説明

超音波画像装置

【課題】アーチファクトを確実に除去することが可能な超音波画像装置を提供すること。
【解決手段】撮像対象物と超音波信号の送受信を行うことにより撮像対象物の画像を撮像する超音波画像装置において、超音波信号の進行方向である距離分解能方向、及び進行方向に直交する方位分解能方向上における位置を決定し、決定した位置に送受信端を移動させて撮像対象物と超音波信号の送受信を行い、位置の決定と超音波信号の送受信とを繰り返して、決定した位置ごとに撮像対象物の画像を生成する画像生成部と、画像生成部により生成された複数の画像を重ね合わせる重ね合わせ部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波画像装置としては、超音波ビームの照射位置を移動させながら撮像対象物を撮像する技術が知られており、また、特許文献1(特開2006−334168号公報)には、超音波ビームの分解能として距離分解能及び方位分解能があることが記載されている。また、特許文献2(特開2005−049303号公報)には、超音波アレイセンサの角度分解能を適宜変更する技術が記載されており、特許文献3(特開2007−222264号公報)には、複数方向の二次微分フィルタを使用する超音波診断装置が開示されており、診断対象物に4方向以上から超音波を照射する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−334168号公報
【特許文献2】特開2005−049303号公報
【特許文献3】特開2007−222264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、超音波画像装置において、方位分解能方向に超音波ビームを移動させてフィルタリングを行い、その後超音波ビームを元の位置に戻すときに模擬二次元画像データを取得する技術が開発されている。この模擬二次元画像データを用いることにより、従来の画像データに比してスライス面とスライス面との境界の数を擬似的に低減させ、スライス面とスライス面の境界及びその近傍におけるエッジ強調を低減させることを可能としている。しかしながら、このような方法を用いた場合でも、画像上の信号の歪みであるアーチファクトが未だ残存しているため、更に画質を向上させる余地があるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、アーチファクトを確実に除去することが可能な超音波画像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る超音波画像装置は、撮像対象物と超音波信号の送受信を行うことにより撮像対象物の画像を撮像する超音波画像装置において、超音波信号の進行方向である距離分解能方向、及び進行方向に直交する方位分解能方向上における位置を決定し、決定した位置に送受信端を移動させて撮像対象物と超音波信号の送受信を行い、位置の決定と超音波信号の送受信とを繰り返して、決定した位置ごとに撮像対象物の画像を生成する画像生成部と、画像生成部により生成された複数の画像を重ね合わせる重ね合わせ部と、を備える。
【0007】
この発明によれば、距離分解能方向及び方位分解能方向に送受信端を移動させながら画像を生成し、生成した複数の画像を重ね合わせる。よって、この重ね合わせの段階で各画像における不自然な陰影等が消去されることになる。従って、画像上の信号の歪みであるアーチファクトを確実に消去することができる。
【0008】
また、本発明に係る超音波画像装置において、撮像対象物から受信した超音波信号に対してフィルタリング処理を行う8近傍鮮鋭化フィルタを備えることが好ましい。この場合、8近傍鮮鋭化フィルタによる超音波信号のフィルタリング処理により、各方向ごとに得られた画像のアーチファクトを相対的により目立たないようにすることが可能となる。従って、画像の重ね合わせにおいて、アーチファクトをより一層確実に消去することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アーチファクトを確実に除去することが可能となる。
の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波画像装置の概略構成図である。
【図2】図1の超音波画像装置のプローブと撮像対象物の位置関係を示す図である。
【図3】図1の超音波画像装置の画像生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、同一要素又は同一相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。図1は、本発明の実施形態に係る超音波画像装置の概略構成図である。
【0012】
本実施形態に係る超音波画像装置は、例えば車両に搭載され、物体の画像の生成等を行う際に用いることが可能となっている。超音波画像装置1は、撮像対象物T(図2参照)と超音波信号の送受信を行うことにより撮像対象物Tの画像を撮像する装置である。超音波画像装置1は、図1に示すように、超音波画像装置1の画像生成処理を行うと共に超音波画像装置1を統括制御する制御装置2と、撮像対象物Tとの超音波信号の送受信を行うプローブ3と、制御装置2により生成された画像を表示するモニタ4と、を備える。
