超音波画像診断システム、及びその制御方法
【課題】 術者の技量に依存し難い、超音波画像診断システムを提供する。
【解決手段】 前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測手段(座標演算部34)と、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出手段(2035)とを備え、且つ前記制御量算出手段により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御機構、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示手段の少なくとも一方を有する。
【解決手段】 前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測手段(座標演算部34)と、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出手段(2035)とを備え、且つ前記制御量算出手段により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御機構、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示手段の少なくとも一方を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像診断システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像診断装置(エコー)は、被検体に超音波を照射し、被検体の内部で反射した超音波をプローブ(探触子)で受信し、受信データから画像情報を得る診断装置である。超音波は人体に対して照射しても特に副作用がなく、安全であるため、医療現場では様々な疾病の診断に広く用いられている。
特許文献1に開示された超音波医療システムは、放射線治療を行うための放射線照射システムに、超音波画像診断装置を組み合わせた医療システムである。そして、超音波画像診断装置で治療対象の腫瘍の位置を提供するにあたり、放射線照射装置を原点とした位置情報として提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−499号公報
【特許文献2】特公平01−25576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波診断装置は、超音波プローブを人体に押し当てるだけで画像情報を得ることができるという面では、簡便な診断装置である。超音波診断装置を扱う医者は、超音波プローブを患者の体に押し当て、適宜移動させながら画像を得る。しかし、体内には多くの臓器があるので、診断対象の臓器の画像情報を適切に得るためには、超音波プローブの動かし方にある程度の熟練が必要であった。
【0005】
特許文献2には、「超音波探触子のスキヤナ」が記載されている。そして、超音波探触子の先端の位置・姿勢・圧力を計測し、それらを一定に保つようにして超音波探触子を移動制御する。
【0006】
このようにすることで、操作技術であるスキャンテクニックに関してユーザの技量を補う方法が開示されている。
【0007】
しかし、上記方法では人体表面に対する探触子の状態を適切に保つことは出来るが、検査を行いたい被検体内の部位に対して超音波探触子を適切な状態にするには、依然として操作者の技量や知識を必要としていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記課題に鑑み、診断したい被検体の組織の画像情報をより適切に得ることを可能にする超音波診断システム、及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、その1つの様態として、
超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムであって、
前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出手段とを備え、且つ
前記制御量算出手段により算出された制御量を用いて、
前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御機構、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示手段の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、別の様態として、
超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムの制御方法であって、
前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測工程と、
前記計測工程の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出工程とを備え、且つ
前記制御量算出工程により算出された制御量を用いて、
前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御工程、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示工程の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超音波画像診断における超音波プローブの適切な位置・姿勢を算出できる構成にしたので、装置を扱う術者に依存し難いシステムの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る超音波画像診断システムを利用した診断方法を示した図である。
【図2】本発明に係る超音波画像診断システムの構成図である。
【図3】本発明におけるプローブ位置・姿勢制御装置の外観図である。
【図4】本発明に係る超音波画像診断システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明における対象形状データベースが記憶する情報を示す図である。
【図6】本発明におけるワークフローデータベースが記憶する情報を示す図である。
【図7】本発明における部位検出部の処理を示す図である。
【図8】本発明における超音波プローブと超音波画像の関係を示す図である。
【図9】本発明における超音波画像と対象形状データベースの情報との関係を示す図である。
【図10】本発明における座標演算部の処理を示す図である。
【図11】本発明に係る超音波画像診断システムの構成図である。
【図12】本発明における誘導情報の提示例を示す図である。
【図13】本発明に係る超音波画像診断システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波画像診断装置及びその制御方法の好ましい実施の形態について詳説する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0014】
(第1の実施形態;超音波画像診断システム)
本実施形態に係る超音波画像診断システムは、超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムである。
【0015】
そして、以下の構成要素を含む。
【0016】
具体的には、前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測手段(後述の実施例では座標演算部と称する場合がある。)を有する。
【0017】
更に、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出手段とを備える。
【0018】
そして、前記制御量算出手段により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御機構、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示手段の少なくとも一方を有する。
【0019】
ここで、前記計測手段は、該被検体の特定部位を検出する部位検出部の検出結果に基づいて、前記相対位置と相対姿勢を計測することが好適である。そして、この部位検出部は、前記被検体の部位の形状に関する情報と、前記画像情報との対応づけにより部位の検出を行うことが好ましい。
【0020】
また、前記システムには、前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢を予め記録したデータベースを有し、そして、前記制御量算出手段が、前記データベースの情報を用いて前記制御量を算出することが好適である。
【0021】
ここで、前記データベースに記録されている前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢の情報は、超音波画像診断を行うための好適なプローブ状態(位置や姿勢など)を記録した情報であるのがよい。
【0022】
前記超音波プローブは、該超音波プローブと前記被検体との間の圧力を計測する圧力計測手段を持つことが好ましい。斯かる場合、前記データベースには、前記超音波プローブと前記被検体との間の圧力に関する情報が記録されていることが好ましい。
【0023】
(第2の実施形態:制御方法)
本実施形態に係る制御方法は、超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムの制御方法である。具体的には、以下の工程を有することを特徴とする。
【0024】
a)前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測工程
b)前記計測工程の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出工程
更に、以下のc)かd)の少なくとも一方の工程を有する。
【0025】
c)前記制御量算出工程により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御工程
d)前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示工程
さらに、前記被検体の特定部位を検出する部位検出工程を有し、前記計測工程を、前記部位検出工程の検出結果を用いて、前記相対位置と相対姿勢を計測することも好ましい形態である。
【0026】
前記部位検出工程は、前記被検体の形状に関する情報を予め持ち、前記画像処理部により変換された画像との対応づけにより、該部位の検出を行うことができる。
【0027】
前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢を予め記録したデータベースを有し、前記制御量算出工程は、前記データベースの情報を用いて前記制御量を算出することができる。
【0028】
前記データベースに記録され前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢の情報は、超音波画像診断を行うための前記超音波プローブ状態を記録した情報とすることができる。
【0029】
なお、前記超音波プローブには、圧力センサを設け、該超音波プローブと前記被検体との間の圧力を計測する圧力計測工程を更に前記制御方法における工程に付加することもできる。斯かる場合、前記データベースには、前記超音波プローブと前記被検体との間の圧力に関する情報を記録しておくのがよい。
【0030】
また、本発明は、前述した制御方法を実現するためのプログラムや、当該制御方法を実現するためのプログラムを記録した記録媒体を含む。
【0031】
以下、上記実施形態に係る発明を実施例を用いて具体的に説明する。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
A:全体構成
図1は本発明の実施形態の一つである超音波画像診断システムの概略を示した図である。本実施例の超音波画像診断システムは超音波プローブ1001と、超音波画像診断装置1002と、ホストコントローラ10003と、プローブ位置・姿勢制御装置10004により構成される。超音波プローブ1001は、人体などの被検体1005に接触するようにして使用される。また超音波プローブ1001はプローブ位置・姿勢制御装置1004により保持されている。これらの装置は相互に接続され、その接続を介して制御信号などをやり取りして動作する。なお、プローブ位置・姿勢制御装置1004は、超音波プローブ1001の動作を自動化する場合に必要なものであり、上記した本発明に必須の要件ではない。後述する実施例では、このプローブ位置・姿勢制御装置を使用しない場合の構成について示している。勿論、超音波画像診断装置1002とホストコントローラ1003とを図1では別体のものとして記載しているが、他方が一方に組み込まれている構成も勿論可能である。
