説明

超音波板厚測定装置

【課題】超音波センサを配管に挿入して板厚測定を行う際に、超音波センサの挿入のための案内チューブを有する超音波板厚測定装置において、管内径が小さく、挿入経路配管内径に形状変化がある場合にも、案内チューブの硬さ、曲がり癖に対して十分に強い力での調芯を可能とする超音波板厚測定装置を提供する。
【解決手段】案内チューブ2の内部に超音波センサ4用信号ケーブルとワイヤ7を内装した操作チューブ8を備え、配管1の内部へ超音波センサヘッド3を挿入する際には案内チューブ保持金具9と超音波センサヘッド3が一体となるように操作チューブ8を引き上げておき、案内チューブ2を押しながら配管1に挿入を行う。次に、測定対象部位付近まで超音波センサヘッド3を挿入し、操作チューブ8を案内チューブ2に対して押込む。この状態で、超音波センサヘッド3は案内チューブ保持保持金具9から分離し、超音波センサヘッド3はワイヤ7によつて吊下げられ、案内チューブ2の硬さ、曲り癖の影響を排除した状態で配管1の内部に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の超音波による板厚測定装置に関し、特に配管内径が細く、あるいは超音波センサの挿入経路に配管内径の細い箇所(ボトルネック)が存在するために、板厚測定のための超音波センサを配管内で適切な状態で保持することが困難な状態となる場合の、板厚測定に有効な超音波板厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサを利用した構造物の板厚測定はプラント構造物や配管、貯蔵タンクなどの健全性確認のため様々な産業分野で広く利用されている。配管や貯蔵タンクに対する超音波センサによる板厚測定については、作業員が配管やタンクの外表面から直接超音波センサをあてがう等により、板厚の測定を行うことが多く行われている。
【0003】
一方で、化学プラントや原子力施設において配管を測定対象とした場合、対象の配管が容器内部に設置されていたり、放射線の影響のために作業員が配管へ近寄ることができない状態があるため、配管に対して配管内壁側からの板厚測定が必要となる場合がある。このような場合には、超音波センサを配管内へ挿入し、測定対象位置において遠隔操作で測定を行う。特許文献1には、ボイラチューブ等の被検管を超音波で検査する一体型の管内挿入型超音波接触子が開示されている。
【0004】
このような配管内への超音波センサの挿入においては、配管内への押込み力の伝達を行うために、超音波センサ用ケーブルの保護を兼ねて、硬質ナイロン樹脂チューブ、フッ素樹脂チューブなどの樹脂チューブや、ステンレス鋼を使用したフレキシブルチューブ等からなる可撓性の案内チューブの先端に超音波センサを装着した超音波板厚測定装置が広く利用されている。
【0005】
挿入長さが長くなったり、挿入する配管に曲り箇所が複数あるために、挿入に大きな押込み力が必要となる場合には、使用する案内チューブは座屈しにくいように適度な硬さが必要となる。
【0006】
一方、挿入用の案内チューブの硬さが増すと、超音波センサが所定位置へ到達しても使用する案内チューブの剛性や曲り癖のため、超音波センサの到達位置において超音波センサが配管内壁面、もしくは配管先端閉止面に対して適切に対向することが困難な状態となる場合がある。
【0007】
図5は、超音波センサによる配管内壁からの板厚測定を行う超音波板厚測定装置の模式図である。測定対象の配管1の内部に超音波センサヘッド3を挿入するために硬質の案内チューブ2を使用している。このとき、案内チューブ2の曲り癖の影響により案内チューブ2の先端に取付けられた超音波センサヘッド3は配管1の内壁に平行な状態で超音波センサ4を支持できず、超音波センサ4から照射される超音波5は配管1の壁面に垂直な状態とはならない状態となる。この結果、超音波センサ4による板厚測定が実施不能となるか、仮に板厚測定値が得られたとしても不正確な測定値となる。
【0008】
図6は、超音波センサ4を配管1内壁と平行に支持するために超音波センサヘッド3に調芯機構6を取付けて、案内チューブ2の曲り癖の影響を排除した場合の一例を示す。調芯機構6は案内チューブ2の曲り癖の影響を無くすように、案内チューブ2の硬さに対して十分な力が得られる構造とする。Sは調芯機構6を配管1内壁に押圧する圧縮バネである。
