説明

超音波検査装置および超音波検査方法

【課題】超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が供給されているか否かを精度良く判定することが可能な超音波検査装置および超音波検査方法を提供する。
【解決手段】超音波検査装置100に、被検査物1の被検査面1aに接触媒質5を供給する接触媒質供給機構130と、接触媒質5を介して超音波を被検査物1に向けて発信すると共に受信した超音波の強度を検出する超音波センサ141と、超音波強度−受信時間グラフを近似する三次以上の高次関数の二次以上の係数の値に基づいて超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを判定する接触媒質判定部151dと、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて被検査物の内部の品質を検査する技術に関する。
より詳細には、超音波を発生する超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が供給されているか否かを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を用いて被検査物の内部の品質、例えば被検査物の内部にクラックが有るか否か、被検査物の内部に異物が有るか否か等を検査する超音波検査装置は公知となっている。
このような超音波検査装置は、一般には超音波を被検査物に向かって発信するとともに被検査物により反射されてきた超音波の受信強度に応じた強度の信号を出力する超音波センサと、超音波センサが出力した信号に基づいて被検査物の内部に異物が有るか否か等を判定する判定装置と、を具備する。
【0003】
また、このような超音波検査装置は、超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に水あるいはグリセリン等の接触媒質を介在させることにより、超音波センサが発信する超音波を被検査物に効率良く(あまり減衰させずに)入射させる。
超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質を介在させる方法としては、以下の(1)および(2)の方法が知られている。
【0004】
(1)の方法は、容器(水槽等)に接触媒質および被検査物を収容し、被検査物が接触媒質に浸漬された状態で検査を行う方法である。
(1)の方法は、接触媒質を超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に確実に介在させる(供給する)ことが可能である点において優れている。
しかし、(1)の方法は接触媒質が収容(貯留)された容器に被検査物を浸漬する作業および検査後に被検査物を取り出す作業を要し、被検査物が重量物(作業者が手で持って搬送することが困難な程度の重量を有する物品)である場合にはこれらの作業を機械化するための装置が必要であるため、全体として装置が大型化・複雑化するという問題点を有する。
【0005】
(2)の方法は、例えばノズルの先端から接触媒質を吐出することにより超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に継続して接触媒質を供給しつつ検査を行う方法である。
(2)の方法が適用される装置としては、例えば、特許文献1に記載の超音波探傷装置が知られている。
(2)の方法は、接触媒質が収容された容器に被検査物を浸漬する作業および検査後に被検査物を取り出す作業を必要としない分、装置を簡素化・小型化し易いという利点を有する。
しかし、(2)の方法は超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に流体たる接触媒質を供給するため、被検査物の形状、姿勢、その他の装置構成等によっては超音波センサと被検査物とで挟まれる位置にうまく接触媒質を供給することができない場合がある。
また、一般に、超音波センサが受信する超音波の強度(受信強度)は超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在しているか否かにより変動する(接触媒質が介在しない場合には受信強度が小さくなる)。
従って、上記(2)の方法は、超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在していたことが確認されない限り、検査結果の信頼性が低いという問題を有する。
【0006】
上記(2)の方法の問題点を解消する装置としては、特許文献2および特許文献3に記載の装置が知られている。
【0007】
特許文献2に記載の自動超音波探傷装置は、被検査物と接触媒質との境界面で反射した超音波(境界エコー)の立ち上がり時間(超音波センサから発信された超音波が接触媒質に入射してから被検査物と接触媒質との境界面により反射され、超音波センサにより受信されるまでに要する時間)が接触媒質の厚さに略比例する性質を利用して接触媒質の厚さを推定する。
また、特許文献2に記載の自動超音波探傷装置は、予め接触媒質の厚さと超音波センサの受信感度との関係を実験的に求めておき、当該関係および推定された接触媒質の厚さを用いて超音波センサが受信した超音波の受信強度を補正する。
しかし、特許文献2に記載の自動超音波探傷装置は、実験的に求められる接触媒質の厚さと超音波センサの受信感度との関係が信頼性(再現性)の高いものでなければ、結局は検査結果の信頼性を高めることが困難であるという問題を有する。
【0008】
特許文献3に記載の超音波試験装置は、超音波センサが受信する超音波の強度(音圧)が予め設定された閾値以上である場合には超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在していると判定し、超音波センサが受信する超音波の強度(音圧)が予め設定された閾値未満である場合には超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在していないと判定する。
しかし、特許文献3に記載の超音波試験装置は超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在しているか否かを判定するための超音波の閾値を設定することが困難であるという問題を有する。
【0009】
超音波センサにより検出される超音波のうち、超音波センサが超音波を発信してから受信するまでの時間(受信時間)が短いものは接触媒質により反射された超音波であると考えられる。
そして、定性的には、受信時間が短い超音波の強度が比較的大きい場合には超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在していると考えられ、受信時間が短い超音波の強度が比較的小さい場合には超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在していないと考えられる。
従って、外部からのノイズの影響を考慮しない場合には、図4の(a)および(b)に示す如く、受信時間が短い所定の判定区間における超音波の強度の最大値が所定の閾値以上であるか否かで超音波試験装置は超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在しているか否かを判定することが可能である。
【0010】
しかし、図4の(c)に示す如く、実際の検査では超音波センサにより検出される超音波に外部のノイズが重畳し、超音波センサにより検出される超音波のうち、受信時間が短いものの強度が一時的に大きくなる場合がある。このような場合には、ノイズに起因する超音波の強度(電圧)のピーク値が予め設定された閾値以上となる場合がある。
図4の(c)に示す場合、実際には超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在していない状態で検査が行われているにもかかわらず、超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在している状態で検査が行われていると誤判定されることとなる。
超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在していない状態で検査が行われた場合、受信時間から見て被検査物の内部から反射したものと思われる超音波の強度が全体的に小さくなるので、実際には欠陥があるにもかかわらず欠陥が無いと誤判定する、あるいは欠陥のサイズを実際よりも小さいものと誤判定する、といった事態を引き起こすこととなる。
このように、超音波センサにより検出される超音波のうち、受信時間が短いものの強度のみに基づいて超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在しているか否かを判定する方法は検査結果の信頼性を向上することが困難であり、ひいては検査の自動化を行う上で障害となる(例えば、超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が介在していない状態で大量の被検査物を検査し、実際にはこれらの被検査物の中に欠陥を有するものが混入しているにもかかわらずこれらの被検査物にはいずれも欠陥が無いと誤判定する、といった事態を引き起こす恐れがある)。
【特許文献1】特開2000−298120号公報
【特許文献2】特開昭63−198865号公報
【特許文献3】特開2006−234770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が供給されているか否かを精度良く判定することが可能な超音波検査装置および超音波検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
