説明

超音波撮像装置

【課題】制御パラメータの制限値情報を、個別に設定できる様にし、最大駆動電圧の最適化を一層確実なものとする超音波撮像装置を実現する。
【解決手段】制限値設定手段22は、MI、TIおよびDT等の制限パラメータの制限値情報を、個別に設定し、最大駆動電圧算定手段23は、これら個別の制限値情報に基づいて算定された制限パラメータが有する最大駆動電圧の最小値を、送受信部102に設定する送信超音波の駆動電圧としているので、最大駆動電圧を、個別の制限パラメータが有する制限値情報に基づいて一層の最適化を行い、個別の制限値情報に、より適合性が高く、場合によっては高い感度の画像情報を取得することを実現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安全上の規格に基づいて、被検体に超音波を照射する際のスキャンパラメータ(scan parameter)値に制限を加える超音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波撮像装置の高機能化に伴い、超音波の人体への影響を考慮し、様々な安全上の制限が加えられている。これら制限は、被検体内にキャビテーション(cavitation)を発生させる負音圧の指標であるMI(Mechanical Index;メカニカルインデックス)および超音波の熱作用に関連した生体内の温度上昇に関する指標であるTI(Thermal Index;サーマルインデックス)等の制限パラメータを含んでいる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
オペレータ(operator)は、操作パネル(panel)から、超音波の深さ方向の撮像範囲、焦点深度、開口等のスキャンパラメータ値情報を設定する一方で、超音波撮像装置は、これらスキャンパラメータ値情報を用いた場合の制限パラメータの値が、指定された制限値情報の範囲内に納まる様に、圧電素子に印加される最大駆動電圧を調整する。
【非特許文献1】日本電子機械工業会編、「改訂 医用超音波機器ハンドブック」、コロナ社、1997年1月20日、p.52〜58
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記背景技術によれば、最大駆動電圧の調整は、容易なものではない。すなわち、制御パラメータは、複数存在するので、規格により定められたこれらすべての制御パラメータの上限値を越えず、かつ高い感度の断層画像情報を取得するように最大駆動電圧を最適化することは容易でない。
【0005】
また、MIまたはTI等の制御パラメータが有する上限値は、規格の安全基準に基づいて決定されたものである。一方、超音波撮像装置を用いた撮像では、安全基準を超えない、より限定された制御パラメータの制限値が意味を生じる場合がある。例えば、被検体が探触子表面の温度上昇に過敏な場合には、規格で定められた温度上昇の値より一層低い値に制限値を設定することが好ましく、また造影剤の破壊を伴わない造影剤を用いた撮像では、MIの制限値を、キャビテーションが発生する音圧よりも低い、造影剤の破壊音圧以下に設定することが好ましい。
【0006】
これらのことから、制御パラメータの制限値情報を、個別に設定できる様にし、最大駆動電圧の最適化を一層確実なものとする超音波撮像装置をいかに実現するかが重要となる。
【0007】
この発明は、上述した背景技術による課題を解決するためになされたものであり、制御パラメータの制限値情報を、個別に設定できる様にして、最大駆動電圧の最適化を一層確実なものとする超音波撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、被検体に超音波を照射する際のスキャンパラメータ値情報を入力する入力部と、前記スキャンパラメータ値情報を制限する複数の制限パラメータごとに、前記スキャンパラメータ値情報および前記制限パラメータの制限値情報に基づいて、前記超音波を発生する圧電素子に印加される電圧の最大値である最大駆動電圧を算定する最大駆動電圧算定手段と、前記複数の最大駆動電圧の最小値を、前記発生を行う際に圧電素子に印加される電圧の最大駆動電圧として設定する駆動電圧設定手段とを備える。
【0009】
この第1の観点による発明では、制御パラメータごとに最大駆動電圧を求め、これらの最小値を、超音波の発生を行う際に圧電素子に印加する最大の電圧とする。
【0010】
また、第2の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1の観点に記載の超音波撮像装置において、前記超音波撮像装置が、前記複数の制限パラメータが有する制限値情報を個別に設定する制限値設定手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第2の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1の観点に記載の超音波撮像装置において、制御パラメータの制限値情報を、個別に設定する。
【0012】
