説明

超音波計測方法、及び超音波計測装置

【課題】製造ラインで製造される塗布製品に対し、その塗布された塗布材の厚みを、インラインで高精度に計測することができる超音波計測方法、及び超音波計測装置を提供する。
【解決手段】超音波センサ組として、電極ペースト62の目付け量を計測する実測用超音波センサ組10を少なくとも1組と、第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12とは別で、一対の第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とからなる校正用超音波センサ組20とを有し、電極ペースト62の厚みの計測時に、校正用超音波センサ組20でキャリブレーションを行うと共に、校正用超音波センサ組20で得られた計測条件値を用いて、実測用超音波センサ組10により、電極ペースト62の目付け量を算出することを特徴とする超音波計測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、電池製造工程において電極製造ラインで金属箔に塗布された電極ペーストの目付け量等、塗布材の厚みを、インラインで計測する超音波計測方法、及び超音波計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池製造工程の中には、電極製造ラインで電極ペーストを金属箔に塗布して電極を製造する工程がある。電極は、製品となった電池の性能に大きく影響を及ぼすため、品質管理上、塗布後に、塗布された電極ペーストの目付け量や目付けプロファイルについて、品質検査を行うことが重要である。このような品質検査の中には、電極製造ラインのインライン上で、電極の電極ペーストに対し、広範囲にわたって満遍なく実施したい場合がある。
【0003】
そこで、出願人は、例えば、特許文献1に開示されているような超音波計測装置を用いて、電極製造ラインで製造される電極に対し、その電極ペーストの目付け量及び目付けプロファイルを、インライン上で全数検査ができないかを考えた。
図24に、特許文献1に開示された超音波計測装置の説明図を示す。特許文献1は、図24に示すように、一対の超音波送信手段81と超音波受信手段82とを計測対象物90の上方に配置し、超音波送信手段81から送信された入射波を計測対象物90に透過させ、計測対象物90からの反射波を超音波受信手段82で受信する超音波計測装置である。
【0004】
特許文献1では、伝播時間計測手段83が、超音波送信手段81の入射信号と超音波受信手段82で受信する反射信号とに基づき、計測対象物90を伝播する超音波の伝播時間を測定する。また、温度測定手段94a,94bが、計測対象物90を構成する液相91、固相92の各温度を測定し、速度校正手段85が、温度測定手段94a,94bにより測定した液相91、固相92の測定温度に基づいて、伝播する超音波の伝播速度を校正する。
伝播経路長測定手段86は、伝播時間計測手段83により得られた超音波の伝播時間と、速度校正手段85による伝播速度の校正値とに基づいて、計測対象物90の厚みのほか、液相91と固相92とが積層された計測対象物90の相変化の位置を計測できるようになっている。
【0005】
また、超音波送信手段81及び超音波受信手段82のキャリブレーションについては、特許文献1に何ら記載されていないが、特許文献1のような従来の超音波計測装置では、超音波を送信(受信)する超音波センサのキャリブレーションは、一般的に行われている。
キャリブレーションは、計測時に超音波センサで計測誤差をより少なくするため、通常、例えば、計測対象物の厚さ、距離等の計測(以下、「超音波計測」という。)を超音波センサで実施する前や実施した後、あるいは実測を中断したとき等、超音波計測を実測で実施していないときに行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−102160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下の2つの問題があった。
(1)特許文献1では、超音波送信手段81から計測対象物90に向けて送波した超音波や、計測対象物90で反射して超音波受信手段82で受波された超音波は、計測対象物90以外の媒質である空気層を伝播する。この空気層の温度が管理されていないと、空気層において音響インピーダンスは空気層の温度変化によって変化してしまう。
空気層で音響インピーダンスが変化すると、この空気層を伝播する超音波の波長が変化してしまうため、超音波の伝播速度を速度校正手段85で校正しただけでは、結果的に計測対象物90の厚み等を正確に得ることができない。
【0008】
(2)また、超音波センサのキャリブレーションが超音波計測の実測時にリアルタイムで実施されていないと、超音波センサの雰囲気温度が、キャリブレーションの実施時と超音波計測の実測時で大きく異なる場合がある。このような場合、例えば、超音波を受波する受波側超音波センサの受信信号強度等は、雰囲気温度に起因して大きく変化する。
【0009】
その一例として、図25に、受波側超音波センサに対し、その受信信号強度と雰囲気温度との関係を調査した結果のグラフを示す。その調査は、同じ周波数帯の受波側超音波センサをサンプル数2とし、図25では、それぞれセンサA、センサBとした。
図25に示すように、センサA,Bとも、例えば、雰囲気温度20℃近傍のとき、受信信号強度は約825〔mV〕であったものが、雰囲気温度23℃を超えると、受信信号強度は780〔mV〕を下回り、3℃分の温度上昇変化で、受信信号強度は実に5%以上低下していることが判る。
【0010】
また、超音波センサは、センサの特性上、超音波を送信または受信している作動状態の時間の経過と共に、自己発熱する。図26は、受波側超音波センサにおいて、一例として、自己発熱と超音波強度との関係を示すグラフである。
図26に示すように、受波側超音波センサでは、その作動開始時(t=0〔min.〕)に、例えば、センサの温度が約28.5℃であったものが、作動開始後、t=120〔min.〕のときには、センサ自体の発熱により、約30.7℃まで上昇している。その一方で、作動開始後2時間が経過する間に、受信信号強度は、約76,200〔mV〕から約72,300〔mV〕までと、作動開始時の約5%も低下していることが判る。
【0011】
ところで、超音波センサには、音波伝播の特性上、図27に示すような受信信号強度と実質的に等価である超音波の受信パワー(超音波強度)の大きさと、受波する超音波の波長の大きさとの間には、一般的に相関関係がある。図27は、受波された超音波における波長と超音波強度との関係を示すグラフである。
超音波強度は、図27に示すように、ある波長の大きさをピーク値とする正規分布で変化し、波長の大きさがこのピーク値から前後に外れると、超音波強度が上記ピーク値より大きく低下する特性がある。
【0012】
このように、同じ受波側超音波センサにおいて、超音波センサの雰囲気温度が、キャリブレーションの実施時と超音波計測の実測時とで異なる場合のほか、超音波センサの自己発熱が生じると、超音波強度が大きく変化してしまうため、参照する図27から読み取れるように、受波側超音波センサで受波する超音波の波長の大きさも変化する。
超音波計測は、受波する超音波の波長の大きさに基づいて演算処理され算出される。そのため、たとえキャリブレーションを適切に行っていても、キャリブレーションが、超音波計測の実測時にリアルタイムで実施されていなければ、同じ受波側超音波センサでも、超音波センサの雰囲気温度の違いや自己発熱に起因して、受波する超音波の波長の大きさが異なり、超音波計測をより精度良くできない問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、製造ラインで製造される塗布製品に対し、その塗布された塗布材の厚みを、インライン上で高精度に計測することができる超音波計測方法、及び超音波計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の問題点を解決するために、本発明の超音波計測方法、及び超音波計測装置は、次の構成を有している。
【0015】
(1)第1超音波センサと第2超音波センサとが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属製の基材の片面または両面に塗布材を塗布した塗布製品の厚み方向に対し、一方側に第1超音波センサを、他方側に第2超音波センサを、それぞれ空気層を介して配置し、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、塗布材の厚みを計測する超音波計測方法において、超音波センサ組として、塗布材の厚みを計測する実測用超音波センサ組を少なくとも1組と、第1超音波センサ及び第2超音波センサとは別で、一対の第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとからなる校正用超音波センサ組とを有し、塗布材の厚みの計測時に、校正用超音波センサ組でキャリブレーションを行うと共に、校正用超音波センサ組で得られた計測条件値を用いて、実測用超音波センサ組により、塗布材の厚みを算出すること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する超音波計測方法において、校正用超音波センサ組では、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び実測用超音波センサ組では、第1超音波センサと第2超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、を特徴とする。
なお、本発明の超音波計測方法では、「超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサ」とは、超音波センサが送信側である場合、超音波センサで超音波を送波する超音波振動面が、1つの振動面、または複数に分割された振動面からなり、超音波振動面の全体形状が、例えば、矩形状、円形状等に形成された超音波センサである。また、送波した超音波を、空気層を介して、塗布製品のうち、超音波センサの超音波振動面と対向するエリア内に少なくとも伝播させることができる超音波センサをいう。
また、超音波センサが受信側である場合、超音波センサで超音波を受波する超音波振動面が、1つの振動面、または複数に分割された振動面からなり、超音波振動面の全体形状が、例えば、矩形状、円形状等に形成された超音波センサである。また、他の超音波センサから送波、照射されて塗布製品を少なくとも透過した超音波(透過波)を、空気層を介して超音波振動面全体で受波することができる超音波センサをいう。
(3)(1)または(2)に記載する超音波計測方法において、校正用超音波センサ組では、実測用超音波センサ組による実測前に、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間に、キャリブレーションで用いる基準箔を配置し、第1校正用超音波センサから送波した超音波を基準箔に透過させ、第2校正用超音波センサで受波した超音波の第1受信信号を、計測条件値として予め取得すること、実測用超音波センサ組では、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で塗布製品を透過した超音波の第2受信信号を取得すること、塗布材の厚みは、第1受信信号と第2受信信号との相対比により算出すること、を特徴とする。
【0016】
(4)(3)に記載する超音波計測方法において、第1校正用超音波センサから送波した超音波を、基準箔に透過させ、第2校正用超音波センサで受波した超音波の受信信号として、第1サンプル受信信号を、基準箔内の複数の部位で取得すること、第1受信信号は、複数の第1サンプル受信信号に基づいて処理された信号であること、を特徴とする。
(5)(3)または(4)に記載する超音波計測方法において、実測用超音波センサ組を基準箔の配置位置まで移動させ、実測用超音波センサ組により、第1超音波センサから送波した超音波を基準箔に透過させ、第2超音波センサで受波した超音波の第3受信信号を取得すること、を特徴とする。
(6)(5)に記載する超音波計測方法において、第1超音波センサから送波した超音波を、基準箔に透過させ、第2超音波センサで受波した超音波の受信信号として、第3サンプル受信信号を、基準箔内の複数の部位で取得すること、第3受信信号は、複数の第3サンプル受信信号に基づいて処理された信号であること、を特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する超音波計測方法において、第1校正用超音波センサ及び第2校正用超音波センサと、第1超音波センサ及び第2超音波センサとは、それぞれ同期して超音波を送受信していること、を特徴とする。
【0017】
