説明

超音波注射器

本発明は、産業のプロセス、工場の装置、ならびに人間および/または動物の患者から、流体を供給および採取するための超音波注射器に関する。超音波注射器は、発生器と、可動型の超音波振動子と、円筒部と、超音波振動子チップと、放射面と、円筒部の前端部に配置されるオリフィスと、注射器ヘッドとを具える。この装置はさらに、流路と、流路の遠位端部に配置されるバルブと、流体が円筒部に供給されるようにする側壁内のオリフィスとを具えてもよい。放射面から放射される超音波は流体内に振動を誘発し、流体を超音波分解し、注射を受けるのに付随する痛みや不快感を緩和し、注射をするのに必要な力を減少および/または取り除き、体内に流体を供給する時間を削減し、超音波分解された流体を介して組織に超音波エネルギを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス、道具または患者に流体を供給または採取するための産業用、実験用または医療用の装置および方法に関し、より具体的には、このような使用のための超音波注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
産業または実験室の環境では、少量の流体を投与または除去することが日常的に必要とされうる。液体クロマトグラフィーに試料を注入したり、産業工程から試料を採取するといった日常的な作業を行うのに、注射器を用いてもよい。医療の用途では、身体の様々な感染症、健康状態、および病気は、経皮的な注射を介して薬剤を投与せずに治療するのが難しいことがある。例示的に、本開示は医療の用途に関するこの装置の使用を詳細に記載している。例えば限定ではないが、薬剤、ワクチン、水、食塩水、および血液製剤といった異なる種類の流体が体内に注射されたり、体内から採取されうる。医療行為において、確認されている治療目的によって、例えば限定ではないが、皮下、静脈内、および/または筋内にいくつかの方法でこのような流体が投与される。さらに、注射は正確な量の薬剤を素早く供給するのに最適な方法である。薬物のような投与された流体が即座に血流に供給されると、他の経路で投与される場合よりも素早く効き目が現われる傾向がある。
【0003】
流体は通常、医療関係者によって患者に投与されたり、患者から採取され、この医療関係者は、医師、看護師、看護兵、看護師の医療関係者、または他のこのような個人であってもよい。
【0004】
通常の手動の注射器は、体内に流体を導入および/または注射したり、体内から採取するための装置である。一般的に、注射器は、摺動プランジャと嵌合する中空のシリンダに取り付けられる皮下注射針から構成されている。プランジャが押圧されると、注射器から流体が排出される。患者の体内に流体を排出するためにプランジャを押すのに、物理的な力が必要とされる。注射をする医療関係者は、注射器から体内に流体を排出するのに物理的な力を使うことが必要とされる。このような物理的な力を利用することによって、患者だけではなく注射をする医療関係者もけがをすることがある。
【0005】
特に毎日異なる患者に複数の注射をするため、注射をするのに必要とされる物理的な力によって、医療関係者の腕、肩、指および/または親指に緊張および/または痛みが起こる。さらに、このような物理的な力を伴って皮下注射針が体内に挿入されると、患者にとって非常に苦痛である。患者は通常すでに痛みを有しており、注射を受けることで痛みを増加させるべきではない。
【0006】
注射がされているとき、これらの手動の注射器装置は均一ではない親指および/または指の圧力をもたらし、医療関係者は皮下注射針から排出される流体の流量に関して殆ど制御しておらず、皮膚、組織および/または血管に損傷をもたらし、患者に通常は不要な痛みと不快感をもたらしうる皮下注射針の先端についても殆ど制御できない。
【0007】
様々な動力および/または電気注射器もまた、先行技術に示されている。これらの装置は手動注射器と関連する問題を克服しようと開発されたが、これらの電気的および/または機械的な動力注射器に問題がないわけではない。これらの装置は、注射を受けることに関連する痛みや不快感を減少および/または取り除くわけではなく、体内に供給される前および最中に流体を超音波で分解しないため、時に使うのに扱いにくい。
【0008】
現在の注射器は、患者の身体に注射をすることに関連する痛みおよび/または不快感を取り除くことができない。さらに、このような注射器は薬物の供給時間と注射をするのに必要とされる力を減少させることができない。従って、特に複数の注射が毎日異なる患者に行われるため、投与時間が早く、医療関係者の腕、肩、指および/または親指にかかる緊張を取り除く注射器が必要であり、その結果、医療関係者の仕事の質が向上し、注射を介して体内に薬物を供給するのに割かれる時間を減少させる。
【発明の概要】
【0009】
本発明による装置および方法は、上述の多くの要望および欠点を解決することができ、本開示を調査すると当業者によって認識されるような、さらなる向上および利点を提供するであろう。
