超音波流量計
【課題】流体の種類や温度などの環境条件が変化しても広範囲の流量を高精度に計測すること。
【解決手段】本発明の超音波流量計は、被計測流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路3と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器5,6と、一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置10と、計時装置10により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部11とを備えている。さらに、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部4より、流路内部に伝播することにより、均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播され、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【解決手段】本発明の超音波流量計は、被計測流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路3と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器5,6と、一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置10と、計時装置10により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部11とを備えている。さらに、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部4より、流路内部に伝播することにより、均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播され、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中に超音波を送信、または、流体中を伝播する超音波を受信するための超音波送受波器を用いる超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の超音波流量計は、例えば図12に示すように、計測部50内を流れる流体に一方の超音波送受波器から超音波を送信し、他方の超音波送受波器で流体を通過した超音波を受信するものである(例えば、特許文献1参照)。そして、計測部は、流体の流路が複数層で構成されているとともに、超音波送受波器が向かい合うそれぞれの計測範囲同士を結ぶことにより形成される計測領域が流体の流路全体とほぼ交差するように構成されていることを特徴としており、計測部の内壁の高さは、超音波送受波器を構成する圧電体の直径にほぼ等しい構成となっている。
【0003】
また、流体が流れる断面長方形の矩形流路と、矩形流路の短辺側に配置され、矩形流路を横断して超音波を送信または受信する一対の振動子と、振動子間の信号伝播時間を計測し、その計測結果に基づいて流体の流量を算出する流量演算部とを具備した流量計測装置も開示されている(例えば、特許文献2参照)。この発明においては、流路断面の全域で超音波を送信/受信するように、1対の振動子の送信/受信面の長さを矩形流路の対向する短辺の長さとほぼ等しくなるよう設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−240504号公報
【特許文献2】特開平09−189589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の超音波流量計では、流量計を量産する場合において、超音波送受波器の特性ばらつきが生じた場合、レイノルズ数の変化に応じて、流量補正係数にばらつきを生じることがあり、流量測定値に誤差を生じることがあった。
【0006】
また、超音波送受波器自体の経年変化によって超音波送受波器の特性が変化した場合、レイノルズ数の変化に応じて補正係数が変化し、流量測定値に誤差を生じることがあるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので流量計の量産において、超音波送受波器の特性がばらつき、経年変化によっても広範囲の流量を高精度に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の超音波流量計は、被測定流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路と、前記矩形流路の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、前記一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、前記計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき前記被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備えている。そして、前記超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、前記矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より、流路内部に伝播するようにしたものである。
【0009】
これによって、流量計を量産する場合において、超音波送受波器の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波流量計は、超音波送受波器の特性ばらつき、経年変化によっても広範囲の流量を高精度に計測することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における超音波流量計の断面図、(b)本発明の実施の形態1におけるx−x’の線分における断面図
【図2】本発明の実施の形態1のy−y′の線分における断面図
【図3】本発明の実施の形態1における超音波伝播開口部を示す図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における超音波送受波器の上面概略図、(b)本発明実施の形態における超音波送受波器の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における超音波送受波器の超音波分布(相対感度分布)を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における流量計の一部断面図
【図7】本発明の実施の形態3における出力の周波数特性を示す図
【図8】本発明の実施の形態4における超音波分布を示す図
【図9】本発明の実施の形態4における周波数特性を示す図
【図10】本発明の実施の形態5における超音波送受波器断面図
【図11】本発明の実施の形態5における超音波分布を示す図
【図12】従来の超音波流量計を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、被測定流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部とを備える超音波流量計である。そして、特に、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より、流路内部に伝播するようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0013】
第2の発明は、流体を一方の開口端から他方の開口端に通す多層の矩形流路と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備えた超音波流量計である。そして、矩形流路は、超音波を伝播する流量計測層と、超音波を伝播しない非流量計測層とに分割され、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より流量計測層に伝播するようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0014】