(8)第1超音波センサと第2超音波センサとが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属製の基材の片面または両面に塗布材を塗布した塗布製品の厚み方向に対し、一方側に第1超音波センサを、他方側に第2超音波センサを、それぞれ空気層を介して配置し、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、塗布材の厚みを計測する超音波計測装置において、超音波センサ組として、塗布材の厚みを計測する実測用超音波センサ組を少なくとも1組と、第1超音波センサ及び第2超音波センサとは別で、一対の第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとからなる校正用超音波センサ組とを有し、実測用超音波センサ組は、塗布材の厚みの実測時に、校正用超音波センサ組によるキャリブレーションで得られた計測条件値に基づいて、超音波を送受信すること、を特徴とする。
(9)(8)に記載する超音波計測装置において、校正用超音波センサ組では、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び実測用超音波センサ組では、第1超音波センサと第2超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、を特徴とする。
(10)(8)または(9)に記載する超音波計測装置において、校正用超音波センサ組及び実測用超音波センサ組に対し、超音波の送受信と計測条件とを制御する制御手段を備え、制御手段は、校正用超音波センサ組による計測条件値を、実測用超音波センサ組にフィードバックすること、を特徴とする。
(11)(8)乃至(10)のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、キャリブレーションで用いる基準箔が、塗布製品と共に配置され、校正用超音波センサ組が、基準箔が配置されている第1位置と、第1位置から外れ、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間に空気層だけが存在する第2位置との範囲を、少なくとも移動可能に設けられていること、を特徴とする。
【0018】
(12)(11)に記載する超音波計測装置において、基準箔を保持する保持部材と、保持部材を動作させると共に、その動作を停止させる駆動手段と、を備え、保持部材で保持された基準箔が、駆動手段により、対向する第1超音波センサの中心と第2超音波センサの中心とを結ぶ仮想線と交差する範囲内で、第1超音波センサ及び第2超音波センサと相対的に移動可能に配置されていること、または対向する第1校正用超音波センサの中心と第2校正用超音波センサの中心とを結ぶ仮想線と交差する範囲内で、第1校正用超音波センサ及び第2校正用超音波センサと相対的に移動可能に配置されていること、を特徴とする。
(13)(12)に記載する超音波計測装置において、動作する保持部材に対し、仮想線が基準箔内の所定部位に交差する状態に対応する位置を検出する位置決め手段を備えていること、を特徴とする。
なお、「所定部位」とは、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で伝播させる超音波を、基準箔内の所望の位置で、この基準箔を透過させる部位、または第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間で伝播させる超音波を、基準箔内の所望の位置で、この基準箔を透過させる部位をいう。
(14)(11)乃至(13)のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、実測用超音波センサ組が、第1位置と、第1位置から外れ、塗布製品が配置されている第3位置との範囲を少なくとも移動可能に設けられていること、を特徴とする。
(15)(11)乃至(14)のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、捲回されている基材は長尺状であり、基材の長辺に沿う長手方向及び基材の厚み方向に直交する方向を、基材の幅方向としたときに、基準箔は、塗布製品と幅方向に並んで配置され、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組とが、それぞれ幅方向に沿う方向に移動すること、を特徴とする。
【0019】
(16)(11)乃至(15)のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、校正用超音波センサ組には、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとに対し、超音波振動面と基準箔との間の空気層を包囲する筒状の校正センサ用カバーが設けられていること、を特徴とする。
(17)(8)乃至(16)のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、実測用超音波センサ組には、第1超音波センサと第2超音波センサとに対し、超音波振動面と塗布製品との間の空気層を包囲する筒状の実測センサ用カバーが設けられていること、を特徴とする。
(18)(16)または(17)に記載する超音波計測装置において、校正センサ用カバー及び実測センサ用カバーは、内筒側カバーと、内筒側カバーより外側に位置する外筒側カバーとの2重構造で形成され、外筒側カバーは、基準箔または塗布製品と内筒側カバーよりも離れるよう、基材の厚み方向に沿う方向に対し、内筒側カバーより短く形成されていること、を特徴とする。
(19)(8)乃至(18)のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、基材は、塗布製品である電池の電極に用いる金属箔であり、塗布材は、金属箔に塗布された電極ペーストであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上記構成を有する本発明の超音波計測方法、及び超音波計測装置の作用・効果について説明する。
【0021】
本発明の超音波計測方法では、
(1)第1超音波センサと第2超音波センサとが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属製の基材の片面または両面に塗布材を塗布した塗布製品の厚み方向に対し、一方側に第1超音波センサを、他方側に第2超音波センサを、それぞれ空気層を介して配置し、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、塗布材の厚みを計測する超音波計測方法において、超音波センサ組として、塗布材の厚みを計測する実測用超音波センサ組を少なくとも1組と、第1超音波センサ及び第2超音波センサとは別で、一対の第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとからなる校正用超音波センサ組とを有し、塗布材の厚みの計測時に、校正用超音波センサ組でキャリブレーションを行うと共に、校正用超音波センサ組で得られた計測条件値を用いて、実測用超音波センサ組により、塗布材の厚みを算出するので、例えば、電池製造工程において、金属箔(基材)に電極ペースト(塗布材)を塗布して電極(塗布製品)を製造する製造ラインのインライン上で、塗布材の目付け量等、塗布材の厚みを計測する場合に、超音波センサの自己発熱や空気層の温度変化に起因した計測精度の誤差要因を排除して、塗布材の厚み(目付け量等)をより高精度に計測することができる。
【0022】
すなわち、本発明の超音波計測方法では、校正用超音波センサ組がキャリブレーションを行う一方で、実測用超音波センサ組が、塗布材の厚みの実測時にリアルタイムに、校正用超音波センサ組から得られた計測条件値を採り入れて塗布材の厚みを計測している。
【0023】
ここで、超音波センサ(第1超音波センサ、第2超音波センサ、第1校正用超音波センサ、第2校正用超音波センサ)と、空気層における音速、密度、及び音響インピーダンスとの関係について、簡単に説明する。
空気層における音速、密度、及び音響インピーダンスは、次式より求められる。
(あ)音速
C=f×λ…式1
C:音速(m/sec)、f:超音波センサの周波数(kHz)、λ:波長(m)
また、
C=331.5+(0.61×t)…式2
t:温度(℃)
(い)密度
ρ=1.293×(273.15/(273.15+t))×(P/1013.25)…式3
ρ:密度(kg/m)(ntp)、t:温度(℃)、P:気圧(atm)
(う)音響インピーダンス
Z=ρ×C…式4
Z:音響インピーダンス(Pa・s/m)
大気圧の下、空気層における音速、密度、及び音響インピーダンスは、式2及び式4より、空気層の温度に比例し、式1中、周波数fを定数とみなすと、波長λも、空気層の温度に比例する関係にある。
【0024】
第1超音波センサと第2超音波センサとの間には、特許文献1と同様、超音波が空気層を介して伝播する。
しかしながら、本発明の超音波計測方法では、実測用超音波センサ組は、例えば、空気層における音速、密度、音響インピーダンス、及び伝播する超音波の波長等、空気層の温度変化に伴いパラメータとして変化する計測条件値を、塗布材の厚みの計測時にリアルタイムに、校正用超音波センサ組から採り入れて実測している。
そのため、第1超音波センサと第2超音波センサとの間の空気層の温度が、たとえ計測中に変化しても、実測用超音波センサ組が、校正用超音波センサ組で補正された計測条件値の下、上述したように、実測時の実際の温度に対応した波長に基づいて、塗布材の厚みを計測することができる。
【0025】
また、キャリブレーションを超音波計測の実測と同時に行っていない従来の超音波計測方法では、同じ受波側超音波センサでも、超音波センサの雰囲気温度(空気層の温度)が異なる場合や自己発熱に起因して、受波する超音波の波長の大きさが異なり、超音波計測を精度良くできない問題があった。
これに対し、本発明の超音波計測方法では、実測用超音波センサ組が、校正用超音波センサ組による計測条件値を、塗布材の厚みの計測時にリアルタイムに採り入れて実測している。
そのため、第1,第2超音波センサによる実測時と第1,第2校正用超音波センサによるキャリブレーションの実施時で、空気層の温度に差異が生じることはない。
【0026】
また、第1,第2超音波センサと第1,第2校正用超音波センサとが、共に同じタイミングで作動していれば、たとえ第1,第2超音波センサが作動時間の経過と共に自己発熱しても、第1,第2超音波センサと同様、第1,第2校正用超音波センサも自己発熱する。このとき、自己発熱した第1,第2超音波センサの温度と、自己発熱した第1,第2校正用超音波センサの温度との相対差はほとんどない。そのため、自己発熱により校正用超音波センサ組で受波する超音波の波長の大きさが変化しても、実測用超音波センサ組でも、受波する超音波の波長の大きさが、校正用超音波センサ組と同じように変化する。
よって、実測用超音波センサ組の波長の大きさと校正用超音波センサ組の波長の大きさとの相対差はほとんど生じず、校正用超音波センサ組の第1,第2校正用超音波センサと、実測用超音波センサ組の第1,第2超音波センサとが共に自己発熱しても、塗布材の厚み(目付け量等)の計測をより高精度に行うことができる。
【0027】
従って、本発明の超音波計測方法によれば、超音波センサの自己発熱や空気層の温度変化に起因した計測精度の誤差要因が排除できるため、製造ラインで製造される塗布製品に対し、その塗布された塗布材の厚み(目付け量等)を、インライン上で高精度に計測することができる、という優れた効果を奏する。
【0028】
(2)校正用超音波センサ組では、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び実測用超音波センサ組では、第1超音波センサと第2超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いるので、実測用超音波センサ組では、第1超音波センサ及び第2超音波センサのうち、超音波を受波する受信側超音波センサにおいて、塗布材の厚みを求めるための受信信号が、超音波が局部的な部位に伝播するスポットタイプの超音波センサに比べて、塗布製品の広い範囲で得られるようになる。
そのため、例示したような電極ペーストの目付け量や目付けプロファイル等、塗布材の厚みに係る品質検査を、塗布製品の製造ライン上で実施することができる。
【0029】
また、受信側超音波センサで受波した受信信号を、塗布製品の広域から得ることができるため、塗布製品において塗布材の厚みをより広い範囲で検出できることから、計測範囲内で塗布材の厚みのバラツキ等がより正確に把握でき、塗布材の目付け量等、塗布製品の所定範囲内における塗布材の全体的な厚みを、高い信頼性で計測することができる。
【0030】
また、校正用超音波センサ組の第1校正用超音波センサ及び第2校正用超音波センサと、実測用超音波センサ組の第1超音波センサ及び第2超音波センサとが、いずれもフラットタイプの超音波センサである。
そのため、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との間で、超音波センサの超音波振動面の形態の違いに起因した特性上の差異が生じず、実測用超音波センサ組が、校正用超音波センサ組によるキャリブレーションで得られた計測条件値を、精度良く適切な状態で取得することができる。