すなわち、請求項1においては、
被検査物の被検査面に接触媒質を供給する接触媒質供給部と、
前記接触媒質を介して超音波を前記被検査物に向けて発信し、前記被検査物および前記接触媒質により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出する超音波センサと、
前記超音波センサにより検出された超音波の強度と前記超音波センサが超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフを近似する三次以上の高次関数を生成し、前記高次関数の二次以上の係数の値に基づいて前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されているか否かを判定する接触媒質判定部と、
を具備するものである。
【0014】
請求項2においては、
前記接触媒質判定部は、
前記高次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値以上である場合には前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていると判定し、
前記高次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値未満である場合には前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定するものである。
【0015】
請求項3においては、
前記接触媒質判定部が前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定した場合に警報を発する警報発生部を具備するものである。
【0016】
請求項4においては、
前記超音波センサを前記被検査物の被検査面に沿って相対移動させる移動部を具備するものである。
【0017】
請求項5においては、
前記移動部は、
前記接触媒質供給部における接触媒質の吐出口と前記超音波センサとの相対的な位置を保持しつつ、前記接触媒質供給部における接触媒質の吐出口および前記超音波センサを前記被検査物の被検査面に沿って相対移動させるものである。
【0018】
請求項6においては、
前記移動部は、
前記接触媒質判定部が前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定した場合に前記超音波センサの相対移動を停止するものである。
【0019】
請求項7においては、
超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質を供給している状態で、前記超音波センサが前記接触媒質を介して超音波を前記被検査物に向けて発信し、前記被検査物および前記接触媒質により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出する超音波発信・受信工程と、
前記超音波センサにより検出された超音波の強度と前記超音波発信・受信工程において超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフを生成する超音波強度−受信時間グラフ生成工程と、
前記超音波強度−受信時間グラフ生成工程において生成されたグラフを近似する三次以上の高次関数を生成し、前記高次関数の二次以上の係数の値に基づいて前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されているか否かを判定する接触媒質判定工程と、
を具備するものである。
【0020】
請求項8においては、
前記接触媒質判定工程において、
前記高次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値以上である場合には前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていると判定し、
前記高次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値未満である場合には前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定するものである。
【0021】
請求項9においては、
前記接触媒質判定工程において前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定した場合に警報を発する警報発生工程を具備するものである。
【0022】
請求項10においては、
前記超音波センサを前記被検査物の被検査面に沿って相対移動させる移動工程を具備するものである。
【0023】
請求項11においては、
前記接触媒質判定工程において前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定した場合に前記超音波センサの相対移動および前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置への前記接触媒質の供給を停止する緊急停止工程を具備するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質が供給されているか否かを精度良く判定することが可能である、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、図1を用いて本発明に係る超音波検査装置の実施の一形態である超音波検査装置100について説明する。
【0026】
超音波検査装置100は被検査物1の品質を検査する装置である。
「被検査物」は、超音波検査装置による検査の対象となる物品を指す。被検査物の具体例としては、ダイキャスト製品、複数の部品が溶接により接合された物品の溶接部、半導体のインゴット等が挙げられる。
「被検査物の品質を検査すること」には、被検査物の内部に欠陥(クラック、異物、空洞等)があるか否かを判定すること等が含まれる。
本実施形態の被検査物1の形状は直方体形状であり、その上面が被検査面1aとなる。
「被検査物の被検査面」は被検査物の表面のうち、超音波センサから発信された超音波が入射される面を指す。
なお、本発明に係る被検査物の形状は本実施形態の如き直方体形状に限定されないが、本発明に係る超音波検査装置による検査結果の信頼性を向上させる観点からは、被検査物の被検査面が平滑であることが望ましく、超音波センサから被検査物の被検査面までの距離が一定に保持された状態で検査が行われることが望ましい。
【0027】
図1に示す如く、超音波検査装置100は主として検査台110、移動機構120、接触媒質供給機構130、超音波センサユニット140および検査ユニット150を具備する。
【0028】
検査台110は被検査物1を所定の位置に所定の姿勢で載置する台である。
本実施形態の検査台110は長方形の板状の部材であり、地面あるいは床面に載置される。地面あるいは床面に載置された検査台110の上面(被検査物1が載置される面)は水平面(重力が作用する方向に垂直な面)に対して平行となる。
【0029】
移動機構120は本発明に係る移動部の実施の一形態であり、後述する超音波センサ141を被検査物1の被検査面に沿って相対移動させるものである。
移動機構120はフレーム121、レール122、ボールネジ123、スライドブロック124、モータ125および移動制御装置126を有する。
【0030】
フレーム121は移動機構120の主たる構造体を成す部材である。フレーム121は検査台110の二つの隅からそれぞれ立設される柱121a・121aおよび柱121a・121aの上端部を連結する梁121bを有する。
【0031】
レール122は長い棒状の部材であり、検査台110の上方に配置される。レール122の両端部はフレーム121に固定される。
【0032】
ボールネジ123は全長にわたって外周面に雄ネジが形成された丸棒状の部材である。
ボールネジ123は、その軸線方向がレール122の長手方向と平行となるように配置される。ボールネジ123の両端部はフレーム122に回転可能に軸支される。
【0033】
スライドブロック124はレール122に係合しつつレール122の長手方向に摺動する部材である。スライドブロック124はボールネジ123に螺合する。
【0034】
モータ125はボールネジ123を回転駆動する駆動源である。本実施形態のモータ125は回転量(回転角度)を制御することが可能な電気式のモータ(例えば、サーボモータ、ステッピングモータ等)からなる。
モータ125に通電するとボールネジ123が回転駆動され、ボールネジ123に螺合するスライドブロック124がレール122に沿って摺動する。
【0035】
移動制御装置126はモータ125の動作、ひいては移動機構120の動作を制御する装置である。移動制御装置126には移動機構120の動作に係るプログラムが格納される。本実施形態の移動制御装置126はプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller;PLC)からなる。
【0036】
接触媒質供給機構130は本発明に係る接触媒質供給部の実施の一形態であり、被検査物1の上面に接触媒質5を供給するものである。
「接触媒質」は超音波センサが発信する超音波を被検査物に伝達するための媒質(波動が伝播する場となる物質あるいは物体)であり、通常は流動性を有する物質(液体またはゲル状の物質)からなる。接触媒質の具体例としては、水、油、グリセリン、水ガラス(珪酸ナトリウムの水溶液)等が挙げられる。
接触媒質供給機構130は主としてタンク131、第一搬送配管132、ポンプ133、第二搬送配管134、ノズル135を有する。
【0037】
