説明

超音波検査用探触子および超音波検査装置

【課題】検査対象の内面形状に影響されることなく、探傷能力を維持したまま探傷に要する時間の短縮を図ることができる超音波検査用探触子および超音波検査装置を提供する。
【解決手段】被検体Tに超音波を送信するとともに、被検体Tから反射した超音波を検出する複数の振動子が配列された第1探触子21および第2探触子22が設けられ、第1探触子21は、第2探触子22よりも被検体Tにおける欠陥に近い側に配置され、第1探触子21は被検体Tにおける第1探触子21および第2探触子22が配置された表面T2と反対側の裏面T5を伝播する縦波の超音波、および、表面T2から被検体Tの内部に向かって伝播する横波の超音波を発生させ、第2探触子22は、表面T2を伝播する縦波の超音波、および、表面T2から被検体Tの内部に向かって伝播する縦波の超音波を発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に配管の突合せ溶接部の検査に用いて好適な超音波検査用探触子および超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ボイラチューブなどの小口径配管における突合せ溶接部の品質検査には放射線透過試験及び超音波探傷試験が行われている。このうち超音波探傷では、横波の超音波を使用した斜角探傷法や、クリーピング波を使用したクリーピング探傷法など、種々の探傷法が用いられている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
放射線透過試験においては、試験中に部外者は管理区域外への退避が必要であるため溶接作業等の他の作業が同時にできない、また作業者の被爆の問題もあり、超音波探傷試験に代替可能なものについては、代替した方が望ましい。
一方、超音波探傷試験については、上述の斜角探傷法では、超音波を配管の内面でスキップさせることで、配管の全板厚における欠陥の有無を、クリーピング探傷法と比較して、高い精度で検出できるという長所があることが知られている。
その一方で、クリーピング探傷法では、超音波の広がりにより、配管の全板厚における欠陥の有無を、斜角探傷法と比較して、短時間で検出できるという長所があることが知られている。
【0004】
そのため、超音波探傷を行う対象に応じて、斜角探傷法およびクリーピング探傷法の一方または両方を用いて欠陥の有無の検査が行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2006−030218号公報
【特許文献2】特開2008−026061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の斜角探傷法では、超音波を配管の内面でスキップさせるため、内面が平滑なスムース管でしか用いることができず、螺旋状に溝が形成されているライフル管では、斜角探傷法による欠陥の有無の検査ができないという問題があった。さらに、クリーピング探傷法と比較して、斜角探傷法は、探触子を走査する必要があるため、欠陥の有無の検査に要する時間が長くなるという問題があった。
【0007】
その一方で、クリーピング探傷法では、斜角探傷法と比較して、欠陥の検出能力が低いという短所があった。例えば、直径が1mm程度のブローホールの検出が困難であるという短所があった。
【0008】
さらに、斜角探傷法およびクリーピング探傷法の両者を実施する場合、例えば、スムース管およびライフル管の両者の探傷を十分に実施する場合には、対応する探触子が異なることから探触子を付け替える必要があり、探傷に要する時間が長くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、検査対象の内面形状に影響されることなく、探傷能力を維持したまま探傷に要する時間の短縮を図ることができる超音波検査用探触子および超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の超音波検査用探触子は、被検体に超音波を送信するとともに、前記被検体から反射した超音波を検出する複数の振動子が配列された第1探触子および第2探触子が設けられ、前記第1探触子は、前記第2探触子よりも前記被検体における欠陥に近い側に配置され、前記第1探触子は、前記被検体における前記第1および第2探触子が配置された表面と反対側の裏面を伝播する縦波の超音波、および、前記表面から前記被検体の内部に向かって伝播する横波の超音波を発生させ、前記第2探触子は、前記表面を伝播する縦波の超音波、および、前記表面から前記被検体の内部に向かって伝播する縦波の超音波を発生させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1探触子によって裏面を伝播する縦波の超音波(2次クリーピング波)を発生させるとともに、第2探触子によって、欠陥において反射した2次クリーピング波を検出することにより、裏面の形状に関わらず、裏面における欠陥(例えば、溶け込み不足(Incoplete Penetration))の有無を検査することができる。その一方で、第2探触子によって表面を伝播する縦波の超音波(クリーピング波)を発生させるとともに、第1探触子によって、欠陥において反射したクリーピング波を検出することにより、表面の形状に関わらず、表面における欠陥(例えば、融合不良(Lack of Fusion))の有無を検査することができる。
