超音波探触子
【課題】 超音波送信素子の指向性が広く、医療器具から十分な量の反射波を受信しつつ、患部からも十分な量の反射波を受信することができ、医療器具と患部の両方について超音波画像を感度良く取得可能な超音波探触子を提供する。
【解決手段】 本発明に係る超音波探触子1は、処置すべき患部Cに向かって超音波10を送信してその反射波13を受信する探触子本体3に、患部Cの処置に用いる医療器具Aを挿通させるための器具挿通穴4が形成されてなる超音波探触子1において、探触子本体3が、医療器具Aに向かって超音波12を送信してその反射波16を受信する器具検出部6と、患部Cに向かって超音波10を送信してその反射波13を受信する患部検出部7と、を備えるものである。
【解決手段】 本発明に係る超音波探触子1は、処置すべき患部Cに向かって超音波10を送信してその反射波13を受信する探触子本体3に、患部Cの処置に用いる医療器具Aを挿通させるための器具挿通穴4が形成されてなる超音波探触子1において、探触子本体3が、医療器具Aに向かって超音波12を送信してその反射波16を受信する器具検出部6と、患部Cに向かって超音波10を送信してその反射波13を受信する患部検出部7と、を備えるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内にある患部の3次元形状を体外から超音波で検出する超音波探触子に関し、特に、患部の処置に用いる医療器具を挿通させるための器具挿通穴が形成された超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、バイオプシーや鉗子やレーザメスといった針状の医療器具を患者の体内に刺し込み、体外で医療器具を操作することによって体内の患部を処置する場合がある。この場合、体外において患部の形状を視認しながら医療器具を操作できれば、より正確な患部処置が可能となる。ここで、患部の形状を視認するための手段としては、医療器具の先端部にCCDカメラを装備する方法があるが、CCDカメラでは患部の表面形状しか視認できないため、患部と医療器具の相対的な位置関係、例えば医療器具を患部に刺し込んだ深さを正確に認識できないという問題がある。
【0003】
この問題を解消すべく、超音波を用いて患部の深さ方向まで含めた3次元形状を検出する超音波探触子が従来用いられている(例えば、特許文献1の明細書の段落[0003])。この特許文献1では、超音波探触子に所定幅の溝703が設けられ、この溝703の部分から医療器具としての生検針701が体内に挿入される。そして、患部の3次元形状を示す超音波画像と、生検針701の超音波画像とを同一画面上に表示させる。これにより、患部と生検針701の先端部との相対的な位置関係を正確に認識することができ、より正確な患部の処置が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−137549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す従来の超音波探触子では、生検針701の超音波画像を感度良く取得するためには、図7に示す超音波振動子702が生検針701から十分な量の反射波を受信する必要がある。従って、生検針701に対して十分な量の超音波を送信する必要があり、そのためには超音波振動子702の指向性を広くする、すなわち超音波振動子702から直進前方だけでなく斜め前方にも広がって超音波が送信されるようにする必要がある。そこで、超音波振動子702の指向性を広げるべく、従来の超音波探触子では超音波振動子702の表面積を狭く形成していた。しかし、このような従来の超音波探触子では、超音波振動子702の表面積が狭い分、患部に対して送信する超音波及びその反射波の信号が弱くなる。そのため、患部の超音波画像を感度良く取得することができず、患部の処置を正確に行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、超音波送信素子の指向性が広く、医療器具から十分な量の反射波を受信しつつ、患部からも十分な量の反射波を受信することができ、医療器具と患部の両方について超音波画像を感度良く取得可能な超音波探触子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る超音波探触子は、処置すべき患部に向かって超音波を送信してその反射波を受信する探触子本体に、前記患部の処置に用いる医療器具を挿通させるための器具挿通穴が形成されてなる超音波探触子において、前記探触子本体が、前記医療器具に向かって超音波を送信してその反射波を受信する器具検出部と、前記患部に向かって超音波を送信してその反射波を受信する患部検出部と、を備えるものである。
【0008】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具検出部の送受信面の面積が、前記患部検出部の送受信面の面積より小さいものである。
【0009】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具検出部が、前記器具挿通穴を包囲して設けられ、前記患部検出部が前記器具検出部を包囲して設けられたものである。
【0010】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具挿通穴が長穴状に形成されたものである。
【0011】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記探触子本体に、前記器具挿通穴まで到達する切り欠きが形成されたものである。
【0012】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具検出部の送受信面が、前記器具挿通穴の径方向外側から径方向内側に向かって低くなるように傾斜したものである。
【0013】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具検出部から前記医療器具に向かって送信される超音波の反射波が、前記患部検出部によって受信されるものである。
【0014】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記患部検出部が、前記器具挿通穴の周方向に沿ってアレイ状に分割されたものである。
【0015】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記患部検出部が、前記器具挿通穴の径方向に沿ってアレイ状に分割されたものである。
【0016】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記患部検出部を構成する複数の分割素子が、フェーズドアレイ走査されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る超音波探触子によれば、患部を検出するための患部検出部とは別に、医療器具を検出するための器具検出部を設けるので、医療器具をより感度良く検出することができ、患部のより正確な処置が可能となる。
【0018】
本発明に係る超音波探触子によれば、器具検出部の送受信面の面積が、患部検出部の送受信面の面積より小さいので、器具検出部の指向性が広くなり、器具検出部からは直進前方だけでなく斜め前方にも広がって超音波が送信される。これにより、医療器具からより多くの反射波を受信することができ、医療器具をより感度良く検出することができる。
【0019】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、器具検出部が器具挿通穴を包囲して設けられ、患部検出部が器具検出部を包囲して設けられるので、医療器具の刺し込み方向について医療器具と患部との相対的な位置関係を認識することができる。
【0020】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、器具挿通穴が長穴状に形成されるので、医療器具を器具挿通穴に沿って動かすことができ、医療器具による患部の処置が行いやすい。
