説明

超音波探触子

【課題】 被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することが可能な超音波探触子を提供する。
【解決手段】 超音波探触子の筐体5に内包されている超音波センサ3から発生する熱を筐体外部に放熱するための放熱窓6を設ける。この放熱窓に用いられる材料の熱伝導率Mは、筐体に用いられる材料の熱伝導率Nと、N<Mの関係を有している。また、超音波センサの周囲に充填されている封止層7に接するように、放熱窓を設ける。これにより、超音波センサで発生した熱は、封止層を介して放熱窓に伝わり、放熱窓を通じて外部に放熱される。さらに、放熱窓に用いられる材料の熱伝導率Mは、封止層に用いられる材料の熱伝導率Fと、M≧Fの関係を有するようにすることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断に利用される超音波探触子に関し、特に、超音波センサの熱を放熱し、被検体に接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することのできる超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波探触子は、図4に示すように、その筐体101が、超音波センサ102と、音響レンズ103と、システム本体(超音波診断装置本体、図示せず)と電気信号を送受信する信号線104と、多数の信号線104の集合体であるケーブル105と、筐体101の内部に充填される封止層106とを収容する構造を有している。封止層106は、超音波センサの機械的な固定を行うとともに、複数の構成要素から組み立てられる筐体101の接合のために充填される。この封止層106には、例えば、エポキシ樹脂や発泡ウレタンなどが採用されている。また、筐体101には、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂や、ポリフェニレンエーテルなどの材料が用いられている。
【0003】
超音波センサ102は、システム本体からの電気信号を超音波に変換し、音響レンズ103を介して、音響レンズ103に接触する被検体(図示せず)の体内に超音波を放射するが、このとき、超音波センサ102に熱が発生し、この熱が音響レンズ103に伝わって、音響レンズ103の被検体側の表面温度を上昇させることが知られている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、被検体に接触している部分の温度上昇を抑制するため、超音波探触子の筐体内に2種類のモールド材を充填させて、2種類の封止層を形成する技術が開示されている。熱の発生源である振動子周辺に充填されるモールド材として、相対的に熱伝導率が高く、かつ比重が大きい材料が用いられる。
【0005】
また、超音波診断時に、超音波探触子の送信電圧や使用継続時間に制限を設けることによって、音響レンズ103の被検体側の表面温度が、安全基準に定められている所定の温度より高くならないようにする方法も採用されている。
【特許文献1】特開平10−85219号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の超音波探触子においては、筐体に用いられている材料の熱伝導率が約0.2[W/(m・k)]と低いため、筐体内部の熱を十分に外部に放熱することができない。その結果、筐体内部で、熱が蓄積してしまい、超音波センサで発生する熱に関して、音響レンズ以外の箇所に分散する熱量が少ないという問題点がある。
【0007】
また2種類以上の封止層を設ける場合、2度のモールド材の注入作業や、それぞれのモールド材の硬化時間などを必要とするため、時間や手間などの作業性が悪いという問題点もある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、被検体に接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することが可能な超音波探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の超音波探触子は、少なくとも超音波センサが内包されている筐体を有する超音波探触子であって、
筐体の一部に放熱窓が設けられているとともに、筐体に用いられる材料の熱伝導率Nと放熱窓に用いられる材料の熱伝導率MとがN<Mの関係を有しており、使用時に超音波センサにおいて発生する熱が放熱窓に伝導して放熱窓から筐体の外部に放熱されるように構成されている。