また、第3の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1または2の観点に記載の超音波撮像装置において、前記制限パラメータが、探触子表面温度上昇、MI、TIおよびIspta3のパラメータを含むことを特徴とする。
【0013】
この第3の観点の発明では、制限パラメータとして、安全に関わる規格で規定されたパラメータおよび制限値を用いる。
【0014】
また、第4の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第2または3の観点に記載の超音波撮像装置において、前記制限値設定手段が、前記制限パラメータの上限値を、前記複数の制限パラメータごとに保存する上限値保存手段を備えることを特徴とする。
【0015】
この第4の観点の発明では、制限パラメータの上限値は、予め超音波撮像装置に入力される。
【0016】
また、第5の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第4の観点に記載の超音波撮像装置において、前記入力部が、前記上限値の百分率を、前記複数の制限パラメータごとに設定する百分率設定手段を備えることを特徴とする。
【0017】
この第5の観点の発明では、百分率により、オペレータが値を把握し易い入力形態にする。
【0018】
また、第6の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第5の観点に記載の超音波撮像装置において、前記制限値設定手段が、前記上限値および前記百分率に基づいて、前記複数の制限パラメータごとの制限値情報を算出する制限値算出手段を備えることを特徴とする。
【0019】
また、第7の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1ないし6の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記駆動電圧設定手段が、前記複数の制限パラメータごとに、前記最大駆動電圧から前記最小値を差し引いた前記制限パラメータごとの差分電圧を求めることを特徴とする。
【0020】
また、第8の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第7の観点に記載の超音波撮像装置において、前記超音波撮像装置が、前記複数の差分電圧を表示する表示部を備えることを特徴とする。
【0021】
この第8の観点の発明では、制御パラメータごとの最大駆動電圧を、オペレータに認識させる。
【0022】
また、第9の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第1ないし8の観点のいずれか1つに記載の超音波撮像装置において、前記超音波撮像装置が、前記スキャンパラメータ値情報を保存するスキャンパラメータ値保存手段を備えることを特徴とする。
【0023】
この第9の観点の発明では、同様の撮像を行う場合に、スキャンパラメータ値情報を再利用する。
【0024】
また、第10の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第9の観点に記載の超音波撮像装置において、前記制限値設定手段が、前記制限値情報を保存する制限値保存手段を備えることを特徴とする。
【0025】
この第10の観点の発明では、同様の撮像を行う場合に、制限値情報を再利用する。
【0026】
また、第11の観点の発明にかかる超音波撮像装置は、第10の観点に記載の超音波撮像装置において、前記最大駆動電圧算定手段が、前記保存されたスキャンパラメータ値情報および制限値情報を用いて、前記最大駆動電圧を算定することを特徴とする。
【0027】
この第11の観点の発明では、同様の撮像を行う場合に、圧電素子を同様の最大駆動電圧で駆動する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、制限パラメータごとに設定される制限値情報に基づいて、圧電素子の最大駆動電圧を一層最適化したものとし、高品質の断層画像情報を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる超音波撮像装置を実施するための最良の形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0030】
まず、本実施の形態にかかる超音波撮像装置の全体構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかる超音波撮像装置の全体構成を示すブロック(block)図である。この超音波撮像装置は、探触子部101、画像取得部109、画像メモリ部(memory)部104、画像表示制御部105、表示部106、入力部107および制御部108を含み、画像取得部109は、さらに送受信部102および画像処理部103を含む。
【0031】
探触子部101は、超音波を送受信するための部分、つまり被検体1の撮像断面の特定方向に超音波を繰り返し照射し、被検体1の内部から反射される超音波信号を、時系列的な音線として受信する。探触子部101は、同時に超音波の照射方向を順次切り替えながら電子走査を行う。なお、探触子部101は、図示しない圧電素子がアレイ(array)状に配列されている。