【0021】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、探触子本体に器具挿通穴まで到達する切り欠きが形成されたので、医療器具を患部に刺し込んだ状態のまま超音波探触子だけを容易に取り外すことができ、医療器具による患部の処置が行いやすい。
【0022】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、器具検出部の送受信面が、器具挿通穴の径方向外側から径方向内側に向かって低くなるように傾斜しているので、器具検出部から斜め前方に広がって超音波が送信されやすい。これにより、器具検出部によって医療器具をより感度良く検出することができる。
【0023】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、器具検出部から医療器具に向かって送信される超音波の反射波が、送受信面の面積が大きい患部検出部によって受信されるので、医療器具をより感度良く検出することができる。
【0024】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、患部検出部が器具挿通穴の周方向に沿ってアレイ状に分割されているので、器具挿通穴の周方向について医療器具と患部との相対的な位置関係を認識することができる。
【0025】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、患部検出部が器具挿通穴の径方向に沿ってアレイ状に分割されているので、器具挿通穴の径方向について医療器具と患部との相対的な位置関係を認識することができる。
【0026】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、患部検出部を構成する複数の分割素子が、フェーズドアレイ走査されるので、患部の周囲の状況を広く観測しながら医療器具を操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施例に係る超音波探触子1の外観を示す概略斜視図。
【図2】超音波探触子1の使用手順と作用効果を説明するための説明図。
【図3】医療器具Aの挿通前に表示部5に表示される波形の一例を示す図。
【図4】超音波探触子1の使用手順と作用効果を説明するための説明図。
【図5】医療器具Aの挿通後に表示部5に表示される波形の一例を示す図。
【図6】医療器具Aの挿通後に表示部5に表示される波形の一例を示す図。
【図7】超音波探触子1の使用手順と作用効果を説明するための説明図。
【図8】本発明の第2実施例に係る超音波探触子20の外観を示す概略斜視図。
【図9】本発明の第3実施例に係る超音波探触子30の外観を示す概略斜視図。
【図10】本発明の第4実施例に係る超音波探触子40の外観を示す概略斜視図。
【図11】本発明の第5実施例に係る超音波探触子50を示す概略縦断面図。
【図12】本発明の第6実施例に係る超音波探触子60の外観を示す概略斜視図。
【図13】本発明の第7実施例に係る超音波探触子70の外観を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本発明の第1実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図1は、第1実施例に係る超音波探触子1の外観を示す概略斜視図である。尚、図1では説明の便宜上、超音波探触子1の一部を破断した状態で図示している。
【0029】
超音波探触子1は、図1に示すように、基板2の上に探触子本体3が固定されたものであり、その中央部を貫通して、後述する医療器具Aを挿通させるための器具挿通穴4が形成されている。そして、探触子本体3は、表示部5に対して電気的に接続されている。
【0030】
前記基板2は、探触子本体3を支持するためのものである。この基板2は、樹脂等からなる板状の部材であって、図1に示すように横断面リング状に形成されている。そして、この基板2の内周面が前記器具挿通穴4の一部を構成している。尚、この基板2は、超音波探触子1に必須の構成ではなく、探触子本体3だけで超音波探触子1を構成してもよい。また、基板2の形状は、探触子本体3の形状に合わせて適宜設計変更が可能である。
【0031】
前記探触子本体3は、対象物に向かって超音波を送信し、その反射波を受信することによって対象物の超音波画像を取得するためのものである。この探触子本体3は、いわゆる超音波送受信兼用素子であって、超音波送信素子の機能、すなわちある周波数の電気信号が入力されるとその周波数の超音波を送信する機能と、超音波受信素子の機能、すなわちある周波数の超音波を受信するとその周波数の電気信号を出力する機能の両方を兼ね備えている。そして、この探触子本体3は、図1に示すように、断面リング形状を有し、径方向に向かって内側の領域である器具検出部6と、径方向に向かって外側の領域である患部検出部7とに分割されている。
【0032】
器具検出部6は、超音波探触子1に挿通させる医療器具の超音波画像を取得するための領域である。ここで、挿通させる医療器具とは、例えばバイオプシーや鉗子やレーザメスといった細長い針状の器具である。従って、このような医療器具の形状を考慮すれば、医療器具に対して十分な量の超音波を送信して十分な量の反射波を受信するためには、器具検出部6の指向性を広くする、すなわち器具検出部6から直進前方だけでなく斜め前方にも広がって超音波が送信されるようにする必要がある。そこで本実施例では、図1に示すように、器具挿通穴4のすぐ外側に肉薄な器具検出部6を設け、器具検出部6の送受信面8の面積を狭くすることにより、その指向性を広くしている。
【0033】
患部検出部7は、体内にある患部の超音波画像を取得するための領域である。この患部検出部7に関しては、患部に対して十分な量の超音波を送信して十分な量の反射波を受信するために、超音波を送信及び受信する面の面積を広くするのが好適である。そこで本実施例では、図1に示すように、器具検出部6の外側に肉厚な患部検出部7を設け、患部検出部7の送受信面9の面積を器具検出部6の送受信面8と比較して広く確保している。
【0034】
前記表示部5は、探触子本体3から出力された電気信号を視認可能に表示するためのものである。この表示部5は、例えば液晶ディスプレイであって、図1に示すように、探触子本体3を構成する器具検出部6と患部検出部7の双方に対して電気的に接続されている。これにより、器具検出部6と患部検出部7から出力された各電気信号が、同一画面上に表示されるようになっている。
【0035】
次に、第1実施例に係る超音波探触子1の使用手順及びその作用効果について説明する。超音波探触子1を使用する場合、まず使用者は、図2に示すように、医療器具Aを挿通していない状態の医療用超音波探触子1を、その探触子本体3の側を患者に向けて体表面Bに押し当てる。そして、この状態で探触子本体3に所定周波数の電気信号を入力すると、探触子本体3から超音波の送信が開始される。より詳細には、探触子本体3を構成する患部検出部7からは、主に直進前方に超音波10が送信される一方、指向性の広い器具検出部6からは、直進前方の超音波11だけでなく斜め前方にも超音波12が送信される。
【0036】
その後、患部検出部7から送信された超音波10は図2に示す患部Cで反射され、その反射波13が患部検出部7によって受信されることにより、患部検出部7が反射波13と同じ周波数の電気信号を出力する。この電気信号は、図1に示す表示部5へと送られ、表示部5に電気信号の波形が表示される。ここで、図3は、表示部5に表示される波形の一例を示す図であり、横軸が経過時間を縦軸が振幅をそれぞれ表している。使用者は、この波形14を見ることにより、時刻T1に探触子本体3から超音波の送信が開始されることによって波形14の振幅が大きく変化し、その後時刻T2に、患部Cからの反射波13を患部検出部7が受信することによって波形14の振幅が大きく変化する様子を視覚的に確認することができる。