【0010】
本発明は、身体に流体を供給および採取するための超音波注射器を提供する。超音波注射器装置は、超音波発生器と、可動型の超音波振動子と、超音波振動子の遠位端部の振動子チップと、振動子チップの遠位端部における放射面と、円筒部と、注射器ヘッドとを具える。
【0011】
本発明の装置はさらに、円筒部の中へ構成される取付スタブを具えていてもよい。この取付スタブは、円筒部への流体の流れを調整するバルブを具えてもよい。放射面で振動子チップを通って放射される超音波は、流体内に振動を誘発することによって、円筒部と振動子チップとによって規定された空洞部内に収容されているこれらの流体を超音波分解してもよい。超音波分解された流体はその後、注射器ヘッドに取り付けられる皮下注射針を通して、体内に注射されてもよい。音響力学療法におけるこの利用法は、超音波によって、同時に身体に投与されている治療用薬剤に本質的に活性化をもたらす。
【0012】
身体に供給する前および最中に流体を超音波分解すると、例えば限定ではないが、超音波の麻酔性および抗菌性の性質の結果として、注射を受ける痛みや不快感の除去および/または緩和、注射中の組織損傷をなくす、および患者の感染症の低減といったいくつかの利点を提供する。
【0013】
超音波注射器は、注射をしている医療関係者が物理的な力をかけずにすむのを可能にすることができ、ひいては、この物理的な力を減少および/または取り除くことができる。円筒部内で放射面から放射された超音波は、流体を皮下注射針を通じて体内に押出すことができる。
【0014】
本発明を用いて、皮下、静脈内、筋内、および/またはカテーテルを通して流体を体内に注射するには、超音波注射器の円筒部の空洞部に選択した流体を充填し、振動子を作動させて超音波振動子を押圧する必要がある。超音波振動子は、手動または機械的に押圧されてもよい。手動で押圧される場合、放射面から放射されている超音波が振動子を押圧するのに医療関係者が必要な物理的な力を低減させるため、振動子を押し下げるのに最低限の力が必要とされうる。超音波先端の遠位端部で放射面を通して放射される超音波は、流体を放射分解しながら、円筒部内に振動を誘発する。超音波振動子から放射される超音波エネルギによってもたらされるポンプ動作はさらに、超音波振動の振幅を調整することによって制御されてもよい。超音波分解された流体は、円筒部の前端部に配置されたオリフィスを通って注射器ヘッドまで移動して、患者の体内に注射されてもよい。
【0015】
超音波注射器はさらに、流体の物理的な性質に対する超音波エネルギの作用を通して注射される流体の粘性を変化させることにより、治療効果を高めて、注射するのに必要とされる力を低減させる機能を有している。
【0016】
本発明は、体内に流体を導入および/または供給するのに用いられてもよい。超音波振動子を作動させると、放射面からの超音波の放射をもたらす振動子チップ内に振動を引き起こす。この超音波は円筒部の流体内に振動を誘発する。流体と接触する超音波は、体内に供給されるときに流体を超音波分解して活性化させる。
【0017】
本発明の円筒部は、患者の体内に注射される前に流体を保持する。円筒部の幅は変えることができ、例えば人間の身体に使用、または動物に使用、および/または必要な流体の量、といった使用法に応じる。この円筒部は、使い捨ておよび/または加圧滅菌できるプラスチック材料、ポリマ、金属、ガラスおよび/またはその組み合わせで製造されてもよい。材料の選定は、放射された超音波への円筒部の所望の効果に基づいてもよい。特定の用途に応じて、円筒部は、超音波を反射、超音波を吸着、あるいは超音波を伝達することが望ましく、構造の材料はそれに応じて選択される。円筒部は、例えば限定ではないが、円柱状、長円形、および/または長方形といった様々な形状に形成されてもよい。後端部は、注射器ヘッドと反対側の離れた部位とすることができる。円筒部の前端部は、注射器ヘッドの近位の端部に配置されてもよい。円筒部の前端部に配置されたオリフィスは、円筒部の外に流体を運ぶのに用いられる。円筒部の後端部に配置されたオリフィスは、円筒部内に振動子チップを収容する。
【0018】
本発明の超音波振動子は、円筒部の後端部に配置されてもよい。超音波振動子は、円筒部に組み込み、および/または円筒部から取外し可能であってもよい。超音波発生器は超音波振動子に連結されてもよい。この超音波発生器および振動子は、互いに組み込まれた単一の要素であってもよい。代替的には、超音波振動子は電池駆動であってもよい。超音波振動子は、円筒部内を前後に摺動する可動型の部位でもよい。前方に摺動すると、超音波振動子が円筒部の前端部に配置されたオリフィスに向かって円筒部内の流体を押し出す。放射された超音波エネルギは流体を容易に押出し、結果として、円筒部内の流体がオリフィスから出て、患者の体内に皮下注射針を通って移動する。
【0019】