この構成により、筐体内部に蓄積される熱や被検体側に伝わる熱を低減させることが可能となり、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明の超音波探触子は、上記の構成に加えて、放熱窓が超音波センサの周囲に充填されている封止層に接するように筐体の一部に設けられている。
この構成により、超音波センサで発生した熱を封止層を介して放熱窓に伝え、放熱窓を通じて外部に放熱することが可能となり、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明の超音波探触子は、上記の構成に加えて、放熱窓に用いられる材料の熱伝導率Mと封止層に用いられる材料の熱伝導率FとがM≧Fの関係を有している。
この構成により、効率的に封止層内の熱を放熱窓に伝えて、外部に放熱することが可能となり、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の超音波探触子は、上記の構成に加えて、超音波センサの周囲に充填されている封止層、使用時に被検体に接触する音響レンズ、超音波センサのうちの少なくとも1つと放熱窓の両方に接する熱伝達部材が設けられており、熱伝達部材の熱伝導率D1と封止層に用いられる材料の熱伝導率FとがD1>Fの関係を有している。
この構成により、超音波センサで発生する熱を、超音波センサ、音響レンズ、封止層のうちの少なくとも1つの構成要素から、熱伝導部材を通じて放熱窓に伝えて、外部に放熱することが可能となり、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の超音波探触子は、上記の構成に加えて、超音波センサの周囲に充填されている封止層に接するように筐体の内壁の一部又は全部に密着する熱伝導部材が設けられており、熱伝導部材の熱伝導率D2と筐体に用いられる材料の熱伝導率NとがD2>Nの関係を有している。
この構成により、超音波センサで発生する熱を封止層を介して熱伝導層に伝え、さらに、熱伝導層から放熱窓を通じて外部に放熱することが可能となり、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することが可能となる。また、筐体の内壁の広い範囲に熱伝導層を密着させた場合には、超音波センサで発生する熱を筐体全体に分散させることが可能となり、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記構成を有しており、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することができるという効果を有している。さらに、少ない封止材(モールド材)によって、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することができるので、超音波探触子の軽量化及び操作性の向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1〜第3の実施の形態における超音波探触子について説明する。
【0016】
<第1の実施の形態>
まず、本発明の第1の実施の形態における超音波探触子について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における超音波探触子の概略構造図である。なお、図1には、超音波探触子の短軸方向(使用時に接触する被検体の表面に対して略平行となる方向)に対して垂直な断面が模式的に図示されている。
【0017】
図1に示す超音波探触子は、ケーブル1、信号線2、超音波センサ3、音響レンズ4、筐体5、放熱窓6、封止層7を有している。ケーブル1は、システム本体(超音波診断装置本体、図示せず)との間で電気信号を送受信する複数の信号線2の集合体であり、シリコンやポリ塩化ビニルなどの材料からなるシースで覆われている。また、信号線2は、超音波センサ3内の圧電素子(図示せず)と電気的に接続されている。したがって、超音波センサ3とシステム本体とは、ケーブル1及び信号線2を介して電気的に接続されている。
【0018】
また、超音波センサ3の被検体(図示せず)と接触する側(以下、被検体側と呼ぶ)には、シリコン材などによって構成されており、被検体と接触して超音波を効率的に送受信するために、関心領域に応じた深さに焦点が合うような曲面形状を有する音響レンズ4が設けられている。
【0019】
また、筐体5は、ABS樹脂やポリフェニレンエーテルなどの材料によって構成されており、超音波探触子全体の形状を形成している。この筐体5は、ケーブル1、信号線2、超音波センサ3、音響レンズ4のそれぞれの一部又はすべてを収容している。また、筐体5の一部には、筐体5の内部の熱を外部に放熱するための放熱窓6が設けられている。
