説明

超音波接合装置および超音波接合方法

【課題】超音波接合に起因するワークの変形を防止する超音波接合装置および超音波接合方法を提供する。
【解決手段】超音波接合装置100は、超音波振動を与えるホーン110とアンビル120との間に、板状の第1のワーク30と板状の第2のワーク12とを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって第1のワークと第2のワークとを接合する。第2のワークは第1のワークよりも軟らかい。超音波接合装置は、超音波振動が止まった後に第2のワークの浮き17を押圧する押圧部150を有し、また、押圧部が浮きを押圧した後、第1のワークの端部からはみ出す第2のワークの端部15を折り曲げる折曲部160を有する。折曲部は、第1のワークの端部を挟み込むように第2のワークの端部を折り曲げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波接合装置および超音波接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波接合装置は、超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に2枚の板状のワークを挟んで加圧し、2枚のワークに超音波振動を加えることによって、固相接合を行う装置である(例えば特許文献1参照。)。超音波接合が施される際、2枚のワークが擦られることによって、酸化皮膜等の不純物が除去され、ワークの綺麗な面(新生面)同士が相互に接触する。そして発生する摩擦熱によって固相接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−68261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、2枚のワークのうちの一方が他方に比べて軟らかいと、超音波振動が加わる際に皺や反りによって軟らかい一方に浮きが生じ、ワークの変形、ひいては品質低下等を招く虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、超音波接合に起因するワークの変形を防止する超音波接合装置および超音波接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の超音波接合装置は、超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に、板状の第1のワークと板状の第2のワークとを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって第1のワークと第2のワークとを接合する。第2のワークは第1のワークよりも軟らかい。本発明の超音波接合装置は、超音波振動が止まった後に第2のワークの浮きを押圧する押圧部を有し、また、押圧部が浮きを押圧した後、第1のワークの端部からはみ出す第2のワークの端部を折り曲げる折曲部を有する。折曲部は、第1のワークの端部を挟み込むように第2のワークの端部を折り曲げる。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の超音波接合装置は、超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に、板状の第1のワークと板状の第2のワークとを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって第1のワークと第2のワークとを接合する。第2のワークは第1のワークよりも軟らかく、そして、本発明の超音波接合装置は超音波振動を加える際に第2のワークを押圧するローラを有する。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の超音波接合方法は、超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に、板状の第1のワークと板状の第2のワークとを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって第1のワークと第2のワークとを接合する。第2のワークは第1のワークよりも軟らかい。本発明の超音波接合方法は、超音波振動が止まった後、第2のワークの浮きを押圧する押圧工程と、押圧工程の後、第1のワークの端部からはみ出す第2のワークの端部を折り曲げる折曲工程を有する。折曲工程は、第1のワークの端部を挟み込むように第2のワークの端部を折り曲げる。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の超音波接合方法は、超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に、板状の第1のワークと板状の第2のワークとを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって第1のワークと第2のワークとを接合する。第2のワークは第1のワークよりも軟らかく、そして、本発明の超音波接合方法は超音波振動を加える際に第2のワークをローラによって押圧する押圧工程を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波接合装置は、押圧部によって浮きを押え、その状態で第2のワークの端部を折り曲げて第1のワークと第2のワークとを固定するので、浮きがならされ、ワークの変形を防止できる。