【0033】
次に図2を用いて、本実施例の超音波画像診断システムの機能構成について説明する。
【0034】
B:超音波プローブ
超音波プローブ2001は、超音波パルスを被検体1005に送信すると共に、被検体側から反射してきた反射信号を受信する複数の送受波素子2011(超音波振動子)によって構成される。
【0035】
送受波素子2011は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinyl difluoride)等の高分子圧電素子を含む圧電素子によって構成することができる。この場合、時間的に変動する電気信号を圧電素子により機械的な振動に変換することで超音波パルスを発生することができる。
【0036】
超音波プローブ2001は、複数の送受波素子2011を1次元アレイ状に配置して構成することができる。この場合、超音波プローブ2001は空間内に2次元的な走査面を形成することができ、被検体の断面画像を撮影することができる。また、超音波プローブ2001は、複数の送受波素子2011を2次元アレイ状に配置して構成することができる。この場合、超音波プローブ2001は空間内を3次元的に電子的に走査することで、被検体の3次元ボクセルデータを撮影することができる。
【0037】
C:超音波画像診断装置
超音波画像診断装置2002は、送信用ビームフォーマ2021、受信用ビームフォーマ2022、信号処理部2023、受信メモリ2024、画像形成部2025、画像表示部2026によって構成される。
【0038】
送信用ビームフォーマ2021は、超音波プローブ2001の複数の送受波素子2011へ供給する送信駆動信号を制御することで、超音波プローブ2001を介して送信する為の超音波を形成する。
【0039】
受信用ビームフォーマ2022は、送受波素子2011が出力する受波データを収集し、エコーデータを形成している。
【0040】
信号処理部2023は受信用ビームフォーマ2022により形成されたエコーデータをもとに輝度データ、血流速データ、変位データ等を生成する。
【0041】
信号処理部2023により形成された輝度データ、血流速データ、変位データ等は受信メモリ2024に書き込まれる。書き込まれたデータはホストコントローラ2003へ出力される。また受信メモリデータ2024に書き込まれたデータは、超音波画像診断装置2002内の画像形成部2025にも出力され、画像形成部2025にて超音波画像が形成され、画像表示部2026において超音波画像などが表示される。
【0042】
D:ホストコントローラ
ホストコントローラ2003は、対象形状データベース2031、部位検出部2032、ワークフローデータベース2033、座標演算部(計測手段)34、制御量算出部2035により構成される。ただし、ホストコントローラ2003の構成要素は、その全てが、あるいはその一部が、超音波画像診断装置2002に組み込まれていてもよい。
【0043】
対象形状データベース31は、検査対象に関する形状情報などの情報を記憶する手段である。対象形状データベースに記憶させる情報は、例えば人体アトラスと称される標準的な人体内部構造のデータを用いることができる。
【0044】
部位検出部2032は、対象形状データベース31に記憶された情報を参照し、超音波画像診断装置2002から入力される超音波撮影画像の中から検査対象となる部位を検出する。検出の方法には様々なものが考えられるが、その一例としてテンプレートマッチングや輪郭形状マッチングなどの検出方法がある。具体的な処理内容は後述する処理手順の中で説明する。
【0045】
ワークフローデータベース33は、超音波画像診断における超音波プローブ操作に関する情報を記憶する手段である。ワークフローデータベースに記憶させる情報は、例えば検査対象の部位毎に、その部位を超音波撮影するときに適切な部位と超音波プローブの相対的な位置・姿勢の関係の情報を持つデータとすることができる。
【0046】
座標演算部34は、検査対象部位と超音波プローブ2001との相対的な位置・姿勢の関係を、部位検出部2032の検出結果に基づいて求める。この演算は、次のようにして行える。例えば、超音波プローブ2001を基準とした空間座標と超音波プローブにより撮影された超音波画像の画像座標との関係を、あらかじめ求めておく。このように予め前記関係を求めておくことにより、部位検出部2011において、検出された検査対象部位の超音波画像中における画像座標から求めることができる。
【0047】
制御量算出部2035は、超音波プローブ2001の位置・姿勢に関する制御量を算出する。具体的には、ワークフローデータベース33に記憶された超音波プローブ操作に関する情報と、座標演算部34により演算された超音波プローブ2001と検査対象部位との相対的な位置・姿勢の関係を利用する。
【0048】
E:プローブ位置・姿勢制御装置
プローブ位置・姿勢制御装置2004は、超音波プローブ2001を移動・回転可能な機構で保持し、ホストコントローラ2003からの入力に従って超音波プローブ2001を移動・回転させる動作を行う。プローブ位置・姿勢制御装置2004は、この動作を実現するために、例えば図3に示すようにベースフレーム3041、プローブ保持部3042、および、複数のアクチュエータ3043を用いて構成することができる。この場合、複数のアクチュエータ3043はホストコントローラ2003からの入力に従って駆動する。そして、ベースフレーム3041およびプローブ保持部3042間の相対的な位置・姿勢の関係を変更することより、結果的にプローブ保持部42に保持される超音波プローブ2001の位置・姿勢を制御する。勿論、プローブ位置・姿勢制御装置2004には、プローブの位置と姿勢の両方を制御する装置は勿論、どちらか一方の制御を行う装置も当然に含まれる。
【0049】
図3ではベースフレーム3041のx−y平面において、各軸方向の移動、およびそれぞれの軸に対する回転の合計4自由度の動作を行える機構を例として示しているが、これ以外にもx−yと垂直な方向のz軸に対する移動や回転もできる機構にしても良い。この場合は合計6自由度の動作を行える機構となる。また、例として示した4自由度、6自由度以外にも任意の自由度を持つ機構で構成したものも本発明の実施形態となりうる。
【0050】
F:処理フローの説明
次に、図4と図2とを参照して本実施の形態の超音波画像診断装置2002により実行される具体的な処理の手順を説明する。
【0051】
f1:検査内容の設定(ステップS100)
まずステップS100として、ユーザにより検査の内容の設定が行われる。例えばホストコントローラ2003に設けられた不図示の操作パネル上に複数のボタンなどを配置し、そのボタンに対して検査項目を割り当てておくこと。そして、そのボタンが押されることにより、対応する検査内容を設定することができる。これ以外にも、例えば超音波画像診断装置2002の画像表示部2026に、検査項目の一覧リストを表示し、不図示の操作パネルの操作によりユーザに検査項目の選択を行うようにしてもよい。
【0052】
f2:対象形状情報(形状DB)の読込み(ステップS101)
次に、ステップS100で設定された検査項目と対応する検査対象部位の形状に関する情報を対象形状データベース31から部位検出部2032に読み込む。このとき、対象形状データベース31に年齢、性別、身長、体重などの属性によって異なる多様な形状情報を予め記録し、検査を行う被検体に関するそれらの属性も設定することで、より被検体に適合した形状情報を読み込むことができる。
【0053】
本実施例では、検査項目として“頚動脈の動脈硬化に関する検査”が設定されている場合を例として説明する。このとき読み込まれる検査対象部位の形状に関する情報の例を図5に示す。この図において、検査対象部位311は、ステップS100で設定された検査内容に対応する検査対象部位の形状を示している。ここでは検査対象部位311が2次元の画像情報を持つ場合を例として説明したが、本発明の実施はこれに限定されず、例えば3次元ボクセルデータなどでも良い。また基準点312は、検査対象部位に付される位置・姿勢の基準情報であり、次ステップ以降で参照される。部位検出部2032は対象形状データベース31に記録された上述の情報を読み込むときに、対象形状データベース31の情報をそのままの形式で読み込むこともできるし、部位の輪郭面、輪郭線などの抽出処理を行ってから読み込むこともできる。また、最初から検査対象部位の輪郭面または輪郭線の情報を形状情報データベースに記憶させるようにすることもできる。
【0054】
f3:ワークフローデータベースの読込み(ステップS102)
次に、ステップS100で設定された検査項目に対応するプローブ位置・姿勢の目標値をワークフローデータベース33から読み込む。このとき読み込まれる目標値の例を図6に示す。ここではプローブ位置・姿勢の目標値として、検査対象部位の基準点からの相対位置の範囲および相対角度の範囲をワークフローデータベースが記憶している場合を例としている。
【0055】
この図において、検査対象部位331はステップS100で設定された検査対象となる部位を示している。基準点332はプローブ位置・姿勢の目標値の基点となる位置を示している。また基準点332は図中の矢印で示すように、基準とする方向に関する情報も有している。プローブ目標位置・目標姿勢333は、超音波撮影の際に超音波プローブ2001が取るべき位置状態および姿勢状態を示している。これらの状態は全て基準点332を基準とした数値情報として読み込まれる。
【0056】
f4:画像入力(ステップS103)
次に、超音波画像を撮影し、その画像を入力する。超音波画像の撮影のために超音波画像診断装置2002の送信用ビームフォーマ2021は超音波プローブ2001の送受波素子2011を駆動させるための電気信号を形成して送信する。
【0057】
そして、被検体の内部で反射して返ってきた超音波を超音波プローブ2001の送受波素子11で受信し、その信号が超音波画像診断装置2002の受信用ビームフォーマ2022に入力される。受信用ビームフォーマ2022は受信信号に対して重ね合わせなどの処理を行い、受信メモリ2024に入力される。受信メモリ2024に入力されたデータは画像形成部2025を経て画像表示部2026に表示されるとともに、ホストコントローラ2003の部位検出部2032に入力される。
【0058】
f5:部位検出(ステップS104)
次に、部位検出部2032は、超音波画像診断装置2002から入力された超音波画像の中から、対象形状データベース31から読み込んだ検査対象となる部位を検出する。
【0059】
検査対象部位の検出の方法は様々なものがあるが、ここでは例として超音波画像および部位形状データベース31の情報それぞれに対し、撮影対象物体の輪郭抽出を行い、その輪郭同士のマッチングに基づいて検出する方法について図7を用いて説明する。
【0060】
この図において、(A)は入力された超音波画像7001である。この画像に対して輪郭抽出処理を行うことで(B)のような輪郭情報7002を得る。また(C)の画像7003は対象形状データベース31の情報であり、これに対して輪郭抽出を行うことで(D)のような輪郭情報7004を得る。
【0061】
ここで(B)の輪郭情報7002に対して(D)の輪郭情報7004を重ね合わせ、その両者の重なり合いが最大となるように、(D)の移動量・回転量を探索する(勿論、画像(B)の移動量・回転量を探索してもよい。)。
【0062】
この結果、重なり合いが最大となる移動量・回転量を(E)7005に示すように求めることができる。ここで、画像7006は、画像(D)7004を、画像7007は、画像(B)7002の画像である。ここでは、超音波画像と部位形状データベースの情報の両方に輪郭抽出処理を行い、輪郭形状同士を比較することで部位の検出を行う手順について説明した。
【0063】
ただし、ステップS104における部位検出の手順はこの方法に限らない。
【0064】
例えば、輪郭抽出処理を行うかわりに複数の特徴的なコーナーの検出を行い、それらのマッチングによって部位の検出を行う手順も考えられる。また、これ以外にも、超音波画像と対象形状データベース31の画素値同士を直接比較することで部位の検出を行う手順を行うこともできる。この場合、画素値同士の類似性を相関係数や、相互情報量などの指標で評価することができる。また、部位形状の変形も考慮に入れ、より頑健な部位検出を行うこともできる。
【0065】
以上の説明した手順により、対象形状データベース31に記憶された形状情報に類似する部位を超音波画像から検出することができる。また、この時、両者の形状の類似度などを基準とした検出強度と、両者が良く類似する位置の関係も同時に求められる。
【0066】
