説明

超音波画像内の体腔液を定量化および分類化するためのシステムおよび方法

【課題】異なる流体組成、あるいは体液と組織を簡単に識別または区別することができる新しい画像化システムを提供する。
【解決手段】一実施形態において、超音波検査の方法は生体の組織、流体あるいは腔の標本のデータベースを作成し、患者の関心領域に超音波パルスを送信することを含む。エコーがその関心領域から受信され、受信エコーに基づいて、関心領域の超音波パターンを集計してまとめる。パターンは関心領域のパターンをデータベースに格納されたパターン情報と比較することで処理される。次に患者の関心領域内の組成が判別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は速達郵便ラベル番号EV509173452USによって2005年8月26日申請した実用出願のPCTであり、2002年8月9日申請の英国特許出願番号GB2391625Aに対する優先権を主張するところの、2003年7月1日申請のWIPO出願番号PCT/EP2003/07807に対する優先権を主張するところの、2004年12月13日申請の米国特許出願通し番号10/523,681に対する一部継続出願であり優先権を主張する。
【0002】
本出願は2004年4月30日申請の米国仮特許出願通し番号60/566,127に対する優先権を主張するところの、2005年4月29日申請の米国特許出願通し番号11/119,355に対する一部継続出願であり優先権を主張する。本出願はさらに2003年5月20日申請の米国特許出願通し番号10/443,126に対する一部継続出願であり優先権を主張するところの、2003年11月5日申請の米国特許出願通し番号10/701,955に対する一部継続出願であり優先権を主張する。
【0003】
本出願は2004年2月17日申請の米国仮特許出願通し番号60/545,576および2004年4月30日申請の米国仮特許出願通し番号60/566,818に対する優先権を主張するところの、2005年2月17日申請の米国特許出願通し番号11/061,867に対する一部継続出願であり優先権を主張する。
【0004】
本出願は2004年12月6日申請の米国仮特許出願60/633,485に対する優先権を主張する。
【0005】
本出願は2004年9月9日申請の米国仮特許出願60/608,426および2004年8月27日申請の60/605,391に対する優先権を主張する。
【0006】
本出願はさらに2002年11月5日申請の米国仮特許出願通し番号60/423,881およびに2002年8月2日申請の米国仮特許出願通し番号60/400,624対する優先権を主張するところの、2003年5月12日申請の米国特許出願通し番号10/443,126に対する優先権を主張するところの、2003年7月31日申請の米国特許出願通し番号10/633,186に対する優先権を主張するところの、2003年11月5日申請の米国特許出願通し番号10/701,955に対する一部継続出願であり優先権を主張するところの、2003年11月10日申請の米国特許出願通し番号10/704,996に対する一部継続出願であり優先権を主張する。
【0007】
本出願はさらに2002年6月7日申請の米国特許出願通し番号10/165,556に対する一部継続出願であり優先権を主張する。
【0008】
本出願はさらに2002年11月5日申請の米国仮特許出願通し番号60/423,881および2002年8月2日申請の米国仮特許出願通し番号60/400,624に対する優先権を主張するところの、2003年8月1日申請のPCT出願通し番号PCT/US03/24368に対する一部継続出願であり優先権を主張する。
【0009】
本出願はさらに2002年6月7日申請の米国特許出願通し番号10/165,556の継続出願である2003年5月9日申請のPCT出願通し番号PCT/US03/14785に対する一部継続出願であり優先権を主張する。
【0010】
本出願はさらに2002年11月5日申請の米国仮特許出願通し番号60/423,881と2002年8月2日申請の米国仮特許出願通し番号60/423,881に対する優先権を主張するところの米国特許出願通し番号10/633,186、および2002年11月5日申請の米国仮特許出願通し番号60/423,881と2002年8月2日申請の米国仮特許出願番号60/400,624に対する優先権を主張するところの米国特許出願通し番号10/443,126に対する一部継続出願であり優先権を主張する。
【0011】
本出願はさらに2002年8月9日申請の英国特許出願通し番号0218547.8に対する優先権を主張するところの、2003年7月17日申請のPCT/EP03/07807に対する優先権を主張するところの、2004年12月13日申請の米国特許出願通し番号11/010,539、および2002年8月9日申請の英国特許出願通し番号0218547.8に対し優先権を主張するところの、2003年7月17日申請のPCT/EP03/07807に対する優先権を主張するところの、米国郵便サービス速達郵便番号EV510340824USにより2005年2月3日申請の米国特許出願に対する優先権を主張する。
【0012】
本出願はさらに2003年5月12日申請の米国仮特許出願通し番号60/470,525および、2002年6月7日申請の米国特許出願通し番号10/165,556に対して優先権を主張する。上記の全出願はここで完全に記載されるかのようにその全体が参照により開示に含まれる。
【0013】
発明の属する技術分野
本発明は生体組織、体液、および液体が充満した腔の超音波画像化に関する。
【背景技術】
【0014】
超音波画像化は生体の選択した位置に超音波変換器を配置してその生体に超音波エネルギーを投射することで実現する。次に生体の内部構造から反射する音波が変換器を介して受信され、内部構造の画像を形成するために処理される。特定の超音波方法においては、帰還信号の選択高調波の振幅が処理されて超音波画像が生成される。A.ブアカズ、E.マークス、C.ランシー、N.ボムの「Noninvasive Bladder Volume Measurements Based on Nonlinear Wave Distortions(非線形波の歪みに基づいた非侵襲性の膀胱容積の測定)」Ultrasound in Medicine & Biology、第30巻4号469−476頁で詳細に説明されるように、簡略な一般条件では、生体の内部構造により発生した高調波は超音波エネルギーを反射する組織特性によって最低でも部分的に判別されるので、受信エコー内に存在する高調波を、超音波画像の有益な情報を生成するのに使用することができる。上記の刊行物は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0015】
選択される超音波画像アプリケーションにおいては、体液と隣接組織、または血液とその他様々な体液のような異なる種類の体液の識別がしばしば望まれる。例えば、Bモードの超音波画像化を使用して、選択する解剖学的部分を画像化する場合、その選択部分の体液とある特定の隣接軟組織は、結果として得られる画像において比較的判別不能な場合がある。さらに、Bモードの超音波を使って選択部分内の血液と他の体液が画像化される場合、同様に血液と他の体液が適切に区別されない画像が生成される可能性がある。
【0016】
したがって、診断医が異なる流体組成、あるいは体液と組織を簡単に識別または区別することができる新しい画像化システムが必要である、さらに超音波画像において、異なる組成の液体を含む腔間の境界、および体液と生体組織間の境界がもっと容易に検出できることが望ましい。
【発明の概要】
【0017】
本発明は超音波画像化システムと方法から成る。一形態において、超音波検査の方法は組織、液体、あるいは体腔の標本であるデータベースを作成し、患者の関心領域へ超音波パルスを送信することを含む。エコーがその関心領域から受信され、受信エコーに基づいて、関心領域の超音波パターンを収集してまとめる。パターンは関心領域のパターンをデータベースに格納されたパターン情報と比較することで処理される。次に患者の関心領域内の組成が判別される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態によるマイクロプロセッサーに制御されたトランシーバーの側面立図を示す。
【図2】複数の3次元分散走査線によって円錐形に形成されトランシーバーから放射される超音波走査円錐を示す。
【図3A】2次元の走査面の回転配列によって円錐形に形成されトランシーバーから放射される超音波走査円錐を示す。