【0037】
一方、図2に示すように、器具検出部6から送信された超音波は、直進前方に送信された超音波11に関しては患部Cによって反射され、その反射波15が器具検出部6によって受信される。しかし、斜め前方に送信された超音波12は、前述のように器具挿通穴4にはまだ医療器具Aが挿通されていないため、器具検出部6は医療器具Aからの反射波を受信しない。従って、図3に示す波形14には、器具検出部6が医療器具Aからの反射波を受信することによって振幅が大きく変化する点は現れない。
【0038】
次に、使用者は、図4に示すように、医療器具Aを超音波探触子1の器具挿通穴4に挿通させ、更にその針状の先端を体表面Bから体内へと刺し込む。この時、患部検出部7から送信された超音波10が患部Cで反射され、その反射波13が患部検出部7によって受信される点は前述と同様である。一方、器具検出部6から斜め前方に送信された超音波12は、体内に刺し込まれた医療器具Aで反射され、その反射波16が器具検出部6によって受信される。ここで、図5は、医療器具Aを体内に刺し込んだ時に表示部5に表示される波形の一例を示す図である。使用者は、この波形17を見ることにより、時刻T1と時刻T2の間の時刻T3に、器具検出部6が医療器具Aからの反射波17を受信することによって波形17が大きく変化する様子を視覚的に確認することができる。尚、図4では、器具検出部6から直進前方に送信される超音波については、図2と同じであるため図示を省略している。
【0039】
その後、使用者が医療器具Aを操作して体内の更に深部へと刺し込むと、それに従って器具検出部6から医療器具Aの先端までの距離が増加する分、器具検出部6が超音波12を送信してからその反射波16を受信するまでの時間が長くなる。これにより、図6に示すように、表示部5に表示される波形18では、器具検出部6が反射波16を受信する時刻が徐々に遅くなる、すなわち図6で時刻T2側へシフトし、時刻T4に振幅が大きく変化するようになる。
【0040】
そして、図7に示すように、医療器具Aの先端が患部Cに到達すると、器具検出部6が超音波12を送信してからその反射波16を受信するまでの時間が、患部検出部7が超音波10を送信してからその反射波13を受信するまでの時間に略等しくなる。これにより、図に詳細は示さないが、表示部5に表示される波形では、器具検出部6が反射波16を受信する時刻が、患部検出部7が反射波13を受信する時刻T2にほぼ一致し、振幅の変化が互いに重なり合う。使用者は、振幅の変化が互いに重なり合う様子を視覚的に確認することにより、医療器具Aの先端が患部Cに到達したことを認識することができる。このように、医療器具Aの先端と患部Cとの相対的な位置関係を医療器具Aの刺し込み方向に認識できるようになることで、使用者は医療器具Aを用いて患部Cの処置を正確に行うことができる。
【0041】
尚、本実施例では器具検出部6から送信した超音波12の反射波16を器具検出部6自身で受信したが、反射波16を患部検出部7で受信することも可能である。より詳細に説明すると、前述のように針状の医療器具Aを感度良く検出するためには、図1に示す送受信面8の面積が狭く指向性の広い器具検出部6から超音波12を送信することが好適である。しかし、その反射波16を受信する場合、送受信面9の面積が広い患部検出部7で受信する方が、より多くの反射波16を受信して強度の強い電気信号が出力されるので好適である。従って、これを実現する具体的手段としては、探触子本体3から超音波を送信する際に、器具検出部6による送信と患部検出部7による送信との間に所定の時差を持たせ、これによりそれぞれの反射波が患部検出部7に到達する時刻に時差を生じさせる。そして、患部検出部7を時系列的に切り換えて、医療器具Aからの反射波16と患部Cからの反射波13を区別して受信する。このようにすれば、医療器具Aの超音波画像をより感度良く取得することができ、患部Cの正確な処置が可能となる。
【0042】
また、本実施例では超音波探触子1の使用例として、医療器具Aを患者の体表面Bから体内へ刺し込む場合について説明したが、その他の使用例として、医療器具Aを臓器表面から臓器内へ刺し込む場合も挙げられる。この場合、開腹手術時に臓器が露呈した状態において、臓器表面に超音波探触子1を押し当てることにより、臓器内にある患部と臓器内へ刺し込む医療器具Aとの相対的な位置関係を視覚的に確認することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図8は、第2実施例に係る超音波探触子20の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子20は、基板21の上に探触子本体22が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴23が形成されている点、及び探触子本体22が器具検出部24と患部検出部25に分割されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子20は、その探触子本体22を構成する患部検出部25が器具挿通穴23の周方向に沿ってアレイ状に分割され、複数の分割素子26が表示部27に対してそれぞれ電気的に接続されている点で第1実施例とは相違する。このような構成によれば、個々の分割素子26が反射波を受信することによって個別に電気信号を出力する。従って、医療器具Aと患部Cとの相対的な位置関係を、医療器具Aの刺し込み方向だけでなく、器具挿通穴23の周方向にも認識することができる。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0044】
次に、本発明の第3実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図9は、第3実施例に係る超音波探触子30の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子30は、基板31の上に探触子本体32が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴33が形成されている点、及び探触子本体32が器具検出部34と患部検出部35に分割されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子30は、その探触子本体32を構成する患部検出部35が器具挿通穴33の周方向及び径方向の両方向に沿ってそれぞれアレイ状に分割され、複数の分割素子36が表示部37に対してそれぞれ電気的に接続されている点で第1実施例とは相違する。このような構成によれば、個々の分割素子36が反射波を受信することによって個別に電気信号を出力する。従って、医療器具Aと患部Cとの相対的な位置関係を、医療器具Aの刺し込み方向だけでなく、器具挿通穴33の周方向及び径方向にも認識することができる。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。また、図9では、一部の分割素子36だけについて表示部37との接続を図示している。
【0045】
尚、第2実施例に係る超音波探触子20及び第3実施例に係る超音波探触子30では、各分割素子26,36をフェーズドアレイ走査することにより、すなわち個々の分割素子26,36を駆動する順序と駆動遅延時間を制御して発生させた任意の超音波ビームで分割素子26,36を走査することにより、超音波画像を取得してもよい。この場合、患部Cの周囲を広く観測しながら医療器具Aを操作することができる。
【0046】