ここでは超音波画像および対象形状データベース31に記憶される形状情報がいずれも2次元画像データである場合について説明を行ったが、本発明の実施はこれに限定されない。例えば、超音波画像および対象形状データベース31に記憶される形状情報の少なくとも一方が3次元ボクセルデータでもよい。その場合は3次元ボクセルデータ同士、または2次元画像データと3次元ボクセルデータとのマッチングを行うことで、対象部位の検出を行うことができる。
【0067】
f6:検出結果判別(ステップS105)
ステップS105では、ステップS104で行った部位検出の結果に基づいて、その部位が検出されたか否かを判別する。
【0068】
この判別は例えば、部位検出の結果として求められる検出強度の最大値が予め設定した閾値よりも大きい場合には検査対象部位が検出されたものとし、閾値より小さい場合には検出されなかったと判断を下すことができる。またこれ以外にも、検出強度が数フレーム連続して閾値を超えた場合に部位検出が行われたと判断することもできる。この場合、より信頼性の高い判別を行える利点がある。また、閾値は検査対象部位毎に異なる値を設定することもできる。この場合、形状の個体差が大きい部位と、そうでない部位との違いを考慮した、適切な閾値を設定することができる。
【0069】
ステップS105において、検査対象部位が検出されたと判断された場合にはステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS106に進む。
【0070】
f7:部位探索制御量算出(ステップS106)
ステップS105において、超音波画像中から検査対象部位が検出されなかった場合には、検査対象が撮影範囲に入るように超音波プローブ2001の位置・姿勢を変更するための移動・回転の制御を行う。このとき、超音波プローブ2001を移動・回転させる最も単純な方法として、プローブ位置・姿勢制御装置2004の可動範囲をくまなく走査する方法が考えられる。例えばプローブ位置・姿勢制御装置2004の一番端の位置に超音波プローブ2001を移動させ、超音波撮影を行いながら徐々に超音波プローブ1を移動させるようにプローブ位置・姿勢制御装置に制御信号を送る。その途中で検査対象部位が検出されれば、ステップS105における判別結果に従い、超音波プローブの位置・姿勢の走査を終わらせ、ステップS107に進む。
【0071】
またこれ以外の方法として、部位形状データベースに検査対象の部位だけではなく、その周辺に存在する部位の形状と、検査対象部位との相対的な位置関係を記憶させておくことも好ましい。このように記憶させておけば、検査対象部位を直接検出できなくても、その周辺の部位の検出結果によって、超音波プローブ1の位置、回転させることができる。
【0072】
プローブ位置・姿勢制御装置4の具体的な動作はステップS111の説明箇所で詳述する。
【0073】
f8:座標演算(ステップS107)
次に、座標演算部34(図2)によって超音波プローブ2001と対象物形状データベース31上の基準点との相対的な位置・姿勢を算出する。
【0074】
この算出は、下記第1及び第2の関係によって求める。第1の関係とは、超音波プローブ2001を基準とした空間座標と撮影される超音波画像の画像座標との関係である。第2の関係とは、ステップS104で検出した検査対象部位の画像上での位置・姿勢情報と、対象形状データベース31に記憶されている基準座標との相対的な関係である。
【0075】
この処理について図8、図9を用いて詳細に説明する。
【0076】
なお、ここでは説明を簡略化するために実空間、超音波画像、対象物形状データベース31の形状情報の全てを2次元空間であるものとして説明する。ただし、本発明の実施はこれに限定されず、例えばこれらの情報の全て、あるいは一部が3次元空間を有するものである場合にも、以下の説明の単純な拡張によって実現できる。
【0077】
図8は撮影対象が存在する実空間と、超音波撮影によって生成された超音波画像との座標の関係を説明する図である。8001は超音波プローブを、8002は超音波を、8000は測定対象物を模式的に示している。
【0078】
この図において、画像上での座標をベクトルi=(u ν)t、実空間での座標をベクトルr=(x y)tと表記する。ここで、ベクトルの肩につけたtは、転置を表している。座標ベクトルiは画像の左上の端点を原点(0 0)tとし、それを基準として画面上で右方向にu番目、下方向にν番目の画像上の画素の点を表しているものとする。また座標ベクトルrは超音波プローブ1の内部に原点(0 0)tを持ち、それを基準として撮影平面を張る二つの直行軸に対して、それぞれx[mm]、y[mm]だけ移動した実空間上での点を表しているものとする。
【0079】
超音波画像診断装置2002(図2)は、超音波プローブ2001(図1)から超音波を発生させ、実空間上での点rからの反射波の観測値に基づいて、超音波画像上の点iの輝度値を決定している。ここで、実空間上での点rと、超音波画像上の点iの対応関係を、関数Triを用いて次式により表現する。
i=Tri(r) (数1)
ここで座標ベクトルiが座標ベクトルrに対して線形の関係であると仮定すると、
i=Trir (数2)
と表記できる。ここでTriはiとrの線形関係を表す行列として、またiおよびrをそれぞれ拡張ベクトルi=(u ν 1)t、r=(x y 1)tと再定義している。通常、キャリブレーションされた超音波画像診断装置において、上記の線形関係の仮定は十分に成り立つ。また、逆に画像上の点iから実空間上の点rへの変換は行列Triの逆行列Tri−1を用いて、
r=Tri−1i (数3)
とかける。行列Triは、特別な場合を除いて正則であるから、逆行列Tri−1は求めることができる。
【0080】
一方、ステップS104の処理結果により、超音波画像上での点iと、対象形状データベース31の点との対応関係が求められている。これについて、図9を用いて説明する。図9(a)の9000、9001は、それぞれ、図7の7006、7007に対応している。まず、超音波画像上での点iに対応する対象物形状データベース31上の点を、ベクトルm=(u’ ν’ 1)tとする。ベクトルm(図9(b)9010)とベクトルi(図9(c)9020)との関係が線形であることを仮定すると、線形変換行列Tmiを用いて、
i=Tmim (数4)
とかける。
【0081】
さらに、対象形状データベース31上の任意の点mに対応する実空間上の点rとの関係は、数3および数4より、
r=Tri−1Tmim (数5)
と表記することが出来る。
【0082】
ここで点mが対象物形状データベース31の部位基準点の座標を表すものとすると、それに対応する実空間上の点を超音波プローブ2001を基準とした座標rとして求めることができる。
【0083】
ここでは、超音波プローブ2001を基準とした座標系で、対象形状データベース31の部位基準点の位置を求める例について説明したが、これとは逆に、対象形状データベース31の部位基準点を基準として、超音波プローブの位置・姿勢を求めてもよい。
【0084】
f9:目標との差分演算(ステップS108)
次のステップとして、座標演算部34はさらに、超音波プローブ2001の位置・姿勢と、ワークフローデータベース33から読み込んだ目標位置・姿勢との相対的な位置・姿勢の関係を算出する。この算出のために、まずステップS107で求めた、超音波プローブ2001を基準とした座標系における検査対象部位の基準点の位置・姿勢と、ワークフローデータベース33の目標位置・姿勢との相対関係を求める。この処理について図10を用いて詳細に説明する。
【0085】
図10は、ワークフローデータベースに記憶されている超音波プローブの目標位置・姿勢および、超音波プローブの現在位置・姿勢を図で表したものである。ここで検査対象部位351、基準点352、プローブ目標位置・姿勢353はステップS102において読み込まれた情報である。また検査対象部位351と基準点352は、ステップS101において読み込まれた部位形状データベース31に記憶されている情報のうち、検査対象部位311および基準点312と同一の内容を表すものとすることができる。
【0086】
図10において、プローブ目標位置・姿勢352は、検査対象部位の基準点352を原点とした座標系におけるプローブの位置・姿勢の目標値を意味している。ここで、プローブ目標位置・姿勢352を、並進、回転の成分に分けて、それぞれgt、gangと表す。同様にプローブ現在位置・姿勢354も、S107において既に求められた超音波プローブと検査対象部位の基準点との相対的な位置・姿勢に基づいて、それぞれpt、pangと表すことができる。これらの情報から現在の超音波プローブの目標との位置の差分δtおよび、姿勢の差分δangはそれぞれ次式により求める。
δt=pt−gt (数6)
δang=pang−gang (数7)
以上の処理により、現時点において、超音波プローブ2001が、目標位置・姿勢に対してどれだけずれた位置・角度になっているのかが算出される。
【0087】
f11:目標到達判定(ステップS109)
次に、ステップS108で算出した目標値に対する超音波プローブの現在の位置・姿勢の相対的な差分に基づき、超音波プローブが目標となる位置・姿勢に到達したかどうかを判定する。この判定を行うための方法はステップS108で求めた現在の超音波プローブ1の位置・姿勢と目標値との各差分に対して、予め設定する一定の閾値よりも小さい場合には到達と判定し、そうでない場合には未到達と判定する方法が考えられる。
【0088】
またこの閾値は検査対象部位の設定によって異なる値が自動的に設定されるようにしても良い。この場合、検査対象毎に超音波プローブの位置・姿勢の目標範囲を変更することができる。
【0089】
f12:目標方向制御量算出(ステップS110)
ステップS109の判定の結果、プローブ位置・姿勢が目標値に対して未到達の場合はステップS110が実行される。ステップS110では制御量算出部35によってプローブ位置・姿勢を目標値に近づけるための、プローブ位置・姿勢制御装置に送信する制御量を算出する。制御量の算出は、制御装置の特性によって様々な形態を取りうる。例えばプローブ位置・姿勢制御装置に対して移動・回転の方向を指定し例えば定速駆動を行う場合、ステップS108で算出した目標値との位置差分δtの各成分値および姿勢差分δangのそれぞれの符号の正負に基づいて、方向を決定することができる。
【0090】
また、別の方法としては、目標値との差分δt、δangの符号と絶対値の両方を用いて制御量を算出することもできる。このとき、例えば差分値の符号に基づいて制御の方向を決定し、絶対値に基づいて速度を決定するなどの方法が考えられる。
【0091】
f13:プローブ移動・回転制御(ステップS111)
ステップS111では、ステップS106またはステップS110で算出された制御量を、超音波プローブ位置・姿勢制御装置2004(図2)に入力し、超音波プローブの位置・姿勢を目標値に近づけるように駆動させる。例えばステップS110において算出したプローブの位置・姿勢に対する制御量に基づき、それぞれに対応するアクチュエータ3043(図3)に対して、例えば制御量に比例した電圧を印加する。これにより、ワークフローデータベース33に記録された目標の位置・姿勢に近づく方向にアクチュエータ3043が駆動し、その結果、保持される超音波プローブ2001が目標の状態に近づく。
【0092】
以上に説明したステップS100からステップS111までの処理を行うことにより、検査対象部位に対して超音波プローブ2001を適切な位置・姿勢にすることができる。こうすることにより、超音波撮影に関する特別なスキルを持たないユーザにも診断に適した超音波画像を撮影できる超音波画像診断装置を提供できる。
【0093】
本実施例では、検査対象部位に対して適切な位置・角度から超音波撮影を行うために、超音波プローブ2001の位置・姿勢をプローブ位置・姿勢制御装置2004によって機械的に移動・回転させる場合を例として説明した。但し、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の送受波器を有し超音波信号の送信受信の位置・方向を電子的に変更できる超音波プローブを用いる場合には、その超音波信号の送受波位置・方向を制御の対象とする事によって、上記の実施形態と同様の効果を得ることもできる。また、機械的な制御および電子的な制御の両方を組み合わせて用いる構成も本発明の一つの実施形態となる。
【0094】
(実施例2)
実施例1では、超音波検査を行う対象に対して超音波プローブが適切な位置・姿勢になるように超音波プローブを移動・回転させる例について説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0095】
例えば、超音波プローブを移動・回転させる装置を提供するのではなく、超音波プローブの移動・回転をユーザに促すナビゲーションを提示する実施の形態も考えられる。以上の形態をとる例について説明する。