【0020】
この放熱窓6に用いられる材料としては、筐体5に用いられる材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する材料が用いられる。すなわち、筐体5の熱伝導率Nと放熱窓6の熱伝導率Mとの関係は、N<Mである。
【0021】
また、超音波センサ3の周囲や音響レンズ4の一部と接するように、エポキシ樹脂やシリコン樹脂などを充填・硬化させた封止層7が存在する。放熱窓6は、この封止層7の一部と接するように設けられている。
【0022】
次に、上述のような構成を有する、図1に示す超音波探触子に係る動作について説明する。まず、ケーブル1と信号線2を介して、システム本体より電気信号が超音波センサ3の圧電素子に加えられると、圧電素子は、電気信号を超音波に変換する。このときに発生する熱は、超音波センサ3に接する音響レンズ4や封止層7に伝導する。すなわち、超音波センサ3で発生した熱は、音響整合板(図示せず)を介して、音響レンズ4の方向(被検体側の方向)に伝導して音響レンズ4に伝わったり、あるいは、被検体と反対のバッキング(図示せず)や封止層7の方向に対して伝わったりする。
【0023】
封止層7に伝わった熱は、さらに筐体5や放熱窓6に伝わる。ここで、上述のように、放熱窓6には、筐体5よりも熱伝導率が高い材料が用いられているため、熱が筐体5よりも放熱窓6に対して積極的に伝わり、この放熱窓6から外部に放熱が行われることによって、筐体5内に蓄積される熱を低減させることができるようになるとともに、音響レンズ4に伝わる熱を低減させて、音響レンズ4の表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0024】
なお、放熱窓6の熱伝導率Mは、封止層7の熱伝導率Fに対して、M≧Fの関係とした場合には、より少ない面積の放熱窓6で熱を外部に放熱することが可能となる。すなわち、上述の構成において、更に、放熱窓6の熱伝導率Mと封止層7の熱伝導率Fとの関係が、M≧Fとなるようにすることが望ましい。なお、封止層7の熱伝導率Fは、例えば、0.7[W/(m・k)]以上であることが望ましい。
【0025】
また、図1では、封止層7が、超音波センサ3の上面(被検体側と対向する面)と同一レベルの面まで充填されているが、例えば、信号線2まで充填させるなど、任意の位置まで充填させることが可能である。例えば、封止層7を信号線2まで充填させた場合には、封止層7の体積が増加する結果、封止層7全体の熱容量が増加し、音響レンズ4の表面温度の上昇を更に抑制することが可能となる。
【0026】
また、図1では、放熱窓6と封止層7とが、それぞれ異なる部材によって構成されている状態が図示されているが、放熱窓6と封止層7とを同一の材料によって構成してもよく、さらには、放熱窓6と封止層7とを一体成型してもよい。
【0027】
また、放熱窓6の形成方法としては、例えば、まず、あらかじめ孔(筐体5と放熱窓6との境界面に対応する部分)が設けられた筐体5を用いて、超音波センサ3と音響レンズ4、信号線2、ケーブル1を収容して組み立てを行い、続いて、筐体5の孔の外側のマスキング処理を行う。次に、超音波センサ3の周囲に封止層7を形成するために、エポキシ樹脂やシリコン樹脂などの封止材(モールド材)を注入する。このとき、封止材が、上述の孔にも充填されることで、封止層7と同時に放熱窓6を形成することが可能となる。この製造方法によれば、製造工程の簡便化が実現される。
【0028】
また、放熱窓6の別の形成方法としては、あらかじめ孔(筐体5と放熱窓6との境界面に対応する部分)が設けられた筐体5を用いて、超音波センサ3と信号線2、ケーブル1を収容して組み立てを行い、続いて、筐体5の孔の外側と、超音波センサ3の被検体側とに対してマスキング処理を行う。超音波センサ3の被検体側に対しては、例えば、音響レンズ4の形状に応ずる形状の金型などでマスキングを行う。次に、超音波センサ3の周囲に封止層7及び音響レンズ4を形成するために、エポキシ樹脂やシリコン樹脂などの封止材(モールド材)を注入する。このとき、封止材が、上述の孔にも充填されることで、封止層7と同時に放熱窓6を形成することが可能となる。
【0029】
なお、上述の放熱窓6の形成方法では、封止材の注入によって、放熱窓6と封止層7とが同時に形成されるが、例えば、上述の孔の内側にマスキング処理を行い、封止材の充填・硬化による封止層7の形成後に放熱窓6の形成を行うなど、放熱窓6の形成工程と、封止層7の形成工程とをそれぞれ別々に行うことも可能である。