タンク131は接触媒質5を収容する容器である。
第一搬送配管132はタンク131に収容された接触媒質5を取り出して搬送するための配管であり、その一端はタンク131に挿入される。
ポンプ133はタンク131に収容された接触媒質5を吸入し、圧力を作用させて吐出するものである。ポンプ133は吸入ポートおよび吐出ポートの二つのポートを有し、吸入ポートから接触媒質5を吸入し、吸入した接触媒質5を吐出ポートから吐出する。ポンプ133の吸入ポートは第一搬送配管132の他端に接続される。
第二搬送配管134はポンプ133から吐出された接触媒質5を搬送するための配管であり、その一端はポンプ133の吐出ポートに接続される。本実施形態の第二搬送配管134は屈曲可能な材質(例えば、ゴム、樹脂等)からなる。
ノズル135は接触媒質供給機構130における接触媒質5の吐出口を成す筒状の部材であり、第二搬送配管134の他端に接続される。ノズル135は移動機構120のスライドブロック124に固定され、スライドブロック124と一体的に移動する。
【0038】
接触媒質供給機構130のポンプ133が動作することにより、タンク131に収容された接触媒質5が第一搬送配管132、ポンプ133および第二搬送配管134を経てノズル135まで圧送され、ノズル135から吐出される。ノズル135から吐出された接触媒質5は被検査物1の被検査面1aに注がれる。
【0039】
超音波センサユニット140は超音波センサ141、超音波発信機142および超音波受信機143を有する。
【0040】
超音波センサ141は本発明に係る超音波センサの実施の一形態であり、接触媒質5を介して超音波を被検査物1に向けて発信し、被検査物1および接触媒質5により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出するものである。
本実施形態の超音波センサ141はユニモルフ構造の振動子、すなわち圧電セラミックに金属板を貼り合わせるとともに一対の電極を設けた振動子を有する。
【0041】
超音波発信機142は超音波センサ141の振動子に所定周波数の電圧を印加する装置である。超音波発信機142は超音波センサ141の振動子に設けられた一対の電極に接続される。
超音波発信機142が超音波センサ141の振動子に所定周波数の電圧を印加すると、当該振動子は超音波発信機142が印加した電圧の周波数と同じ周波数で屈曲し、当該振動子は超音波発信機142が印加した電圧の周波数と同じ周波数の超音波を発信する。
【0042】
超音波センサ141の振動子が外部からの超音波を受信すると、受信した超音波の周波数と同じ周波数を有し、かつ、超音波センサ141の振動子が受信した超音波の強度(音圧)に比例する電圧を有する電気信号を生成する。当該電気信号は、超音波センサ141が検出した超音波の強度に係る情報に相当する。
【0043】
超音波受信機143は超音波センサ141の振動子が生成した電気信号を受信し、受信した信号を後述するユニット本体151が受信可能な電気信号に変換する装置である。超音波受信機143は超音波センサ141の振動子に設けられた一対の電極に接続される。超音波受信機143により変換された電気信号も、超音波センサ141が検出した超音波の強度に係る情報に相当する。
【0044】
超音波センサ141はスライドブロック124に固定され、検査台110に載置された被検査物1に向けて(本実施形態では、斜め下方に)超音波を発信する。
検査台110に載置された被検査物1の被検査面1aおよびレール122の長手方向はいずれも水平面に平行であるため、スライドブロック124がレール122に沿って移動しても超音波センサ141の下端部から被検査物1の被検査面1aまでの距離は一定に保持される。
【0045】
接触媒質供給機構130により被検査物1の被検査面1aに注がれた接触媒質5は、超音波センサ141と被検査物1の被検査面1aとの間に供給され、超音波センサ141と被検査物1の被検査面1aとの間は接触媒質5により満たされる。
従って、超音波センサ141が発信した超音波は、接触媒質5を介して被検査物1に入射されることとなる。
また、被検査物1の内部の欠陥または接触媒質5により反射された超音波(反射波)は接触媒質5を介して超音波センサ141に伝わり、超音波センサ141に受信される。
【0046】
本実施形態では、ノズル135(接触媒質供給機構130における接触媒質5の吐出口)および超音波センサ141がともにスライドブロック124に固定されるため、ノズル135と超音波センサ141との相対的な位置が保持された状態でスライドブロック124が移動する。
また、ノズル135はその先端(接触媒質5の吐出口)が超音波センサ141と被検査物1の被検査面1aとで挟まれる位置に向けられた状態でスライドブロック124に固定されるので、スライドブロック124が移動しても(被検査物1に対する超音波センサ141の相対的な位置が変化しても)接触媒質5が超音波センサ141と被検査物1の被検査面1aとで挟まれる位置に安定して供給される。
【0047】
検査ユニット150はユニット本体151、入力装置152および表示装置153を備える。
【0048】
ユニット本体151は種々のプログラム等を格納することができ、これらのプログラム等を展開することができ、これらのプログラム等に従って所定の演算を行うことができ、当該演算の結果等を記憶することができ、当該演算の結果等を外部に出力することができる。
【0049】
ユニット本体151は、実体的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read−Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等がバスで相互に接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)等からなる構成であっても良い。
本実施形態におけるユニット本体151は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等にプログラム等を適宜格納したもので達成することも可能である。
【0050】
ユニット本体151は移動制御装置126に接続される。ユニット本体151は移動機構120の動作(スライドブロック124の移動)およびその停止を指令するための信号を移動制御装置126に送信することが可能である。
【0051】
ユニット本体151はポンプ133に接続される。ユニット本体151はポンプ133の動作(接触媒質5の圧送)およびその停止を指令するための信号をポンプ133に送信することが可能である。
【0052】
ユニット本体151は超音波発信機142に接続される。ユニット本体151は超音波発信機142の動作(超音波センサ141の振動子への所定周波数の電圧の印加)およびその停止を指令するための信号を超音波発信機142に送信することが可能である。
【0053】
ユニット本体151は超音波受信機143に接続される。ユニット本体151は、超音波受信機143により変換された電気信号を取得することが可能である。
【0054】
入力装置152は超音波検査装置100による被検査物1の検査に係る種々の情報・指示等をユニット本体151に入力するものであり、ユニット本体151に接続される。
本実施形態の入力装置152は専用品であるが、例えば市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等を用いても良い。
【0055】
表示装置153は入力装置152からユニット本体151への入力内容、超音波検査装置100の動作状況等を表示するものであり、ユニット本体151に接続される。
本実施形態の表示装置153は専用品であるが、例えば市販の液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)やCRTディスプレイ(Cathode Ray Tube Display)等を用いても良い。
【0056】
以下では、ユニット本体151の構成の詳細について説明する。
ユニット本体151は、機能的には記憶部151a、動作制御部151b、欠陥判定部151cおよび接触媒質判定部151dを有する。
【0057】
記憶部151aは動作制御部151b、欠陥判定部151cおよび接触媒質判定部151dが行う演算等に用いられる各種パラメータ(数値)、超音波検査装置100の動作状況の履歴、超音波検査装置100による検査結果等を記憶するものである。
記憶部151aは、実体的にはHDD、RAM、ROM、CD−ROMあるいはDVD−ROM等の記憶媒体からなる。
【0058】
動作制御部151bは超音波検査装置100が行う一連の動作を制御するものである。
実体的には、ユニット本体151が、ユニット本体151に格納された動作制御プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、動作制御部151bとしての機能を果たす。
【0059】
動作制御部151bはポンプ133に動作する旨の信号を送信する。当該信号を受信したポンプ133は接触媒質5を圧送する。その結果、接触媒質5はノズル135から吐出され、被検査物1の被検査面1aに注がれる。
【0060】
動作制御部151bは移動制御装置126に動作する旨の信号を送信する。当該信号を受信した動作制御部151bはスライドブロック124、ひいては超音波センサ141を所定方向に所定距離(例えば、数mm)だけ移動させる。
【0061】
動作制御部151bは超音波発信機142に動作する旨の信号を送信する。当該信号を受信した超音波発信機142は、所定時間だけ超音波センサ141の振動子に所定周波数の電圧を印加する。その結果、超音波センサ141(の振動子)は所定時間だけ所定周波数の超音波を発信する。
【0062】