さらに、クリーピング波および2次クリーピング波を利用して(クリーピング探傷法により)欠陥の有無を検査するため、斜角探傷法と比較して、探傷に要する時間を短くすることができる。
【0012】
第1探触子によって表面から被検体の内部に向って伝播する横波の超音波を発生させるとともに、第2探触子によって、欠陥において反射した横波の超音波を検出すること、言い換えると、横波斜角探傷法により欠陥の有無を検査することができる。同様に、第2探触子によって表面から被検体の内部に向って伝播する縦波の超音波を発生させるとともに、第1探触子によって、欠陥において反射した縦波の超音波を検出すること、言い換えると、縦波斜角探傷法により欠陥の有無を検査することができる。
さらに、斜角探傷法を用いて欠陥の有無を検査するため、クリーピング探傷法と比較して、高い精度で欠陥の有無を検査することができる。
【0013】
さらに、第1探触子および第2探触子が設けられているため、本発明の超音波検査用探触子は、交換することなく、斜角探傷法およびクリーピング探傷法による欠陥の有無の検査に用いることができる。
【0014】
本発明の超音波検査装置は、上記本発明に記載の超音波検査用探触子と、前記第1探触子の前記複数の振動子、および、前記第2探触子の前記複数の振動子における超音波の送信タイミングを制御する送信部と、受信部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、上記本発明の超音波検査用探触子が設けられ、送信部により、第1探触子の複数の振動子、および、第2探触子の複数の振動子における超音波の送信タイミングが制御される。そのため、第1探触子による裏面を伝播する縦波の超音波、および、表面から前記被検体の内部に向かって伝播する横波の超音波の発生を制御するとともに、第2探触子による表面を伝播する縦波の超音波、および、表面から被検体の内部に向かって伝播する縦波の超音波の発生を制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の超音波検査用探触子および超音波検査装置によれば、クリーピング探傷法に用いられるクリーピング波を第1探触子により発生させ、2次クリーピング波を第2探触子により発生させるとともに、斜角探傷法に用いられる横波の超音波を第1探触子により発生させ、縦波の超音波を第2探触子により発生させるため、検査対象の内面形状に影響されることなく、探傷能力を維持したまま探傷に要する時間の短縮を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波探傷装置の概略を説明する模式図である。
【図2】図1の探触子部がボイラチューブに配置された状態を説明する模式図である。
【図3】横波斜角探傷法による欠陥の有無の検査を説明する模式図である。
【図4】クリーピング探傷法による欠陥の有無の検査を説明する模式図である。
【図5】縦波斜角探傷法による欠陥の有無の検査を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態に係る超音波探傷装置について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る超音波探傷装置の概略を説明する模式図である。図2は、図1の探触子部がボイラチューブに配置された状態を説明する模式図である。
本実施形態では、本発明をボイラチューブ(被検体)Tの突合せ溶接部T1における溶融不良や、溶け込み不足などの欠陥の有無を検出する超音波探傷装置1に適用して説明する。
超音波探傷装置1には、図1に示すように、一対の探触子部(超音波検査用探触子)2と、制御部3と、情報処理部4と、が主に設けられている。
【0019】
ここで、本実施形態におけるボイラチューブTは、図2に示すように、外周面(表面)T2を有するとともに、内周面T3にライフル溝T4が形成されたものであって、内周面T3における突合せ溶接部T1の近傍は、ボイラチューブTの肉厚を合わせるシンニング部(裏面)T5が設けられたものに適用して説明する。