次に、本発明の第4実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図10は、第4実施例に係る超音波探触子40の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子40は、基板41の上に探触子本体42が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴43が形成されている点、探触子本体42が器具検出部44と患部検出部45に分割されている点、及び器具検出部44と患部検出部45が表示部46に対してそれぞれ電気的に接続されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子40は、その基板41と探触子本体42に、器具挿通穴43まで到達する切り欠き47が形成されている点で第1実施例とは相違する。このような構成によれば、医療器具Aを器具挿通穴43に挿通させて体内または臓器内に刺し込んだ状態において、超音波探触子40を切り欠き47に沿って水平方向にスライドさせれば、医療器具Aから超音波探触子40を取り外すことができる。これにより、医療器具Aが患部Cに到達した後、超音波探触子40を取り外した方がその後の処置を行いやすい場合には、医療器具Aを刺し込んだ状態のまま、超音波探触子40だけを容易に取り外すことができる。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
次に、本発明の第5実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図11は、第5実施例に係る超音波探触子50を示す概略縦断面図である。超音波探触子50は、基板51の上に探触子本体52が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴53が形成されている点、探触子本体42が器具検出部54と患部検出部55に分割されている点、及び器具検出部54と患部検出部55が表示部56に対してそれぞれ電気的に接続されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子50は、器具検出部54の形状が第1実施例とは異なっている。すなわち、器具検出部54は、基板51と逆側の端面である送受信面57が、器具挿通穴53の径方向外側から径方向内側に向かって徐々に低くなるように傾斜している。このような構成によれば、器具検出部54から送信される超音波58は、前述のように器具検出部54の指向性が広いことに加えて送受信面57が傾斜している分、斜め前方により送信されやすくなっている。従って、器具検出部54は、医療器具Aからより多くの反射波を受信することができ、医療器具Aをより感度良く検出することができる。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
次に、本発明の第6実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図12は、第6実施例に係る超音波探触子60の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子60は、基板61の上に探触子本体62が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴63が形成されている点、探触子本体62が器具検出部64と患部検出部65に分割されている点、及び器具検出部64と患部検出部65が表示部66に対してそれぞれ電気的に接続されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子60は、患部検出部65の外形が断面八角形である点で第1実施例とは異なっている。尚、器具検出部64の外形は八角形に限られず任意の多角形に形成してもよい。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
次に、本発明の第7実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図13は、第7実施例に係る超音波探触子70の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子70は、基板71の上に探触子本体72が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴73が形成されている点、探触子本体72が器具検出部74と患部検出部75に分割されている点、及び器具検出部74と患部検出部75が表示部76に対してそれぞれ電気的に接続されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子70は、患部検出部75の外形が断面四角形である点、器具挿通穴73が長穴状に形成されている点、器具検出部74が器具挿通穴73の左右両側に向かい合って設けられている点で第1実施例とは異なっている。このような構成によれば、器具挿通穴73に挿通した医療器具Aを水平方向に動かすことができるので、患部Cの処置が行いやすいという利点がある。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
尚、図に詳細は示さないが、第4,5,6,7実施例に係る超音波探触子40,50,60,70についても、第2,3実施例と同様に、探触子本体42,52,62,72を構成する患部検出部45,55,65,75をアレイ状に分割することが可能である。そして、この場合、複数の分割素子をフェーズドアレイ走査することによって超音波画像を取得してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本実施例では探触子本体を送受信兼用素子としたが、超音波を送信する超音波送信素子と超音波を受信する超音波受信素子とを別々に設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 超音波探触子
3 探触子本体
4 器具挿通穴
6 器具検出部
7 患部検出部
10,12 超音波
13,16 反射波
A 医療器具
C 患部
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内にある患部の3次元形状を体外から超音波で検出する超音波探触子に関し、特に、患部の処置に用いる医療器具を挿通させるための器具挿通穴が形成された超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、バイオプシーや鉗子やレーザメスといった針状の医療器具を患者の体内に刺し込み、体外で医療器具を操作することによって体内の患部を処置する場合がある。この場合、体外において患部の形状を視認しながら医療器具を操作できれば、より正確な患部処置が可能となる。ここで、患部の形状を視認するための手段としては、医療器具の先端部にCCDカメラを装備する方法があるが、CCDカメラでは患部の表面形状しか視認できないため、患部と医療器具の相対的な位置関係、例えば医療器具を患部に刺し込んだ深さを正確に認識できないという問題がある。
【0003】