動作制御部151bが移動制御装置126に動作する旨の信号を送信するタイミングと動作制御部151bが超音波発信機142に動作する旨の信号を送信するタイミングとは同期している。
すなわち、これらの信号が交互に送信されることにより、スライドブロック124(超音波センサ141)の所定距離の移動および超音波センサ141(の振動子)による超音波の発信が交互に行われる。
【0063】
欠陥判定部151cは被検査物1の内部に欠陥があるか否かを判定するものである。
実体的には、ユニット本体151が、ユニット本体151に格納された欠陥判定プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、欠陥判定部151cとしての機能を果たす。
欠陥判定部151cは、超音波受信機143により変換された電気信号および動作制御部151bが超音波発信機142に動作する旨の信号を送信するタイミングとに基づいて、図2の(a)あるいは(b)に示す如き「超音波センサ141により検出された超音波の強度(本実施形態では、「電圧」の形で表される)と超音波センサ141が超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間(受信時間)との関係を示すグラフ(以下、「超音波強度−受信時間グラフ」という。)」を生成する。
欠陥判定部151cにより生成された「超音波強度−受信時間グラフ」は、記憶部151aにより適宜記憶される。
【0064】
欠陥判定部151cは、生成された「超音波強度−受信時間グラフ」に基づいて、被検査物1の内部に欠陥が有るか否かを判定する。
図2の(a)および(b)に示す如き「超音波強度−受信時間グラフ」の横軸(受信時間)と被検査物1の被検査面1aからの深さとの間には相関があり、縦軸(電圧のピーク値)と超音波を反射する欠陥のサイズとの間には相関がある。
欠陥判定部151cは、受信時間と被検査物1の被検査面1aからの深さとの相関および電圧のピーク値と欠陥のサイズとの相関を利用して、欠陥が存在する位置(被検査物1の被検査面1aからの深さ)および欠陥のサイズを判定する。
欠陥判定部151cによる欠陥の有無、欠陥の位置および欠陥のサイズに係る判定結果は、記憶部151aにより適宜記憶される。
【0065】
接触媒質判定部151dは本発明に係る接触媒質判定部の実施の一形態であり、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを判定するものである。
実体的には、ユニット本体151が、ユニット本体151に格納された接触媒質判定プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、接触媒質判定部151dとしての機能を果たす。
【0066】
以下では、接触媒質判定部151dによる判定(超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かの判定)の手順について説明する。
【0067】
まず、接触媒質判定部151dは、欠陥判定部151cが生成した「超音波強度−受信時間グラフ」に基づいて、当該グラフを近似する四次関数(Y=aX+bX+cX+dX+e)を生成する。
生成された四次関数は、記憶部151aにより適宜記憶される。
【0068】
図2の(a)に示す如く、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されている場合には、「超音波強度−受信時間グラフ」における比較的受信時間が短い領域(本実施形態では受信時間がt0以上t1以下となる領域)に高い電圧のピーク群が見られる。
これに対して、図2の(b)に示す如く、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない場合には、「超音波強度−受信時間グラフ」における比較的受信時間が短い領域(本実施形態では受信時間がt0以上t1以下となる領域)に高い電圧のピーク群が見られない。
本実施形態における受信時間がt0以上t1以下となる領域に対応する電圧のピーク群は、接触媒質5により反射された超音波に対応する。
【0069】
なお、四次関数を生成する場合には受信時間の下限値たるt0および上限値たるt1を予め設定する必要がある。
接触媒質判定部151dは、実質的には、超音波検査装置100に異常がなければ接触媒質5により反射されて超音波センサ141に受信される超音波の強度に基づいて、実際に超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを判定するものである。
従って、受信時間の下限値たるt0と上限値たるt1は、超音波センサ141から被検査物1の被検査面1aまでの距離Lおよび接触媒質5を伝播する超音波の速度(音速)Vに基づいて算出される「超音波が超音波センサ141から発信してから接触媒質5と被検査物1との境界(本実施形態の場合、被検査面1a)で反射されて超音波センサ141に受信されるまでに要する時間(=2L/V)の範囲に収まっていること(0≦t0<t1≦2L/Vが成立すること)が望ましい。
また、接触媒質5により反射される超音波を超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かの判定に最大限に反映させる観点からは、t0を極力0(ゼロ)に近い値とし、t1を極力2L/Vに近い値とすることが望ましい。
【0070】
本実施形態の場合、図2の(a)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」に対応して生成される四次関数(図2の(a)において太い実線で表される)は、受信時間がt0以上t1以下となる領域(t0≦X≦t1)について生成され、Y=a+b+c+dX+eで表される。
また、図2の(b)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」に対応して生成される四次関数(図2の(b)において太い実線で表される)は、受信時間がt0以上t1以下となる領域(t0≦X≦t1)について生成され、Y=a+b+c+dX+eで表される。
【0071】
図2の(a)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」を三次以上の高次関数(本実施形態では、四次関数)で近似した場合、図2の(b)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」を三次以上の高次関数で近似した場合に比べて二次以上の係数の絶対値の値が大きくなる傾向がある。
これは、図2の(a)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」の場合には横軸(受信時間)がゼロに近い領域に接触媒質5により反射された超音波のピーク群が現れるためである。
また、図2の(a)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」および図2の(b)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」にノイズ等の外乱要素に起因する電圧のピークが重畳した場合、これらの「超音波強度−受信時間グラフ」を近似した高次関数の二次以上の係数の絶対値が大きく変化することは無い。
【0072】
次に、接触媒質判定部151dは、算出された四次関数の二次以上の係数の値に基づいて、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを判定する。
より詳細には、接触媒質判定部151dは、欠陥判定部151cが生成した「超音波強度−受信時間グラフ」に対応する四次関数の四次の係数aの絶対値|a|、三次の係数bの絶対値|b|および二次の係数cの絶対値|c|と、記憶部151aにより予め記憶された四次の係数の基準値aの絶対値|a|、三次の係数の基準値bの絶対値|b|、および二次の係数の基準値cの絶対値|c|と、を比較する。
その結果、接触媒質判定部151dは、(A)|a|≧|a|かつ|b|≧|b|かつ|c|≧|c|が成立する場合には、「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されている(より厳密には、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されている状態で発信および受信された超音波に基づいて「超音波強度−受信時間グラフ」が生成された)」と判定する。
また、接触媒質判定部151dは、(B)|a|<|a|、|b|<|b|、|c|<|c|のうち少なくとも一つが成立する場合には、「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない(より厳密には、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない状態で発信および受信された超音波に基づいて「超音波強度−受信時間グラフ」が生成された)」と判定する。
接触媒質判定部151dによる判定結果は、記憶部151aにより適宜記憶される。
【0073】
なお、本実施形態において「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない」と判定される場合の具体例としては、タンク131に接触媒質5が収容されていない場合(タンク131が空になっている場合)、ポンプ133が故障して接触媒質5を圧送することが出来ない場合(あるいは接触媒質5を圧送する量が少ない場合)、第二搬送配管134の中途部が破れて接触媒質5が漏れている場合、スライドブロック124に固定されているノズル135の向きが変わってしまった場合等が挙げられる。