また、矩形多層流路は、超音波を伝播する流量計測層と、超音波を伝播しない非流量計測とに分割することによって、流量計としたときの圧力損失を低減することができる。
【0015】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部に伝播される超音波は、超音波送受波器の相対感度が最大出力に対し、−6〜0dBの範囲となるようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0016】
第4の発明は、特に第1から第3の発明のいずれかにおいて、矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部と同一面内の非開口部に吸音部材を形成する事を特徴としたものである。これにより、超音波送受波器より発生した超音波が、非開口部に反射して再度流路に伝播する事を抑制することができ、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0017】
第5の発明は、特に第1から第4の発明のいずれか1つにおいて、前記超音波伝播開口部は矩形とし、前記超音波伝播開口部の短辺の寸法は、超音波送受波器に備えられた圧電体の音波放射面方向寸法とくらべ小さく設定したものである。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0018】
第6の発明は、特に第1から第5の発明のいずれか1つにおいて、一対の超音波送受波器に備えられた圧電体は、送受波面が円形としたものである。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0019】
第7の発明は、特に第1から第6の発明のいずれか1つにおいて、超音波送受波器の駆動周波数は、計測に影響を与えない範囲で超音波送受波器の共振周波数とは異なる周波数で駆動することとしたものである。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0020】
第8の発明は、特に第1から第7の発明のいずれか1つにおいて、超音波送受波器は、圧電体と音響整合層を備え、音響整合層の中央部の厚みをλ/4の厚みより計測に影響を与えない範囲でずらすように設定したものである。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態における超音波流量計の流れ方向の断面図を示しており、図1(b)は、図1(a)において、図中に記載したx−x’の線分における矩形流路3の断面図を示している。
【0023】
図1(a)において、流体を一方の開口端1から他方の開口端2へ通す矩形流路3は、被測定流体を通す配管である。また、この矩形流路3に対して斜めに超音波が送受信されるように、矩形流路3の短辺側の壁面に、超音波伝播開口部4が設けられており、その延
長上に、超音波送受波器5,6が対向するように固定されている。図1に示すように、超音波送受波器5、6が短辺側の壁面に取り付けられており、超音波は、流路長辺側の壁面と並行するように、流路内部を伝播する。なお、超音波送受波器5、6は、矩形流路3に、シール部7を介し、超音波送受波器の背面より固定板8によって圧縮するように固定する構成となっている。
【0024】
矩形流路3はたとえば、熱可塑性樹脂の樹脂成型体で構成するのが好ましい。矩形流路3はともに、被計測流体である都市ガス、あるいはLPガス、空気、メタンなどの気体に直接接触するため、これらのガスに対して耐性のある樹脂である必要がある。そのため、たとえば、矩形流路3の材料は、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、液晶高分子などがより好ましい。また、これらの樹脂のほかに、計測ガスに耐性のある材料であれば特に限定されない。また、熱硬化性樹脂でも可能であり、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂なども使用可能である。これらの樹脂に、音響インピーダンスの異なる材料を添加することによって、成型体内部に伝播する音を乱反射させ、より効果的に流路壁内部を伝播する超音波伝播をより早く減衰させることが出来る。この音響インピーダンスの異なる材料としてたとえば、樹脂バルーン、ガラスバルーン、シラスバルーンなどの内部に空隙を持った材料が特に好適である。あるいは、樹脂に対して音響インピーダンスの大きいガラス粉、ガラス繊維、鉄粉、酸化チタン、などを加えても効果がある。
【0025】
また、これら成型体に空隙を直接形成する方法も効果がある。その空隙の形成方法は、例えば、流路部及び超音波送受波器固定部の成型時に、あらかじめ発泡剤含んだ成型樹脂を成型することによって、成型時の熱によって発泡剤が熱分解してガスが発生し、そのガスによって発砲させる方法が挙げられる。あるいは、二酸化炭素、窒素などの気体を超臨界状態で溶融させて成型する成型方法によっても可能である。
【0026】
発泡剤としては、たとえば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウムなどがあげられる。
【0027】
シール部7としては、たとえば、二トリルゴム、シリコンゴムなど、ゴム弾性を示す材料であれば特に限定されない。本実施の形態においては、図4に示すように、例えばOリング形状とし、圧縮するようにして固定する。
【0028】
以上のように構成された超音波流量計について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
流体の流れる流量計測部9に、一対の超音波送受波器5、6を、流体が流れる方向に対し斜めに、かつ、互いに対向するように配置する。超音波送受波器5、6は被計測流体に直接、接する構成となっている。
【0030】
L1は、上流側に配置された超音波送受波器5から伝播する超音波の伝播経路を示している。L2は下流側に配置された超音波送受波器6の超音波の伝播経路を示している。
【0031】
管の中を流れる流体の流速をV、流体中を超音波が伝播する速度をC、流体の流れる方向と超音波パルスの伝播方向との間の角度をθとする。
【0032】
超音波送受波器5を超音波送波器、超音波送受波器6を超音波受波器として用いたときに、超音波送受波器5から出た超音波パルスが超音波送受波器6に到達する伝播時間t1は、
t1 = L /(C+Vcosθ) (1)
で示される。
【0033】
次に超音波送受波器6から出た超音波パルスが超音波送受波器5に到達する伝播時間t2は、
t2 = L /(C−Vcosθ) (2)
で示される。
【0034】
そして、(1)と(2)の式から流体の音速Cを消去すると、
V = L /2cosθ(1/t1−1/t2) (3)
の式が得られる。
【0035】
Lとθが既知なら、計時装置10にてt1とt2を測定することにより流速Vが求められる。必要に応じて、この流速Vに矩形流路3の断面積Sと補正係数Kを乗じれば、流量Qを求めることができる。演算部11は、上記Q=KSVを演算するものである。
【0036】
以上のように構成した超音波流量計において、超音波送受波器5,6と矩形流路3との関係について説明する。
【0037】
図2は、図1(a)において、図中に記載したy−y′線分における断面図を示している。
【0038】
図2において、超音波送受波器5,6は、超音波が送受信できるように対向させ、矩形流路3に取り付けられた構成となっている。超音波送受波器5より発生した超音波は、超音波伝播開口部4を通って、超音波送受波器6に到達する構成となっている。
【0039】
図3は、実施の形態1における超音波送受波器5,6の音響整合体23のうちの、超音波伝播開口部4と非開口部15とを示している。
【0040】
図3において、超音波送受波器5より発生した超音波は、超音波伝播開口部4を通って伝播する。超音波伝播開口部4は矩形の形状(図示せず)とし、図中に記載した寸法bは、矩形流路3の短辺と同一の寸法とするのが好ましい。図3の外周における非開口部15には例えば、吸音部材を形成することで、超音波送受波器より発生した超音波が、非開口部に反射して再度流路に伝播する事を抑制することができる。これにより、均一な超音波が流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0041】