本発明はさらに、例えば限定ではないが、人間および/または動物の患者の身体から、血液試料のような流体を採取するのに用いられてもよい。皮下注射針が流体試料が採取されうる身体に導入された後、超音波振動子は円筒部内に真空を発生させながら作動してもよい。超音波振動子は、手動および/または機械的な手段によって、円筒部の前端部から引き戻されてもよい。振動子が円筒部の前端から後端に向かって引き戻されると、超音波は円筒部の抜き取られた流体内に振動を誘発する。
【0020】
代替的には、円筒部の側壁内の1または複数のオリフィスを通って、流体が円筒部に導入されてもよい。代替的な実施形態では、本発明は円筒部の側壁内に配置されたオリフィスと、バルブとを具えていてもよい。このオリフィスはさらに、円筒部の側壁内に配置されたオリフィスに始まり、バルブで終端する流路を具えてもよい。バルブは、流路の遠位端部に配置されてもよい。流体はバルブを通って円筒部に供給されてもよい。バルブはさらに、流体が円筒部の側壁内のオリフィスから流路に流れ戻るのを妨げる。バルブは手動および/または機械的に制御されてもよい。
【0021】
材料のうちの少なくとも1つは、必須ではないが、用いられる他の材料のうちの少なくとも1つのキャリアであってもよい。許容できるキャリアは、限定ではないが、水、食塩水、および/またはアルコールを含んでもよい。材料のうちの少なくとも1つは、必要ではないが、医薬品または治療薬でもよい。好適には、材料のうちの少なくとも1つは、例えば限定ではないが、酸素のような陽性の治療効果を好適に誘発することができる。
【0022】
超音波エネルギによって円筒部に振動が誘発され、超音波分解された流体は注射中の患者の痛みを緩和する。穿刺の力もまた減少させることができる。従って、超音波は注射をするのに必要な物理的な力を減少させて、緊張を緩和する、および/または医療関係者の腕、肩、指および/または親指の痛み取り除く。超音波はさらに、患者に治療の有用性を提供する超音波分解された流体を介して組織に供給されてもよい。
【0023】
本発明の他の機能および利点は、以下の詳述および特許請求の範囲から自明となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明による超音波注射器の例示的な実施形態の態様における寸法概略図である。
【図2】図2は、本発明による超音波注射器の実施形態の態様における概略図である。
【図3】図3は、取付スタブを具える本発明による超音波注射器の例示的な実施形態の態様における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図は、本発明の態様を含む超音波注射器10の実施形態を一般に例示している。図に示されている超音波注射器10の特定の例示的な実施形態は、本発明の様々な態様の説明および理解を容易にするために選択されている。これらの示された実施形態は、適用範囲を限定せず、本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される文脈の言い回しを理解する助けとなることを意図している。従って、示された実施形態から様々な変形は、添付の特許請求の範囲に包含することができる。
【0026】
本発明は、患者に流体25を供給、または患者から流体25を採取するための超音波注射器10を提供する。本発明による超音波注射器10は、患者、ならびに流体25を投与する医療関係者に向上した快適性を提供しうる。本発明による超音波注射器10によって、流体25の供給の効力も高めることができる。
【0027】
図面を通して一般に示されるように、超音波注射器10は通常、可動型の超音波振動子20に連結される超音波発生器15を具えている。振動子チップ30は超音波振動子20の遠位端部に配置されてもよい。振動子チップ30の遠位端部は、放射面40として構成されてもよい。振動子チップの少なくとも一部は、円筒部50内に摺動可能に収容されてもよい。円筒部50の前端部に配置されるオリフィス60は、注射器ヘッド70への流路56を規定する。皮下注射針140は、注射器ヘッド70に固定されてもよい。流体25が超音波注射器10の円筒部50に充填され、流体が円筒部50から皮下注射針140を通って患者に注射されるときに振動子チップ30の放射面によって超音波分解されてもよい。同様に、流体が皮下注射針140を通って超音波注射器10の円筒部50に患者から流体25が採取される間に振動子チップ30の放射面40によって超音波分解されてもよい。
【0028】
超音波発生器15は様々な周波数を有する電気信号を生成することができる。この電気信号は、超音波振動子20に供給されて超音波振動子20を駆動してもよい。電池のような電源または主電力は、超音波発生器15に連結されて、電気信号を生成するために超音波発生器15に電力を提供してもよい。超音波発生器15は、一定の信号周波数を有する電気信号を生成するように構成されてもよく、例えば、医療関係者によって制御可能な可変信号周波数を有する電気信号を生成するように構成されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、超音波発生器15によって信号周波数が自動的に制御されてもよい。このような超音波発生器の実施形態は、超音波発生器10が振動子チップ30の共振を検出できるように、超音波振動子20および/または振動子チップ30からのフィードバックを含んでいてもよい。振動子チップ30を共振させるために、超音波発生器10は次いで電気信号の振動数を調整してもよい。
