す概念図である。
【図4】図4は、図1の自動超音波探傷システムによって探傷データを取得する手順を示す概念図である。
【図5A】図5Aは、探傷データに含まれるAスコープデータの例を示す概念図である。
【図5B】図5Bは、探傷データに含まれるAスコープデータの他の例を示す概念図である。
【図6】図6は、Bスコープ画像の内容を概念的に示す図である。
【図7】図7は、探傷データから生成されるBスコープ画像の例を示す概念図である。
【図8】図8は、第1の実施形態における超音波探傷データの処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、カップリング処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、健全部探傷データの採取の手順を示す断面図である。
【図11】図11は、カップリングチェック処理の対象である監視範囲を示す断面図である。
【図12A】図12Aは、カップリングが良好である場合のAスコープデータの一例を示すグラフである。
【図12B】図12Bは、カップリングが不良である場合のAスコープデータの一例を示すグラフである。
【図13】図13は、評価ゲート設定処理で設定される評価ゲートを示す図である。
【図14】図14は、形状識別処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】図15は、形状識別処理において設定される、形状識別ゲートを示す図である。
【図16】図16は、評価ゲートと形状識別ゲートの関係を示す図である。
【図17A】図17Aは、エコー像に対して定義された欠陥候補領域を示す図である。
【図17B】図17Bは、欠陥候補領域から抽出された形状候補領域を示す図である。
【図17C】図17Cは、Aスコープ分離処理によって分離されたエコー像と、それに対して定義された形状候補領域を示す図である。
【図17D】図17Dは、フォーカルロー方向分離処理によって分割された形状候補領域を示す図である。
【図17E】図17Eは、フォーカルロー方向分離処理の後における断面内領域認識処理によって認識された形状候補領域を示す図である。
【図17F】図17Fは、形状像が消去されたBスコープ画像の概念図である。
【図18A】図18Aは、Aスコープ分離処理が行われる前のAスコープデータを示す図である。
【図18B】図18Bは、Aスコープ分離処理が行われた後のAスコープデータを示す図である。
【図19A】図19Aは、フォーカルロー方向分離処理を説明する概念図である。
【図19B】図19Bは、フォーカルロー方向分離処理を説明する概念図である。
【図19C】図19Cは、フォーカルロー方向分離処理を説明する概念図である。
【図20】図20は、フォーカルロー方向分離の条件を示すグラフである。
【図21】図21は、形状識別処理における、領域代表点の第1の設定手法を示すフローチャートである。
【図22A】図22Aは、抽出されたエコーピーク領域を示す図である。
【図22B】図22Bは、エコーピーク領域に対して定義されたピーク矩形領域と領域代表点とを示す図である。
【図22C】図22Cは、領域代表点の第2の設定手法を示す図である。
【図23A】図23Aは、他の実施形態における形状識別処理の手順を示すフローチャートである。
【図23B】図23Bは、認識されたエコー像を示す図である。
【図23C】図23Cは、フォーカルロー分離処理によって分離されたエコー像と、それに対して定義された形状候補領域を示す図である。
【図23D】図23Dは、路程方向分離処理によって分割された形状候補領域を示す図である。
【図23E】図23Eは、フォーカルロー方向分離処理の後における断面内領域認識処理によって認識された形状候補領域を示す図である。
【図24】図24は、形状像と欠陥像とを識別するための処理を説明する概念図である。
【図25】図25は、欠陥の同一性の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図26A】図26Aは、欠陥像に定義された領域代表点を示す図である。
【図26B】図26Bは、欠陥像に領域代表点を定める一の方法を示す図である。
【図26C】図26Cは、欠陥像に領域代表点を定める他の方法を示す図である。
【図27】図27は、同一の断面に表れている複数の欠陥像が同一の欠陥に起因するものか否かを判定する処理を示す図である。
【図28】図28は、隣接する断面に表れている欠陥像が同一の欠陥に起因するものか否かを判定する処理を示す図である。
【図29】図29は、欠陥の延伸方向が3次元的に変化すると、隣接する断面の間の欠陥像の対応付けが正しく行われないことがある理由を説明する図である。
【図30】図30は、第2の実施形態における超音波探傷データの処理方法を示すフローチャートである。
【図31】図31は、第2の実施形態における断面間強調処理を説明する図である。
【図32】図32は、第2の実施形態における断面間強調処理を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、本発明による超音波探傷データの処理方法が、以下に述べられるような超音波探傷検査に適用される。
【0030】
図1は、本実施形態において使用される自動超音波探傷システム1の構成、及び被検体2の構成を示している。本実施形態では、自動超音波探傷システム1によって探傷される被検体2は、T字隅肉溶接によって溶接された2枚の鋼板3、4である。以下では、鋼板3、4の溶接部5、及びその周辺の探傷が行われる場合について説明が行われるが、被検体2がこのような構造に限定されないことは、当業者に自明であろう。
【0031】
本実施形態では、自動超音波探傷システム1は、探触子6と、探触子6を所望の走査方向に走査する走査装置7と、制御装置8と、表示装置9と、超音波探傷データ処理装置10を備えている。本実施形態では、鋼板3、4の溶接線に沿った方向に探触子6の走査方向が定められる。以下の説明では、走査方向をz軸方向とし、走査方向に垂直で、且つ、
鋼板3の表面に平行な方向をx軸方向とするxyz直交座標系が使用されることに留意されたい。
【0032】
探触子6は、制御装置8から供給される電気信号に応答して超音波ビームを被検体2に入射し、更に、被検体2から反射波を受けとって反射波に対応する電気信号を生成する。探触子6は、探触子6はxy平面に平行な平面内で一列に並べられた複数の超音波振動子で構成されており、探触子6は、xy平面に平行な面内で超音波ビームを電子的に走査するフェーズドアレイとして機能することが可能である。
【0033】
走査装置7は、レール11と探触子保持機構12とを備えている。レール11は、走査方向、即ち、被検体2の溶接線の方向に延設されている。探触子保持機構12は、探触子6を保持する。探触子保持機構12は、レール11の上に探傷方向に移動可能に載置されており、探触子6の走査は、探触子保持機構12がレール11の上を移動することによって行われる。探触子6の走査方向の位置は、レール11に設けられたエンコーダ(図示されない)によって検出可能である。
【0034】
制御装置8は、探触子6を制御すると共に、被検体2の探傷を行うための様々な演算を行う。具体的には、制御装置8は、探触子6に電気信号を供給して探触子6に超音波ビームを発生させる。更に、制御装置8は、探触子6が受け取った反射波の波形に対応するデータである探傷データ20を記憶装置(図示されない)に保存する。制御装置8は、更に、探傷データ20から様々な超音波画像、即ち、Aスコープ画像、Bスコープ画像、Cスコープ画像、Dスコープ画像を生成し、表示装置9に表示する機能を有している。
【0035】
超音波探傷データ処理装置10は、制御装置8から通信回線を介して探傷データ20を受け取り、受け取った探傷データについて様々なデジタル演算処理を行い、これにより、被検体2に存在する欠陥の分析、特に、欠陥の大きさの算出を行う。図2は、超音波探傷データ処理装置10の構成を示すブロック図である。図2に示されているように、超音波探傷データ処理装置10は、キーボードやマウス等の入力装置13と、表示装置14と、制御装置8と通信するための通信装置15と、記憶装置16と、演算装置17とを備えている。入力装置13及び表示装置14は、技術者が超音波探傷データ処理装置10を操作するためのヒューマンインターフェースとして使用される。通信装置15は、制御装置8から探傷データ20を受け取るために使用される。記憶装置16には、探傷データ20を処理するための超音波探傷データ処理プログラム18と、探傷データを処理するために使用される様々なデータとが保存される。超音波探傷データ処理プログラム18が演算装置17によって実行されることにより、探傷データに対して所望の処理が行われる。記憶装置16に保存されるデータには、欠陥が存在しない部分について取得された探傷データである健全部探傷データ19aと、被検体2の形状を示す形状情報データ19bとが含まれている。後述されるように、健全部探傷データ19aは、被検体2と探触子6との間のカップリングが正しく確立されているか否かを確認するために使用される。形状情報データ19bは、被検体2の形状に依存した処理を行うときに使用される。なお、制御装置8から超音波探傷データ処理装置10への探傷データ20の供給は、通信回線ではなく、記憶媒体(例えば、光ディスク)によって行われることも可能である。
【0036】
本実施形態の自動超音波探傷システム1は、図3に示されているように、超音波ビームをxy平面内については電子的に走査し、z軸方向については機械的に走査するように構成されている。超音波ビームは、探触子6と被検体2との接触面の任意の位置から任意の方向に向けて入射可能である。詳細には、探触子6を構成する複数の超音波振動子のうち、連続して並ぶ所定数の超音波振動子が選択され、その選択された超音波振動子が励起されて超音波ビームが被検体2に入射される。励起される超音波振動子の組み合わせは、しばしば「フォーカルロー」と呼ばれる。例えば、6個の超音波振動子が同時に励起される場合には、探触子6の左端から6番目までの超音波振動子が、一の「フォーカルロー」を構成し、左から2番目から7番目までの超音波振動子が、他の「フォーカルロー」を構成する。超音波ビームが入射される位置は、探触子6を構成する超音波振動子のうちの励起される超音波振動子の組み合わせ(すなわち、フォーカルロー)によって定まり、超音波ビームが入射される方向は、励起される超音波振動子に供給される電気信号の位相差によって定まる。
【0037】