【0011】
本発明の超音波接合装置は、超音波振動を加える際にローラによって第2のワークを押圧するため、浮きが抑制され、ワークの変形を防止できる。
【0012】
本発明の超音波接合方法は、押圧工程において浮きを押え、その状態で第2のワークの端部を折曲工程において折り曲げて第1のワークと第2のワークとを固定するので、浮きがならされ、ワークの変形を防止できる。
【0013】
本発明の超音波接合方法は、押圧工程において、超音波振動を加える際にローラによって第2のワークを押圧するため、浮きが抑制され、ワークの変形を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】超音波接合装置の概略構成図である。
【図2】押圧部および折曲部の動作を説明するための概略図である。
【図3】電池の概略斜視図である。
【図4】電極タブの拡大概略平面図である。
【図5】第1実施形態の超音波接合方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】第1実施形態の超音波接合装置の部分拡大概略図である。
【図7】第1実施形態の超音波接合装置の部分拡大概略図である。
【図8】第1実施形態の超音波接合装置の部分拡大概略図である。
【図9】第1実施形態の超音波接合装置の部分拡大概略図である。
【図10】電極タブの他の例の拡大概略平面図である。
【図11】電極タブの拡大概略平面図である。
【図12】第2実施形態の超音波接合方法を説明するためのフローチャートである。
【図13】第2実施形態の超音波接合装置の部分拡大概略図である。
【図14】第2実施形態の超音波接合装置の部分拡大概略図である。
【図15】第2実施形態の超音波接合装置の部分拡大概略平面図である。
【図16】超音波接合装置の他の例の部分拡大概略図である。
【図17】超音波接合装置の他の例の部分拡大概略図である。
【図18】超音波接合装置の他の例の部分拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態において、各実施形態で共通する機能を有する部材については、類似の符号を付し、また、重複する説明は省略する。
【0016】
<第1実施形態>
図1において概説すると、第1実施形態に係る超音波接合装置100は、電池10を電気的に複数接続してなる組電池の製造に用いられ、電池10から電力を取り出すための電極タブ12と、異なる電池10の電極タブ同士を電気的に接続するためのバスバー30とを接合する。超音波接合装置100は、板状のバスバー30(第1のワーク)と、板状の電極タブ12(第2のワーク)とを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによってこれらを接合する。
【0017】
超音波接合装置100は、加圧しつつ超音波振動を加えてバスバー30と電極タブ12とを接合するホーン110とアンビル120、およびホーン110と接続した超音波接合装置本体130を有する。超音波接合装置100はまた、電極タブ12を矯正するための押圧部150および折曲部160を有する。また超音波接合装置100は、超音波接合装置100の各構成要素の動作を制御する制御部140を有する。制御部140は、CPUおよびメモリを主体とした構成を有する。
【0018】
ホーン110は、アンビル120に対する相対的な位置を変えられ、先端に複数の突起112を有する。アンビル120も先端に複数の突起122を有する。超音波振動に追従して電極タブ12に突起112を十分に食い込ませるため、ホーン110の突起112はアンビル120の突起122に比べ細かい。
【0019】
超音波接合装置本体130は、ホーン110を振動させるための駆動部131と、駆動部131に電気的に接続した高周波電源132と、を有する。駆動部131は、例えば、超音波発振器、または振動子であり、ホーン110を電極タブ12の面方向に振動させる。
【0020】
押圧部150は、電極タブ12とバスバー30とを挟む受け151(第1の当接部)およびクランプ152(第2の当接部)を有する。押圧部150はまた、クランプ152を駆動するための空気圧シリンダ153を有する。
【0021】
受け151は、バスバー30に当接し、バスバー30および電極タブ12を支持する。受け151はバスバー30より高い熱伝導率を有する。受け151は、不図示の駆動装置、例えばモータによってスライド可能であり、制御部140が受け151の動きを制御する。
【0022】