吸音部材としては、例えば、ポルウレタン等の発砲成形体、あるいは、ポリエステル繊維、スポンジ等が挙げられる。
【0042】
流路内の流体の流速は、一般的に図2に図示したように、流路中央部の流速が大きく、壁面の流速がゼロとなるような流速分布が存在する。超音波送受波器の超音波分布のばらつきがあると、この流体の流速分布の影響を受ける度合いにもばらつきが生じることになり、結果的に計測値に誤差を生じる結果となる。
【0043】
以下、超音波送受波器5,6、超音波分布に関して詳細に説明する。
【0044】
図4(a)は、本発明の第1の実施の形態における超音波送受波器の上面概略図、図4(b)は、本発明実施の形態における超音波送受波器の断面図を示している。
【0045】
図4(b)において超音波送受波器5には、圧電体22と音響整合体23とが接着剤で
接合され、音響整合体23とケース24とも同様に接着剤で固定されている。音響整合体23は例えば、ガラスバルーンとエポキシ樹脂との混合体で形成することが出来る。本発明においては、音響整合体はλ/4の厚みに調整する。例えば、音響整合体23として、ガラスバルーンとエポキシ樹脂との混合体を用いる場合、音速は、約2400m/secのとなり、200kHzで駆動する超音波送受波器とする場合、波長λ=12mmとなる。音響整合体13の厚みはλ/4とするため、おおよそ3mmとする必要がある。なお、音響整合体の厚み調整は、例えばダイシング装置、あるいは研磨機で行うのが好適である。
【0046】
ケース24は例えば、アルミニウム、ステンレス、黄銅、銅などの金属、あるいは、矩形流路3と同様に、計測ガスに耐性のある熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂で構成されることが好ましい。
【0047】
圧電体22には電極リード25が電気的に接合されており、この電極リード25を介して、計時装置10より、圧電体の共振周波数に近い周波数の矩形信号で駆動することで、電気信号が圧電体22に加えられる。これにより、圧電体によって電気信号が機械的振動に変換され、圧電体と音響整合体23とが共振し、より大きな超音波信号が、超音波伝播開口部4を通って被計測流体に伝播する。圧電体と電極リードとの接合ははんだ接合で実施することができる。
【0048】
ここで、超音波送受波器5から発生する超音波信号には、超音波が強い部分と弱い部分が存在とが存在する。これを超音波分布という。以下に、超音波送受波器の超音波分布について説明する。
【0049】
図5は圧電体が径方向の振動モードをもつ超音波送受波器の超音波分布(相対感度分布)を示している。
【0050】
図5において、横軸に、図4(a)に記載した線分A−B方向の寸法(音波放射面方向寸法)、縦軸に、超音波信号の相対感度Eを示しており、相対感度Eは以下の式(4)によって与えられる。相対感度Eは、ある地点における信号強さ(Sp)の信号強さの最大値(Smax)に対する分布を示している。
【0051】
E = 20 × log( Sp / Smax ) (4)
図5に示すように、圧電体中央部分の感度が高く(Smax)、外周方向に行くに従って感度が低下するような超音波分布となることがわかる。センサ特性にばらつきによっておこる超音波分布のばらつきが、流速分布の影響度合いに違いを生じさせ、結果的に流量計測誤差となる。
【0052】
本発明においては、超音波の均一な部分を、相対感度が−6〜0dBの範囲となるようにしたことによって、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。なお、従来の流量計では、流量補正係数にばらつきがあり、計測精度が低下するが、本発明の第1の実施の形態における超音波流量計の流量補正係数は従来に比べ、ばらつきが小さくすることができる。
【0053】
これは、これまで述べたように、超音波分布の小さい部分のみを被計測流体に伝播することが出来、その結果、流体の流速分布による影響を最小限にすることが出来るためである。
【0054】
この超音波分布が計測に影響を及ぼすため、どの程度の超音波分布までが許容できるかを以下に記載する。
【0055】
図2、3に示した、超音波伝播開口部4の寸法b、超音波送受波器の圧電体寸法a、図5に示した超音波分布の安定領域cとは以下の関係である必要がある。
【0056】
a > c > b (5)
以下表にまとめた。
【0057】
【表1】
【0058】
以上のように、相対感度が−6〜0dBの範囲(安定領域c)の超音波の感度分布であれば、計測精度に影響を及ぼすことなく、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0059】
以上のように本実施の形態における超音波流量計は、被測定流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部とを備えたものである。そして、特に、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より、流路内部に伝播するようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0060】
また、矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部に伝播される超音波は、超音波送受波器の相対感度が最大出力に対し、−6〜0dBの範囲となるようにした。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0061】
さらに、矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部と同一面内の非開口部に吸音部材を形成する事を特徴とする超音波流量計とした。これにより、超音波送受波器より発生した超音波が、非開口部に反射して再度流路に伝播する事を抑制することができ、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0062】
さらに、矩形流路に設けた超音波伝播開口部(矩形)における短辺の寸法は、超音波送受波器に備えられた圧電体の音波放射面方向寸法とくらべ小さく設定した。これにより、
より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0063】
さらに、一対の超音波送受波器に備えられた圧電体は、送受波面が円形であるとした。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0064】
また、超音波送受波器の駆動周波数は、計測に影響を与えない範囲で超音波送受波器の共振周波数とは異なる周波数で駆動することとした。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0065】
(実施の形態2)
図6は本実施の形態における流量計の一部断面図を示している。
【0066】
図6において、超音波送受波器5,6は、超音波が送受信できるように対向させ、矩形流路3に取り付けられた構成となっている。超音波送受波器5より発生した超音波は、超音波伝播開口部4を通って、多層板31によって、超音波を伝播する流量計測層32と、超音波を伝播しない非流量計測層33とに分割された多層部を通って、超音波送受波器6に到達する構成となっている。
【0067】
本発明実施の形態における超音波流量計は、流体を一方の開口端から他方の開口端に通す多層の矩形流路と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備えたものである。そして、矩形流路は、超音波を伝播する流量計測層と、超音波を伝播しない非流量計測層とに分割され、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より流量計測層に伝播するようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0068】