【0030】
以上、説明したように、本発明の第1の実施の形態における超音波探触子によれば、封止層7と接するように筐体5の一部に放熱窓6を設けるとともに、筐体5の熱伝導率Nと放熱窓6の熱伝導率Mとの関係が、N<Mとなるようにすることによって、超音波センサ3で発生した熱を積極的に放熱窓6に伝導して、外部に放熱することが可能となる。その結果、音響レンズ4の表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0031】
また、従来は、封止層7の体積を大きくすることによって、熱がなるべく封止層7内に分散するようにしていたが、本発明の第1の実施の形態における超音波探触子によれば、封止層7をケーブル1に達するまで充填させる必要がなくなり、封止層7の体積を必要最小限にまで小さくすることができ、超音波探触子の軽量化及び操作性の向上を図ることが可能となる。
【0032】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態における超音波探触子について説明する。図2は、本発明の第2の実施の形態における超音波探触子の概略構造図である。なお、図2には、超音波探触子の短軸方向(使用時に接触する被検体の表面に対して略平行となる方向)に対して垂直な断面が模式的に図示されている。
【0033】
図2に示す超音波探触子は、ケーブル1、信号線2、超音波センサ3、音響レンズ4、筐体5、放熱窓6、封止層7、熱伝導路8を有している。なお、ケーブル1、信号線2、超音波センサ3、音響レンズ4、筐体5、放熱窓6、封止層7に関しては、上述の第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0034】
図2に示す超音波探触子は、図1に示す超音波探触子に、さらに、放熱窓6及び封止層7の両方に接するように熱伝達部材を用いた熱伝導路8が設けられている。この熱伝導路8に用いられる材料としては、封止層7に用いられる材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する材料が用いられる。すなわち、封止層7の熱伝導率Fと熱伝導路8の熱伝導率D1との関係は、F<D1である。熱伝導路8には、例えば、チタン、鉄、銅、真鍮、金、銀、カーボンナノチューブや、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムや、グラファイトを含むプラスチックやシリコンやエポキシ、アクリル、ウレタンなどの材料が利用可能である。
【0035】
また、さらに、熱伝導路8は、放熱窓6及び封止層7の両方に加えて、超音波センサ3の一部に接するように配置されてもよい。この場合には、熱伝導路8は、超音波センサ3のバッキング(図示せず)や、音響整合板(図示せず)に接するように配置されることが望ましい。また、さらに、熱伝導路8が、音響レンズ4と接するように配置されてもよい。
【0036】
次に、上述のような構成を有する、図2に示す超音波探触子に係る動作について説明する。上述の第1の実施の形態における超音波探触子と同様に、超音波センサ3において発生した熱は、超音波センサ3に接する音響レンズ4や封止層7を始めとする様々な方向に伝導する。このとき、封止層7に伝導した熱は、相対的に熱伝導率の大きい熱伝導路8を通じて、迅速に、放熱窓6に伝導される。すなわち、熱伝導路8は、封止層7よりも早く熱を伝えることが可能であり、熱伝導路8の存在によって、上述の第1の実施の形態における超音波探触子よりも、音響レンズ4の表面温度の上昇を抑制する効果を高めることが可能となる。
【0037】
また、熱伝導路8を超音波センサ3の一部に接触するように配置した場合には、熱伝導路8は、超音波センサ3で発生した熱を、直接、放熱窓6にまで導くことが可能となり、音響レンズ4の表面温度の上昇を抑制する効果を更に高めることが可能となる。
【0038】
なお、図2に図示されている熱伝導路8は、放熱窓6から水平方向に直線的に配置されているが、封止層7と熱伝導路8との接触面積を大きくするために、例えば、熱伝導路8が、封止層7内を上下あるいは左右に蛇行するように構成したり、熱伝導路8に突起部を設けたりすることも可能である。例えば、熱伝導路8を蛇行形状とする場合には、熱伝導路8の材料として、柔軟性のある銅箔、アルミ箔、シリコンシート、グラファイトシートなどを用いることが望ましい。
【0039】
また、図2では、放熱窓6と封止層7とが接するように構成されているが、例えば、放熱窓6を封止層7と接していない筐体5の一部に設け、この放熱窓6と封止層7とを熱伝導路8によって接続することも可能である。