【0031】
なお、本発明の超音波計測方法では、第1超音波センサ、第2超音波センサ、第1校正用超音波センサ、及び第2校正用超音波センサに、公称の周波数として、同じ周波数帯の超音波センサを用いることが好ましい。また、第1超音波センサと第2超音波センサとに対し、また第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとに対し、それぞれ超音波を送信及び受信が可能な超音波センサを用いることが好ましい。
【0032】
(3)校正用超音波センサ組では、実測用超音波センサ組による実測前に、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間に、キャリブレーションで用いる基準箔を配置し、第1校正用超音波センサから送波した超音波を基準箔に透過させ、第2校正用超音波センサで受波した超音波の第1受信信号を、計測条件値として予め取得すること、実測用超音波センサ組では、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で塗布製品を透過した超音波の第2受信信号を取得すること、塗布材の厚みは、第1受信信号と第2受信信号との相対比により算出するので、例えば、基材に塗布材を塗布した塗布製品に対し、塗布材の目付け量や目付けプロファイル等、塗布材の厚みを計測する場合、その実測時に、この塗布材を透過する超音波の減衰率と塗布材の厚みとの関係を示した検量線等を全く必要とせず、実測時に第2受信信号を取得するだけで、塗布材の厚みを簡単に算出することができる。
【0033】
すなわち、塗布材の目付け量は、塗布材を透過する超音波の減衰率を用いて、次式より求めることができる。
M=A/α…式5
M:塗布材の目付け量(g/m)、α:超音波の減衰率(%)、A:定数
【0034】
ここで、目付け量が異なる3種の比較検討用基準箔A,B,Cを用いて、目付け量と超音波の減衰率との関係について、説明する。
超音波の減衰率αは、第1超音波センサと第2超音波センサとの間に箔を配置せず、空気層だけを伝播して受波する超音波の受信信号(箔無し受信信号)Sと、第1超音波センサと第2超音波センサとの間に配置した比較検討用基準箔を伝播して受波する超音波の受信信号(箔有り受信信号)Sとの相対比である。
(ア)比較検討用基準箔Aについて
比較検討用基準箔Aの目付け量Mを求めると、式5より
=A/(SKA/S)…式6 式6より、A=M×SKA/S…式7
:比較検討用基準箔Aの目付け量(g/m)、SKA:比較検討用基準箔A有り受信信号、S:箔無し受信信号
(イ)比較検討用基準箔Bについて
比較検討用基準箔Bの目付け量Mを求めると、式5より
=A/(SKB/S)…式8 式8より、A=M×SKB/S…式9
:比較検討用基準箔Bの目付け量(g/m)、SKB:比較検討用基準箔B有り受信信号
(ウ)比較検討用基準箔Cについて
比較検討用基準箔Cの目付け量Mを求めると、式5より
=A/(SKC/S)…式10 式10より、A=M×SKC/S…式11
:比較検討用基準箔Cの目付け量(g/m)、SKC:比較検討用基準箔C有り受信信号
式7、式9、及び式11に示すように、定数A及び箔無し受信信号Sは一定であるため、式7、式9、及び式11を変形すると、
×SKA=M×SKB=M×SKC=A×S=一定…式12
上述したように、式12が導き出される。
【0035】
その一方で、目付け量が未知である比較検討用基準箔Xについて、目付け量Mを計測するには、式5により、
=A/(S/S)…式13
:比較検討用基準箔Xの目付け量(g/m)、S:比較検討用基準箔X有り受信信号
式12を用いて式13を変形すると、
=A×S/S=M×SKA/S=M×SKB/S=M×SKC
/S…式14
よって、式14の分子項は、式12より一定値であることから、比較検討用基準箔Xの目付け量Mが、式12から得られる一定値と、比較検討用基準箔Xの箔有り受信信号Sとの相対比から求めることができる。
【0036】
本発明の超音波計測方法では、実測用超音波センサ組による実測前に、まず校正用超音波センサ組により、キャリブレーションで用いる基準箔を透過する超音波の減衰率を、第1受信信号として予め取得しておく。
具体的に、例えば、比較検討用基準箔Aが、キャリブレーションで用いる基準箔の場合で説明すると、式6の分母項において、箔無し受信信号Sは、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間に、この基準箔を配置せず、空気層だけを伝播して受波する超音波の定数としての受信信号である。また、式6の分母項において、比較検討用基準箔A有り受信信号SKAは、第1受信信号そのものである。
その一方で、この基準箔において、重量と面積とが予め確認できていれば、基準箔の密度が把握できる。基準箔の目付け量Mは、基準箔の密度と等価であるため、基準箔の重量と面積とから求まる。
従って、上記のM=M×SKA/S…式14において、分子項は、予め確認できている基準箔の重量と、基準箔の面積と、第1受信信号とから算出される。
【0037】
次いで、その後、塗布材の厚みの実測時に、実測用超音波センサ組で、第1超音波センサと第2超音波センサとの間に、塗布製品を配置し、第1超音波センサから送波した超音波を塗布製品に透過させ、第2超音波センサで受波した第2受信信号を取得する。
上述したように、式14の分母項である受信信号Sは、目付け量が未知である比較検討用基準箔X、すなわち計測対象の塗布製品を伝播して受波する超音波の受信信号であり、第2受信信号そのものである。
従って、式14より、キャリブレーションで用いる基準箔の目付け量M、及び第1受信信号SKAを、実測用超音波センサ組による実測前に前もって取得しておけば、塗布材の厚みの実測時に、第2受信信号を取得するだけで、塗布材の厚みを簡単に算出することができる。
【0038】
(4)第1校正用超音波センサから送波した超音波を、基準箔に透過させ、第2校正用超音波センサで受波した超音波の受信信号として、第1サンプル受信信号を、基準箔内の複数の部位で取得すること、第1受信信号は、複数の第1サンプル受信信号に基づいて処理された信号であること、を特徴とするので、基準箔を用いて、校正用超音波センサ組によりキャリブレーションを行うときに、基準箔を透過する超音波の減衰率(第1サンプル受信信号)に、基準箔内の部位によってバラツキがある場合でも、信頼性がより高い最適な大きさの第1受信信号が得られる。
【0039】
すなわち、厳密に言えば、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間に配置した1つの基準箔において、校正用超音波センサ組により超音波が透過する部位が異なると、例えば、参照する前述の式6、式8、式10において、SKA≠SKB≠Sや、SKA≒SKB≠Sとなる場合等のように、超音波の減衰率(第1サンプル受信信号)にバラツキが生じることがある。校正用超音波センサ組によりキャリブレーションを行うときに、基準箔を透過する部位によって、超音波の減衰率にバラツキがあると、第1受信信号に係る信頼性が低下してしまい、実測用超音波センサ組に反映させる計測条件値が、より高精度に得られない。
これに対し、本発明の超音波計測方法では、第1サンプル受信信号が、基準箔内の複数の部位で取得され、第1受信信号(基準箔を透過する超音波の減衰率)が、得られた複数の第1サンプル受信信号に基づき、例えば、最小二乗法等の演算処理により、得られた信号である。そのため、第1受信信号は、信頼性がより高い最適な大きさの信号となる。特に、実測用超音波センサ組により塗布材の厚み(目付け量)を計測し算出する毎に、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間を超音波が伝播する空気層に対し、その温度、密度、及び気圧を計測したその各データが、塗布材の厚みの計測毎に補正されることが好ましい。上記各データが塗布材の目付け量を算出する毎に補正された状態で、その都度、第1受信信号が取得されれば、第1受信信号は、より信頼性の高い信号で、高精度に維持されたままの信号とすることができる。
【0040】
また、基準箔を透過する超音波の減衰率が、信頼性がより高く、高精度に得ることができることから、実測用超音波センサ組により塗布材の厚み(目付け量)を計測し算出するときに、高精度に取得できた第1受信信号が、第2受信信号と共に、実測用超音波センサ組の計測条件値に反映されて、塗布材の厚み(目付け量)が一層高精度に算出することができる。
【0041】
(5)実測用超音波センサ組を基準箔の配置位置まで移動させ、実測用超音波センサ組により、第1超音波センサから送波した超音波を基準箔に透過させ、第2超音波センサで受波した超音波の第3受信信号を取得するので、校正用超音波センサ組の第1校正用超音波センサ、第2校正用超音波センサと、実測用超音波センサ組の第1超音波センサ、第2超音波センサに機差がある場合、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との機差は、第1受信信号と第3受信信号との相対比よって把握することができる。
よって、実測用超音波センサ組は、第1受信信号及び第3受信信号に基づき、校正用超音波センサ組との機差を考慮した上で塗布材の厚みを算出すれば、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との機差による誤差要因を排除して、塗布材の厚みを高精度に計測することができる。
【0042】
(6)第1超音波センサから送波した超音波を、基準箔に透過させ、第2超音波センサで受波した超音波の受信信号として、第3サンプル受信信号を、基準箔内の複数の部位で取得すること、第3受信信号は、複数の第3サンプル受信信号に基づいて処理された信号であること、を特徴とするので、基準箔を用いて、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との機差を確認するときに、基準箔を透過する超音波の減衰率(第3サンプル受信信号)に、基準箔内の部位によって多少のバラツキがある場合でも、信頼性がより高い最適な大きさの第3受信信号が得られる。第3受信信号(基準箔を透過する超音波の減衰率)は、得られた複数の第3サンプル受信信号に基づき、例えば、最小二乗法等の演算処理により得られた信号であるため、複数の第3サンプル受信信号にバラツキが存在していても、信頼性がより高い最適な大きさの信号となるからである。
【0043】
特に、校正用超音波センサ組についても、第1受信信号が、基準箔内の複数の部位から取得した複数の第1サンプル受信信号に基づいて処理された信号であることが好ましい。そして、このような第1受信信号と、第3受信信号とから、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との機差を確認する調査が行われれば、上記機差に係る調査結果がより高精度に得ることができる。
【0044】
(7)第1校正用超音波センサ及び第2校正用超音波センサと、第1超音波センサ及び第2超音波センサとは、それぞれ同期して超音波を送受信しているので、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組とは、時間差のない同じ雰囲気温度の環境下に晒すことができ、空気層における音速、密度、及び音響インピーダンスは、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組とで、ほぼ同じとすることができる。
これにより、校正用超音波センサ組で、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間で送受信する超音波と、実測用超音波センサ組で、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で送受信する超音波とが、ほぼ同じ条件の下で、空気層を伝播するようになる。
よって、実測用超音波センサ組は、校正用超音波センサ組と同じ条件の下、雰囲気温度や自己発熱等の温度による誤差要因を排除した高精度の校正値として、校正用超音波センサ組から得られた計測条件値を取得することで、塗布材の厚みが、高精度に安定した状態で計測できる。
【0045】
(8)第1超音波センサと第2超音波センサとが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属製の基材の片面または両面に塗布材を塗布した塗布製品の厚み方向に対し、一方側に第1超音波センサを、他方側に第2超音波センサを、それぞれ空気層を介して配置し、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、塗布材の厚みを計測する超音波計測装置において、超音波センサ組として、塗布材の厚みを計測する実測用超音波センサ組を少なくとも1組と、第1超音波センサ及び第2超音波センサとは別で、一対の第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとからなる校正用超音波センサ組とを有し、実測用超音波センサ組は、塗布材の厚みの実測時に、校正用超音波センサ組によるキャリブレーションで得られた計測条件値に基づいて、超音波を送受信するので、例えば、電池製造工程において、金属箔(基材)に電極ペースト(塗布材)を塗布して電極(塗布製品)を製造する製造ラインのインライン上で、塗布材の目付け量、及び目付けプロファイル等、塗布材の厚みを計測する場合に、実測時に、超音波センサの自己発熱や空気層の温度変化に起因した計測精度の誤差要因を排除して、塗布材の厚みをより高精度に計測することができる。