【図3B】回転配列の走査面を示す。
【図4】患者の腹部を走査するために使用中の手持ち式トランシーバーの描写である。
【図5】通信クレードルに置かれた手持ち式トランシーバー装置の斜視図である。
【図5B】画像化システムの概略図を図示する。
【図6】サーバと接続された複数のトランシーバーの概略図である。
【図7】インターネットあるいは他のネットワーク上のサーバに接続された複数の膀胱壁測定システムの概略図である。
【図8】画像上にオーバーレイされる図式化した走査線による走査面画像を図示する。
【図9】充満した膀胱と子宮を通過する走査線の概略図である。
【図10】図9概略図のエコー振幅対走査線深さのプロットである。
【図11】ほぼ空の膀胱と子宮を通過する走査線の概略図である。
【図12】図11概略図のエコー振幅対走査線深度のプロットである。
【図13】体腔と周囲の組織を通過する走査線の概略図である。
【図14】同質性の子宮液を持つ妊娠していない女性被験者のウィンドウ関数処理した高周波音波放射領域図13の別のスペクトルグラフである。
【図15】異質性の子宮液を持つ妊娠していない女性被験者のウィンドウ関数処理した高周波音波放射領域図13の別のスペクトルグラフである。
【図16】膀胱容積の高調波パワーを関数とする較正グラフである。
【図17】羊水中の血液組成を関数とする高調波比の較正グラフである。
【図18】メソッドの概略フローチャートである。
【図19】図18のサブアルゴリズム206の拡張図である。
【図20】四表面区画要素の略図である。
【図21】器官の漿膜下および粘膜下組織壁位置を通過する3本の走査線の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を以下の図面を参照して詳しく説明する。
【0020】
本発明は線形あるいは非線形の音響特性を有する組織および/または液体の充満したい腔の超音波画像化に関する。十分な理解を提供するために本発明のある実施形態の多くの具体的な詳細を図1〜21および以下の記述で詳しく説明する。しかしながら、当業者には本発明は他の実施形態が可能であること、あるいは、以下の記述で説明される詳細のうちの幾つかなしで実行することができることは理解されよう。
【0021】
図1は本発明の一実施形態による超音波トランシーバー10の側面立図である。トランシーバー10はユーザーがトランシーバー10を手動操作できるように適切に設定された外の方向に延出するハンドル12を備えたトランシーバーのハウジング18を含む。ハンドル12はユーザーが選択された解剖学的部分の超音波走査を始めることができるトリガー14と以下に詳しく説明する腔セレクター16を含む。トランシーバー10はさらに選択された解剖学的部分が走査される際に患者の表面部分と接触するトランシーバードーム20と、超音波走査からの処理結果を表示してユーザーとトランシーバー10間で操作上の対話を可能にするディスプレイ24を含む。また、ディスプレイ24は選択された解剖学的部分に対してトランシーバー10の適切および/または最適な位置決めを示す英数字データを表示するように設定することができる。他の実施形態において、選択された解剖学的領域の2次元あるいは3次元の画像をディスプレイ24に表示してもよい。ディスプレイ24は液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、陰極線管(CRT)ディスプレイ、あるいはユーザーに英数字データおよび/または図形画像の提示が操作可能な他の適切なディスプレイ装置であってもよい。
【0022】
トランシーバー10はさらに、異なる流体組成間の境界が識別できる高画質な超音波のハーモニックイメージングを協調して提供するマイクロプロセッサー(図1に不図示)および計算アルゴリズム(図1に不図示)を含む。さらに、トランシーバー10は体液と組織間、異なる組織間および/または異なる体の器官の間を識別できるように適切に設定することもできる。計算アルゴリズムは以下でより詳細に説明する。トランシーバー10はまた、トランシーバー10からデジタル信号あるいはアナログ信号のいずれかの受信操作可能で所望の超音波画像を生成するためにその信号を処理することができるコンピューターシステム(図1には不図示)に接続することもできる。さらに、コンピューターシステムは少なくとも部分的にトランシーバー10の操作を制御してもよい。コンピューターシステムは、マイクロプロセッサーコンピューターまたは操作命令を実行しデータの操作が可能なメインフレーム等の他のコンピューターシステムで構成することができる。したがって、コンピューターシステムは、典型的なデスクトップあるいはラップトップコンピューター機器に限定されない。
【0023】
トランシーバー10の操作を説明する。トランシーバー10のトランシーバードーム20は走査される解剖学的部分に最も近い患者の表面部分に接して配置される。ユーザーは次にトリガー14を押し下げることでトランシーバー10を始動させる。これを受けて、トランシーバー10は体へ超音波信号を送信し、選択された解剖学的部分の超音波画像を生成するためにトランシーバー10によって少なくとも部分的に処理された対応する戻りエコー信号を受信する。ある特定の実施形態において、トランシーバー10はおよそ2メガヘルツ(MHz)からおよそ10MHzに及ぶ範囲の超音波信号を送信する。
【0024】
さらに図1に示すように、腔セレクター16は患者の解剖学的構造への超音波信号の送受信を調節して制御できる構造になっている。特に、腔セレクター16はトランシーバー10が男性と女性患者の様々な解剖的詳細に調節できるようにする。例えば、腔セレクター16が男性の患者用に調整される場合、トランシーバー10は男性の患者の膀胱等の単一の腔を探索するように適切に設定される。これに対して、腔セレクター16が女性の患者用に調整される場合、トランシーバー10は膀胱と子宮を含む体の領域等の多数の腔を有する解剖学的部分を画像化するように設定される。トランシーバー10の別の実施形態は腔走査の単一モード、あるいは男性および/または女性の患者に使用することができる腔走査の複数モードを選択するように設定された腔セレクター16を含むこともできる。腔セレクター16は、このように単一の腔の領域を画像化する、あるいは肺や心臓を含む領域等の複合腔の領域を画像化できるようにしてもよい。
【0025】
図2はトランシーバー10の操作をさらに詳しく説明するために用いる図1のトランシーバー10から放射している超音波走査円錐30を示す。走査円錐30は複数の3次元分散走査線で形成される実質的に円錐の形をしている。走査円錐30は複数の3次元の分散走査線31A−34Eを包囲するトランシーバー10のドーム20から放射しているのが示されている。複数の走査線31A−34Eは3次元の空間の線配列を表わす。線配列内の走査線はトランシーバー10から異なる座標方向に放射する1次元の超音波のAラインであり、集合体として得られて走査円錐30を形成する。異なる座標方向は、一定の走査線の長さr、回転角度θおよび傾斜角φから成る。したがって、線配列31A−34E内の走査線に沿った1つかそれ以上の点Pは距離rと角度の座標値φとθによって定義される。
【0026】
複数の3次元分散走査線31A−34Eは複数の周辺走査線31A−Eと複数の内部走査線34A−Dから成る。3次元の分散Aライン(走査線)は、必ずしも走査面内に限定されなく、代わりに内部領域の至る所および走査円錐30の周辺に沿って走査する。3次元の分散走査線は2次元の走査面を3次元の配列で占有するだけでなく、円錐の軸から円錐の周囲を含むところまでの走査面間の空間も占有する。例えば、線34Bは円錐形の軸線であり、線31Cと線34Aは線34Bと同一平面上にあると仮定する。線34Aと線34Bは傾斜角φ1で隔てられ、線31Cと線34Aは傾斜角φ2で隔てられている。同様に、線31Fと線31Cは回転角度θ1で隔てられ、線31Dと線34Cは回転角度θ2で隔てられる。
【0027】
内部走査線は走査線34A−Cで示される。トランシーバー10から放射する内部走査線の数および位置は変数であり、走査円錐30内の構造を十分に視覚化できるように選択することができる。内部走査線は周辺走査線ではない。周辺走査線31A−Fは円錐の周囲を占有し走査円錐30の頂点付近で集束する。したがって走査円錐30の周辺の限界を表わす。
【0028】
図3Aは2次元の走査面の回転配列で形成された円錐形でトランシーバーから放射している超音波走査円錐を表す。ドーム20から放射している走査円錐40は回転配列として集合した複数の走査面42を含んでいる。回転配列内の走査面は角度θで角をなして隔てられる。