この問題を解消すべく、超音波を用いて患部の深さ方向まで含めた3次元形状を検出する超音波探触子が従来用いられている(例えば、特許文献1の明細書の段落[0003])。この特許文献1では、超音波探触子に所定幅の溝703が設けられ、この溝703の部分から医療器具としての生検針701が体内に挿入される。そして、患部の3次元形状を示す超音波画像と、生検針701の超音波画像とを同一画面上に表示させる。これにより、患部と生検針701の先端部との相対的な位置関係を正確に認識することができ、より正確な患部の処置が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−137549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す従来の超音波探触子では、生検針701の超音波画像を感度良く取得するためには、図7に示す超音波振動子702が生検針701から十分な量の反射波を受信する必要がある。従って、生検針701に対して十分な量の超音波を送信する必要があり、そのためには超音波振動子702の指向性を広くする、すなわち超音波振動子702から直進前方だけでなく斜め前方にも広がって超音波が送信されるようにする必要がある。そこで、超音波振動子702の指向性を広げるべく、従来の超音波探触子では超音波振動子702の表面積を狭く形成していた。しかし、このような従来の超音波探触子では、超音波振動子702の表面積が狭い分、患部に対して送信する超音波及びその反射波の信号が弱くなる。そのため、患部の超音波画像を感度良く取得することができず、患部の処置を正確に行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、超音波送信素子の指向性が広く、医療器具から十分な量の反射波を受信しつつ、患部からも十分な量の反射波を受信することができ、医療器具と患部の両方について超音波画像を感度良く取得可能な超音波探触子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る超音波探触子は、処置すべき患部に向かって超音波を送信してその反射波を受信する探触子本体に、前記患部の処置に用いる医療器具を挿通させるための器具挿通穴が形成されてなる超音波探触子において、前記探触子本体が、前記医療器具に向かって超音波を送信してその反射波を受信する器具検出部と、前記患部に向かって超音波を送信してその反射波を受信する患部検出部と、を備えるものである。
【0008】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具検出部の送受信面の面積が、前記患部検出部の送受信面の面積より小さいものである。
【0009】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具検出部が、前記器具挿通穴を包囲して設けられ、前記患部検出部が前記器具検出部を包囲して設けられたものである。
【0010】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具挿通穴が長穴状に形成されたものである。
【0011】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記探触子本体に、前記器具挿通穴まで到達する切り欠きが形成されたものである。
【0012】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具検出部の送受信面が、前記器具挿通穴の径方向外側から径方向内側に向かって低くなるように傾斜したものである。
【0013】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記器具検出部から前記医療器具に向かって送信される超音波の反射波が、前記患部検出部によって受信されるものである。
【0014】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記患部検出部が、前記器具挿通穴の周方向に沿ってアレイ状に分割されたものである。
【0015】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記患部検出部が、前記器具挿通穴の径方向に沿ってアレイ状に分割されたものである。
【0016】
また、本発明に係る超音波探触子は、前記患部検出部を構成する複数の分割素子が、フェーズドアレイ走査されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る超音波探触子によれば、患部を検出するための患部検出部とは別に、医療器具を検出するための器具検出部を設けるので、医療器具をより感度良く検出することができ、患部のより正確な処置が可能となる。
【0018】
本発明に係る超音波探触子によれば、器具検出部の送受信面の面積が、患部検出部の送受信面の面積より小さいので、器具検出部の指向性が広くなり、器具検出部からは直進前方だけでなく斜め前方にも広がって超音波が送信される。これにより、医療器具からより多くの反射波を受信することができ、医療器具をより感度良く検出することができる。
【0019】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、器具検出部が器具挿通穴を包囲して設けられ、患部検出部が器具検出部を包囲して設けられるので、医療器具の刺し込み方向について医療器具と患部との相対的な位置関係を認識することができる。
【0020】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、器具挿通穴が長穴状に形成されるので、医療器具を器具挿通穴に沿って動かすことができ、医療器具による患部の処置が行いやすい。
【0021】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、探触子本体に器具挿通穴まで到達する切り欠きが形成されたので、医療器具を患部に刺し込んだ状態のまま超音波探触子だけを容易に取り外すことができ、医療器具による患部の処置が行いやすい。
【0022】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、器具検出部の送受信面が、器具挿通穴の径方向外側から径方向内側に向かって低くなるように傾斜しているので、器具検出部から斜め前方に広がって超音波が送信されやすい。これにより、器具検出部によって医療器具をより感度良く検出することができる。
【0023】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、器具検出部から医療器具に向かって送信される超音波の反射波が、送受信面の面積が大きい患部検出部によって受信されるので、医療器具をより感度良く検出することができる。
【0024】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、患部検出部が器具挿通穴の周方向に沿ってアレイ状に分割されているので、器具挿通穴の周方向について医療器具と患部との相対的な位置関係を認識することができる。
【0025】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、患部検出部が器具挿通穴の径方向に沿ってアレイ状に分割されているので、器具挿通穴の径方向について医療器具と患部との相対的な位置関係を認識することができる。
【0026】
また、本発明に係る超音波探触子によれば、患部検出部を構成する複数の分割素子が、フェーズドアレイ走査されるので、患部の周囲の状況を広く観測しながら医療器具を操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施例に係る超音波探触子1の外観を示す概略斜視図。
【図2】超音波探触子1の使用手順と作用効果を説明するための説明図。
【図3】医療器具Aの挿通前に表示部5に表示される波形の一例を示す図。
【図4】超音波探触子1の使用手順と作用効果を説明するための説明図。
【図5】医療器具Aの挿通後に表示部5に表示される波形の一例を示す図。
【図6】医療器具Aの挿通後に表示部5に表示される波形の一例を示す図。
【図7】超音波探触子1の使用手順と作用効果を説明するための説明図。
【図8】本発明の第2実施例に係る超音波探触子20の外観を示す概略斜視図。
【図9】本発明の第3実施例に係る超音波探触子30の外観を示す概略斜視図。
【図10】本発明の第4実施例に係る超音波探触子40の外観を示す概略斜視図。
【図11】本発明の第5実施例に係る超音波探触子50を示す概略縦断面図。
【図12】本発明の第6実施例に係る超音波探触子60の外観を示す概略斜視図。
【図13】本発明の第7実施例に係る超音波探触子70の外観を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本発明の第1実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図1は、第1実施例に係る超音波探触子1の外観を示す概略斜視図である。尚、図1では説明の便宜上、超音波探触子1の一部を破断した状態で図示している。