【0074】
本実施形態の場合、図2の(a)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」に対応して生成される四次関数の四次の係数aの絶対値|a|、三次の係数bの絶対値|b|および二次の係数cの絶対値|c|がそれぞれ四次の係数の基準値aの絶対値|a|、三次の係数の基準値bの絶対値|b|、および二次の係数の基準値cの絶対値|c|よりも大きくなるように、a、bおよびcの値が設定される(|a|≧|a|かつ|b|≧|b|かつ|c|≧|c|が成立する)。
また、図2の(b)に示す「超音波強度−受信時間グラフ」に対応して生成される四次関数の四次の係数a2の絶対値|a|、三次の係数bの絶対値|b|および二次の係数cの絶対値|c|がそれぞれ四次の係数の基準値aの絶対値|a|、三次の係数の基準値bの絶対値|b|、および二次の係数の基準値cの絶対値|c|よりも小さくなるように、a、bおよびcの値が設定される(|a|<|a|かつ|b|<|b|かつ|c|<|c|が成立する)。
従って、接触媒質判定部151dは、図2の(a)に示す如き「超音波強度−受信時間グラフ」が生成された場合には「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されている」と判定し、図2の(b)に示す如き「超音波強度−受信時間グラフ」が生成された場合には「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない」と判定することとなる。
【0075】
記憶部151aにより予め記憶される四次の係数の基準値a、三次の係数の基準値bおよび二次の係数の基準値cは、予め実験等により求められる。
四次の係数の基準値a、三次の係数の基準値bおよび二次の係数の基準値cを求める実験の具体例としては、接触媒質供給機構130が超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に供給する接触媒質5の量(ポンプ133が圧送する単位時間当たりの接触媒質5の体積)を適宜変更しつつ超音波センサ141による超音波(反射波)の受信を行い、得られた複数の「超音波強度−受信時間グラフ」に基づいて生成される四次関数の二次以上の係数を比較する実験等が挙げられる。
【0076】
接触媒質判定部151dは、「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない」と判定した場合には、表示装置153に警報信号を送信する。
表示装置153は、接触媒質判定部151dから警報信号を受信した場合には、「接触媒質が供給されていません」という文言を表示する。
このように、表示装置153は本発明に係る警報発生部の実施の一形態であり、接触媒質判定部151dが超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないと判定した場合に警報を発する。
【0077】
接触媒質判定部151dは、「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない」と判定した場合には、移動制御装置126に移動機構120の動作の停止を指令するための信号(移動部停止信号)を送信する。
接触媒質判定部151dから移動部停止信号を受信した移動機構120(の移動制御装置126)は、モータ125の駆動、ひいてはスライドブロック124の移動を停止する。
【0078】
接触媒質判定部151dは、「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない」と判定した場合には、ポンプ133にポンプ133の動作の停止を指令するための信号(圧送停止信号)を送信する。
接触媒質判定部151dから圧送停止信号を受信した接触媒質供給機構130(のポンプ133)は、ポンプ133による接触媒質5の圧送を停止する。
【0079】
以上の如く、
超音波検査装置100は、
被検査物1の被検査面1aに接触媒質5を供給する接触媒質供給機構130と、
接触媒質5を介して超音波を被検査物1に向けて発信し、被検査物1および接触媒質5により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出する超音波センサ141と、
「超音波センサ141により検出された超音波の強度と超音波センサ141が超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフ(超音波強度−受信時間グラフ)」を近似する四次関数(Y=aX+bX+cX+dX+e)を生成し、当該四次関数の二次以上の係数の値(四次の係数a、三次の係数bおよび二次の係数c)に基づいて超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを判定する接触媒質判定部151dと、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、接触媒質判定部151dは、超音波センサ141により検出された超音波の強度と超音波センサ141が超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフを近似する四次関数の二次以上の係数の値に基づいて超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを判定するため、単に当該グラフにおける超音波の強度(電圧)のみに基づいて判定する場合よりもノイズ等の外乱の影響を受けにくく、判定結果の安定性が高い(ロバスト性が高い)。
従って、超音波検査装置100は、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを精度良く判定することが可能である。
【0080】
本実施形態では接触媒質判定部151dは超音波センサ141により検出された超音波の強度と超音波センサ141が超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフ(超音波強度−受信時間グラフ)を近似する四次関数を生成したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、接触媒質判定部が「超音波強度−受信時間グラフ」を近似する三次関数あるいは五次以上の高次関数を生成する構成としても良い。
【0081】
また、超音波検査装置100の接触媒質判定部151dは、
超音波センサ141により検出された超音波の強度と超音波センサ141が超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフ(超音波強度−受信時間グラフ)を近似する四次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値以上である場合(本実施形態の場合、|a|≧|a|かつ|b|≧|b|かつ|c|≧|c|が成立する場合)には超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていると判定し、
当該四次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値未満である場合(本実施形態の場合、|a|<|a|、|b|<|b|、|c|<|c|のうち少なくとも一つが成立する場合)には超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないと判定する。
このように構成することにより、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを精度良く判定することが可能である。
【0082】
本実施形態では、超音波センサ141により検出された超音波の強度と超音波センサ141が超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフ(超音波強度−受信時間グラフ)を近似する四次関数の二次以上の係数の絶対値の全て(|a|、|b|および|c|)を用いて超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に供給される接触媒質5の有無を判定するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、「超音波強度−受信時間グラフ」を近似する四次関数の二次以上の係数の絶対値のいずれか一つを用いて超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に供給される接触媒質の有無を判定しても良い。
【0083】
また、超音波検査装置100は、
接触媒質判定部151dが超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないと判定した場合に「接触媒質が供給されていません」という文言を表示することにより警報を発する表示装置153を具備する。
このように構成することにより、作業者は超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないことを容易に認識することが可能である。
【0084】
本実施形態では、表示装置153が「接触媒質が供給されていません」という文言を表示することにより警報を発するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係る警報発生部の他の実施形態としては、音を発生する警報器(ブザー)、点灯または点滅するランプ等が挙げられる。
【0085】
また、超音波検査装置100は、
超音波センサ141を被検査物1の被検査面1aに沿って相対移動させる移動機構120を具備する。