【0030】
超音波振動子20は、超音波発生器15によって供給された電気信号を機械的振動に変換する。機械的振動が超音波振動子20によって振動子チップ30に伝達されて振動子チップ30を励振させるように、振動子チップ30が超音波振動子20に機械的に接続されてもよい。機械的振動は、超音波発生器15によって超音波振動子20に供給される信号周波数とほぼ一致する振動周波数を有する。従って、超音波発生器15によって超音波振動子20に供給される信号周波数とほぼ一致する振動周波数で、超音波振動子20によって振動子チップ30が励振されてもよい。
【0031】
超音波振動子を駆動する信号は、正弦波、矩形波、三角波、台形波、またはその組み合わせであってもよい。
【0032】
超音波振動子20は、電圧の変化に応じて寸法を変える性質を有する圧電性結晶を用いて、振動子チップ30を励振してもよい。代替的には、超音波振動子20は磁気歪み材料を用いるか、本開示を調査すると当業者に認識されうる他の方法で構成されてもよい。
【0033】
振動子チップ30は超音波振動子20によって振動周波数で励振されてもよく、振動子チップ30内に対応するチップの振動を誘発してもよい。振動子チップ30が振動する振動数を意味するこのチップの振動数は、ほぼ近似の振動周波数および超音波振動子20の振動周波数の倍振動であってもよい。従って、振動子チップ30のチップの振動数、つまり超音波振動子20の振動周波数は、超音波発生器15によって生成される信号周波数を調整することにより制御されてもよい。
【0034】
用いられるホーンは、約16kHzまたはそれ以上の振動数で共振して振動することが可能であってもよい。ホーンに下って伝わる超音波振動は、約1ミクロンまたはそれ以上の振幅を有していてもよい。用いられるホーンは、約20kHz乃至約200kHzの振動数で共振して振動できることが好ましい。
【0035】
超音波振動子20によって励振される場合に振動子チップ30が共振するように、振動子チップ30は、超音波発生器15によって生成される信号周波数の範囲の信号周波数で通常共振するように構成されてもよい。振動子チップ30は、通常は振動子チップ30の遠位部となる放射面40と共に構成されてもよい。振動子チップ30の励振によって生成された超音波90は、次いで放射面40から放射されてもよい。
【0036】
超音波注射器10の円筒部50は内側円筒面52と外側円筒面54とを規定し、内側円筒面52は流路56を規定する。内側円筒面52と連結して放射面40を具える振動子チップ30の一部が、流体25を流路56に収容できる空洞部58を規定するように、放射面40を具える振動子チップ30の一部が流路56内に延在して、密閉かつ摺動可能に流路56内に収容されてもよい。振動子チップ30が流路56内に密閉可能に収容されうるように、シール80または複数のシール80の組み合わせがいくつかの実施形態において提供されてもよい。シール80は弾力的なエラストマから構成されてもよく、振動子チップから円筒部および皮下注射針140に伝達される振動を減少させる。放射面から放射された超音波が空洞部58内に収容された流体25に向けられて、流体25を超音波分解するように、放射面40によって空洞部58の一部が規定されてもよい。
【0037】
円筒部50はさらに注射器ヘッドと共に構成されてもよく、これは皮下注射針140の取り付け部位となってもよい。注射器ヘッド70は、外側円筒面54の一部に形成されてもよい。シールやねじ切りのように、皮下注射針140を取り付けるために様々な機能が注射器ヘッド70に具えられてもよい。いくつかの実施形態では、空洞部58と注射器ヘッドに取り付けられた皮下注射針140との間をオリフィス60を経由して流体25が通過できて患者に供給または患者から採取するために、内側円筒面52の一部がオリフィス60として、空洞部58と注射器ヘッド70との間の流体連通の経路を形成するように構成されてもよい。
【0038】
皮下注射針140は中空針でもよく、これは近位の針端部144から遠位の針端部142まで、患者に供給または患者から流体25が通過できる針管腔146を規定する。皮下注射針140は、ステンレス鋼または他の好適な材料で作られてもよい。近位の針端部144は、注射器ヘッド70で超音波注射器10に取り付けられるように構成されてもよい。超音波注射器10に取り付けられる場合、流体25が空洞部58と遠位の針端部142との間を通過できるように、針管腔146は空洞部58と流体連通してもよい。遠位の針端部142は先端部が形成され、鋭利な端部を具えてもよく、他の方法では皮膚および他の身体組織を簡単に穿刺するように構成される。