シンニング部T5の表面は、内周面T3と異なり円筒面状に形成されている。
【0020】
探触子部2は、図2に示すように、ボイラチューブTにおける突合せ溶接部T1の近傍に配置され、超音波をボイラチューブTに向けて送信するとともに、ボイラチューブTおよび突合せ溶接部T1から反射した超音波を検出するものである。
探触子部2には、第1探触子21と、第2探触子22と、第1ウェッジ23と、第2ウェッジ24と、が主に設けられており、第1探触子21および第2探触子22のそれぞれから発生した超音波は第1ウェッジ23および第2ウェッジ24を介してボイラチューブT内に入射する。
【0021】
第1探触子21および第2探触子22は、超音波を送信するとともに、欠陥から反射した超音波を検出するものであって、ボイラチューブTの突合せ溶接部T1における融合不良や、溶け込み不足などの欠陥の検出に用いられるものである。
さらに、第1探触子21および第2探触子22は、超音波の送信および超音波の検出を行う複数の振動子が面上に配列された、フェイズドアレイ探触子である。
【0022】
第1探触子21は、図2に示すように、探触子部2におけるボイラチューブTの欠陥が存在する側(突合せ溶接部T1側)に配置され、第1ウェッジ23を介してボイラチューブTと対向して配置されている。
【0023】
第2探触子22は、探触子部2におけるボイラチューブTの欠陥が存在する側と反対側に配置、言い換えると、突合せ溶接部T1から離れる方向に向かって、第1探触子21、第2探触子22の順に配置されている。さらに、第2ウェッジ24を介してボイラチューブTと対向して配置されている。
【0024】
以後、探触子部2における第1探触子21が配置されている側を前側、第2探触子22が配置されている側を後側として表記する。
【0025】
第1探触子21および第2探触子22は、前側から後側に向かって、ボイラチューブTに近づく傾斜を有するように配置されている。さらに、第1探触子21の振動子、および、第2探触子22の振動子は、前側から後側に向って延びる中心軸線を有する円周面上に配置されている。
【0026】
本実施形態では、第1探触子21の振動子、および、第2探触子22の振動子が、半径が約50mmの円周面上に配置されている例に適用して説明する。
第1探触子21および第2探触子22を構成する振動子の数(エレメント数)は約8個から約16個であって、振動子のピッチ(エレメントピッチ)が約0.3mmから約0.6mmである例に適用して説明する。
【0027】
ここで、振動子のピッチとは、第1探触子21を例にとると、第1探触子21を構成する複数の振動子において、それぞれの振動子のボイラチューブ中心軸方向の中心から隣り合う振動子のボイラチューブ中心軸上の中心までの距離のことである。
【0028】
さらに、第1探触子21において、探触子部2が配置されたボイラチューブTの面に対する法線と、第1探触子21の面に対する法線と、の間の角度が約28°の例に適用して説明する。その一方で、第2探触子22において、探触子部2が配置されたボイラチューブTの面に対する法線と、第1探触子21の面に対する法線と、の間の角度が約28°の例に適用して説明する。
【0029】
なお、複数の振動子としては、公知の圧電材料から形成されたものを例示することができ、特に限定するものではない。
さらに、複数の探触子の配列パターンは、ボイラチューブTなどの被検体形状などに応じて種々の配列パターンから適したものを選択することができ、特に限定するものではない。
【0030】
第1ウェッジ23および第2ウェッジ24は、それぞれ、第1探触子21および第2探触子22から送信された超音波をボイラチューブTに導くとともに、ボイラチューブTの欠陥から反射した超音波を、第1探触子21および第2探触子22に導くものである。
第1ウェッジ23および第2ウェッジ24を構成する材料としては、樹脂などの公知の材料を用いることができ、特に限定するものではない。
【0031】
第1ウェッジ23は、第1探触子21とボイラチューブTとの間に配置されるものである。
本実施形態では、第1探触子21と接触する面と、ボイラチューブTと接触する面の間の角度が約28°の例に適用して説明する。
【0032】
第2ウェッジ24は、第2探触子22とボイラチューブTとの間に配置されるものである。
本実施形態では、第2探触子22と接触する面と、ボイラチューブTと接触する面の間の角度が約23°の例に適用して説明する。
【0033】
第1探触子21および第1ウェッジ23と、第2探触子22および第2ウェッジ24と、の間には、超音波を吸収して、両者の間で超音波が直接伝播することを防止する吸音部25が設けられている。吸音部25は、両者の間を直接伝播する超音波を吸収することで、ボイラチューブTおよび突合せ溶接部T1エコーから反射した以外の、探傷の妨げとなる超音波の発生を抑制することが可能である。