【0013】
プローブ3は、超音波画像装置1の超音波信号の送受信端としての機能を有する。プローブ3は、制御装置2と電気的に接続されている。プローブ3は、図2に示すように、筐体31と、超音波振動子32と、送受信素子共用型センサ層33と、を備える。
【0014】
筐体31は、例えば略円柱状に形成され、その端部に送受信素子共用型センサ層33を有する。また、筐体31における送受信素子共用型センサ層33の内側に超音波振動子32が設けられる。超音波振動子32は、いわゆるセンサアクチュエータであり、送受信素子共用型センサ層33を介して外部に放出するための超音波信号を生成する。超音波振動子32により生成された超音波信号は、制御装置2の後述する送受信部21により、その波長や強度等が調整されるようになっている。送受信素子共用型センサ層33は、直接撮像対象物Tとの超音波信号の送受信を行う。
【0015】
制御装置2は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットである。制御装置2では、例えばROMに記憶されているアプリケーションをRAMにロードしてCPUで実行する。制御装置2は、図1に示すように、送受信部21、ランダマイズ部22、フォーカス部23、画像生成部24、重ね合わせ部25及びフィルタ部26を有し、これらの送受信部21、ランダマイズ部22、フォーカス部23、画像生成部24、重ね合わせ部25及びフィルタ部26は、上記のアプリケーションに相当する。
【0016】
送受信部21は、プローブ3を制御して、図2に示すように、プローブ3から照射される超音波信号の進行方向である距離分解能方向Q、及び超音波信号の進行方向に直交する方向である方位分解能方向Pにプローブ3を移動させる。そして、送受信部21は、プローブ3に超音波信号の送受信を行わせる。このようにして送受信部21は、プローブ3を介して、撮像対象物Tと超音波信号の送受信を行う。
【0017】
ランダマイズ部22は、方位分解能方向P及び距離分解能方向Q上における、プローブ3を移動させる位置を決定する処理を行う。この処理を以降、超音波ビームのランダマイズとも称する。ランダマイズ部22は、図2に示すように、例えば方位分解能方向Pにおける位置P1,P2,P3,P4,P5、及び距離分解能方向Qにおける位置Q1,Q2,Q3,Q4,Q5を決定する。フォーカス部23は、超音波信号の焦点を撮像対象物Tに合わせる処理を行う。
【0018】
画像生成部24は、受信した超音波信号から撮像対象物Tの画像を生成する。具体的には、ランダマイズ部22がプローブ3を移動させる位置を決定し、送受信部21がプローブ3を移動させて撮像対象物Tとの超音波信号の送受信を行うことにより、例えば位置P1,P2,P3,P4,P5及び位置Q1,Q2,Q3,Q4,Q5ごとに、撮像対象物Tの画像を生成する。
【0019】
重ね合わせ部25は、画像生成部24により生成された、例えば位置P1,P2,P3,P4,P5及び位置Q1,Q2,Q3,Q4,Q5ごとの画像を重ね合わせて、画像処理を行い、新たな撮像対象物Tの画像を生成する。
【0020】
フィルタ部26は、いわゆる8近傍鮮鋭化フィルタであり、送受信部21により撮像対象物Tから得られた超音波信号に対してフィルタリング処理を行う機能を有する。フィルタ部26は、当該フィルタリング処理により、濃度値の変化を強調(その部分を微分)することで鮮明な画像を得られる鮮鋭化処理(マンシャープマスキング処理とも称される)を行う。
【0021】
モニタ4は、制御装置2と電気的に接続されており、重ね合わせ部25により生成された撮像対象物Tの画像を表示する装置である。
【0022】
次に、図3を参照して、超音波画像装置1の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る制御装置2の処理の流れを示すフローチャートである。この一連の処理を行うことにより、撮像対象物Tの画像が撮像される。まず、ステップS10(以下、「S10」という。他のステップにおいても同様とする。)にて、制御装置2のプログラムの内部変数Kに「0」が格納される。
【0023】
そして、S12において、ランダマイズ部22により、例えば位置P1,P2,P3,P4,P5を決定するというように、方位分解能方向Pの超音波ビームのランダマイズが行われる。その後S14において、フォーカス部23により焦点を撮像対象物Tに合わせる処理が行われる。
【0024】
そして、S16において、制御装置2のプログラムの内部変数Nに「0」が格納され、その後S18において、ランダマイズ部22により、例えば位置Q1,Q2,Q3,Q4,Q5を決定するというように、距離分解能方向Qの超音波ビームのランダマイズが行われる。そして、S20において、フォーカス部23により再度焦点を撮像対象物Tに合わせる処理が行われ、S22において、フィルタ部26によるフィルタリング処理を経て画像生成部24により撮像対象物Tの画像A00が生成される。
【0025】