【0032】
送受信部102は、探触子部101と同軸ケーブル(cable)によって接続され、探触子部101の圧電素子を駆動するための電気信号および受信した超音波信号の初段増幅を行う。送受信部102は、超音波の送信の場合に、送信信号を遅延させ焦点位置に焦点を結ばせる。送受信部102は、駆動電圧可変手段12を含む。駆動電圧可変手段12は、制御部108からの制御信号に応じて、圧電素子を駆動する電圧を変化させる。駆動電圧可変手段12は、圧電素子の駆動電圧を変化させ、被検体1に照射される超音波の音圧を変化させる。
【0033】
画像処理部103は、送受信部102を駆動する電気信号の形成および送受信部102で増幅された超音波信号から断層画像情報の形成を行う。
【0034】
画像処理部103は、超音波の受信の場合に、受信した超音波信号の遅延加算処理等を行い、A/D(analog/digital)変換処理の後に、変換した後のデジタル(digital)情報をBモード画像情報として、後述の画像メモリ部104に書き込む処理等を行う。
【0035】
画像メモリ部104は、Bモード画像情報等を蓄積するための画像メモリ(memory)である。特に、画像メモリ部104は、時間的に変化するBモード画像情報を、撮像領域の一枚の断層画像情報を構成するフレーム(frame)を最小単位として、撮像が行われた取得の時間情報と共に保存する。
【0036】
画像表示制御部105は、画像処理部103で生成されたBモード画像情報等の表示フレームレート(frame
rate)変換、カラー表示制御、並びに、Bモード画像情報の表示画像の形状や位置制御を行う。また、Bモード画像情報等の表示画像上での関心領域を示すROI(region
of interest)の表示も行う。
【0037】
表示部106は、CRT(cathode ray tube)あるいはLCD(liquid crystal display)等を用いて、画像表示制御部105から出力された画像情報を、オペレータに対して可視表示する。表示部106は、画像表示制御部105からの指示により、カラー(colour)表示を行うこともできる。
【0038】
制御部108は、入力部107から与えられた操作入力信号および予め記憶したプログラム(program)やデータ(data)に基づいて、上述した超音波撮像装置各部の動作を制御し、表示部106にBモード画像等を表示する。
【0039】
入力部107は、キーボード(keyboard)およびポインティングデバイス(pointing device)等からなり、オペレータにより、Bモード画像による表示を行うかどうかを選択する操作入力信号等を、制御部108に伝える。入力部107は、後述するMI、TIおよびDT等の制御パラメータにかかる制限値情報の入力も行う。
【0040】
図2は、入力部107の一例を示す説明図である。入力部107は、キーボード70、TGC(Time Gain Controller)71、ニューペイシェントキー(New Patient Key)等を含む患者指定部72、トラックボール(track ball)、ROI設定等を含む計測入力部73および後述する制御パラメータの制限値情報を百分率で設定する制御パラメータ値設定手段74を含む。
【0041】
制御パラメータ値設定手段74は、制御パラメータ選択キー75および百分率設定ボリューム(volume)76を含む。制御パラメータ選択キー75は、MI、TIおよびDT等の制御パラメータの選択を行い、百分率設定ボリューム76は、選択された制御パラメータの予め設定された上限値に対する百分率を入力するボリュームである。
【0042】
図3は、制御部108の構成を示すブロック図である。制御部108は、画像取得制御部21、制限値設定手段22、最大駆動電圧算定手段23および駆動電圧設定手段24を含む。ここで、制限値設定手段22は、上限値保存手段32および制限値算出手段33を含み、上限値保存手段32は、MI上限値情報41、TI上限値情報42およびDT上限値情報43等を含み、制限値算出手段33は、MI制限値算出部44、TI制限値算出部45およびDT制限値算出部46等を含む。また、最大駆動電圧算定手段23は、MI対応電圧算定部47、TI対応電圧算定部48およびDT対応電圧算定部49等を含む。
【0043】
画像取得制御部21は、入力部107からの撮像モード指定情報、深度方向の撮像範囲情報、焦点位置情報、駆動周波数情報等のスキャンパラメータ情報に基づいて、超音波スキャンを行い、断層画像情報を取得する。特に、画像取得制御部21は、入力部107からの指定により、送受信部102の駆動電圧可変手段12を用いて、被検体1に照射する超音波パルスの最大駆動電圧を変化させ、ひいては被検体1中の超音波音圧を変化させる。
【0044】