【0029】
超音波探触子1は、図1に示すように、基板2の上に探触子本体3が固定されたものであり、その中央部を貫通して、後述する医療器具Aを挿通させるための器具挿通穴4が形成されている。そして、探触子本体3は、表示部5に対して電気的に接続されている。
【0030】
前記基板2は、探触子本体3を支持するためのものである。この基板2は、樹脂等からなる板状の部材であって、図1に示すように横断面リング状に形成されている。そして、この基板2の内周面が前記器具挿通穴4の一部を構成している。尚、この基板2は、超音波探触子1に必須の構成ではなく、探触子本体3だけで超音波探触子1を構成してもよい。また、基板2の形状は、探触子本体3の形状に合わせて適宜設計変更が可能である。
【0031】
前記探触子本体3は、対象物に向かって超音波を送信し、その反射波を受信することによって対象物の超音波画像を取得するためのものである。この探触子本体3は、いわゆる超音波送受信兼用素子であって、超音波送信素子の機能、すなわちある周波数の電気信号が入力されるとその周波数の超音波を送信する機能と、超音波受信素子の機能、すなわちある周波数の超音波を受信するとその周波数の電気信号を出力する機能の両方を兼ね備えている。そして、この探触子本体3は、図1に示すように、断面リング形状を有し、径方向に向かって内側の領域である器具検出部6と、径方向に向かって外側の領域である患部検出部7とに分割されている。
【0032】
器具検出部6は、超音波探触子1に挿通させる医療器具の超音波画像を取得するための領域である。ここで、挿通させる医療器具とは、例えばバイオプシーや鉗子やレーザメスといった細長い針状の器具である。従って、このような医療器具の形状を考慮すれば、医療器具に対して十分な量の超音波を送信して十分な量の反射波を受信するためには、器具検出部6の指向性を広くする、すなわち器具検出部6から直進前方だけでなく斜め前方にも広がって超音波が送信されるようにする必要がある。そこで本実施例では、図1に示すように、器具挿通穴4のすぐ外側に肉薄な器具検出部6を設け、器具検出部6の送受信面8の面積を狭くすることにより、その指向性を広くしている。
【0033】
患部検出部7は、体内にある患部の超音波画像を取得するための領域である。この患部検出部7に関しては、患部に対して十分な量の超音波を送信して十分な量の反射波を受信するために、超音波を送信及び受信する面の面積を広くするのが好適である。そこで本実施例では、図1に示すように、器具検出部6の外側に肉厚な患部検出部7を設け、患部検出部7の送受信面9の面積を器具検出部6の送受信面8と比較して広く確保している。
【0034】
前記表示部5は、探触子本体3から出力された電気信号を視認可能に表示するためのものである。この表示部5は、例えば液晶ディスプレイであって、図1に示すように、探触子本体3を構成する器具検出部6と患部検出部7の双方に対して電気的に接続されている。これにより、器具検出部6と患部検出部7から出力された各電気信号が、同一画面上に表示されるようになっている。
【0035】
次に、第1実施例に係る超音波探触子1の使用手順及びその作用効果について説明する。超音波探触子1を使用する場合、まず使用者は、図2に示すように、医療器具Aを挿通していない状態の医療用超音波探触子1を、その探触子本体3の側を患者に向けて体表面Bに押し当てる。そして、この状態で探触子本体3に所定周波数の電気信号を入力すると、探触子本体3から超音波の送信が開始される。より詳細には、探触子本体3を構成する患部検出部7からは、主に直進前方に超音波10が送信される一方、指向性の広い器具検出部6からは、直進前方の超音波11だけでなく斜め前方にも超音波12が送信される。
【0036】
その後、患部検出部7から送信された超音波10は図2に示す患部Cで反射され、その反射波13が患部検出部7によって受信されることにより、患部検出部7が反射波13と同じ周波数の電気信号を出力する。この電気信号は、図1に示す表示部5へと送られ、表示部5に電気信号の波形が表示される。ここで、図3は、表示部5に表示される波形の一例を示す図であり、横軸が経過時間を縦軸が振幅をそれぞれ表している。使用者は、この波形14を見ることにより、時刻T1に探触子本体3から超音波の送信が開始されることによって波形14の振幅が大きく変化し、その後時刻T2に、患部Cからの反射波13を患部検出部7が受信することによって波形14の振幅が大きく変化する様子を視覚的に確認することができる。
【0037】
一方、図2に示すように、器具検出部6から送信された超音波は、直進前方に送信された超音波11に関しては患部Cによって反射され、その反射波15が器具検出部6によって受信される。しかし、斜め前方に送信された超音波12は、前述のように器具挿通穴4にはまだ医療器具Aが挿通されていないため、器具検出部6は医療器具Aからの反射波を受信しない。従って、図3に示す波形14には、器具検出部6が医療器具Aからの反射波を受信することによって振幅が大きく変化する点は現れない。
【0038】
次に、使用者は、図4に示すように、医療器具Aを超音波探触子1の器具挿通穴4に挿通させ、更にその針状の先端を体表面Bから体内へと刺し込む。この時、患部検出部7から送信された超音波10が患部Cで反射され、その反射波13が患部検出部7によって受信される点は前述と同様である。一方、器具検出部6から斜め前方に送信された超音波12は、体内に刺し込まれた医療器具Aで反射され、その反射波16が器具検出部6によって受信される。ここで、図5は、医療器具Aを体内に刺し込んだ時に表示部5に表示される波形の一例を示す図である。使用者は、この波形17を見ることにより、時刻T1と時刻T2の間の時刻T3に、器具検出部6が医療器具Aからの反射波17を受信することによって波形17が大きく変化する様子を視覚的に確認することができる。尚、図4では、器具検出部6から直進前方に送信される超音波については、図2と同じであるため図示を省略している。
【0039】
その後、使用者が医療器具Aを操作して体内の更に深部へと刺し込むと、それに従って器具検出部6から医療器具Aの先端までの距離が増加する分、器具検出部6が超音波12を送信してからその反射波16を受信するまでの時間が長くなる。これにより、図6に示すように、表示部5に表示される波形18では、器具検出部6が反射波16を受信する時刻が徐々に遅くなる、すなわち図6で時刻T2側へシフトし、時刻T4に振幅が大きく変化するようになる。
【0040】
そして、図7に示すように、医療器具Aの先端が患部Cに到達すると、器具検出部6が超音波12を送信してからその反射波16を受信するまでの時間が、患部検出部7が超音波10を送信してからその反射波13を受信するまでの時間に略等しくなる。これにより、図に詳細は示さないが、表示部5に表示される波形では、器具検出部6が反射波16を受信する時刻が、患部検出部7が反射波13を受信する時刻T2にほぼ一致し、振幅の変化が互いに重なり合う。使用者は、振幅の変化が互いに重なり合う様子を視覚的に確認することにより、医療器具Aの先端が患部Cに到達したことを認識することができる。このように、医療器具Aの先端と患部Cとの相対的な位置関係を医療器具Aの刺し込み方向に認識できるようになることで、使用者は医療器具Aを用いて患部Cの処置を正確に行うことができる。
【0041】