このように構成することにより、被検査物1の複数の位置について検査することが可能である。
【0086】
本実施形態の移動機構120は超音波センサ141を被検査物1の被検査面1aに平行な一軸方向(レール122の長手方向に平行な方向)にのみ移動させるが、本発明に係る移動部はこれに限定されない。
例えば、超音波センサを被検査物の被検査面に平行かつ互いに平行でない二軸方向に移動させても良い。
【0087】
本実施形態の移動機構120はボールネジ123の回転により超音波センサ141が固定されたスライドブロック124を移動させるが、本発明に係る移動部はこれに限定されない。
例えば、ロボットアームの先端部に超音波センサを固定し、当該ロボットアームが動作することにより超音波センサが被検査物の被検査面に沿って移動しても良い。
【0088】
本実施形態では被検査物1が検査台110に載置(静置)され、スライドブロック124、ひいては超音波センサ141が移動する構成としたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、超音波センサ141が所定の位置に固定(静止)され、被検査物1が移動することにより超音波センサ141が被検査物1に対して相対的に移動する(相対移動する)構成としても良い。
【0089】
また、超音波検査装置100の移動機構120は、
接触媒質供給機構130における接触媒質5の吐出口であるノズル135および超音波センサ141をスライドブロック124に固定することにより、ノズル135および超音波センサ141の相対的な位置を保持しつつ、これらを被検査物1の被検査面1aに沿って相対移動させる。
このように構成することにより、超音波センサ141が被検査物1に対して相対的に移動しても超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5を安定して供給することが可能であり、ひいては超音波検査装置100による被検査物1の検査結果の信頼性が向上する。
【0090】
また、超音波検査装置100の移動機構120は、
接触媒質判定部151dが超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないと判定した場合にスライドブロック124、ひいては超音波センサ141(およびノズル135)の移動を停止する。
このように構成することにより、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない状態で検査を継続することを防止し、検査結果の信頼性を向上することが可能である。
また、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない状態で検査を継続することを防止することにより、先に検査が行われた被検査物1について(検査の確実を期するために)再度検査を行う等の検査作業における無駄を排除することが可能であり、ひいては作業効率の向上に寄与する。
【0091】
本実施形態では一つの超音波センサ141が超音波を接触媒質5を介して被検査物1に向けて発信し、被検査物1および接触媒質5により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、超音波を接触媒質を介して被検査物に向けて発信する第一の超音波センサ、並びに、被検査物および接触媒質により反射された超音波を接触媒質を介して受信するとともに受信した超音波の強度を検出する第二の超音波センサ、の二つの超音波センサを用いても良い。
【0092】
以下では、図3を用いて本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態は、超音波検査装置100を用いて被検査物1を検査する方法である。
図3に示す如く、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態は主として設定工程S1100、被検査物載置工程S1200、接触媒質供給開始工程S1300、移動工程S1400、超音波発信・受信工程S1500、超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600、接触媒質判定工程S1700、移動判定工程S1800、通常停止工程S1900、警報発生工程S2000および緊急停止工程S2100を具備する。
【0093】
設定工程S1100は超音波検査装置100を適正に動作させるための設定を行う工程である。設定工程S1100における設定には、(1)被検査物1の識別番号(ロット番号等)の入力、超音波センサ141から被検査物1への超音波の入射条件(超音波の周波数、入射角度等)の入力、(3)基準値a、b、cの入力、超音波センサ141の移動速度および移動ピッチの入力、等が含まれる。
設定工程S1100において、作業者は、上記(1)〜(3)等の入力作業を行う。
設定工程S1100が終了したら、被検査物載置工程S1200に移行する。
【0094】
なお、超音波検査装置100が複数の被検査物1・1・・・を順次検査する場合、設定工程S1100は最初の被検査物1を検査する際にのみ行い、それ以降については設定工程S1100を省略することが可能である。
【0095】
被検査物載置工程S1200は被検査物1を所定の検査位置(本実施形態では検査台110の上面)に載置する工程である。
被検査物載置工程S1200において、作業者は、被検査物1を手で持って検査台110の上面に載置し、超音波センサ141を被検査物1の被検査面1aに所定の距離(間隔)を空けて対向させる。
被検査物載置工程S1200が終了したら、接触媒質供給開始工程S1300に移行する。
【0096】
本実施形態では、作業者が被検査物1を手で持って検査台110の上面に載置するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、複数の被検査物を順に並べて搬送可能なベルトコンベア等の搬送装置を用いて被検査物を所定の検査位置に載置しても良い。
【0097】
接触媒質供給開始工程S1300は超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置への接触媒質5の供給を開始する工程である。
接触媒質供給開始工程S1300において、動作制御部151bはポンプ133に動作する旨の信号を送信する。当該信号を受信したポンプ133は接触媒質5を圧送する。
その結果、接触媒質5はノズル135から吐出され、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給される(これ以降、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置への接触媒質5の供給は、後述する通常停止工程S1900または緊急停止工程S2100に移行するまで継続される)。
接触媒質供給開始工程S1300が終了したら、移動工程S1400に移行する。
【0098】
移動工程S1400は本発明に係る移動工程の実施の一形態であり、超音波センサ141を被検査物1の被検査面1aに沿って相対移動させる工程である。
移動工程S1400において、動作制御部151bは移動制御装置126に動作する旨の信号を送信する。当該信号を受信した動作制御部151bはスライドブロック124、ひいては超音波センサ141を所定方向に所定距離だけ移動させる。
移動工程S1400が終了したら、超音波発信・受信工程S1500に移行する。
【0099】
超音波発信・受信工程S1500は本発明に係る超音波発信・受信工程の実施の一形態であり、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5を供給している状態で、超音波センサ141が接触媒質5を介して超音波を被検査物1に向けて発信し、被検査物1および接触媒質5により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出する工程である。
超音波発信・受信工程S1500において、動作制御部151bは超音波発信機142に動作する旨の信号を送信する。当該信号を受信した超音波発信機142は超音波センサ141の振動子に電圧を印加する。その結果、超音波センサ141は所定周波数の超音波を発信する。
超音波センサ141により発信された超音波は接触媒質5を介して被検査物1に入射される。接触媒質5および被検査物1により反射された超音波は超音波センサ141により受信され、受信された超音波の強度および周波数を示す電気信号を生成される。超音波センサ141により生成された電気信号を受信した超音波受信機143は当該電気信号を欠陥判定部151c(ユニット本体151)が受信可能な電気信号に変換し、欠陥判定部151cに送信する。
超音波発信・受信工程S1500が終了したら、超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600に移行する。
【0100】
超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600は本発明に係る超音波強度−受信時間グラフ生成工程の実施の一形態であり、超音波センサ141により検出された超音波の強度と超音波発信・受信工程S1500において超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間(受信時間)との関係を示すグラフ、すなわち「超音波強度−受信時間グラフ」を生成する工程である。
超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600において、欠陥判定部151cは超音波受信機143から受信した電気信号に基づいて、図2の(a)あるいは(b)に示す如き「超音波強度−受信時間グラフ」を生成する。
