説明

超音波観測装置及び超音波観測装置の動作制御方法

【課題】超音波画像の表示切り替えに要する時間を短縮する。
【解決手段】超音波観測装置11の制御回路22は、操作履歴データベース28に記憶された操作履歴データに基づいて、待機時間を決定する。超音波画像の表示を切り替えるための切り替え信号が入力されると、制御回路22は、その都度、切り替え信号の入力間隔を一時的に保存する。そして、最後の切り替え信号が入力されてから待機時間が経過した時、表示切り替え処理を開始する。このとき、制御回路22は、一時的に保存した入力間隔を用いて、操作履歴データベース28の操作履歴データを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像を画面に表示する超音波観測装置、及び超音波観測装置の動作制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において、超音波診断装置が広く用いられている。超音波診断装置は、生体に超音波を照射し、そのエコー信号を受信する超音波プローブと、この超音波プローブに接続された超音波観測装置とを備えている。超音波観測装置は、超音波プローブで受信したエコー信号に各種の信号処理を施して、画像データを生成する。医療診断の際には、生成された画像データに基づいた超音波画像がモニタ等に表示される。
【0003】
超音波観測装置は、病変等の関心領域の位置に合わせて、モニタ上の超音波画像の表示を切り替える機能を有する。例えば、深さ方向の表示範囲(深度)や、画像の回転、画像の平行移動といった切り替えが可能であり、超音波観測装置は、これらの切り替え操作がなされると、操作の内容に応じた表示切り替え処理を超音波画像に施す。そして、表示切り替え処理がなされた超音波画像をモニタに再表示する。
【0004】
超音波画像の切り替え操作を容易にするため、例えば、特許文献1に記載の超音波診断装置では、操作パネルに設けたトラックボールで、画像の回転や平行移動等の操作を連続的且つ段階的に行なえるようにしている。また、表示深度を切り替えるための専用のスイッチを操作パネルに設けた超音波診断システムも提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−315753号公報
【特許文献2】特開2007−313202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、超音波画像の表示を切り替えるためには、切り替え操作に応じた表示切り替え処理を超音波画像に施さなければならない。超音波観測装置は、表示切り替え処理が始まると、処理が終了するまでの間は、次の切り替え操作を受け付けられなくなる。そこで、従来の超音波観測装置は、切り替え操作がなされてから表示切り替え処理を開始するまでの間に、次の切り替え操作を許容するための時間差を設けている。このため、切り替え操作が終了してから超音波画像の表示が切り替わるまでの時間は、前述の時間差と表示切り替え処理に掛かる時間とを加えたものになり、時間差を設ける分だけ超音波画像の表示切り替えが遅くなってしまい、術者のストレスになるという問題があった。
【0006】
また、切り替え操作の速さは術者ごとに異なるため、共通の時間差を適用すると、術者によっては、時間差よりも切り替え操作の間隔が長くなって、切り替え操作が受け付けられなくなる場合が生じてしまう。このような場合には、術者は表示切り替え処理が終わるのを待ってから、改めて切り替え操作をしなければならず、術者が所望する表示となるまでに相当の時間が掛かる。かといって、全ての術者の操作に対応できるように時間差を長く設定すると、当然ながら、切り替え操作から表示が切り替わるまでの時間が長期化する。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、超音波画像の表示切り替えに要する時間を短縮し、術者のストレスを軽減することができる超音波観測装置、及びこの超音波観測装置の動作制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の超音波観測装置は、超音波画像を表示する表示手段と、超音波画像の表示切り替えを指示する切り替え信号を入力するための操作入力手段と、前記操作入力手段の操作入力状態を検知する検知手段と、検知手段で検知した操作入力状態を操作入力手段の操作履歴として記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された操作履歴を元に、切り替え信号の入力終了後から超音波画像の表示切り替え処理を開始するまでの待機時間Tを決定する決定手段と、検知手段で切り替え信号の入力終了を検知してから待機時間Tをおいて、切り替え信号に応じた表示切り替え処理を実行する処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記記憶手段は、使用者毎に操作履歴を記憶することが好ましい。