【0040】
また、さらに、封止層7を設けずに、熱伝導路8を超音波センサ3や音響レンズ4と直接接するように配置することも可能である。この場合には、封止層7を設けないため、超音波探触子の軽量化及び操作性の向上を図ることが可能となる。
【0041】
以上、説明したように、本発明の第2の実施の形態における超音波探触子によれば、封止層7と接するように筐体5の一部に放熱窓6を設けるとともに、筐体5の熱伝導率Nと放熱窓6の熱伝導率Mとの関係が、N<Mとなるようにし、さらに、放熱窓6に熱を導くために、封止層7の熱伝導率より大きい熱伝導率を有する熱伝導路8を放熱窓6と接するように配置することによって、超音波センサ3で発生した熱を積極的に放熱窓6に伝導して外部に放熱することが可能となる。その結果、音響レンズ4の表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0042】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態における超音波探触子について説明する。図3は、本発明の第3の実施の形態における超音波探触子の概略構造図である。なお、図3には、超音波探触子の短軸方向(使用時に接触する被検体の表面に対して略平行となる方向)に対して垂直な断面が模式的に図示されている。
【0043】
図3に示す超音波探触子は、ケーブル1、信号線2、超音波センサ3、音響レンズ4、筐体5、放熱窓6、封止層7、熱伝導層9を有している。なお、ケーブル1、信号線2、超音波センサ3、音響レンズ4、筐体5、封止層7に関しては、上述の第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0044】
図3に示す超音波探触子は、複数の放熱窓6を有しており、この複数の放熱窓6のうちの少なくとも1つは、封止層7から離れた位置(接しない位置)に位置されている。すなわち、図3に示す超音波探触子では、封止層7が超音波センサ3の上面(被検体側と対向する面)と同一レベルまで充填されているが、この封止層7の上面レベルよりも上部(ケーブル1が配置されている側)に位置する筐体5の任意の箇所に、放熱窓6が配置される。なお、図3に図示されているように、封止層7と接するような位置に放熱窓6を更に設けてもよい。
【0045】
さらに、筐体5の内壁部には、封止層7と、封止層7から離れた位置に配置されている放熱窓6との両方に接する熱伝導層9が配置されている。この熱伝導層9に用いられる材料としては、筐体5に用いられる材料の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する材料が用いられる。すなわち、筐体5の熱伝導率Nと熱伝導層9の熱伝導率D2との関係は、N<D2である。
【0046】
次に、上述のような構成を有する、図3に示す超音波探触子に係る動作について説明する。上述の第1の実施の形態における超音波探触子と同様に、超音波センサ3において発生した熱は、超音波センサ3に接する音響レンズ4や封止層7を始めとする様々な方向に伝導する。このとき、封止層7に伝導した熱は、熱伝導層9全体に伝わり、熱伝導層9と接する任意の位置に配置された放熱窓6から外部に放熱される。すなわち、熱伝導層9によって、封止層7の熱を、筐体5の任意の位置に配置された放熱窓6に伝えることが可能となる。
【0047】
なお、熱伝導層9の存在によって、放熱窓6を筐体5の任意の位置に配置することが可能となり、放熱窓6を複数設けたり、放熱窓6の窓面積を大きく設定したりすることが可能となる。これにより、上述の第1の実施の形態における超音波探触子よりも、音響レンズ4の表面温度の上昇を抑制する効果を高めることが可能となる。
【0048】
なお、熱伝導層9としては、カーボンナノチューブや酸化マグネシウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムやグラファイトシートやTPG(トリプロピレングリコール)シートなどから構成され、熱伝導率が、200[W/(m・k)]以上の材料を特徴とすることが望ましい。
【0049】
また、放熱窓6としては、プラスチックやシリコン樹脂やエポキシ樹脂、材質からなり、熱伝導率が、0.7[W/(m・k)]以上であることを特徴とするが、チタン、鉄、銅、真鍮、金、銀、カーボンナノチューブや酸化マグネシウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムや、グラファイトを含むプラスチックやシリコン樹脂やエポキシ樹脂、材質からなり、熱伝導率が、20[W/(m・k)]以上であることを特徴とすることが望ましい。また、放熱窓6として、絶縁材料(絶縁体)を用いることも可能であり、これによって、外部からの電気的衝撃などから内部の超音波センサの性能劣化を防ぐという効果を持たせることも可能である。