皮下注射針140は特定の用途に応じて、医療関係者に選択されうる様々な寸法であってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、空洞部58の容量は流路56内の振動子チップ30を摺動させることによって調整されてもよい。流路56内の振動子を摺動させることにより、流体25は空洞部58からオリフィス60および皮下注射針140を通って押され、患者に供給されてもよい。同様に、流路56内の振動子チップ30を摺動させることにより、注射器ヘッド70に取り付けられた皮下注射針140を通じて、オリフィス60を通って空洞部58まで、流体25が患者から採取されてもよい。例えば、一度計量された服用量の流体25を患者に供給するのに、このような実施形態は有用である。従って、円筒部は、流路56内の振動子チップ30の一部が通過する空洞部58の容量を示す様々な表示を具えていてもよい。
【0040】
他の実施形態では、空洞部58の容量は、比較的一定に保たれてもよい。これらの実施形態では、円筒部50は、超音波注射器が例えば食塩水を患者に供給するのに用いることができるように、例えばリザーバと超音波注射器10との間が流体連通できるよう構成された取付スタブ130をさらに具えてもよい。取付スタブ130は、超音波注射器10と流体25のリザーバとが連結できるように様々な方法で構成されてもよく、本開示を調査した当業者によって理解されうる様々な取付機構を具えてもよい。例えば、管がリザーバおよび取付スタブ130に取り付けられてもよい。この管は、管および取付スタブを通過する、リザーバと空洞部58との間の流体連通の経路を形成するようにリザーバに取り付けられてもよい。取付機能は、取付スタブ130を通る流体25の流れを制御するように構成されたバルブ110を具えていてもよい。このような実施形態は、患者にまたは患者から流体25をさらに連続的に供給するのに有用であってもよい。
【0041】
超音波エネルギは、酸素化、遊離基および/またはオゾンの生成を通して直接的または間接的に治療薬を活性化させるのに用いられてもよい。キャビテーションおよびマイクロ流動を生成する超音波の電位は、いくつかの実施形態で用いることができる。
【0042】
図面を見てみると、超音波注射器10を具える本発明の態様が図1に示されている。超音波注射器10は、可動型の超音波振動子20に連結されている超音波発生器15と、超音波振動子20の遠位端部に配置されている振動子チップ30と、振動子チップ30の遠位端部の放射面40と、円筒部50と、円筒部50の前端部に配置されているオリフィス60と、注射器ヘッド70とを具えている。超音波振動子20は、単一要素を形成するように振動子チップ30と一体型であってもよい。代替的には、超音波振動子20は、機械的または他の手段によって振動子チップ30に取り付けられる別個の要素であってもよい。超音波振動子20を振動子チップ30に取り付ける手段は、医療関係者によって超音波振動子20を取外して交換できるようにしてもよい。振動子チップ30は、例えば限定ではないが、平坦、円形および/またはその組み合わせといった、様々な形状に形成されてもよい。超音波振動子20は、単一要素を形成するように円筒部50と一体型に構成されてもよい。代替的には、超音波振動子20は、機械的または他の手段によって円筒部50に取り付けられる別個の要素であってもよい。円筒部50から取外し可能な超音波振動子20を有することが好ましい。円筒部50から取外し可能および/または着脱可能な超音波振動子20によって、医療関係者が円筒部50を交換し、超音波振動子20および/または円筒部50を洗浄および/または消毒するのが可能となる。さらに、円筒部50を交換する機能は、病気の拡散を低減させる。超音波振動子20は超音波発生器15に連結されてもよい。代替的には、超音波振動子20は電池駆動でもよく、この電池(図示せず)は超音波振動子20に挿入および/または組み込まれてもよい。
【0043】
図1は、超音波振動子20が円筒部50内に摺動可能に配置されうる、本発明の超音波注射器10の装置の実施形態の側面図を示している。この実施形態に図示されているように、円筒部の一部は、振動子チップ30が開口部100を通って摺動可能に通過できるように構成される開口部100を規定するように構成されてもよい。
【0044】
超音波振動子20が作動できると、予め選択された振動数、振幅、強度および/または信号形状で移動する超音波90が、超音波振動子20を通って振動子チップ30に送られ、放射面40から放射される。本発明の放射面40は、例えば限定ではないが、平坦、円錐形、円形および/またはその組み合わせといった、様々な形状に形成されてもよい。超音波を集束させたくない実施形態では平坦な面が好ましい。円筒部50の近端部は、超音波振動子20が永久的に取付られる、および/または円筒部50から取外し可能な部位であってもよい。注射器ヘッド70は円筒部50の遠位端部に配置されてもよい。代替的には、円筒部50は、取外し可能および/または着脱可能な超音波振動子20を収容する後端部に配置された開口部またはオリフィス60を有してもよい。
【0045】