超音波ビームの経路特性は、励起される超音波振動子の組み合わせ、及び超音波ビームの入射方向(即ち、電気信号の位相差)で決定される。例えば、図3に示されているように、左端から6番目までの超音波振動子が励起される超音波振動子として選択され、それらの超音波振動子に所定の位相差の電気信号が供給されることにより、フォーカルロー”
1”の超音波ビームが発生される。その超音波ビームの反射波の波形が、フォーカルロー”1”のAスコープデータとして取得される。同様に、左から2番目から7番目までの超音波振動子が励起される超音波振動子として選択され、それらの超音波振動子に所定の位相差の電気信号が供給されることにより、フォーカルロー”2”の超音波ビームが発生される。このように、励起される超音波振動子の組み合わせを変更することにより(即ち、異なるフォーカルローによって超音波ビームを発生することにより)、超音波ビームは、xy平面内において走査される。
【0038】
自動超音波探傷システム1による探傷データ20の取得は、下記の手順で行われる。図4を参照して、まず、走査装置7によって探触子6が被検体2の所望の断面iに位置合わせされる。その断面iのあるフォーカルローが選択され、そのフォーカルローについてAスコープデータが取得される。自動超音波探傷システム1によって取得される探傷データ20は、フォーカルローを識別する識別子と、各フォーカルローのAスコープデータ(即ち、各フォーカルローについて発生された超音波ビームの反射波の波形を示すデータ)で構成される。
【0039】
図5Aに示されているように、本実施形態では、Aスコープデータは、当該フォーカルローの各路程におけるエコー高さ(即ち、反射波の信号レベル)として記述される。図5には、フォーカルロー”1”〜”N”の複数のAスコープデータ21‐1〜21‐Nが図示されている。Aスコープデータにおいて、エコー高さは、所定の数値範囲の数値で、本実施形態では0以上100以下の数値で表現される。ただし、反射波の信号レベルが所定値以上である場合、図5Bに示されているように、Aスコープデータに記述されるエコー高さは数値範囲の上限値と定められる。同様の手順により、断面iの規定されたフォーカルローの全てについて、Aスコープデータが取得される。
【0040】
続いて探触子6が走査方向(z軸方向)に移動され、隣接する断面i+1に位置合わせされる。断面i+1についても同様に、規定されたフォーカルローの全てについて、Aスコープデータが取得される。同様な手順が被検体2の所望の全ての断面について繰り返されることにより、被検体2全体について探傷データ20が取得される。本実施形態では、
Aスコープデータが取得されるフォーカルローは、全ての断面について同一である。即ち、同一のフォーカルローの同一の路程のエコー高さのデータは、全ての断面の同一位置のエコー高さのデータを表している。
【0041】
取得された探傷データ20を演算処理することにより、様々な超音波画像、即ち、Bスコープ画像、Cスコープ画像、Dスコープ画像を得ることができる。例えば、ある断面について得られたAスコープデータからは、当該断面のBスコープ画像を生成することができる。図6は、Bスコープ画像の内容を概念的に示す図であり、図7は、Bスコープ画像
の一例を示す概念図である。図6を参照して、Bスコープ画像は、被検体2のxy平面に平行な(即ち、走査方向に垂直な)断面の各位置におけるエコー高さを色調又は階調によって表す画像である。Bスコープ画像は、各フォーカルローから発生された超音波ビームの路程と超音波ビームの入射角度から、エコーが発生した断面の位置を特定し、更に、Bスコープ画像における当該位置の階調や色を、エコーのエコー高さに応じて決定することによって作成される。例えば、図6に示されているように被検体2の形状に起因して発生する形状エコー22と、被検体2に存在する欠陥に起因して発生する欠陥エコー23とが探触子6によって検出された場合には、図7に示されているように、Bスコープ画像には、形状エコー22に対応するエコー像である形状像24と、欠陥エコー23に対応するエコー像である欠陥像25とが現れる。図7において、横軸は、超音波ビームが入射される位置(即ち、励起される超音波振動子の組み合わせ)を示しており、θは、超音波ビームの入射方向を示している。ある断面のBスコープ画像は、当該断面において欠陥が存在すると考えられる位置を視覚的に示巣ことを可能にする。
【0042】
図7に示されているように、被検体2に対して超音波探傷を行うことによって得られるBスコープ画像には、主として、2種類のエコー像:形状像24と欠陥像25とが現れる。形状像24とは、被検体2の形状を表すエコー像であり、欠陥像25とは、被検体2に存在する欠陥に対応するエコー像である。形状像24と欠陥像25とを正しく識別し、更
に、欠陥像25から欠陥の大きさを正しく判断するための技術を提供することが、本実施形態の超音波探傷データの処理方法の主題の一つである。以下、本実施形態の超音波探傷データの処理方法が詳細に説明される。
【0043】
図8は、本実施形態における超音波探傷データの処理方法を示すフローチャートである。本実施形態における超音波探傷データの処理方法では、探傷データの読み込み処理(ステップS01)、カップリングチェック処理(ステップS02)、閾値カット処理(ステップS03)、評価ゲート設定処理(ステップS04)、形状識別処理(ステップS05)、欠陥の同一性の判定処理(ステップS06)、欠陥の位置・寸法の自動同定、及び欠陥のリストアップ処理(ステップS07)、技術者による修正処理(ステップS08)、最終欠陥リストの作成処理(ステップS09)が行われる。これらの処理は、超音波探傷データ処理プログラム18によって行われる。以下、各処理が詳細に説明される。
【0044】
ステップS01:探傷データの読み込み
本実施形態における超音波探傷データの処理では、まず、探傷データ20が超音波探傷データ処理装置10に読み込まれる。探傷データ20が、通信回線を介して制御装置8から超音波探傷データ処理装置10に送られ、記憶装置16に保存される。以下では、探傷データ20について様々な処理が行われる。ただし、超音波探傷データ処理装置10に読み込まれたオリジナルの探傷データ20は、記憶装置16に保存され、必要に応じて参照される。
【0045】
ステップS02:カップリングチェック
続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、カップリングチェック処理を行う。カップリングチェック処理とは、被検体2と探触子6とのカップリングを確認するための処理である。被検体2と探触子6との間のカップリングが正しく取れていない状態で超音波探傷を行うと、超音波の被検体2への入射や被検体2からの反射波の検出が正しく行われず、したがって、正しい探傷データ20が得られない。カップリングチェック処理では、探触子6が走査されている間に、被検体2と探触子6とが正しくカップリングされた状態が維持されていることが確認される。
【0046】
図9は、カップリングチェック処理の手順を説明する図である。被検体2の自動探傷を行う前に健全部探傷データ19aが予め取得され、取得された健全部探傷データ19aが記憶装置16に保存される(ステップS11)。健全部探傷データ19aとは、カップリングチェックのための閾値を決定するために使用される探傷データであり、被検体2と探触子6との間のカップリングが正しく保たれていることを技術者の目視によって確認した状態で取得される。健全部探傷データ19aの採取の際には、表示装置9に超音波画像が表示され、技術者は、表示された超音波画像から探触子6と被検体2との間のカップリングが正しく保たれていることを確認する。
【0047】
図10に示されているように、健全部探傷データ19aの取得は、被検体2のある断面について行われ、且つ、少なくとも、当該断面に予め定義された健全部31を含む範囲について行われる。健全部探傷データ19aが採取されるフォーカルローおよび超音波ビームの入射角度は、健全部31の全体を少なくともカバーするように決定される。健全部31としては、欠陥が存在しないと考えられる部分が選択される。被検体2の形状から欠陥が存在しない部分を考察することは、経験上可能である。健全部31は、被検体2の表面、及び溶接部5から離れているように選択される。健全部31は、欠陥を含まない部分であるから、健全部31の各位置から得られるエコーは、全て林状エコーである。
【0048】
図9に示されているように、健全部探傷データ19aの採取の後、健全部探傷データ19aから閾値が決定される(ステップS12)。より具体的には、超音波探傷データ処理装置10は、健全部探傷データから健全部31の各位置から得られるエコーのエコー高さを抽出し、そのエコー高さの平均値を算出する。その平均値が閾値として決定される。
【0049】
健全部探傷データ19aの取得(ステップS11)と、閾値の決定(ステップS12)は、探傷データ20の処理を行う毎に実行する必要はない。閾値が一旦決定されれば、その閾値を用いて、別の探傷データ20について再度にカップリングチェック処理を行うことが可能である。
【0050】
続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、ステップS12で決定された閾値を用いてカップリングチェックを行う(ステップS13)。より具体的には、図11に示されているように、被検体2には、予め監視範囲32が定められており、超音波探傷データ処理プログラム18は、その監視範囲32の各位置におけるエコー高さを示すデータを、
探傷データ20から抽出する。更に超音波探傷データ処理装置10は、監視範囲32の各位置におけるエコー高さを示すデータと、ステップS02で得られた閾値とを比較し、その比較結果に基づいてカップリングチェックを行う。
【0051】
詳細には、超音波探傷データ処理プログラム18は、当該フォーカルローの監視範囲32内のエコー高さが閾値を超える位置の数に基づいて、ある断面のあるフォーカルローについての探傷データ20の取得時に探触子6と被検体2とのカップリングが正しく保たれていたか否かを判断する。超音波探傷データ処理プログラム18は、ある断面のあるフォーカルローの監視範囲32内に、エコー高さが閾値を超える位置が所定数以上存在する場合、当該フォーカルローの探傷データの取得時に探触子6の当該フォーカルローによる超音波の入射位置と被検体2とのカップリングが正しく保たれていたと判断する。そうでない場合、超音波探傷データ処理プログラム18は、カップリング不良が発生していたと判断する。
【0052】