【0096】
A:全体構成
図11はユーザに超音波プローブの移動・回転のナビゲーションを行う実施例に関する構成を示す図である。
【0097】
本実施形態の超音波画像診断システムは超音波プローブ2906と、超音波画像診断装置2907と、ホストコントローラ2908により構成される。
【0098】
B:超音波プローブ
超音波プローブ2906は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0099】
C:超音波画像診断装置
超音波画像診断装置2907は、送信用ビームフォーマ2971、受信用ビームフォーマ2972、信号処理部2973、受信メモリ2974、画像形成部2975、画像表示部2976によって構成される。
【0100】
画像表示部2976は、画像形成部2975およびホストコントローラ2908から信号に基づいて、超音波画像およびネビゲーション情報の提示を行うものである。超音波画像診断装置2907に含まれるその他の構成は実施例1で説明したものと同様であるため説明を省略する。
【0101】
D:ホストコントローラ
ホストコントローラ2908は、対象物形状データベース2981、部位検出部2982、ワークフローデータベース2983、座標演算部2984、誘導情報生成部2985により構成される。
【0102】
ただし、ホストコントローラ2908の構成要素は、その全てが、あるいはその一部が、超音波画像診断装置2907に組み込まれていてもよい。誘導情報生成部2985は、座標演算部2984により算出されるプローブの目標値との差分に基づいて、ユーザが行うべきプローブの移動・回転に関する誘導情報を生成する。生成された誘導情報は超音波画像診断装置2907の画像表示部2976に送信され、ディスプレィなどを通じてユーザに提示される。ホストコントローラ2908に含まれるこれ以外の構成は実施例1で説明したものと同様であるため説明を省略する。
【0103】
E:誘導情報生成部
誘導情報生成部2985において生成され、画像表示部2976によって提示される誘導情報は、例えば図12(A)に示すように矢印などの記号を用いて提示することができる。また図12(B)に示すように画像表示部76は超音波画像の提示と誘導情報の提示を同時に行えるようにすることができる。
【0104】
また誘導情報の提示は超音波画像診断装置2907の画像表示部2976によって行われることに限定されない。たとえば、超音波プローブ2906に位置・姿勢の誘導情報を提示するための表示部を新たに設けて提示できるようにしても良い。この場合、ユーザは超音波画像診断装置2907を参照することなく、しかも直感的にプローブ移動方向などを認識できるメリットがある。
【0105】
また本実施例の誘導情報は画像による提示に限定されない。たとえば別の構成として、ホストコントローラ2908または超音波画像診断装置2907または超音波プローブ2906などに、スピーカなどの音声提示部を新たに設け、ナビゲーション生成部2985は音声による誘導情報を生成するようにすることができる。この場合、ユーザは画面などを見ることなく誘導情報を得ることができる。
【0106】
(実施例3)
実施例1および実施例2では、検査対象部位および超音波検査ワークフローの情報を記憶させたデータベースをホストコントローラの内部に持たせる場合の例について説明した。しかし、本発明はこの形態に限定されない。
【0107】
実施例3では検査対象部位および超音波検査ワークフローの情報を外部のデータベースを参照することにより得る超音波診断システムの例について説明する。
【0108】
図13は本実施例におけるネットワークを介して外部データベースから情報を取得する超音波画像診断システムの構成図である。本実施例の超音波画像診断システムは、例えば以下の要素から構成される。具体的には、超音波プローブ3991、超音波画像診断装置3992、ホストコントローラ3993、プローブ位置・姿勢制御装置3994、対象形状データベース3996、ワークフローデータベース3997により構成される。
【0109】
またホストコントローラ3993はネットワーク3995を介して対象形状データベース3996およびワークフローデータベース3997と接続されている。
【0110】
ここでは対象形状データベース3996およびワークフローデータベース3997の両方がネットワークを介してホストコントローラ3993と接続されている場合を例として示しているが、本発明の実施形態はこれに限定されない。
【0111】
例えば対象形状データベース3996およびワークフローデータベース3997のどちらか一方だけがネットワークを介して接続され、他方がホストコントローラ3993の内部にある構成であっても良い。また接続の形態としてネットワーク3995による接続を例として示しているが、その形態はいわゆるLAN接続でもよいし、それ以外の接続形態としてUSB接続やシリアル接続、パラレル接続などであって良い。また対象形状データベース3996やワークフローデータベース3997とホストコントローラ3993は必ずしも対になっている必要はない。例えば、実施の形態によっては複数の超音波画像診断システムのホストコントローラ3993が、対象形状データベース3996やワークフローデータベース3997を共有して使用する形態であってよい。
【0112】
以上の構成にすることで、本発明の超音波診断システムが必要とする部位形状情報やワークフロー情報などホストコントローラ3993の内部に記憶させる必要がなく、システムに供給されるデータベースの拡張や変更などを柔軟に行うことができるようになる。
【0113】
また、対象形状データベース3996およびワークフローデータベース3997に記憶した情報を、外部操作によって追加、変更、削除できるようにホストコントローラを構成することもできる。この場合にも、対応する検査項目の拡張、検査方法の改定などによるデータベースの更新を柔軟に行うことができる。
【0114】
(その他の形態)
また、本発明の目的は、前述した実施形態や実施例における機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給することによっても、達成されることは言うまでもない。具体的には、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が当該記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することになる。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0115】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるが本発明そのような場合のみを包含するだけでない。本発明には、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0116】
さらに、本発明には、以下のA)B)を経て行われる処理によって、前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0117】
A)記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。B)その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行う。
【0118】
なお、本発明を上記記録媒体に適用する場合、その記録媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【0119】
なお、上述した本実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波画像診断装置の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0120】
2001 超音波プローブ
2004 プローブ位置・姿勢制御装置
2002 超音波画像診断装置
2003 ホストコントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像診断システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像診断装置(エコー)は、被検体に超音波を照射し、被検体の内部で反射した超音波をプローブ(探触子)で受信し、受信データから画像情報を得る診断装置である。超音波は人体に対して照射しても特に副作用がなく、安全であるため、医療現場では様々な疾病の診断に広く用いられている。
特許文献1に開示された超音波医療システムは、放射線治療を行うための放射線照射システムに、超音波画像診断装置を組み合わせた医療システムである。そして、超音波画像診断装置で治療対象の腫瘍の位置を提供するにあたり、放射線照射装置を原点とした位置情報として提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−499号公報
【特許文献2】特公平01−25576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波診断装置は、超音波プローブを人体に押し当てるだけで画像情報を得ることができるという面では、簡便な診断装置である。超音波診断装置を扱う医者は、超音波プローブを患者の体に押し当て、適宜移動させながら画像を得る。しかし、体内には多くの臓器があるので、診断対象の臓器の画像情報を適切に得るためには、超音波プローブの動かし方にある程度の熟練が必要であった。
【0005】
特許文献2には、「超音波探触子のスキヤナ」が記載されている。そして、超音波探触子の先端の位置・姿勢・圧力を計測し、それらを一定に保つようにして超音波探触子を移動制御する。
【0006】
このようにすることで、操作技術であるスキャンテクニックに関してユーザの技量を補う方法が開示されている。
【0007】
しかし、上記方法では人体表面に対する探触子の状態を適切に保つことは出来るが、検査を行いたい被検体内の部位に対して超音波探触子を適切な状態にするには、依然として操作者の技量や知識を必要としていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記課題に鑑み、診断したい被検体の組織の画像情報をより適切に得ることを可能にする超音波診断システム、及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、その1つの様態として、
超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムであって、
前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出手段とを備え、且つ
前記制御量算出手段により算出された制御量を用いて、
前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御機構、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示手段の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、別の様態として、
超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムの制御方法であって、
前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測工程と、
前記計測工程の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出工程とを備え、且つ
前記制御量算出工程により算出された制御量を用いて、
前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御工程、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示工程の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超音波画像診断における超音波プローブの適切な位置・姿勢を算出できる構成にしたので、装置を扱う術者に依存し難いシステムの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る超音波画像診断システムを利用した診断方法を示した図である。
【図2】本発明に係る超音波画像診断システムの構成図である。
【図3】本発明におけるプローブ位置・姿勢制御装置の外観図である。
【図4】本発明に係る超音波画像診断システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明における対象形状データベースが記憶する情報を示す図である。