【0029】
図3Bは回転配列の走査面を示している。走査面42は第1辺(直角三角形の辺)44と第2辺46の間をおよそφのピボット角度で回転して旋回する走査線48によって形成される。走査面42の深さは走査線48の有効長rで割り出される。走査面42の面積は走査線48の長さrと第1辺44と第2辺46の間をおよそφのピボット角度で移動しながら走査線48によって走査された領域の積として割り出される。
【0030】
図4は本発明の一実施形態による体腔の液体を識別するためにデータ収集の方法を説明するべく使用される、患者26の外部に配置されたトランシーバー10の等角図である。トランシーバー10は患者26の表面部分に接して配置され、目標の位相がトリガーされる。ある特定の実施形態において、トランシーバー10は次に2次元の連続的な取得モードで操作される。それによって操作者が患者26の外部を複数箇所横切って物理的にトランシーバー10を移動させるにつれてデータが連続的に得られて、ディスプレイ24(あるいは別の外部表示装置)に別々の走査面画像として表示することができる。この実施形態において、ディスプレイ24、あるいは別のディスプレイ装置上で連続的に見ることができるリアルタイムの2次元画像を連続的に得るために、操作者はトランシーバー10を腹部位であちこち動かしてトランシーバー10のトリガー14を押す。例えば、膀胱を含む解剖学的部分が画像化されると、膀胱内に閉じ込められた尿が暗い領域として現われ、尿の流体の面積を計算することができる。尿の流体の面積の英数字の表示(例えばcm2)を計算しディスプレイ24上に視覚的に表示することもできる。同様に、患者26が妊婦である場合、子宮内の羊水を画像化して該当する羊水面積を計算してディスプレイ24上に表示することができる。2つの寸法測定が得られると、走査円錐40と類似の複数の走査面配列として3次元走査を取得することで尿と羊水の量はそれぞれ膀胱と子宮において測定される。あるいは、2次元の測定が3次元の分散走査線として取得される場合、3次元の走査は走査円錐30に類似の3次元の分散走査線の3次元の走査円錐として行われる。腔セレクター16(図1に図示)が被検者の単一あるいは複数の腔の容積を検知して測定するように作動する。ある実施形態において、3次元の超音波画像を取得するためにトランシーバー10が恥骨結合上に置かれた場合、単一腔は膀胱と子宮のうちの1つを含み、複数腔は膀胱と子宮を含む。
【0031】
図5は本発明の別の実施形態によるトランシーバー10の等角図である。トランシーバー10はサポートクレードル50で受け止められるような構造になっている。サポートクレードル50は電源51に接続されてクレードル50に電気エネルギーを供給し、それがトランシーバー10に導電的にあるいは誘導的に伝達されてトランシーバー10内に配置された電源供給部に充電電流を供給する。さらにサポートクレードル50はクレードル50内に置かれるとトランシーバー10から超音波データを受け取るように設定され、そのデータはユニバーサルシリアルバス(USB)を使ったリンク、IEEE1394準拠のFIREWIREバス、RS−232に互換性を持つリンク、あるいはさらに他のプロトコル準拠の他の同様の通信リンク等のデジタル通信リンク38を介して、外部処理装置(図3には不図示)に転送することもできる。他の実施形態において、通信リンク38は無線ローカルエリアネットワーク(LAN)あるいは無線の広域ネットワーク(WAN)等の無線リンクでもよい。あるいはクレードル50はリンク38で電力を供給されることも可能である。
【0032】
通信リンク38はさらにトランシーバー10から画像化データを転送しソフトウェアのアップデートあるいは改訂を外部処理装置からトランシーバー10に転送するための手段を便利に提供することができる。ある実施形態において、クレードル50はデータが通信リンク38を介して外部処理装置に転送される前にトランシーバー10から受信したデジタルデータの保存が操作可能なメモリ素子を含むことができる。
【0033】
図5Bは画像化システム55の概略図を示す。画像化システム55はサポートクレードル50内に配置されたトランシーバー10を含む。通信リンク38はクレードル12に収容されたトランシーバー10をコンピューター62と接続する。コンピューター62はデスクトップ、ラップトップ、他のマイクロプロセッサーベースの携帯計算装置であってもよい。トランシーバー10からのデータはクレードル50を通って通信リンク38経由でコンピューター62に転送される。通信リンク38は図5Bに示すような導電性リンクであってもよいし、無線周波数リンク、あるいは無線赤外線リンク等の光リンクであってもよい。コンピューター62には、超音波信号の処理、画像化プログラムの読出しや超音波の高画質化手順を行なうための指示など、特定の実施形態のアルゴリズムを実行する実行可能プログラムが内蔵されている。様々な超音波画像は1次元の超音波画像、2次元画像、3次元のレンダリング、および読み出した画像化プログラムや指示からの高画質化画像を含む超音波信号データを処理することで作成される。生成された画像はコンピューター62内に格納することができる。
【0034】
図6は本発明の別の実施形態によるネットワーク画像化システム60の部分的な等角線図である。画像化システム60は上記で開示した1つかそれ以上の実施形態による1つかそれ以上のトランシーバー10を含む。1つかそれ以上のトランシーバー10はサポートクレードル50に置くことができ、そのクレードルは実施できるように携帯計算装置62に接続されており、その計算装置は通信リンク38を介して1つかそれ以上のトランシーバー10から画像化データを受信するように適切に設定されている。通信リンク38は図6に示すような導電性リンクであってもよいし、無線周波数リンク、あるいは無線赤外線リンク等の光リンクであってもよい。携帯計算装置62は通信網72上でサーバ66と通信する。図6に図示のネットワーク画像化システム60には2つのトランシーバー10が示されているが、それ以上あるいはそれ以下のトランシーバー10があってもよい。さらに、超音波信号の処理はトランシーバー10、携帯計算装置62、サーバ66の間で分担されてもよい。例えば、トランシーバー10は本発明の他の実施形態において、超音波信号を処理しアルゴリズムを使って超音波画像を生成するように設定することができる。または携帯計算装置62あるいはトランシーバー10から超音波信号を受信後のサーバ66によってさえも超音波画像を生成することができる。ネットワーク画像化システム60のある実施形態において、高画質の超音波画像を生成する画像化アルゴリズムはサーバ66上に存在する。各携帯計算装置62はそれぞれトランシーバー10から取得した信号をクレードル50を通して受信し携帯計算装置62に格納する。その次に計算装置62は、追加の超音波の高画質化手順を行なうためにサーバ66から画像化プログラムおよび指示を読み出す。その後各個人用計算装置62は1次元的な超音波画像、2次元画像、3次元レンダリングや読み出した画像化プログラムと指示からの高画質画像などの超音波データの処理により様々な超音波画像を生成する。生成された画像はサーバ66上に格納することができる。
【0035】
別のある実施形態では、画像化プログラムと指示はサーバ50上のみに存在しサーバ50上で実行される。各携帯計算装置62はクレードル50を通してトランシーバー10から取得した信号を受信して携帯計算装置62に転送する。すると装置62は信号をサーバ66に伝達し、1次元画像、2次元画像、3次元のレンダリング、その他の類似の画像を含む所望の超音波画像を生成するために信号を処理する。超音波画像はサーバ66上に格納してもよいし、1つかそれ以上の個人用計算装置62に転送してもよい。
【0036】
図7は本発明のまた別の実施例におけるネットワーク画像化システム80の部分的な等角線図である。本発明の実施形態の多くの要素を他の実施形態と関連させて詳しく説明したが簡潔にするためにこれ以上の説明は避ける。ネットワーク画像化システム80は通信網72とサーバ66の間に置かれた公衆データ網82を含む。公衆データ網82はLAN、WANあるいはインターネットを含んでもよい。したがって、公衆データ網82と関連する他の計算装置84は携帯計算装置62およびサーバ66と画像化データおよび/または超音波画像を通信することができる。図7に図示のネットワーク画像化システム80には2つのトランシーバー10が示されているが、それ以上あるいはそれ以下のトランシーバー10があってもよい。
【0037】