図2を参照すると、シール80は、振動子チップ30の周辺部を通過することによって流体25が空洞部58から出るのを妨げている。シール80はさらに、空気が空洞部58に入るのを妨げている。円筒部50は注射すべき流体25が予め充填されるか、機械的および/または手動で超音波振動子20を引き戻すことによって超音波注射器10が充填されてもよい。円筒部50に組み込みおよび/または取り付けられた超音波振動子20は、円筒部50内にある流体25を活性化してもよい。超音波振動子20は、モータ(図示せず)によって機械的に、および/または超音波振動子20を押し下げることによって手動で押圧されてもよい。超音波振動子20が押圧されると、予め選択された振動数の超音波エネルギが振動子チップ30を通って送られてもよい。超音波振動子20を押圧することにより、円筒部50の流体25を中央オリフィス60に向かって前方に押し出す。
【0046】
図1および図2に示されるように、超音波振動子20は可動であってもよく、機械的および/または手動で押された場合に円筒部50の前端部に向かって前方に押圧し、流体25が患者から採取されている場合に円筒部50の後端部に向かって後方に移動してもよい。超音波振動子20が円筒部50の後端部に向かって引き戻される場合、流体25が患者から中央オリフィス60を通って円筒部50に採取できるような真空を作り出す。超音波振動子20は円筒部50内を前後に移動する。放射面40は、振動を誘発し、患者に供給する前および最中に円筒部50内の流体25を超音波分解する超音波90を放射する。円筒部50の空洞部58の調整機能により、空洞部58に発生すべき定常波の最適化が可能になる。これにより、所望の通り、マイクロキャビテーションおよびマイクロ流動を増大できるようになる。さらに装置の消毒性能が強化されてもよい。円筒部の調整機能によってさらに、超音波振動子20と皮下注射針140の超音波の相互作用の制御が可能になる。これにより、必要に応じて針で、または針を通って超音波を集束させることが可能となる。
【0047】
中央オリフィス60を通り、皮下注射針140を介して体内に超音波分解された流体25を排出する放射面40で、超音波振動子20が完全に押圧されてもよい。皮下注射針140は、機械的手段または他の手段で注射器ヘッド70に固定されてもよい。皮下注射針140は、例えば限定ではないが、牛や馬といった巨大な家畜への使用といった、指定された使用法によって大きさを変えてもよい。
【0048】
図3は、本発明の超音波注射器10の装置の代替的な実施形態の断面図を示しており、円筒部50の側壁内のポート120と、取付スタブ130と、取付スタブ130の遠位端部のバルブ110とを具えている。取付スタブ130はポート120から始まり、バルブ110で終端する。図示されているバルブ110は手動で制御されてもよいが、チェックバルブを含む機械的および/または自動的に制御されたバルブが、本発明と共に用いられてもよい。流体25が、バルブ110を通って取付スタブ130に導入されてもよい。流体25は、取付スタブ130を通って流れて、ポート120を通過して円筒部50に入ってもよい。バルブ110は、円筒部50の側壁上のポート120を通過して円筒部50に入った流体25が、円筒部50の側壁上のポート120から取付スタブ130に流れ戻るのを妨げる。好適には、この代替的な実施形態は患者に流体25を供給するのに用いられてもよい。作動している超音波振動子20は、円筒部50の流体25内に超音波振動を発生させる。円筒部50内の流体25と接触する超音波90は、患者に供給される前および最中に流体25を超音波分解する。超音波分解された流体25は、超音波90と超音波振動子20の押下の組み合わせによってオリフィス60を通って押し出されてもよい。
【0049】
本明細書では特定の実施形態が図示されて説明されてきたが、同じ目的を達成するように意図された装置が、特定の実施形態の代わりに用いることができるということは、当業者によって理解されるであろう。以上の記載は例示であって限定を意図するものではないと理解すべきである。開示された方法のステップは、記載された順序に限定することを意図するものではない。以上の実施形態の組み合わせ;および他の実施形態は、本開示を調査すると当業者にとっては自明であろう。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲と、これらの請求項が権利を享受する完全な範囲の均等物と共に参照されて定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、流体を供給または採取するための医療用および/または産業用の装置および方法に関し、より具体的には超音波注射器に関する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を供給または採取するための方法において:
超音波注射器の円筒部に流体を充填するステップと;
約20kHzまたはそれ以上の周波数で超音波振動子を作動させるステップと;
振動子チップを通して超音波エネルギを伝達するステップと;