【0050】
なお、図3では、放熱窓6及び封止層7の両方と接するように、熱伝導層9が配置されているが、例えば、さらに、超音波センサ3とも接するように熱伝導層9を配置することによって、音響レンズ4の表面温度の上昇を抑制する効果をより高めることが可能となる。
【0051】
以上、説明したように、本発明の第3の実施の形態における超音波探触子によれば、筐体5の任意の位置に放熱窓6を設け、筐体5の内壁部に、筐体5の熱伝導率より大きい熱伝導率を有する熱伝導層9を、例えば、放熱窓6及び封止層7の両方と接するように配置することによって、超音波センサ3で発生した熱を積極的に放熱窓6に伝導して外部に放熱することが可能となる。その結果、音響レンズ4の表面温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0052】
なお、上述の第1〜第3の実施の形態において説明した本発明の概念は、任意の形状の超音波探触子に適用可能である。また、上述の第1〜第3の実施の形態において説明した本発明の概念を、適宜組み合わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る超音波探触子は、被検体と接触する音響レンズの表面温度の上昇を抑制することができるという効果を有しており、超音波探触子を用いて超音波診断を行う各種医療分野や、超音波探触子の製造を行う医療装置の製造分野などに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態における超音波探触子の概略構造図
【図2】本発明の第2の実施の形態における超音波探触子の概略構造図
【図3】本発明の第3の実施の形態における超音波探触子の概略構造図
【図4】従来の技術に係る超音波探触子の概略構造図
【符号の説明】
【0055】
1、105 ケーブル
2、104 信号線
3、102 超音波センサ
4、103 音響レンズ
5、101 筐体
6 放熱窓
7、106 封止層
8 熱伝導路
9 熱伝導層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも超音波センサが内包されている筐体を有する超音波探触子であって、
前記筐体の一部に放熱窓が設けられているとともに、前記筐体に用いられる材料の熱伝導率Nと前記放熱窓に用いられる材料の熱伝導率MとがN<Mの関係を有しており、使用時に前記超音波センサにおいて発生する熱が前記放熱窓に伝導して前記放熱窓から前記筐体の外部に放熱されるように構成されている超音波探触子。
【請求項2】
前記放熱窓が前記超音波センサの周囲に充填されている封止層に接するように前記筐体の一部に設けられている請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記放熱窓に用いられる材料の熱伝導率Mと前記封止層に用いられる材料の熱伝導率FとがM≧Fの関係を有している請求項2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記超音波センサの周囲に充填されている封止層、使用時に被検体に接触する音響レンズ、前記超音波センサのうちの少なくとも1つと前記放熱窓の両方に接する熱伝達部材が設けられており、前記熱伝達部材の熱伝導率D1と前記封止層に用いられる材料の熱伝導率FとがD1>Fの関係を有している請求項1から3のいずれか1つに記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記超音波センサの周囲に充填されている封止層に接するように前記筐体の内壁の一部又は全部に密着する熱伝導部材が設けられており、前記熱伝導部材の熱伝導率D2と前記筐体に用いられる材料の熱伝導率NとがD2>Nの関係を有している請求項1から4のいずれか1つに記載の超音波探触子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−158483(P2006−158483A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350796(P2004−350796)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】