例えば、図12Aに示されているように、ある断面のあるフォーカルローのAスコープデータに、エコー高さが閾値を超える位置が所定数以上、現れている場合には、超音波探傷データ処理プログラム18は、カップリングが正しく保たれていたと判断する。一方、図12Bに示されているように、エコー高さが閾値を超える位置の数が所定数に満たない場合(図5Bでは、エコー高さが閾値を超える位置の数が0である)、超音波探傷データ処理プログラム18は、当該フォーカルローの探傷データ20の取得時にカップリング不良が発生していたと判断する。
【0053】
カップリング不良を検出すると、超音波探傷データ処理プログラム18は、カップリング不良が発生した断面及びフォーカルローを示すカップリング不良情報を生成し、カップリング不良情報を表示装置14から出力する。
【0054】
各断面の監視範囲32は、健全部探傷データ19aが採取された断面の健全部31と相違する位置に定められることは許容される。しかしながら、各断面の監視範囲32と健全部31とは、同一の位置に定められることが好ましい。即ち、各断面の監視範囲32のxy平面への投影は、健全部31のxy平面への投影と同一の範囲であることが好ましい。
このように監視範囲32を決定することにより、カップリングが正しく保たれた状態で自動探傷の際に得られた探傷データに現れる林状エコーの高さと、健全部探傷データ位置に現れる林状エコーの高さとを同一にすることができる。これは、カップリングを確実にチェックするために好適である。
【0055】
健全部探傷データ19aは、被検体2ではなく、被検体2と同一の材料で形成された構造体、又は被検体2と同一の製造工程で作製された構造体から取得されることも可能である。林状エコーは、概ね材質で決定されるから、被検体2と同一の材料で形成された別の構造体や、同一の製造工程で作製された別の構造体から健全部探傷データ19aを取得しても、概ね適切な閾値を決定することが可能である。ただし、検査されるべき被検体2そのものを用いて健全部探傷データを取得することは、材料や製造工程のばらつきがあっても閾値を決定できる点で好適である。
【0056】
ステップS03:閾値カット処理
カップリングチェック処理に続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、閾値カット処理を行う。閾値カット処理では、所定の閾値よりも小さいエコー高さのデータを全て0に置換する処理が、探傷データ20に対して行われる。これにより、バックグラウンドレベルのエコーが全て除去される。この閾値カット処理は、超音波画像に現れるエコー像を互いに分離する役割も有している。超音波画像のある位置のエコー高さが0でない(即ち、所定の閾値以上である)場合には、その位置は、何からのエコー像(例えば、形状像や欠陥像)が存在する領域に属しており、一方、ある位置のエコー高さが0であれば、その位置は、何らのエコー像も存在しない領域に属している。
【0057】
ステップS04:評価ゲート設定
閾値カット処理に続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、評価ゲート設定処理を行う。評価ゲート設定処理とは、被検体2に評価ゲート33を設定するための処理である。評価ゲート33とは、欠陥が評価される対象となる領域のことである。評価ゲート設定処理では、探傷データ20のうち評価ゲート33の外側の位置のエコー高さのデータを全て0に置換する処理が行われる。これにより、被検体2のうち、評価ゲート33の外側の領域については、欠陥の評価は行われない。
【0058】
図13は、評価ゲート33の一例を示す図である。本実施形態では、鋼板3の表面3aから被検体2の内部方向に向かって所定のオフセットだけ離れた位置に、評価ゲート33の上端(評価ゲート上端33a)が設定され、更に、鋼板3の裏面3b及び溶接部5の表面5aから所定のオフセットだけ離れた位置に、評価ゲート33の下端(評価ゲート下端33b)が設定され、評価ゲート上端33aと評価ゲート下端33bとの間の領域が、評価ゲート33として定められる。評価ゲート33の評価ゲート上端33a及び評価ゲート下端33bは、被検体2の形状情報データ19bに基づいて決定される。形状情報データ19bとオフセットとが与えられると、超音波探傷データ処理装置10は、形状情報データ19bとオフセットから自動的に評価ゲート33となるべき領域を決定する。探傷データ20のうち決定された評価ゲート33の外側の位置のエコー高さのデータが0に置換される。
【0059】
なお、ステップS03の閾値カット処理と、ステップS04の評価ゲート設定処理とが行われる順序は、逆であってもよい。
【0060】
ステップS05:形状識別処理
評価ゲート設定処理に続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、形状識別処理を行う。形状識別処理とは、超音波画像に表れるエコー像のそれぞれを、被検体2の形状に対応する形状像と欠陥に対応する欠陥像の何れであるかを識別し、形状像を超音波画像から消去する処理である。超音波画像に表れている、あるエコー像が形状像であると判断されると、探傷データ20の当該形状像に対応するエコー高さのデータが0に置換される。これにより、形状像が超音波画像から消去される。
【0061】
図14は、形状識別処理の手順を示すフローチャートである。超音波探傷データ処理プログラム18は、まず、被検体2に形状識別ゲートを設定する処理を行う(ステップS21)。図15に示されているように、形状識別ゲート34とは、形状識別処理の対象となる領域のことである。形状識別ゲート34は、形状像が存在することが予測される領域であり、被検体2の形状を示す形状情報データ19bに基づいて決定される。
【0062】
本実施形態では、形状識別ゲート34は、次のように設定される。鋼板3の裏面3b及び溶接部5の表面5aから所定の距離αだけ鋼板3の表面3aの方向にずれた位置に、形状識別ゲート上端34aが設定される。更に、鋼板3の裏面3b及び溶接部5の表面5aから所定の距離βだけ鋼板3の表面3aと反対の方向にずれた位置に、形状識別ゲート下端34bが設定される。形状識別ゲート上端34aと形状識別ゲート下端34bとの間の領域が形状識別ゲート34である。
【0063】
図16は、探傷データ20に含まれる各Aスコープデータにおける、評価ゲート33と形状識別ゲート34との関係を示す図である。形状識別処理が行われる前では、各フォーカルローのAスコープデータは、評価ゲート33の内部の位置に対応する各路程におけるエコー高さを含んで構成される。形状識別ゲート34は、評価ゲート33の一部分として定義される。
【0064】
図14に示されているように、形状識別ゲート34の設定に続いて、断面内領域認識処理が行われる(ステップS22)。断面内領域認識処理とは、Bスコープ画像からエコー像が存在する領域を抽出する処理である。図17Aは、断面内領域認識処理を説明する概念図である。超音波探傷データ処理プログラム18は、まず、評価ゲート33の内部のエコー像41を抽出する。図17Aでは、一のエコー像41のみが図示されていることに留意されたい。本実施形態では、エコー像41の抽出は、エコー高さが0でない連続した一の領域を一のエコー像41として認識することにより行われる。既述のように、閾値カット処理によってバックグランドレベルのエコーは除去されているから、エコー高さが0でない位置には、何らかのエコー像が存在することに留意されたい。
【0065】
更に、超音波探傷データ処理プログラム18は、抽出されたエコー像41のそれぞれについて、当該エコー像を包囲する欠陥候補領域42を定義する。本実施形態では、欠陥候補領域42は、Bスコープ画像において、超音波ビームの路程方向と垂直な2辺及び平行な2辺を有する長方形であるように定義される。その代わりに、エコー像41の輪郭が抽出され、その輪郭の内部の領域が、欠陥候補領域42として定義されることも可能である。
【0066】
ステップS22で抽出されたエコー像41は、欠陥像である場合があり、また、形状像である場合がある。加えて、図17Aに例示されるように、人間がBスコープ画像を見れば区別できるような複数のエコー像が重なって構成されていることがある。これらの複数のエコー像のうち、あるエコー像は欠陥像であり、他のエコー像は形状像である可能性がある。したがって、欠陥を正しく評価するためには、形状像と欠陥像とを分離する必要がある。以下に述べられているように、超音波探傷データ処理プログラム18は、重なりあったエコー像を分離し、且つ、それぞれを形状像と欠陥像のいずれであるかを識別するための処理を行う。
【0067】
形状像と欠陥像とを分離するために、超音波探傷データ処理プログラム18は、まず、欠陥候補領域42の少なくとも一部が形状識別ゲート34の内部にあるか否かを判定する(ステップS23)。この処理は、確実に欠陥像であると判断できるエコー像41を選択的に分離するためのものである。具体的には、欠陥候補領域42の全体が形状識別ゲート34の外側に位置している場合、超音波探傷データ処理プログラム18は、当該欠陥候補領域42に含まれているエコー像41を欠陥像であると判定する(ステップS24)。一方、欠陥候補領域42の少なくとも一部が形状識別ゲート34に重なっている場合、超音波探傷データ処理プログラム18は、その欠陥候補領域42を、形状像を含む可能性のある領域である形状候補領域43として抽出する(ステップS23:YES)。本実施形態では、形状候補領域43は、欠陥候補領域42と同様に、超音波ビームの路程方向と垂直な2辺及び平行な2辺を有する長方形であるように定義される。欠陥候補領域42がエコー像41の輪郭の内部の領域として定義される場合には、形状候補領域43もエコー像41の輪郭の内部の領域として定義されることに留意されたい。図17Bに示されている本実施形態の例では、図17Aに示されている欠陥候補領域42は、形状候補領域43として抽出される。抽出された形状候補領域43について、ステップS25以降の処理が実行される。
【0068】
続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、形状候補領域43に含まれているエコー像41を超音波ビームの路程方向に分離する処理であるAスコープ分離処理を実行する(ステップS25)。図17Bは、Aスコープ分離処理を説明するための図である。図17Bの例では、フォーカルロー”1”〜”N”のそれぞれに対応するAスコープデータ21−1〜21−Nのうち、中央近辺に位置するフォーカルローに対応するAスコープデータは、2つのピークを有している。これは、エコー像41が、超音波ビームの路程方向に並んで重なり合った複数のエコー像から構成されていることを示唆している。超音波探傷データ処理プログラム18は、こうした条件を満たすエコー像41を、路程方向に分割する。