【0046】
また、第1,第2超音波センサと第1,第2校正用超音波センサとが、共に同じタイミングで作動していれば、たとえ第1,第2超音波センサが作動時間の経過と共に自己発熱しても、第1,第2超音波センサと同様、第1,第2校正用超音波センサも自己発熱する。このとき、自己発熱した第1,第2超音波センサの温度と、自己発熱した第1,第2校正用超音波センサの温度との相対差はほとんどない。そのため、自己発熱により校正用超音波センサ組で受波する超音波の波長の大きさが変化しても、実測用超音波センサ組でも、受波する超音波の波長の大きさが、校正用超音波センサ組と同じように変化する。
よって、実測用超音波センサ組の波長の大きさと校正用超音波センサ組の波長の大きさとの相対差はほとんど生じず、校正用超音波センサ組の第1,第2校正用超音波センサと、実測用超音波センサ組の第1,第2超音波センサとが共に自己発熱しても、計測精度を高精度に維持したまま、塗布材の厚みが計測できる。
【0047】
従って、本発明の超音波計測装置では、超音波センサの自己発熱や空気層の温度変化に起因した計測精度の誤差要因が排除できるため、製造ラインで製造される塗布製品に対し、その塗布された塗布材の厚み(目付け量等)を、インライン上で高精度に計測することができる、という優れた効果を奏する。
【0048】
また、本発明の超音波計測装置では、塗布製品を製造する製造ラインを停止させる必要がなく、ライン稼働中に、実測用超音波センサ組が、校正用超音波センサ組によるキャリブレーションで得られた計測条件値を取得することができる。そのため、実測用超音波センサ組の計測条件を校正するのに余分な工程が増えず、塗布製品がコスト高になることもない。
また、本発明の超音波計測装置は、製造ラインに設備するときのコストも安価である上、塗布製品を製造する製造ラインに対し、新設または既設にかかわらず容易に組み込むことができる。
【0049】
(9)校正用超音波センサ組では、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び実測用超音波センサ組では、第1超音波センサと第2超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いるので、先に例示したように、例えば、電池製造工程において、金属箔(基材)に電極ペースト(塗布材)を塗布して電極(塗布製品)を製造する製造ラインのインライン上で、塗布材の目付け量、及び目付けプロファイル等、塗布材の厚みを計測するときに、第1超音波センサから送波した超音波が、塗布製品の広い面積にわたって照射されて塗布製品中の基材と塗布材とを透過し、第2超音波センサが、より広範囲にわたって基材及び塗布材を透過した超音波(透過波)を受波できる。
これにより、第2超音波センサで受波した透過波による受信信号が、塗布材の厚みを求めるための受信信号として、塗布製品の広域から得ることができるため、塗布製品において塗布材の厚みをより広い範囲で検出できる。よって、計測範囲内で塗布材の厚みのバラツキ等がより正確に把握でき、塗布材の目付け量等、塗布製品の所定範囲内における塗布材の全体的な厚みを、高い信頼性で計測することができる。
【0050】
その一方で、校正用超音波センサ組の第1校正用超音波センサ及び第2校正用超音波センサと、実測用超音波センサ組の第1超音波センサ及び第2超音波センサとが、いずれもフラットタイプの超音波センサである。そのため、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との間で、超音波センサの超音波振動面の形態の違いに起因した特性上の差異が生じず、校正用超音波センサ組によるキャリブレーションで得られた計測条件値が、実測用超音波センサ組に、精度良く適切にフィードバックできるようになる。
【0051】
(10)校正用超音波センサ組及び実測用超音波センサ組に対し、超音波の送受信と計測条件とを制御する制御手段を備え、制御手段は、校正用超音波センサ組による計測条件値を、実測用超音波センサ組にフィードバックするので、常時、実測用超音波センサ組が、計測環境変化に対応して、校正用超音波センサ組によりキャリブレーションされた最新の計測条件値を、塗布材の厚みの実測時とリアルタイムに取得でき、塗布材の厚みの計測が高精度にできる。
【0052】
すなわち、キャリブレーションを超音波計測の実測時と同時に行っていない従来の超音波計測方法では、先に行ったキャリブレーションと、その後に行ったキャリブレーションには、時間差があり、この時間内に、自己発熱による超音波センサの温度上昇、雰囲気温度や空気層の密度等の計測環境が変化することが多々ある。このような計測環境に変化がある中で、超音波センサにより塗布材の厚みの計測を行っても、計測結果は、計測環境変化に起因したバラツキを有し、計測結果に信頼性がない計測値となり問題である。
これに対し、本発明の超音波計測装置は、計測環境変化に対応し、常時、最新の計測条件値を採り入れて塗布材の厚みの計測を行うことができるため、塗布材の厚みの計測結果は、高精度でかつ高い信頼性を有した計測値となる。
【0053】
(11)キャリブレーションで用いる基準箔が、塗布製品と共に配置され、校正用超音波センサ組が、基準箔が配置されている第1位置と、第1位置から外れ、校正用第1超音波センサと校正用第2超音波センサとの間に空気層だけが存在する第2位置との範囲を、少なくとも移動可能に設けられているので、校正用超音波センサ組が、第1位置と第2位置との間を移動することにより、前述したように、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間に配置した基準箔を伝播して受波する超音波の受信信号(箔有り受信信号)Sを第1位置で、箔無し受信信号Sを第2位置で、それぞれ取得することができる。
これにより、キャリブレーションを行う雰囲気温度や空気層の密度、自己発熱による超音波センサの温度上昇等の計測環境が、たとえ変化しても、校正用超音波センサ組が、第1位置と第2位置との間を移動し、基準箔を透過する超音波の減衰率を求めるのに必要な箔有り受信信号S及び箔無し受信信号Sを常時取得する。よって、塗布製品の塗布材の厚みの実測時には、計測環境変化に応じて最適な上記減衰率を取得することができる。
【0054】
(12)基準箔を保持する保持部材と、保持部材を動作させると共に、その動作を停止させる駆動手段と、を備え、保持部材で保持された基準箔が、駆動手段により、対向する第1超音波センサの中心と第2超音波センサの中心とを結ぶ仮想線と交差する範囲内で、第1超音波センサ及び第2超音波センサと相対的に移動可能に配置されていること、または対向する第1校正用超音波センサの中心と第2校正用超音波センサの中心とを結ぶ仮想線と交差する範囲内で、第1校正用超音波センサ及び第2校正用超音波センサと相対的に移動可能に配置されていること、を特徴とするので、校正用超音波センサ組において、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間に配置した1つの基準箔を用いてキャリブレーションを行う場合に、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間で伝播する超音波が、基準箔内の複数の部位を透過できるようになる。これにより、透過するこの超音波の減衰率が、1つの基準箔内において、超音波が透過する部位毎に算出可能になる。また、基準箔を用いて、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との機差を確認する場合に、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で伝播する超音波が、基準箔内の複数の部位を透過できるようになる。これにより、透過するこの超音波の減衰率が、1つの基準箔内において、超音波が透過する部位毎に算出可能になる。ひいては、校正用超音波センサ組によるキャリブレーションや、第1校正用超音波センサと、第2校正用超音波センサと、第1超音波センサと、第2超音波センサとの機差の確認がより高精度に行うことができる。
【0055】
(13)動作する保持部材に対し、仮想線が基準箔内の所定部位に交差する状態に対応する位置を検出する位置決め手段を備えていること、を特徴とするので、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとの間に配置した基準箔を用いてキャリブレーションを、複数回繰り返し行う場合に、位置決め手段により、仮想線が基準箔内で交差する所定部位が、キャリブレーションを行うサイクル毎に、同じ位置に設定することができる。ひいては、信頼性の高いキャリブレーションが実現できる。また、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との機差を、複数回繰り返し確認する場合に、位置決め手段により、仮想線が基準箔内で交差する所定部位が、機差の確認を行うサイクル毎に、同じ位置に設定することができる。ひいては、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との機差調査が信頼性を高くして行うことができる。
【0056】
(14)実測用超音波センサ組が、第1位置と、第1位置から外れ、塗布製品が配置されている第3位置との範囲を少なくとも移動可能に設けられているので、実測用超音波センサ組が第1位置と第3位置との間を往来する度に、「正」とする基準箔を用いてキャリブレーションを行っている校正用超音波センサ組との最新の機差を、実測用超音波センサ組に採り入れることができる。
そのため、塗布材の厚みを計測する雰囲気温度や空気層の密度、自己発熱による超音波センサの温度上昇等の計測環境が、たとえ変化しても、校正用超音波センサ組との機差による誤差要因を、より確実に排除することができる。
【0057】
(15)捲回されている基材は長尺状であり、基材の長辺に沿う長手方向及び基材の厚み方向に直交する方向を、基材の幅方向としたときに、基準箔は、塗布製品と幅方向に並んで配置され、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組とが、それぞれ幅方向に沿う方向に移動するので、校正用超音波センサ組や実測用超音波センサ組が同じスライド軸上を移動し、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組とが同期でスライド軸と相対移動する構成とすれば、校正用超音波センサ組では、第1位置と第2位置との間の移動が、実測用超音波センサ組では、第1位置と第3位置との間の移動が、同時にできるようになる。
これにより、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組とも、雰囲気温度や空気層の密度等の計測環境に応じた計測条件の設定の変更を、タイムロスがなく効率良く行うことができる。
【0058】
一方、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組とが、特に上記スライド軸上を同期して移動せず、それぞれ独立した動作で構成した場合でも、実測用超音波センサ組の移動は、上記スライド軸の校正用超音波センサ組の移動量に拘束されないため、実測用超音波センサ組で塗布材の厚みを計測できる範囲の自由度を大きく取ることができる。
【0059】
(16)校正用超音波センサ組には、第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとに対し、超音波振動面と基準箔との間の空気層を包囲する筒状の校正センサ用カバーが設けられているので、キャリブレーションの実施時に、超音波振動面と基準箔との間の空気層において、密度変化、温度変化、音響インピーダンスの変化、伝播する超音波の指向性、ノイズとして外部から伝播する音波との干渉等、空気層の対流の影響による誤差要因を排除して、基準となる計測条件値をより高精度に得ることができる。
【0060】
(17)実測用超音波センサ組には、第1超音波センサと第2超音波センサとに対し、超音波振動面と塗布製品との間の空気層を包囲する筒状の実測センサ用カバーが設けられているので、塗布材の厚みの実測時に、超音波振動面と塗布製品との間の空気層において、密度変化、温度変化、音響インピーダンスの変化、伝播する超音波の指向性、ノイズとして外部から伝播する音波との干渉等、空気層の対流の影響による誤差要因を排除して、より高精度に塗布材の厚みを計測することができる。
【0061】