制限値設定手段22は、スキャンパラメータの値を制限する制限パラメータの制限値情報を求める。ここで、制限パラメータは、MI、TI、DT、Ispta3等の規格で定められたパラメータである。ちなみに、MIは、被検体1中における超音波の負音圧に基づいて求められるパラメータで、被検体1の内部で発生するキャビテーションの発生具合を示す指標である。TIは、被検体1中における超音波の強さに基づいて求められるパラメータで、被検体1の内部での熱作用を示す指標である。DTは、圧電素子の最大駆動電圧および電子走査の繰り返し周期等に基づいて求められるパラメータで、探触子部101の被検体1と接触する超音波レンズの表面における温度上昇を示す指標である。Ispta3は、被検体1中における超音波の熱的な作用を示すパラメータで、所定の空間領域内で音圧が最大となる点の時間平均音響強度を示す指標である。
【0045】
上限値保存手段32は、上述したMI、TIおよびDT等の規格で定められたMI上限値情報41、TI上限値情報42およびDT上限値情報43を保存するメモリである。これらの上限値情報は、例えば、超音波撮像装置の出荷時等に予め不揮発性メモリに読み込まれる。
【0046】
制限値算出手段33は、入力部107から入力される、MI、TIまたはDT等の上限値に対する百分率情報に基づいて、制限パラメータの制限値情報を求める。制限値算出手段33は、MI制限値算出部44、TI制限値算出部45およびDT制限値算出部46等を含む。例えばMI制限値算出部44は、上限値保存手段32のMI上限値情報41および入力部107からMIの百分率情報を読み込み制限値情報を算出する。
【0047】
ここで、MI制限値を示すMILは、MI上限値情報41の値をMIUL、MIの百分率情報をA%とすると、関数Pを用いて、
【0048】
MIL=P(MIUL×(A/100))
を用いて算出される。関数Pは、Aの単調増加関数で、MI、TIおよびDTごとに異なる関数形を有する。TI制限値算出部45およびDT制限値算出部46等に関しても全く同様に、TI制限値であるTILおよびDT制限値であるDTL等が算出される。
【0049】
最大駆動電圧算定手段23は、MI対応電圧算定部47、TI対応電圧算定部48およびDT対応電圧算定部49等を含み、制限値算出手段33で算出されたMI制限値MIL、TI制限値TILおよびDT制限値DTL等、並びに、入力部107から設定されたスキャンパラメータ値を用いて、圧電素子を駆動する際の最大駆動電圧を、制御パラメータごとに算定する。なお、アポダイゼ−ション(apodization)を行う場合には、探触子部101に配列される圧電素子は、圧電素子ごとに異なる駆動電圧となる。ここで、算定される駆動電圧は、この中の最大駆動電圧である。
【0050】
例えば、MI対応電圧算定部47は、制限値算出手段33から入力されるMI制御値MILおよび入力部107から入力されるスキャンパラメータ値を従属変数とする所定の関数fを用いて、圧電素子のMI対応駆動電圧Vmiを算定する。すなわち、MI対応駆動電圧Vmiは、MI制御値MILおよびスキャンパラメータ値として、共振周波数Ty、電子フォーカスの焦点深度Fd、開口幅Ap、パルス波形Wf等を用いて、
【0051】
Vmi=f(MIL、Ty,Fd,Ap,Wf、・・・)
により算定される。なお、関数fは、複雑な関数形を有するので、Vmiを求める演算は数値的に行えるものの、逆演算、例えばVmi、MILおよび複数のスキャンパラメータ値を用いて、1つのスキャンパラメータの値を決定すること等には困難が伴う。
【0052】
また、TI対応電圧算定部48およびDT対応電圧算定部49は、MI対応電圧算定部47と全く同様に、TI制御値TILおよびDT制御値DTL、並びに、関数gおよびhを用いて、TI対応駆動電圧VtiおよびDT対応駆動電圧Vdtを、
【0053】
Vti=g(TIL、Ty,Fd,Ap,・・・)
【0054】
Vdt=h(DTL、Ty,Fd,Ap,・・・)
により求める。さらに、他の制御パラメータを用いた場合も、関数形は異なるが、同様の独立変数が用いられる。
【0055】
駆動電圧設定手段24は、最大駆動電圧算定手段23からMI対応駆動電圧Vmi、TI対応駆動電圧Vti、DT対応駆動電圧Vdt等の値を入力し、これらの中から最小駆動電圧Vminを求め駆動電圧可変手段12へ送信する。すなわち、
【0056】
Vmin=min(Vmi,Vti,Vdt,・・・)
となる。駆動電圧可変手段12は、このVminの値を、送信器の最大駆動電圧として設定する。
【0057】
つぎに、本実施の形態にかかる制御部108の動作について、図4を用いて説明する。図4は、制御部108の動作を示すフローチャートである。まず、オペレータは、入力部107から、スキャンパラメータを設定する(ステップS401)。ここで、オペレータは入力部107から、電子フォーカスの焦点深度Fd、開口幅Ap、パルス波形Wf等の情報の入力を行い、超音波撮像装置本体に接続された探触子部101から共振周波数Tyの情報を取得し、制御部108にこれら情報を設定する。
【0058】