吸音部25としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0034】
制御部3は、探触子部2から送信される超音波を制御するとともに、探触子部2から出力された検出信号を情報処理部4に伝達するものである。
制御部3には、図1に示すように、送信部31と、受信部32が主に設けられている。
【0035】
送信部31は、第1探触子21の振動子、および、第2探触子22の振動子に対して、超音波を送信させるパルス状の駆動電圧を出力するものである。さらに、振動子のそれぞれから送信される超音波の位相を制御することにより、第1探触子21および第2探触子22から送信される超音波を制御するものである。
【0036】
本実施形態では、送信部31は、第1探触子21の振動子に対して、ボイラチューブTの内周面T3に2次クリーピング波を発生させる超音波、および、ボイラチューブTの内部を伝播する横波の超音波を発生させる超音波を送信させる駆動電圧を出力する。
その一方で、第2探触子22の振動子に対して、ボイラチューブTの外周面T2にクリーピング波を発生させる超音波、および、ボイラチューブTの内部を伝播する縦波の超音波を発生させる超音波を送信させる駆動電圧を出力する。
なお、送信部31としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0037】
受信部32は、第1探触子21の振動子、および、第2探触子の振動子から出力された検出信号を情報処理部4において処理可能な測定信号に変換し、情報処理部4に測定信号を出力するものである。例えば、第1探触子21および第2探触子22の振動子から出力されたアナログ信号である検出信号を、情報処理部4において処理可能なデジタル信号である測定信号に変換するものである。
【0038】
受信部32には、第1探触子21の振動子、および、第2探触子22の振動子から検出信号が入力可能に接続されているとともに、情報処理部4に対して測定信号を出力可能に接続されている。
なお、受信部32としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0039】
情報処理部4は、受信部32から入力された測定信号に基づいて、ボイラチューブTの突合せ溶接部T1における欠陥の位置を演算により求めるものである。
なお、情報処理部4としては、公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0040】
次に、上記の構成からなる超音波探傷装置1を用いたボイラチューブTにおける欠陥有無の検査について説明する。
本実施形態では、最初に横波斜角探傷法による欠陥、具体的にはブローホール(BH)の有無の検査を行い、次いで、クリーピング探傷法による外周面T2の融合不良(LF)、内周面T3の溶け込み不良(IP)の有無の検査を行い、最後に、縦波斜角探傷法による融合不良(LF)の有無の検査を行う例に適応して説明する。
【0041】
図3は、横波斜角探傷法による欠陥の有無の検査を説明する模式図である。
まず、横波斜角探傷法によるブローホールなどの欠陥の有無の検査について説明する。
一対の探触子部2は、図3に示すように、ボイラチューブTの突合せ溶接部T1を間に挟んで、互いに対向して配置される。このとき、第1探触子21が配置された前側が、突合せ溶接部T1側となっている。
【0042】
そして、第1探触子21から送信された超音波により、ボイラチューブTの内部を横波の超音波が伝播する。送信部31は、第1探触子21の振動子から送信される超音波の位相を制御することにより、第1探触子21から送信される超音波ビームの方向を制御する。これにより、ボイラチューブTの内部を伝播する横波の超音波の進行方向が制御される(セクタースキャンされる)。
【0043】
具体的には、第1探触子21から送信された超音波は、第1ウェッジ23の内部を伝播した後、ボイラチューブTの外周面T2から内部に入射し、横波の超音波としてボイラチューブTの内周面T3に向って伝播する。ここで、超音波は第1ウェッジ23からボイラチューブTに入射する際に屈折する。本実施形態では、横波の超音波は、外周面T2の法線方向を基準として約38°から約60°の角度の範囲内で伝播する。
【0044】
セクタースキャンされた横波の超音波は、突合せ溶接部T1に直接入射するか、シンニング部T5において反射して突合せ溶接部T1に入射する。図3では、左側の探触子部2から送信された横波の超音波が、直接、突合せ溶接部T1に入射し、右側の探触子部2から送信された横波の超音波が、シンニング部T5において反射して突合せ溶接部T1に入射している。