超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600が終了したら、接触媒質判定工程S1700に移行する。
なお、超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600の終了後、欠陥判定部151cは、生成された「超音波強度−受信時間グラフ」に基づいて、超音波検査装置100の本来の目的である「被検査物1の内部に欠陥が有るか否かの判定」を行う。
【0101】
接触媒質判定工程S1700は本発明に係る接触媒質判定工程の実施の一形態であり、超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600において生成されたグラフ(超音波強度−受信時間グラフ)を近似する四次関数(Y=aX+bX+cX+dX+e)を生成し、当該四次関数の二次以上の係数の値(本実施形態の場合四次の係数aの絶対値|a|、三次の係数bの絶対値|b|および二次の係数cの絶対値|c|)に基づいて超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを判定する工程である。
接触媒質判定工程S1700において、接触媒質判定部151dは(A)|a|≧|a|かつ|b|≧|b|かつ|c|≧|c|が成立する場合には、「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されている」と判定し、(B)|a|<|a|、|b|<|b|、|c|<|c|のうち少なくとも一つが成立する場合には、「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない」と判定する。
【0102】
接触媒質判定部151dが「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されている」と判定した場合、移動判定工程S1800に移行する。
接触媒質判定部151dが「超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない」と判定した場合、接触媒質判定部151dは警報発生工程S2000に移行する。
【0103】
移動判定工程S1800は超音波センサ141が移動する必要があるか否かを判定する工程である。
移動判定工程S1800において、動作制御部151bは被検査物1に対する超音波センサ141(スライドブロック124)の相対的な位置に基づいて、超音波センサ141が移動する必要があるか否かを判定する。
具体的には、動作制御部151bは被検査物1に対する超音波センサ141の相対的な位置と予め記憶部151aにより記憶された「最終位置(超音波検査装置100による被検査物1の検査が滞りなく行われた場合における最終的な超音波センサ141の到達位置)」とを比較する。
その結果、動作制御部151bは、被検査物1に対する超音波センサ141の相対的な位置が最終位置に到達していない場合には「超音波センサ141が移動する必要がある」と判定し、被検査物1に対する超音波センサ141の相対的な位置が最終位置に到達している場合には「超音波センサ141が移動する必要が無い」と判定する。
【0104】
動作制御部151bが「超音波センサ141が移動する必要がある」と判定した場合には移動工程S1400に移行する。
すなわち、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に適正に接触媒質5が供給された状態が継続している場合、超音波センサ141が最終位置に到達するまでは移動工程S1400→超音波発信・受信工程S1500→超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600→接触媒質判定工程S1700→移動判定工程S1800→移動工程S1400→・・・という一連のサイクルが繰り返し行われることとなる。
【0105】
動作制御部151bが「超音波センサ141が移動する必要が無い」と判定した場合には通常停止工程S1900に移行する。
【0106】
通常停止工程S1900は、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置への接触媒質5の供給を停止する工程である。
通常停止工程S1900において、動作制御部151bはポンプ133に動作を停止する旨の信号を送信し、当該信号を受信したポンプ133は接触媒質5の圧送を停止する。
その結果、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置への接触媒質5の供給が停止される。
通常停止工程S1900が終了したら、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態(超音波検査装置100による被検査物1の検査)が終了する。
【0107】
本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態が通常停止工程S1900を経て終了することは、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に適正に接触媒質5が供給された状態で超音波検査装置100による被検査物1の検査が行われたことを意味し、得られた被検査物1の検査結果の信頼性が高い。
【0108】
警報発生工程S2000は本発明に係る警報発生工程の実施の一形態であり、接触媒質判定工程S1700において超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないと判定した場合に警報を発する工程である。
警報発生工程S2000において、表示装置153は「接触媒質が供給されていません」という文言を表示する。
警報発生工程S2000が終了したら、緊急停止工程S2100に移行する。
【0109】
緊急停止工程S2100は本発明に係る緊急停止工程の実施の一形態であり、超音波センサ141の相対移動および超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置への接触媒質5の供給を停止する工程である。
また、緊急停止工程S2100において、動作制御部151bはポンプ133に動作を停止する旨の信号を送信し、当該信号を受信したポンプ133は接触媒質5の圧送を停止する。
その結果、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置への接触媒質5の供給が停止される。
また、緊急停止工程S2100に移行した後、動作制御部151bは移動制御装置126に動作する旨の信号を送信しないので、超音波センサ141の移動が停止される。
緊急停止工程S2100が終了したら、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態(超音波検査装置100による被検査物1の検査)が終了する。
【0110】
本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態が緊急停止工程S2100を経て終了することは、超音波検査装置100による被検査物1の検査の途中で超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に適正に接触媒質5が供給されない状態に陥ったことを意味する。
【0111】
以上の如く、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態は、
超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5を供給している状態で、超音波センサ141が接触媒質5を介して超音波を被検査物1に向けて発信し、被検査物1および接触媒質5により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出する超音波発信・受信工程S1500と、
超音波センサ141により検出された超音波の強度と超音波発信・受信工程S1500において超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間(受信時間)との関係を示すグラフ(超音波強度−受信時間グラフ)を生成する超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600と、
超音波強度−受信時間グラフ生成工程S1600において生成された超音波強度−受信時間グラフを近似する四次関数を生成し、当該四次関数の二次以上の係数の値(本実施形態の場合、四次の係数aの絶対値|a|、三次の係数bの絶対値|b|および二次の係数cの絶対値|c|)に基づいて超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを判定する接触媒質判定工程S1700と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、単に超音波強度−受信時間グラフにおける超音波の強度(電圧)のみに基づいて判定する場合よりもノイズ等の外乱の影響を受けにくく、判定結果の安定性が高い(ロバスト性が高い)。
従って、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態は、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを精度良く判定することが可能である。
【0112】
また、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態は、