図8は本発明の他の実施形態を説明するために使用される患者の体の部分の超音波画像90である。画像90は扇状の走査面42を形成するために複数の走査線48を患者の選択された解剖学的部分の方に下方に向けて投射することで形成される。走査面42は選択された解剖学的部分の3次元の画像化情報を取得できるよう走査円錐40(図3Aに図示)を生成するためにトランシーバー10を通って伸びる軸のまわりを回転することができる。したがって、超音波エネルギーが選択された解剖学的部分に投射されると、膀胱、膀胱の前壁、膀胱の後壁を含む様々な内部構造が超音波エネルギーを反射する可能性がある。図8に示すように、膀胱は尿等の流体量を含むかもしれない。前述の構造は一般に画像の解像力に困難を生じる。特に、超音波画像は流体が充満した腔、あるいは流体が充満した腔の境界を形成する組織、あるいは画像化された解剖学的部分中のさらに他の構造細部を適切に解像できない可能性がある。さらに、前述の構造は一般に非線形な方法で超音波エネルギーに反応するので、反射した超音波エコーは、超音波の基本周波数の1つかそれ以上の高調波を含んでいる。
【0038】
様々な流体および組織の非線形の動きの1つの測定法はゴールドバーグ(Goldberg)数値(G)である。Gは、超音波エネルギーを受けると組織または流体の非線形効果により一般に超音波減衰を高調波の歪みと関連づける無次元量である。したがって、G値が約1である時、非線形効果は組織中の減衰効果に相当する。G値が水または尿のように1よりはるかに大きい場合、非線形過程が支配的である。G値が軟組織のように1未満である場合、減衰効果がより支配的である。例えば、脂肪組織はおよそ0.27のゴールドバーグ値であり、血液、肝臓、筋肉はおよそ1のG値であることが知られている。これに対して、尿等の流体はおよそ104のG値である。
【0039】
さらに図9を参照して、走査面42は女性の患者の膀胱および子宮を通って伸びる走査線102を少なくとも1本含んでいる可能性がある。図9で「ケース1」と呼ばれるこの状態において、膀胱は比較的大量の尿を含んでいる。図9に図示の解剖学的領域が走査される時、一般に膀胱と子宮はエコー輝度が低い領域として表示される。既知の画像処理ソフトウェアは(優先権主張の段落に挙げた1つかそれ以上の参考資料からの引用によって本明細書に取り込まれる)エコー輝度の低い最も浅い領域を画像化するために使用することができる。画像の曖昧さがないようにエコー輝度が低い領域は一般に優先的に選択されるので、膀胱は容易に識別できる。
【0040】
次に図10を参照して、図9の解剖学的領域の典型的なエコー振幅の反応が示されている。図10に描写するようなエコー振幅の反応は、引用によって本明細書に取り込まれる1つかそれ以上のアルゴリズムを応用することで取得することができる。例えば、バーナードその他の米国特許第6,676,605号、マクモロウその他の米国特許第5,235,985号、ガングリーその他の米国特許第4,926,871号に開示された計算アルゴリズムを使用することができる。
【0041】
(図9に図示のように)両方の器官が流体でかなり満たされた場合、膀胱と子宮の辺縁は比較的検出可能であり、したがって一般に識別可能である。この場合、比較的充満した膀胱は体のより浅部で比較的U字型の谷を示す。これに対して、子宮によって表示された対応U字型のプラトーは一般に体のより深部で識別可能である。このように、本発明の実施形態は上記のように両方の器官が体液で比較的満たされている場合に精度と診断を向上できる一方で、1つあるいは両方の器官が充満されていない時の体の領域の画像化にも適している。
【0042】
図11は図9の解剖学的領域を図示したもので少なくとも1本の走査線104は膀胱と子宮を通って伸びており、その膀胱は比較的少量の尿を含む。この状態は図11で「ケース2」と呼ばれる。図9のケース1の状態に較べて、膀胱の容積はケース2の状態で大きく減少したので、エコー輝度が低い領域はこの場合は主に子宮である。現在の画像処理方法においては、膀胱と子宮を識別するためにエコー輝度の低い領域の平均は閾値と比較されるが、これは画像エラーを招くおそれがある。
【0043】
図12は図11の解剖学的領域に対応したエコーの振幅の応答である。比較的空の膀胱は比較的狭い谷を示す。これに対して、子宮は比較的広いU字型の谷を形成する。結果として、膀胱が少量の尿を含んでいる時は子宮と識別するのはそれほど容易ではない。本開示の実施形態は閉じた組織の界面に隣接する腔の中の流体の超音波信号の高調波の違いをより正確に検出するアルゴリズムを使用することによって前述の問題により適切に対応する。
【0044】
図13は図解したもので、本発明の実施形態による解剖学的領域を画像化する方法を図示するために使用する。Aモードの走査線106は第1体腔110、例えば、図9および11に描写したそれぞれケース1(比較的充満した膀胱の場合)とケース2(ほとんど空の膀胱の場合)の膀胱と子宮に投射される。投射された超音波の波形は腔110に先行する組織に相当する走査線106の距離d1に沿った組織と走査線106に沿った腔110の内部に相当する距離d2によって変わる。走査線106に沿った他の介在する腔、例えば子宮もまた投射された超音波の波形を変える可能性がある。
【0045】
第1腔110は低エコーで領域RHと指定される。走査面42に示す他の異なったエコー領域には低エコー領域R3、 R4、 R5がある。走査線106に沿った体腔110内および通過する超音波エネルギーは各腔のそれぞれの容積、すなわち腔110に相当するV1を割り出すために画像解析アルゴリズムにかけることができる。第1体腔110の後壁あるいは他の境界から反射された信号はWR1として指定されたウィンドウ領域で処理されたウィンドウ関数である。WR1領域は腔110の後壁界面に隣接した末端の組織の部分に及び、さらに腔110の後壁界面に最も近い走査線106に沿った腔空間の部分にまで及ぶ。
【0046】
WR1領域で、ウィンドウ関数処理は基本周波数foと走査線106に沿ったWR1空間内に生成される選択された高次高調波2foから成る生データを決定する。走査線106が生体に投射される際に異なる組織および/または流体に出くわすのでWR1内で生成された高次高調波の大きさは変わる。したがって、腔110内の流体量と流体組成は腔110の後壁界面に最も近い走査線106の近くで高次高調波2foの大きさを変える。
【0047】
図14は図13の高周波の音波が当てられた領域のスペクトルをグラフにしたもので、妊娠していない女性の子宮とほぼ充満した膀胱である。基本周波数foはピーク値140を持ち高次高調波2foはピーク値142を持つ。基本と高調波のピーク値の140と142は対応するエコーの振幅の応答を処理するウィンドウ関数の結果である。高調波ピーク142の大きさは基本周波数ピーク140でピーク142を割ることによって標準化することができる。したがって、ほぼ充満した膀胱の尿から生じる高いゴールドバーグ数値は周波数比の高い等級に対応することを言及しておく。異なる尿量および/または子宮等の他の器官の存在もまた周波数比の大きさを変える。第1腔110の第2高調波のピーク142の大きさは子宮の存在、尿量、および膀胱内の尿組成によって影響される。尿の組成および量はこのように割り出すことができる。
【0048】
図15は図13の高周波の音波が当てられた領域のスペクトルをグラフにしたもので、大量の血液と子宮液を含んだ組織がある妊娠していない女性の子宮およびほぼ空の膀胱である。スペクトルのグラフ化はウィンドウ領域WR1の内で基本ピーク150と対応するエコーの応答の周波数領域処理から生じる高次高調波ピーク152を示す。図示のように、妊娠していない女性のWR1の内の高調波のスペクトルは実質的により大きい流体量を持つ妊娠していない女性よりも一般に低いゴールドバーグ数値を示す。周波数比(2f0/f0)の大きさは同様により低い。図15に示すように可変組成で血液と混じり合った尿液はまた高次高調波ピーク152の大きさを変える可能性がある。したがって、流体が混じり合った混合物は一般により低いゴールドバーグ数値を示すので、第1腔110の内で形成された反射されたスペクトル成分は図14に描写の混ざり物のない子宮液と比較して、さらに低い高調波比(2f0/f0)を持っている可能性がある。
【0049】
引き続き図14と図15を参照して、本発明の実施形態を説明する。本実施形態は非線形の波の伝播と体液中の超音波エネルギーの減衰の変化に基づく。後壁の超音波スペクトルは反射された高調波成分を割り出すために処理されて、この高調波成分は周波数比を形成することで基本の超音波エネルギー成分と比較される。次に結果値は下記に説明するように、介在組織iのf0と2f0の間の選択された周波数jで減衰の差を調整することができる。