(18)校正センサ用カバー及び実測センサ用カバーは、内筒側カバーと、内筒側カバーより外側に位置する外筒側カバーとの2重構造で形成され、外筒側カバーは、基準箔または塗布製品と内筒側カバーよりも離れるよう、基材の厚み方向に沿う方向に対し、内筒側カバーより短く形成されているので、校正センサ用カバーの外部で対流する空気が基準箔の表面近くで外筒側カバーに当たっても、内筒側カバーによりこの空気の流れが変わり、この空気が、外筒側カバーと内筒側カバーの間に流れて、空気の乱流が、基準箔の表面近くで生じ難くなる。
そのため、内筒側カバーと基準箔との間に僅かな隙間があっても、この小さな隙間を通気する空気は乱流の影響をほとんど受けず、超音波振動面と基準箔との間の空気層は、安定した状態を維持することができる。
【0062】
また、実測センサ用カバーの外部で対流する空気が塗布製品の表面近くで実測センサ用カバーに当たっても、内筒側カバーによりこの空気の流れが変わり、この空気が、外筒側カバーと内筒側カバーとの間に流れて、空気の乱流が塗布製品の表面近くで生じ難くなる。
そのため、内筒側カバーと塗布製品との間に僅かな隙間があっても、この小さな隙間を通気する空気は乱流の影響をほとんど受けず、超音波振動面と塗布製品との間の空気層は、安定した状態を維持することができる。
【0063】
(19)基材は、塗布製品である電池の電極に用いる金属箔であり、塗布材は、金属箔に塗布された電極ペーストであるので、電池製造工程において、金属箔に電極ペーストを塗布して電極を製造する製造ラインで、ライン稼働中に、電極に対し、電極ペーストの目付け量に係る品質検査を満遍なく広範囲にわたって精度良く実施できるようになる上、電極の全数検査をも可能にできるようになることから、高品質で高性能な電池が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態1に係る超音波計測装置の概略を示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係る超音波計測装置の構成を説明する模式図である。
【図3】図1中、A−A矢視断面図で主要部を示した説明図である。
【図4】実施形態1に係る超音波計測装置のセンサユニット部の上面図である。
【図5】図4に示すセンサユニット部の半断面図である。
【図6】図4に示すセンサユニット部の下面図である。
【図7】図1中、A−A矢視に相当する方向から見た電極の断面図である。
【図8】校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との動きを示すタイムチャートである。
【図9】校正用超音波センサ組による超音波の減衰率を求める様子を示す説明図であり、(a)は基準箔無しで超音波を送信したときの模式図、(b)は(a)の状態において受波側超音波センサで受波した超音波の受信信号を示す。
【図10】校正用超音波センサ組による超音波の減衰率を求める様子を示す説明図であり、(a)は基準箔有りで超音波を送信したときの模式図、(b)は(a)の状態において受波側超音波センサで受波した超音波の受信信号を示す。
【図11】校正用超音波センサ組及び実測用超音波センサ組でそれぞれ超音波を送信したときの模式図であり、(a)はキャリブレーションを実施している様子、(b)は電極の目付け量を実測している様子を示す。
【図12】受波側超音波センサの超音波の減衰率と目付け量との関係を示すグラフである。
【図13】実施形態1に係る超音波計測装置のカバーの作用を説明する模式図である。
【図14】受波された超音波において、空気層の対流により超音波強度に及ぼす影響について、その調査結果を一例として示したグラフである。
【図15】変形形態に係る超音波計測装置の構成を説明する模式図である。
【図16】実施形態2に係る超音波計測装置の構成を説明する模式図である。
【図17】実施形態2に係る超音波計測装置の主要部を説明する図であり、一部を、図16中、B−B矢視に相当する方向から見た断面で示した図である。
【図18】実施形態2に係る超音波計測装置に構成された基準箔保持部材を示す斜視図である。
【図19】実施形態2に係る超音波計測方法において、基準箔内の5つの部位に超音波を透過させて第1サンプル受信信号または第3サンプル受信信号を取得する様子を示す模式図である。
【図20】実施形態2に係る超音波計測方法において、実測用超音波センサ組による目付け量計測と、校正用超音波センサ組による基準箔計測とを行うタイミングを模式的に示したタイムチャートである。
【図21】実施形態2に係る超音波計測方法において、第1サンプル受信信号を模式的に示す説明図である。
【図22】実施形態2に係る超音波計測方法において、第3サンプル受信信号を模式的に示す説明図である。
【図23】受波側超音波センサについて、空気層の気圧と、受波した超音波の受信信号強度との関係について、調査した結果のグラフを示す。
【図24】特許文献1に開示された超音波計測装置の説明図を示す。
【図25】受波側超音波センサに対し、その受信信号強度と雰囲気温度との関係を調査した結果のグラフを示す。
【図26】受波側超音波センサにおいて、自己発熱と超音波強度との関係を示すグラフである。
【図27】受波された超音波における波長と受信パワーとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本発明に係る超音波計測方法、及び超音波計測装置について、実施形態1,2を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0066】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る超音波計測装置の概略を示す斜視図である。図7は、図1中、A−A矢視に相当する方向から見た電極の断面図を示す。
本実施形態1では、図1において、金属箔61の長辺、及びこの長辺に沿う方向をX軸方向とし、電極60(金属箔61及び電極ペースト62)の厚み、及びこの厚みに沿う方向をZ軸方向とする。また、金属箔61の短辺に沿う方向(金属箔61の幅方向)、及びこの方向に沿う超音波計測装置1の幅方向で、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とする。以下、図2以降の図についても、図1に準ずる。
【0067】
本実施形態1に係る超音波計測装置は、電池製造工程において、金属箔61(基材)に電極ペースト62(塗布材)を塗布して電極60(塗布製品)を製造する電極製造ラインでインラインに設置され、乾燥した電極ペースト62の目付け量等の品質検査を行う目的で設置される。
また、本実施形態1に係る超音波計測方法は、この超音波計測装置1を用いて電極ペースト62の目付け量の品質検査を行うときの方法である。
【0068】
はじめに、電極について、簡単に説明する。
本発明において、前述したように、基材は、塗布製品である電池の電極に用いる金属箔61であり、塗布材は、金属箔61に塗布された電極ペースト62である。本実施形態1では、電極ペースト62を金属箔61の両面(一面61a及び他面61b)に塗工する場合について説明する。
電極60は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の電源として、二次電池に用いる電極であり、図7に示すように、Al,Cu等の金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62を塗布してなる。具体的には、電極ペースト62は、図1に示すように、金属箔61の両面61a,61bのうち、Y軸方向両側の一部分を除いた部分に塗布されている。
【0069】
長尺状の金属箔61は、その厚さが20μm程度であり、図示しない電極製造ラインの捲回ローラに、ロール状に捲回されている。電極製造ラインでは、電極60は、金属箔61に塗布された電極ペースト62を金属箔61に押圧して電極ペースト62の厚みtを40〜50μm程度に形成してから乾燥させた後、捲回ローラ50及び送出ローラ51を介して、送出コンベア52により、ロール状から水平状に搬送される。次々と連続的に製造される電極60は、送出コンベア52により水平状に送出されると、電極60の切断等、次工程に向けて送出される。
なお、図1には図示されていないが、電極製造ラインで製造される電極60のうち、X軸方向に対し、搬送開始で先頭となる先端部、及び搬送終了で後尾となる後端部は、金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62が塗布されない金属箔61だけとなっている。
【0070】
次に、超音波計測装置について、図1乃至図4を用いて説明する。図2は、実施形態1に係る超音波計測装置の構成を説明する模式図である。図3は、図1中、A−A矢視断面図で主要部を示す説明図である。
超音波計測装置1は、図1及び図2に示すように、計測部7、超音波計測制御部5(制御手段)、厚み演算部40、及びモニタ41等を有している。
超音波計測装置1は、図1に示すように、送出コンベア52により水平状に送出され、電極60の切断工程等の次工程に送出する前の位置に配設され、特に、電極ペースト62の目付け量を算出する計測部7については、本実施形態1では、X軸方向に対し、送出コンベア52と約200(mm)離れた位置に配設されている。
【0071】
計測部7を送出コンベア52から離間させる理由として、送出コンベア52は、支持する電極60をロール状から水平状に送出するときの支点となり、送出コンベア52等の振動による外部振動が外的要因として生じる。このときの外部振動の周波数は、後に詳述するように、計測部7で電極60の厚みを計測するときに用いる第1,第2超音波センサ11,12等による超音波の周波数と近く、電極ペースト62の目付け量の算出時に、ノイズとして阻害要因となり、このような外的要因を排除するため、計測部7が、送出コンベア52からある程度離間されている。
【0072】
次に、計測部7について説明する。
超音波計測装置1は、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とが一対の超音波センサ組を計測部7に有している。この超音波計測装置1は、ロール状に捲回されていた金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62を塗布した電極60の厚み方向Yに対し、一方側(図1中、上側)に第1超音波センサ11を、他方側(図1中、下側)に第2超音波センサ12を、それぞれ空気層ARを介して配置している。
この計測部7には、超音波センサ組として、電極ペースト62の目付け量を計測する実測用超音波センサ組10を少なくとも1組と、第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12とは別で、一対の第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とからなる校正用超音波センサ組20とを有している。なお、本実施形態1に係る超音波計測装置1では、実測用超音波センサ組10は、説明の便宜上、図1等に図示したのは1組である。
【0073】
実測用超音波センサ組10は、電極ペースト62の目付け量の実測時に、校正用超音波センサ組20によるキャリブレーションで得られた計測条件値に基づき、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間で超音波USを受信して伝播させることにより、電極ペースト62(塗布材)の厚み、すなわち目付け量を算出する。
校正用超音波センサ組20によるキャリブレーションでは、基準箔65が用いられる。基準箔65は、計測部7において、超音波計測装置1の幅方向(Y軸方向)に電極60と同じ高さ(Z軸方向)で並んで、電極60と共に配置されている。
【0074】
この基準箔65は、例えば、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレート製フィルム)や、その他の高分子フィルム等、経時的に酸化せず、重量変化のない材質で、実測用超音波センサ組10で計測対象となる電極60と同じ程度の厚みや密度を有した材料で形成されている。また、この基準箔65は、第1,第2超音波センサ11,12や第1,第2校正用超音波センサ21,22による超音波USの照射範囲、透過範囲よりも大きい面積を有する所定の形状に形成されている。
【0075】
次に、実測用超音波センサ組10の第1,第2超音波センサ11,12について説明する。
第1超音波センサ11は、超音波USの伝播がフラットタイプの送信センサであり、超音波の受信をも可能とする超音波センサである。
フラットタイプの送信センサとは、第1超音波センサ11で超音波USを送波する第1振動面11aが、本実施形態1では、1つであり、第1振動面11aの全体形状が円形状に形成された超音波センサである。また、送波した超音波USを、空気層ARを介して、電極60のうち、第1振動面11aと対向するエリア内に少なくとも伝播させることができる超音波センサをいう。
第2超音波センサ12が送信側になる場合についても、第1振動面11aが第2振動面12aに変わるだけで、第1超音波センサ11と実質的に同じである。
【0076】
第2超音波センサ12は、超音波USの伝播がフラットタイプの受信センサであり、超音波の送信をも可能とする超音波センサである。