【0010】
また、操作入力手段は、連続的且つ段階的に切り替え信号を入力することが好ましい。
【0011】
また、検知手段は、連続的且つ段階的に入力される前後の切り替え信号の入力間隔Δt(i=1、2、・・・、n−1)を計時するタイマを有することが好ましい。そして、記憶手段は入力間隔Δtを操作履歴として記憶し、決定手段は入力間隔Δtに応じて待機時間Tを決定することが好ましい。
【0012】
更に、記憶手段はn回分の入力間隔Δtを操作履歴として記憶し、決定手段は入力間隔Δtの平均値(ΣΔt)/n−1に応じて待機時間Tを決定することが好ましい。
【0013】
また、決定手段は、入力間隔Δtのうち、最後に入力された切り替え信号とその直前に入力された切り替え信号の入力間隔Δtn−1に応じて待機時間Tを決定してもよく、あるいは、入力間隔Δtのうち、最長の入力間隔Δtmaxに応じて待機時間Tを決定してもよい。
【0014】
更に、決定手段は、入力間隔Δtの平均値(ΣΔt)/n−1、最後に入力された切り替え信号とその直前に入力された切り替え信号の入力間隔Δtn−1、または最長の入力間隔Δtmaxに、許容時間Tαを加算したものを待機時間Tとすることが好ましい。
【0015】
また、処理手段は、前回の切り替え信号に応じた表示切り替え処理の最中に、新たな切り替え信号が入力された場合、その処理を中止し、新たな切り替え信号に応じた表示切り替え処理を開始するものであってもよい。
【0016】
また、検知手段により、操作入力手段が操作されている最中か否かを検知し、この検知結果を元に切り替え信号の入力終了を検知するようにしてもよい。この場合、操作入力手段はダイヤルスイッチであり、検知手段は、ダイヤルスイッチの回転軸に取り付けられ、切り替え信号の入力が検知されるピッチよりも狭いピッチで被検知部が設けられたロータリーディスクと、被検知部を検知する光電センサとからなるロータリーエンコーダを有し、光電センサの出力の有無を元に、操作入力手段が操作されている最中か否かを検知することが好ましい。
【0017】
また、処理手段は、超音波画像の表示深度の変更、回転、平行移動のうちのいずれかを表示切り替え処理として実行することが好ましい。
【0018】
本発明の超音波観測装置の動作制御方法は、表示手段に表示される超音波画像の表示切り替えを指示する切り替え信号を入力するための操作入力手段の操作入力状態を検知する検知ステップと、検知ステップで検知した操作入力状態を操作入力手段の操作履歴として記憶する記憶ステップと、記憶手段に記憶された操作履歴を元に、切り替え信号の入力終了後から超音波画像の表示切り替え処理を開始するまでの待機時間Tを決定する決定ステップと、検知ステップで切り替え信号の入力終了を検知してから待機時間Tをおいて、切り替え信号に応じた表示切り替え処理を実行する処理ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、操作入力手段の操作入力状態を操作履歴として記録し、この操作履歴に基づいて、表示切り替え処理を実行するまでの待機時間Tが決定される。それまでになされた操作入力状態に対応した最適な待機時間Tが決定されることとなり、超音波画像の表示が切り替わるまでの時間を短縮して、術者のストレスを軽減させることができる。また、切り替え信号の入力間隔に応じて待機時間Tを決定するので、切り替え操作の間隔が長い術者に対しても、切り替え操作を確実に受け付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1において、本発明の超音波診断装置2は、超音波内視鏡10と、超音波内視鏡10が接続される超音波観測装置11とを備えている。超音波診断装置2は、被観察部位に超音波を照射し、その反響であるエコー信号に各種の信号処理を施して、被観察部位の内部状態を映像化した超音波画像を生成する。超音波画像は、超音波観測装置11に接続されたモニタ21に表示され、医療診断に用いられる。