【0069】
図18A、18Bは、Aスコープ分離処理をより詳しく説明するための図である。図18Aは、あるフォーカルロー”i”のAスコープデータ44iを示す。このAスコープデータ44iには、2つのピーク45a、45bが認められる。形状候補領域43の終点に近い方のピーク45a(形状候補領域43の路程方向に垂直な2辺のうち、且つ、探触子
6から離れている側の辺に近いピーク45a)は形状像に対応するピークであり、他のピーク45bは、欠陥像に対応するピークであると考えられるが、この2つのピーク45a、45bは裾野においてつながっている。即ち、形状像と欠陥像とは分離されていない。また、この段階では、ピーク45a、45bが、形状像と欠陥像の何れに対応しているかも不明である。
【0070】
超音波探傷データ処理プログラム18は、形状識別ゲート34の内部においてエコー高さが最大値を示すピークを、形状候補ピークとして抽出する。形状候補ピークは、図18Aの例では、ピーク45aが形状候補ピークとして抽出される。以下では、ピーク45aを、形状候補ピーク45aと記載することがある。続いて超音波探傷データ処理プログラム18は、形状候補ピーク45aの高さに対して所定の割合の高さをカット閾値として設定する。カット閾値は、例えば、形状候補ピーク45aのピーク値に対して−A(dB)である値として設定され得る;ここでAは、正の定数である。更に超音波探傷データ処理プログラム18は、Aスコープデータ44iのうち、エコー高さがカット閾値よりも小さい各路程のエコー高さのデータを0に置換する切り捨て処理を行う。
【0071】
図18Bは、切り捨て処理が行われた後のAスコープデータ44’iを示す。切り捨て処理により、形状候補ピーク45aが、ピーク45bから分離される。これにより、複数の重なったエコー像で構成されているエコー像41がエコー高さの分布の谷の部分で路程方向に分割される。但し、この段階では、形状候補ピーク45aとピーク45bのそれぞれが、形状像に対応するピークであるのか、欠陥像に対応するピークであるのか判定されていないことに留意されたい。
【0072】
Aスコープ分離処理が行われた後、超音波探傷データ処理プログラム18は、再び断面内領域認識処理を実行する(ステップS26)。具体的には、図17Cに示されているように、超音波探傷データ処理プログラム18は、路程方向に隣接するピークが分離されるようにエコー像41−1、41−2を抽出し、更に、エコー像41−1、41−2のそれぞれに形状候補領域43−1、43−2を定義する。Aスコープ分離処理が行われた結果、エコー像41−1、41−2は、路程方向には単一のピークしか持たない。即ち、ステップS26では、路程方向に並んで重なり合った複数のエコー像は分離して抽出される。
【0073】
ステップS26の断面内領域認識処理に続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、フォーカルロー方向分離処理を行う(ステップS27)。フォーカルロー方向分離処理とは、フォーカルロー方向(即ち、路程方向に対して垂直な方向)にずれながら重なっている複数のエコー像を別々に認識するための処理である。ステップS25のAスコープ分離処理によって路程方向に並んで重なり合った複数のエコー像は分離されるものの、ステップS26で抽出されたエコー像41−1、41−2のそれぞれは、路程方向と垂直な方向にずれて重なり合った複数のエコー像から構成されている可能性がある。フォーカルロー方向分離処理では、ステップS26で抽出されたエコー像41−1、41−2がフォーカルロー方向にずれて重なっている複数のエコー像で構成されている場合に、それらのエコー像を別のものとして認識する処理が行われる。
【0074】
エコー像41−2が重なりあったエコー像41−3及び41−4で構成されている本実施形態の例では、図17Dに示されているように、フォーカルロー方向分離処理により、エコー像41−2に対応して定義された形状候補領域43−2が、エコー像41−3に対応する形状候補領域43−3とエコー像41−4に対応する形状候補領域43−4に分離される。
【0075】
図19A、19B、19Cを参照して、フォーカルロー方向分離処理についてより詳細に説明する。図19Aは、処理対象であるエコー像41−2、及び、それに対して定義された形状候補領域43‐2を示す。図19Bの上図に示されているように、Bスコープ画像に、エコー像41−3をフォーカルロー方向に横切る(即ち、路程方向と垂直な方向に延伸する)ラインLine1を定義した場合には、ラインLine1に沿ったエコー高さ分布に1つのピークが現れる。ここで、ラインLine1は、フォーカルロー”1”〜”N”の、路程がある一定値である位置を通過する線分であることに留意されたい。同様に、Bスコープ画像に、エコー像41−4をフォーカルロー方向に横切る他のラインLine2を定義した場合には、図19Bの下図に示されているように、ラインLine2に沿ったエコー高さ分布には、1つのピークが観察される。ただし、Aスコープ分離処理の後であれば、ラインLine1に沿ったエコー高さ分布のピークの位置と、ラインLine2に沿ったエコー高さ分布のピークの位置とは、必ず相違する。このようなエコー高さ分布のピークの位置の相違を利用して、エコー像41−2が、エコー像41−3、41−4に分離される。
【0076】
より具体的には、超音波探傷データ処理プログラム18は、以下の処理を行う。
(a)超音波探傷データ処理プログラム18は、まず、最大値抽出処理を行う。具体的には、超音波探傷データ処理プログラム18は、形状候補領域43‐2に関連するフォーカルローのそれぞれについて、形状候補領域43‐2の内部におけるエコー高さの最大値を抽出し、フォーカルローと、形状候補領域43‐2の内部におけるエコー高さの対応を表す最大値曲線を抽出する。言い換えれば、最大値曲線は、形状候補領域43‐2の各位置におけるエコー高さを路程方向に射影したときの最大値を結んだ線である。図19Cは、このような最大値曲線の例を示すグラフである。エコー像41−2がフォーカルロー方向にずれて重なっている複数のエコー像によって構成されている場合には、最大値曲線には、それらのエコー像の数に対応する数のピークが表れる。
【0077】
(b)続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、最大値曲線の谷の部分(図9Cの最大値曲線の極小となる位置の近傍の部分)を境界として形状候補領域43‐2を分割することによって、形状候補領域を新たに定義する。図17Dには、新たに定義された形状候補領域43‐3、34‐4が示されている。
【0078】
図20を参照して、超音波探傷データ処理プログラム18が上記(b)の処理で行う極小部分の認識処理について説明する。超音波探傷データ処理プログラム18は、以下の3つの認識方法のうちのいずれかを用いて、最大値曲線の谷の部分の認識処理を行う。
【0079】
第1の認識方法では、条件(1):
H(i−1)>H(i)<H(i+1)
が満たされるとき、フォーカルロー”i”に対応する位置を境界として形状候補領域43がフォーカルロー方向に分離される。上記式におけるH(i−1),(i),H(i+1)は、それぞれ、フォーカルロー”i−1”,”i”,”i+1”に対応する最大値曲線のエコー高さ(即ち、形状候補領域43の内部におけるフォーカルロー”i−1”,”i”,”i+1”のエコー高さの最大値)を示す。この条件は、図20に実線で示された条件(1)のように、フォーカルロー”i”において最大値曲線が谷となることを示す。これにより、最大値曲線の浅い谷で形状候補領域43が分離される。この条件は、判定のために必要な計算量が少ないため、高速処理に向いている。
【0080】
第2の認識方法では、条件(2):
H(i−1)>H(i)<H(i+1)、且つ
H(i−2)>H(i)<H(i+2)
が満たされるとき、フォーカルロー”i”に対応する位置を境界として形状候補領域43がフォーカルロー方向に分離される。この条件は、図20の条件(2)に示されているように、最大値曲線において、フォーカルロー”i”のエコー高さの最大値が、フォーカルロー”i−1”,”i+1”及びそれらの外側に隣接するフォーカルロー”i−2”,”
i+2”のエコー高さの最大値よりも小さいことを示す。これにより、最大値曲線の若干浅い谷で形状候補領域43が分離される。この条件(2)は、条件(1)と比較して、ノイズの影響を低減するのに適している。
【0081】
第3の認識方法では、条件(3):
H(i−1)>H(i)<i+1、且つ
H(i−2)>H(i−1)且つi+1<i+2
が満たされるとき、フォーカルロー”i”に対応する位置を境界として形状候補領域43がフォーカルロー方向に分離される。この条件(3)は、図20の条件(3)に示されているように、フォーカルロー”i”とフォーカルロー”i”に近接する左右2つずつのフォーカルロー、計5つのフォーカルローのうち、フォーカルロー”i”が最大値曲線にお
いて最も小さい値を示すことを意味している。これにより、最大値曲線の深い谷で形状候補領域43が分離される。この条件は、形状像と欠陥像の境界が比較的に明瞭であると思われる場合に適している。
【0082】
続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、フォーカルロー方向分離処理によって新たに定義された形状候補領域43−2、43−3のそれぞれについて、その内部においてエコー高さが最大値を示すピークを抽出し、抽出されたピークの高さに対して所定の割合の高さをカット閾値として設定する。更に超音波探傷データ処理プログラム18は、
形状候補領域43−2、43−3に関連するAスコープデータの、エコー高さがカット閾値よりも小さい各路程のエコー高さのデータを0に置換する切り捨て処理を行う。これにより、エコー像41−2が、エコー像41−3、41−4に分離される。
【0083】
フォーカルロー方向分離が行われた後、超音波探傷データ処理プログラム18は、再び断面内領域認識処理を実行する(ステップS28)。その結果、図17Eに示されているように、フォーカルロー方向にずれながら重なっていたエコー像41−3、41−4が分離して認識され、更に、エコー像41−3、41−4のそれぞれについて、形状候補領域43‐3と形状候補領域43‐4とが別々に定義される。
【0084】