【図6】本発明におけるワークフローデータベースが記憶する情報を示す図である。
【図7】本発明における部位検出部の処理を示す図である。
【図8】本発明における超音波プローブと超音波画像の関係を示す図である。
【図9】本発明における超音波画像と対象形状データベースの情報との関係を示す図である。
【図10】本発明における座標演算部の処理を示す図である。
【図11】本発明に係る超音波画像診断システムの構成図である。
【図12】本発明における誘導情報の提示例を示す図である。
【図13】本発明に係る超音波画像診断システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波画像診断装置及びその制御方法の好ましい実施の形態について詳説する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0014】
(第1の実施形態;超音波画像診断システム)
本実施形態に係る超音波画像診断システムは、超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムである。
【0015】
そして、以下の構成要素を含む。
【0016】
具体的には、前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測手段(後述の実施例では座標演算部と称する場合がある。)を有する。
【0017】
更に、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出手段とを備える。
【0018】
そして、前記制御量算出手段により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御機構、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示手段の少なくとも一方を有する。
【0019】
ここで、前記計測手段は、該被検体の特定部位を検出する部位検出部の検出結果に基づいて、前記相対位置と相対姿勢を計測することが好適である。そして、この部位検出部は、前記被検体の部位の形状に関する情報と、前記画像情報との対応づけにより部位の検出を行うことが好ましい。
【0020】
また、前記システムには、前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢を予め記録したデータベースを有し、そして、前記制御量算出手段が、前記データベースの情報を用いて前記制御量を算出することが好適である。
【0021】
ここで、前記データベースに記録されている前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢の情報は、超音波画像診断を行うための好適なプローブ状態(位置や姿勢など)を記録した情報であるのがよい。
【0022】
前記超音波プローブは、該超音波プローブと前記被検体との間の圧力を計測する圧力計測手段を持つことが好ましい。斯かる場合、前記データベースには、前記超音波プローブと前記被検体との間の圧力に関する情報が記録されていることが好ましい。
【0023】
(第2の実施形態:制御方法)
本実施形態に係る制御方法は、超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムの制御方法である。具体的には、以下の工程を有することを特徴とする。
【0024】
a)前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測工程
b)前記計測工程の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出工程
更に、以下のc)かd)の少なくとも一方の工程を有する。
【0025】
c)前記制御量算出工程により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御工程
d)前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示工程
さらに、前記被検体の特定部位を検出する部位検出工程を有し、前記計測工程を、前記部位検出工程の検出結果を用いて、前記相対位置と相対姿勢を計測することも好ましい形態である。
【0026】
前記部位検出工程は、前記被検体の形状に関する情報を予め持ち、前記画像処理部により変換された画像との対応づけにより、該部位の検出を行うことができる。
【0027】
前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢を予め記録したデータベースを有し、前記制御量算出工程は、前記データベースの情報を用いて前記制御量を算出することができる。
【0028】
前記データベースに記録され前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢の情報は、超音波画像診断を行うための前記超音波プローブ状態を記録した情報とすることができる。
【0029】
なお、前記超音波プローブには、圧力センサを設け、該超音波プローブと前記被検体との間の圧力を計測する圧力計測工程を更に前記制御方法における工程に付加することもできる。斯かる場合、前記データベースには、前記超音波プローブと前記被検体との間の圧力に関する情報を記録しておくのがよい。
【0030】
また、本発明は、前述した制御方法を実現するためのプログラムや、当該制御方法を実現するためのプログラムを記録した記録媒体を含む。
【0031】
以下、上記実施形態に係る発明を実施例を用いて具体的に説明する。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
A:全体構成
図1は本発明の実施形態の一つである超音波画像診断システムの概略を示した図である。本実施例の超音波画像診断システムは超音波プローブ1001と、超音波画像診断装置1002と、ホストコントローラ10003と、プローブ位置・姿勢制御装置10004により構成される。超音波プローブ1001は、人体などの被検体1005に接触するようにして使用される。また超音波プローブ1001はプローブ位置・姿勢制御装置1004により保持されている。これらの装置は相互に接続され、その接続を介して制御信号などをやり取りして動作する。なお、プローブ位置・姿勢制御装置1004は、超音波プローブ1001の動作を自動化する場合に必要なものであり、上記した本発明に必須の要件ではない。後述する実施例では、このプローブ位置・姿勢制御装置を使用しない場合の構成について示している。勿論、超音波画像診断装置1002とホストコントローラ1003とを図1では別体のものとして記載しているが、他方が一方に組み込まれている構成も勿論可能である。
【0033】
次に図2を用いて、本実施例の超音波画像診断システムの機能構成について説明する。
【0034】
B:超音波プローブ
超音波プローブ2001は、超音波パルスを被検体1005に送信すると共に、被検体側から反射してきた反射信号を受信する複数の送受波素子2011(超音波振動子)によって構成される。
【0035】
送受波素子2011は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinyl difluoride)等の高分子圧電素子を含む圧電素子によって構成することができる。この場合、時間的に変動する電気信号を圧電素子により機械的な振動に変換することで超音波パルスを発生することができる。
【0036】
超音波プローブ2001は、複数の送受波素子2011を1次元アレイ状に配置して構成することができる。この場合、超音波プローブ2001は空間内に2次元的な走査面を形成することができ、被検体の断面画像を撮影することができる。また、超音波プローブ2001は、複数の送受波素子2011を2次元アレイ状に配置して構成することができる。この場合、超音波プローブ2001は空間内を3次元的に電子的に走査することで、被検体の3次元ボクセルデータを撮影することができる。
【0037】
C:超音波画像診断装置
超音波画像診断装置2002は、送信用ビームフォーマ2021、受信用ビームフォーマ2022、信号処理部2023、受信メモリ2024、画像形成部2025、画像表示部2026によって構成される。
【0038】
送信用ビームフォーマ2021は、超音波プローブ2001の複数の送受波素子2011へ供給する送信駆動信号を制御することで、超音波プローブ2001を介して送信する為の超音波を形成する。
【0039】
受信用ビームフォーマ2022は、送受波素子2011が出力する受波データを収集し、エコーデータを形成している。
【0040】
信号処理部2023は受信用ビームフォーマ2022により形成されたエコーデータをもとに輝度データ、血流速データ、変位データ等を生成する。
【0041】
信号処理部2023により形成された輝度データ、血流速データ、変位データ等は受信メモリ2024に書き込まれる。書き込まれたデータはホストコントローラ2003へ出力される。また受信メモリデータ2024に書き込まれたデータは、超音波画像診断装置2002内の画像形成部2025にも出力され、画像形成部2025にて超音波画像が形成され、画像表示部2026において超音波画像などが表示される。
【0042】
D:ホストコントローラ
ホストコントローラ2003は、対象形状データベース2031、部位検出部2032、ワークフローデータベース2033、座標演算部(計測手段)34、制御量算出部2035により構成される。ただし、ホストコントローラ2003の構成要素は、その全てが、あるいはその一部が、超音波画像診断装置2002に組み込まれていてもよい。
【0043】
対象形状データベース31は、検査対象に関する形状情報などの情報を記憶する手段である。対象形状データベースに記憶させる情報は、例えば人体アトラスと称される標準的な人体内部構造のデータを用いることができる。
【0044】
部位検出部2032は、対象形状データベース31に記憶された情報を参照し、超音波画像診断装置2002から入力される超音波撮影画像の中から検査対象となる部位を検出する。検出の方法には様々なものが考えられるが、その一例としてテンプレートマッチングや輪郭形状マッチングなどの検出方法がある。具体的な処理内容は後述する処理手順の中で説明する。
【0045】
ワークフローデータベース33は、超音波画像診断における超音波プローブ操作に関する情報を記憶する手段である。ワークフローデータベースに記憶させる情報は、例えば検査対象の部位毎に、その部位を超音波撮影するときに適切な部位と超音波プローブの相対的な位置・姿勢の関係の情報を持つデータとすることができる。
【0046】
座標演算部34は、検査対象部位と超音波プローブ2001との相対的な位置・姿勢の関係を、部位検出部2032の検出結果に基づいて求める。この演算は、次のようにして行える。例えば、超音波プローブ2001を基準とした空間座標と超音波プローブにより撮影された超音波画像の画像座標との関係を、あらかじめ求めておく。このように予め前記関係を求めておくことにより、部位検出部2011において、検出された検査対象部位の超音波画像中における画像座標から求めることができる。
【0047】
制御量算出部2035は、超音波プローブ2001の位置・姿勢に関する制御量を算出する。具体的には、ワークフローデータベース33に記憶された超音波プローブ操作に関する情報と、座標演算部34により演算された超音波プローブ2001と検査対象部位との相対的な位置・姿勢の関係を利用する。
【0048】
E:プローブ位置・姿勢制御装置
プローブ位置・姿勢制御装置2004は、超音波プローブ2001を移動・回転可能な機構で保持し、ホストコントローラ2003からの入力に従って超音波プローブ2001を移動・回転させる動作を行う。プローブ位置・姿勢制御装置2004は、この動作を実現するために、例えば図3に示すようにベースフレーム3041、プローブ保持部3042、および、複数のアクチュエータ3043を用いて構成することができる。この場合、複数のアクチュエータ3043はホストコントローラ2003からの入力に従って駆動する。そして、ベースフレーム3041およびプローブ保持部3042間の相対的な位置・姿勢の関係を変更することより、結果的にプローブ保持部42に保持される超音波プローブ2001の位置・姿勢を制御する。勿論、プローブ位置・姿勢制御装置2004には、プローブの位置と姿勢の両方を制御する装置は勿論、どちらか一方の制御を行う装置も当然に含まれる。
【0049】
図3ではベースフレーム3041のx−y平面において、各軸方向の移動、およびそれぞれの軸に対する回転の合計4自由度の動作を行える機構を例として示しているが、これ以外にもx−yと垂直な方向のz軸に対する移動や回転もできる機構にしても良い。この場合は合計6自由度の動作を行える機構となる。また、例として示した4自由度、6自由度以外にも任意の自由度を持つ機構で構成したものも本発明の実施形態となりうる。