突合せ溶接部T1にブローホールなどの欠陥が存在すると、横波の超音波は当該欠陥において反射する。
【0045】
反射した超音波は、入射時と同じ径路を逆にたどって、ボイラチューブTの外周面T2まで伝播する。そして、反射した超音波は、外周面T2から第2ウェッジ24に入射して、第2ウェッジ24から第2探触子22に入射し、第2探触子22の振動子に検出される。
【0046】
第2探触子22の振動子は、検出した超音波の強度に応じた検出信号を出力し、検出信号は、図1に示すように、受信部32に入力される。受信部32は、アナログ信号である検出信号をデジタル信号である測定信号に変換し、測定信号を情報処理部4に出力する。
情報処理部4は、入力された測定信号等に基づいて、ブローホールなどの欠陥の位置を演算により求める。
【0047】
図4は、クリーピング探傷法による欠陥の有無の検査を説明する模式図である。
次に、クリーピング探傷法による融合不良や溶け込み不足などの欠陥有無の検査について説明する。
横波斜角探傷法による欠陥の有無の検査が終了すると、引き続いて、クリーピング探傷法による欠陥の有無の検査が行われる。そのため、一対の探触子部2の配置位置は、横波斜角探傷法による検査のときの配置位置と同じである。
【0048】
まず、図4の左側の探触子部2を参照しながら、ボイラチューブTの外周面T2を伝播する超音波であるクリーピング波を用いた融合不良などの欠陥有無の検査について説明する。
【0049】
送信部31は、第2探触子22の振動子から送信される超音波の位相を制御することにより、第2探触子22から送信される超音波が制御され、ボイラチューブTの外周面T2に沿って伝播する縦波の超音波、つまり、クリーピング波が発生する。
具体的には、第2探触子22から送信された超音波は、第2ウェッジ24の内部を伝播した後、ボイラチューブTの外周面T2に入射する。すると、外周面T2に沿って伝播する縦波の超音波であるクリーピング波が発生する。
【0050】
クリーピング波は外周面T2に沿って伝播して、突合せ溶接部T1に直接入射する。突合せ溶接部T1に融合不良などの欠陥が存在すると、クリーピング波は欠陥により反射される。反射されたクリーピング波は、入射時と同じ径路を逆にたどって、ボイラチューブTから第1ウェッジ23に入射する。反射したクリーピング波は、第1ウェッジ23から第1探触子21に入射し、第1探触子21の振動子に検出される。
【0051】
第1探触子21の振動子は、検出したクリーピング波の強度に応じた検出信号を出力する。以後の作用については、横波斜角探傷法による欠陥有無の検査の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0052】
次に、図4の右側の探触子部2を参照しながら、ボイラチューブTの内周面T3やシンニング部T5を伝播する超音波である2次クリーピング波を用いた溶け込み不良などの欠陥有無の検査について説明する。
【0053】
送信部31は、第1探触子21の振動子から送信される超音波の位相を制御することにより、第1探触子21から送信される超音波が制御され、ボイラチューブTのシンニング部T5に沿って伝播する縦波の超音波、つまり、2次クリーピング波が発生する。
【0054】
具体的には、第1探触子21から送信された超音波は、第1ウェッジ23の内部を伝播した後、ボイラチューブTの外周面T2に入射し、外周面T2からシンニング部T5に向って伝播する横波の超音波が発生する。横波の超音波がシンニング部T5に入射すると、シンニング部T5に沿って伝播する縦波の超音波である2次クリーピング波が発生する。
【0055】
2次クリーピング波はシンニング部T5に沿って伝播して、突合せ溶接部T1に直接入射する。突合せ溶接部T1に溶け込み不良などの欠陥が存在すると、2次クリーピング波は欠陥により反射される。反射された2次クリーピング波は、入射時と同じ径路をたどって、ボイラチューブTから第2ウェッジ24に入射する。反射した2次クリーピング波は、第2ウェッジ24から第2探触子22に入射し、第2探触子22の振動子に検出される。
【0056】
第2探触子22の振動子は、検出した2次クリーピング波の強度に応じた検出信号を出力する。以後の作用については、横波斜角探傷法による欠陥有無の検査の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
図5は、縦波斜角探傷法による欠陥の有無の検査を説明する模式図である。
最後に、縦波斜角探傷法による融合不良などの欠陥有無の検査について説明する。
クリーピング探傷法による欠陥の有無の検査が終了すると、引き続いて、縦波斜角探傷法による欠陥の有無の検査が行われる。そのため、一対の探触子部2の配置位置は、横波斜角探傷法や、クリーピング探傷法による検査のときの配置位置と同じである。