続いて、超音波探傷データ処理プログラム18は、この時点で定義されている形状候補領域43の各々に対して、領域代表点の設定を行う。領域代表点とは、形状候補領域43の位置を表す点である。領域代表点の設定の方法としては、以下に説明する2つの設定方法のうちのいずれかが使用される。
【0085】
第1の設定方法では、超音波探傷データ処理プログラム18は、形状候補領域43のエコー高さが最大値をとる位置に応じて領域代表点46が決定される。図21は、領域代表点を設定する第1の設定方法を示すフローチャートである。まず、超音波探傷データ処理プログラム18は、形状候補領域43のピーク点(即ち、形状候補領域43の内部におい
てエコー高さが最大値をとる点)を検出する(ステップS41)。図6を参照して説明されているように、Aスコープデータのエコー高さの数値範囲には上限値(本実施形態では100)が定められているから、エコー高さが全体に高い場合には、エコー高さが上限値に飽和することによって、多数のピーク点が検出され得ることに留意されたい。
【0086】
検出されたピーク点が1つである場合(ステップS42:NO)、超音波探傷データ処理プログラム18は、そのピーク点を領域代表点46として設定する(ステップS43)。
【0087】
一方、検出されたピーク点が2つ以上存在する場合(ステップS42:YES)、超音波探傷データ処理プログラム18は、ステップS44以下の処理を実行する。
【0088】
図22Aに示されているように、超音波探傷データ処理プログラム18は、形状候補領域43からエコーピーク領域47を抽出する(ステップS44)。エコーピーク領域47とは、その内部の全ての位置において、エコー高さが上限値をとる連続した領域のことである。ピーク点が2つ以上存在する場合、エコー高さが上限値に飽和する連続した領域が存在する。超音波探傷データ処理プログラム18は、この領域をエコーピーク領域47として抽出する。
【0089】
更に超音波探傷データ処理プログラム18は、そのエコーピーク領域47の中心を領域代表点46として定義する(ステップS45)。一実施形態では、エコーピーク領域47の重心が領域代表点46として定義され得る。他の実施形態では、図22Bに示されているように、エコーピーク領域47に外接するピーク矩形領域48が定義され、その対角点の交点が、領域代表点46として決定され得る。
【0090】
第2の設定方法では、図22Cに示されているように、超音波探傷データ処理プログラム18は、形状候補領域43のそれぞれについて、有効値データの路程方向平均値の分布及び有効値データの垂直方向平均値の分布が算出され、算出された路程方向平均値の分布及び垂直方向平均値の分布から領域代表点46が決定される。ここで有効値データとは、
形状候補領域43の各位置のエコー高さのデータのうち、”0”でないデータのことである。
【0091】
有効値データの路程方向平均値とは、各フォーカルローについて定義される値であり、ある形状候補領域43についての、あるフォーカルローの有効値データの路程方向平均値とは、当該フォーカルローの当該形状候補領域43の内部の位置に相当する路程の有効値データの平均値である。有効値データの路程方向平均値の算出では、エコー高さが”0”
であるデータは使用されないことに留意されたい。形状候補領域43が、エコー像41の輪郭として定義されている場合には、エコー高さの路程方向平均値がそのまま、有効値データの路程方向平均値である。例えば、あるフォーカルロー”i”の有効値データの路程方向平均値Ave(i)は、下記式で定義される:
【数1】

ここで、Nは、フォーカルロー”i”の各路程のうち、形状候補領域43の内部にあり、且つ、エコー高さが”0”でない路程の数であり、Echo(p)は、路程pのエコー高さであり、Σは、形状候補領域43の内部にあり、且つ、エコー高さが”0”でない路程についての和を表している。有効値データの路程方向平均値が形状候補領域43に関与する全てのフォーカルローについて算出され、これにより、有効値データの路程方向平均値の分布が得られる。
【0092】
一方、有効値データの垂直方向平均値とは、路程方向に垂直に規定された各ラインについて定義される値であり、ある形状候補領域43についての、あるラインの有効値データの垂直方向平均値とは、当該ライン上の当該形状候補領域43の内部の位置に相当する各点の有効値データの平均値である。有効値データの垂直方向平均値の算出でも、エコー高さが”0”であるデータは使用されないことに留意されたい。形状候補領域43が、エコー像41の輪郭として定義されている場合には、エコー高さの垂直方向平均値がそのまま、有効値データの路程方向平均値である。例えば、あるラインLinejの有効値データの路程方向平均値Ave(j)は、下記式で定義される:
【数2】

ここで、Nは、ラインLinej上の点のうち、形状候補領域43の内部にあり、且つ、エコー高さが”0”でない点の数であり、Echo(q)は、ラインLinej上の点qのエコー高さであり、Σは、形状候補領域43の内部にあり、且つ、エコー高さが”0”でない点についての和を表している。有効値データの垂直方向平均値が形状候補領域43に関与する全てのラインについて算出され、これにより、有効値データの垂直方向平均値の分布が得られる。
【0093】
算出された路程方向平均値の分布及び垂直方向平均値の分布から領域代表点46が決定される。領域代表点46は、形状候補領域43のうち、路程方向平均値の分布のピークの位置にある路程方向に延伸する直線と、垂直方向平均値の分布のピークの位置にあるラインの交点として定義される。
【0094】
形状候補領域43のそれぞれに対する領域代表点46の設定が完了すると、図14に示されているように、超音波探傷データ処理プログラム18は、各領域代表点46が、形状識別ゲート34の内側にあるか外側にあるかを判定する(ステップS30)。超音波探傷データ処理プログラム18は、領域代表点46が形状識別ゲート34の外部に位置する形状候補領域43を抽出し(ステップS30:NO)、その形状候補領域43に含まれているエコー像41を欠陥に由来する欠陥像であると判定する(ステップS31)。図24の例では、形状候補領域43−6に対応する領域代表点46‐6が形状識別ゲート34の外部に位置するため、形状候補領域43−6に含まれるエコー像は、欠陥に対応する欠陥像として判定される。
【0095】
更に超音波探傷データ処理プログラム18は、領域代表点46が形状識別ゲート34の内部に位置する形状候補領域43を抽出し(ステップS30:YES)、その形状候補領域43に含まれているエコー像を、被検体2の形状に対応する形状像であると判定する。図24の例では、形状候補領域43‐5、43−7に含まれているエコー像は、領域代表点46‐5、46‐7が形状識別ゲート34の内部に位置するため、形状像として判定される。超音波探傷データ処理プログラム18は、超音波画像から形状像を消去する処理を行う。具体的には、超音波探傷データ処理プログラム18は、探傷データ20の各Aスコープデータの形状像に対応する位置のエコー高さのデータを0に設定する。これにより、Bスコープ画像から形状像が消去され、形状識別処理(ステップS05)が完了する。図17Fは、形状識別処理によって得られるBスコープ画像の一例を示している。形状像であると判定されたエコー像41−3は、Bスコープ画像から消去され、欠陥に対応するエコー像41−1、41−4のみがBスコープ画像に選択的に残される。
【0096】
上述された形状識別処理は、全ての断面について行われる。形状識別処理がなされた後の探傷データ20から生成されるBスコープ画像には、欠陥に対応する欠陥像のみが現れる。
【0097】
なお、演算量を減少するためには、フォーカルロー方向分離処理の後の断面内領域認識処理(ステップS28)を実行しないことも可能である。この場合、フォーカルロー方向分離処理で定義された形状候補領域43について領域代表点46が定められる。フォーカルロー方向分離処理で定義された形状候補領域43には、一の形状候補領域43を分割して得られた形状候補領域が含まれることに留意されたい。
【0098】
上述の形状識別処理では、図14に示されているように、ステップS25においてエコー像を路程方向に分離する処理(Aスコープ分離処理)が行われた後に、ステップS27においてエコー像をフォーカルロー方向(路程方向に垂直な方向)に分離する処理(フォーカルロー方向分離処理)が行われている。その代わりに、図23Aに示されているように、エコー像をフォーカルロー方向に分離する処理(ステップS25’)が行われた後、エコー像を路程方向に分離する処理(ステップS27’)が行われ得る。
【0099】
この場合、ステップS25’では、エコー像を分離する方向が異なる点以外、Aスコープ分離処理と同じ処理により、エコー像がフォーカルロー方向に分離される。即ち、ステップS25’における処理では、図23Bに示されているように、Aスコープデータ44iの代わりに、路程方向に垂直な方向に規定された各ラインに沿ったエコー高さの分布の
データを使用して上述のAスコープ分離処理と同様の処理が行われる。これにより、図23Cに示されているように、エコー高さの分布の谷の部分で、エコー像がフォーカルロー方向に分離される。図23Cの例では、エコー像41−1が、フォーカルロー方向に隣接する2つのエコー像41−4、41−5に分離される。エコー像41−5は、路程方向に並んで重なっている2つのエコー像41−1、41−3からなるが、ステップS25’におけるエコー像をフォーカルロー方向に分離する処理では分離されない。ステップS25’のエコー像をフォーカルロー方向に分離する処理の後、再び断面内領域認識処理が実行される(ステップS26)。
【0100】