(実施の形態3)
図7は、圧電体が厚み方向の振動モードをもつ超音波送受波器の超音波分布を示している。
【0069】
図7において、実線は製造直後の状態を、点線は経年変化品(例えば、熱衝撃試験などの信頼性試験後の品)の超音波分布を示している。実線で示した製造直後のものにおいては、超音波分布の安定領域cは大変広く、超音波伝播開口部4の寸法bを広くすることができるが、点線で示した信頼性試験後の超音波分布は安定領域c′のように狭くなってしまう。そのため、長期にわたって、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても広範囲の流量を高精度に計測するためには、超音波送受波器5の劣化を想定して、超音波伝播開口部4を小さくする必要がある。
【0070】
さらに、製造上のばらつきも同様で、多少の超音波ばらつきも、超音波伝播開口部は矩形とし、被測定流体の流れに対して垂直方向の寸法は、超音波送受波器に備えられた圧電体の寸法と比べ小さく設定した。これにより、超音波分布を持つ超音波送受波器、あるいは、経年変化によって多少の超音波分布が変化したとしても、超音波伝播開口部にほぼ均一な超音波が照射されるため、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流体の
種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態においては、超音波分布を持つ超音波送受波器、あるいは、圧電体に径方向振動だけでなく、厚み振動を用いた場合にも、製造上のばらつき、経年劣化等によって、超音波分布に多少のばらつきが生じた場合でも、あらかじめ超音波送受波器の市場での変化を想定して、超音波伝播開口部4を小さくしたものである。これにより、超音波分布が結果的に小さくなり、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0072】
(実施の形態4)
図8は圧電体が径方向の振動モードをもつ超音波送受波器の超音波分布を示している。
【0073】
図8において、実線は、超音波送受波器5の出力が大きくなる共振周波数で超音波送受波器を駆動したときの超音波分布、点線は、超音波送受波器5の共振周波数よりずらした周波数で駆動したときの超音波分布を示している。
【0074】
図9は、超音波送受波器の超音波出力の周波数特性を示している。
【0075】
図9において、共振周波数eで、超音波出力が最大を示しなだらかな放物線を示す。
【0076】
超音波送受波器5の共振周波数eよりずらした場合(f、g)、流体に伝播する超音波の絶対出力は低下するが、超音波分布は、図8の点線で示したように小さくなり、超音波の安定領域がdからd´へと広くなる。そのため、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。この周波数は、例えば、200kHzの共振周波数をもつ超音波送受波器の場合、約20〜30kHzずらすことによって実現できる。
【0077】
以上のように、本実施の形態においては、超音波送受波器の駆動周波数は、計測に影響を与えない範囲で超音波送受波器の共振周波数とは異なる周波数で駆動するようにしたものである。これにより、超音波送受波器中央部からの超音波出力が低下し、超音波分布が結果的に小さくなり、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0078】
(実施の形態5)
図11は圧電体が径方向の振動モードをもつ超音波送受波器の超音波分布を示している。
【0079】
図11において、実線は、音響整合体13の厚みをλ/4としたときの超音波分布を示しており、点線は音響整合体23の厚みをλ/4よりも厚くする、あるいは薄くした超音波送受波器の超音波分布を示している。
【0080】
図10は本発明実施の形態における超音波送受波器の断面図を示している。図10に示すとおり、超音波の相対強度が強い中央部の音響整合体の厚みを、設計値λ/4より(a)厚くする、もしくは(b)薄くすることで超音波分布をより平滑化する。
【0081】
以上のように、音響整合層の厚みをλ/4の厚みより計測に影響を与えない範囲でずらすように設定することによって、流体に伝播する超音波の絶対出力は低下するが、超音波
分布は、図11の点線で示したように小さくなり、超音波の安定領域がhからh´へと広くなる。そのため、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0082】
以上のように、本実施の形態においては、超音波送受波器は、圧電体と音響整合層を備え、音響整合層の中央部の厚みをλ/4の厚みより計測に影響を与えない範囲でずらすように設定したものである。これにより、超音波分布が結果的に小さくなり、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明にかかる超音波流量計は、安定した流量計測が可能となるため、家庭用流量計、産業用流量計等の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 一方の開口端
2 他方の開口端
3 矩形流路
4 超音波伝播開口部
5、6 超音波送受波器
7 シール部
8 固定板
10 計時装置
11 演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中に超音波を送信、または、流体中を伝播する超音波を受信するための超音波送受波器を用いる超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の超音波流量計は、例えば図12に示すように、計測部50内を流れる流体に一方の超音波送受波器から超音波を送信し、他方の超音波送受波器で流体を通過した超音波を受信するものである(例えば、特許文献1参照)。そして、計測部は、流体の流路が複数層で構成されているとともに、超音波送受波器が向かい合うそれぞれの計測範囲同士を結ぶことにより形成される計測領域が流体の流路全体とほぼ交差するように構成されていることを特徴としており、計測部の内壁の高さは、超音波送受波器を構成する圧電体の直径にほぼ等しい構成となっている。
【0003】
また、流体が流れる断面長方形の矩形流路と、矩形流路の短辺側に配置され、矩形流路を横断して超音波を送信または受信する一対の振動子と、振動子間の信号伝播時間を計測し、その計測結果に基づいて流体の流量を算出する流量演算部とを具備した流量計測装置も開示されている(例えば、特許文献2参照)。この発明においては、流路断面の全域で超音波を送信/受信するように、1対の振動子の送信/受信面の長さを矩形流路の対向する短辺の長さとほぼ等しくなるよう設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−240504号公報
【特許文献2】特開平09−189589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の超音波流量計では、流量計を量産する場合において、超音波送受波器の特性ばらつきが生じた場合、レイノルズ数の変化に応じて、流量補正係数にばらつきを生じることがあり、流量測定値に誤差を生じることがあった。
【0006】
また、超音波送受波器自体の経年変化によって超音波送受波器の特性が変化した場合、レイノルズ数の変化に応じて補正係数が変化し、流量測定値に誤差を生じることがあるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので流量計の量産において、超音波送受波器の特性がばらつき、経年変化によっても広範囲の流量を高精度に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の超音波流量計は、被測定流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路と、前記矩形流路の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、前記一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、前記計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき前記被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備えている。そして、前記超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、前記矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より、流路内部に伝播するようにしたものである。