クランプ152は、空気圧シリンダ153によって電極タブ12に近接離間し、また、電極タブ12に当接する。クランプ152は電極タブ12より低い熱伝導率を有する。クランプ152は、板状の部材であり、端部で空気圧シリンダ153のピストンロッドに接続している。
【0023】
折曲部160は、電極タブ12の端部15に押し当てるためのブロック161と、ブロック161を押圧するためのクランプ162と、クランプ162を駆動するための空気圧シリンダ163と、を有する。
【0024】
ブロック161は、クランプ152を貫通する貫通孔(不図示)に嵌っており、クランプ152の厚み方向に動くことができる。クランプ162は、板状の部材であり、端部で空気圧シリンダ163のピストンロッドに接続している。クランプ162は、空気圧シリンダ163によってブロック161に近接離間し、また、ブロック161を押圧してクランプ152に設けられた貫通孔に押込む。クランプ152に設けられた貫通孔は、ブロック161を案内するガイド(不図示)を備える。
【0025】
図2において押圧部150および折曲部160の動作を述べる。
【0026】
図2(A)に示すように、押圧部150は、空気圧シリンダ153のピストンロッドを縮めることによって、ピストンロッドと接続した側と反対側のクランプ152の端部を上げる。こうすることによりクランプ152は電極タブ12から離隔する。
【0027】
一方、図2(B)に示すように、押圧部150は、空気圧シリンダ153のピストンロッドを伸ばすことによって、ピストンロッドと接続した側と反対側のクランプ152の端部を下げる。こうすることによりクランプ152は電極タブ12に近接する。
【0028】
図2(C)に示すように、折曲部160は、空気圧シリンダ163のピストンロッドを伸ばすことによって、ピストンロッドと接続した側と反対側のクランプ162の端部を下げ、そしてクランプ162によってブロック161を押圧する。押圧されたブロック161は、クランプ152に設けられた貫通孔からクランプ152の厚み方向に突き出る。さらにクランプ162がブロック161を押圧すると、図2(D)に示すように、ブロック161に設けられたつば164が、クランプ152の貫通孔内に設けられた支持棒154に当り、支持棒154を支点として回転するように動く。
【0029】
図3に示すように、電池10は扁平で、長方形形状を有する。電池10は、例えば、リチウムイオン二次電池などの二次電池である。電池10は、実際に充放電反応が進行する発電要素(不図示)を、例えばラミネートシートなどの外装材14によって封止した構成を有する。電極タブ12は、発電要素に電気的に接続し、外装材14から引き出されている。図に示す2つの電極タブ12の一方は正極タブで他方は負極タブである。
【0030】
図4に示すように電極タブ12の端部15は、平面視におけるホーン110の振動方向114に窪んだ凹形状を有する。ホーン110は電極タブ12の略中央部分16を加圧しつつ超音波振動を加える。また、ホーン110の振動方向114における電極タブ12の長さL1は、バスバー30の長さと同じであってもよいが、バスバー30の長さより長く、電極タブ12の端部15がバスバー30の端部からはみ出していることが好ましい。
【0031】
電極タブ12は、バスバー30とは異なる剛性(硬さ)を有する。電極タブ12の材料強度は、バスバー30に比べて低く、バスバー30よりも軟らかい。電極タブ12は例えばアルミニウム合金によって形成され、バスバー30は例えば銅合金によって形成される。
【0032】
次に第1実施形態に係る超音波接合方法について述べる。
【0033】
図5に示すように、超音波接合方法は、バスバー30と電極タブ12とを超音波接合する接合工程S110を有する。超音波接合方法はまた、電極タブ12を矯正するための押圧工程S120および折曲工程S130を有する。
【0034】
図6に示すように、接合工程S110は、ホーン110とアンビル120との間に、バスバー30と電極タブ12とを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによってこれらを接合する。このとき、押圧部150はクランプ152を電極タブ12から離隔させ、電極タブ12の振動を妨げない。
【0035】
接合工程S110では、バスバー30と電極タブ12とが擦れることによって、酸化皮膜等の不純物が除去され、それぞれの綺麗な面(新生面)同士が相互に接触する。そして、発生する摩擦熱によってバスバー30と電極タブ12とは固相接合する。
【0036】
しかし、電極タブ12がバスバー30に比べて相対的に軟らかいため、超音波振動が加わる際、反りによって電極タブ12の端部15に浮き17が生じる虞がある。浮き17とは、電極タブ12において、バスバー30との間に隙間が生じた部分である。
【0037】
図7に示すように、押圧工程S120は、超音波振動が止まった後、電極タブ12の浮き17を押圧する。押圧工程S120では、超音波振動が止まった後、押圧部150が、空気圧シリンダ153のピストンロッドを伸ばし、クランプ152を浮き17に当接させてこれを押圧する。
【0038】