前記振動子チップの遠位端部で放射面を振動させるステップと;
前記円筒部の空洞部内で前記流体を超音波分解するステップと;
前記空洞部から超音波分解した前記流体を排出するステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記流体が治療薬であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記流体を超音波分解するステップが、前記流体の活性化をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記流体を超音波分解するステップがさらに、オゾンを生成することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記流体を超音波分解するステップがさらに、遊離基を生成することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法において、前記流体を超音波分解するステップがさらに、キャビテーションを引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法において、前記流体を超音波分解するステップがさらに、前記空洞部内に定常波を生成することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記流体が抗生物質を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記流体が麻酔薬を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記超音波エネルギを集束させるステップをさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、皮下注射針を通して前記超音波エネルギを集束させるステップをさらに具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記円筒部から前記皮下注射針を取外す更なるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記円筒部内の前記放射面を移動させる更なるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記超音波エネルギを用いて前記空洞部から前記超音波分解した流体を排出するのを補助することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、前記流体を超音波分解するステップがさらに、麻酔効果をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記空洞部内の前記流体を超音波分解するステップ内で、前記放射面を動かす更なるステップを超音波分解するステップがさらに、治療薬を活性化させることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、前記放射面が、20kHz乃至20mHzの周波数で超音波を放射することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記放射面が、1ミクロン乃至300ミクロンの範囲内の波長で超音波を放射することを特徴とする方法。
【請求項19】
流体を供給または採取するための方法において:
円筒部と流体連通している取付スタブを通じて、超音波注射器に流体を供給するステップと;
前記円筒部に前記流体を充填するステップと;
約20kHzまたはそれ以上の周波数で超音波振動子を作動させるステップと;
振動子チップを通して超音波エネルギを伝達するステップと;
前記振動子チップの遠位端部で放射面を振動させるステップと;
前記円筒部の空洞部内で前記流体を超音波分解するステップと;
前記空洞部から前記超音波分解した流体を排出するステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記取付スタブのバルブ部で前記流体を制御するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
流体を供給または採取するための超音波注射器において:
超音波発生器と;
前記超音波発生器に連結される超音波振動子と;
前記超音波振動子に取り付けられる振動子チップと;
前記振動子チップの遠位端部に形成される放射面であって、超音波が円筒部内の放射面の移動を補助する放射面と;
前記円筒部の遠位端部のオリフィスと、を具えることを特徴とする超音波注射器。
【請求項22】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記流体を保持するために、前記オリフィスと前記放射面との間の前記円筒部内に空洞部をさらに有することを特徴とする超音波注射器。
【請求項23】