【0009】
これによって、流量計を量産する場合において、超音波送受波器の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波流量計は、超音波送受波器の特性ばらつき、経年変化によっても広範囲の流量を高精度に計測することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における超音波流量計の断面図、(b)本発明の実施の形態1におけるx−x’の線分における断面図
【図2】本発明の実施の形態1のy−y′の線分における断面図
【図3】本発明の実施の形態1における超音波伝播開口部を示す図
【図4】(a)本発明の実施の形態1における超音波送受波器の上面概略図、(b)本発明実施の形態における超音波送受波器の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における超音波送受波器の超音波分布(相対感度分布)を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における流量計の一部断面図
【図7】本発明の実施の形態3における出力の周波数特性を示す図
【図8】本発明の実施の形態4における超音波分布を示す図
【図9】本発明の実施の形態4における周波数特性を示す図
【図10】本発明の実施の形態5における超音波送受波器断面図
【図11】本発明の実施の形態5における超音波分布を示す図
【図12】従来の超音波流量計を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、被測定流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部とを備える超音波流量計である。そして、特に、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より、流路内部に伝播するようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0013】
第2の発明は、流体を一方の開口端から他方の開口端に通す多層の矩形流路と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備えた超音波流量計である。そして、矩形流路は、超音波を伝播する流量計測層と、超音波を伝播しない非流量計測層とに分割され、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より流量計測層に伝播するようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0014】
また、矩形多層流路は、超音波を伝播する流量計測層と、超音波を伝播しない非流量計測とに分割することによって、流量計としたときの圧力損失を低減することができる。
【0015】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部に伝播される超音波は、超音波送受波器の相対感度が最大出力に対し、−6〜0dBの範囲となるようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0016】
第4の発明は、特に第1から第3の発明のいずれかにおいて、矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部と同一面内の非開口部に吸音部材を形成する事を特徴としたものである。これにより、超音波送受波器より発生した超音波が、非開口部に反射して再度流路に伝播する事を抑制することができ、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0017】
第5の発明は、特に第1から第4の発明のいずれか1つにおいて、前記超音波伝播開口部は矩形とし、前記超音波伝播開口部の短辺の寸法は、超音波送受波器に備えられた圧電体の音波放射面方向寸法とくらべ小さく設定したものである。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0018】
第6の発明は、特に第1から第5の発明のいずれか1つにおいて、一対の超音波送受波器に備えられた圧電体は、送受波面が円形としたものである。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0019】
第7の発明は、特に第1から第6の発明のいずれか1つにおいて、超音波送受波器の駆動周波数は、計測に影響を与えない範囲で超音波送受波器の共振周波数とは異なる周波数で駆動することとしたものである。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0020】
第8の発明は、特に第1から第7の発明のいずれか1つにおいて、超音波送受波器は、圧電体と音響整合層を備え、音響整合層の中央部の厚みをλ/4の厚みより計測に影響を与えない範囲でずらすように設定したものである。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態における超音波流量計の流れ方向の断面図を示しており、図1(b)は、図1(a)において、図中に記載したx−x’の線分における矩形流路3の断面図を示している。
【0023】
図1(a)において、流体を一方の開口端1から他方の開口端2へ通す矩形流路3は、被測定流体を通す配管である。また、この矩形流路3に対して斜めに超音波が送受信されるように、矩形流路3の短辺側の壁面に、超音波伝播開口部4が設けられており、その延
長上に、超音波送受波器5,6が対向するように固定されている。図1に示すように、超音波送受波器5、6が短辺側の壁面に取り付けられており、超音波は、流路長辺側の壁面と並行するように、流路内部を伝播する。なお、超音波送受波器5、6は、矩形流路3に、シール部7を介し、超音波送受波器の背面より固定板8によって圧縮するように固定する構成となっている。
【0024】
矩形流路3はたとえば、熱可塑性樹脂の樹脂成型体で構成するのが好ましい。矩形流路3はともに、被計測流体である都市ガス、あるいはLPガス、空気、メタンなどの気体に直接接触するため、これらのガスに対して耐性のある樹脂である必要がある。そのため、たとえば、矩形流路3の材料は、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、液晶高分子などがより好ましい。また、これらの樹脂のほかに、計測ガスに耐性のある材料であれば特に限定されない。また、熱硬化性樹脂でも可能であり、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂なども使用可能である。これらの樹脂に、音響インピーダンスの異なる材料を添加することによって、成型体内部に伝播する音を乱反射させ、より効果的に流路壁内部を伝播する超音波伝播をより早く減衰させることが出来る。この音響インピーダンスの異なる材料としてたとえば、樹脂バルーン、ガラスバルーン、シラスバルーンなどの内部に空隙を持った材料が特に好適である。あるいは、樹脂に対して音響インピーダンスの大きいガラス粉、ガラス繊維、鉄粉、酸化チタン、などを加えても効果がある。
【0025】
また、これら成型体に空隙を直接形成する方法も効果がある。その空隙の形成方法は、例えば、流路部及び超音波送受波器固定部の成型時に、あらかじめ発泡剤含んだ成型樹脂を成型することによって、成型時の熱によって発泡剤が熱分解してガスが発生し、そのガスによって発砲させる方法が挙げられる。あるいは、二酸化炭素、窒素などの気体を超臨界状態で溶融させて成型する成型方法によっても可能である。
【0026】