ステップS26の断面内領域認識処理の後、エコー像を路程方向に分離する処理(ステップS27’)が行われる。エコー像を分離する方向が異なる点以外、フォーカルロー分離処理と同じ処理により、エコー像が路程方向に分離される。即ち、ステップS27’における処理では、各ラインに沿ったエコー高さの分布のデータの代わりに、Aスコープデータを使用して上述のフォーカルロー分離処理と同様の処理が行われる。より具体的には、形状候補領域43に定義されたラインのそれぞれについて、形状候補領域43の内部におけるエコー高さの最大値を抽出し、ラインと形状候補領域43の内部におけるエコー高さの対応を表す最大値曲線を抽出する。言い換えれば、最大値曲線は、形状候補領域43の各位置におけるエコー高さをフォーカルロー方向に射影したときの最大値を結んだ線である。更に、図23Dに示されているように、最大値曲線の谷の部分(図9Cの最大値曲線の極小となる位置の近傍の部分)を境界として形状候補領域43が分割され、形状候補領域が新たに定義される。図23Dの例では、形状候補領域43−5が路程方向に分割され、形状候補領域43‐1、43‐3が新たに定義される。更に、ステップS27’のエコー像を路程方向に分離する処理によって新たに定義された形状候補領域43のそれぞれについてその内部においてエコー高さが最大値を示すピークを抽出し、抽出されたピークの高さに対して所定の割合の高さをカット閾値として設定する。更に超音波探傷データ処理プログラム18は、形状候補領域43に関連するAスコープデータの、エコー高さがカット閾値よりも小さい各路程のエコー高さのデータを0に置換する切り捨て処理を行う。これにより、エコー像が路程方向に分離される。例えば図23Eの例では、エコー像41−5がエコー像41−1、41−4に分離される。
【0101】
ステップS27’が行われた後、再び断面内領域認識処理が実行され(ステップS28)。その結果、図23Eに示されているように、路程方向にずれながら重なっていたエコー像41−1、41−3が分離して認識され、更に、エコー像41−1、41−3のそれぞれについて、形状候補領域43‐1と形状候補領域43‐3とが別々に定義される。以降の処理は、上述の形状識別処理と同様である。
【0102】
ステップS06:欠陥の同一性の判定処理
図8に示されているように、形状識別処理が終了した後、超音波探傷データ処理プログラム18は、欠陥の同一性の判定処理を行う(ステップS06)。この処理は、各断面のBスコープ画像に現れる欠陥像と、実際に存在する欠陥とを対応付けるために行われる。欠陥像と実際の欠陥との対応付けは、下記の2つの理由から必要である。第1に、欠陥の寸法を同定するためには、隣接する断面のBスコープ画像に表れる欠陥像の間の対応付けが必要である。具体的には、指示長さ(即ち、欠陥の走査方向への長さ)を同定するためには、ある断面のBスコープ画像に表れている欠陥像と、他の断面のBスコープ画像に表れている欠陥像とが同一の欠陥に起因するものか否かを判断する必要がある。第2に、Bスコープ画像に現れた欠陥像は、実際に被検体2に存在する欠陥と必ずしも1対1に対応していない。即ち、同一の断面に2つの欠陥像が現れても、それらは実際には1つの欠陥に起因するかもしれない。このような場合、2つの欠陥像を同一の欠陥に対応付けるか否かを判断する必要がある。
【0103】
本実施形態では、超音波探傷データ処理プログラム18は、以下の手順によって欠陥の同一性の判定処理を行う。図25は、本実施形態における欠陥の同一性の判定処理を示すフローチャートである。まず、超音波探傷データ処理プログラム18は、形状識別処理によって形状像が消去されたBスコープ画像に表れている欠陥像を識別する(ステップS51)。欠陥像の識別は、以下の手順で行われる。まず、Bスコープ画像上で、エコー高さが0でない位置が検索される。エコー高さが0でない位置が発見されると、その位置を始点としてBスコープ画像内を垂直方向及び水平方向の両方に走査することにより、当該位置を含む、その内部の全ての位置についてエコー高さが0でない連続した領域が認識される。その領域が、欠陥像の領域として認識される。
【0104】
続いて、図26Aに示されているように、各断面のBスコープ画像に表れた欠陥像51のそれぞれについて領域代表点53が定められる(ステップS52)。領域代表点53とは、欠陥像51の位置を表わす点である。
【0105】
一実施形態では、図26Bに示されているように、矩形領域52が、欠陥像51のうちのエコーピーク領域54を囲んで外接するように定められ、その矩形領域52の対角線の交点が領域代表点53として定められてもよい。エコーピーク領域54とは、その内部の全ての位置において、エコー高さが上限値をとる連続した領域のことである。上述されているように、Aスコープデータのエコー高さの数値範囲には上限値が定められていることに留意されたい。被検体2のある位置のエコー高さが所定値よりも高い場合、Aスコープデータでは、その位置のエコー高さは当該上限値であると記述される。
【0106】
他の実施形態では、図26Cに示されているように、欠陥像51のそれぞれについて、エコー高さの路程方向平均値の分布及びエコー高さの垂直方向平均値の分布が算出され、算出された路程方向平均値の分布及び垂直方向平均値の分布から領域代表点53が決定される。
【0107】
エコー高さの路程方向平均値とは、各フォーカルローについて定義される値であり、ある欠陥像51についての、あるフォーカルローのエコー高さの路程方向平均値とは、当該フォーカルローの当該欠陥像51の内部の位置に相当する路程のエコー高さの平均値である。エコー高さの路程方向平均値が欠陥像51に関与する全てのフォーカルローについて算出され、これにより、エコー高さの路程方向平均値の分布が得られる。
【0108】
一方、エコー高さの垂直方向平均値とは、路程方向に垂直に規定された各ラインについて定義される値であり、ある欠陥像51についての、あるラインのエコー高さの垂直方向平均値とは、当該ライン上の当該欠陥像51の内部の位置に相当する各点のエコー高さの平均値である。エコー高さの垂直方向平均値が欠陥像51に関与する全てのラインについて算出され、これにより、エコー高さの垂直方向平均値の分布が得られる。
【0109】
算出された路程方向平均値の分布及び垂直方向平均値の分布から領域代表点46が決定される。領域代表点53は、欠陥像51のうち、路程方向平均値の分布のピークの位置にある路程方向に延伸する直線と、垂直方向平均値の位置にあるラインの交点として定義される。
【0110】
続いて、図25に示されているように、同一の断面に表れている複数の欠陥像51が同一の欠陥に起因するものか否かを判定する処理が行われる(ステップS53)。この判定には、欠陥像51それぞれに定められた矩形領域52の領域代表点53の位置が使用される。図27に示されているように、2つの欠陥像51の矩形領域52の領域代表点53の間の距離dが、所定値Aよりも大きい場合、その2つの欠陥像51は、異なる欠陥に起因すると判断される。一方、当該領域代表点53の間の距離が、所定値A以下である場合、当該2つの欠陥像51は同一の欠陥に起因すると判断される。
【0111】
例えば、各矩形領域52の領域代表点53の座標を(x,y)とすると、矩形領域52、52j+1それぞれの領域代表点53j、53j+1の間の距離dj、j+1は、下記式で表される:
(j,j+1)=√{(x−xj+1+(y−yj+1}.
図27の例では、d(j,j+1)が所定値Aよりも大きいため、矩形領域52、52j+1にそれぞれに対応する欠陥像51は、異なる欠陥に起因すると判断される。一方、矩形領域52j+1、52j+2それぞれの領域代表点53j+1、53j+2の間の距離d(j+1,j+2)が所定値A以下であるため、矩形領域52、52j+1にそれぞれに対応する欠陥像51は、同一の欠陥に起因すると判断される。
【0112】
超音波探傷データ処理プログラム18は、超音波探傷が行われた断面のそれぞれについて、同一の欠陥に起因すると判断された当該欠陥像51を関連付ける。これは、同一の欠陥に起因する欠陥像51に同一の欠陥IDを付与し、異なる欠陥に起因する欠陥像51に、異なる欠陥IDを付与することによって行われる。
【0113】
続いて、図25に示されているように、隣接する断面に表れている欠陥像51が同一の欠陥に起因するものか否かを判定する処理が行われる(ステップS54)。この判定においても、欠陥像51のそれぞれに定められた矩形領域52の領域代表点53の位置が使用される。ある断面の欠陥像51と、それに隣接する断面の欠陥像51との全ての組み合わせについて、対応する矩形領域52の領域代表点53の間の面内方向における距離dが算出される。面内方向における距離dとは、異なる断面の矩形領域52の領域代表点53をxy平面に投影したときにおける、領域代表点53の投影点の間の距離のことである。断面iの矩形領域52i,jの領域代表点53i,jと、断面iに隣接する断面i+1の矩形領域52i+1,kの領域代表点53i+1,kの、面内方向における距離d(i,j)(i+1、k)は、下記の式で表される:
i,i+1(j、k)=√{(xi,j−xi+1,k+(yi,j−yi+1,k},
ここで、(xi,j,yi,j)は、断面iの矩形領域52i,jの領域代表点53i,jのxy座標であり、(xi+1,k,yi+1,k)は、断面i+1の矩形領域52i+1,kの領域代表点53i+1,jのxy座標である。
【0114】
図28に示されているように、断面iの矩形領域52i,jの領域代表点53i,jと、断面iに隣接する断面i+1の矩形領域52i+1,kの領域代表点53i+1,kの、面内方向における距離dが所定値Bよりも大きい場合、断面iの矩形領域52i,jに対応する欠陥像51と、断面i+1の矩形領域52i+1,kに対応する欠陥像51とは、異なる欠陥に起因すると判断される。所定値Bは、上述のステップS53で使用される所定値Aよりも大きい一定の値である。一方、領域代表点53i,j、53i+1、kの間の距離が、所定値B以下である場合、当該2つの欠陥像51は同一の欠陥に起因すると判断される。
【0115】
図28の例では、断面iの矩形領域52i,j、断面i+1の矩形領域52i+1,k、断面i+2の矩形領域52i+1,mのそれぞれに対応する欠陥像51が同一の欠陥に起因すると判断されている一方、断面i+3の矩形領域52i+1,nに対応する欠陥像51は、異なる欠陥に起因すると判断されている。
【0116】
超音波探傷データ処理プログラム18は、同一の欠陥に起因すると判断された当該欠陥像51を相互に関連付ける。これは、同一の欠陥に起因する欠陥像51に同一の欠陥IDを付与し、異なる欠陥に起因する欠陥像51に、異なる欠陥IDを付与することによって行われる。
【0117】
ステップS53において、ある断面の2つの欠陥像51が異なる欠陥に起因すると判断されたとしても、ステップS54においてその判断が修正され、その結果、同一の欠陥IDが付与され得ることに留意されたい。例えば、ステップS53において、断面iの2つの欠陥像51が異なる欠陥に起因すると判断された場合でも、ステップS54において、
それに隣接する断面iのある欠陥像51と、それら2つの欠陥像51が同一の欠陥に起因すると判断された場合には、最終的には、それら3つの欠陥像51が同一の欠陥に起因すると判断され、同一の欠陥IDが付与される。
【0118】
ステップS07:欠陥の位置及び寸法の自動同定と、欠陥のリストアップ