【0021】
超音波内視鏡10は、被検者の体内に挿入される細長の挿入部の先端に、被観察部位の光学像を撮像するCCD(図示せず)と、超音波画像を得るための超音波トランスデューサ12とが配置されている。CCDで得られた光学像は、超音波内視鏡10に接続された内視鏡プロセッサ装置(図示せず)に入力され、各種処理の後、モニタ(図示せず)に内視鏡画像として表示される。
【0022】
超音波トランスデューサ12は、例えば、凸曲面状のバッキング材に等間隔で複数個設けられている。超音波トランスデューサ12は、超音波観測装置11の送信部13から入力される励振信号に応じて振動し、対向する被観察部位に超音波を照射する。そして、被観察部位で反射した超音波のエコー信号を受信して、超音波観測装置11の受信部14に入力する。送信部13及び受信部14は、マルチプレクサ(MUX)15を介して超音波トランスデューサ12に接続されている。MUX15は、複数個の超音波トランスデューサ12のうち、隣り合う数個〜数十個のブロックを選択して同時に駆動する。また、MUX15は、超音波およびエコー信号の一回の送受信毎に、駆動すべき超音波トランスデューサ12を1〜数個ずつずらす。
【0023】
受信部14で受信されたエコー信号は、A/D変換器(A/D)16でデジタル化され、信号処理回路17に入力される。信号処理回路17は、各超音波トランスデューサ12に対応する複数個のエコー信号を所定時間ずつ遅延させて、エコー信号の位相が全て揃うように調整して加算した後、超音波キャリア成分を除去するフィルタ処理、ゲインおよびダイナミックレンジを調整する対数圧縮処理などを施す。そして、超音波の伝搬距離(深さ)の減衰に応じたゲイン調整(STC;Sensitivity Time Control)等の信号処理をエコー信号に施し、超音波画像データを生成する。
【0024】
超音波画像データは、デジタルスキャンコンバータ(DSC;Digital Scan Converter)18に入力される。DSC18は、超音波画像データに対してラスター変換を施し、NTSC方式に変換して画像メモリ19へ出力する。D/A変換器(D/A)20は、画像メモリ19に格納された超音波画像データを再びアナログ信号に変換し、これを超音波画像としてモニタ21に表示する。
【0025】
超音波観測装置11の作動は、制御回路22によって管制されている。制御回路22は、送信部13および受信部14に基準パルスを送信して、励振信号およびエコー信号の送受信タイミングを制御する。また、制御回路22は、超音波画像の表示を切り替える操作がなされた場合に、励振信号の電圧を制御して超音波の深達度(超音波パワー)を変更したり、信号処理回路17での信号処理やDSC18での変換処理を制御したりして、操作に応じた超音波画像データを生成する。
【0026】
制御回路22には、ROM23、RAM24、および操作卓25が接続されている。ROM23は、例えばフラッシュメモリからなり、超音波診断装置2を動作させるために必要な各種プログラムやデータが記憶されている。制御回路22は、必要なプログラムやデータをROM23から作業用メモリであるRAM24に読み出して、各部の動作を制御する。ROM23は、更に、超音波画像の表示切り替え処理で用いられる、送信部13及び受信部14の動作条件(励振信号の電圧、送受信タイミング等)や、信号処理回路17での信号処理の条件、DSC18での変換処理の条件等の各種条件を複数個格納している。
【0027】
操作卓25は、超音波観測装置11のユーザーインターフェイスで、制御回路22に各種の操作信号を入力する。図2に示すように、操作卓25には、超音波診断装置2の電源をオン/オフするための電源スイッチ30、各種設定情報を入力する際に操作される文字キー群31、モニタ21上に表示されるカーソルやポインタを移動させる際に操作されるトラックボール32、操作を決定するためのセットボタン33、操作を取り消すためのキャンセルボタン34等が設けられている。
【0028】
操作卓25には、更に、超音波画像の深さ方向の表示範囲(表示深度)を切り替えるためのデプススイッチ35が設けられている。デプススイッチ35は、周知のダイヤルスイッチで、時計回りに回転させると表示深度が深くなり、反時計回りに回転させると表示深度が浅くなるように設定されている。このデプススイッチ35は、所定量回転する度にクリックして、その都度、制御回路22へ切り替え信号を入力する。
【0029】
切り替え信号は、例えば、時計回りでは正電圧信号、反時計回りでは負電圧信号となっており、制御回路22は、デプススイッチ35の回転方向及び切り替え信号の入力回数に基づいて、表示深度を決定する。制御回路22は、決定した表示深度に応じた各種条件をROM23から読み出し、これに基づいて送信部13、受信部14、信号処理回路17、及びDSC18を動作させる。これにより、表示深度に応じた超音波画像がモニタ21に表示される。
【0030】
例えば、モニタ21上で超音波画像の表示が図3(a)の状態であった場合、デプススイッチ35をある量だけ時計回りに回転させると、制御回路22は、回転量に応じた表示深度となるように、超音波パワーを強くして、関心領域のより深い部分まで超音波を到達させる。そして、表示深度に応じた信号処理及び変換処理を実行して超音波画像データを生成し、これに基づいて超音波画像をモニタ21に表示する。すると、超音波画像の表示が図3(b)に示す状態に切り替わり、表示深度が深くなる。
【0031】
逆に、超音波画像の表示が図3(b)の状態であった場合に、デプススイッチ35をある量だけ反時計回りに回転させると、制御回路22は、超音波パワーを弱くするとともに、信号処理及び変換処理の条件を変更する。すると、超音波画像の表示が図3(a)に示す状態に切り替わり、表示深度が浅くなる。これと同時に、超音波画像の尺度を示す右側のスケールも、表示深度に応じて切り替わる。なお、時計回りで表示深度が浅くなり、反時計回りで表示深度が深くなるようにデプススイッチ35を設定してもよい。
【0032】
図1に戻って、制御回路22は、タイマ26と、待機時間決定部27と、操作履歴データベース28とを備えている。タイマ26は、切り替え信号が入力されると、計時を開始する。待機時間決定部27は、切り替え信号が入力されてから表示切り替えのための信号処理が開始されるまでの待機時間Tを決定する。待機時間Tとは、連続的且つ段階的に入力される複数の切り替え信号を受け付けるためのマージンである。操作履歴データベース28は、待機時間Tを決定する際に用いられる切り替え信号の入力間隔、すなわちタイマ26の計時結果を、現在から遡ってn回分だけ操作履歴データとして記憶する。この操作履歴データは、表示切り替え処理が実行される度に、古いデータから順に消去されて、新しいデータに更新される。なお、操作履歴データベース28に記憶される操作履歴データの数は、操作履歴データベース28の容量等に応じて適宜な入力回数に設定される。
【0033】
制御回路22は、1回目の切り替え信号が入力された時に、あるいは入力される前に予め、待機時間決定部27で待機時間Tを決定する。待機時間決定部27は、まず、操作履歴データとして記録された切り替え信号の入力間隔Δt(i=1、2、・・・、n−1)を操作履歴データベース28から読み出す。そして、入力間隔Δtの平均値(ΣΔt/n−1)を算出し、これに所定の許容時間Tαを加えたものを待機時間T{(ΣΔt/n−1)+Tα}として決定する。許容時間Tαは、入力間隔が平均値よりも遅れた場合のマージンであり、例えばROM23に格納されている。
【0034】
例えば、10回分の切り替え信号の入力間隔を操作履歴データとして記憶するように設定した場合、操作履歴データベース28には、10から1を引いた9個の入力間隔Δt〜Δtが記憶される。待機時間決定部27は、操作履歴データベース28から、この9個の入力間隔Δt〜Δtを読み出して、待機時間Tを(Δt+Δt+・・・+Δt)/9+Tαに決定する。なお、操作履歴データベース28に何も記憶されていない等、操作履歴データに基づいて待機時間Tを決定することはできない場合に備えて、ROM23に、待機時間Tの初期値が格納されている。待機時間決定部27は、操作履歴データを参照できない時には、この初期値を待機時間Tとして決定する。
【0035】
2回目の切り替え信号が入力されずに、タイマ26の計時が待機時間Tを超えた場合には、制御回路22は、ROM23から1回目の切り替え信号に応じた各種条件を読み出す。そして、この条件に従って表示切り替え処理を開始し、表示深度を変更した超音波画像データを生成する。こうして生成した超音波画像データに基づいて超音波画像をモニタ21に表示することにより、表示深度が切り替わる。
【0036】
一方、図4に示すように、タイマ26の計時が待機時間Tを超える前に、2回目の切り替え信号が入力された場合には、制御回路22は、その時のタイマ26の計時結果、すなわち1回目と2回目の切り替え信号の入力間隔Δt´を、例えばRAM24に、一時的に保存する。そして、タイマ26をリセットして、新たな計時を開始する。2回目の切り替え信号が入力されてから待機時間Tが経過する前に、3回目の切り替え信号が入力されると、制御回路22は、2回目と3回目の切り替え信号の入力間隔Δt´を更に保存し、タイマ26で新たな計時を開始する。このように、待機時間Tよりも短い間隔で新たな切り替え信号が入力される度に、計時結果の保存と新たな計時の開始が繰り返される。従って、RAM24には、連続した一まとまりの操作における切り替え信号の入力回数m(m≦n)分の入力間隔Δt´(j=1、2、・・・、m―1)が保存される。
【0037】
最後の切り替え信号が入力された後、待機時間Tが経過すると、制御回路22は、最後の切り替え信号に応じた各種条件を読み出して、表示切り替え処理を開始する。これと同時に、制御回路22は、RAM24に一時的に保存された入力間隔Δt´を、操作履歴データベース28に記憶された古い操作履歴データと置き換え、データを更新する。このとき、今回の切り替え信号の入力回数mが、操作履歴データベース28に設定された入力回数nより少ない場合(m<n)には、今回の入力間隔Δt´の全てが記憶され、これと同数の操作履歴データが古いものから順に消去される。一方、今回の切り替え信号の入力回数mが、操作履歴データベース28に設定された入力回数nと同じ場合(m=n)には、今回得られた入力間隔Δt´の全てが、n回分の最新の入力間隔Δtとして、操作履歴データベース28に記憶され、古い操作履歴データが全て消去される。
【0038】
次に、上記構成による作用を図5のフローチャートを参照して説明する。デプススイッチ35が操作されて、制御回路22に1回目の切り替え信号が入力されると(S1)、待機時間決定部27は、操作履歴データベース28から操作履歴データを読み出して、待機時間Tを決定する(S2)。そして、制御回路22は、タイマ26により計時を開始する。2回目の切り替え信号が入力されずにタイマ26の計時が待機時間Tを超えた場合(S3のYES)、1回目の切り替え信号に応じた表示切り替え処理が開始される(S8)。一方、タイマ26の計時が待機時間Tを超える前に2回目の切り替え信号が入力された場合(S4のYES)、その時のタイマ26の計時結果、すなわち入力間隔Δt´(この場合は、Δt´)がRAM24に一時的に保存される(S5)。制御回路22は、タイマ26をリセットして、新たな計時を開始する。
【0039】
2回目の切り替え信号の入力後、3回目の切り替え信号が入力されずに待機時間Tが経過した場合(S6のYES)、2回目の切り替え信号に応じた表示切り替え処理が開始される(S8)。一方、待機時間Tが経過する前に3回目の切り替え信号が入力された場合(S7のYES)、その時のタイマ26の計時結果である入力間隔Δt´(この場合は、Δt´)が一時的に保存され(S5)、タイマ26で計時が開始される。
【0040】
そして、新たな切り替え信号が入力されずに待機時間Tが経過した場合(S6のYES)には、最後に入力された切り替え信号に応じた表示切り替え処理が開始され(S8)、超音波画像の表示が切り替えられる(S10)。表示切り替え処理が開始されると、制御回路22は、RAM24に一時的に保存された入力間隔Δt´で、操作履歴データベース28の操作履歴データを更新する(S9)。更新された操作履歴データは、次の切り替え操作の際に読み出されて、待機時間Tの決定に用いられる。また、ステップ10の終了後等の適宜のタイミングで、RAM24に保存した入力間隔Δt´が消去される。
【0041】
なお、待機時間Tは、前述の入力間隔Δtの平均値+許容時間Tαの他に、例えば、最後に入力された切り替え信号とその直前に入力された切り替え信号の入力間隔Δtn−1に許容時間Tαを加えたものであってもよい。この場合には、切り替え信号が入力される度に、RAM24に一時的に保存された計時結果を、その時のタイマ26の計時結果で上書きする。そして、操作履歴データベース28には、最後の入力間隔Δtn−1だけを記憶させる。このようにすれば、操作履歴データベース28の容量が小さくて済む。また、待機時間Tを決定する際に、平均値を算出する手間を省くことができる。更に、操作履歴データベース28を設けずに、RAM24を操作履歴データベースとして使用することもでき、コスト面等でも有利となる。
【0042】
あるいは、各切り替え信号の入力間隔のうち最長の入力間隔Δtmaxに許容時間Tαを加えたものを待機時間Tとしてもよい。これによっても、前述したのと同様に、操作履歴データベース28の容量を小さくできる等の効果を得ることができる。この場合には、切り替え信号が入力される度に、RAM24に一時的に保存された計時結果と、今回のタイマ26の計時結果とを比較し、今回の計時結果が上回っている場合のみ、RAM24を上書きする。そして、操作履歴データベース28には、最長の入力間隔Δtmaxだけを記憶させる。なお、入力間隔の平均値(ΣΔt/n−1)、最後の入力間隔(Δtn−1)、及び最長の入力間隔(Δtmax)のいずれを用いるかを、術者が任意に選択できるようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態において、操作履歴データベース28に予め術者名を登録しておき、術者ごとに操作履歴データを記録するようにしてもよい。この場合には、例えば図2に破線で示すように、操作卓25に、術者を選択するためのユーザーボタン36を設ける。超音波診断装置2を使用する際には、初めに術者を選択する。待機時間決定部27は、その術者の操作履歴データを操作履歴データベース28から読み出して、待機時間Tを決定する。また、RAMに一時的に保存した入力間隔Δt´を、選択された術者名に関連付けて操作履歴データベース28に記録する。このようにすれば、術者ごとに最適な待機時間を設定することができる。
【0044】
なお、上記各実施形態では、表示切り替え処理が開始されると、その処理が終了するまでの間は、切り替え信号の入力を受け付けることができなくなる。そこで、表示切り替え処理が開始された後においては、待機時間Tを設けずに、切り替え信号に対応するようにしてもよい。図6に示すように、表示切り替え処理が実行されている間に(S1のNO)、新たな切り替え信号が入力された場合(S2のYES)、制御回路22は、その時のタイマ26の計時結果をRAM24に一時的に保存するとともに(S3)、それまでの処理を中止し、新たな切り替え信号に応じた処理を開始する(S4)。こうすれば、表示切り替え処理の最中でも、新たな切り替え信号の入力に対応することができる。
【0045】
更に、デプススイッチの操作を機械的に検出してもよい。術者は、デプススイッチの操作中に、表示深度の切り替え量を判断している場合がある。このような場合に、デプススイッチが操作されているか否かを検出し、操作中であれば表示切り替え処理を開始しないようにすれば、待機時間Tに幅を持たせることができ、切り替え量を判断するための時間を術者に与えることができる。デプススイッチの操作の検出には、例えば、ロータリーディスクと光電センサからなるロータリーエンコーダを2組用いる。
【0046】
図7に示すように、デプススイッチ40は、操作卓25の内部に突出した軸部41を有している。軸部41の途中及び先端には、回転検出用のロータリーディスク42と、切り替え信号用のロータリーディスク43とが取り付けられている。ロータリーディスク42、43は、外周縁が周方向に沿って一定のピッチで切り欠かれた切り欠き46、47を有する。また、ロータリーディスク42の切り欠き46は、ロータリーディスク43の切り欠き47よりも短いピッチ(例えば、切り欠き47の1/5のピッチ)で形成されている。これらロータリーディスク42、43の位置に合わせて、回転検知用の光電センサ44と、切り替え信号用の光電センサ45が配置されている。これらロータリーディスク42、43と光電センサ44、45とで、ロータリーエンコーダが構成される。光電センサ44、45は、断面がコの字形状をした周知の透過型センサで、ロータリーディスク42、43の周縁を上下から挟む位置に発光素子及び受光素子が設けられている。なお、符号48は、デプススイッチ40の抜け止め用のつばである。また、煩雑さを避けるため、切り欠き46、47をそれぞれ16個、4個としたが、実際にはこれよりも多い。
【0047】
デプススイッチ40を1クリック分回転させると、切り替え信号用のロータリーディスク43の切り欠き47が、光電センサ45の凹部を1回通過する。これにより、光電センサ45の信号レベルがHighになり、制御回路22に切り替え信号が入力される。一方、回転検出用のロータリーディスク42の切り欠き46は、デプススイッチ40が1クリック分回転する間に、光電センサ44の凹部を4回通過する。従って、光電センサ44の信号レベルは4回Highになる。制御回路22は、切り替え信号を入力した場合であっても、光電センサ44の信号レベルが増減する度に、表示切り替え処理を開始するタイミングを先送りする。こうすれば、先送りした分の時間を使って、表示深度の切り替え量を判断することができる。なお、操作がされているか否かの検出はロータリーエンコーダに限らず、例えば、デプススイッチに指接触センサを組み込んでおき、術者の指がスイッチから離れた時に操作の終了を検出してもよい。
【0048】
なお、本発明は回転操作されるダイヤルスイッチ全般に好適であり、上記のデプススイッチの他にも、モニタ21の画面上で超音波走査の中心を軸として超音波画像を回転させるためのロテーションスイッチや、モニタ21の画面上で超音波画像を水平方向に移動させるためのムーブスイッチ等にも適用することができる。この場合は、DSC18で作られた超音波画像に、操作に応じた表示切り替え処理(回転又は平行移動)を施せばよい。
【0049】
更に、ダイヤル式のデプススイッチ35、40に替えて、プッシュ式のデプススイッチを用いることもできる。図8に示すように、操作卓50の右手側には、複数のプッシュ式デプススイッチ51が縦一列に配置されている。各デプススイッチ51は、予め定めた表示深度に対応しており、押圧操作されると切り替え信号を制御回路22に入力する。各デプススイッチ51の右手には、LEDランプ52が配置されている。LEDランプ52は、デプススイッチ51の押圧によって点灯し、現在選択されている表示深度を示す。この構成によれば、所望の表示深度を即座に選択することができるので、操作性が向上する。また、現在の表示深度を容易に確認することができる。更に、ダイヤル式と違って表示深度が一義的に決まるので、待機時間を設定する必要もない。
【0050】
また、上記各実施形態では、操作卓にデプススイッチを設けているが、図9に示すように、タッチパネル式のモニタ55の画面上に、表示深度ウィンドウ56を表示してもよい。表示深度ウィンドウ56では、表示深度を示すスケール57と、現在の表示深度を示すポインタ58とが表示されている。術者が指先やタッチペン等でポインタ58を上下に移動させると、制御回路22に切り替え信号が入力され、ポインタ58の位置に対応した表示深度の超音波画像がモニタ55に再表示される。
【0051】
なお、上記各実施形態では、超音波トランスデューサと撮像ユニットが一体化された超音波内視鏡を例示して説明したが、本発明は、撮像ユニットを備えていない超音波プローブにも適用することができる。また、超音波プローブは、内視鏡の鉗子口から体内に挿入する挿入型プローブであってもよいし、被検者の体表に接触させる接触型プローブであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ダイヤル式のデプススイッチを設けた操作卓の平面図である。
【図3】超音波画像の表示の切り替えを示す説明図であり、(a)は表示深度が浅い場合、(b)は表示深度が深い場合をそれぞれ示す。
【図4】入力間隔を示す説明図である。
【図5】待機時間を設けて信号処理を行なう手順を示すフローチャートである。
【図6】待機時間を設けずに信号処理を行なう手順を示すフローチャートである。
【図7】ロータリーディスクと光電センサを示す、デプススイッチ周辺の斜視図である。
【図8】プッシュ式のデプススイッチを設けた操作卓の平面図である。
【図9】表示深度ウィンドウが表示されたタッチパネル式のモニタを示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
2 超音波診断装置
10 超音波内視鏡
11 超音波観測装置
13 送信部
14 受信部
17 信号処理回路
21、55 モニタ
22 制御回路
26 タイマ
27 待機時間決定部
28 操作履歴データベース
35、40、51 デプススイッチ
42、43 ロータリーディスク
44、45 光電センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像を表示する表示手段と、
超音波画像の表示切り替えを指示する切り替え信号を入力するための操作入力手段と、
前記操作入力手段の操作入力状態を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知した操作入力状態を前記操作入力手段の操作履歴として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された操作履歴を元に、切り替え信号の入力終了後から超音波画像の表示切り替え処理を開始するまでの待機時間Tを決定する決定手段と、
前記検知手段で切り替え信号の入力終了を検知してから待機時間Tをおいて、切り替え信号に応じた表示切り替え処理を実行する処理手段とを備えたことを特徴とする超音波観測装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、使用者毎に操作履歴を記憶することを特徴とする請求項1記載の超音波観測装置。
【請求項3】
前記操作入力手段は、連続的且つ段階的に切り替え信号を入力することを特徴とする請求項1または2記載の超音波観測装置。
【請求項4】
前記検知手段は、連続的且つ段階的に入力される前後の切り替え信号の入力間隔Δt(i=1、2、・・・、n−1)を計時するタイマを有し、
前記記憶手段は、入力間隔Δtを操作履歴として記憶し、
前記決定手段は、入力間隔Δtに応じて待機時間Tを決定することを特徴とする請求項3記載の超音波観測装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、n回分の入力間隔Δtを操作履歴として記憶し、
前記決定手段は、入力間隔Δtの平均値(ΣΔt)/n−1に応じて待機時間Tを決定することを特徴とする請求項4記載の超音波観測装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記記憶手段に記憶された入力間隔Δtのうち、最後に入力された切り替え信号とその直前に入力された切り替え信号の入力間隔Δtn−1に応じて待機時間Tを決定することを特徴とする請求項4記載の超音波観測装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記記憶手段に記憶された入力間隔Δtのうち、最長の入力間隔Δtmaxに応じて待機時間Tを決定することを特徴とする請求項4記載の超音波観測装置。
【請求項8】
前記決定手段は、入力間隔Δtの平均値(ΣΔt)/n−1、最後に入力された切り替え信号とその直前に入力された切り替え信号の入力間隔Δtn−1、または最長の入力間隔Δtmaxに、許容時間Tαを加算したものを待機時間Tとすることを特徴とする請求項5ないし7いずれか記載の超音波観測装置。
【請求項9】
前記処理手段は、前回の切り替え信号に応じた表示切り替え処理の最中に、新たな切り替え信号が入力された場合、その処理を中止し、新たな切り替え信号に応じた表示切り替え処理を開始することを特徴とする請求項1ないし8いずれか記載の超音波観測装置。
【請求項10】
前記検知手段は、前記操作入力手段が操作されている最中か否かを検知し、この検知結果を元に切り替え信号の入力終了を検知することを特徴とする請求項1ないし9いずれか記載の超音波観測装置。
【請求項11】
前記操作入力手段はダイヤルスイッチであり、
前記検知手段は、前記ダイヤルスイッチの回転軸に取り付けられ、切り替え信号の入力が検知されるピッチよりも狭いピッチで被検知部が設けられたロータリーディスクと、被検知部を検知する光電センサとからなるロータリーエンコーダを有し、前記光電センサの出力の有無を元に、前記操作入力手段が操作されている最中か否かを検知することを特徴とする請求項10記載の超音波観測装置。
【請求項12】
前記処理手段は、超音波画像の表示深度の変更、回転、平行移動のうちのいずれかを表示切り替え処理として実行することを特徴とする請求項1ないし11いずれか記載の超音波観測装置。
【請求項13】
表示手段に表示される超音波画像の表示切り替えを指示する切り替え信号を入力するための操作入力手段の操作入力状態を検知する検知ステップと、
前記検知ステップで検知した操作入力状態を前記操作入力手段の操作履歴として記憶する記憶ステップと、
前記記憶手段に記憶された操作履歴を元に、切り替え信号の入力終了後から超音波画像の表示切り替え処理を開始するまでの待機時間Tを決定する決定ステップと、
前記検知ステップで切り替え信号の入力終了を検知してから待機時間Tをおいて、切り替え信号に応じた表示切り替え処理を実行する処理ステップとを備えたことを特徴とする超音波観測装置の動作制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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