ホーン110からクランプ152の先端までの長さL2は、例えば、0.5mm〜1.0mmである。また、クランプ152の先端からブロック161までの長さL3は、例えば0.5±0.1mmである。
【0039】
図8に示すように、折曲工程S130は、押圧工程S120の後、バスバー30の端部を挟み込むように、バスバー30の端部からはみ出す電極タブ12の端部15を折り曲げる。折曲工程S130では、折曲部160は、空気圧シリンダ163のピストンロッドを伸ばし、クランプ162によってブロック161を押圧する。ブロック161は、まず、バスバー30の端部からはみ出した電極タブ12の端部15を略直角に曲げる。そしてクランプ162がブロック161をさらに押圧することによって、ブロック161は支持棒154を支点として回転するように動き、バスバー30の端部を挟み込むように、電極タブ12の端部15を折り曲げる。電極タブ12の端部15を円滑に折り曲げのため、受け151は、折れ曲がった電極タブ12の先端との干渉を避けるための凹部156を有する。電極タブ12の端部15は、受け151の角155を基準として変形する。
【0040】
ホーン110の超音波振動が止まった直後、ホーン110およびアンビル120がバスバー30と電極タブ12とを加圧したまま静止している間に、押圧工程S120は浮き17を押圧し、折曲工程S130は電極タブ12の端部15を折り曲げる。制御部140は、超音波振動を止めた直後、バスバー30と電極タブ12とを加圧したままの状態でホーン110およびアンビル120を静止させておく。そして、その状態で、上述のように、押圧部150が浮き17を押圧し、折曲部160が電極タブ12の端部15を折り曲げる。
【0041】
図9に示すように、折曲工程S130の後、制御部140は、ホーン110およびクランプ152を電極タブ12から離隔させ、また、受け151をスライドさせてバスバー30の端部から離隔させて、次の作業に備える。
【0042】
第1実施形態の効果を述べる。
【0043】
超音波接合装置100は、押圧部150によって浮き17を押え、その状態で電極タブ12の端部15を折り曲げてバスバー30と電極タブ12とを固定するため、浮き17がならされ、電極タブ12の変形を防止できる。
【0044】
電極タブ12に浮き17があると、例えば、電極タブ12にトリム部品を取付ける時、または組電池を収めるモジュール缶に電池モジュールを入れる時等に、浮き17に物が干渉し、バスバー30からの電極タブ12の剥がれ、または電極タブ12の意図しない折れ曲がりが生じる虞がある。また、電極タブ12に浮き17があると、電池10を積層して組電池とした場合に、隣り合う電池10において浮き17を介して電極タブ12同士が接し、短絡につながる虞がある。つまり、電極タブ12の浮き17が、品質や歩留まりの低下を招く虞がある。しかし超音波接合装置100は、上述のように浮き17をならして電極タブ12の変形を防止でき、ひいては品質および歩留まり低下を抑制できる。
【0045】
超音波接合装置100は、電極タブ12の端部15を折り曲げることによって、バスバー30と電極タブ12とを固定するため、例えばメカニカルクリンチのように油圧シリンダ等によってバスバー30と電極タブ12とを厚み方向から絞って接合する場合に比べ、加える力を小さくできる。よって、例えば空気圧シリンダのような比較的簡単な構成で済み、装置をコンパクトにできる。
【0046】
超音波接合装置100では超音波振動を止めた直後に、押圧部150が浮き17を押圧し、折曲部160が電極タブ12の端部15を折り曲げる。すなわち、超音波振動によって発生した熱によって電極タブ12が軟化した状態で押圧部150は浮き17を押圧し、折曲部160は電極タブ12の端部15を折り曲げる。このため、常温の場合に比べ、より小さな力によって変形できる。そして、より小さな力によって変形させることができるので、超音波接合によって接合した電極タブ12とバスバー30との接合部にかかる負荷も小さく、接合強度および品質を確保できる。
【0047】
超音波接合装置100は、電極タブ12より低い熱伝導率のクランプ152を有し、クランプ152を電極タブ12に当接させて浮き17を押圧するため、超音波振動によって生じた電極タブ12の熱がクランプ152に逃げ難い。このため電極タブ12の冷却が抑えられ、軟化した状態で電極タブ12を変形できる。よって、変形に要する力を小さくできる。
【0048】
また、超音波接合装置100は、バスバー30より高い熱伝導率の受け151を有し、受け151をバスバー30に当接させるため、超音波振動によって生じたバスバー30の熱が受け151に逃げ易い。このためバスバー30が冷めて硬化し易く、浮き17を押圧し、また電極タブ12の端部15を折り曲げる時、バスバー30の変形を抑制できる。また、電極タブ12の端部15を折り曲げる時、電極タブ12とともにバスバー30が変形し難いため、電極タブ12をバスバー30にしっかりと固定できる。
【0049】
図10に示すように本実施形態と異なり、平面視における電極タブ12Aの形状が略矩形形状であると、超音波振動による熱および塑性変形等によって、電極タブ12Aは変形して端部中央18Aが端17Aに比べて伸びて出っ張る。このような電極タブ12Aの端部15Aを折り曲げると、出っ張った端部中央18Aに比べ、端17Aはバスバー30を挟み込み難い。