その後、オペレータは、入力部107から、制御パラメータごとの百分率情報を設定する(ステップS402)。図5は、入力部107から設定された制御パラメータごとの百分率情報を、表示部106に表示した一例である。図5には、MI、TIおよびDT等の百分率情報が表示されている。ここで、オペレータは、被検体1の撮像に最適な制御パラメータの値を考慮し、百分率を設定する。例えば、被検体1が熱過敏症の様な場合には、他の制限パラメータの値を100%の上限値に固定したまま、探触子部101の被検体1との接触面における温度上昇の指標であるDTの値を、上限値の50%程度に設定する。これにより、オペレータは、被検体1が探触子部101から感じる熱による不快感を、確実に軽減することができる。一方、他の制限パラメータの百分率を100%の上限値に設定したまま、DT値のみを百分率の50%に設定することは、すべての制限パラメータを一律に百分率の50%に設定する場合と比較して、最大駆動電圧を高く設定できる場合が存在し、画質上好ましい、パラメータの最適化を行うことができる。
【0059】
また、他の例として、被検体1に造影剤を投与し、この造影剤を繰り返し撮像する場合には、他の制限パラメータの値を100%の上限値に固定したまま、MIの制限値情報を造影剤の破壊音圧以下の値に設定する。繰り返し撮像可能な造影剤を被検体1に投与し、撮像を行う場合には、被検体1の照射する超音波の音圧を造影剤の破壊音圧以下にする必要がある。オペレータは、被検体1中の音圧の指標であるMIの制限値情報が、この破壊音圧以下になるように設定する。例えば、MIの制限値情報を上限値の30%の設定し、他の制限パラメータの制限値情報を上限値の100%に設定する。
【0060】
これにより、オペレータは、被検体1の内部での音圧を、確実の造影剤の破壊音圧以下にすることができる。一方、他の制限パラメータの百分率を100%の上限値に設定したまま、MIの制限値情報のみの百分率を低く設定することは、すべての制限パラメータを一律に低く設定する場合と比較して、最大駆動電圧が高く設定できる場合が存在し、画質上好ましい、パラメータの最適化を行うことができる。
【0061】
その後、オペレータは撮像を行い(ステップS403)、本処理を終了する。
【0062】
上述してきたように、本実施の形態では、MI、TIおよびDT等の制限パラメータの制限値情報を個別に設定し、これら個別の制限値情報に基づいて算定された制限パラメータの最大駆動電圧の最小値を、送受信部102に設定する送信超音波の最大駆動電圧としているので、最大駆動電圧を、個別の制限パラメータが有する制限値情報に基づいて、一層の最適化を行い、個別の制限値情報により適合性が高く、場合によっては高い感度の画像情報を取得することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、オペレータは、予め制限パラメータの制限値情報を個別に設定し、撮像を行うこととしたが、取りあえず設定した制限パラメータの制限値情報を用いて、制限パラメータごとに算定されるパラメータ対応の最大駆動電圧およびこれら最大駆動電圧の中で最小の駆動電圧を求め、これら駆動電圧の情報を表示部106に表示し、的確に再設定を行うこともできる。
【0064】
図6は、制限パラメータごとに算定されるパラメータ対応の最大駆動電圧およびこれら最大駆動電圧の中で最小の駆動電圧を、表示部106に表示する例である。表示部106は、画像情報51と共に最大駆動電圧情報52を含む。最大駆動電圧情報52には、一例として、制御パラメータであるTIの最大駆動電圧が最小となり、送受信部102にTIの最大駆動電圧が設定される場合の例を示す。
【0065】
最大駆動電圧情報52は、表示部106の画面右下に表示され、この表示領域の中の上部には、TIの最大駆動電圧情報が、上限値に対する百分率情報と共に表示されている。また、表示されたTIの最大駆動電圧情報の下部には、その他の制限パラメータであるMIおよびDTに対して算定された最大駆動電圧の、TIの最大駆動電圧との差分電圧ΔVmi、ΔVdtの情報が表示される。なお、Vtiは最小値であるので、ΔVmiおよびΔVdtは正の値となる。例えば、図6では、ΔVmi=+20V(100%)となっているので、制御パラメータのMIに対して算定された最大駆動電圧Vmiは、Vmi=40+20=60Vとなり、これは百分率が100%の場合の算定値である。
【0066】
オペレータは、表示部106の最大駆動電圧情報52を参照し、制御パラメータを入力する際の参考データ(data)とすることができる。例えば、図6に示した例では、ΔVmi=+20V(100%)である。ここで、造影剤の撮像を、造影剤を破壊せずに繰り返し行う場合には、被検体1内での音圧を造影剤の破壊音圧以下に押さえる必要がある。図6に示した例では、被検体1内での音圧の指標であるMIの制限値Vmiが、最大駆動電圧Vtiに対して+20V(100%)であるので、最大駆動電圧を変えることなく、音圧の指標であるMIの制限値Vmiを下げることができ、造影剤の破壊防止を一層確実なものとすることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、入力部107から設定された制限値情報およびスキャンパラメータ値情報を用いて最大駆動電圧を算定することとしたが、これら制限値情報およびスキャンパラメータ値情報を、例えば制限値設定手段22に設けた制限値保存手段およびスキャンパラメータ値保存手段に保存し、最大駆動電圧算定手段23により、これら保存された情報を用いた最大駆動電圧の算定を行うこともできる。これにより、同様の撮像を行う場合に、同様の設定を行う手間を除き、同じ条件での撮像を繰り返し行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態にかかる入力部を示す説明図である。