【0050】
F:処理フローの説明
次に、図4と図2とを参照して本実施の形態の超音波画像診断装置2002により実行される具体的な処理の手順を説明する。
【0051】
f1:検査内容の設定(ステップS100)
まずステップS100として、ユーザにより検査の内容の設定が行われる。例えばホストコントローラ2003に設けられた不図示の操作パネル上に複数のボタンなどを配置し、そのボタンに対して検査項目を割り当てておくこと。そして、そのボタンが押されることにより、対応する検査内容を設定することができる。これ以外にも、例えば超音波画像診断装置2002の画像表示部2026に、検査項目の一覧リストを表示し、不図示の操作パネルの操作によりユーザに検査項目の選択を行うようにしてもよい。
【0052】
f2:対象形状情報(形状DB)の読込み(ステップS101)
次に、ステップS100で設定された検査項目と対応する検査対象部位の形状に関する情報を対象形状データベース31から部位検出部2032に読み込む。このとき、対象形状データベース31に年齢、性別、身長、体重などの属性によって異なる多様な形状情報を予め記録し、検査を行う被検体に関するそれらの属性も設定することで、より被検体に適合した形状情報を読み込むことができる。
【0053】
本実施例では、検査項目として“頚動脈の動脈硬化に関する検査”が設定されている場合を例として説明する。このとき読み込まれる検査対象部位の形状に関する情報の例を図5に示す。この図において、検査対象部位311は、ステップS100で設定された検査内容に対応する検査対象部位の形状を示している。ここでは検査対象部位311が2次元の画像情報を持つ場合を例として説明したが、本発明の実施はこれに限定されず、例えば3次元ボクセルデータなどでも良い。また基準点312は、検査対象部位に付される位置・姿勢の基準情報であり、次ステップ以降で参照される。部位検出部2032は対象形状データベース31に記録された上述の情報を読み込むときに、対象形状データベース31の情報をそのままの形式で読み込むこともできるし、部位の輪郭面、輪郭線などの抽出処理を行ってから読み込むこともできる。また、最初から検査対象部位の輪郭面または輪郭線の情報を形状情報データベースに記憶させるようにすることもできる。
【0054】
f3:ワークフローデータベースの読込み(ステップS102)
次に、ステップS100で設定された検査項目に対応するプローブ位置・姿勢の目標値をワークフローデータベース33から読み込む。このとき読み込まれる目標値の例を図6に示す。ここではプローブ位置・姿勢の目標値として、検査対象部位の基準点からの相対位置の範囲および相対角度の範囲をワークフローデータベースが記憶している場合を例としている。
【0055】
この図において、検査対象部位331はステップS100で設定された検査対象となる部位を示している。基準点332はプローブ位置・姿勢の目標値の基点となる位置を示している。また基準点332は図中の矢印で示すように、基準とする方向に関する情報も有している。プローブ目標位置・目標姿勢333は、超音波撮影の際に超音波プローブ2001が取るべき位置状態および姿勢状態を示している。これらの状態は全て基準点332を基準とした数値情報として読み込まれる。
【0056】
f4:画像入力(ステップS103)
次に、超音波画像を撮影し、その画像を入力する。超音波画像の撮影のために超音波画像診断装置2002の送信用ビームフォーマ2021は超音波プローブ2001の送受波素子2011を駆動させるための電気信号を形成して送信する。
【0057】
そして、被検体の内部で反射して返ってきた超音波を超音波プローブ2001の送受波素子11で受信し、その信号が超音波画像診断装置2002の受信用ビームフォーマ2022に入力される。受信用ビームフォーマ2022は受信信号に対して重ね合わせなどの処理を行い、受信メモリ2024に入力される。受信メモリ2024に入力されたデータは画像形成部2025を経て画像表示部2026に表示されるとともに、ホストコントローラ2003の部位検出部2032に入力される。
【0058】
f5:部位検出(ステップS104)
次に、部位検出部2032は、超音波画像診断装置2002から入力された超音波画像の中から、対象形状データベース31から読み込んだ検査対象となる部位を検出する。
【0059】
検査対象部位の検出の方法は様々なものがあるが、ここでは例として超音波画像および部位形状データベース31の情報それぞれに対し、撮影対象物体の輪郭抽出を行い、その輪郭同士のマッチングに基づいて検出する方法について図7を用いて説明する。
【0060】
この図において、(A)は入力された超音波画像7001である。この画像に対して輪郭抽出処理を行うことで(B)のような輪郭情報7002を得る。また(C)の画像7003は対象形状データベース31の情報であり、これに対して輪郭抽出を行うことで(D)のような輪郭情報7004を得る。
【0061】
ここで(B)の輪郭情報7002に対して(D)の輪郭情報7004を重ね合わせ、その両者の重なり合いが最大となるように、(D)の移動量・回転量を探索する(勿論、画像(B)の移動量・回転量を探索してもよい。)。
【0062】
この結果、重なり合いが最大となる移動量・回転量を(E)7005に示すように求めることができる。ここで、画像7006は、画像(D)7004を、画像7007は、画像(B)7002の画像である。ここでは、超音波画像と部位形状データベースの情報の両方に輪郭抽出処理を行い、輪郭形状同士を比較することで部位の検出を行う手順について説明した。
【0063】
ただし、ステップS104における部位検出の手順はこの方法に限らない。
【0064】
例えば、輪郭抽出処理を行うかわりに複数の特徴的なコーナーの検出を行い、それらのマッチングによって部位の検出を行う手順も考えられる。また、これ以外にも、超音波画像と対象形状データベース31の画素値同士を直接比較することで部位の検出を行う手順を行うこともできる。この場合、画素値同士の類似性を相関係数や、相互情報量などの指標で評価することができる。また、部位形状の変形も考慮に入れ、より頑健な部位検出を行うこともできる。
【0065】
以上の説明した手順により、対象形状データベース31に記憶された形状情報に類似する部位を超音波画像から検出することができる。また、この時、両者の形状の類似度などを基準とした検出強度と、両者が良く類似する位置の関係も同時に求められる。
【0066】
ここでは超音波画像および対象形状データベース31に記憶される形状情報がいずれも2次元画像データである場合について説明を行ったが、本発明の実施はこれに限定されない。例えば、超音波画像および対象形状データベース31に記憶される形状情報の少なくとも一方が3次元ボクセルデータでもよい。その場合は3次元ボクセルデータ同士、または2次元画像データと3次元ボクセルデータとのマッチングを行うことで、対象部位の検出を行うことができる。
【0067】
f6:検出結果判別(ステップS105)
ステップS105では、ステップS104で行った部位検出の結果に基づいて、その部位が検出されたか否かを判別する。
【0068】
この判別は例えば、部位検出の結果として求められる検出強度の最大値が予め設定した閾値よりも大きい場合には検査対象部位が検出されたものとし、閾値より小さい場合には検出されなかったと判断を下すことができる。またこれ以外にも、検出強度が数フレーム連続して閾値を超えた場合に部位検出が行われたと判断することもできる。この場合、より信頼性の高い判別を行える利点がある。また、閾値は検査対象部位毎に異なる値を設定することもできる。この場合、形状の個体差が大きい部位と、そうでない部位との違いを考慮した、適切な閾値を設定することができる。
【0069】
ステップS105において、検査対象部位が検出されたと判断された場合にはステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS106に進む。
【0070】
f7:部位探索制御量算出(ステップS106)
ステップS105において、超音波画像中から検査対象部位が検出されなかった場合には、検査対象が撮影範囲に入るように超音波プローブ2001の位置・姿勢を変更するための移動・回転の制御を行う。このとき、超音波プローブ2001を移動・回転させる最も単純な方法として、プローブ位置・姿勢制御装置2004の可動範囲をくまなく走査する方法が考えられる。例えばプローブ位置・姿勢制御装置2004の一番端の位置に超音波プローブ2001を移動させ、超音波撮影を行いながら徐々に超音波プローブ1を移動させるようにプローブ位置・姿勢制御装置に制御信号を送る。その途中で検査対象部位が検出されれば、ステップS105における判別結果に従い、超音波プローブの位置・姿勢の走査を終わらせ、ステップS107に進む。
【0071】
またこれ以外の方法として、部位形状データベースに検査対象の部位だけではなく、その周辺に存在する部位の形状と、検査対象部位との相対的な位置関係を記憶させておくことも好ましい。このように記憶させておけば、検査対象部位を直接検出できなくても、その周辺の部位の検出結果によって、超音波プローブ1の位置、回転させることができる。
【0072】
プローブ位置・姿勢制御装置4の具体的な動作はステップS111の説明箇所で詳述する。
【0073】
f8:座標演算(ステップS107)
次に、座標演算部34(図2)によって超音波プローブ2001と対象物形状データベース31上の基準点との相対的な位置・姿勢を算出する。
【0074】
この算出は、下記第1及び第2の関係によって求める。第1の関係とは、超音波プローブ2001を基準とした空間座標と撮影される超音波画像の画像座標との関係である。第2の関係とは、ステップS104で検出した検査対象部位の画像上での位置・姿勢情報と、対象形状データベース31に記憶されている基準座標との相対的な関係である。
【0075】
この処理について図8、図9を用いて詳細に説明する。
【0076】
なお、ここでは説明を簡略化するために実空間、超音波画像、対象物形状データベース31の形状情報の全てを2次元空間であるものとして説明する。ただし、本発明の実施はこれに限定されず、例えばこれらの情報の全て、あるいは一部が3次元空間を有するものである場合にも、以下の説明の単純な拡張によって実現できる。
【0077】
図8は撮影対象が存在する実空間と、超音波撮影によって生成された超音波画像との座標の関係を説明する図である。8001は超音波プローブを、8002は超音波を、8000は測定対象物を模式的に示している。
【0078】
この図において、画像上での座標をベクトルi=(u ν)t、実空間での座標をベクトルr=(x y)tと表記する。ここで、ベクトルの肩につけたtは、転置を表している。座標ベクトルiは画像の左上の端点を原点(0 0)tとし、それを基準として画面上で右方向にu番目、下方向にν番目の画像上の画素の点を表しているものとする。また座標ベクトルrは超音波プローブ1の内部に原点(0 0)tを持ち、それを基準として撮影平面を張る二つの直行軸に対して、それぞれx[mm]、y[mm]だけ移動した実空間上での点を表しているものとする。
【0079】
超音波画像診断装置2002(図2)は、超音波プローブ2001(図1)から超音波を発生させ、実空間上での点rからの反射波の観測値に基づいて、超音波画像上の点iの輝度値を決定している。ここで、実空間上での点rと、超音波画像上の点iの対応関係を、関数Triを用いて次式により表現する。
i=Tri(r) (数1)
ここで座標ベクトルiが座標ベクトルrに対して線形の関係であると仮定すると、
i=Trir (数2)
と表記できる。ここでTriはiとrの線形関係を表す行列として、またiおよびrをそれぞれ拡張ベクトルi=(u ν 1)t、r=(x y 1)tと再定義している。通常、キャリブレーションされた超音波画像診断装置において、上記の線形関係の仮定は十分に成り立つ。また、逆に画像上の点iから実空間上の点rへの変換は行列Triの逆行列Tri−1を用いて、
r=Tri−1i (数3)
とかける。行列Triは、特別な場合を除いて正則であるから、逆行列Tri−1は求めることができる。
【0080】
一方、ステップS104の処理結果により、超音波画像上での点iと、対象形状データベース31の点との対応関係が求められている。これについて、図9を用いて説明する。図9(a)の9000、9001は、それぞれ、図7の7006、7007に対応している。まず、超音波画像上での点iに対応する対象物形状データベース31上の点を、ベクトルm=(u’ ν’ 1)tとする。ベクトルm(図9(b)9010)とベクトルi(図9(c)9020)との関係が線形であることを仮定すると、線形変換行列Tmiを用いて、