欠陥の同一性の判定処理が完了すると、超音波探傷データ処理プログラム18は、欠陥の位置及び寸法を自動的に同定し、各欠陥について合否を判定し、更に、各欠陥の欠陥ID、位置、寸法、及び合否判定結果が列挙された欠陥リストを作成する(ステップS07)。一実施形態では、欠陥リストには、欠陥ID、欠陥の溶接方向(z軸方向)の位置X、欠陥の深さD、横方向(x軸方向)の位置K、指示長さL、及び、合否判定結果が記述される。欠陥の指示長さLは、同一の欠陥に対応付けられた欠陥像51が連続して現れる断面の数に基づいて決定される。同一の欠陥に起因すると判断された(即ち、同一の欠陥IDが付与された)欠陥像51が、連続するN枚の断面に現れている場合、指示長さは、(N−1)・Dであると判断される。ここでDは、隣接する2枚の断面の間の距離である。欠陥の合否の判定は、欠陥像のエコー高さの最大値と、指示長さLとに基づいて行われる。ある欠陥の指示長さLが所定の基準値より大きく、且つ、当該欠陥に対応する一連の欠陥像のエコー高さの最大値が所定の基準値よりも大きい場合、当該欠陥は重大な欠陥と判断される。この場合、超音波探傷データ処理プログラム18は、被検体2が当該欠陥に起因して不良である旨を示す情報を合否判定結果として欠陥リストに記述する。
【0119】
ステップS08:技術者による修正処理
欠陥リストが作成されると、超音波探傷データ処理プログラム18は、技術者が欠陥リストを確認し、必要であれば欠陥リストを修正するヒューマンインターフェースを提供する処理を行う(ステップS08)。具体的には、超音波探傷データ処理プログラム18は、欠陥リストを表示装置14に表示し、更に、技術者に欠陥リストの修正を要求する画面を表示する。この際、超音波探傷データ処理プログラム18は、技術者による入力装置13の操作に応答して、オリジナルの探傷データ20から生成された超音波画像や、形状識別処理がなされた探傷データ20から生成された超音波画像を表示装置14に表示する。技術者は、必要に応じて、欠陥リストの修正内容を示す欠陥リスト修正データを入力装置13に入力する。
【0120】
ステップS09:最終欠陥リストの作成
欠陥リスト修正データが入力されると、超音波探傷データ処理プログラム18は、欠陥リストを修正して最終欠陥リストを生成する(ステップS09)。超音波探傷データ処理プログラム18は、最終欠陥リストを表示装置14に表示し、また、技術者によって要求された場合には、最終欠陥リストをプリンタ(図示されない)によって出力する。以上で、探傷データ20の処理が完了する。
【0121】
以上に説明された超音波探傷データの処理方法によれば、欠陥の位置及び寸法がデジタル演算処理によって自動的に同定され、これにより、技術者の能力の差による欠陥の評価のバラツキを抑制することができる。
【0122】
(第2の実施形態)
欠陥の延伸方向が3次元的に変化すると、隣接する断面の間の欠陥像の対応付けが正しく行われない場合がある。図29は、その理由を説明する図である。図29に示されているように、欠陥55は、必ずしも、被検体2の表面に平行に延伸しているとは限らない。例えば、断面i、iにおいては欠陥55の延伸方向が被検体2の表面に平行であるが
、その間の断面iでは欠陥55の延伸方向が被検体2の表面に対して斜めである場合があり得る。このような場合、断面i、iにおいては探触子6に反射波が帰ってくるものの、断面iにおいては、探触子6に反射波が帰ってこない可能性がある。即ち、断面i、iにおいては欠陥55によるエコーの高さが高いものの断面iにおいては欠陥
55によるエコーの高さが低い場合がある。このような場合、断面iに欠陥像が現れないことがある。例えば、断面iにおける欠陥55によるエコーの高さが、閾値カット処理(ステップS03)で使用される閾値よりも低いと、その断面iには欠陥55に対応する欠陥像が現れない。このような場合、単一の欠陥55に起因するにも関らず、断面i、iに現れる欠陥像が2つの欠陥であると認識され、結果として、欠陥の大きさが正しく評価されない。
【0123】
このような不具合を防ぐために、本実施形態では、断面間強調処理が行われる。断面間強調処理とは、ある対象断面の探傷データを(即ち、ある対象断面の各位置のエコー高さのデータ)を、当該対象断面の近傍の断面の探傷データを用いて修正する処理である。以下では、本実施形態で行われるデジタル演算処理の処理手順が詳細に説明される。
【0124】
図30は、本実施形態で行われるデジタル演算処理の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態では、閾値カット処理(ステップS03)が行われた後に、上述された断面間強調処理が行われる(ステップS10)。評価ゲート設定処理以降の処理(ステップS04〜S09)は、断面間強調処理が行われた探傷データ20について行われる。
【0125】
本実施形態の断面間強調処理(ステップS10)では、図31に示されているように、断面iの探傷データが、走査方向後方に隣接する2枚の断面i−2、i−1、及び走査方向前方に隣接する断面i+1、i+2の探傷データを用いて修正される。詳細には、本実施形態の断面間強調処理では、断面iのある位置のエコー高さのデータは、5枚の断面i−2〜i+2の同一位置のエコー高さのデータの最大値に修正される。Aスコープデータが取得されるフォーカルローが全ての断面について同一である本実施形態では、処理後の断面iのフォーカルローjの路程kのエコー高さのデータH’i,j,kは、下記のように表される:
H’i,j,k
max[Hi−2,j,k,Hi−1,j,k,Hi,j,k,Hi+1,j,k,Hi+2,j,k],
ここで、max[x,x,x,x,x]は、x〜xの最大値であり、Hi,j,kは、断面iのフォーカルローjの路程kのエコー高さである。
【0126】
図32は、断面間強調処理の具体例を示すグラフである。図13の上段は、断面i−2〜i+2のある同一のフォーカルローのAスコープデータを示しており、下段は、断面間強調処理後における断面iの当該フォーカルローのAスコープデータを示している。例えば、断面i−2の路程”4”のエコー高さが、「70」であり、他の断面i−1、i、i+1、i+2の路程”4”のエコー高さが「0」である場合、断面間強調処理後の断面iの当該フォーカルローのAスコープデータの路程”4”のエコー高さのデータは、「70」である。同様に、断面i−1の路程”5”のエコー高さが、「80」であり、他の断面i−2、i、i+1、i+2の路程”5”のエコー高さが「0」である場合、断面間強調処理後の断面iの当該フォーカルローのAスコープデータの路程”5”のエコー高さのデータは、「80」である。
【0127】
このような断面間強調処理によれば、ある対象断面のある位置のエコー高さが低い場合でも、隣接する断面の同一位置のエコー高さが高ければ、当該対象断面の当該位置のエコー高さのデータが高くなるように修正される。従って、欠陥の形状の3次元的な変化によって対象断面のエコー高さが低くなっても、その対象断面のBスコープ画像から欠陥像が失われない。これは、単一の欠陥55に起因するにも関らず、断面i、iに現れる欠陥像が2つの欠陥であると認識されることを有効に防ぐ。
【0128】
断面間強調処理では、断面iのある位置のエコー高さよりも断面i−2、i−1、i+1、i+2の同一位置のエコー高さが高い場合に、断面iの当該位置のエコー高さのデータが増加されるように修正されるような処理であれば、異なる処理が行われてもよい。例えば、断面iのある位置のエコー高さのデータが、5枚の断面i−2〜i+2の同一位置のエコー高さのデータの平均値よりも低いレベルの場合にのみ当該平均値に修正されることも可能である。ただし、断面iのある位置のエコー高さのデータを、5枚の断面i−2〜i+2の同一位置のエコー高さのデータの最大値に修正する処理は、欠陥の大きさを実際より小さく評価することがない点で好適である。
【0129】
なお、本実施形態の断面間強調処理では、走査方向前方に隣接する2枚の断面、及び走査方向後方に隣接する2枚の断面の探傷データが対象断面の探傷データの修正に使用されるが、修正に使用される断面の数が、適宜変更可能であることは当業者には自明的である。走査方向前方に隣接するn枚(nは1以上の整数)の断面、及び走査方向後方に隣接するn枚の断面の探傷データが、対象断面の探傷データの修正に使用されることが可能である。
【0130】
また、走査方向前方に隣接するn枚の断面のみの探傷データのみが対象断面の探傷データの修正に使用され、走査方向後方に隣接するn枚の断面が対象断面の探傷データの修正に使用されないことも可能である。同様に、走査方向後方に隣接するn枚の断面のみの探傷データのみが対象断面の探傷データの修正に使用され、走査方向前方に隣接するn枚の断面が対象断面の探傷データの修正に使用されないことも可能である。ただし、欠陥の大きさが実際より小さく評価されることを防ぐという観点からは、走査方向前方に隣接するn枚(nは1以上の整数)の断面、及び走査方向後方に隣接するn枚の断面の探傷データの両方が対象断面の探傷データの修正に使用されることが好適である。
【0131】
上述された断面強調処理を行うと、欠陥の形状の3次元的な変化に起因する欠陥像の欠落の問題を有効に回避できる一方で、ステップS07の欠陥の指示長さ(走査方向の長さ)の同定の際、指示長さが実際よりも長く測定されることになる。例えば、走査方向前方に隣接する2枚の断面、及び走査方向後方に隣接する2枚の断面の探傷データが対象断面の探傷データの修正に使用される場合には、指示長さが、断面の間隔の4倍分(即ち、走査方向前方の2断面及び後方の2断面に対応する長さ)だけ実際よりも長く測定されることになる。
【0132】
このような指示長さの過大評価を避けるためには、ステップS07において、対象断面の探傷データの修正に使用された断面の数に応じて、指示長さが補正されることが好ましい。例えば、走査方向前方に隣接するn枚(nは1以上の整数)の断面、及び走査方向後方に隣接するn枚の断面の探傷データが、対象断面の探傷データの修正に使用される場合には、指示長さLは、下記式に基づいて算出されることが好ましい:
=(N−2n−1)・D,
ここでNは、同一の欠陥に対応する欠陥像が連続して現れている断面の数であり、Dは、隣接する2枚の断面の間の距離である。
【0133】
また、走査方向前方に隣接するn枚の断面のみが対象断面の探傷データの修正に使用される場合、及び、走査方向後方に隣接するn枚の断面のみが対象断面の探傷データの修正に使用される場合には、指示長さLは、下記式に基づいて算出されることが好ましい:
=(N−n−1)・D.