発泡剤としては、たとえば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウムなどがあげられる。
【0027】
シール部7としては、たとえば、二トリルゴム、シリコンゴムなど、ゴム弾性を示す材料であれば特に限定されない。本実施の形態においては、図4に示すように、例えばOリング形状とし、圧縮するようにして固定する。
【0028】
以上のように構成された超音波流量計について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
流体の流れる流量計測部9に、一対の超音波送受波器5、6を、流体が流れる方向に対し斜めに、かつ、互いに対向するように配置する。超音波送受波器5、6は被計測流体に直接、接する構成となっている。
【0030】
L1は、上流側に配置された超音波送受波器5から伝播する超音波の伝播経路を示している。L2は下流側に配置された超音波送受波器6の超音波の伝播経路を示している。
【0031】
管の中を流れる流体の流速をV、流体中を超音波が伝播する速度をC、流体の流れる方向と超音波パルスの伝播方向との間の角度をθとする。
【0032】
超音波送受波器5を超音波送波器、超音波送受波器6を超音波受波器として用いたときに、超音波送受波器5から出た超音波パルスが超音波送受波器6に到達する伝播時間t1は、
t1 = L /(C+Vcosθ) (1)
で示される。
【0033】
次に超音波送受波器6から出た超音波パルスが超音波送受波器5に到達する伝播時間t2は、
t2 = L /(C−Vcosθ) (2)
で示される。
【0034】
そして、(1)と(2)の式から流体の音速Cを消去すると、
V = L /2cosθ(1/t1−1/t2) (3)
の式が得られる。
【0035】
Lとθが既知なら、計時装置10にてt1とt2を測定することにより流速Vが求められる。必要に応じて、この流速Vに矩形流路3の断面積Sと補正係数Kを乗じれば、流量Qを求めることができる。演算部11は、上記Q=KSVを演算するものである。
【0036】
以上のように構成した超音波流量計において、超音波送受波器5,6と矩形流路3との関係について説明する。
【0037】
図2は、図1(a)において、図中に記載したy−y′線分における断面図を示している。
【0038】
図2において、超音波送受波器5,6は、超音波が送受信できるように対向させ、矩形流路3に取り付けられた構成となっている。超音波送受波器5より発生した超音波は、超音波伝播開口部4を通って、超音波送受波器6に到達する構成となっている。
【0039】
図3は、実施の形態1における超音波送受波器5,6の音響整合体23のうちの、超音波伝播開口部4と非開口部15とを示している。
【0040】
図3において、超音波送受波器5より発生した超音波は、超音波伝播開口部4を通って伝播する。超音波伝播開口部4は矩形の形状(図示せず)とし、図中に記載した寸法bは、矩形流路3の短辺と同一の寸法とするのが好ましい。図3の外周における非開口部15には例えば、吸音部材を形成することで、超音波送受波器より発生した超音波が、非開口部に反射して再度流路に伝播する事を抑制することができる。これにより、均一な超音波が流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0041】
吸音部材としては、例えば、ポルウレタン等の発砲成形体、あるいは、ポリエステル繊維、スポンジ等が挙げられる。
【0042】
流路内の流体の流速は、一般的に図2に図示したように、流路中央部の流速が大きく、壁面の流速がゼロとなるような流速分布が存在する。超音波送受波器の超音波分布のばらつきがあると、この流体の流速分布の影響を受ける度合いにもばらつきが生じることになり、結果的に計測値に誤差を生じる結果となる。
【0043】
以下、超音波送受波器5,6、超音波分布に関して詳細に説明する。
【0044】
図4(a)は、本発明の第1の実施の形態における超音波送受波器の上面概略図、図4(b)は、本発明実施の形態における超音波送受波器の断面図を示している。
【0045】
図4(b)において超音波送受波器5には、圧電体22と音響整合体23とが接着剤で
接合され、音響整合体23とケース24とも同様に接着剤で固定されている。音響整合体23は例えば、ガラスバルーンとエポキシ樹脂との混合体で形成することが出来る。本発明においては、音響整合体はλ/4の厚みに調整する。例えば、音響整合体23として、ガラスバルーンとエポキシ樹脂との混合体を用いる場合、音速は、約2400m/secのとなり、200kHzで駆動する超音波送受波器とする場合、波長λ=12mmとなる。音響整合体13の厚みはλ/4とするため、おおよそ3mmとする必要がある。なお、音響整合体の厚み調整は、例えばダイシング装置、あるいは研磨機で行うのが好適である。
【0046】
ケース24は例えば、アルミニウム、ステンレス、黄銅、銅などの金属、あるいは、矩形流路3と同様に、計測ガスに耐性のある熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂で構成されることが好ましい。
【0047】
圧電体22には電極リード25が電気的に接合されており、この電極リード25を介して、計時装置10より、圧電体の共振周波数に近い周波数の矩形信号で駆動することで、電気信号が圧電体22に加えられる。これにより、圧電体によって電気信号が機械的振動に変換され、圧電体と音響整合体23とが共振し、より大きな超音波信号が、超音波伝播開口部4を通って被計測流体に伝播する。圧電体と電極リードとの接合ははんだ接合で実施することができる。
【0048】
ここで、超音波送受波器5から発生する超音波信号には、超音波が強い部分と弱い部分が存在とが存在する。これを超音波分布という。以下に、超音波送受波器の超音波分布について説明する。
【0049】
図5は圧電体が径方向の振動モードをもつ超音波送受波器の超音波分布(相対感度分布)を示している。
【0050】
図5において、横軸に、図4(a)に記載した線分A−B方向の寸法(音波放射面方向寸法)、縦軸に、超音波信号の相対感度Eを示しており、相対感度Eは以下の式(4)によって与えられる。相対感度Eは、ある地点における信号強さ(Sp)の信号強さの最大値(Smax)に対する分布を示している。
【0051】
E = 20 × log( Sp / Smax ) (4)
図5に示すように、圧電体中央部分の感度が高く(Smax)、外周方向に行くに従って感度が低下するような超音波分布となることがわかる。センサ特性にばらつきによっておこる超音波分布のばらつきが、流速分布の影響度合いに違いを生じさせ、結果的に流量計測誤差となる。
【0052】
本発明においては、超音波の均一な部分を、相対感度が−6〜0dBの範囲となるようにしたことによって、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。なお、従来の流量計では、流量補正係数にばらつきがあり、計測精度が低下するが、本発明の第1の実施の形態における超音波流量計の流量補正係数は従来に比べ、ばらつきが小さくすることができる。
【0053】
これは、これまで述べたように、超音波分布の小さい部分のみを被計測流体に伝播することが出来、その結果、流体の流速分布による影響を最小限にすることが出来るためである。
【0054】
この超音波分布が計測に影響を及ぼすため、どの程度の超音波分布までが許容できるかを以下に記載する。
【0055】
図2、3に示した、超音波伝播開口部4の寸法b、超音波送受波器の圧電体寸法a、図5に示した超音波分布の安定領域cとは以下の関係である必要がある。
【0056】
a > c > b (5)
以下表にまとめた。
【0057】
【表1】
【0058】
以上のように、相対感度が−6〜0dBの範囲(安定領域c)の超音波の感度分布であれば、計測精度に影響を及ぼすことなく、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0059】