i=Tmim (数4)
とかける。
【0081】
さらに、対象形状データベース31上の任意の点mに対応する実空間上の点rとの関係は、数3および数4より、
r=Tri−1Tmim (数5)
と表記することが出来る。
【0082】
ここで点mが対象物形状データベース31の部位基準点の座標を表すものとすると、それに対応する実空間上の点を超音波プローブ2001を基準とした座標rとして求めることができる。
【0083】
ここでは、超音波プローブ2001を基準とした座標系で、対象形状データベース31の部位基準点の位置を求める例について説明したが、これとは逆に、対象形状データベース31の部位基準点を基準として、超音波プローブの位置・姿勢を求めてもよい。
【0084】
f9:目標との差分演算(ステップS108)
次のステップとして、座標演算部34はさらに、超音波プローブ2001の位置・姿勢と、ワークフローデータベース33から読み込んだ目標位置・姿勢との相対的な位置・姿勢の関係を算出する。この算出のために、まずステップS107で求めた、超音波プローブ2001を基準とした座標系における検査対象部位の基準点の位置・姿勢と、ワークフローデータベース33の目標位置・姿勢との相対関係を求める。この処理について図10を用いて詳細に説明する。
【0085】
図10は、ワークフローデータベースに記憶されている超音波プローブの目標位置・姿勢および、超音波プローブの現在位置・姿勢を図で表したものである。ここで検査対象部位351、基準点352、プローブ目標位置・姿勢353はステップS102において読み込まれた情報である。また検査対象部位351と基準点352は、ステップS101において読み込まれた部位形状データベース31に記憶されている情報のうち、検査対象部位311および基準点312と同一の内容を表すものとすることができる。
【0086】
図10において、プローブ目標位置・姿勢352は、検査対象部位の基準点352を原点とした座標系におけるプローブの位置・姿勢の目標値を意味している。ここで、プローブ目標位置・姿勢352を、並進、回転の成分に分けて、それぞれgt、gangと表す。同様にプローブ現在位置・姿勢354も、S107において既に求められた超音波プローブと検査対象部位の基準点との相対的な位置・姿勢に基づいて、それぞれpt、pangと表すことができる。これらの情報から現在の超音波プローブの目標との位置の差分δtおよび、姿勢の差分δangはそれぞれ次式により求める。
δt=pt−gt (数6)
δang=pang−gang (数7)
以上の処理により、現時点において、超音波プローブ2001が、目標位置・姿勢に対してどれだけずれた位置・角度になっているのかが算出される。
【0087】
f11:目標到達判定(ステップS109)
次に、ステップS108で算出した目標値に対する超音波プローブの現在の位置・姿勢の相対的な差分に基づき、超音波プローブが目標となる位置・姿勢に到達したかどうかを判定する。この判定を行うための方法はステップS108で求めた現在の超音波プローブ1の位置・姿勢と目標値との各差分に対して、予め設定する一定の閾値よりも小さい場合には到達と判定し、そうでない場合には未到達と判定する方法が考えられる。
【0088】
またこの閾値は検査対象部位の設定によって異なる値が自動的に設定されるようにしても良い。この場合、検査対象毎に超音波プローブの位置・姿勢の目標範囲を変更することができる。
【0089】
f12:目標方向制御量算出(ステップS110)
ステップS109の判定の結果、プローブ位置・姿勢が目標値に対して未到達の場合はステップS110が実行される。ステップS110では制御量算出部35によってプローブ位置・姿勢を目標値に近づけるための、プローブ位置・姿勢制御装置に送信する制御量を算出する。制御量の算出は、制御装置の特性によって様々な形態を取りうる。例えばプローブ位置・姿勢制御装置に対して移動・回転の方向を指定し例えば定速駆動を行う場合、ステップS108で算出した目標値との位置差分δtの各成分値および姿勢差分δangのそれぞれの符号の正負に基づいて、方向を決定することができる。
【0090】
また、別の方法としては、目標値との差分δt、δangの符号と絶対値の両方を用いて制御量を算出することもできる。このとき、例えば差分値の符号に基づいて制御の方向を決定し、絶対値に基づいて速度を決定するなどの方法が考えられる。
【0091】
f13:プローブ移動・回転制御(ステップS111)
ステップS111では、ステップS106またはステップS110で算出された制御量を、超音波プローブ位置・姿勢制御装置2004(図2)に入力し、超音波プローブの位置・姿勢を目標値に近づけるように駆動させる。例えばステップS110において算出したプローブの位置・姿勢に対する制御量に基づき、それぞれに対応するアクチュエータ3043(図3)に対して、例えば制御量に比例した電圧を印加する。これにより、ワークフローデータベース33に記録された目標の位置・姿勢に近づく方向にアクチュエータ3043が駆動し、その結果、保持される超音波プローブ2001が目標の状態に近づく。
【0092】
以上に説明したステップS100からステップS111までの処理を行うことにより、検査対象部位に対して超音波プローブ2001を適切な位置・姿勢にすることができる。こうすることにより、超音波撮影に関する特別なスキルを持たないユーザにも診断に適した超音波画像を撮影できる超音波画像診断装置を提供できる。
【0093】
本実施例では、検査対象部位に対して適切な位置・角度から超音波撮影を行うために、超音波プローブ2001の位置・姿勢をプローブ位置・姿勢制御装置2004によって機械的に移動・回転させる場合を例として説明した。但し、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の送受波器を有し超音波信号の送信受信の位置・方向を電子的に変更できる超音波プローブを用いる場合には、その超音波信号の送受波位置・方向を制御の対象とする事によって、上記の実施形態と同様の効果を得ることもできる。また、機械的な制御および電子的な制御の両方を組み合わせて用いる構成も本発明の一つの実施形態となる。
【0094】
(実施例2)
実施例1では、超音波検査を行う対象に対して超音波プローブが適切な位置・姿勢になるように超音波プローブを移動・回転させる例について説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0095】
例えば、超音波プローブを移動・回転させる装置を提供するのではなく、超音波プローブの移動・回転をユーザに促すナビゲーションを提示する実施の形態も考えられる。以上の形態をとる例について説明する。
【0096】
A:全体構成
図11はユーザに超音波プローブの移動・回転のナビゲーションを行う実施例に関する構成を示す図である。
【0097】
本実施形態の超音波画像診断システムは超音波プローブ2906と、超音波画像診断装置2907と、ホストコントローラ2908により構成される。
【0098】
B:超音波プローブ
超音波プローブ2906は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0099】
C:超音波画像診断装置
超音波画像診断装置2907は、送信用ビームフォーマ2971、受信用ビームフォーマ2972、信号処理部2973、受信メモリ2974、画像形成部2975、画像表示部2976によって構成される。
【0100】
画像表示部2976は、画像形成部2975およびホストコントローラ2908から信号に基づいて、超音波画像およびネビゲーション情報の提示を行うものである。超音波画像診断装置2907に含まれるその他の構成は実施例1で説明したものと同様であるため説明を省略する。
【0101】
D:ホストコントローラ
ホストコントローラ2908は、対象物形状データベース2981、部位検出部2982、ワークフローデータベース2983、座標演算部2984、誘導情報生成部2985により構成される。
【0102】
ただし、ホストコントローラ2908の構成要素は、その全てが、あるいはその一部が、超音波画像診断装置2907に組み込まれていてもよい。誘導情報生成部2985は、座標演算部2984により算出されるプローブの目標値との差分に基づいて、ユーザが行うべきプローブの移動・回転に関する誘導情報を生成する。生成された誘導情報は超音波画像診断装置2907の画像表示部2976に送信され、ディスプレィなどを通じてユーザに提示される。ホストコントローラ2908に含まれるこれ以外の構成は実施例1で説明したものと同様であるため説明を省略する。
【0103】
E:誘導情報生成部
誘導情報生成部2985において生成され、画像表示部2976によって提示される誘導情報は、例えば図12(A)に示すように矢印などの記号を用いて提示することができる。また図12(B)に示すように画像表示部76は超音波画像の提示と誘導情報の提示を同時に行えるようにすることができる。
【0104】
また誘導情報の提示は超音波画像診断装置2907の画像表示部2976によって行われることに限定されない。たとえば、超音波プローブ2906に位置・姿勢の誘導情報を提示するための表示部を新たに設けて提示できるようにしても良い。この場合、ユーザは超音波画像診断装置2907を参照することなく、しかも直感的にプローブ移動方向などを認識できるメリットがある。
【0105】
また本実施例の誘導情報は画像による提示に限定されない。たとえば別の構成として、ホストコントローラ2908または超音波画像診断装置2907または超音波プローブ2906などに、スピーカなどの音声提示部を新たに設け、ナビゲーション生成部2985は音声による誘導情報を生成するようにすることができる。この場合、ユーザは画面などを見ることなく誘導情報を得ることができる。
【0106】
(実施例3)
実施例1および実施例2では、検査対象部位および超音波検査ワークフローの情報を記憶させたデータベースをホストコントローラの内部に持たせる場合の例について説明した。しかし、本発明はこの形態に限定されない。
【0107】
実施例3では検査対象部位および超音波検査ワークフローの情報を外部のデータベースを参照することにより得る超音波診断システムの例について説明する。
【0108】
図13は本実施例におけるネットワークを介して外部データベースから情報を取得する超音波画像診断システムの構成図である。本実施例の超音波画像診断システムは、例えば以下の要素から構成される。具体的には、超音波プローブ3991、超音波画像診断装置3992、ホストコントローラ3993、プローブ位置・姿勢制御装置3994、対象形状データベース3996、ワークフローデータベース3997により構成される。
【0109】
またホストコントローラ3993はネットワーク3995を介して対象形状データベース3996およびワークフローデータベース3997と接続されている。
【0110】
ここでは対象形状データベース3996およびワークフローデータベース3997の両方がネットワークを介してホストコントローラ3993と接続されている場合を例として示しているが、本発明の実施形態はこれに限定されない。
【0111】
例えば対象形状データベース3996およびワークフローデータベース3997のどちらか一方だけがネットワークを介して接続され、他方がホストコントローラ3993の内部にある構成であっても良い。また接続の形態としてネットワーク3995による接続を例として示しているが、その形態はいわゆるLAN接続でもよいし、それ以外の接続形態としてUSB接続やシリアル接続、パラレル接続などであって良い。また対象形状データベース3996やワークフローデータベース3997とホストコントローラ3993は必ずしも対になっている必要はない。例えば、実施の形態によっては複数の超音波画像診断システムのホストコントローラ3993が、対象形状データベース3996やワークフローデータベース3997を共有して使用する形態であってよい。
【0112】
以上の構成にすることで、本発明の超音波診断システムが必要とする部位形状情報やワークフロー情報などホストコントローラ3993の内部に記憶させる必要がなく、システムに供給されるデータベースの拡張や変更などを柔軟に行うことができるようになる。
【0113】
また、対象形状データベース3996およびワークフローデータベース3997に記憶した情報を、外部操作によって追加、変更、削除できるようにホストコントローラを構成することもできる。この場合にも、対応する検査項目の拡張、検査方法の改定などによるデータベースの更新を柔軟に行うことができる。
【0114】
(その他の形態)