【0134】
本実施形態では、ステップS10の断面間強調処理は、閾値カット処理(ステップS03)の後、且つ、評価ゲート設定処理(ステップS04)の前に行われているが、断面間強調処理は、様々な処理タイミングで行われ得る。
【0135】
例えば、断面間強調処理は、ステップS03の閾値カット処理の前に行われることも可能である。ただし、演算量を減らすという観点からは、断面間強調処理がステップS01の閾値カット処理の後で行われることがより好適である。断面間強調処理を閾値カット処理の後で行う場合には、対象断面及び当該対象断面の探傷データ20の修正に使用される断面の全ての断面について、ある処理対象の位置(即ち、路程)のエコー高さが0である場合には、当該位置について最大値の算出を行う必要がない。
【0136】
一層に演算量を減らすという観点からは、断面間強調処理は、評価ゲート設定処理(ステップS04)の後で行われることも可能である。評価ゲート設定処理では、評価ゲート33の外部の位置のエコー高さが全て0にされる。したがって、閾値カット処理の後で断面間強調処理が行われる場合と比較して、最大値の算出を行う必要がないケースが一層に多くなる。
【0137】
更に一層に演算量を減らすという観点からは、断面間強調処理は、形状識別処理(ステップS05)の後で行われることも可能である。形状識別処理では、形状像に対応する位置のエコー高さが全て0にされるので、評価ゲート設定処理断面間強調処理が行われる場合と比較して、最大値の算出を行う必要がないケースが一層に多くなる。
【0138】
ただし、3次元的な欠陥の形状の変化による欠陥の見逃しを抑制するためには、断面強調処理は、閾値カット処理の後で行われることが好適である。
【0139】
なお、上述された実施形態では、探触子6をフェーズドアレイとして機能させることによってx軸方向への超音波ビームの走査が行われているが、探触子6を機械的にx軸方向に走査させながら探傷データを取得してもよい。本願発明が、超音波ビームの走査方法に依存せずに適用可能であることは、当業者には自明的であろう。
【符号の説明】
【0140】
1:自動超音波探傷システム
2:被検体
3、4:鋼板
5:溶接部
6:探触子
7:走査装置
8:制御装置
9:表示装置
10:超音波探傷データ処理装置
11:レール
12:探触子保持機構
13:入力装置
14:表示装置
15:通信装置
16:記憶装置
17:演算装置
18:超音波探傷データ処理プログラム
19a:健全部探傷データ
19b:形状情報データ
20:探傷データ
21:Aスコープデータ
22:形状エコー
23:欠陥エコー
24:形状像
25:欠陥像
31:健全部
32:監視範囲
33:評価ゲート
33a:評価ゲート上端
33b:評価ゲート下端
34:形状識別ゲート
34a:形状識別ゲート上端
34b:形状識別ゲート下端
41:エコー像
42:欠陥候補領域
43:形状候補領域
44i:Aスコープデータ
45a:ピーク(形状候補ピーク)
45b:ピーク
46:領域代表点
47:エコーピーク領域
48:ピーク矩形領域
51:欠陥像
52、52i、52j:矩形領域
53、53i、53j:領域代表点
54:エコーピーク領域
55:欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データをデジタル演算処理によって処理するための超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記探傷データから得られる超音波画像から前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理を、前記探傷データに対して行う形状識別処理ステップと、
形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像を認識し、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像と前記被検体に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定ステップと、
同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定ステップ
とを演算装置に実行させ、
前記同一性判定ステップは、
前記欠陥像の位置を代表する代表点を定める欠陥像代表点設定ステップと、
前記代表点の間の距離から、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを判断する判断ステップ
とを具備する
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記判断ステップは、同一の断面の2つの欠陥像の前記代表点の間の距離から、前記2つの欠陥像が同一の欠陥に起因するか否かを判断するステップを含む
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記判断ステップは、異なる断面の2つの欠陥像の前記代表点の間の前記断面に平行な面内方向における距離から、前記2つの欠陥像が同一の欠陥に起因するか否かを判断するステップを含む
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記欠陥像代表点設定ステップは、
前記欠陥像のうちの、エコー高さが所定値以上であるエコーピーク領域の中心を前記代表点として定めるステップ
とを備える
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前欠陥像記代表点設定ステップは、
前記欠陥像の内部のエコー高さの、前記超音波探傷に用いられるビームの路程方向についての平均値である路程方向平均値の分布を算出するステップと、
前記欠陥像の内部のエコー高さの、前記路程方向に垂直な垂直方向についての平均値である垂直方向平均値の分布を算出するステップと、
前記代表点を、前記路程方向平均値の分布のピークの位置にある路程方向に延伸する直線と、前記垂直方向平均値のピークの位置にある前記垂直方向に延伸するラインの交点として定義するステップ
とを備える
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記超音波探傷では、所定の走査方向に沿って探触子を走査しながら、複数の断面について前記探傷データが取得され、
当該超音波探傷データ処理プログラムは、更に、
前記複数の断面のうちの対象断面の前記探傷データを、前記対象断面の前記走査方向前方及び/又は前記走査方向後方に隣接する所定数の隣接断面の探傷データを用いて修正する断面間強調処理ステップ
を前記演算装置に実行させ、
前記形状識別処理ステップでは、前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理が、修正された前記探傷データについて行われる
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記超音波探傷では、所定の走査方向に沿って探触子を走査しながら、複数の断面について前記探傷データが取得され、
当該超音波探傷データ処理プログラムは、更に、
前記形状識別処理ステップが行われた前記探傷データについて、前記複数の断面のうちの対象断面の前記探傷データを、前記対象断面の前記走査方向前方及び/又は前記走査方向後方に隣接する所定数の隣接断面の探傷データを用いて修正する処理を行う断面間強調処理ステップ
を前記演算装置に実行させる
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記断面間強調処理ステップでは、前記対象断面の各位置のエコー高さのデータが前記隣接断面の同一位置のエコー高さに応じて増加されるように前記対象断面の前記探傷データが修正される
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記寸法同定ステップでは、同一の欠陥に対応する欠陥像が現れている連続した断面の数と、前記対象断面の前記探傷データの修正に用いられた前記隣接断面の数に基づいて、
前記同一の欠陥の長さが同定される
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項10】
被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データをデジタル演算処理によって処理するための超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記探傷データから得られる超音波画像から前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理を、前記探傷データに対して行う形状識別処理ステップと、
形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像を認識し、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、
前記欠陥像と前記被検体に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定ステップと、
同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定ステップ
とを演算装置に実行させ、
前記超音波探傷では、所定の走査方向に沿って探触子を走査しながら、複数の断面について前記探傷データが取得され、
当該超音波探傷データ処理プログラムは、更に、
前記複数の断面のうちの対象断面の前記探傷データを、前記対象断面の前記走査方向前方及び/又は前記走査方向後方に隣接する所定数の隣接断面の探傷データを用いて修正する断面間強調処理ステップ
を前記演算装置に実行させ、
前記形状識別処理ステップでは、前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理が、修正された前記探傷データについて行われる
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項11】
被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データをデジタル演算処理によって処理するための超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記探傷データから得られる超音波画像から前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理を、前記探傷データに対して行う形状識別処理ステップと、
形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像を認識し、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像と前記被検体に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定ステップと、
同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定ステップ
とを演算装置に実行させ、
前記超音波探傷では、所定の走査方向に沿って探触子を走査しながら、複数の断面について前記探傷データが取得され、
当該超音波探傷データ処理プログラムは、更に、
前記形状識別処理ステップが行われた前記探傷データについて、前記複数の断面のうちの対象断面の前記探傷データを、前記対象断面の前記走査方向前方及び/又は前記走査方向後方に隣接する所定数の隣接断面の探傷データを用いて修正する処理を行う断面間強調処理ステップ
を前記演算装置に実行させる
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記断面間強調処理ステップでは、前記対象断面の各位置のエコー高さのデータが前記隣接断面の同一位置のエコー高さに応じて増加されるように前記対象断面の前記探傷データが修正される
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記寸法同定ステップでは、同一の欠陥に対応する欠陥像が現れている連続した断面の数と、前記対象断面の前記探傷データの修正に用いられた前記隣接断面の数に基づいて、前記同一の欠陥の長さが同定される
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項14】
被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データをデジタル演算処理によって処理するための超音波探傷データ処理装置であって、
前記探傷データから得られる超音波画像から前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理を、前記探傷データに対して行う形状識別処理手段と、
形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像を認識し、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像と前記被検体に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定手段と、
同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定手段
とを具備し、
前記同一性判定手段は、前記欠陥像の位置を代表する代表点を定め、前記代表点の間の距離から、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを判断する
超音波探傷データ処理装置。
【請求項15】
被検体に対して所定の走査方向に沿って探触子を走査しながら超音波探傷を行うことによって複数の断面について得られた探傷データをデジタル演算処理によって処理するための超音波探傷データ処理装置であって、
前記探傷データから得られる超音波画像から前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理を、前記探傷データに対して行う形状識別処理手段と、
形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像を認識し、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像と前記被検体に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定手段と、
同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定手段と、
前記複数の断面のうちの対象断面の前記探傷データを、前記対象断面の前記走査方向前方及び/又は前記走査方向後方に隣接する所定数の隣接断面の探傷データを用いて修正する断面間強調処理手段
とを具備し、
前記形状識別処理手段は、前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理を、修正された前記探傷データについて行う
超音波探傷データ処理装置。
【請求項16】
被検体に対して所定の走査方向に沿って探触子を走査しながら超音波探傷を行うことによって複数の断面について得られた探傷データをデジタル演算処理によって処理するための超音波探傷データ処理装置であって、
前記探傷データから得られる超音波画像から前記被検体の形状に対応する形状像を消去するための処理を、前記探傷データに対して行う形状識別処理手段と、
形状像が消去された前記超音波画像に現れている欠陥像を認識し、前記欠陥像のうちの一の欠陥像が他の欠陥像と同一の欠陥に起因するか否かを所定の基準によって判断して、前記欠陥像と前記被検体に存在する前記欠陥との対応付けを行う同一性判定手段と、
同一の欠陥に対応付けられた前記欠陥像から、前記同一の欠陥の寸法を同定する寸法同定手段と、
前記形状識別処理手段によって前記形状像を消去するため処理が行われた前記探傷データについて、前記複数の断面のうちの対象断面の前記探傷データを、前記対象断面の前記走査方向前方及び/又は前記走査方向後方に隣接する所定数の隣接断面の探傷データを用いて修正する処理を行う断面間強調処理手段
とを具備する
超音波探傷データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図23D】
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【図23E】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−8142(P2012−8142A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187982(P2011−187982)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【分割の表示】特願2006−128351(P2006−128351)の分割
【原出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】