【0050】
一方、図11に示すように、本実施形態に係る超音波接合装置100では、電極タブ12の端部15が、平面視におけるホーン110の振動方向114に窪んだ凹形状を有するため、超音波振動が加えられて伸びると、電極タブ12の形状は略矩形形状になる。そして電極タブ12の端部15を折り曲げると、電極タブ12の端部全体によって均一にバスバー30の端部を挟み込めるので、電極タブ12をバスバー30にしっかりと固定できる。
【0051】
超音波振動を加える前、電極タブ12の端部15とバスバー30の端部とが揃っていても、超音波振動が加えられることによって電極タブ12は伸びてバスバー30の端部からはみ出るため、バスバー30の端部を挟み込むように電極タブ12の端部15を折り曲げることができる。本実施形態では、超音波振動を加える前、電極タブ12の端部15がバスバー30の端部からはみ出るように予め設けているため、超音波振動を加えた後、バスバー30の端部からはみ出る部分の長さをより長くできる。したがって、折り曲げた場合に、電極タブ12をバスバー30にしっかりと固定できる。
【0052】
超音波接合方法は、押圧工程S120において浮き17を押え、その状態で電極タブ12の端部15を折曲工程S130において折り曲げてバスバー30と電極タブ12とを固定するので、浮き17がならされ、ワークの変形を防止できる。また、浮き17をならしてワークの変形を防止できので、上述のように、品質および歩留まり低下を抑制できる。
【0053】
超音波接合方法は、電極タブ12の端部15を折り曲げてバスバー30と電極タブ12とを固定するため、例えばメカニカルクリンチのように油圧シリンダ等によってバスバー30と電極タブ12とを厚み方向から絞って接合する場合に比べ、加える力を小さくできる。よって、例えば空気圧シリンダのような比較的簡単な構成で済み、装置のコンパクト化を図り得る。
【0054】
超音波接合方法では超音波振動を止めた直後に、押圧工程S120は浮き17を押圧し、折曲工程S130は電極タブ12の端部15を折り曲げる。すなわち、超音波振動によって発生した熱によって電極タブ12が軟化した状態で押圧工程S120は浮き17を押圧し、折曲工程S130は電極タブ12の端部15を折り曲げるため、常温の場合に比べ、より小さな力によって変形できる。そして、より小さな力によって変形できるので、超音波接合によって接合した電極タブ12とバスバー30との接合部にかかる負荷も小さく、接合強度および品質を確保できる。
【0055】
<第2実施形態>
図12、および図13において説明すると、第2実施形態は第1実施形態と略同様であるが、押圧工程S220およびクランプ252が第1実施形態と異なる。
【0056】
クランプ252は、第1実施形態の構成に加え、回転自在なローラ257を有する。そして第2実施形態では、押圧工程S220が接合工程S210と同時に行われ、図14および図15に示すように超音波振動を加える際に電極タブ12をローラ257によって押圧する。超音波振動が加わる際、ローラ257は電極タブ12の振動に合わせて回転し、面方向への電極タブ12の伸びを妨げない。
【0057】
第2実施形態では、クランプ252がローラ257を有し、また、押圧工程S220が超音波振動を加える際に電極タブ12をローラ257によって押圧するので、浮き17が抑制され、ワークの変形を防止できる。第1実施形態では、浮き17が生じた後にこれを矯正するが、第2実施形態では、浮き17の発生自体をローラ257によって抑制してワークの変形を防止する。
【0058】
第2実施形態では、超音波接合時に電極タブ12を押圧して浮き17を抑制するため、超音波接合と浮き17の押圧とを別々に行う第1実施形態に比べ、作業効率の点で優れる。なお、第1実施形態と同様の構成による効果については、第2実施形態は第1実施形態と同様である。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。
【0060】
例えば図16、および図17において述べると、第2実施形態のようにバスバー30の端部を挟み込むように電極タブ12の端部15を折り曲げるのではなく、超音波振動によって伸びた電極タブ12の端部15をパンチ361によって単に略直角に曲げるだけでもよい。また、図18に示すように、例えばセラミックスの歯365によって、バスバー30の端部からはみ出る電極タブ12の端部15を切断してもよい。ただし、上で説明した実施形態のように電極タブ12の端部15を折り曲げる方が、電極タブ12がバスバー30にしっかりと固定され、好ましい。
【0061】