接触媒質判定工程S1700において、
生成された四次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値以上である場合(本実施形態の場合、|a|≧|a|かつ|b|≧|b|かつ|c|≧|c|が成立する場合)には超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていると判定し、
当該四次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値未満である場合(本実施形態の場合、|a|<|a|、|b|<|b|、|c|<|c|のうち少なくとも一つが成立する場合)には超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないと判定する。
このように構成することにより、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されているか否かを精度良く判定することが可能である。
【0113】
また、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態は、
接触媒質判定工程S1700において超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないと判定した場合に警報を発する警報発生工程S2000を具備する。
このように構成することにより、作業者は超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないことを容易に認識することが可能である。
【0114】
また、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態は、
超音波センサ141を被検査物1の被検査面1aに沿って相対移動させる移動工程S1400を具備する.
このように構成することにより、被検査物1の複数の位置について検査することが可能である。
【0115】
また、本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態は、
接触媒質判定工程S1700において超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていないと判定した場合に超音波センサ141の相対移動および超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置への接触媒質5の供給を停止する緊急停止工程S2100を具備する。
このように構成することにより、超音波センサ141と被検査物1とで挟まれる位置に接触媒質5が供給されていない状態で検査を継続することを防止し、検査結果の信頼性を向上することが可能である。
【0116】
本実施形態では、警報発生工程S2000が終了したら緊急停止工程S2100に移行する構成としたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、警報発生工程および緊急停止工程が並行して行われる構成としても良く、緊急停止工程が終了したら警報発生工程に移行する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明に係る超音波検査装置の実施の一形態を示す図。
【図2】本発明に係る超音波検査装置の実施の一形態が作成する「超音波の強度と受信時間との関係を示すグラフ」および「当該グラフを近似する四次関数」を示す図。
【図3】本発明に係る超音波検査方法の実施の一形態を示すフロー図。
【図4】従来の超音波検査装置が作成する「超音波の強度と受信時間との関係を示すグラフ」を示す図。
【符号の説明】
【0118】
1 被検査物
1a 被検査面
5 接触媒質
120 移動機構(移動部)
130 接触媒質供給機構(接触媒質供給部)
141 超音波センサ
151d 接触媒質判定部
153 表示装置(警報発生部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の被検査面に接触媒質を供給する接触媒質供給部と、
前記接触媒質を介して超音波を前記被検査物に向けて発信し、前記被検査物および前記接触媒質により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出する超音波センサと、
前記超音波センサにより検出された超音波の強度と前記超音波センサが超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフを近似する三次以上の高次関数を生成し、前記高次関数の二次以上の係数の値に基づいて前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されているか否かを判定する接触媒質判定部と、
を具備する超音波検査装置。
【請求項2】
前記接触媒質判定部は、
前記高次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値以上である場合には前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていると判定し、
前記高次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値未満である場合には前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定する請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記接触媒質判定部が前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定した場合に警報を発する警報発生部を具備する請求項1または請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項4】
前記超音波センサを前記被検査物の被検査面に沿って相対移動させる移動部を具備する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項5】
前記移動部は、
前記接触媒質供給部における接触媒質の吐出口と前記超音波センサとの相対的な位置を保持しつつ、前記接触媒質供給部における接触媒質の吐出口および前記超音波センサを前記被検査物の被検査面に沿って相対移動させる請求項4に記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記移動部は、
前記接触媒質判定部が前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定した場合に前記超音波センサの相対移動を停止する請求項4または請求項5に記載の超音波検査装置。
【請求項7】
超音波センサと被検査物とで挟まれる位置に接触媒質を供給している状態で、前記超音波センサが前記接触媒質を介して超音波を前記被検査物に向けて発信し、前記被検査物および前記接触媒質により反射された超音波を受信し、受信した超音波の強度を検出する超音波発信・受信工程と、
前記超音波センサにより検出された超音波の強度と前記超音波発信・受信工程において超音波を発信してから反射された超音波を受信するまでの時間との関係を示すグラフを生成する超音波強度−受信時間グラフ生成工程と、
前記超音波強度−受信時間グラフ生成工程において生成されたグラフを近似する三次以上の高次関数を生成し、前記高次関数の二次以上の係数の値に基づいて前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されているか否かを判定する接触媒質判定工程と、
を具備する超音波検査方法。
【請求項8】
前記接触媒質判定工程において、
前記高次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値以上である場合には前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていると判定し、
前記高次関数の二次以上の係数の絶対値が予め設定された値未満である場合には前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定する請求項7に記載の超音波検査方法。
【請求項9】
前記接触媒質判定工程において前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定した場合に警報を発する警報発生工程を具備する請求項7または請求項8に記載の超音波検査方法。
【請求項10】
前記超音波センサを前記被検査物の被検査面に沿って相対移動させる移動工程を具備する請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の超音波検査方法。
【請求項11】
前記接触媒質判定工程において前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置に前記接触媒質が供給されていないと判定した場合に前記超音波センサの相対移動および前記超音波センサと前記被検査物とで挟まれる位置への前記接触媒質の供給を停止する緊急停止工程を具備する請求項10に記載の超音波検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−66168(P2010−66168A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233887(P2008−233887)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】