フラットタイプの受信センサとは、第2超音波センサ12で超音波USを受波する第2振動面12aが、本実施形態1では、1つであり、第2振動面12aの全体形状が円形状に形成された超音波センサである。また、第1超音波センサ11から送波、照射されて電極60を少なくとも透過した超音波(透過波)USを、空気層ARを介して第2振動面12a全体で受波することができる超音波センサをいう。
第1超音波センサ11が受信側になる場合についても、第2振動面12aが第1振動面11aに変わるだけで、第2超音波センサ12と実質的に同じである。
【0077】
第1,第2超音波センサ11,12の周波数は、100KHz〜250KHzの範囲内で、公称の周波数として、同じ周波数帯の超音波センサが用いられる。第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とは、電極60に対し、何れも垂直方向に配置されている。
実測用超音波センサ組10では、例えば、第1,第2超音波センサ11,12の周波数が200KHzの場合、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とは、電極60(または基準箔65)を挟み、空気層ARを介して、対向する第1振動面11aと第2振動面12aとの距離を約70mm離間させて配置されている。
【0078】
次に、校正用超音波センサ組20の第1,第2校正用超音波センサ21,22について説明する。
第1校正用超音波センサ21は、超音波USの伝播がフラットタイプの送信センサであり、超音波の受信をも可能とする超音波センサであり、実質的には、第1,第2超音波センサ11,12と同じ仕様の超音波センサである。
すなわち、フラットタイプの送信センサとは、第1校正用超音波センサ21で超音波USを送波する第1振動面21aが、本実施形態1では、1つであり、第1振動面21aの全体形状が円形状に形成された超音波センサである。また、送波した超音波USを、空気層ARを介して、基準箔65と対向するエリア内に少なくとも伝播させることができる超音波センサをいう。
第2校正用超音波センサ22が送信側になる場合についても、第1振動面21aが第2振動面22aに変わるだけで、第1校正用超音波センサ21と実質的に同じである。
【0079】
第2校正用超音波センサ22は、超音波USの伝播がフラットタイプの受信センサであり、超音波の送信をも可能とする超音波センサであり、実質的には、第1,第2超音波センサ11,12及び第1校正用超音波センサ21と同じ仕様の超音波センサである。
すなわち、フラットタイプの受信センサとは、第2校正用超音波センサ22で超音波USを受波する第2振動面22aが、本実施形態1では、1つであり、第2振動面22aの全体形状が円形状に形成された超音波センサである。また、第1校正用超音波センサ21から送波、照射されて基準箔65を少なくとも透過した超音波(透過波)USを、空気層ARを介して第2振動面22a全体で受波することができる超音波センサをいう。
第1校正用超音波センサ21が受信側になる場合についても、第2振動面22aが第1振動面21aに変わるだけで、第2校正用超音波センサ22と実質的に同じである。
【0080】
また、第1,第2校正用超音波センサ21,22の周波数は、第1,第2超音波センサ11,12と同様、100KHz〜250KHzの範囲内で、公称の周波数として、同じ周波数帯の超音波センサが用いられる。第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とは、基準箔65に対し、何れも垂直方向に配置されている。
実測用超音波センサ組10と同様、校正用超音波センサ組20でも、例えば、第1,第2校正用超音波センサ21,22の周波数が200KHzの場合、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とは、基準箔65を挟み、空気層ARを介して、対向する第1振動面21aと第2振動面22aとの距離を約70mm離間させて配置されている。
【0081】
第1超音波センサ11と第1校正用超音波センサ21とは、図2に示すように、第1超音波発振器11Fと電気的に接続されている。第1超音波発振器11Fは、電圧を印加して第1振動面11a,21aを超音波振動させるための発振回路と、第1振動面11a,21aで受波した超音波振動を電圧に変換して受信するための受信回路とを有している。
【0082】
また、第2超音波センサ12と第2校正用超音波センサ22とは、第2振動面12a,22aに超音波振動を発振させる第2超音波発振器12Fと電気的に接続されている。第2超音波発振器12Fは、電圧を印加して第2振動面12a,22aを超音波振動させるための発振回路と、第2振動面12a,22aで受波した超音波振動を電圧に変換して受信するための受信回路とを有している。
第1超音波発振器11Fと第2超音波発振器12Fとは、超音波計測制御部5と電気的に接続されている。
【0083】
次に、超音波計測制御部5について、図2を用いて説明する。
超音波計測制御部5は、実測用超音波センサ組10(第1,第2超音波センサ11,12)、及び校正用超音波センサ組20(第1,第2校正用超音波センサ21,22)に対し、超音波USの送受信及び、実測用超音波センサ組10と校正用超音波センサ組20との間で計測条件を制御する。
【0084】
この超音波計測制御部5は、実測用超音波センサ組10の第1,第2超音波センサ11,12、及び校正用超音波センサ組20の第1,第2校正用超音波センサ21,22のそれぞれに対し、例えば、最大発振電圧1Kv、最大発振周波数10Hz(100μsで1回の頻度で発振)、最大発振波数100波(所定時間内に送波可能な波数)、最大A/D変換周波数100MHz等の制御条件で、超音波USを発振できるようになっている。
【0085】
本実施形態1では、計測1回当たりの発振波数は30波としている。また、発振波数30波の波形が重複しないよう、実測用超音波センサ組10及び校正用超音波センサ組20において、第1振動面11aと電極60,基準箔65との距離、第2振動面12aと電極60,基準箔65との距離、第1振動面21aと基準箔65との距離、及び第2振動面22aと基準箔65との距離が、何れも35mmに設定されている。
また、超音波計測制御部5では、実測用超音波センサ組10において、第1超音波センサ11が送波し、第2超音波センサ12が受波する状態を第1状態とし、第1超音波センサ11が受波し、第2超音波センサ12が送波する状態を第2状態としたときに、超音波計測制御部5が、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とに対し、互いに異なるよう、第1状態と第2状態とを交互に置換させる。
【0086】
また、この超音波計測制御部5は、校正用超音波センサ組20による計測条件値を、実測用超音波センサ組10にフィードバックする。
具体的には、校正用超音波センサ組20でキャリブレーションを行ったときの計測条件として、第1状態の場合には、第1校正用超音波センサ21から空気層ARを介して超音波を送波したときの送波条件、すなわち、空気層ARの温度、空気層ARの密度、第1校正用超音波センサ21自体の発熱温度等の計測条件値を、実測用超音波センサ組10の第1超音波センサ11に適用し対応させている。
【0087】
同時に、基準箔65を透過した超音波が空気層ARを伝播して第2校正用超音波センサ22で受波したときの受波条件、すなわち、空気層ARの温度、空気層ARの密度、第2校正用超音波センサ22自体の発熱温度等の計測条件値を、実測用超音波センサ組10の第2超音波センサ12に適用し対応させている。
第2状態については、実測用超音波センサ組10において、第1状態のときの第1超音波センサ11が第2超音波センサ12に、校正用超音波センサ組20において、第1状態のときの第1校正用超音波センサ21が第2校正用超音波センサ22に、それぞれ変わるだけで、上述した第1状態の場合と実質的に同じであるため、その説明は省略する。
【0088】
また、超音波計測制御部5は、後述する上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bと電気的に接続され、上側スライド軸55Aと下側スライド軸55Bとを同期させて動作制御を行うようになっている。また、超音波計測制御部5は、厚み演算部40と電気的に接続されている。
【0089】
厚み演算部40は、第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12のうち、いずれか一方の受波側超音波センサで受波した超音波USの受信信号に基づいて、電極ペースト62の目付け量及び目付けプロファイルを算出する。
厚み演算部40は、CPU、RAM及びROM等公知の構成のマイクロコンピュータ(図示しない)を備えている。
【0090】
RAMには、超音波USが空気層ARを伝播するときの減衰率、超音波USが基準箔65を透過するときの減衰率、超音波USが電極60を透過するときの減衰率、超音波USが金属箔61を透過するときの減衰率または金属箔61の厚み、図示しない温度計により計測した空気層ARの雰囲気温度や、第1,第2超音波センサ11,12、第1,第2校正用超音波センサ21,22の発熱温度、第1振動面11a,21aと第2振動面12a,22aとのプローブ間距離、空気層ARにおいて、温度に対応した音速、密度、音響インピーダンス等が、設定値として入力できるようになっている。
【0091】
また、ROMには、校正用超音波センサ組20の第1,第2校正用超音波センサ21,22のキャリブレーションを実行するプログラム、実測用超音波センサ組10で第1,第2超音波センサ11,12のいずれかにより基準箔65を透過した透過波の減衰率を算出するプログラム、実測用超音波センサ組10で第1,第2超音波センサ11,12のいずれかにより電極60(電極ペースト62)を透過した透過波の減衰率を算出するプログラム、受波した透過波の音波波形をサイン波に近似補正するプログラム、算出された透過波の減衰率に基づいて、電極ペースト62の厚み、目付け量を演算処理する目付け量算出プログラム、演算処理した結果をモニタ41に数値や画像で表示するプログラム、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bを幅方向(Y軸方向)に動作させるプログラム、その他のプログラムが記憶されている。
【0092】
厚み演算部40では、CPUにロードすることにより、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bの操作のほか、電極ペースト62の目付け量及び目付けプロファイルを、当該厚み演算部40と接続するモニタ41に数値や画像で表示すること等の所定の動作が実行できるようになっている。
【0093】
次に、第1,第2超音波センサ11,12、第1,第2校正用超音波センサ21,22が組み込まれたセンサユニット部30について、図3乃至図6を用いて説明する。
図3は、図1中、A−A矢視断面図で、第1,第2超音波センサ、及び電極等の主要部を示した説明図である。図4は、センサユニット部の上面図である。図5は、図4に示すセンサユニット部の半断面図である。図6は、図4に示すセンサユニット部の下面図である。
【0094】
はじめに、実測用超音波センサ組10を収容するセンサユニット部30について説明する。
実測用超音波センサ組10では、図3に示すように、第1,第2超音波センサ11,12に対し、超音波振動面である第1,第2振動面11a,12aと電極60(または基準箔65)の間の空気層ARを包囲する筒状の実測センサ用カバー31がそれぞれ設けられている。
【0095】
実測センサ用カバー31は、例えば、アルミニウム等、熱伝導率が高く放熱性に優れた材質からなり、図5及び図6に示すように、筒状の実測センサ用内筒側カバー31Aと、この実測センサ用内筒側カバー31Aより外周側に位置する筒状の実測センサ用外筒側カバー31Bとの2重構造で形成されている。
実測センサ用カバー31は、第1,第2振動面11a,12aと電極60との間の空気層ARに対し、外部からの対流の影響を受けないよう、第1,第2超音波センサ11,12の下部から第1,第2振動面11a,12aの周囲を実測センサ用内筒側カバー31Aで包含した形態に設けられている。また、実測センサ用外筒側カバー31Bは、実測センサ用内筒側カバー31Aよりも電極60(または基準箔65)と離れるよう、金属箔61の厚み方向に沿う方向(Z軸方向)に対し、実測センサ用内筒側カバー31Aより短く形成されている。
【0096】
その一方、第1,第2超音波センサ11,12本体は、図4乃至図6に示すように、当該第1,第2超音波センサ11,12本体より径大な円柱状の内部空間を有したセンサ保持部材35によって保持され固定されている。
このセンサ保持部材35では、例えば、アルミニウム等、熱伝導率が高く放熱性に優れた材質からなり、内部空間に収容された第1,第2超音波センサ11,12の外周側の空間が、通気により第1,第2超音波センサ11,12を冷却する冷却室35Sとなっている。センサ保持部材35には、冷却室35Sに冷気を導入する通気導入孔36と、自己発熱した第1,第2超音波センサ11,12を冷却して、第1,第2超音波センサ11,12から熱を奪った温かい空気を冷却室35Sから排気する通気排出孔37とが形成されている。