【0009】
しかし、配管1の内径が小さな場合、もしくは、測定対象の場所へ超音波センサヘッド3を挿入する経路に配管内径が小さなボトルネックや曲率半径の小さい屈曲部が存在する場合などは、調芯機構6を用いても十分な調芯をすることが困難となる場合が多い。
【0010】
すなわち、図6のように超音波センサヘッド3に調芯機構6を取付けても、調芯機構6の保持力が不十分な場合は、超音波センサ4は配管1に対して平行に保持されることが困難であり、その結果、超音波5は配管1に対して垂直に照射されず、超音波センサ4による板厚測定が実施不能となるか、仮に板厚測定値が得られたとしても不正確な測定値となる。
【0011】
特許文献2には熱交換器の伝熱管の超音波探傷装置において、センサ部の伝熱管への挿入を容易にするためにセンサ部を伸縮自在とした超音波探傷プローブが開示されている。ただし、特許文献2には超音波センサヘッドを調芯するという技術思想は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−38857号公報
【特許文献2】特開2000−9700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、配管内での板厚測定を行う際には、超音波センサ挿入用の案内チューブを使用するが、案内チューブの硬さ、曲りの癖の状態に対し、超音波センサを配管内壁もしくは、底部閉止面に対して正対するために配管内での調芯機構を利用することが行われている。この場合に使用される調芯機構は挿入用案内チューブの硬さ、曲がり癖に対して、十分に強い力での調芯が必要となる。しかし、配管内径が小さい、もしくは、挿入経路に細い箇所があり、測定位置では配管内径が大きくなっている等の形状変化がある場合には、物理的に挿入可能な大きさが決まり、調芯機構に必要となる調芯時の力が十分に得られない場合がある。
【0014】
本発明の目的は、挿入経路が小さく、調芯のための十分な力が得られない場合においても、超音波センサを配管内で適切な状態に保持するために有効な超音波測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、超音波センサヘッドを配管内へ挿入する案内チューブの内部に、ワイヤと信号ケーブルを有する操作チューブを有し、案内チューブの先端に超音波センサと調芯機構を有する超音波センサヘッドを設け、配管内部から配管板厚の測定を行う超音波板厚測定装置において、超音波ヘッドを案内チューブと別体に設け、案内チューブに超音波センサヘッドを案内チューブと一体化し又は分離する分離機構を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、超音波板厚測定装置において、案内チューブ先端に超音波センサヘッドを保持する保持金具を有し、操作チューブ先端に止め金具を有し、超音波センサの分離時に止め金具が保持金具に係止して超音波センサを分離状態とすることを特徴とする。
【0017】
また、超音波板厚測定装置において、分離機構は、操作チューブに装着されると共に超音波センサヘッドと連結されたワイヤと、操作チューブを案内チューブに対し移動させる操作装置を有することを特徴とする。
【0018】
また、超音波板厚測定装置において、案内チューブの材質をナイロン樹脂またはフッ素樹脂から構成し、操作チューブの材質をフッ素樹脂から構成したことを特徴とする。
【0019】
また、超音波板厚測定装置において、調芯機構は、案内チューブから切り離された超音波センサヘッドを配管内の中央に保持することを特徴とする。
【0020】
また、超音波板厚測定装置において、調芯機構が板バネ式調芯機構であることを特徴とする。
【0021】
また、超音波板厚測定装置において、バネ式調芯機構は、板バネを超音波センサヘッドの軸方向の異なる位置において周方向に設けた少なくとも二群の複数の板バネを有し、少なくとも二群の板バネの軸方向位置が重複し、周方向には異なる位置に配置されたことを特徴とする。
【0022】
また、超音波板厚測定装置において、調芯機構がリンク式調芯機構であることを特徴とする。
【0023】