【0050】
選択されたウィンドウの基本周波数成分の減衰の合計は以下の方程式E1で表される。
【0051】
E1:Af0 = 2d1 σ11 + 2d2σ21 ≒ 2d1σ11 dB ここでσijは周波数jにおける組織iの減衰係数で距離d1とd2は図13に示すものである。
【0052】
高次高調波周波数の成分の減衰の合計は以下の方程式E2で表される。
【0053】
E2:A2f0 = 2d1 σ12 + 2d2 σ22 ≒ 2d1 σ12 dB
高次高調波の基本波成分に対する減衰の差はしたがって方程式E3で定義される。
【0054】
E3:A 比率 = 2d1 21- σ11) dB
例えば、約1.1dB/cmの減衰率を持つ軟組織において、減衰係数σ12はf0=3.7MHzの時におよそ約3.7dB/cmである、したがって、振幅比は方程式E4となる。
【0055】
E4:A 比率 = 2d1 (3.7 dB/cm)
前述に基づいて、高調波のパワーの振幅と周波数比が導き出されて被検者および/または非生物の試験的装置から導き出される既知の流体量および流体組成と関連づけることができる。次にそれは流体量の測定あるいは高周波の音波が当てられた被検者の流体組成の識別に有用なデータの符号用に、容易にアクセスできる参照テーブル、較正グラフあるいは他の適切な手段に符号化される。
【0056】
図16は被検者の膀胱の容積の関数の高調波パワーの較正グラフの例である。高調波のパワーは異なる生体組織および流体に対応するデータが含まれる参照テーブルから取得することもできる。較正グラフはこのように高次振幅と基本周波数振幅が比率2f0/f0で表される時に尿量を割り出すことができる。別な実施形態は前述のウィンドウ関数で強化されたそれぞれの参照テーブルのデータからの他の流体組成用の較正グラフを含むことができる。例えば、羊水と血液の混合物、あるいは羊水/血液/尿の混合物は特定の較正グラフを持つことになる。図16に図示のグラフは代わりに線形の最小二乗の手順、スプライン手順、多項式手順あるいは他の既知の曲線フィティング手順等の適切な曲線フィティング手順を使って表すことができる。
【0057】
さらに他のある実施形態において、ゴールドバーグ数値は女性被検者の排尿後の走査で膀胱と子宮を識別するのに使用することができる。子宮は一般に超音波画像で暗い構造として現われるので排尿後の走査で膀胱と誤って識別される可能性がある。これを避けるために、本実施形態は排尿後の女性の膀胱の走査において高調波の振幅の計算を提供する。選択された組み合わせの高調波振幅が選択された閾値より高い場合、走査はおそらく流体を含む。そうでなければ、走査はおそらく女性被検者の子宮を含む。
【0058】
さらに別のある実施形態において、高調波振幅は1つかそれ以上の選択された超音波線、あるいは全体画像内のすべての超音波線に基づいて計算することができる。さらに、高調波は流体が充満した腔の後壁の後ろの領域等のBモードの画像上で検出された特性によって誘導された関心領域内あるいは関心線で計算することもできる。
【0059】
さらに他のある実施形態において、高調波振幅の患者間のばらつきを、例えば周波数、ピークツーピーク電圧値、パルス長および他の送信特性等の送信特性の組み合わせを使用して標準化あるいは調整することができる。液体が充満した腔の前壁の深さ等の他の特性はBモードの画像から抽出することができる。
【0060】
図17は羊水中の血液組成の関数を表した高調波比の較正グラフである。破線の較正線は血液の割合をグラフで割り出すのに使用することができる。ゴールドバーグ数値を様々な体液の組成、例えば被検者の肺内で生じた漏出液および滲出流体、あるいは羊水や尿内の体液などの組成の違いを識別するために使用することもできる。さらに、羊水、尿等の体液中の血液の存在を検出するのに使用することもできる。このように流体間の高調波比の差は流体の組成を識別するのに使用することができる。例えば、図17に示すように、高調波比3はおよそ20%の血液組成を持つ羊水に相当する。同様に、4.5に近い高調波比はおよそ60%の血液組成を持つ羊水に相当する。
【0061】
さらに別のある実施形態において、ゴールドバーグ数値は妊婦の子宮内の血液と羊水を識別するために使用されてもよい。血液は著しく低いゴールドバーグ数値を持つので、羊水と比較して血液を含む領域から生じる第2高調波の歪みは羊水を含む領域とは異なる。このようにゴールドバーグ数値と高調波比は血液と羊水の区別および高周波の音波が当てられた流体の識別を確認するために利用することができる。例えば、羊水量が少ない妊婦の被検者である。子宮はその分血液でさらに溢血して羊水領域の識別がより困難になる。この問題に対処するために、本発明の実施形態は識別処理の補助にゴールドバーグ数値および高調波比を使う。もう1つの例で、Bモードの画像において血液は非常に暗く羊水と外観が類似している。このように、Bモードの画像で羊水量を測定している間に血液が臍帯、あるいは子宮壁の管内に検出され誤って羊水と識別される可能性がある。ゴールドバーグ数値と一緒に第2高調波の歪みを使用するは羊水と血液を識別するのを助ける。
【0062】
さらに他のある実施例において、ゴールドバーグ数値は胸水の場合の肺中の流体量を識別、分類、測定するのに使用することもできる。
【0063】
別の実施例では、画像全体を通して高調波振幅の選択された組み合わせを示しそれによって一般に高調波があることで示される様々な流体領域の検出ができる超音波画像を作成することができる。高調波反射の選択された組み合わせはソフトウェアプログラム、あるいは代わりに従来のハーモニックイメージングの超音波装置の既存ソフトウェアプログラムの改善として取り入れることができる。次に高調波比は係数、A比率で標準化することができる。その結果は各種類の組織の減衰あるいは高調波特性のうちの1つを表す経験から導出した参照テーブルあるいは較正グラフと比較することができる(図16を参照)。したがって、低いゴールドバーグ数値と低い高調波比率を持つ組織および体液はこうしてより高いゴールドバーグ数値と高調波比を持つ組織および体液と区別することができる。前述の高調波比および参照テーブル(あるいは対応する較正グラフ)を説明したような方法で使用することは、流体と組織の領域の表示をさらに区別して向上させるための別の基礎を提供する。例えば、空に近い小さい容積の膀胱は子宮腔および隣接した組織と適切に区別することができる。
【0064】
本発明の別の実施形態において、ある走査線に沿って生じるかもしれない「衝撃波形成距離」を補正するために付加的調整を行なうことができる。衝撃波形成距離は、超音波の基本周波数が高調波周波数に変形されるにつれて組織および近傍の流体で生じるエネルギー伝達の結果としてゴールドバーグ数値に関連する。例えば、励起周波数3.7MHzはヒトの組織内で著しい高調波を発生させる。したがって、距離d2(図13)はまた高調波振幅比を調整するのに使用することができる。
【0065】
図18は本発明の実施形態による流体量の測定と流体組成の分類のメソッド200のフローチャートを図示したものである。メソッド200はブロック202の生体の組織、流体、腔の減衰および/または高調波特性を含むデータベースの作成から始まる。データベースは性別、年齢、形態学的な状態、生理的な状態、および病理学的な状態によってさらに特徴づけがなされてもよい。メソッド200は次にブロック204で患者の選択された領域に高周波の音波を当てる。それから、患者の高周波の音波が当てられた領域の超音波パターンはブロック206で集計される(下記の図19を参照)。メソッド200は次にブロック208で超音波パターンの処理と処理したパターンをデータベース情報と比較する。例えば、処理したパターンは図16の量較正グラフと図17の組成較正グラフを使って比較されてもよい。次にメソッド200は、患者の超音波パターンとブロック210のデータベースの内容の比較に基づいて、高周波の音波が当てられた領域の組成と高周波の音波が当てられた領域の量の少なくとも1つを割り出すことによって終了する。ブロック210で被検者から取得した超音波の測定データは次に量測定を得るために図16に類似の量較正グラフに応用することができる。同様に、ブロック210で被検者から取得した超音波の測定データは流体組成の測定を得るために図17に類似の組成較正グラフに応用することができる。
【0066】