その後、S24において内部変数Nが1インクリメントされ、S26において内部変数Nが3未満であるか否かが判定される。そこで、3未満である場合、再度S18及びS20の処理を経て、S22において撮像対象物Tの画像A01が生成され、更に、同様の処理を経て撮像対象物Tの画像A02が生成される。そして、S26において内部変数Nが3以上である場合、S28へ移行して内部変数Kが1インクリメントされ、S30において内部変数Kが3未満であるか否かが判断される。このとき、内部変数Kが3未満である場合には、再度S12へ戻り、上記同様の処理を経て、画像生成部24により撮像対象物Tの画像A10,A11,A12,A20,A21,A22が生成される。こうして、9枚の画像A00,A01,A02,A10,A11,A12,A20,A21,A22が生成され、S30においてKが3未満でないと判定された後に、重ね合わせ部25により、これらの画像A00,A01,A02,A10,A11,A12,A20,A21,A22の重ね合わせ処理が行われる。そして、モニタ4に重ね合わせ部25により重ね合わされた撮像対象物Tの画像が表示される。
【0026】
以上のように、本実施形態では、プローブ3を移動させながら撮像対象物Tの画像を生成し、生成した複数の画像を重ね合わせる。よって、重ね合わせ部25による重ね合わせの段階で各画像A00,A01,A02,A10,A11,A12,A20,A21,A22における不自然な陰影等が消去されるため、アーチファクトを確実に消去することができる。
【0027】
また、本実施形態では、フィルタ部26は、送受信部21が撮像対象物Tから受信する超音波信号をフィルタリング処理する8近傍鮮鋭化フィルタである。よって、位置ごとに得られた画像のアーチファクトを相対的に目立たないようにすることが可能となり、画像の重ね合わせにおいて、アーチファクトをより一層確実に消去することができる。
【0028】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、様々な変形が可能である。すなわち、制御装置2の内部構造は適宜変更可能であり、例えばランダマイズ部22による位置P1,P2,P3,P4,P5及び位置Q1,Q2,Q3,Q4,Q5の決定を、画像生成部24に実行させるようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、ランダマイズ部22が方位分解能方向Pごと、そして、距離分解能方向Qごとに、5点の位置を決定し、画像生成部24が9枚の画像A00,A01,A02,A10,A11,A12,A20,A21,A22を生成する例を示したが、決定する位置の数や、生成する画像の数は適宜変更可能である。
【0030】
また、上記実施形態では、図3に示すように、方位分解能方向Pのランダマイズを行った後に、距離分解能方向Qのランダマイズを行う例を説明したが、ランダマイズの順序を逆にしてもよく、更には、図3に示す各処理の順序を適宜変更することも可能である。
【0031】
また、プローブについては、上記実施形態のように、筐体31、超音波振動子32及び送受信素子共用型センサ層33を備える略円柱状のプローブ3に限定されることはなく、適宜形状や構造を変更したプローブを用いてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、超音波画像装置1が車両に搭載され、物体の画像の生成等を行うものである例について説明したが、本発明に係る超音波画像装置としては、車両に搭載されるものに限定されることはなく、例えば、医療用の超音波画像装置である等、様々な分野に対して応用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…超音波画像装置、21…送受信部、24…画像生成部、25…重ね合わせ部、26…フィルタ部(8近傍鮮鋭化フィルタ)、A00,A01,A02,A10,A11,A12,A20,A21,A22…画像、P…方位分解能方向、Q…距離分解能方向、T…撮像対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象物と超音波信号の送受信を行うことにより前記撮像対象物の画像を撮像する超音波画像装置において、
前記超音波信号の進行方向である距離分解能方向、及び前記進行方向に直交する方位分解能方向上における位置を決定し、前記決定した位置に送受信端を移動させて撮像対象物と超音波信号の送受信を行い、前記位置の決定と前記超音波信号の送受信とを繰り返して、前記決定した位置ごとに前記撮像対象物の画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された複数の画像を重ね合わせる重ね合わせ部と、
を備える超音波画像装置。
【請求項2】
前記撮像対象物から受信した超音波信号に対してフィルタリング処理を行う8近傍鮮鋭化フィルタを備える、
請求項1記載の超音波画像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−106626(P2013−106626A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251412(P2011−251412)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】