【図3】実施の形態にかかる制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態にかかる超音波撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】表示部に表示される入力された制限パラメータ値
【図6】表示部に表示される駆動電圧情報の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1 被検体
12 駆動電圧可変手段
21 画像取得制御部
22 制限値設定手段
23 最大駆動電圧算定手段
24 駆動電圧設定手段
32 上限値保存手段
33 制限値算出手段
41 MI上限値情報
42 TI上限値情報
43 DT上限値情報
44 MI制限値算出部
45 TI制限値算出部
46 DT制限値算出部
47 MI対応電圧算定部
48 TI対応電圧算定部
49 DT対応電圧算定部
51 画像情報
52 駆動電圧情報
70 キーボード
72 患者指定部
73 計測入力部
74 制御パラメータ値設定手段
75 制御パラメータ選択キー
76 百分率設定ボリューム
101 探触子部
102 送受信部
103 画像処理部
104 画像メモリ部
105 画像表示制御部
106 表示部
107 入力部
108 制御部
109 画像取得

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を照射する際のスキャンパラメータ値情報を入力する入力部と、
前記スキャンパラメータ値情報を制限する複数の制限パラメータごとに、前記スキャンパラメータ値情報および前記制限パラメータの制限値情報に基づいて、前記超音波を発生する圧電素子に印加される電圧の最大値である最大駆動電圧を算定する最大駆動電圧算定手段と、
前記複数の最大駆動電圧の最小値を、前記発生を行う際に圧電素子に印加される電圧の最大駆動電圧として設定する駆動電圧設定手段と、
を備える超音波撮像装置。
【請求項2】
前記超音波撮像装置は、前記複数の制限パラメータが有する制限値情報を個別に設定する制限値設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波撮像装置。
【請求項3】
前記制限パラメータは、探触子表面温度上昇、MI、TIおよびIspta3のパラメータの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波撮像装置。
【請求項4】
前記制限値設定手段は、前記制限パラメータの上限値を、前記複数の制限パラメータごとに保存する上限値保存手段を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の超音波撮像装置。
【請求項5】
前記入力部は、前記上限値の百分率を、前記複数の制限パラメータごとに設定する百分率設定手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の超音波撮像装置。
【請求項6】
前記制限値設定手段は、前記上限値および前記百分率に基づいて、前記複数の制限パラメータごとの制限値情報を算出する制限値算出手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の超音波撮像装置。
【請求項7】
前記駆動電圧設定手段は、前記複数の制限パラメータごとに、前記最大駆動電圧から前記最小値を差し引いた前記制限パラメータごとの差分電圧を求めることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の超音波撮像装置。
【請求項8】
前記超音波撮像装置は、前記複数の差分電圧を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項7に記載の超音波撮像装置。
【請求項9】
前記超音波撮像装置は、前記スキャンパラメータ値情報を保存するスキャンパラメータ値保存手段を備えることを特徴とする請求項1ないし8に記載の超音波撮像装置。
【請求項10】
前記制限値設定手段は、前記制限値情報を保存する制限値保存手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の超音波撮像装置。
【請求項11】
前記最大駆動電圧算定手段は、前記保存されたスキャンパラメータ値情報および制限値情報を用いて、前記最大駆動電圧を算定することを特徴とする請求項10に記載の超音波撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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