【0097】
次に、校正用超音波センサ組20を収容するセンサユニット部30について説明する。
校正用超音波センサ組20では、図3に示すように、第1,第2校正用超音波センサ21,22に対し、超音波振動面である第1,第2振動面21a,22aと基準箔65の間の空気層ARを包囲する筒状の校正センサ用カバー32がそれぞれ設けられている。
本実施形態1では、校正用超音波センサ組20を収容するセンサユニット部30と、実測用超音波センサ組10を収容するセンサユニット部30とは、実質的に全く同じ構成であるため、説明の便宜上、図面に同じ図番を用いている。
【0098】
校正センサ用カバー32は、例えば、アルミニウム等、熱伝導率が高く放熱性に優れた材質からなり、図5及び図6に示すように、筒状の校正センサ用内筒側カバー32Aと、この校正センサ用内筒側カバー32Aより外周側に位置する筒状の校正センサ用外筒側カバー32Bとの2重構造で形成されている。
校正センサ用カバー32は、第2振動面21a,22aと基準箔65との間の空気層ARに対し、外部からの対流の影響を受けないよう、第1,第2校正用超音波センサ21,22の下部から第1,第2振動面21a,22aの周囲を校正センサ用内筒側カバー32Aで包含した形態に設けられている。また、校正センサ用外筒側カバー32Bは、校正センサ用内筒側カバー32Aよりも基準箔65と離れるよう、金属箔61の厚み方向に沿う方向(Z軸方向)に対し、校正センサ用内筒側カバー32Aより短く形成されている。
【0099】
その一方、第1,第2校正用超音波センサ21,22は、図4乃至図6に示すように、当該第1,第2校正用超音波センサ21,22より径大な円柱状の内部空間を有したセンサ保持部材35によって保持され固定されている。
このセンサ保持部材35では、例えば、アルミニウム等、熱伝導率が高く放熱性に優れた材質からなり、内部空間に収容された第1,第2校正用超音波センサ21,22の外周側の空間が、通気により第1,第2校正用超音波センサ21,22を冷却する冷却室35Sとなっている。センサ保持部材35には、冷却室35Sに冷気を導入する通気導入孔36と、自己発熱した第1,第2校正用超音波センサ21,22を冷却して、第1,第2校正用超音波センサ21,22から熱を奪った温かい空気を冷却室35Sから排気する通気排出孔37とが形成されている。
【0100】
図5に図示されていないが、本実施形態1では、実測センサ用カバー31において、実測センサ用内筒側カバー31Aと実測センサ用外筒側カバー31Bとの間にある空気の流路、及び、校正センサ用カバー32において、校正センサ用内筒側カバー32Aと校正センサ用外筒側カバー32Bとの間にある空気の流路は、センサ保持部材35の冷却室35Sと連通しているが、この空気の流路と冷却室35Sとは、特に連通していなくても良い。
【0101】
また、計測部7には、図1及び図2に示すように、上側スライド軸55Aと下側スライド軸55Bとが、一対で電極60及び基準箔65を挟んで両側に、幅方向Yに対し、電極60及び基準箔65を跨ぐ位置に、図示しない駆動源により、移動可能に配設されている。
上側スライド軸55Aと下側スライド軸55Bとは、電気的に接続した超音波計測制御部5により、同期した移動及びその停止を自在に動作制御されるようになっている。
【0102】
実測用超音波センサ組10の第1超音波センサ11をセンサ保持部材35に収容したセンサユニット部30と、校正用超音波センサ組20の第1校正用超音波センサ21をセンサ保持部材35に収容したセンサユニット部30とが、所定間隔で離間して、それぞれ上側スライド軸55Aの所定位置に固定して取付けられている。これら2つのセンサユニット部30の上側スライド軸55Aへの取付け位置は、任意に変更できるようになっている。
【0103】
また、実測用超音波センサ組10の第2超音波センサ12をセンサ保持部材35に収容したセンサユニット部30と、校正用超音波センサ組20の第2校正用超音波センサ22をセンサ保持部材35に収容したセンサユニット部30とが、所定間隔で離間し、上側スライド軸55Aの両センサユニット部30と対向する所定位置に、それぞれ下側スライド軸55Bに固定して取付けられている。これら2つのセンサユニット部30の下側スライド軸55Bへの取付け位置は、任意に変更できるようになっている。
【0104】
すなわち、実測用超音波センサ組10と校正用超音波センサ組20とが、一対の上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bにより、それぞれ幅方向Yに移動するようになっている。
具体的には、校正用超音波センサ組10が、基準箔65が配置されている第1位置L1と、第1位置L1から外れ、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22との間に空気層ARだけが存在する第2位置L2との範囲を、少なくとも移動可能に設けられている。かつ、実測用超音波センサ組10が、第1位置L1と、第1位置L1から外れ、電極60が配置されている第3位置L3との範囲を少なくとも移動可能に設けられている。
【0105】
次に、本実施形態1に係る超音波計測方法について、説明する。
本実施形態1に係る超音波計測方法は、前述したように構成された超音波計測装置1を用いて電極ペースト62の目付け量の品質検査を行うときの方法である。
本実施形態1に係る超音波計測方法は、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属製の金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62を塗布した電極60の厚み方向Zに対し、一方側に第1超音波センサ11を、他方側に第2超音波センサ12を、それぞれ空気層ARを介して配置し、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間で超音波USを伝播させることにより、電極ペースト62の厚み(目付け量)を計測する超音波計測方法において、超音波センサ組として、電極ペースト62の目付け量を計測する実測用超音波センサ組10を少なくとも1組と、第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12とは別で、一対の第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とからなる校正用超音波センサ組20とを有し、電極ペースト62の厚みの計測時に、校正用超音波センサ組20でキャリブレーションを行うと共に、校正用超音波センサ組20で得られた計測条件値を用いて、実測用超音波センサ組10により、電極ペースト62の目付け量を算出する。
【0106】
また、本実施形態1に係る超音波計測方法は、校正用超音波センサ組20では、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とに、超音波USの伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び実測用超音波センサ組10では、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とに、超音波USの伝播がフラットタイプの超音波センサを用いることを特徴とする。
【0107】
ここで、図9乃至図12を示す。図9は、校正用超音波センサ組による超音波の減衰率を求める様子を示す説明図であり、(a)は基準箔無しで超音波を送信したときの模式図、(b)は(a)の状態において受波側超音波センサで受波した超音波の受信信号を示す。
図10は、校正用超音波センサ組による超音波の減衰率を求める様子を示す説明図であり、(a)は基準箔有りで超音波を送信したときの模式図、(b)は(a)の状態において受波側超音波センサで受波した超音波の受信信号を示す。
図11は、校正用超音波センサ組及び実測用超音波センサ組でそれぞれ超音波を送信したときの模式図であり、(a)はキャリブレーションを実施している様子、(b)は電極の目付け量を実測している様子を示す。
図12は、受波側超音波センサの超音波の減衰率と目付け量との関係を示すグラフである。
【0108】
また、本実施形態1に係る超音波計測方法は、校正用超音波センサ組20では、実測用超音波センサ組10による実測前に、図10に示すように、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22との間に、キャリブレーションで用いる基準箔65を配置し、第1校正用超音波センサ21から送波した超音波USを基準箔65に透過させ、第2校正用超音波センサ22で受波した超音波USの第1受信信号Sを、計測条件値として予め取得すること、実測用超音波センサ組10では、図11(b)に示すように、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間で電極60を透過した超音波USの第2受信信号S(図9(b)に示すSに相当)を取得すること、電極ペースト62の目付け量(厚み)は、第1受信信号Sと第2受信信号Sとの相対比により算出する。
【0109】
すなわち、箔の目付け量は、箔を透過する超音波USの減衰率を用いて、次式より求めることができ、箔の目付け量と超音波USの減衰率との関係は、図12に示す通りである。
M=A/α…式5
M:箔の目付け量(g/m)、α:超音波の減衰率(%)、A:定数
【0110】
ここで、目付け量が異なる3種の比較検討用基準箔A,B,C(基準箔65等に相当)を用いて、目付け量と超音波の減衰率との関係について、説明する。
超音波の減衰率αは、校正用超音波センサ組20において、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22との間に箔を配置せず、空気層ARだけを伝播して受波する超音波USの受信信号(箔無し受信信号)Sと、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22との間に配置した基準箔65を伝播して受波する超音波USの受信信号(箔有り受信信号)Sとの相対比である。
(ア)比較検討用基準箔Aについて
比較検討用基準箔Aの目付け量Mを求めると、式5より
=A/(SKA/S)…式6 式6より、A=M×SKA/S…式7
:比較検討用基準箔Aの目付け量(g/m)、SKA:比較検討用基準箔A
有り受信信号、S:箔無し受信信号
(イ)比較検討用基準箔Bについて
比較検討用基準箔Bの目付け量Mを求めると、式5より
=A/(SKB/S)…式8 式8より、A=M×SKB/S…式9
:比較検討用基準箔Bの目付け量(g/m)、SKB:比較検討用基準箔B有り受信信号
(ウ)比較検討用基準箔Cについて
比較検討用基準箔Cの目付け量Mを求めると、式5より
=A/(SKC/S)…式10 式10より、A=M×SKC/S…式11
:比較検討用基準箔Cの目付け量(g/m)、SKC:比較検討用基準箔C有り受信信号
式7、式9、及び式11に示すように、定数A、及び箔無し受信信号Sは一定であるため、式7、式9、及び式11を変形すると、
×SKA=M×SKB=M×SKC=A×S=一定…式12
上述したように、式12が導き出される。
【0111】
その一方で、目付け量が未知である比較検討用基準箔X、すなわち電極60について、その目付け量Mを計測するには、式5により、
=A/(S/S)…式13
:比較検討用基準箔X(電極60)の目付け量(g/m)、S:比較検討用基準箔X(電極60)有り受信信号
式12を用いて式13を変形すると、
=A×S/S=M×SKA/S=M×SKB/S=M×SKC
/S…式14
よって、式14の分子項は、式12より一定値であることから、電極60の目付け量Mが、式12から得られる一定値と、電極60有りの受信信号Sとの相対比から求めることができる。
【0112】
すなわち、本実施形態1に係る超音波計測方法では、実測用超音波センサ組10による実測前に、まず校正用超音波センサ組20により、キャリブレーションで用いる基準箔65を透過する超音波USの減衰率を、第1受信信号Sして予め取得しておく。
具体的には、例えば、比較検討用基準箔Aが、キャリブレーションで用いる基準箔65の場合で説明すると、式6の分母項において、箔無し受信信号Sは、図9(a)に示すように、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22との間に、この基準箔65を配置せず、空気層ARだけを伝播して受波する超音波USの定数としての受信信号である。また、式6の分母項において、比較検討用基準箔A有り受信信号SKAは、第1受信信号Sそのものである。
【0113】
その一方で、この基準箔65において、その重量と面積とが予め確認できていれば、基準箔65の密度が把握できる。基準箔65の目付け量Mは、基準箔65の密度と等価であるため、基準箔65の重量と面積とから求まる。
従って、上記のM=M×SKA/S…式14において、分子項は、予め確認できている基準箔65の重量と、基準箔の面積と、第1受信信号Sとから算出できる。