また、超音波板厚測定装置において、調芯機構がエア供給によるゴム膨張式調芯機構であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、超音波センサヘッドを配管内へ挿入する案内チューブの内部に、ワイヤと信号ケーブルを有する操作チューブを有し、案内チューブの先端に超音波センサと調芯機構を有する超音波センサヘッドを設け、配管内部から配管板厚の測定を行う超音波板厚測定装置において、超音波ヘッドを案内チューブと別体に設け、案内チューブに超音波センサヘッドを案内チューブと一体化し又は分離する分離機構を備えたことにより、超音波センサを板厚測定のために適した位置に支持して、調芯機構に得られる調芯力が小さな場合でも板厚の正確な測定を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1の超音波板厚測定装置を示す模式図。
【図2】本発明の実施例1の配管内での調芯状態を示す模式図。
【図3】本発明の実施例2の超音波板厚測定装置を示す模式図。
【図4】本発明の実施例2の配管内での調芯状態を示す模式図。
【図5】案内チューブを使用した超音波板厚測定装置の従来例を示す模式図。
【図6】調芯機構を備えた超音波板厚測定装置の従来例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施例を図面について説明する。
【実施例1】
【0027】
図1および図2は、本発明の実施例1の超音波板厚測定装置の構成を示す模式図である。案内チューブ2は、内部に超音波センサ4用の信号ケーブルCとワイヤ7を内装した操作チューブ8を備えた構成とする。配管1の内部へ超音波センサヘッド3を挿入する際には、図1のように案内チューブ2の先端に設けた保持金具9と超音波センサヘッド3が一体となるように、作業員の手元にある図示しない操作装置により操作チューブ8を案内チューブ2に対して上方に引き上げて一体に固定し、操作チューブ8とともに案内チューブ2を押し込みながら配管1に超音波センサヘッド3の挿入を行う。次に、測定対象部位付近まで超音波センサヘッド3を挿入したところで、操作チューブ8を案内チューブ2に対して押込み操作を行い、操作チューブ8先端の止め金具10を案内チューブ2の保持金具9に接触して停止させる。
【0028】
この状態で、超音波センサヘッド3は案内チューブ2の保持金具9から離脱し、配管1の内部に操作チューブ8のワイヤ7によつて吊下げられる状態となり、案内チューブ2の硬さや曲り癖の影響を除いた状態で配管1の内部に位置する。その後、調芯機構6を作動させて超音波センサヘッド3を配管1の中央位置へ保持すると、超音波センサヘッド3は容易に配管1の内壁に平行に保持される状態となり、超音波センサ4が配管1の内壁に垂直に対向することにより、板厚の測定が正しく実施できる。
【0029】
また、超音波センサ4用の信号ケーブルCは、ワイヤ7と同様に操作チューブ8の内部へ挿入してあり、超音波センサヘッド3の超音波センサ4に接続されている。かつ、超音波センサベッド3を保持金具9から離脱した状態ではワイヤ7にのみ超音波センサヘッド3の重さが掛かるように止め金具10によってワイヤ7を操作チューブ8に固定する。
【0030】
図1及び図2に示す状態は配管1が鉛直に設置される場合を示しているが、配管1が水平、もしくは傾斜を持った状態で配置される場合においても、案内チューブ2の内部に操作チューブ8を備えた二重チューブ構造とすることで、挿入後の超音波センサヘッド3の調芯機構6による調芯機能に対して案内チューブ2の硬さ、曲り癖の影響を排除可能なことは明らかである。この場合、ワイヤ7については、超音波センサヘッド3を押し出すために十分な硬さを有した材料を使用する。
【0031】
案内チューブ2には一定の硬度と可撓性を必要とするため、材質としてはナイロン樹脂やフッ素樹脂を用いることができる。また操作チューブにも同様にナイロン樹脂やフッ素樹脂を用いることができる。但し双方をナイロン樹脂で構成すると相互の摩擦力が大きくなり操作性が悪くなるので、この組合せは避けるのがよい。
【実施例2】
【0032】
実施例1は、調芯機構6をローラ式のリンク機構として構成しているが、調芯機構6において必要となる調芯力は、案内チューブ2から自由な状態にある超音波センサヘッド3を配管1の中央に保持する力のみで十分となるため、ローラ式のリンク機構に換えて板バネ方式、もしくは、エアで膨張させるゴムリング方式調芯機構でも対応が可能となる。
【0033】