なお、図5では理解を容易にするため、一対の探触子部2の一方(左側の探触子部2)が記載されている。
【0058】
送信部31は、第2探触子22の振動子から送信される超音波の位相を制御することにより、第2探触子22から送信される超音波が制御され、ボイラチューブTの外周面T2から内周面に向って伝播する縦波の超音波が発生する。
【0059】
具体的には、第2探触子22から送信された超音波は、第2ウェッジ24の内部を伝播した後、ボイラチューブTの外周面T2から内部に入射し、縦波の超音波としてボイラチューブTの内周面T3に向って伝播する。ここで、超音波は第2ウェッジ24からボイラチューブTに入射する際に屈折する。本実施形態では、縦波の超音波は、外周面T2の法線方向を基準として約60°から約80°の角度の範囲内で伝播する。
【0060】
縦波の超音波は突合せ溶接部T1に直接入射し、融合不良などの欠陥が存在すると、当該欠陥において反射する。
反射した超音波は、入射時と同じ径路を逆にたどって、ボイラチューブTの外周面T2まで伝播する。そして、反射した超音波は、外周面T2から第1ウェッジ23に入射して、第1ウェッジ23から第1探触子21に入射し、第1探触子21の振動子に検出される。
【0061】
第1探触子21の振動子は、検出したクリーピング波の強度に応じた検出信号を出力する。以後の作用については、横波斜角探傷法による欠陥有無の検査の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0062】
上記の構成によれば、第1探触子21によって2次クリーピング波を発生させるとともに、第2探触子22によって、欠陥において反射した2次クリーピング波を検出することにより、内周面T3の形状に関わらず、シニング部T5における欠陥の有無を検査することができる。その一方で、第2探触子22によってクリーピング波を発生させるとともに、第1探触子21によって、欠陥において反射したクリーピング波を検出することにより、外周面T2の形状に関わらず、外周面T2における欠陥の有無を検査することができる。
さらに、クリーピング波および2次クリーピング波を利用して欠陥の有無を検査するため、斜角探傷法と比較して、探傷に要する時間を短くすることができる。
【0063】
第1探触子21によって外周面T2からボイラチューブTの内部に向って伝播する横波の超音波を発生させるとともに、第2探触子22によって、欠陥において反射した横波の超音波を検出すること、つまり、横波斜角探傷法による欠陥の有無を検査することができる。同様に、第2探触子22によって外周面T2からボイラチューブTの内部に向って伝播する縦波の超音波を発生させるとともに、第1探触子21によって、欠陥において反射した縦波の超音波を検出すること、つまり、縦波斜角探傷法による欠陥の有無を検査することができる。
さらに、斜角探傷法を用いて欠陥の有無を検査するため、クリーピング探傷法と比較して、高い精度で欠陥の有無を検査することができる。
【0064】
さらに、第1探触子21および第2探触子22が設けられているため、本実施形態の探触子部2および超音波探傷装置1は、探触子部2自体やウェッジなどを交換することなく、斜角探傷法およびクリーピング探傷法による欠陥の有無の検出に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 超音波探傷装置
2 探触子部(超音波検査用探触子)
21 第1探触子
22 第2探触子
31 送信部
T ボイラチューブ(被検体)
T2 外周面(表面)
T5 シンニング部(裏面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送信するとともに、前記被検体から反射した超音波を検出する複数の振動子が配列された第1探触子および第2探触子が設けられ、
前記第1探触子は、前記第2探触子よりも前記被検体における欠陥に近い側に配置され、
前記第1探触子は、前記被検体における前記第1および第2探触子が配置された表面と反対側の裏面を伝播する縦波の超音波、および、前記表面から前記被検体の内部に向かって伝播する横波の超音波を発生させ、
前記第2探触子は、前記表面を伝播する縦波の超音波、および、前記表面から前記被検体の内部に向かって伝播する縦波の超音波を発生させることを特徴とする超音波検査用探触子。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波検査用探触子と、
前記第1探触子の前記複数の振動子、および、前記第2探触子の前記複数の振動子における超音波の送信タイミングを制御する送信部と、
が設けられていることを特徴とする超音波検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate