超音波画像診断装置
【課題】簡便な構成で送信超音波を出力可能な矩形波による送信信号によって広帯域の高調波成分を取得し、良好な超音波画像を取得することができる超音波画像診断装置を提供する。
【解決手段】送信部は、時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させて、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号と、をそれぞれ駆動信号として出力して超音波探触子2に送信超音波を生成させる。信号成分抽出部135は、第1の送信信号に対応する第1の受信信号と、第2の送信信号に対応する第2の受信信号と、第3の送信信号に対応する第3の受信信号と、第4の送信信号に対応する第4の受信信号と、を合成して2次高調波成分と差音成分とをそれぞれ抽出する。
【解決手段】送信部は、時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させて、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号と、をそれぞれ駆動信号として出力して超音波探触子2に送信超音波を生成させる。信号成分抽出部135は、第1の送信信号に対応する第1の受信信号と、第2の送信信号に対応する第2の受信信号と、第3の送信信号に対応する第3の受信信号と、第4の送信信号に対応する第4の受信信号と、を合成して2次高調波成分と差音成分とをそれぞれ抽出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像診断装置は、超音波パルス反射法により、体表から被検体内の軟組織の断層像を低侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波画像診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線等の被爆がなく安全性が高い、ドップラー効果を応用して血流イメージングが可能等の多くの特長を有する。そのため、循環器系(心臓の冠動脈)、消化器系(胃腸)、内科系(肝臓、膵臓、脾臓)、泌尿器科系(腎臓、膀胱)、および産婦人科系等で広く利用されている。
【0003】
さらに、近年、超音波画像を用いた診断の精度向上のために、従来のような超音波の基本波成分ではなく、高調波成分を用いたハーモニックイメージング(HI)診断が行われている。高調波成分は、送信する基本波成分が被検体内における非線形性の影響を受けて生じる周波数成分である。HI診断は、従来の基本波成分によるBモード診断では得られない鮮明な診断像が得られることから、標準的な診断モダリティとなりつつある。
【0004】
HI診断により得られる超音波画像は、基本波成分による超音波画像と比較して、サイドローブレベルが小さいことでS/Nが高く、コントラスト分解能が向上すること、ビーム幅が細くなり方位分解能が向上すること等の利点を有する。さらに、近距離では音圧が小さく、さらに音圧の変動が少ないので多重反射が起こらないこと、焦点以遠の減衰は基本波成分並みであり、高調波成分は、同一周波数の基本波成分に比べ深達度を大きく取れること、等の多くの利点を有している。
【0005】
高調波成分による超音波画像診断は、上述したように、多くの利点を有しているが、送受信を行う超音波の周波数帯域は、使用する超音波探触子の特性により規定される周波数帯域に限定されてしまうため、距離分解能が向上しないという問題があった。
【0006】
これに対し、従来の超音波画像診断装置において、周波数の異なる2つの基本波について、それぞれ波形の位相調整を行って超音波の送受信を行い、受信した2つの基本波成分から得られる差音成分を利用して広帯域の高調波成分を取得するようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【0007】
また、位相が調整された広帯域な波形の送信信号により超音波の送信を行い、これを受信して得たベースバンド高調波成分を利用して広帯域の高調波成分を取得するようにしたものもある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−298620号公報
【特許文献2】特開2008−43721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記各特許文献に記載された技術の何れも、位相が調整された特殊な波形である送信信号を生成する必要があることから、特別な送信回路構成を必要とし、回路規模が大きくなりコストがかかる。
【0010】
また、一般的な送信信号として適用される矩形波を生成する送信回路を利用した超音波画像診断装置が知られているが、このような超音波画像診断装置では、送信信号に複数周波数を含ませたり、広帯域な信号波形による送信超音波の出力は可能であるが、位相の調整を任意に行うことが困難であり、広帯域の高調波成分を取得することは困難である。
【0011】
また、上記各特許文献に記載された技術の何れも、所望の波形に調整された送信信号を生成できたとしても、超音波が伝搬する媒質の不均一性やビームフォーミング等により、送信信号を調整して得られた超音波の位相が超音波の伝搬中に崩れてしまうことがあるが、上記各特許文献に記載された技術では、このような状態を調整することはできないため、良好な超音波画像を取得することができない場合がある。
【0012】
本発明の課題は、簡便な構成で送信超音波を出力可能な送信信号によって広帯域の高調波成分を取得し、良好な超音波画像を取得することができる超音波画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、超音波画像診断装置において、
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する超音波探触子と、
時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を位相反転させ、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号と、をそれぞれ前記駆動信号として出力して前記超音波探触子に前記送信超音波を生成させる送信部と、
前記第1の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第1の受信信号と、前記第2の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第2の受信信号と、前記第3の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第3の受信信号と、前記第4の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第4の受信信号と、を合成して高次高調波成分と差音成分とをそれぞれ抽出する信号成分抽出部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波画像診断装置において、
前記信号成分抽出部によって抽出された前記高次高調波成分と前記差音成分との間の相対的な位相関係を変更する位相変更部と、
前記位相変更部によって相対的な位相関係が変更された前記高次高調波成分及び前記差音成分を合成する信号合成部と、
前記信号合成部によって合成された受信信号に基づいて前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超音波画像診断装置において、
前記位相変更部は、前記高次高調波成分と前記差音成分との間の相対的な位相関係の変更量を、前記超音波探触子が受信する反射超音波の深度に応じて設定することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の超音波画像診断装置において、
前記信号成分抽出部によって抽出された前記高次高調波成分及び前記差音成分のそれぞれについて、信号の大きさを画像の輝度を示す輝度データに変換し、前記高次高調波成分から変換された輝度データと、前記差音成分から変換された輝度データとを合成して前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記高次高調波成分は2次高調波成分であることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の超音波画像診断装置において、
前記信号成分抽出部は、前記第1の受信信号、第2の受信信号、第3の受信信号及び第4の受信信号の和を求めることにより前記2次高調波成分を抽出し、前記第1の受信信号及び第2の受信信号の和と、前記第3の受信信号及び第4の受信信号の和との差分を求めることにより前記差音成分を抽出することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、矩形波のパルス信号にて前記駆動信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便な構成で送信超音波を出力可能な送信信号によって広帯域の高調波成分を取得し、良好な超音波画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】超音波画像診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波画像診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】送信部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】受信部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】第1の送信信号の波形について説明する図である。
【図7】第3の送信信号の波形について説明する図である。
【図8】第1〜第4の送信信号の関係性について説明する図である。
【図9】第1〜第4の送信信号の信号波形を周波数空間で表した図である。
【図10】第1の送信信号の波形の一例について説明する図である。
【図11】基本波成分の経過時間と強度との関係を示す図である。
【図12】第1の基本波成分と第2の基本波成分との強度積を示す図である。
【図13】送信信号に対する反射超音波の高調波成分の位相の関係について説明する図である。
【図14】送信信号に対する反射超音波の高調波成分の位相の関係について説明する図である。
【図15】高調波成分を抽出する過程について説明する図である。
【図16】2次高調波成分と差音成分とを分離抽出する過程について説明する図である。
【図17】2次高調波成分と差音成分の帯域について説明する図である。
【図18】高調波成分の帯域について説明する図である。
【図19】高調波成分の位相調整の手順について説明する図である。
【図20】第2の実施の形態に係る受信部の概略構成を示すブロック図である。
【図21】第2の実施の形態に係る画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図22】従来の周波数コンパウンドの手法について説明する図である。
【図23】第2の実施の形態に係る周波数コンパウンドの手法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波画像診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る超音波画像診断装置Sは、図1及び図2に示すように、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0024】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0025】
超音波画像診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリー部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0026】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0027】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。より具体的には、送信部12は、図3に示すように、例えば、クロック発生回路121、パルス発生回路122、駆動信号波形設定部123及び遅延回路124を備えている。
【0028】
クロック発生回路121は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。
パルス発生回路122は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路122は、例えば、3値の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波によるパルス信号を発生させることができる。このとき、パルス信号の振幅については、正極性及び負極性で同一となるようにしたが、これに限定されない。なお、2値の電圧を切り替えてパルス信号を発生させる構成であってもよい。また、矩形波によるパルス信号に限らず、例えば、正弦波等、他の波形による信号を発生させるものであってもよい。
駆動信号波形設定部123は、パルス発生回路122から出力されるパルス信号のデューティー比を設定することにより、駆動信号の波形を設定する。すなわち、パルス発生回路122は、駆動信号波形設定部123によって設定されたデューティー比に従ったパルス波形によるパルス信号を出力する。なお、デューティー比は、例えば、操作入力部11による入力操作により可変可能に設定できるものであってもよい。また、超音波画像診断装置本体1に接続された超音波探触子2を識別することにより、識別した超音波探触子2に対応するデューディー比が設定されるように構成してもよい。なお、駆動信号波形設定部123によるデューティー比の設定の詳細については、後述する。
【0029】
遅延回路124は、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
【0030】
以上のように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することにより走査を行う。
【0031】
図2に示すように、受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、図4に示すように、AMP(Amplifier)131、ADC(Analog/Digital Converter)132、整相加算部133、音線メモリー134、信号成分抽出部135、帯域調整フィルター136a,136b、位相調整フィルター137a,137b及び信号加算器138を備えている。
【0032】
AMP131は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。
ADC132は、増幅された受信信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するための回路である。
整相加算部133は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。すなわち、整相加算部133は、振動子2a毎の受信信号に対して受信ビームフォーミングを行って音線データを生成する。
音線メモリー134は、整相加算部133にて生成された音線データを一時的に保持しておくためのメモリーである。音線メモリー134は、複数の音線データについて領域を異ならせて保持することができる。
【0033】
信号成分抽出部135は、音線メモリー134に保持されている複数の音線データを読み出し、これらを加減算処理することにより、差音成分と2次高調波成分とを抽出する。差音成分及び2次高調波成分の抽出の要領については後述する。信号成分抽出部135は、2次高調波成分が抽出された音線データを帯域調整フィルター136aに出力するとともに、差音成分が抽出された音線データを帯域調整フィルター136bに出力する。
【0034】
帯域調整フィルター136aは、入力した音線データに対し、2次高調波成分の周波数帯域以外の信号成分を除去するようなフィルター処理を施す帯域制限フィルター(Band Pass Filter)である。帯域調整フィルター136aは、フィルター処理を施した音線データを位相調整フィルター137aに出力する。なお、本実施の形態において、帯域調整フィルター136aを設けない構成としてもよい。
位相調整フィルター137aは、入力した音線データの位相を所定量だけ変位させて出力するフィルターである。音線データの位相の変位量は、制御部18からの指示により、例えば、受信する反射超音波の深度に応じて可変する。このように構成することで、深度によっては高調波成分の帯域が広がらないような場合でも、位相の変位量を調整することで広帯域化を図ることができるようになる。
【0035】
帯域調整フィルター136bは、入力した音線データに対し、差音成分の周波数帯域以外の信号成分を除去するようなフィルター処理を施す帯域制限フィルターである。帯域調整フィルター136bは、フィルター処理を施した音線データを位相調整フィルター137bに出力する。なお、本実施の形態において、帯域調整フィルター136bを設けない構成としてもよい。
位相調整フィルター137bは、入力した音線データの位相を所定量だけ変位させて出力するフィルターである。音線データの位相の変位量は、制御部18からの指示により、例えば、受信する反射超音波の深度に応じて可変する。このように構成することで、深度によっては高調波成分の帯域が広がらないような場合でも、位相の変位量を調整することで広帯域化を図ることができるようになる。
なお、本実施の形態では、2次高調波成分の位相を変更するための位相調整フィルター137aと、差音成分の位相を変更するための位相調整フィルター137bとの両方を設けるようにしたが、何れか一方のみ設けられた態様であってもよい。
【0036】
信号加算器138は、位相調整フィルター137a及び位相調整フィルター137bから出力された音線データを加算することによって差音成分と2次高調波成分とが合成された音線データを生成し、画像生成部14に出力する。
【0037】
以上のように、位相調整フィルター137a,137bは、信号成分抽出部によって抽出された高次高調波成分と差音成分との間の相対的な位相関係を変更する位相変更部を構成する。
また、信号加算器138は、位相変更部によって相対的な位相関係が変更された高次高調波成分及び差音成分を合成する信号合成部を構成する。
【0038】
画像生成部14は、図5に示すように、例えば、包絡線検波部141、対数変換部142及び輝度変換部143を備えている。
包絡線検波部141は、入力した音線データに対して全波整流を行い、包絡線データを得る。包絡線検波部141は、取得した包絡線データを対数変換部142に出力する。
対数変換部142は、入力した包絡線データに対して対数増幅を行う。このとき、ゲインやダイナミックレンジの調整等を行ってもよい。
輝度変換部143は、対数増幅された包絡線データの示す信号の大きさを256階調に量子化する振幅/輝度変換を行ってBモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。輝度変換部143は、このようにして生成されたBモード画像データをメモリー部15に出力する。
【0039】
メモリー部15は、図2に示すように、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、メモリー部15は、フレーム単位により構成された超音波画像データとして記憶することができる。メモリー部15に記憶された超音波画像データは、制御部18の制御に従って読み出され、DSC16に送信される。
【0040】
DSC16は、メモリー部15より受信した超音波画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0041】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。本実施の形態では、表示部17として、白色もしくはフルカラーLED(Light-Emitting Diode)のバックライトを備えたLCDが適用されている。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンター等の印刷装置等を適用してもよい。
【0042】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0043】
次に、上述のようにして構成された超音波画像診断装置Sの送信部12によって生成される駆動信号について説明する。
本実施の形態では、超音波画像診断装置Sにより、4回の超音波の送受信を行って1つの音線データを得ることで、広帯域で良質な高調波成分を取得できるように構成されている。より具体的には、送信部12の駆動信号波形設定部123により、時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させ、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号とがそれぞれ生成されるように駆動信号の波形を設定し、第1〜第4の送信信号をそれぞれ送受信することにより得られた受信信号を、受信部13の信号成分抽出部135及び信号加算器138により合成することによって、広帯域で良質な高調波成分を取得する。
【0044】
先ず、送信部12は、駆動信号波形設定部123によって第1の送信信号を生成する。図6は、第1の送信信号に適用される好ましい駆動信号の波形の一例を示している。
すなわち、図6に示される第1の送信信号の波形は、1周期がT0の周期関数f(t)で表された矩形波であり、デューティー比を規定するパラメーターA及びパラメーターBを使用してフーリエ級数展開を行って、周波数1/T0の整数倍の成分の和として表現されたものである。図6に示すように、−T0/2からT0/2までのパルスからなる第1の送信信号の波形は、時間軸で非対称の信号波形により形成されている。
そして、図6に示される周期関数f(t)は、下記式(1)によって表すことができる。
【数1】
【0045】
上記式(1)中、成分a0、係数an及び係数bnは、下記式(2)〜(4)に示される式に置き換えることができる。
【数2】
【0046】
そして、n=1のとき、係数a1及び係数b1は下記式(5)及び(6)によって示される。
【数3】
【0047】
また、n=2のとき、係数a2及び係数b2は下記式(7)及び(8)によって示される。
【数4】
【0048】
ここで、使用する超音波探触子2の帯域特性により、超音波探触子2を通過する送信信号の波形の成分は、第1の基本波成分及び第1の基本波成分の2倍の周波数成分である第2の基本波成分が支配的となる。したがって、超音波探触子2の帯域特性により規定される帯域よりも低周波である成分a0、及び、第1の基本波成分の3倍以上の周波数成分については無視することができ、図6に示される周期関数f(t)は、下記式(9)によって近似的に表すことができる。
【数5】
【0049】
したがって、上記式(9)によって表された第1の基本波成分及び第2の基本波成分を主要な成分とする送信超音波が、超音波探触子2によって出力される。
なお、第1の送信信号の波形は上述したものに限定されず、適宜設定することができる。
【0050】
次に、送信部12は、駆動信号波形設定部123によって第2の送信信号を生成する。第2の送信信号は、第1の送信信号の位相を180度変位させることにより形成される。すなわち、第2の送信信号は、第1の送信信号の信号波形を位相反転させたものである。
このようにして生成された第2の送信信号は、周期関数−f(t)によって表される。ここで、超音波探触子2を通過する第2の送信信号の波形の成分も、第1の送信信号と同様に、第1の基本波成分及び第2の基本波成分が支配的となるため、周期関数−f(t)は、下記式(10)によって近似的に表すことができる。
【数6】
【0051】
したがって、上記式(10)によって表された第1の基本波成分及び第2の基本波成分を主要な成分とする送信超音波が、超音波探触子2によって出力される。
【0052】
次に、送信部12は、駆動信号波形設定部123によって第3の送信信号を生成する。第3の送信信号は、図7に示すように、−T0/2からT0/2までのパルスからなる第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させることにより形成される。
このようにして生成された第3の送信信号は、図7に示すように、周期関数g(t)によって表される。ここで、超音波探触子2を通過する第3の送信信号の波形の成分も、第1の送信信号と同様に、第1の基本波成分及び第2の基本波成分が支配的となるため、周期関数g(t)は、下記式(11)によって近似的に表すことができる。
【数7】
【0053】
したがって、上記式(11)によって表された第1の基本波成分及び第2の基本波成分を主要な成分とする送信超音波が、超音波探触子2により出力される。
【0054】
次に、送信部12は、駆動信号波形設定部123によって第4の送信信号を生成する。第4の送信信号は、第1の送信信号の信号波形を位相反転し、さらに時間軸で反転させることにより形成される。
このようにして生成された第4の送信信号は、周期関数−g(t)によって表される。ここで、超音波探触子2を通過する第4の送信信号の波形の成分も、第1の送信信号と同様に、第1の基本波成分及び第2の基本波成分が支配的となるため、周期関数−g(t)は、下記式(12)によって近似的に表すことができる。
【数8】
【0055】
したがって、上記式(12)によって表された第1の基本波成分及び第2の基本波成分を主要な成分とする送信超音波が、超音波探触子2によって出力される。
【0056】
以上のように生成された第1〜第4の送信信号は、図8に示すような関係として表すことができる。ここで、図8(a)に示される周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形は、フーリエ級数展開により、n=1の場合はsin波が、n=2の場合はcos波が表れていることがわかる。そして、図8(a)に示される周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形を位相反転させると、図8(b)に示されるように、第1項及び第2項の符号が反転した、周期関数−f(t)で表される第2の送信信号が生成される。これは、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形のうちの、sin波及びcos波の位相を180度変位させることと同義となる。また、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させると、図8(c)に示すように、第1項の符号が反転した、周期関数g(t)で表される第3の送信信号が生成される。これは、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形のうちの、sin波の位相のみを180度変位させることと同義となる。また、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形を位相反転させ、且つ、時間軸で反転させると、図8(d)に示すように、第2項の符号が反転した、周期関数−g(t)で表される第4の送信信号が生成される。これは、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形のうちの、cos波の位相のみを180変位させることと同義となる。ここで、図8(b)に示される第2の送信信号の信号波形を時間軸で反転させることによっても、第4の送信信号を得ることができる。さらに、図8(c)に示される第3の送信信号の信号波形を位相反転させることによっても、第4の送信信号を得ることができる。
【0057】
図8に示された第1〜第4の送信信号の信号波形の関係を周波数空間で表すと、図9に示すようになる。ここで、図9中、「Im」は虚数軸を示し、「Re」は実数軸を示す。図9(a)は、第1の送信信号の信号波形に含まれるsin波(第1の基本波成分n11)の位相及びcos波(第2の基本波成分n21)の位相を示している。また、図9(b)は、第2の送信信号の信号波形に含まれるsin波(第1の基本波成分n12)の位相及びcos波(第2の基本波成分n22)の位相を示している。また、図9(c)は、第3の送信信号の信号波形に含まれるsin波(第1の基本波成分n13)の位相及びcos波(第2の基本波成分n23)の位相を示している。また、図9(d)は、第4の送信信号の信号波形に含まれるsin波(第1の基本波成分n14)の位相及びcos波(第2の基本波成分n24)の位相を示している。
【0058】
図9に示すように、第1の送信信号に含まれる第1の基本波成分n11及び第2の基本波成分n21と、第2の送信信号に含まれる第1の基本波成分n12及び第2の基本波成分n22とはそれぞれ逆相の関係であることがわかる。また、第3の送信信号に含まれる第1の基本波成分n13及び第2の基本波成分n23と、第4の送信信号に含まれる第1の基本波成分n14及び第2の基本波成分n24とはそれぞれ逆相の関係であることがわかる。
【0059】
本実施の形態では、送信部12は、第1の送信信号を形成する最も適切な信号波形の一例として、図10に示すような矩形波による第1の送信信号Sを生成するようにしている。この第1の送信信号Sは、1周期が176nsecであって、パラメーターAが16nsecに設定され、パラメーターBが56nsecに設定されている。すなわち、第1の送信信号Sは、周期の始期の時点で強度が0から1.0まで立ち上がった後、パラメーターAによって規定される16nsecが経過した時点で強度が1.0から−1.0まで立ち下がる。その後、第1の送信信号Sは、パラメーターBによって規定される56nsecが経過した時点で、強度が−1.0から1.0まで立ち上がった後、パラメーターAによって規定される16nsecの間、強度1.0の状態が維持されるように半周期(88nsec)分の信号波形が形成されている。その後、第1の送信信号Sは、周期の終期となるまで強度を1.0に維持した後、0まで立ち下がるような信号波形が形成されている。
【0060】
以上のように形成された第1の送信信号Sをフーリエ級数展開すると、5.7MHzの第1の基本波成分F0と、その2倍の周波数11.4MHzである第2の基本波成分F1とが含まれていることがわかる。
【0061】
本実施の形態では、第1の送信信号SにおけるパラメーターBを以下の理論により設定している。図11は、第1の基本波成分F0及び第2の基本波成分F1の、矩形波の信号が立ち上がってからの経過時間と各基本波成分の強度との関係について示しており、図12は、第1の基本波成分F0の強度と第2の基本波成分F1の強度とを乗じて得た強度積FPを示している。
図12に示すように、第1の基本波成分F0及び第2の基本波成分F1の強度積FPは、矩形波の信号の立ち上がり後、およそ53nsecが経過した時点において極大値を示している。パラメーターBをこの極大値を示す時間に設定すると、差音成分が最も効率よく発生し、また、第1の基本波成分F0の損失も、矩形波の信号の立ち上がりから88nsecが経過した時点において示す極大値のおよそ84%程度であるため、最適となる。本実施の形態では、パラメーターA及びパラメーターBは、例えば、それぞれ8nsec単位で設定されるため、パラメーターBは、上述した53nsecに近似する56nsecに設定されている。
なお、パラメーターA及びパラメーターBについては、上述したようにして設定されたものに限定されず、種々の条件に応じて適宜設定することができるが、パラメーターAとパラメーターBとが等しいものでないものとするのが好適である。
【0062】
次に、上述のようにして生成された第1〜第4の送信信号を超音波探触子2に入力することによって出力される超音波が被検体内で伝搬することにより発生する非線形成分について説明する。
【0063】
超音波の伝搬は、その音圧が有意に高い場合には、非線形波動方程式で表される挙動を示すことが知られている。この非線形波動方程式は、元になる超音波が、超音波の元の波形が持つ周波数成分の干渉によって種々の周波数成分を発生させながら伝搬する挙動を表現しており、この超音波の伝搬によって発生する周波数成分は高調波成分(非線形成分)と呼ばれる。この高調波成分は、簡易的に、伝搬する超音波の波形の2乗の時間微分として近似できるため、伝搬の元になる超音波の波形(基本波)を特定できれば、発生する高調波成分も推定することができる。
【0064】
以上の理論により、上記式(9)に示される周期関数f(t)によって示される第1の送信信号が超音波探触子2に与えられて出力される超音波により生ずる高調波成分は、下記式(13)によって表すことができる。
【数9】
【0065】
ここでも、超音波探触子2の帯域特性によって通過する超音波の帯域が規定される。その結果、上記式(13)に示される高調波成分のうち、超音波探触子2を通過するのは、上記式(13)中の第1項に示される第1の基本波成分の2倍の周波数成分である高次高調波成分としての2次高調波成分と、上記式(13)中の第3項に示される第1の基本波成分及び第2の基本波成分の非線形効果から生ずる差音成分と、となる。すなわち、超音波探触子2を通過する高調波成分は、下記式(14)によって表すことができる。
【数10】
【0066】
上記式(14)に示される、第1の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる高調波成分を周波数空間で表すと、図13に示すようになる。ここで、図13(a)は、第1の送信信号の信号波形に含まれる第1の基本波成分n11と第2の基本波成分n21とを表しており、図13(b)は、第1の基本波成分n11の2次高調波成分s1と、第1の基本波成分n11及び第2の基本波成分n21の差音成分d1とを示している。図13(b)に示すように、2次高調波成分s1と差音成分d1とは位相が異なっていることがわかる。
【0067】
また、上記式(10)に示される周期関数−f(t)によって示される第2の送信信号が超音波探触子2に与えられて出力される超音波により生ずる高調波成分については、上記式(13)によって第1の送信信号と同様にして表すことができる。
【0068】
また、上記式(11)に示される周期関数g(t)によって示される第3の送信信号が超音波探触子2に与えられて出力される超音波により生ずる高調波成分は、下記式(15)によって表すことができる。
【数11】
【0069】
同様に、上記式(12)に示される周期関数−g(t)によって示される第4の送信信号が超音波探触子2に与えられて出力される超音波により生ずる高調波成分についても、上記式(15)によって表すことができる。
【0070】
そして、上述した第1〜第4の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる高調波成分の関係を周波数空間で表すと、図14に示すようになる。ここで、図14(a)は、第1の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる2次高調波成分s1の位相及び差音成分d1の位相を示している。また、図14(b)は、第2の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる2次高調波成分s2の位相及び差音成分d2の位相を示している。また、図14(c)は、第3の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる2次高調波成分s3の位相及び差音成分d3の位相を示している。また、図14(d)は、第4の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる2次高調波成分s4の位相及び差音成分d4の位相を示している。
【0071】
図14に示すように、第1の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s1及び差音成分d1と、第2の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s2及び差音成分d2とは、それぞれ同相であることがわかる。また、第3の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s3及び差音成分d3と、第4の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s4及び差音成分d4とは、それぞれ同相であることがわかる。
【0072】
また、図14に示すように、第1の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s1、第2の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s2、第3の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s3及び第4の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s4は、何れも同相で発生していることがわかる。これは、2次高調波成分が第1の基本波成分の2乗によって求められるためである。
【0073】
また、差音成分は、第1の基本波成分及び第2の基本波成分の非線形効果によって発生する。
第1の送信信号と第2の送信信号とは位相反転の関係にあって第1の基本波成分と第2の基本波成分との位相関係が実質的に同じであるため、第1の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d1及び第2の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d2は、図14に示すように、同相で発生する。
また、第3の送信信号及び第4の送信信号は、第1の送信信号とは時間軸反転の関係にあるため、第1の基本波成分と第2の基本波成分との位相関係が第1の送信信号とは異なる。したがって、第3の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d3の位相及び第4の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d4の位相は、図14に示すように、第1の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d1とは逆相で現れる。
【0074】
以上のようにして第1〜第4の送信信号によって超音波探触子2から送信された送信超音波に対応する反射超音波を超音波探触子2にて受信することによって得られた受信信号に基づいて超音波画像データを生成する方法について説明する。
【0075】
先ず、超音波画像診断装置Sの受信部13は、上述のようにして第1〜第4の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波が超音波探触子2によって電気信号に変換されることにより得られた受信信号について、それぞれ、AMP131、ADC132及び整相加算部133によって上述した処理を行って音線データ(第1〜第4の音線データ)を生成し、音線メモリー134にそれぞれ領域を異ならせて保持する。ここで、第1の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波から得られた受信信号を第1の受信信号と呼び、第2の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波から得られた受信信号を第2の受信信号と呼び、第3の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波から得られた受信信号を第3の受信信号と呼び、第4の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波から得られた受信信号を第4の受信信号と呼ぶこととする。
【0076】
上述のようにして第1〜第4の音線データがそれぞれ音線メモリー134に保持されると、信号成分抽出部135は、以下のようにして高調波成分を抽出し、さらに、抽出した高調波成分から2次高調波成分と差音成分とに分離する。
ここで、超音波画像においては、受信信号に含まれる高調波成分のみを画像化することにより、低アーチファクトで高解像度の画像を得ることができることが知られている。そのため、受信信号から高調波成分のみを取り出し、これを画像化する様々な手法が知られている。受信信号から高調波成分のみを取り出す技術として広く知られているものにパルスインバージョンがある。これは、位相の反転した2つの送信超音波を送信し、それぞれに対応する反射超音波から得られる受信信号を加算することにより、受信信号に含まれる基本波成分を除去して高調波成分のみを抽出するものであり、高調波成分の位相不変性を利用した技術である。
本実施の形態では、このパルスインバージョンの技術を利用して高調波成分を抽出した上で、この高調波成分から2次高調波成分と差音成分とに分離するようにしている。
【0077】
信号成分抽出部135は、音線メモリー134から第1の音線データと第2の音線データとを読み出し、これらを加算して第1の合成データを生成する。すなわち、信号成分抽出部135は、第1の音線データと第2の音線データとを加算することにより、基本波成分が除去されて高調波成分が強調された第1の合成データを生成する。つまり、第1の音線データと第2の音線データとが加算されると、図15(a)に示される第1の音線データに含まれる第1の基本波成分n11及び第2の基本波成分n21が、図15(b)に示される第2の音線データに含まれる第1の基本波成分n12及び第2の基本波成分n22とそれぞれ逆相であるため、図15(c)に示すように、第1の基本波成分及び第2の基本波成分は相殺されて除去される。一方、図15(a)に示される第1の音線データに含まれる2次高調波成分s1及び差音成分d1は、第2の音線データに含まれる2次高調波成分s2及び差音成分d2と同相であるため、図15(c)に示すように、加算後の音線データ、すなわち、第1の合成データにおいて、2次高調波成分s12及び差音成分d12が強調される。このようにして、信号成分抽出部135は、第1の受信信号(第1の音線データ)と第2の受信信号(第2の音線データ)とから高調波成分の抽出を行う。
【0078】
また、信号成分抽出部135は、同様にして、音線メモリー134から第3の音線データと第4の音線データとを読み出し、これらを加算して第2の合成データを生成する。その結果、第1の基本波成分及び第2の基本波成分が相殺され、2次高調波成分s34及び差音成分d34(図16(b)参照)が強調された第2の合成データが生成される。このようにして、信号成分抽出部135は、第3の受信信号(第3の音線データ)と第4の受信信号(第4の音線データ)とから高調波成分の抽出を行う。
【0079】
そして、信号成分抽出部135は、上述のようにして得られた第1の合成データと第2の合成データとから、以下のようにして2次高調波成分と差音成分との分離を行う。すなわち、図16(a)に示される第1の合成データと図16(b)に示される第2の合成データとは、2次高調波成分が同相の関係にあって、差音成分が逆相の関係にある。そのため、信号成分抽出部135は、最初に、第1の合成データと第2の合成データとを加算することにより、図16(c)に示されるような差音成分が除去されて2次高調波成分s1234が強調された第3の合成データを生成することができる。また、信号成分抽出部135は、第1の合成データと第2の合成データとを減算することにより、図16(d)に示されるような2次高調波成分が除去されて差音成分d1234が強調された第4の合成データを生成することができる。
【0080】
ところで、従来のパルスインバージョンの技術によれば、受信信号から高調波成分の抽出を行うことができるが、抽出された高調波成分には2次高調波成分と差音成分とが混然一体に含まれているため、これらを分離抽出することができなかった。本実施の形態では、上述のように構成することにより、高調波成分から2次高調波成分と差音成分とを分離抽出することができる。
【0081】
信号成分抽出部135は、上述のようにして生成された第3の合成データを帯域調整フィルター136aに出力し、第4の合成データを帯域調整フィルター136bに出力する。帯域調整フィルター136a,136bによってそれぞれフィルター処理された各合成データは、それぞれ、位相調整フィルター137a,137bに入力される。
【0082】
ここで、本実施の形態における高調波成分の位相調整の手法について説明する。
【0083】
図17(a)は、第1の合成データを示している。すなわち、図17(a)の周波数空間上に示される音線データは、第1の音線データと第2の音線データとが加算されることにより、従来のパルスインバージョンによって高調波成分が強調された音線データである。
【0084】
図17(a)に示される第1の合成データには、2次高調波成分s12と差音成分d12とが含まれている。実際には、これらの高調波成分は有限長の波形によって構成されているため、図17(b)に示すように、それぞれ一定の広がりを有する帯域を持っている。これらの高調波成分の帯域は、ある周波数帯で互いに重なり合う場合がある。図17(b)に示す例では、2次高調波成分の帯域SH0の低周波領域と、差音成分の帯域DT0の高周波領域とが重なっている。このように、2次高調波成分の帯域SH0と差音成分の帯域DT0とが重なった領域Pでは、2つの高調波成分の位相干渉が生じ、これらの高調波成分の位相状態によって相互に信号の強度を強め合ったり、弱め合ったりする。
【0085】
より具体的には、例えば、図18(a)に示すように、2次高調波成分の帯域SH1の位相と差音成分の帯域DT1の位相とが近似した場合には、互いに信号の強度を強め合う関係となり、2次高調波成分と差音成分とが重畳された結果、帯域が拡大された高調波成分の帯域AW1を持つようになる。このような高調波成分の帯域AW1を有する音線データが得られれば、時間分解能が向上し、したがって、高分解能で高画質な超音波画像を取得することができる。
【0086】
一方、例えば、図18(b)に示すように、2次高調波成分の帯域SH2の位相と差音成分の帯域DT2の位相とが離間した場合には、互いに信号の強度を弱め合う関係となり、2次高調波成分と差音成分とが重畳された結果、帯域が狭小された高調波成分の帯域AW2を持つようになる。このような高調波成分の帯域AW2では、帯域に谷間が生じてしまい、帯域が分離されるようになる。したがって、高調波成分を抽出したとしても、超音波画像の高画質化が望めないという結果となってしまう。
【0087】
従来の超音波画像診断装置では、受信信号を信号処理することによっては2次高調波成分と差音成分とを分離抽出することができなかったため、例えば、2次高調波成分の位相と差音成分の位相とが近似するように、送信信号の信号波形を調整するようにしたが、これらの高調波成分の位相を常に良好な状態に制御することは、超音波が伝搬する被検体の媒質の不均一性や、これによって生じるビームフォーミングの精度不良等により、超音波の位相が崩れてしまうことがあるため、困難であった。したがって、送信信号の信号波形を調整して送信超音波を送信し、反射超音波から得られた受信信号から高調波成分を抽出したとしても、図18(b)に示すような、2次高調波成分と差音成分とが弱め合うような受信信号が取得される場合がある。
【0088】
また、2次高調波成分と差音成分とを帯域制限フィルターを用いて分離することも行われたが、2次高調波成分と差音成分とが混然一体に含まれた受信信号では、位相状態の分離を行うことができないため、超音波画像の高画質化を望むことはできない。
【0089】
これに対し、本実施の形態では、上述のようにして、受信信号から2次高調波成分と差音成分とを分離抽出することができるので、位相調整フィルター137a,137bによって2次高調波成分の位相及び差音成分の位相についてそれぞれ自在に調整することができる。すなわち、2次高調波成分の位相及び差音成分の位相を相対的に近似させて、高調波成分の帯域を拡大させることができるようになる。
【0090】
例えば、図19(a)に示すように、2次高調波成分の帯域SH2の位相と差音成分の帯域DT2の位相とが180度離間するような場合には、図19(b)及び図19(c)に示すように、信号成分抽出部135によって2次高調波成分と差音成分とを分離させた後、位相調整フィルター137bによって差音成分の位相を180度ずらす。すると、図19(d)に示すように、位相が変更された差音成分の帯域DT2aが2次高調波成分の帯域SH2と近似するようになる。そして、信号加算器138によってこれらの高調波成分が加算されることにより、帯域が拡大されて広帯域となった高調波成分の帯域AW2aを有する音線データを得ることができるようになる。
【0091】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、上述のようにして2次高調波成分と差音成分とを分離抽出した後、それぞれの位相の調整を行うことに代えて、それぞれの高調波成分について輝度変換を行い、これらを合成(コンパウンド処理)して超音波画像データを得る。2次高調波成分と差音成分とをそれぞれ輝度変換して得られた輝度データを加算することにより、スペックルやノイズ(以下、ノイズ等ということがある。)を抑圧し、超音波画像の空間分解能を向上させることができる。
第2の実施の形態では、超音波画像診断装置Sの受信部13と画像生成部14とが変更された点で、第1の実施の形態とは異なっている。なお、第1の実施の形態における超音波画像診断装置Sと同様の機能構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
第2の実施の形態における超音波画像診断装置Sの受信部13は、図20に示すように、第1の実施の形態において上述したようにして信号成分抽出部135によって第3の合成データ及び第4の合成データを生成し、それぞれについて帯域調整フィルター136a,136bによってフィルター処理を行った後、これらを画像生成部14に出力する。
【0093】
画像生成部14は、図21に示すように、受信部13から送信されたフィルター処理後の第3の合成データ及び第4の合成データについて、それぞれ、包絡線検波部141a,141bによる包絡線データへの変換、対数変換部142a,142bによる対数増幅、及び、輝度変換部143a,143bによる振幅/輝度変換を行った後、輝度データ加算器144によって第3の合成データ及び第4の合成データからそれぞれ得られた輝度データを加算してBモード画像データを生成し、メモリー部15に出力する。すなわち、輝度データ加算器144は、第3の合成データ及び第4の合成データからそれぞれ得られた輝度データに対して周波数コンパウンド処理を行ってBモード画像データを得る。
【0094】
ところで、スペックルを抑制する方法としては、受信信号を異なる周波数成分からなる2つの信号に分離し、それぞれの信号を輝度変換してから合成する方法(周波数コンパウンド)も考えられる。受信信号の分離はフィルター処理によって行われる。このとき、周波数コンパウンド処理の効果を向上させるために、フィルターの通過帯域が重複しないように設定する手法が知られている。この手法によれば、フィルター処理された受信信号は狭帯域化されてしまう。その結果、解像度の低下を誘発することとなってしまう。また、図22に示すように、フィルターの通過帯域をある程度重複させて設定する手法が取られる場合もある。この手法によれば、高調波成分の帯域HS0の狭帯域化は抑制されるが、複数のフィルターの通過帯域FL1,FL2の重複する部分Qにおいてはノイズ等の抑圧効果が発揮されないという問題がある。すなわち、従来の周波数コンパウンドの手法では、2次高調波成分の帯域と差音成分の帯域とが重畳する領域については、フィルター処理によってそれぞれの成分に分離することができないため、解像度の向上とノイズ等の抑圧との両者の課題を同時に解消することは困難であった。
【0095】
これに対し、本実施の形態では、図23に示すように、本来的に発生のプロセスの異なる2次高調波成分SH3と差音成分DT3との無相関性を確保したままで高調波成分の分離を行うことができ、これら分離された高調波成分に基づいて周波数コンパウンド処理が実施されるので、高調波成分の帯域HS1の狭帯域化を抑制でき、解像度を損失することなく、ノイズ等が効果的に抑圧された超音波画像を取得することができるようになる。
【0096】
以上説明したように、第1及び第2の実施の形態によれば、超音波探触子2は、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する。送信部12は、時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させて、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号と、をそれぞれ駆動信号として出力して超音波探触子2に送信超音波を生成させる。信号成分抽出部135は、第1の送信信号によって超音波探触子2から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第1の受信信号と、第2の送信信号によって超音波探触子2から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第2の受信信号と、第3の送信信号によって超音波探触子2から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第3の受信信号と、第4の送信信号によって超音波探触子2から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第4の受信信号と、を合成して2次高調波成分と差音成分とをそれぞれ抽出する。その結果、簡便な構成で送信超音波を出力可能な矩形波による送信信号によって広帯域の高調波成分を取得し、良好な超音波画像を取得することができるようになる。また、発生のプロセスが異なる複数種類の高調波成分を受信信号から分離抽出してそれぞれについて処理することができるので、高調波成分を自由に制御して良好な超音波画像データを生成することができる。
【0097】
また、第1の実施の形態によれば、位相調整フィルター137a,137bは、信号成分抽出部135によって抽出された2次高調波成分と差音成分との間の相対的な位相関係を変更する。信号加算器138は、位相調整フィルター137a,137bによって相対的な位相関係が変更された2次高調波成分及び差音成分を合成する。画像生成部14は、信号加算器138によって合成された受信信号に基づいて被検体内の超音波画像データを生成する。その結果、発生のプロセスが異なる複数種類の高調波成分の位相を操作して、広帯域な高調波成分とすることができるので、高分解能で高画質な超音波画像を取得することができるようになる。
【0098】
また、第1の実施の形態によれば、位相調整フィルター137a,137bは、2次高調波成分と差音成分との間の相対的な位相関係の変更量を、超音波探触子2が受信する反射超音波の深度に応じて設定する。その結果、深度に応じて変化する高調波成分の位相差を考慮して位相を操作することができるので、深度に応じて高分解能で高画質な超音波画像を取得することができるようになる。
【0099】
また、第2の実施の形態によれば、画像生成部14は、信号成分抽出部135によって抽出された2次高調波成分及び差音成分のそれぞれについて、信号の大きさを画像の輝度を示す輝度データに変換する。画像生成部14は、2次高調波成分から変換された輝度データと、差音成分から変換された輝度データとを合成して被検体内の超音波画像データを生成する。その結果、広帯域でノイズやスペックルが効果的に抑制された超音波画像を取得することができる。
【0100】
また、第1及び第2の実施の形態によれば、信号成分抽出部135は、第1の受信信号、第2の受信信号、第3の受信信号及び第4の受信信号の和を求めることにより2次高調波成分を抽出する。信号成分抽出部135は、第1の受信信号及び第2の受信信号の和と、第3の受信信号及び第4の受信信号の和との差分を求めることにより差音成分を抽出する。その結果、発生のプロセスが異なる複数種類の高調波成分を、簡便な方法にて受信信号から容易に分離抽出することができるようになる。
【0101】
また、第1及び第2の実施の形態によれば、送信部12は、矩形波のパルス信号にて駆動信号を出力する。その結果、簡素な構成によって実現できるので、製造コストを低減できる。
【0102】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波画像診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0103】
また、本実施の形態では、受信信号に含まれる高調波成分として2次高調波成分と差音成分としているが、3次以上の高次高調波成分が含まれていてもよい。
【0104】
また、本実施の形態では、超音波探触子2が受信する反射超音波の深度に応じて2次高調波成分と差音成分との位相の変位量を変更するようにしたが、深度にかかわらず2次高調波成分と差音成分との位相の同一の変位量としてもよい。
【0105】
また、本実施の形態において、受信信号から2次高調波成分と差音成分とを分離抽出するための演算方法や演算順序が異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0106】
S 超音波診断装置
2 超音波探触子
12 送信部
122 パルス発生回路
123 駆動信号波形設定部
13 受信部
135 信号成分抽出部
137a,137b 位相調整フィルター(位相変更部)
138 信号加算器(信号合成部)
14 画像生成部
144 輝度データ加算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像診断装置は、超音波パルス反射法により、体表から被検体内の軟組織の断層像を低侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波画像診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線等の被爆がなく安全性が高い、ドップラー効果を応用して血流イメージングが可能等の多くの特長を有する。そのため、循環器系(心臓の冠動脈)、消化器系(胃腸)、内科系(肝臓、膵臓、脾臓)、泌尿器科系(腎臓、膀胱)、および産婦人科系等で広く利用されている。
【0003】
さらに、近年、超音波画像を用いた診断の精度向上のために、従来のような超音波の基本波成分ではなく、高調波成分を用いたハーモニックイメージング(HI)診断が行われている。高調波成分は、送信する基本波成分が被検体内における非線形性の影響を受けて生じる周波数成分である。HI診断は、従来の基本波成分によるBモード診断では得られない鮮明な診断像が得られることから、標準的な診断モダリティとなりつつある。
【0004】
HI診断により得られる超音波画像は、基本波成分による超音波画像と比較して、サイドローブレベルが小さいことでS/Nが高く、コントラスト分解能が向上すること、ビーム幅が細くなり方位分解能が向上すること等の利点を有する。さらに、近距離では音圧が小さく、さらに音圧の変動が少ないので多重反射が起こらないこと、焦点以遠の減衰は基本波成分並みであり、高調波成分は、同一周波数の基本波成分に比べ深達度を大きく取れること、等の多くの利点を有している。
【0005】
高調波成分による超音波画像診断は、上述したように、多くの利点を有しているが、送受信を行う超音波の周波数帯域は、使用する超音波探触子の特性により規定される周波数帯域に限定されてしまうため、距離分解能が向上しないという問題があった。
【0006】
これに対し、従来の超音波画像診断装置において、周波数の異なる2つの基本波について、それぞれ波形の位相調整を行って超音波の送受信を行い、受信した2つの基本波成分から得られる差音成分を利用して広帯域の高調波成分を取得するようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【0007】
また、位相が調整された広帯域な波形の送信信号により超音波の送信を行い、これを受信して得たベースバンド高調波成分を利用して広帯域の高調波成分を取得するようにしたものもある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−298620号公報
【特許文献2】特開2008−43721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記各特許文献に記載された技術の何れも、位相が調整された特殊な波形である送信信号を生成する必要があることから、特別な送信回路構成を必要とし、回路規模が大きくなりコストがかかる。
【0010】
また、一般的な送信信号として適用される矩形波を生成する送信回路を利用した超音波画像診断装置が知られているが、このような超音波画像診断装置では、送信信号に複数周波数を含ませたり、広帯域な信号波形による送信超音波の出力は可能であるが、位相の調整を任意に行うことが困難であり、広帯域の高調波成分を取得することは困難である。
【0011】
また、上記各特許文献に記載された技術の何れも、所望の波形に調整された送信信号を生成できたとしても、超音波が伝搬する媒質の不均一性やビームフォーミング等により、送信信号を調整して得られた超音波の位相が超音波の伝搬中に崩れてしまうことがあるが、上記各特許文献に記載された技術では、このような状態を調整することはできないため、良好な超音波画像を取得することができない場合がある。
【0012】
本発明の課題は、簡便な構成で送信超音波を出力可能な送信信号によって広帯域の高調波成分を取得し、良好な超音波画像を取得することができる超音波画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、超音波画像診断装置において、
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する超音波探触子と、
時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を位相反転させ、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号と、をそれぞれ前記駆動信号として出力して前記超音波探触子に前記送信超音波を生成させる送信部と、
前記第1の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第1の受信信号と、前記第2の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第2の受信信号と、前記第3の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第3の受信信号と、前記第4の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第4の受信信号と、を合成して高次高調波成分と差音成分とをそれぞれ抽出する信号成分抽出部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波画像診断装置において、
前記信号成分抽出部によって抽出された前記高次高調波成分と前記差音成分との間の相対的な位相関係を変更する位相変更部と、
前記位相変更部によって相対的な位相関係が変更された前記高次高調波成分及び前記差音成分を合成する信号合成部と、
前記信号合成部によって合成された受信信号に基づいて前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超音波画像診断装置において、
前記位相変更部は、前記高次高調波成分と前記差音成分との間の相対的な位相関係の変更量を、前記超音波探触子が受信する反射超音波の深度に応じて設定することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の超音波画像診断装置において、
前記信号成分抽出部によって抽出された前記高次高調波成分及び前記差音成分のそれぞれについて、信号の大きさを画像の輝度を示す輝度データに変換し、前記高次高調波成分から変換された輝度データと、前記差音成分から変換された輝度データとを合成して前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記高次高調波成分は2次高調波成分であることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の超音波画像診断装置において、
前記信号成分抽出部は、前記第1の受信信号、第2の受信信号、第3の受信信号及び第4の受信信号の和を求めることにより前記2次高調波成分を抽出し、前記第1の受信信号及び第2の受信信号の和と、前記第3の受信信号及び第4の受信信号の和との差分を求めることにより前記差音成分を抽出することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、矩形波のパルス信号にて前記駆動信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便な構成で送信超音波を出力可能な送信信号によって広帯域の高調波成分を取得し、良好な超音波画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】超音波画像診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波画像診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】送信部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】受信部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】第1の送信信号の波形について説明する図である。
【図7】第3の送信信号の波形について説明する図である。
【図8】第1〜第4の送信信号の関係性について説明する図である。
【図9】第1〜第4の送信信号の信号波形を周波数空間で表した図である。
【図10】第1の送信信号の波形の一例について説明する図である。
【図11】基本波成分の経過時間と強度との関係を示す図である。
【図12】第1の基本波成分と第2の基本波成分との強度積を示す図である。
【図13】送信信号に対する反射超音波の高調波成分の位相の関係について説明する図である。
【図14】送信信号に対する反射超音波の高調波成分の位相の関係について説明する図である。
【図15】高調波成分を抽出する過程について説明する図である。
【図16】2次高調波成分と差音成分とを分離抽出する過程について説明する図である。
【図17】2次高調波成分と差音成分の帯域について説明する図である。
【図18】高調波成分の帯域について説明する図である。
【図19】高調波成分の位相調整の手順について説明する図である。
【図20】第2の実施の形態に係る受信部の概略構成を示すブロック図である。
【図21】第2の実施の形態に係る画像処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図22】従来の周波数コンパウンドの手法について説明する図である。
【図23】第2の実施の形態に係る周波数コンパウンドの手法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波画像診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る超音波画像診断装置Sは、図1及び図2に示すように、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0024】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0025】
超音波画像診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリー部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0026】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0027】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。より具体的には、送信部12は、図3に示すように、例えば、クロック発生回路121、パルス発生回路122、駆動信号波形設定部123及び遅延回路124を備えている。
【0028】
クロック発生回路121は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。
パルス発生回路122は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路122は、例えば、3値の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波によるパルス信号を発生させることができる。このとき、パルス信号の振幅については、正極性及び負極性で同一となるようにしたが、これに限定されない。なお、2値の電圧を切り替えてパルス信号を発生させる構成であってもよい。また、矩形波によるパルス信号に限らず、例えば、正弦波等、他の波形による信号を発生させるものであってもよい。
駆動信号波形設定部123は、パルス発生回路122から出力されるパルス信号のデューティー比を設定することにより、駆動信号の波形を設定する。すなわち、パルス発生回路122は、駆動信号波形設定部123によって設定されたデューティー比に従ったパルス波形によるパルス信号を出力する。なお、デューティー比は、例えば、操作入力部11による入力操作により可変可能に設定できるものであってもよい。また、超音波画像診断装置本体1に接続された超音波探触子2を識別することにより、識別した超音波探触子2に対応するデューディー比が設定されるように構成してもよい。なお、駆動信号波形設定部123によるデューティー比の設定の詳細については、後述する。
【0029】
遅延回路124は、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
【0030】
以上のように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することにより走査を行う。
【0031】
図2に示すように、受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、図4に示すように、AMP(Amplifier)131、ADC(Analog/Digital Converter)132、整相加算部133、音線メモリー134、信号成分抽出部135、帯域調整フィルター136a,136b、位相調整フィルター137a,137b及び信号加算器138を備えている。
【0032】
AMP131は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。
ADC132は、増幅された受信信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するための回路である。
整相加算部133は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。すなわち、整相加算部133は、振動子2a毎の受信信号に対して受信ビームフォーミングを行って音線データを生成する。
音線メモリー134は、整相加算部133にて生成された音線データを一時的に保持しておくためのメモリーである。音線メモリー134は、複数の音線データについて領域を異ならせて保持することができる。
【0033】
信号成分抽出部135は、音線メモリー134に保持されている複数の音線データを読み出し、これらを加減算処理することにより、差音成分と2次高調波成分とを抽出する。差音成分及び2次高調波成分の抽出の要領については後述する。信号成分抽出部135は、2次高調波成分が抽出された音線データを帯域調整フィルター136aに出力するとともに、差音成分が抽出された音線データを帯域調整フィルター136bに出力する。
【0034】
帯域調整フィルター136aは、入力した音線データに対し、2次高調波成分の周波数帯域以外の信号成分を除去するようなフィルター処理を施す帯域制限フィルター(Band Pass Filter)である。帯域調整フィルター136aは、フィルター処理を施した音線データを位相調整フィルター137aに出力する。なお、本実施の形態において、帯域調整フィルター136aを設けない構成としてもよい。
位相調整フィルター137aは、入力した音線データの位相を所定量だけ変位させて出力するフィルターである。音線データの位相の変位量は、制御部18からの指示により、例えば、受信する反射超音波の深度に応じて可変する。このように構成することで、深度によっては高調波成分の帯域が広がらないような場合でも、位相の変位量を調整することで広帯域化を図ることができるようになる。
【0035】
帯域調整フィルター136bは、入力した音線データに対し、差音成分の周波数帯域以外の信号成分を除去するようなフィルター処理を施す帯域制限フィルターである。帯域調整フィルター136bは、フィルター処理を施した音線データを位相調整フィルター137bに出力する。なお、本実施の形態において、帯域調整フィルター136bを設けない構成としてもよい。
位相調整フィルター137bは、入力した音線データの位相を所定量だけ変位させて出力するフィルターである。音線データの位相の変位量は、制御部18からの指示により、例えば、受信する反射超音波の深度に応じて可変する。このように構成することで、深度によっては高調波成分の帯域が広がらないような場合でも、位相の変位量を調整することで広帯域化を図ることができるようになる。
なお、本実施の形態では、2次高調波成分の位相を変更するための位相調整フィルター137aと、差音成分の位相を変更するための位相調整フィルター137bとの両方を設けるようにしたが、何れか一方のみ設けられた態様であってもよい。
【0036】
信号加算器138は、位相調整フィルター137a及び位相調整フィルター137bから出力された音線データを加算することによって差音成分と2次高調波成分とが合成された音線データを生成し、画像生成部14に出力する。
【0037】
以上のように、位相調整フィルター137a,137bは、信号成分抽出部によって抽出された高次高調波成分と差音成分との間の相対的な位相関係を変更する位相変更部を構成する。
また、信号加算器138は、位相変更部によって相対的な位相関係が変更された高次高調波成分及び差音成分を合成する信号合成部を構成する。
【0038】
画像生成部14は、図5に示すように、例えば、包絡線検波部141、対数変換部142及び輝度変換部143を備えている。
包絡線検波部141は、入力した音線データに対して全波整流を行い、包絡線データを得る。包絡線検波部141は、取得した包絡線データを対数変換部142に出力する。
対数変換部142は、入力した包絡線データに対して対数増幅を行う。このとき、ゲインやダイナミックレンジの調整等を行ってもよい。
輝度変換部143は、対数増幅された包絡線データの示す信号の大きさを256階調に量子化する振幅/輝度変換を行ってBモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。輝度変換部143は、このようにして生成されたBモード画像データをメモリー部15に出力する。
【0039】
メモリー部15は、図2に示すように、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、メモリー部15は、フレーム単位により構成された超音波画像データとして記憶することができる。メモリー部15に記憶された超音波画像データは、制御部18の制御に従って読み出され、DSC16に送信される。
【0040】
DSC16は、メモリー部15より受信した超音波画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0041】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。本実施の形態では、表示部17として、白色もしくはフルカラーLED(Light-Emitting Diode)のバックライトを備えたLCDが適用されている。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンター等の印刷装置等を適用してもよい。
【0042】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0043】
次に、上述のようにして構成された超音波画像診断装置Sの送信部12によって生成される駆動信号について説明する。
本実施の形態では、超音波画像診断装置Sにより、4回の超音波の送受信を行って1つの音線データを得ることで、広帯域で良質な高調波成分を取得できるように構成されている。より具体的には、送信部12の駆動信号波形設定部123により、時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させ、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号とがそれぞれ生成されるように駆動信号の波形を設定し、第1〜第4の送信信号をそれぞれ送受信することにより得られた受信信号を、受信部13の信号成分抽出部135及び信号加算器138により合成することによって、広帯域で良質な高調波成分を取得する。
【0044】
先ず、送信部12は、駆動信号波形設定部123によって第1の送信信号を生成する。図6は、第1の送信信号に適用される好ましい駆動信号の波形の一例を示している。
すなわち、図6に示される第1の送信信号の波形は、1周期がT0の周期関数f(t)で表された矩形波であり、デューティー比を規定するパラメーターA及びパラメーターBを使用してフーリエ級数展開を行って、周波数1/T0の整数倍の成分の和として表現されたものである。図6に示すように、−T0/2からT0/2までのパルスからなる第1の送信信号の波形は、時間軸で非対称の信号波形により形成されている。
そして、図6に示される周期関数f(t)は、下記式(1)によって表すことができる。
【数1】
【0045】
上記式(1)中、成分a0、係数an及び係数bnは、下記式(2)〜(4)に示される式に置き換えることができる。
【数2】
【0046】
そして、n=1のとき、係数a1及び係数b1は下記式(5)及び(6)によって示される。
【数3】
【0047】
また、n=2のとき、係数a2及び係数b2は下記式(7)及び(8)によって示される。
【数4】
【0048】
ここで、使用する超音波探触子2の帯域特性により、超音波探触子2を通過する送信信号の波形の成分は、第1の基本波成分及び第1の基本波成分の2倍の周波数成分である第2の基本波成分が支配的となる。したがって、超音波探触子2の帯域特性により規定される帯域よりも低周波である成分a0、及び、第1の基本波成分の3倍以上の周波数成分については無視することができ、図6に示される周期関数f(t)は、下記式(9)によって近似的に表すことができる。
【数5】
【0049】
したがって、上記式(9)によって表された第1の基本波成分及び第2の基本波成分を主要な成分とする送信超音波が、超音波探触子2によって出力される。
なお、第1の送信信号の波形は上述したものに限定されず、適宜設定することができる。
【0050】
次に、送信部12は、駆動信号波形設定部123によって第2の送信信号を生成する。第2の送信信号は、第1の送信信号の位相を180度変位させることにより形成される。すなわち、第2の送信信号は、第1の送信信号の信号波形を位相反転させたものである。
このようにして生成された第2の送信信号は、周期関数−f(t)によって表される。ここで、超音波探触子2を通過する第2の送信信号の波形の成分も、第1の送信信号と同様に、第1の基本波成分及び第2の基本波成分が支配的となるため、周期関数−f(t)は、下記式(10)によって近似的に表すことができる。
【数6】
【0051】
したがって、上記式(10)によって表された第1の基本波成分及び第2の基本波成分を主要な成分とする送信超音波が、超音波探触子2によって出力される。
【0052】
次に、送信部12は、駆動信号波形設定部123によって第3の送信信号を生成する。第3の送信信号は、図7に示すように、−T0/2からT0/2までのパルスからなる第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させることにより形成される。
このようにして生成された第3の送信信号は、図7に示すように、周期関数g(t)によって表される。ここで、超音波探触子2を通過する第3の送信信号の波形の成分も、第1の送信信号と同様に、第1の基本波成分及び第2の基本波成分が支配的となるため、周期関数g(t)は、下記式(11)によって近似的に表すことができる。
【数7】
【0053】
したがって、上記式(11)によって表された第1の基本波成分及び第2の基本波成分を主要な成分とする送信超音波が、超音波探触子2により出力される。
【0054】
次に、送信部12は、駆動信号波形設定部123によって第4の送信信号を生成する。第4の送信信号は、第1の送信信号の信号波形を位相反転し、さらに時間軸で反転させることにより形成される。
このようにして生成された第4の送信信号は、周期関数−g(t)によって表される。ここで、超音波探触子2を通過する第4の送信信号の波形の成分も、第1の送信信号と同様に、第1の基本波成分及び第2の基本波成分が支配的となるため、周期関数−g(t)は、下記式(12)によって近似的に表すことができる。
【数8】
【0055】
したがって、上記式(12)によって表された第1の基本波成分及び第2の基本波成分を主要な成分とする送信超音波が、超音波探触子2によって出力される。
【0056】
以上のように生成された第1〜第4の送信信号は、図8に示すような関係として表すことができる。ここで、図8(a)に示される周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形は、フーリエ級数展開により、n=1の場合はsin波が、n=2の場合はcos波が表れていることがわかる。そして、図8(a)に示される周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形を位相反転させると、図8(b)に示されるように、第1項及び第2項の符号が反転した、周期関数−f(t)で表される第2の送信信号が生成される。これは、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形のうちの、sin波及びcos波の位相を180度変位させることと同義となる。また、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させると、図8(c)に示すように、第1項の符号が反転した、周期関数g(t)で表される第3の送信信号が生成される。これは、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形のうちの、sin波の位相のみを180度変位させることと同義となる。また、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形を位相反転させ、且つ、時間軸で反転させると、図8(d)に示すように、第2項の符号が反転した、周期関数−g(t)で表される第4の送信信号が生成される。これは、周期関数f(t)で表される第1の送信信号の信号波形のうちの、cos波の位相のみを180変位させることと同義となる。ここで、図8(b)に示される第2の送信信号の信号波形を時間軸で反転させることによっても、第4の送信信号を得ることができる。さらに、図8(c)に示される第3の送信信号の信号波形を位相反転させることによっても、第4の送信信号を得ることができる。
【0057】
図8に示された第1〜第4の送信信号の信号波形の関係を周波数空間で表すと、図9に示すようになる。ここで、図9中、「Im」は虚数軸を示し、「Re」は実数軸を示す。図9(a)は、第1の送信信号の信号波形に含まれるsin波(第1の基本波成分n11)の位相及びcos波(第2の基本波成分n21)の位相を示している。また、図9(b)は、第2の送信信号の信号波形に含まれるsin波(第1の基本波成分n12)の位相及びcos波(第2の基本波成分n22)の位相を示している。また、図9(c)は、第3の送信信号の信号波形に含まれるsin波(第1の基本波成分n13)の位相及びcos波(第2の基本波成分n23)の位相を示している。また、図9(d)は、第4の送信信号の信号波形に含まれるsin波(第1の基本波成分n14)の位相及びcos波(第2の基本波成分n24)の位相を示している。
【0058】
図9に示すように、第1の送信信号に含まれる第1の基本波成分n11及び第2の基本波成分n21と、第2の送信信号に含まれる第1の基本波成分n12及び第2の基本波成分n22とはそれぞれ逆相の関係であることがわかる。また、第3の送信信号に含まれる第1の基本波成分n13及び第2の基本波成分n23と、第4の送信信号に含まれる第1の基本波成分n14及び第2の基本波成分n24とはそれぞれ逆相の関係であることがわかる。
【0059】
本実施の形態では、送信部12は、第1の送信信号を形成する最も適切な信号波形の一例として、図10に示すような矩形波による第1の送信信号Sを生成するようにしている。この第1の送信信号Sは、1周期が176nsecであって、パラメーターAが16nsecに設定され、パラメーターBが56nsecに設定されている。すなわち、第1の送信信号Sは、周期の始期の時点で強度が0から1.0まで立ち上がった後、パラメーターAによって規定される16nsecが経過した時点で強度が1.0から−1.0まで立ち下がる。その後、第1の送信信号Sは、パラメーターBによって規定される56nsecが経過した時点で、強度が−1.0から1.0まで立ち上がった後、パラメーターAによって規定される16nsecの間、強度1.0の状態が維持されるように半周期(88nsec)分の信号波形が形成されている。その後、第1の送信信号Sは、周期の終期となるまで強度を1.0に維持した後、0まで立ち下がるような信号波形が形成されている。
【0060】
以上のように形成された第1の送信信号Sをフーリエ級数展開すると、5.7MHzの第1の基本波成分F0と、その2倍の周波数11.4MHzである第2の基本波成分F1とが含まれていることがわかる。
【0061】
本実施の形態では、第1の送信信号SにおけるパラメーターBを以下の理論により設定している。図11は、第1の基本波成分F0及び第2の基本波成分F1の、矩形波の信号が立ち上がってからの経過時間と各基本波成分の強度との関係について示しており、図12は、第1の基本波成分F0の強度と第2の基本波成分F1の強度とを乗じて得た強度積FPを示している。
図12に示すように、第1の基本波成分F0及び第2の基本波成分F1の強度積FPは、矩形波の信号の立ち上がり後、およそ53nsecが経過した時点において極大値を示している。パラメーターBをこの極大値を示す時間に設定すると、差音成分が最も効率よく発生し、また、第1の基本波成分F0の損失も、矩形波の信号の立ち上がりから88nsecが経過した時点において示す極大値のおよそ84%程度であるため、最適となる。本実施の形態では、パラメーターA及びパラメーターBは、例えば、それぞれ8nsec単位で設定されるため、パラメーターBは、上述した53nsecに近似する56nsecに設定されている。
なお、パラメーターA及びパラメーターBについては、上述したようにして設定されたものに限定されず、種々の条件に応じて適宜設定することができるが、パラメーターAとパラメーターBとが等しいものでないものとするのが好適である。
【0062】
次に、上述のようにして生成された第1〜第4の送信信号を超音波探触子2に入力することによって出力される超音波が被検体内で伝搬することにより発生する非線形成分について説明する。
【0063】
超音波の伝搬は、その音圧が有意に高い場合には、非線形波動方程式で表される挙動を示すことが知られている。この非線形波動方程式は、元になる超音波が、超音波の元の波形が持つ周波数成分の干渉によって種々の周波数成分を発生させながら伝搬する挙動を表現しており、この超音波の伝搬によって発生する周波数成分は高調波成分(非線形成分)と呼ばれる。この高調波成分は、簡易的に、伝搬する超音波の波形の2乗の時間微分として近似できるため、伝搬の元になる超音波の波形(基本波)を特定できれば、発生する高調波成分も推定することができる。
【0064】
以上の理論により、上記式(9)に示される周期関数f(t)によって示される第1の送信信号が超音波探触子2に与えられて出力される超音波により生ずる高調波成分は、下記式(13)によって表すことができる。
【数9】
【0065】
ここでも、超音波探触子2の帯域特性によって通過する超音波の帯域が規定される。その結果、上記式(13)に示される高調波成分のうち、超音波探触子2を通過するのは、上記式(13)中の第1項に示される第1の基本波成分の2倍の周波数成分である高次高調波成分としての2次高調波成分と、上記式(13)中の第3項に示される第1の基本波成分及び第2の基本波成分の非線形効果から生ずる差音成分と、となる。すなわち、超音波探触子2を通過する高調波成分は、下記式(14)によって表すことができる。
【数10】
【0066】
上記式(14)に示される、第1の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる高調波成分を周波数空間で表すと、図13に示すようになる。ここで、図13(a)は、第1の送信信号の信号波形に含まれる第1の基本波成分n11と第2の基本波成分n21とを表しており、図13(b)は、第1の基本波成分n11の2次高調波成分s1と、第1の基本波成分n11及び第2の基本波成分n21の差音成分d1とを示している。図13(b)に示すように、2次高調波成分s1と差音成分d1とは位相が異なっていることがわかる。
【0067】
また、上記式(10)に示される周期関数−f(t)によって示される第2の送信信号が超音波探触子2に与えられて出力される超音波により生ずる高調波成分については、上記式(13)によって第1の送信信号と同様にして表すことができる。
【0068】
また、上記式(11)に示される周期関数g(t)によって示される第3の送信信号が超音波探触子2に与えられて出力される超音波により生ずる高調波成分は、下記式(15)によって表すことができる。
【数11】
【0069】
同様に、上記式(12)に示される周期関数−g(t)によって示される第4の送信信号が超音波探触子2に与えられて出力される超音波により生ずる高調波成分についても、上記式(15)によって表すことができる。
【0070】
そして、上述した第1〜第4の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる高調波成分の関係を周波数空間で表すと、図14に示すようになる。ここで、図14(a)は、第1の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる2次高調波成分s1の位相及び差音成分d1の位相を示している。また、図14(b)は、第2の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる2次高調波成分s2の位相及び差音成分d2の位相を示している。また、図14(c)は、第3の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる2次高調波成分s3の位相及び差音成分d3の位相を示している。また、図14(d)は、第4の送信信号によって出力された超音波から得られた反射超音波に含まれる2次高調波成分s4の位相及び差音成分d4の位相を示している。
【0071】
図14に示すように、第1の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s1及び差音成分d1と、第2の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s2及び差音成分d2とは、それぞれ同相であることがわかる。また、第3の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s3及び差音成分d3と、第4の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s4及び差音成分d4とは、それぞれ同相であることがわかる。
【0072】
また、図14に示すように、第1の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s1、第2の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s2、第3の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s3及び第4の送信信号に対応する反射超音波に含まれる2次高調波成分s4は、何れも同相で発生していることがわかる。これは、2次高調波成分が第1の基本波成分の2乗によって求められるためである。
【0073】
また、差音成分は、第1の基本波成分及び第2の基本波成分の非線形効果によって発生する。
第1の送信信号と第2の送信信号とは位相反転の関係にあって第1の基本波成分と第2の基本波成分との位相関係が実質的に同じであるため、第1の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d1及び第2の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d2は、図14に示すように、同相で発生する。
また、第3の送信信号及び第4の送信信号は、第1の送信信号とは時間軸反転の関係にあるため、第1の基本波成分と第2の基本波成分との位相関係が第1の送信信号とは異なる。したがって、第3の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d3の位相及び第4の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d4の位相は、図14に示すように、第1の送信信号に対応する反射超音波に含まれる差音成分d1とは逆相で現れる。
【0074】
以上のようにして第1〜第4の送信信号によって超音波探触子2から送信された送信超音波に対応する反射超音波を超音波探触子2にて受信することによって得られた受信信号に基づいて超音波画像データを生成する方法について説明する。
【0075】
先ず、超音波画像診断装置Sの受信部13は、上述のようにして第1〜第4の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波が超音波探触子2によって電気信号に変換されることにより得られた受信信号について、それぞれ、AMP131、ADC132及び整相加算部133によって上述した処理を行って音線データ(第1〜第4の音線データ)を生成し、音線メモリー134にそれぞれ領域を異ならせて保持する。ここで、第1の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波から得られた受信信号を第1の受信信号と呼び、第2の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波から得られた受信信号を第2の受信信号と呼び、第3の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波から得られた受信信号を第3の受信信号と呼び、第4の送信信号によって送信された送信超音波に対応する反射超音波から得られた受信信号を第4の受信信号と呼ぶこととする。
【0076】
上述のようにして第1〜第4の音線データがそれぞれ音線メモリー134に保持されると、信号成分抽出部135は、以下のようにして高調波成分を抽出し、さらに、抽出した高調波成分から2次高調波成分と差音成分とに分離する。
ここで、超音波画像においては、受信信号に含まれる高調波成分のみを画像化することにより、低アーチファクトで高解像度の画像を得ることができることが知られている。そのため、受信信号から高調波成分のみを取り出し、これを画像化する様々な手法が知られている。受信信号から高調波成分のみを取り出す技術として広く知られているものにパルスインバージョンがある。これは、位相の反転した2つの送信超音波を送信し、それぞれに対応する反射超音波から得られる受信信号を加算することにより、受信信号に含まれる基本波成分を除去して高調波成分のみを抽出するものであり、高調波成分の位相不変性を利用した技術である。
本実施の形態では、このパルスインバージョンの技術を利用して高調波成分を抽出した上で、この高調波成分から2次高調波成分と差音成分とに分離するようにしている。
【0077】
信号成分抽出部135は、音線メモリー134から第1の音線データと第2の音線データとを読み出し、これらを加算して第1の合成データを生成する。すなわち、信号成分抽出部135は、第1の音線データと第2の音線データとを加算することにより、基本波成分が除去されて高調波成分が強調された第1の合成データを生成する。つまり、第1の音線データと第2の音線データとが加算されると、図15(a)に示される第1の音線データに含まれる第1の基本波成分n11及び第2の基本波成分n21が、図15(b)に示される第2の音線データに含まれる第1の基本波成分n12及び第2の基本波成分n22とそれぞれ逆相であるため、図15(c)に示すように、第1の基本波成分及び第2の基本波成分は相殺されて除去される。一方、図15(a)に示される第1の音線データに含まれる2次高調波成分s1及び差音成分d1は、第2の音線データに含まれる2次高調波成分s2及び差音成分d2と同相であるため、図15(c)に示すように、加算後の音線データ、すなわち、第1の合成データにおいて、2次高調波成分s12及び差音成分d12が強調される。このようにして、信号成分抽出部135は、第1の受信信号(第1の音線データ)と第2の受信信号(第2の音線データ)とから高調波成分の抽出を行う。
【0078】
また、信号成分抽出部135は、同様にして、音線メモリー134から第3の音線データと第4の音線データとを読み出し、これらを加算して第2の合成データを生成する。その結果、第1の基本波成分及び第2の基本波成分が相殺され、2次高調波成分s34及び差音成分d34(図16(b)参照)が強調された第2の合成データが生成される。このようにして、信号成分抽出部135は、第3の受信信号(第3の音線データ)と第4の受信信号(第4の音線データ)とから高調波成分の抽出を行う。
【0079】
そして、信号成分抽出部135は、上述のようにして得られた第1の合成データと第2の合成データとから、以下のようにして2次高調波成分と差音成分との分離を行う。すなわち、図16(a)に示される第1の合成データと図16(b)に示される第2の合成データとは、2次高調波成分が同相の関係にあって、差音成分が逆相の関係にある。そのため、信号成分抽出部135は、最初に、第1の合成データと第2の合成データとを加算することにより、図16(c)に示されるような差音成分が除去されて2次高調波成分s1234が強調された第3の合成データを生成することができる。また、信号成分抽出部135は、第1の合成データと第2の合成データとを減算することにより、図16(d)に示されるような2次高調波成分が除去されて差音成分d1234が強調された第4の合成データを生成することができる。
【0080】
ところで、従来のパルスインバージョンの技術によれば、受信信号から高調波成分の抽出を行うことができるが、抽出された高調波成分には2次高調波成分と差音成分とが混然一体に含まれているため、これらを分離抽出することができなかった。本実施の形態では、上述のように構成することにより、高調波成分から2次高調波成分と差音成分とを分離抽出することができる。
【0081】
信号成分抽出部135は、上述のようにして生成された第3の合成データを帯域調整フィルター136aに出力し、第4の合成データを帯域調整フィルター136bに出力する。帯域調整フィルター136a,136bによってそれぞれフィルター処理された各合成データは、それぞれ、位相調整フィルター137a,137bに入力される。
【0082】
ここで、本実施の形態における高調波成分の位相調整の手法について説明する。
【0083】
図17(a)は、第1の合成データを示している。すなわち、図17(a)の周波数空間上に示される音線データは、第1の音線データと第2の音線データとが加算されることにより、従来のパルスインバージョンによって高調波成分が強調された音線データである。
【0084】
図17(a)に示される第1の合成データには、2次高調波成分s12と差音成分d12とが含まれている。実際には、これらの高調波成分は有限長の波形によって構成されているため、図17(b)に示すように、それぞれ一定の広がりを有する帯域を持っている。これらの高調波成分の帯域は、ある周波数帯で互いに重なり合う場合がある。図17(b)に示す例では、2次高調波成分の帯域SH0の低周波領域と、差音成分の帯域DT0の高周波領域とが重なっている。このように、2次高調波成分の帯域SH0と差音成分の帯域DT0とが重なった領域Pでは、2つの高調波成分の位相干渉が生じ、これらの高調波成分の位相状態によって相互に信号の強度を強め合ったり、弱め合ったりする。
【0085】
より具体的には、例えば、図18(a)に示すように、2次高調波成分の帯域SH1の位相と差音成分の帯域DT1の位相とが近似した場合には、互いに信号の強度を強め合う関係となり、2次高調波成分と差音成分とが重畳された結果、帯域が拡大された高調波成分の帯域AW1を持つようになる。このような高調波成分の帯域AW1を有する音線データが得られれば、時間分解能が向上し、したがって、高分解能で高画質な超音波画像を取得することができる。
【0086】
一方、例えば、図18(b)に示すように、2次高調波成分の帯域SH2の位相と差音成分の帯域DT2の位相とが離間した場合には、互いに信号の強度を弱め合う関係となり、2次高調波成分と差音成分とが重畳された結果、帯域が狭小された高調波成分の帯域AW2を持つようになる。このような高調波成分の帯域AW2では、帯域に谷間が生じてしまい、帯域が分離されるようになる。したがって、高調波成分を抽出したとしても、超音波画像の高画質化が望めないという結果となってしまう。
【0087】
従来の超音波画像診断装置では、受信信号を信号処理することによっては2次高調波成分と差音成分とを分離抽出することができなかったため、例えば、2次高調波成分の位相と差音成分の位相とが近似するように、送信信号の信号波形を調整するようにしたが、これらの高調波成分の位相を常に良好な状態に制御することは、超音波が伝搬する被検体の媒質の不均一性や、これによって生じるビームフォーミングの精度不良等により、超音波の位相が崩れてしまうことがあるため、困難であった。したがって、送信信号の信号波形を調整して送信超音波を送信し、反射超音波から得られた受信信号から高調波成分を抽出したとしても、図18(b)に示すような、2次高調波成分と差音成分とが弱め合うような受信信号が取得される場合がある。
【0088】
また、2次高調波成分と差音成分とを帯域制限フィルターを用いて分離することも行われたが、2次高調波成分と差音成分とが混然一体に含まれた受信信号では、位相状態の分離を行うことができないため、超音波画像の高画質化を望むことはできない。
【0089】
これに対し、本実施の形態では、上述のようにして、受信信号から2次高調波成分と差音成分とを分離抽出することができるので、位相調整フィルター137a,137bによって2次高調波成分の位相及び差音成分の位相についてそれぞれ自在に調整することができる。すなわち、2次高調波成分の位相及び差音成分の位相を相対的に近似させて、高調波成分の帯域を拡大させることができるようになる。
【0090】
例えば、図19(a)に示すように、2次高調波成分の帯域SH2の位相と差音成分の帯域DT2の位相とが180度離間するような場合には、図19(b)及び図19(c)に示すように、信号成分抽出部135によって2次高調波成分と差音成分とを分離させた後、位相調整フィルター137bによって差音成分の位相を180度ずらす。すると、図19(d)に示すように、位相が変更された差音成分の帯域DT2aが2次高調波成分の帯域SH2と近似するようになる。そして、信号加算器138によってこれらの高調波成分が加算されることにより、帯域が拡大されて広帯域となった高調波成分の帯域AW2aを有する音線データを得ることができるようになる。
【0091】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、上述のようにして2次高調波成分と差音成分とを分離抽出した後、それぞれの位相の調整を行うことに代えて、それぞれの高調波成分について輝度変換を行い、これらを合成(コンパウンド処理)して超音波画像データを得る。2次高調波成分と差音成分とをそれぞれ輝度変換して得られた輝度データを加算することにより、スペックルやノイズ(以下、ノイズ等ということがある。)を抑圧し、超音波画像の空間分解能を向上させることができる。
第2の実施の形態では、超音波画像診断装置Sの受信部13と画像生成部14とが変更された点で、第1の実施の形態とは異なっている。なお、第1の実施の形態における超音波画像診断装置Sと同様の機能構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