引き続き図18に示すように、被検者からの処理されたパターンは、量情報を得るために図16に描写するような参照テーブルあるいは較正グラフと比較することができる。ある一定の検出された流体の構成の割り出しあるいは分類を得るために、図17に従って、腔内に含まれる体液の種類はゴールドバーグ数値、高調波比、および高周波の音波が当てられた領域内の減衰率の比較分析によって確認されてもよい。データベース内に格納されたゴールドバーグ数値、高調波比、減衰率は次に流体組成を割り出すためにアクセスされる。流体組成はこのようにして前述のように較正グラフへのアクセス、参照テーブルからの補間、あるいは回帰分析の応用により割り出すことができる。図16および17に示す量と構成の参照テーブルあるいは較正グラフは、人間のシミュレーションモデルから得た超音波情報データベース、個別のデータベースに格納された患者から得た臨床測定の蓄積、あるいはシミュレーションモデルと臨床測定の組み合わせから取得することができる。他のデータベースは獣医学ベースのデータベースと共に、あるいはそのデータベースなしで、動物のシミュレーションモデルを含むことができる。さらに他のデータベースは、人間と獣医学からのデータベースの組み合わせを含むことができる。
【0067】
同様に高周波の音波が当てられた領域内の組織の種類あるいはその組み合わせは、高周波の音波が当てられた患者の領域が示すゴールドバーグ数値、高調波比、減衰率とデータベースに格納された同様の数値、比、率との比較分析によって割り出される。
【0068】
図19は図18のサブアルゴリズム206の拡張図である。サブアルゴリズム206は高周波の音波が当てられた領域から受信したエコー輝度のパターンから、器官壁の容積、器官壁の質量、器官壁の内周によって定義された器官の内部容積、および器官壁の外周によって定義された器官の外部容積の割り出しを可能にする。患者の少なくとも1つの器官がある高周波の音波が当てられた領域の超音波パターンはプロセスブロック206−2で集計される。壁の位置が識別されると、壁の位置、復調した大きさのデータ、および膀胱の前壁の領域内の直交振幅復調信号のサブセットは、ある実施形態用の図19に示すアルゴリズムにしたがってさらに分析するためにマイクロプロセッサーに送られる。まず第1ブロック206−2で示すように、膀胱、子宮、あるいは他の器官に関連する超音波データが取得される。一般に膀胱固有のデータは、トランシーバー10を操作するユーザーが表示画面の受信データを見ながら膀胱、子宮等の器官あるいは複数の器官が図2および3Aに描写するように十分に円錐の視野内にあるように必要に応じてトランシーバー10の位置合わせをして得ることができる。
【0069】
図19を再び参照して、説明を膀胱等の特定の器官に限定して、エコー輝度データはトランシーバー10によって収集される。膀胱の超音波検査データを入手した後、ひし形の判断ブロックとして表示された第2プロセスブロック206−4に示すように超音波データは膀胱がおよそ200〜400mlを含むかどうか判断するために処理される。クエリー「200ml≦容積≦400ml?」に対して「No」であれば、第3プロセスブロック206−6に示すように、膀胱はおよそ200〜400mlまで蓄積することが許される。膀胱が好ましいおよそ200〜400mlの容積を既に含んでいることを意味する「Yes」であれば、第4ブロック206−8に示すように次に膀胱壁の位置に取り掛かることができる。超音波走査内の器官壁の位置や他の外部境界の割り出しは、現在市場に出ている超音波装置の処理能力内である。しかしながら一般に処理はトランシーバードームから膀胱壁までの走査線の長さを割り出す。壁の位置を含むデータは、コンピューター62の記憶に格納され膀胱の容積がおよそ200〜400mlの範囲内であるかどうか判断するために使用される。膀胱の容積がその範囲内である場合、第5ブロック206−10に示すように超音波データは壁の位置から実際の表面積を割り出すために使用される。高調波比、パワー、ゴールドバーグのG−数値を使った前述の方法の応用はおよそ200−400mlの範囲内の流体を保持する膀胱の厚み、面積、容積、質量を割り出す精度を高めるために使用することができる。表面積の計算は図21を参照して以下で説明するが、漿膜下の位置372Aおよび372Bで定義された膀胱の外壁表面積と粘膜下組織の位置374Aおよび374Bで定義された膀胱の内壁表面積を計算することができる。第5ブロック206−10で表面積を計算している間に、第6ブロック206−12に示すように反射した超音波が膀胱の前壁から受信される。これらのタスクは並行処理が好ましいが、順次処理でもよい。次に、第7ブロック206−16に示すように、膀胱壁の厚さは壁の位置で重複するコヒーレント信号から割り出される。膀胱壁の厚さの割り出しを以下に詳しく説明する。最後に第7ブロック206−16で示すように、膀胱壁の距離は膀胱の粘膜下組織の前壁と後壁の位置の差として計算される。次に、第8プロセスブロック206−20で、膀胱の内部容積は膀胱の内壁の距離と膀胱の内壁の面積の関数として計算される。
【0070】
上記の段落で述べた容積の限定は膀胱壁の質量、膀胱壁の容積、および膀胱の内部容積を最適に測定できるように膀胱の容積の範囲として含まれる。容積と質量の計算はこの範囲外の容積にも行えるが、測定の正確さが劣る結果となり、これは高調波比、パワー、ゴールドバーグのG−数値を使った前述の方法を応用することで修正することができる。例えば、200ml未満あるいは空に近い膀胱は高調波比、パワー、ゴールドバーグのG−数値を使った前述の方法で、膀胱壁の厚み、容積、質量、および膀胱の内部・外部の容積を割り出す精度が高められる。例えば膀胱の容積が1000ml〜数リットルといった実質的に400ml以上の流体の容積をもつ膀胱に対して、本発明はより大きなサイズの膀胱のために20cmを越える走査線を用いる。本発明は人間および動物の内部器官の厚み、質量、および容積の測定に応用することができる。走査線の長さは走査する内部器官の寸法に合わせて調整される。
【0071】
第5ブロック206−4の表面積の測定は壁の位置で定義された表面の一区画の補間関数の面積を統合することで行われる。数学的な計算を以下に詳しく説明する。
【0072】
膀胱の表面をSと定義する。この表面は膀胱壁の位置の分析によって割り出された膀胱の実際の表面に相当する。この形は前もって知られていないので、膀胱を球、あるいは楕円体とモデル化することは表面の荒削りな近似値のみを定める。代わりに、表面Sは表面の個々の区画si,jの一連の構成として定義される。ここでiとjは、地球表面を緯度と経度の線に分けるのと同じように、表面の緯度と経度の要素を通して数える。膀胱表面の面積Sは個々の表面区画の総和、S =Σsi,jと定義される。
【0073】
図20は表面の4つの区画成分の略図である。図20に3次元で描写するように、一例として5つの走査面320−328が漿膜下の壁の位置332を3軸のグラフグリッド340に対して実質的に縦方向にわたって送信されるのが見える。5つの走査面は第1走査面320、第2走査面322、第3走査面324、第4走査面326、第5走査面328を含む。走査面は前記の公式で添字付き変数jで表わされる。5つの縦断走査面に実質的に垂直なのは5本の緯度的な統合線360−368で、第1統合線360、第2統合線362、第3統合線364、第4統合線366、第5番統合線368を含む。統合線は前記の公式で添字付き変数iで表わされる。
【0074】
一例として、表面の一区画の4つの関数が漿膜下の壁の位置372として図20にハイライトされている。前述のiとjの添字は膀胱表面の緯度および経度の線の指数に相当する。ここで説明するために、iは経度線に相当しjは緯度線に相当するが、iとjの意味は数学上同じ結果で交換可能であることを言及しておく。図20に定めた走査面および統合線の定義を使用して、表面の一区画の4つの関数は左上から始まって時計回り方向で、s322,362、 s324,362、 s324,364、 s322,364とする。
【0075】
表面の区画は、パッチ座標、si,j(u,v)の関数として定義される。パッチ座標uとvは、0 ≦u, v < 1で、0は緯度あるいは経度のスタート座標(iとjの位置)を表し、1は緯度あるいは経度の次の座標(i+1とj+1の位置)を表すと定義される。表面の関数はデカルト座標でsi,j(u,v) = xi,j(u,v)i + yi,j(u,v)j + zi,j(u,v)kと表すことができ、ここでのi、j、kは、それぞれx-、y-、z-の方向の単位ベクトルである。ベクトルの形式では、表面の一区画の関数の定義は方程式1に示される。kはそれぞれx-、y-、z-の方向の単位ベクトルである。ベクトルの形式では、表面の一区画の関数の定義は方程式E5に示される。
【数1】