尚、本実施例では器具検出部6から送信した超音波12の反射波16を器具検出部6自身で受信したが、反射波16を患部検出部7で受信することも可能である。より詳細に説明すると、前述のように針状の医療器具Aを感度良く検出するためには、図1に示す送受信面8の面積が狭く指向性の広い器具検出部6から超音波12を送信することが好適である。しかし、その反射波16を受信する場合、送受信面9の面積が広い患部検出部7で受信する方が、より多くの反射波16を受信して強度の強い電気信号が出力されるので好適である。従って、これを実現する具体的手段としては、探触子本体3から超音波を送信する際に、器具検出部6による送信と患部検出部7による送信との間に所定の時差を持たせ、これによりそれぞれの反射波が患部検出部7に到達する時刻に時差を生じさせる。そして、患部検出部7を時系列的に切り換えて、医療器具Aからの反射波16と患部Cからの反射波13を区別して受信する。このようにすれば、医療器具Aの超音波画像をより感度良く取得することができ、患部Cの正確な処置が可能となる。
【0042】
また、本実施例では超音波探触子1の使用例として、医療器具Aを患者の体表面Bから体内へ刺し込む場合について説明したが、その他の使用例として、医療器具Aを臓器表面から臓器内へ刺し込む場合も挙げられる。この場合、開腹手術時に臓器が露呈した状態において、臓器表面に超音波探触子1を押し当てることにより、臓器内にある患部と臓器内へ刺し込む医療器具Aとの相対的な位置関係を視覚的に確認することができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図8は、第2実施例に係る超音波探触子20の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子20は、基板21の上に探触子本体22が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴23が形成されている点、及び探触子本体22が器具検出部24と患部検出部25に分割されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子20は、その探触子本体22を構成する患部検出部25が器具挿通穴23の周方向に沿ってアレイ状に分割され、複数の分割素子26が表示部27に対してそれぞれ電気的に接続されている点で第1実施例とは相違する。このような構成によれば、個々の分割素子26が反射波を受信することによって個別に電気信号を出力する。従って、医療器具Aと患部Cとの相対的な位置関係を、医療器具Aの刺し込み方向だけでなく、器具挿通穴23の周方向にも認識することができる。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0044】
次に、本発明の第3実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図9は、第3実施例に係る超音波探触子30の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子30は、基板31の上に探触子本体32が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴33が形成されている点、及び探触子本体32が器具検出部34と患部検出部35に分割されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子30は、その探触子本体32を構成する患部検出部35が器具挿通穴33の周方向及び径方向の両方向に沿ってそれぞれアレイ状に分割され、複数の分割素子36が表示部37に対してそれぞれ電気的に接続されている点で第1実施例とは相違する。このような構成によれば、個々の分割素子36が反射波を受信することによって個別に電気信号を出力する。従って、医療器具Aと患部Cとの相対的な位置関係を、医療器具Aの刺し込み方向だけでなく、器具挿通穴33の周方向及び径方向にも認識することができる。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。また、図9では、一部の分割素子36だけについて表示部37との接続を図示している。
【0045】
尚、第2実施例に係る超音波探触子20及び第3実施例に係る超音波探触子30では、各分割素子26,36をフェーズドアレイ走査することにより、すなわち個々の分割素子26,36を駆動する順序と駆動遅延時間を制御して発生させた任意の超音波ビームで分割素子26,36を走査することにより、超音波画像を取得してもよい。この場合、患部Cの周囲を広く観測しながら医療器具Aを操作することができる。
【0046】
次に、本発明の第4実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図10は、第4実施例に係る超音波探触子40の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子40は、基板41の上に探触子本体42が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴43が形成されている点、探触子本体42が器具検出部44と患部検出部45に分割されている点、及び器具検出部44と患部検出部45が表示部46に対してそれぞれ電気的に接続されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子40は、その基板41と探触子本体42に、器具挿通穴43まで到達する切り欠き47が形成されている点で第1実施例とは相違する。このような構成によれば、医療器具Aを器具挿通穴43に挿通させて体内または臓器内に刺し込んだ状態において、超音波探触子40を切り欠き47に沿って水平方向にスライドさせれば、医療器具Aから超音波探触子40を取り外すことができる。これにより、医療器具Aが患部Cに到達した後、超音波探触子40を取り外した方がその後の処置を行いやすい場合には、医療器具Aを刺し込んだ状態のまま、超音波探触子40だけを容易に取り外すことができる。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
次に、本発明の第5実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図11は、第5実施例に係る超音波探触子50を示す概略縦断面図である。超音波探触子50は、基板51の上に探触子本体52が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴53が形成されている点、探触子本体42が器具検出部54と患部検出部55に分割されている点、及び器具検出部54と患部検出部55が表示部56に対してそれぞれ電気的に接続されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子50は、器具検出部54の形状が第1実施例とは異なっている。すなわち、器具検出部54は、基板51と逆側の端面である送受信面57が、器具挿通穴53の径方向外側から径方向内側に向かって徐々に低くなるように傾斜している。このような構成によれば、器具検出部54から送信される超音波58は、前述のように器具検出部54の指向性が広いことに加えて送受信面57が傾斜している分、斜め前方により送信されやすくなっている。従って、器具検出部54は、医療器具Aからより多くの反射波を受信することができ、医療器具Aをより感度良く検出することができる。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
次に、本発明の第6実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図12は、第6実施例に係る超音波探触子60の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子60は、基板61の上に探触子本体62が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴63が形成されている点、探触子本体62が器具検出部64と患部検出部65に分割されている点、及び器具検出部64と患部検出部65が表示部66に対してそれぞれ電気的に接続されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子60は、患部検出部65の外形が断面八角形である点で第1実施例とは異なっている。尚、器具検出部64の外形は八角形に限られず任意の多角形に形成してもよい。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