第2の実施の形態における超音波画像診断装置Sの受信部13は、図20に示すように、第1の実施の形態において上述したようにして信号成分抽出部135によって第3の合成データ及び第4の合成データを生成し、それぞれについて帯域調整フィルター136a,136bによってフィルター処理を行った後、これらを画像生成部14に出力する。
【0093】
画像生成部14は、図21に示すように、受信部13から送信されたフィルター処理後の第3の合成データ及び第4の合成データについて、それぞれ、包絡線検波部141a,141bによる包絡線データへの変換、対数変換部142a,142bによる対数増幅、及び、輝度変換部143a,143bによる振幅/輝度変換を行った後、輝度データ加算器144によって第3の合成データ及び第4の合成データからそれぞれ得られた輝度データを加算してBモード画像データを生成し、メモリー部15に出力する。すなわち、輝度データ加算器144は、第3の合成データ及び第4の合成データからそれぞれ得られた輝度データに対して周波数コンパウンド処理を行ってBモード画像データを得る。
【0094】
ところで、スペックルを抑制する方法としては、受信信号を異なる周波数成分からなる2つの信号に分離し、それぞれの信号を輝度変換してから合成する方法(周波数コンパウンド)も考えられる。受信信号の分離はフィルター処理によって行われる。このとき、周波数コンパウンド処理の効果を向上させるために、フィルターの通過帯域が重複しないように設定する手法が知られている。この手法によれば、フィルター処理された受信信号は狭帯域化されてしまう。その結果、解像度の低下を誘発することとなってしまう。また、図22に示すように、フィルターの通過帯域をある程度重複させて設定する手法が取られる場合もある。この手法によれば、高調波成分の帯域HS0の狭帯域化は抑制されるが、複数のフィルターの通過帯域FL1,FL2の重複する部分Qにおいてはノイズ等の抑圧効果が発揮されないという問題がある。すなわち、従来の周波数コンパウンドの手法では、2次高調波成分の帯域と差音成分の帯域とが重畳する領域については、フィルター処理によってそれぞれの成分に分離することができないため、解像度の向上とノイズ等の抑圧との両者の課題を同時に解消することは困難であった。
【0095】
これに対し、本実施の形態では、図23に示すように、本来的に発生のプロセスの異なる2次高調波成分SH3と差音成分DT3との無相関性を確保したままで高調波成分の分離を行うことができ、これら分離された高調波成分に基づいて周波数コンパウンド処理が実施されるので、高調波成分の帯域HS1の狭帯域化を抑制でき、解像度を損失することなく、ノイズ等が効果的に抑圧された超音波画像を取得することができるようになる。
【0096】
以上説明したように、第1及び第2の実施の形態によれば、超音波探触子2は、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する。送信部12は、時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、第1の送信信号の信号波形を位相反転させて、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号と、をそれぞれ駆動信号として出力して超音波探触子2に送信超音波を生成させる。信号成分抽出部135は、第1の送信信号によって超音波探触子2から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第1の受信信号と、第2の送信信号によって超音波探触子2から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第2の受信信号と、第3の送信信号によって超音波探触子2から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第3の受信信号と、第4の送信信号によって超音波探触子2から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第4の受信信号と、を合成して2次高調波成分と差音成分とをそれぞれ抽出する。その結果、簡便な構成で送信超音波を出力可能な矩形波による送信信号によって広帯域の高調波成分を取得し、良好な超音波画像を取得することができるようになる。また、発生のプロセスが異なる複数種類の高調波成分を受信信号から分離抽出してそれぞれについて処理することができるので、高調波成分を自由に制御して良好な超音波画像データを生成することができる。
【0097】
また、第1の実施の形態によれば、位相調整フィルター137a,137bは、信号成分抽出部135によって抽出された2次高調波成分と差音成分との間の相対的な位相関係を変更する。信号加算器138は、位相調整フィルター137a,137bによって相対的な位相関係が変更された2次高調波成分及び差音成分を合成する。画像生成部14は、信号加算器138によって合成された受信信号に基づいて被検体内の超音波画像データを生成する。その結果、発生のプロセスが異なる複数種類の高調波成分の位相を操作して、広帯域な高調波成分とすることができるので、高分解能で高画質な超音波画像を取得することができるようになる。
【0098】
また、第1の実施の形態によれば、位相調整フィルター137a,137bは、2次高調波成分と差音成分との間の相対的な位相関係の変更量を、超音波探触子2が受信する反射超音波の深度に応じて設定する。その結果、深度に応じて変化する高調波成分の位相差を考慮して位相を操作することができるので、深度に応じて高分解能で高画質な超音波画像を取得することができるようになる。
【0099】
また、第2の実施の形態によれば、画像生成部14は、信号成分抽出部135によって抽出された2次高調波成分及び差音成分のそれぞれについて、信号の大きさを画像の輝度を示す輝度データに変換する。画像生成部14は、2次高調波成分から変換された輝度データと、差音成分から変換された輝度データとを合成して被検体内の超音波画像データを生成する。その結果、広帯域でノイズやスペックルが効果的に抑制された超音波画像を取得することができる。
【0100】
また、第1及び第2の実施の形態によれば、信号成分抽出部135は、第1の受信信号、第2の受信信号、第3の受信信号及び第4の受信信号の和を求めることにより2次高調波成分を抽出する。信号成分抽出部135は、第1の受信信号及び第2の受信信号の和と、第3の受信信号及び第4の受信信号の和との差分を求めることにより差音成分を抽出する。その結果、発生のプロセスが異なる複数種類の高調波成分を、簡便な方法にて受信信号から容易に分離抽出することができるようになる。
【0101】
また、第1及び第2の実施の形態によれば、送信部12は、矩形波のパルス信号にて駆動信号を出力する。その結果、簡素な構成によって実現できるので、製造コストを低減できる。
【0102】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波画像診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0103】
また、本実施の形態では、受信信号に含まれる高調波成分として2次高調波成分と差音成分としているが、3次以上の高次高調波成分が含まれていてもよい。
【0104】
また、本実施の形態では、超音波探触子2が受信する反射超音波の深度に応じて2次高調波成分と差音成分との位相の変位量を変更するようにしたが、深度にかかわらず2次高調波成分と差音成分との位相の同一の変位量としてもよい。
【0105】
また、本実施の形態において、受信信号から2次高調波成分と差音成分とを分離抽出するための演算方法や演算順序が異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0106】
S 超音波診断装置
2 超音波探触子
12 送信部
122 パルス発生回路
123 駆動信号波形設定部
13 受信部
135 信号成分抽出部
137a,137b 位相調整フィルター(位相変更部)
138 信号加算器(信号合成部)
14 画像生成部
144 輝度データ加算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する超音波探触子と、
時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を位相反転させ、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号と、をそれぞれ前記駆動信号として出力して前記超音波探触子に前記送信超音波を生成させる送信部と、
前記第1の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第1の受信信号と、前記第2の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第2の受信信号と、前記第3の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第3の受信信号と、前記第4の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第4の受信信号と、を合成して高次高調波成分と差音成分とをそれぞれ抽出する信号成分抽出部と、
を備えたことを特徴とする超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記信号成分抽出部によって抽出された前記高次高調波成分と前記差音成分との間の相対的な位相関係を変更する位相変更部と、
前記位相変更部によって相対的な位相関係が変更された前記高次高調波成分及び前記差音成分を合成する信号合成部と、
前記信号合成部によって合成された受信信号に基づいて前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
前記位相変更部は、前記高次高調波成分と前記差音成分との間の相対的な位相関係の変更量を、前記超音波探触子が受信する反射超音波の深度に応じて設定することを特徴とする請求項2に記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
前記信号成分抽出部によって抽出された前記高次高調波成分及び前記差音成分のそれぞれについて、信号の大きさを画像の輝度を示す輝度データに変換し、前記高次高調波成分から変換された輝度データと、前記差音成分から変換された輝度データとを合成して前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項5】
前記高次高調波成分は2次高調波成分であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項6】
前記信号成分抽出部は、前記第1の受信信号、第2の受信信号、第3の受信信号及び第4の受信信号の和を求めることにより前記2次高調波成分を抽出し、前記第1の受信信号及び第2の受信信号の和と、前記第3の受信信号及び第4の受信信号の和との差分を求めることにより前記差音成分を抽出することを特徴とする請求項5に記載の超音波画像診断装置。
【請求項7】
前記送信部は、矩形波のパルス信号にて前記駆動信号を出力することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項1】
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する超音波探触子と、
時間軸で非対称の信号波形である第1の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を位相反転させた第2の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を時間軸で反転させた第3の送信信号と、前記第1の送信信号の信号波形を位相反転させ、且つ、時間軸で反転させた第4の送信信号と、をそれぞれ前記駆動信号として出力して前記超音波探触子に前記送信超音波を生成させる送信部と、
前記第1の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第1の受信信号と、前記第2の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第2の受信信号と、前記第3の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第3の受信信号と、前記第4の送信信号によって前記超音波探触子から出力された送信超音波に対応する反射超音波から得られた第4の受信信号と、を合成して高次高調波成分と差音成分とをそれぞれ抽出する信号成分抽出部と、
を備えたことを特徴とする超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記信号成分抽出部によって抽出された前記高次高調波成分と前記差音成分との間の相対的な位相関係を変更する位相変更部と、
前記位相変更部によって相対的な位相関係が変更された前記高次高調波成分及び前記差音成分を合成する信号合成部と、
前記信号合成部によって合成された受信信号に基づいて前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
前記位相変更部は、前記高次高調波成分と前記差音成分との間の相対的な位相関係の変更量を、前記超音波探触子が受信する反射超音波の深度に応じて設定することを特徴とする請求項2に記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
前記信号成分抽出部によって抽出された前記高次高調波成分及び前記差音成分のそれぞれについて、信号の大きさを画像の輝度を示す輝度データに変換し、前記高次高調波成分から変換された輝度データと、前記差音成分から変換された輝度データとを合成して前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項5】
前記高次高調波成分は2次高調波成分であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項6】
前記信号成分抽出部は、前記第1の受信信号、第2の受信信号、第3の受信信号及び第4の受信信号の和を求めることにより前記2次高調波成分を抽出し、前記第1の受信信号及び第2の受信信号の和と、前記第3の受信信号及び第4の受信信号の和との差分を求めることにより前記差音成分を抽出することを特徴とする請求項5に記載の超音波画像診断装置。
【請求項7】
前記送信部は、矩形波のパルス信号にて前記駆動信号を出力することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−111301(P2013−111301A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261099(P2011−261099)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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