【0076】
表面の一区画の関数の定義が完了したので、図20の第5ブロック206−10に示す表面積の計算に注目する。Sの表面積A(S)は、方程式6に示すように、面積の成分を表面Sにわたって積分すると定義される。
【数2】

【0077】
Sは多くの表面の一区画の関数から成るため、表面Sの面積の計算は、方程式7のように、表面の一区画の個々の関数の面積の合計と書き換えられる。
【数3】

【0078】
全体表面の方程式E5と同じように、表面の一区画の面積は、方程式E8に示すように、面積の成分を表面の一区画にわたって積分する。
【数4】

【0079】
表面の一区画の関数にわたる積分は表面の積分をパッチ座標uとvの二重積分に変形することで計算の簡素化ができる。表面の積分と一区画の座標の積分との変形を方程式9に示す。
【数5】

【0080】
方程式5を方程式4に代入、および方程式4を方程式3に代入することで、全体の表面の面積を計算することができる。代入結果を方程式E10に示す。
【数6】

【0081】
表面の一区画の関数はその一次導関数に連続する任意の関数であってよい。図示の実施形態において、3次Bスプライン補間関数は、表面の一区画の補間関数に使われているが、任意の表面の関数を使うことができる。この補間関数は方程式E5に示すデカルト座標関数のそれぞれに応用される。si,j一区画の関数のx座標の補間方程式を方程式E11に示す。
【数7】

【0082】
tは行列とベクターの転置を示す。
【0083】
同様の計算が表面の一区画の関数のyi,jおよびzi,jの成分に対しても行われる。
【0084】
各一区画の関数に対する補間関数は立体表面なので、積分は求積公式を使ってそのとおりに行なうことができる。この応用に使われた公式を方程式E12に示す。
【数8】

【0085】
si,j(u,v)はデカルト座標のベクトル関数として定義された(方程式1)ことに戻って、偏導関数のクロス乗積のノルムは以下の方程式E13のように書くことができる。
【数9】

【0086】
x-、y-、z-の物理的位置が補間関数で使用される場合、表面はx、y、zの単位の2乗で計算される。この時点で図20の第5ブロック206−10の計算が完了する。
【0087】
質量計算の次の構成要素は膀胱筋壁の厚みの測定である。この厚みは膀胱壁の漿膜下と粘膜下組織の表面の間で正常な厚みであると定義される。
【0088】
壁の厚みは壁の厚みの領域のRF信号のフラクタル次元から計算される。フラクタル次元は膀胱筋を通る界面反射の多様性により増加する。膀胱筋壁を通るフラクタル次元の増加および減少は、放物線としてモデル化することができる。ここでフラクタル次元は膀胱壁の領域の深さの関数である。次に膀胱の厚みはフラクタル次元の最大値の少なくとも97%である放物線モデルの領域であると割り出される。その計算は以下の方程式E14に表すことができる。
【数10】

【0089】
壁の厚みは壁の厚みの領域のRF信号のフラクタル次元から計算される。フラクタル次元は膀胱筋を通る界面反射の多様性により増加する。膀胱筋壁を通るフラクタル次元の増加および減少は、放物線としてモデル化することができる。ここでフラクタル次元は膀胱壁の領域の深さの関数である。次に膀胱の厚みはフラクタル次元の最大値の少なくとも97%である放物線モデルの領域であると割り出される。その計算は以下の方程式E15に表すことができる。
【0090】
フラクタル次元の計算は図20の第4ブロック206−12に相当する。フラクタル次元は長さwのウィンドウを計算する。現在の実施形態においてwの値は走査線に沿った標本点の数の5であるが、その値は変えられる。フラクタル次元は、ある特定の深さrが中央位置となるウィンドウのRF信号の最大値と同じウィンドウの最小値との差から計算される。この差にウィンドウの長さwが加えられて結果は次にウィンドウの長さで標準化される。次にその結果の対数は走査線nの合計標本数とウィンドウの長さの割合の対数で割られる。走査線に沿った各深さのフラクタル次元の計算を方程式10に示す。このフラクタル次元の測定は走査線の中央のn−w標本を計算する。
【0091】
超音波信号に基づいてフラクタル次元の測定が計算された後、膀胱壁の厚みを計算することができる。次の計算は図19の第7ブロック206−16に相当する。
【0092】
膀胱筋壁の領域のRF信号のフラクタル次元fdは次に深さrの関数として放物線の方程式としてモデル化される。深さの単一点の方程式のモデルを方程式E15に示す。この方程式において、走査線rに沿った深さで放物線を定義する3つのパラメーター(a、b、c)と任意の要素εの加算がある。添字iは、r、fd、εの特定値を示す。
【数11】

【0093】
方程式E15の形式の方程式は壁の領域の深さの各点を得る。観測数は可変で超音波信号によって観測される膀胱壁の厚みに依存する。n組の観測と仮定して、添字iは1からnまでの観測を数える。方程式15の形式のn組の方程式は方程式16にある行列方程式にまとめることができる。
【数12】

【0094】
fd、ε、X行列の各行はn観測のうちの1つに相当する。方程式E16の放物線パラメーターはベクトルβに集められる。
【0095】
次のステップは放物線のパラメーターの値を方程式E15の形式のn組の方程式で、あるいは観測の組に基づいた行列方程式E16で推定することである。パラメーターの最小二乗推定が用いられ、この推定の計算を方程式E17に示す。E17において、t上付き文字は行列の転置を示し、-1上付き文字は行列の反転を示す。
【数13】

【0096】
フラクタル次元の最大値の位置は放物線モデルの一次導関数を0と設定して(方程式E19)、rを求めることによって割り出すことができる。フラクタル次元が最大の位置は方程式E20で得られる。
【数14】

【0097】
放物線のモデルで定義されるフラクタル次元の最大値を割り出すには、方程式20を方程式18に代入してfdmaxを求めるだけでよい。結果値は方程式E21に示される。
【数15】

【0098】
フラクタル次元が最大値の97%である位置を割り出すには、方程式E21に0.97を掛けて、その結果を方程式E18に代入して二次方程式の解の公式を使ってrを求める。フラクタル次元が最大値の97%である位置r97%を方程式E22で示す。
【数16】