以上のように本実施の形態における超音波流量計は、被測定流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部とを備えたものである。そして、特に、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より、流路内部に伝播するようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0060】
また、矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部に伝播される超音波は、超音波送受波器の相対感度が最大出力に対し、−6〜0dBの範囲となるようにした。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0061】
さらに、矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部と同一面内の非開口部に吸音部材を形成する事を特徴とする超音波流量計とした。これにより、超音波送受波器より発生した超音波が、非開口部に反射して再度流路に伝播する事を抑制することができ、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0062】
さらに、矩形流路に設けた超音波伝播開口部(矩形)における短辺の寸法は、超音波送受波器に備えられた圧電体の音波放射面方向寸法とくらべ小さく設定した。これにより、
より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0063】
さらに、一対の超音波送受波器に備えられた圧電体は、送受波面が円形であるとした。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0064】
また、超音波送受波器の駆動周波数は、計測に影響を与えない範囲で超音波送受波器の共振周波数とは異なる周波数で駆動することとした。これにより、より均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0065】
(実施の形態2)
図6は本実施の形態における流量計の一部断面図を示している。
【0066】
図6において、超音波送受波器5,6は、超音波が送受信できるように対向させ、矩形流路3に取り付けられた構成となっている。超音波送受波器5より発生した超音波は、超音波伝播開口部4を通って、多層板31によって、超音波を伝播する流量計測層32と、超音波を伝播しない非流量計測層33とに分割された多層部を通って、超音波送受波器6に到達する構成となっている。
【0067】
本発明実施の形態における超音波流量計は、流体を一方の開口端から他方の開口端に通す多層の矩形流路と、矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備えたものである。そして、矩形流路は、超音波を伝播する流量計測層と、超音波を伝播しない非流量計測層とに分割され、超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より流量計測層に伝播するようにしたものである。これにより、超音波送受波器の製造上の特性ばらつきが生じた場合、あるいは、超音波送受波器の特性が変化した場合においても、比較的均一な超音波が、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流速分布の影響を最小限に抑えることができるため、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0068】
(実施の形態3)
図7は、圧電体が厚み方向の振動モードをもつ超音波送受波器の超音波分布を示している。
【0069】
図7において、実線は製造直後の状態を、点線は経年変化品(例えば、熱衝撃試験などの信頼性試験後の品)の超音波分布を示している。実線で示した製造直後のものにおいては、超音波分布の安定領域cは大変広く、超音波伝播開口部4の寸法bを広くすることができるが、点線で示した信頼性試験後の超音波分布は安定領域c′のように狭くなってしまう。そのため、長期にわたって、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても広範囲の流量を高精度に計測するためには、超音波送受波器5の劣化を想定して、超音波伝播開口部4を小さくする必要がある。
【0070】
さらに、製造上のばらつきも同様で、多少の超音波ばらつきも、超音波伝播開口部は矩形とし、被測定流体の流れに対して垂直方向の寸法は、超音波送受波器に備えられた圧電体の寸法と比べ小さく設定した。これにより、超音波分布を持つ超音波送受波器、あるいは、経年変化によって多少の超音波分布が変化したとしても、超音波伝播開口部にほぼ均一な超音波が照射されるため、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流体の
種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態においては、超音波分布を持つ超音波送受波器、あるいは、圧電体に径方向振動だけでなく、厚み振動を用いた場合にも、製造上のばらつき、経年劣化等によって、超音波分布に多少のばらつきが生じた場合でも、あらかじめ超音波送受波器の市場での変化を想定して、超音波伝播開口部4を小さくしたものである。これにより、超音波分布が結果的に小さくなり、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0072】
(実施の形態4)
図8は圧電体が径方向の振動モードをもつ超音波送受波器の超音波分布を示している。
【0073】
図8において、実線は、超音波送受波器5の出力が大きくなる共振周波数で超音波送受波器を駆動したときの超音波分布、点線は、超音波送受波器5の共振周波数よりずらした周波数で駆動したときの超音波分布を示している。
【0074】
図9は、超音波送受波器の超音波出力の周波数特性を示している。
【0075】
図9において、共振周波数eで、超音波出力が最大を示しなだらかな放物線を示す。
【0076】
超音波送受波器5の共振周波数eよりずらした場合(f、g)、流体に伝播する超音波の絶対出力は低下するが、超音波分布は、図8の点線で示したように小さくなり、超音波の安定領域がdからd´へと広くなる。そのため、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。この周波数は、例えば、200kHzの共振周波数をもつ超音波送受波器の場合、約20〜30kHzずらすことによって実現できる。
【0077】
以上のように、本実施の形態においては、超音波送受波器の駆動周波数は、計測に影響を与えない範囲で超音波送受波器の共振周波数とは異なる周波数で駆動するようにしたものである。これにより、超音波送受波器中央部からの超音波出力が低下し、超音波分布が結果的に小さくなり、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0078】
(実施の形態5)
図11は圧電体が径方向の振動モードをもつ超音波送受波器の超音波分布を示している。
【0079】
図11において、実線は、音響整合体13の厚みをλ/4としたときの超音波分布を示しており、点線は音響整合体23の厚みをλ/4よりも厚くする、あるいは薄くした超音波送受波器の超音波分布を示している。
【0080】
図10は本発明実施の形態における超音波送受波器の断面図を示している。図10に示すとおり、超音波の相対強度が強い中央部の音響整合体の厚みを、設計値λ/4より(a)厚くする、もしくは(b)薄くすることで超音波分布をより平滑化する。
【0081】
以上のように、音響整合層の厚みをλ/4の厚みより計測に影響を与えない範囲でずらすように設定することによって、流体に伝播する超音波の絶対出力は低下するが、超音波
分布は、図11の点線で示したように小さくなり、超音波の安定領域がhからh´へと広くなる。そのため、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【0082】