次に、本発明の第7実施例に係る超音波探触子の構成について説明する。図13は、第7実施例に係る超音波探触子70の外観を示す概略斜視図である。超音波探触子70は、基板71の上に探触子本体72が固定され、その中央部を貫通して器具挿通穴73が形成されている点、探触子本体72が器具検出部74と患部検出部75に分割されている点、及び器具検出部74と患部検出部75が表示部76に対してそれぞれ電気的に接続されている点、では第1実施例に係る超音波探触子1と同様である。しかし、超音波探触子70は、患部検出部75の外形が断面四角形である点、器具挿通穴73が長穴状に形成されている点、器具検出部74が器具挿通穴73の左右両側に向かい合って設けられている点で第1実施例とは異なっている。このような構成によれば、器具挿通穴73に挿通した医療器具Aを水平方向に動かすことができるので、患部Cの処置が行いやすいという利点がある。尚、その他の構成及び作用効果は第1実施例と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
尚、図に詳細は示さないが、第4,5,6,7実施例に係る超音波探触子40,50,60,70についても、第2,3実施例と同様に、探触子本体42,52,62,72を構成する患部検出部45,55,65,75をアレイ状に分割することが可能である。そして、この場合、複数の分割素子をフェーズドアレイ走査することによって超音波画像を取得してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本実施例では探触子本体を送受信兼用素子としたが、超音波を送信する超音波送信素子と超音波を受信する超音波受信素子とを別々に設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 超音波探触子
3 探触子本体
4 器具挿通穴
6 器具検出部
7 患部検出部
10,12 超音波
13,16 反射波
A 医療器具
C 患部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置すべき患部に向かって超音波を送信してその反射波を受信する探触子本体に、前記患部の処置に用いる医療器具を挿通させるための器具挿通穴が形成されてなる超音波探触子において、
前記探触子本体が、前記医療器具に向かって超音波を送信してその反射波を受信する器具検出部と、前記患部に向かって超音波を送信してその反射波を受信する患部検出部と、を備えることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記器具検出部の送受信面の面積が、前記患部検出部の送受信面の面積より小さいことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記器具検出部が、前記器具挿通穴を包囲して設けられ、前記患部検出部が、前記器具検出部を包囲して設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記器具挿通穴が長穴状に形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記探触子本体に、前記器具挿通穴まで到達する切り欠きが形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記器具検出部の送受信面が、前記器具挿通穴の径方向外側から径方向内側に向かって低くなるように傾斜したことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記器具検出部から前記医療器具に向かって送信される超音波の反射波が、前記患部検出部によって受信されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項8】
前記患部検出部が、前記器具挿通穴の周方向に沿ってアレイ状に分割されたことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項9】
前記患部検出部が、前記器具挿通穴の径方向に沿ってアレイ状に分割されたことを特徴とする請求項3乃至8のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項10】
前記患部検出部を構成する複数の分割素子が、フェーズドアレイ走査されることを特徴とする請求項8又は9に記載の超音波探触子。
【請求項1】
処置すべき患部に向かって超音波を送信してその反射波を受信する探触子本体に、前記患部の処置に用いる医療器具を挿通させるための器具挿通穴が形成されてなる超音波探触子において、
前記探触子本体が、前記医療器具に向かって超音波を送信してその反射波を受信する器具検出部と、前記患部に向かって超音波を送信してその反射波を受信する患部検出部と、を備えることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記器具検出部の送受信面の面積が、前記患部検出部の送受信面の面積より小さいことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記器具検出部が、前記器具挿通穴を包囲して設けられ、前記患部検出部が、前記器具検出部を包囲して設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記器具挿通穴が長穴状に形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記探触子本体に、前記器具挿通穴まで到達する切り欠きが形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記器具検出部の送受信面が、前記器具挿通穴の径方向外側から径方向内側に向かって低くなるように傾斜したことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記器具検出部から前記医療器具に向かって送信される超音波の反射波が、前記患部検出部によって受信されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項8】
前記患部検出部が、前記器具挿通穴の周方向に沿ってアレイ状に分割されたことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項9】
前記患部検出部が、前記器具挿通穴の径方向に沿ってアレイ状に分割されたことを特徴とする請求項3乃至8のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項10】
前記患部検出部を構成する複数の分割素子が、フェーズドアレイ走査されることを特徴とする請求項8又は9に記載の超音波探触子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−104052(P2011−104052A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261228(P2009−261228)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、都市エリア産学官連携促進事業(発展型)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、都市エリア産学官連携促進事業(発展型)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【Fターム(参考)】
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