【0099】
r97%の2つの値が方程式18から計算される。この2つの値の差によってある特定の走査線に沿った膀胱筋壁の厚みが識別される。走査線は膀胱筋の表面に垂直あるいは垂直でない可能性があり、膀胱壁の厚さは膀胱表面に垂直な線に沿って測定されなければならないので、測定値の集団は実際の膀胱壁の厚みを割り出すために集約される。
【0100】
測定値は膀胱筋壁の任意の表面で行うことができる。図22において、3本の走査線が変換器に最も近い前壁と変換器から最も遠い後壁の2つの位置で膀胱筋と交差しているのを示す。前壁と後壁の両方の厚みを割り出すために、前述の放物線のモデルを各位置で2回応用することができる。厚みの最大値、最小値および中間値は質量の計算およびデータの履歴追跡に使用される。図示の実施形態において、この最後の厚さ割り出しは図19の第7ブロック206−16で識別されたプロセスの完了を示す。
【0101】
図21は器官、ここでは膀胱の漿膜下および粘膜下組織の壁位置を通過する3本の走査線の略図である。3本の走査線362、364、366が膀胱を貫通している。破線の部分は、前方または前壁の位置370Aおよび後方または後壁の位置370Bで膀胱筋壁を通過する走査線の部分を表わす。第1走査線362、第2走査線364、第3走査線366は漿膜下の前壁の位置372Aと粘膜下組織の前壁の位置374Aを通って送信されるのを示す。同様に、第1走査線362、第2走査線364、第3走査線366は膀胱の内部領域375を横切っておよび粘膜下組織の後壁の位置374Bと漿膜下の後壁の位置372Bを通って送信されるのを示す。漿膜下組織の前部と後部の位置372Aおよび372Bは膀胱壁の外周を占有し、粘膜下組織の前部と後部の位置374Aおよび374Bは膀胱壁の内周を占有する。膀胱壁の厚み値376はそれぞれ走査線362−366に沿った漿膜下組織の壁の位置372Aと粘膜下組織の壁の位置374Aの間、あるいは漿膜下組織の壁の位置372Bと粘膜下組織の壁の位置374Bの間のそれぞれの差を得る。厚みの最大値、最小値および中間値は膀胱壁の質量計算およびデータの履歴追跡に使用される。好ましい実施形態において、膀胱は均等な壁の厚みを持つと仮定されるので、壁の厚みの平均値は走査データから導き出されて内壁容積375の割り出しに使用される。1つの面に3本の走査線のみが示され、それぞれお互いに7.5度ずつ離れている。面の走査線数と面内で各走査線を分離する角度は変更できる。
【0102】
膀胱壁の厚さおよび内表面積と外表面積が測定されると、膀胱の内部領域375の容積は、膀胱領域375を貫通する各走査線に沿った粘膜下組織の前部と後部の位置374Aと374Bの間のそれぞれの差を割り出すことで計算することができる。粘膜下組織の前壁と後壁の位置374Aと374Bの間の差は粘膜下組織の間の距離を定義する。次に膀胱領域375の内部容積は、貫通する走査線の粘膜下組織の間の距離の関数および漿膜下組織の境界あるいは膀胱の内周の面積として計算される。内部領域375の容積は表面積に粘膜下組織の間の距離の関数を掛けたものであると仮定され、その仮定はさらに膀胱の内周のまわりのすべての点で漿膜下組織の壁境界が均等であることに基づいたものである。図示の実施形態において、この容積計算は図19の第8ブロック206−20に相当する。
【0103】
ダウンロードしたデジタル信号経由で壁の厚みのデータ、質量のデータおよび内部領域375の容積を取得する方法は、インターネットのウェブ基盤のシステム経由の遠隔操作用のマイクロプロセッサシステムによって設定することができる。インターネットのウェブ基盤のシステム「System For Remote Evaluation Of Ultrasound Information Obtained By A Program Application-Specific Data Collection Device(プログラムアプリケーション固有データ収集装置によって取得された超音波情報の遠隔評価システム)」は特許出願通し番号09/620,766号に説明され、引用によって本明細書に取り込まれる。インターネットのウェブ基盤のシステムは器官の厚みと器官の質量の割り出しを収集、分析、格納する複数のプログラムを持つ。代替実施形態はこのように器官が時間と共に肥大する速度を測定する能力を提供し、病気の追跡、病気の経過把握ができ患者に有益な指示を提供する。
【0104】
要約すると、前述の方法は新規な方法で現在のアルゴリズムを補い、異なる体液および/または組織を容積と組成で識別することを有利に可能にする。特に、エコー輝度の低い異なる領域を適切に識別することができる。この機能は胎児の腕や脚等の陰影の領域を頭の領域から有利に識別することを可能にする。大動脈瘤検出の診断法において、前述の実施形態は腸ガスに起因する陰影の領域をエコー輝度の低い他の領域から区別するために使用することができる。胆嚢を画像化する走査において、前述の実施形態は胆汁あるいは他の体液が超音波走査装置の視野内に入っているかどうかを割り出すために使用することができる。
【0105】
本発明の好ましい実施形態および別の実施形態が上記のように図示され説明されたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく数多くの変更を実施することができる。したがって、本発明の範囲は好ましい実施形態および別の実施形態の開示に限定されるものではない。むしろ本発明は次の請求項の参照によって完全に判断されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波検査の方法において、
生体の組織、流体あるいは腔の標本のデータベースを作成し、
超音波パルスを患者の関心領域に送信し、
前記関心領域からエコーを受信して、前記受信したエコーに基づいて、前記関心領域の超音波パターンを集計し、
前記関心領域のパターンを前記データベースと比較することで前記パターンを処理し、
前記患者の関心領域内の組成を割り出す、ことから成る方法。
【請求項2】
超音波パルスを前記関心領域に送信することは、組織、流体、腔の少なくとも1つに前記パルスを送信することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パルスの送信はさらに尿、血液、羊水、肺流体、肝胆汁、およびその混合物の少なくとも1つに前記パルスを送信することから成る請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パターンの処理はゴールドバーグ数値、高調波比および減衰率の少なくとも1つの計算を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パターンの処理はさらに前記関心領域内の腔境界面の近傍でウィンドウアルゴリズムをエコーパルスの一部分に応用することを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ウィンドウアルゴリズムの応用はさらに前記腔境界面の近傍で前記エコーパルスの前記一部分に関連した高調波周波数を割り出すことを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
エコーの受信はさらに1次元の線、2次元の面および2次元の面の3次元の配列のうちの少なくとも1つを受信することから成る請求項1に記載の方法。
【請求項8】
超音波検査の方法において、
生体の組織、流体および腔の標本のデータベースを作成し、
前記生体の関心領域に超音波パルスを送信し、
前記関心領域からエコーを受信し、前記エコーに基づいて、前記関心領域の超音波パターンを集計し、
前記関心領域のパターンを前記データベースと比較することで前記パターンを処理し、
前記生体の前記関心領域内の容積を割り出す、ことから成る方法。
【請求項9】
前記関心領域に超音波パルスを送信することは組織、流体、および腔の少なくとも1つに前記パルスを送信することを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パルスの送信はさらに尿、血液、羊水、肺流体、肝胆汁およびその混合物の少なくとも1つに前記パルスを送信することから成る請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パターンの処理はゴールドバーグ数値、高調波比および減衰率の少なくとも1つの計算を含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記パターンの処理はさらに前記関心領域内の腔境界面の近傍でウィンドウアルゴリズムをエコーパルスの一部分に応用することを含む請求項8に記載の方法。
【請求項13】
ウィンドウアルゴリズムの応用はさらに前記腔境界面の近傍で前記エコーパルスの前記一部分に関連した1つかそれ以上の高調波周波数を割り出すことから成る請求項12に記載の方法。
【請求項14】
エコーの受信はさらに1次元の線、2次元の面および2次元の面の3次元配列の少なくとも1つを受信することから成る請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記関心領域内の前記容積を割り出すことは少なくとも1つの腔の容積を割り出すことを含む請求項8に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの腔の容積を割り出すことはさらに膀胱と子宮の少なくとも1つの容積を割り出すことから成る請求項15に記載の方法。
【請求項17】
膀胱と子宮の少なくとも1つの容積を割り出すことはさらに流体が前記膀胱から排尿した後に前記膀胱の容積を割り出すことから成る請求項16に記載の方法。
【請求項18】
超音波検査のシステムにおいて、
患者の組織、流体あるいは腔の標本の既知の公式化を持つモデルと、
前記既知の公式化を持つモデルに超音波パルスを送信するように設定されさらに前記患者の関心領域に前記パルスを送信するように設定され、前記モデルと前記関心領域から返ってくる前記超音波パルスのエコーを受信する超音波装置とから成り、前記装置はさらに前記関心領域内および前記モデル内の超音波パターンを割り出すための前記エコーの処理が操作可能であるプロセッサーから成り、
前記関心領域の特性は前記関心領域の前記超音波パターンを前記モデルの前記超音波パターンと比較することにより割り出される超音波検査のシステム。
【請求項19】
前記関心領域は少なくとも1つの組織、流体および少なくとも1つの腔を含む請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記モデルはさらに尿、血液、羊水、肺流体、肝胆汁およびその混合物を含む請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
特性はさらに前記関心領域内の少なくとも1つの腔の容積を割り出すことを含む請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
少なくとも1つの腔は膀胱と子宮の少なくとも1つを含む請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記膀胱の前記容積は流体が前記膀胱から排尿後に割り出される請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記超音波パターンはゴールドバーグ数値、高調波比および減衰率の少なくとも1つの計算結果から成る請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
前記関心領域の前記パターンはさらに腔境界面の近傍の少なくとも1つのエコーパルスの一部分にウィンドウアルゴリズムを応用することによって割り出される請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記ウィンドウアルゴリズムはさらに前記腔境界面の近傍の前記エコーパルスの前記一部分に関連した高調波周波数を割り出すことから成る請求項25に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−101103(P2012−101103A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−288561(P2011−288561)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2007−530257(P2007−530257)の分割
【原出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(503129763)ベラソン インコーポレイテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】Verathon Inc.
【Fターム(参考)】