また、上述の実施形態では、電極タブとバスバーとの接合について説明したが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明は、異種の板状部材同士を接合するものであればよく、例えば異なる電池の正極タブと負極タブとを接合するものであってもよいし、また、電池とは異なる分野で用いてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、反りによって電極タブの端部に生じた浮きを押圧したが、本発明はこれに限定されず、例えば、皺等によって生ずる浮きを押圧してもよいし、端部と異なる箇所に生ずる浮きを押圧してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 電池、
12 電極タブ(第2のワーク)、
15 電極タブの端部(第2のワークの端部)、
30 バスバー(第1のワーク)、
100 超音波接合装置、
110、210、310 ホーン、
120、220、320 アンビル、
130 超音波接合装置本体、
140 制御部、
150 押圧部、
151、251、351 受け(第1の当接部)、
152、252、352 クランプ(第2の当接部)、
153 空気圧シリンダ、
160 折曲部、
161、261、361 ブロック、
162 クランプ、
163 空気圧シリンダ、
257、357 ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に、板状の第1のワークと当該第1のワークよりも軟らかい板状の第2のワークとを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって前記第1のワークと前記第2のワークとを接合する超音波接合装置であって、
超音波振動が止まった後、前記第2のワークの浮きを押圧する押圧部と、
前記押圧部が前記浮きを押圧した後、前記第1のワークの端部を挟み込むように、前記第1のワークの端部からはみ出す前記第2のワークの端部を折り曲げる折曲部と、を有する超音波接合装置。
【請求項2】
超音波振動が止まった直後、前記ホーンおよび前記アンビルが前記第1のワークと前記第2のワークとを加圧したまま静止している間に、前記押圧部は前記浮きを押圧し、前記折曲部は前記第2のワークの端部を折り曲げる請求項1に記載の超音波接合装置。
【請求項3】
前記押圧部は、前記第1のワークより高い熱伝導率を有し前記第1のワークに当接する第1の当接部、および前記第2のワークより低い熱伝導率を有し前記第2のワークに当接する第2の当接部を有し、前記第1の当接部および前記第2の当接部によって前記第1のワークと前記第2のワークとを挟んで前記浮きを押圧する請求項1または請求項2に記載の超音波接合装置。
【請求項4】
前記第2のワークの端部は、平面視における前記ホーンの振動方向に窪んだ凹形状を有する請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の超音波接合装置。
【請求項5】
超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に、板状の第1のワークと当該第1のワークよりも軟らかい板状の第2のワークとを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって前記第1のワークと前記第2のワークとを接合する超音波接合装置であって、
超音波振動を加える際に前記第2のワークを押圧する回転自在なローラを有する超音波接合装置。
【請求項6】
超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に、板状の第1のワークと当該第1のワークよりも軟らかい板状の第2のワークとを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって前記第1のワークと前記第2のワークとを接合する超音波接合方法であって、
超音波振動が止まった後、前記第2のワークの浮きを押圧する押圧工程と、
前記押圧工程の後、前記第1のワークの端部を挟み込むように、前記第1のワークの端部からはみ出す前記第2のワークの端部を折り曲げる折曲工程と、を有する超音波接合方法。
【請求項7】
超音波振動が止まった直後、前記ホーンおよび前記アンビルが前記第1のワークと前記第2のワークとを加圧したまま静止している間に、前記押圧工程は前記浮きを押圧し、前記折曲工程は前記第2のワークの端部を折り曲げる請求項6に記載の超音波接合方法。
【請求項8】
超音波振動を与えるホーンとアンビルとの間に、板状の第1のワークと当該第1のワークよりも軟らかい板状の第2のワークとを挟んで加圧し、超音波振動を加えることによって前記第1のワークと前記第2のワークとを接合する超音波接合方法であって、
超音波振動を加える際に前記第2のワークを回転自在なローラによって押圧する押圧工程を有する超音波接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−611(P2011−611A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145551(P2009−145551)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】