図3は本発明の実施例2の超音波センサヘッド13を示す模式図である。図4は図3のAA断面図である。図に示すように超音波センサヘッド13の周方向に120°毎の等間隔で配置された3つの板バネ11からなる第1群の板バネと、おなじく3つの板バネ12からなる第2群の板バネが変形自在に装着され、超音波センサヘッド13の調心を行う。これにより超音波センサ4は配管の内壁に正対して正確な板厚保測定を行うことができる。
【0034】
第1群と第2群の板バネは超音波センサヘッド13の軸方向に一部が重複して設けられ、これにより超音波センサヘッド13の長さを短く設定して、任意形状の配管内への挿入を容易としている。
【符号の説明】
【0035】
1…配管
2…案内チューブ
3、13…超音波センサヘッド
4…超音波センサ
5…超音波
6…調芯機構
7…ワイヤ
8…操作チューブ
9…保持金具
10…止め金具
C…信号ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサヘッドを配管内へ挿入する案内チューブの内部に、ワイヤと信号ケーブルを有する操作チューブを有し、前記案内チューブの先端に超音波センサと調芯機構を有する超音波センサヘッドを設け、前記配管内部から配管板厚の測定を行う超音波板厚測定装置において、
前記超音波ヘッドを前記案内チューブと別体に設け、前記案内チューブに前記超音波センサヘッドを前記案内チューブと一体化し又は分離する分離機構を備えたことを特徴とする超音波板厚測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載された超音波板厚測定装置において、前記案内チューブ先端に前記超音波センサヘッドを保持する保持金具を有し、前記操作チューブ先端に止め金具を有し、前記超音波センサの分離時に前記止め金具が前記保持金具に係止して前記超音波センサを分離状態とすることを特徴とする超音波板厚測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された超音波板厚測定装置において、前記分離機構は、前記操作チューブに装着されると共に前記超音波センサヘッドと連結されたワイヤと、前記操作チューブを前記案内チューブに対し移動させる操作装置を有することを特徴とする超音波板厚測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された超音波板厚測定装置において、前記案内チューブの材質をナイロン樹脂またはフッ素樹脂から構成し、前記操作チューブの材質をフッ素樹脂から構成したことを特徴とする超音波板厚測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された超音波板厚測定装置において、前記調芯機構は、前記案内チューブから切り離された超音波センサヘッドを前記配管内の中央に保持することを特徴とする超音波板厚測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された超音波板厚測定装置において、前記調芯機構が板バネ式調芯機構であることを特徴とする超音波板厚測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載された超音波板厚測定装置において、前記バネ式調芯機構は、前記板バネを超音波センサヘッドの軸方向の異なる位置において周方向に設けた少なくとも二群の複数の板バネを有し、前記少なくとも二群の板バネの軸方向位置が重複し、周方向には異なる位置に配置されたことを特徴とする超音波板厚測定装置。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載された超音波板厚測定装置において、前記調芯機構がリンク式調芯機構であることを特徴とする超音波板厚測定装置。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれかに記載された超音波板厚測定装置において、前記調芯機構がエア供給によるゴム膨張式調芯機構であることを特徴とする超音波板厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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