請求項22に記載の超音波注射器において、前記流体が超音波によって活性化されることを特徴とする超音波注射器。
【請求項24】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記超音波振動子が、前記円筒部内で可動であることを特徴とする超音波注射器。
【請求項25】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記超音波振動子が、前記円筒部に着脱可能に取り付けられることを特徴とする超音波注射器。
【請求項26】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記振動子チップと前記円筒部との間にシールをさらに有することを特徴とする超音波注射器。
【請求項27】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記円筒部の遠位端部に着脱可能に固定される皮下注射針をさらに有することを特徴とする超音波注射器。
【請求項28】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記流体が治療薬であることを特徴とする超音波注射器。
【請求項29】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記放射面が平坦であることを特徴とする超音波注射器。
【請求項30】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記放射面が凹状であることを特徴とする超音波注射器。
【請求項31】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記放射面が凸状であることを特徴とする超音波注射器。
【請求項32】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記放射面が平坦であることを特徴とする超音波注射器。
【請求項33】
請求項21に記載の超音波注射器において、超音波を集束させるための手段をさらに有することを特徴とする超音波注射器。
【請求項34】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記流体が、前記円筒部から前記オリフィスを通って皮下注射針まで移動することを特徴とする超音波注射器。
【請求項35】
請求項21に記載の超音波注射器において、超音波が、前記流体が前記円筒部から前記オリフィスを通って皮下注射針まで移動するのを補助することを特徴とする超音波注射器。
【請求項36】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記放射面が、1ミクロン乃至300ミクロンの範囲内の波長で超音波を放射することを特徴とする超音波注射器。
【請求項37】
請求項21に記載の超音波注射器において、前記放射面が、20kHz乃至20mHzの周波数で超音波を放射することを特徴とする超音波注射器。
【請求項38】
流体を供給または採取するための超音波注射器において:
超音波発生器と;
前記超音波発生器に連結される超音波振動子と;
前記超音波振動子に取り付けられる振動子チップと;
前記振動子チップの遠位端部に形成される放射面であって、超音波が円筒部内の放射面の移動を補助する放射面と;
前記円筒部の遠位端部のオリフィスと;
前記円筒部の前記放射面上に配置される取付スタブと、を具えることを特徴とする超音波注射器。
【請求項39】
請求項38に記載の超音波注射器において、前記流体を保持するために、前記オリフィスと前記放射面との間の前記円筒部内に空洞部をさらに有することを特徴とする超音波注射器。
【請求項40】
請求項38に記載の超音波注射器において、前記取付スタブのバルブ部を有することを特徴とする超音波注射器。
【請求項41】
請求項38に記載の超音波注射器において、前記流体が、前記取付スタブから前記オリフィスを通って皮下注射針まで連通していることを特徴とする超音波注射器。
【請求項42】
請求項38に記載の超音波注射器において、前記空洞部が、前記取付スタブを通じて前記流体を収容することを特徴とする超音波注射器。
【請求項43】
請求項38に記載の超音波注射器において、前記流体が、超音波によって活性化された治療薬であることを特徴とする超音波注射器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−509759(P2011−509759A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543263(P2010−543263)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/031173
【国際公開番号】WO2009/091937
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(508301331)
【Fターム(参考)】