また、本発明の目的は、前述した実施形態や実施例における機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給することによっても、達成されることは言うまでもない。具体的には、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が当該記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することになる。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0115】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるが本発明そのような場合のみを包含するだけでない。本発明には、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0116】
さらに、本発明には、以下のA)B)を経て行われる処理によって、前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0117】
A)記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。B)その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行う。
【0118】
なお、本発明を上記記録媒体に適用する場合、その記録媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【0119】
なお、上述した本実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波画像診断装置の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0120】
2001 超音波プローブ
2004 プローブ位置・姿勢制御装置
2002 超音波画像診断装置
2003 ホストコントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムであって、
前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出手段とを備え、且つ
前記制御量算出手段により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御機構、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示手段の少なくとも一方を有することを特徴とする超音波画像診断システム。
【請求項2】
前記計測手段は、該被検体の特定部位を検出する部位検出部の検出結果に基づいて、前記相対位置と相対姿勢を計測することを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断システム。
【請求項3】
前記部位検出部は、前記被検体の部位の形状に関する情報と、前記画像情報との対応づけにより部位の検出を行うことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の超音波画像診断システム。
【請求項4】
前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢を予め記録したデータベースを有し、前記制御量算出手段は、前記データベースの情報を用いて前記制御量を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の超音波画像診断システム。
【請求項5】
前記データベースに記録されている前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢の情報は、超音波画像診断を行うためのプローブ状態を記録した情報であることを特徴とする請求項4に記載の超音波画像診断システム。
【請求項6】
前記超音波プローブは、該超音波プローブと前記被検体との間の圧力を計測する圧力計測手段を持つことを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の超音波画像診断システム。
【請求項7】
前記データベースは、前記超音波プローブと前記被検体との間の圧力に関する情報が記録されていることを特徴とする請求項4ないし請求項6に記載の超音波画像診断システム。
【請求項8】
超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムの制御方法であって、
前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測工程と、
前記計測工程の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出工程とを備え、且つ
前記制御量算出工程により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御工程、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示工程の少なくとも一方を有することを特徴とする超音波画像診断システムの制御方法。
【請求項9】
前記被検体の特定部位を検出する部位検出工程を有し、前記計測工程は前記部位検出工程の検出結果を用いて、前記相対位置と相対姿勢を計測することを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記部位検出工程は、前記被検体の形状に関する情報を予め持ち、前記画像処理部により変換された画像との対応づけにより、該部位の検出を行うことを特徴とする請求項8なあるいは請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢を予め記録したデータベースを有し、前記制御量算出工程は、前記データベースの情報を用いて前記制御量を算出する請求項8ないし請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記データベースに記録され前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢の情報は、超音波画像診断を行うための前記超音波プローブ状態を記録した情報であることを特徴とする請求項8ないし請求項11に記載の制御方法。
【請求項13】
前記超音波プローブは、該超音波プローブと前記被検体との間の圧力を計測する圧力計測工程を持つことを特徴とする請求項8ないし請求項12に記載の制御方法。
【請求項14】
前記データベースには、前記超音波プローブと前記被検体との間の圧力に関する情報を記録されていることを特徴とする請求項8ないし請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
請求項8ないし請求項14に記載の制御方法を実現するためのプログラム。
【請求項16】
請求項8ないし請求項15に記載の制御方法を実現するためのプログラムを記録した記録媒体。
【請求項1】
超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムであって、
前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出手段とを備え、且つ
前記制御量算出手段により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御機構、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示手段の少なくとも一方を有することを特徴とする超音波画像診断システム。
【請求項2】
前記計測手段は、該被検体の特定部位を検出する部位検出部の検出結果に基づいて、前記相対位置と相対姿勢を計測することを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断システム。
【請求項3】
前記部位検出部は、前記被検体の部位の形状に関する情報と、前記画像情報との対応づけにより部位の検出を行うことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の超音波画像診断システム。
【請求項4】
前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢を予め記録したデータベースを有し、前記制御量算出手段は、前記データベースの情報を用いて前記制御量を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の超音波画像診断システム。
【請求項5】
前記データベースに記録されている前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢の情報は、超音波画像診断を行うためのプローブ状態を記録した情報であることを特徴とする請求項4に記載の超音波画像診断システム。
【請求項6】
前記超音波プローブは、該超音波プローブと前記被検体との間の圧力を計測する圧力計測手段を持つことを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の超音波画像診断システム。
【請求項7】
前記データベースは、前記超音波プローブと前記被検体との間の圧力に関する情報が記録されていることを特徴とする請求項4ないし請求項6に記載の超音波画像診断システム。
【請求項8】
超音波プローブと、該超音波プローブが被検体から反射されてきた超音波を受信することにより生じる信号を画像情報に変換する画像処理部とを備える超音波画像診断システムの制御方法であって、
前記超音波プローブにより取得された被検体に関する画像情報を用いて、該被検体に対する前記超音波プローブの相対位置と相対姿勢を計測する計測工程と、
前記計測工程の計測結果に基づいて、前記超音波プローブの位置と姿勢の制御量を算出する制御量算出工程とを備え、且つ
前記制御量算出工程により算出された制御量を用いて、前記超音波プローブの位置と姿勢を制御するプローブ制御工程、あるいは前記超音波プローブの位置と姿勢の移動を誘導するための情報を提示する誘導情報提示工程の少なくとも一方を有することを特徴とする超音波画像診断システムの制御方法。
【請求項9】
前記被検体の特定部位を検出する部位検出工程を有し、前記計測工程は前記部位検出工程の検出結果を用いて、前記相対位置と相対姿勢を計測することを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記部位検出工程は、前記被検体の形状に関する情報を予め持ち、前記画像処理部により変換された画像との対応づけにより、該部位の検出を行うことを特徴とする請求項8なあるいは請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢を予め記録したデータベースを有し、前記制御量算出工程は、前記データベースの情報を用いて前記制御量を算出する請求項8ないし請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記データベースに記録され前記超音波プローブと前記被検体との相対位置と相対姿勢の情報は、超音波画像診断を行うための前記超音波プローブ状態を記録した情報であることを特徴とする請求項8ないし請求項11に記載の制御方法。
【請求項13】
前記超音波プローブは、該超音波プローブと前記被検体との間の圧力を計測する圧力計測工程を持つことを特徴とする請求項8ないし請求項12に記載の制御方法。
【請求項14】
前記データベースには、前記超音波プローブと前記被検体との間の圧力に関する情報を記録されていることを特徴とする請求項8ないし請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
請求項8ないし請求項14に記載の制御方法を実現するためのプログラム。
【請求項16】
請求項8ないし請求項15に記載の制御方法を実現するためのプログラムを記録した記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−17870(P2013−17870A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−240100(P2012−240100)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2007−226340(P2007−226340)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2007−226340(P2007−226340)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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