以上のように、本実施の形態においては、超音波送受波器は、圧電体と音響整合層を備え、音響整合層の中央部の厚みをλ/4の厚みより計測に影響を与えない範囲でずらすように設定したものである。これにより、超音波分布が結果的に小さくなり、流路断面の全域に超音波が伝播されることになり、流体の種類や温度などの環境条件が変化しても流速分布に影響されない受信信号とすることが出来、結果、広範囲の流量を高精度に計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明にかかる超音波流量計は、安定した流量計測が可能となるため、家庭用流量計、産業用流量計等の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 一方の開口端
2 他方の開口端
3 矩形流路
4 超音波伝播開口部
5、6 超音波送受波器
7 シール部
8 固定板
10 計時装置
11 演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路と、
前記矩形流路の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、
前記一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、
前記計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき前記被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備える超音波流量計において、
前記超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、前記矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より、流路内部に伝播するようにした超音波流量計。
【請求項2】
流体を一方の開口端から他方の開口端に通す多層の矩形流路と、
前記矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、
前記一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、
前記計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき前記被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備える超音波流量計において、
前記矩形流路は、超音波を伝播する流量計測層と、超音波を伝播しない非流量計測層とに分割され、前記超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、前記矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より前記流量計測層に伝播するようにした超音波流量計。
【請求項3】
前記矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部に伝播される超音波は、その最大出力に対する相対感度が−6〜0dBの範囲となるようにした請求項1及び2記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部と同一面内の非開口部に吸音部材を形成する事を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記超音波伝播開口部は矩形とし、前記超音波伝播開口部の短辺の寸法は、前記超音波送受波器に備えられた圧電体の音波放射面方向寸法と比べ小さく設定した請求項1から4記載のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項6】
一対の前記超音波送受波器に備えられた圧電体は、送受波面が円形である請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項7】
前記超音波送受波器の駆動周波数は、計測に影響を与えない範囲で前記超音波送受波器の共振周波数とは異なる周波数で駆動することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波送受波器。
【請求項8】
前記超音波送受波器は、圧電体と音響整合層を備え、前記音響整合層の中央部の厚みをλ/4の厚みより計測に影響を与えない範囲でずらすように設定した請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項1】
被測定流体を一方の開口端から他方の開口端に通す単層の矩形流路と、
前記矩形流路の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、
前記一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、
前記計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき前記被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備える超音波流量計において、
前記超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、前記矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より、流路内部に伝播するようにした超音波流量計。
【請求項2】
流体を一方の開口端から他方の開口端に通す多層の矩形流路と、
前記矩形流路断面の短辺側の壁面に超音波が送受信できるように配置した一対の超音波送受波器と、
前記一対の超音波送受波器間の超音波伝播時間を計測する計時装置と、
前記計時装置により得られた超音波伝播時間に基づき前記被測定流体の流速及び流量を演算する演算部と、を備える超音波流量計において、
前記矩形流路は、超音波を伝播する流量計測層と、超音波を伝播しない非流量計測層とに分割され、前記超音波送受波器より発生した超音波のほぼ均一な部分を、前記矩形流路の短辺側の壁面に設けた超音波伝播開口部より前記流量計測層に伝播するようにした超音波流量計。
【請求項3】
前記矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部に伝播される超音波は、その最大出力に対する相対感度が−6〜0dBの範囲となるようにした請求項1及び2記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記矩形流路断面の短辺側の壁面に設けられた超音波伝播開口部と同一面内の非開口部に吸音部材を形成する事を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記超音波伝播開口部は矩形とし、前記超音波伝播開口部の短辺の寸法は、前記超音波送受波器に備えられた圧電体の音波放射面方向寸法と比べ小さく設定した請求項1から4記載のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項6】
一対の前記超音波送受波器に備えられた圧電体は、送受波面が円形である請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【請求項7】
前記超音波送受波器の駆動周波数は、計測に影響を与えない範囲で前記超音波送受波器の共振周波数とは異なる周波数で駆動することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波送受波器。
【請求項8】
前記超音波送受波器は、圧電体と音響整合層を備え、前記音響整合層の中央部の厚みをλ/4の厚みより計測に影響を与えない範囲でずらすように設定した請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−242090(P2012−242090A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109029(P2011−109029)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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