【0114】
次いで、その後、電極60の電極ペースト62の目付け量(厚み)の実測時に、実測用超音波センサ組10で、図11(b)に示すように、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間に、電極60を配置し、第1超音波センサ11から送波した超音波USを電極60に透過させ、第2超音波センサ12で受波した超音波USの第2受信信号Sを取得する。
上述したように、式14の分母項である第2受信信号Sは、目付け量が未知である比較検討用基準箔X、すなわち計測対象の電極60を伝播して受波する超音波USの受信信号であり、第2受信信号Sそのものである。
よって、電極ペースト62の目付け量(厚み)は、第1受信信号Sと第2受信信号S
との相対比により算出する。
【0115】
また、本実施形態1に係る超音波計測方法は、実測用超音波センサ組10を基準箔65の配置位置まで移動させ、実測用超音波センサ組10により、第1超音波センサ11から送波した超音波USを基準箔65に透過させ、第2超音波センサ12で受波した超音波USの第3受信信号S(図9(b)に示すSに相当)を取得する。
また、本実施形態1に係る超音波計測方法は、第1,第2校正用超音波センサ21,22と、第1,第2超音波センサ11,12とは、それぞれ同期して超音波を送受信している。
【0116】
次に、上述した本実施形態1に係る超音波計測方法について、具体的な超音波計測装置1の動作を交えて、図2及び図8を用いて説明する。図8は、校正用超音波センサ組と実測用超音波センサ組との動きを示すタイムチャートである。
まず、実測用超音波センサ組10による実測を行う前に、実測用超音波センサ組10の第1,第2超音波センサ11,12、及び校正用超音波センサ組20の第1,第2校正用超音波センサ21,22には、超音波の振動特性が個々に微妙に異なり、個体差がある。そのため、第1,第2超音波センサ11,12、第1,第2校正用超音波センサ21,22において、それぞれ最大出力となる発振周波数を、予め調査し把握しておく。
また、実測用超音波センサ組10と校正用超音波センサ組20との双方を、所定時間、ウォーミングアップとして同時に作動させ、第1,第2超音波センサ11,12、及び第1,第2校正用超音波センサ21,22の自己発熱によるセンサ温度と、雰囲気温度との熱平衡を図っておく。
【0117】
次に、電極ペースト62の目付け量の算出時(厚みの実測時)に入り、超音波計測装置1では、図8に示すように、実測用超音波センサ組10と校正用超音波センサ組20との双方を常時作動させ、それぞれ超音波USを同時に送受信させる。
超音波計測装置1では、実測用超音波センサ組10の第1校正用超音波センサ21は、基準箔65が配置された第1位置L1、電極60が配置された第3位置L3のうち、電極ペースト62が金属箔61に塗布されていない未塗工部の第3位置L3A、及び電極ペースト62が金属箔61に塗布された塗工部の第3位置L3Bで、それぞれ1回当たりの計測で発振波数30波を発振する。
【0118】
図8において、先の第3位置L3Aは、電極製造ラインで製造される電極60のうち、X軸方向に対し、搬送開始で先頭となる先端部で、金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62が塗布されない未塗工部である。また、後の第3位置L3Aは、搬送開始後、送出コンベア52等により次工程に向けて送出された電極60のうち、搬送終了で後尾となる後端部で、金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62が塗布されない未塗工部である。
【0119】
その一方、第2校正用超音波センサ22で取得した基準箔65の透過波US30パルス分のうち、例えば、立ち上がりまでのはじめの約5パルス分の透過波USについては、安定した受信信号として取得できない。そのため、超音波計測制御部5及び厚み演算部40は、安定化する残りの約25パルス分等の透過波USを、平均化等により正弦波に近似させて音波波形に補正した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を算出する。
【0120】
また、校正用超音波センサ組20の第1校正用超音波センサ21は、上述の第1位置L1、第2校正用超音波センサ22との間に空気層ARだけが存在する第2位置で、それぞれ発振波数30波を発振する。
その一方、第2校正用超音波センサ22で取得した基準箔65の透過波US30パルス分のうち、例えば、立ち上がりまでのはじめの約5パルス分の透過波USについては、安定した受信信号として取得できない。そのため、超音波計測制御部5及び厚み演算部40は、安定化する残りの約25パルス分等の透過波USを、平均化等により正弦波に近似させて音波波形に補正した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を算出する。
【0121】
はじめに、超音波計測制御部5は、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bに
より、校正用超音波センサ組20を、基準箔65が配置された第1位置L1に移動させ、目付け量の算出開始後、時間t1までの間、停止させておく。
この間、実測用超音波センサ組10で、第1超音波センサ11は、第2超音波センサ12との間に、電極ペースト62の未塗工部である第3位置L3A(金属箔61)を挟んで、発振波数30波を発振する。超音波計測制御部5及び厚み演算部40は、このときの発振による安定した分の金属箔61の透過波USに基づいて、上述した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を取得する。
同時に、校正用超音波センサ組20では、第1校正用超音波センサ21は、基準箔65を介して第2校正用超音波センサ22との間で、発振波数30波を発振する。超音波計測制御部5及び厚み演算部40が、このときの発振による安定した分の基準箔65の透過波USに基づいて、上述した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を取得する。
【0122】
なお、実測用超音波センサ組10により、第3位置L3Aで金属箔61の透過波USに基づく受信信号、または校正用超音波センサ組20により、基準箔65の透過波USに基づく受信信号のいずれか一方の取得でも、前述した式14の分子項を求めることはできる。
しかしながら、時間t1までの間、上述したように、実測用超音波センサ組10と校正用超音波センサ組20の双方で同時に、超音波USを金属箔61や基準箔65に透過させて受信信号をそれぞれ取得することで、用いる超音波センサに経年劣化あるいは不良状態にないかを確認することができる。
また、実測用超音波センサ組10と校正用超音波センサ組20の双方で、超音波USを金属箔61や基準箔65に透過させて受信信号をそれぞれ取得することで、実測用超音波センサ組10の第1,第2超音波センサ11,12と、校正用超音波センサ組20の第1,第2校正用超音波センサ21,22との機差や、超音波USが伝播する空気層ARの温度変化による影響を把握することができる。
【0123】
次に、時間t1になったら、超音波計測制御部5は、実測用超音波センサ組10が第1位置L1に配置されるところまで、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55BをY軸方向のマイナス側(図2中、左下側)に移動させた後、時間t2になるまでの間、停止させておく。これにより、校正用超音波センサ組20は、第1位置L1から外れ、第2位置L2に移動する。
【0124】
時間t1から時間t2までの間、校正用超音波センサ組20では、実測用超音波センサ組10による実測時に合わせ、少なくとも1回分の計測を実施し、第1校正用超音波センサ21が、第2校正用超音波センサ22との間にある空気層ARに向けて1回当たり発振波数30波を発振する。超音波計測制御部5及び厚み演算部40が、空気層ARを伝播した超音波USで、このときの発振による安定して伝播した超音波USに基づき、上述した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を取得する。
一方、実測用超音波センサ組10では、少なくとも1回分の計測を実施し、第1超音波センサ11は、基準箔65に向けて1回当たり発振波数30波を発振する。超音波計測制御部5及び厚み演算部40が、このときの発振による安定した分の基準箔65の透過波USに基づいて、上述した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を取得する。
【0125】
超音波計測制御部5及び厚み演算部40は、実測用超音波センサ組10で取得した受信信号に、校正用超音波センサ組20で取得した受信信号と差異があれば、実測用超音波センサ組10に対し、計測条件値を更新させる。
また、超音波計測制御部5は、時間t1までに校正用超音波センサ組20で基準箔65を計測した受信信号と、時間t1から時間t2までの間、実測用超音波センサ組10で基準箔65を計測した受信信号とに基づいて、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10との機差を取得する。
【0126】
次に、時間t2になったら、超音波計測制御部5が、実測用超音波センサ組10が第3位置L3Bに配置されるところまで、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55BをY軸方向のプラス側(図2中、右上側)に移動させた後、時間t3になるまでの間、停止させておく。
目付け量の算出開始後、時間t2になるまでには、X軸方向に対し、搬送開始された電極60の先端部(電極ペースト62の未塗工部)は、送出コンベア52等により、既に次工程側に送出され、この先端部と、搬送終了となる後端部との間の電極ペースト62の塗工部が、超音波計測装置1の計測部7に位置している。
【0127】
時間t2から時間t3までの間、校正用超音波センサ組20では、実測用超音波センサ組10による実測時に合わせて、第1校正用超音波センサ21が、計測1回当たり発振波数30波を発振する。これと同時に、超音波計測制御部5及び厚み演算部40が、このときの発振による安定した分の基準箔65の透過波USに基づいて、上述した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を取得する。
【0128】
その一方で、時間t2から時間t3までの間、実測用超音波センサ組10では、実測用超音波センサ組10による実測は、電極60の後端部までの長さにもよるが、電極ペースト62の塗工部(第3位置L3B)と、後端部で電極ペースト62の未塗工部(第3位置L3A)との間で、複数回にわたって行われる。
各回の実測で、第1超音波センサ11は、計測1回あたり発振波数30波を発振する。超音波計測制御部5及び厚み演算部40が、このときの発振による安定した分で、電極ペースト62の塗工部(第3位置L3B)及び未塗工部(第3位置L3A)の透過波USに基づいて、上述した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を取得する。
【0129】
超音波計測制御部5及び厚み演算部40は、実測用超音波センサ組10で取得した受信信号に、校正用超音波センサ組20で取得した受信信号と差異があれば、実測用超音波センサ組10に対し、計測条件値を更新させる。
【0130】
次に、時間t3になったら、超音波計測制御部5は、実測用超音波センサ組10が第1位置L1に配置されるところまで、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55BをY軸方向のマイナス側(図2中、左下側)に移動させた後、時間t4になるまでの間、停止させておく。これにより、校正用超音波センサ組20は、第1位置L1から外れ、第2位置L2に移動する。
【0131】
時間t3から時間t4までの間、校正用超音波センサ組20では、実測用超音波センサ組10による実測時に合わせ、少なくとも1回分の計測を実施し、第1校正用超音波センサ21が、第2校正用超音波センサ22との間にある空気層ARに向けて1回当たり発振波数30波を発振する。超音波計測制御部5及び厚み演算部40が、空気層ARを伝播した超音波USで、このときの発振による安定して伝播した超音波USに基づき、上述した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を取得する。
【0132】
その一方で、実測用超音波センサ組10では、少なくとも1回分の計測を実施し、第1超音波センサ11は、基準箔65に向けて1回当たり発振波数30波を発振する。超音波計測制御部5及び厚み演算部40が、このときの発振による安定した分の基準箔65の透過波USに基づいて、上述した正弦波近似波形の最大振幅値(受信信号)を取得する。
【0133】
超音波計測制御部5及び厚み演算部40は、実測用超音波センサ組10で取得した受信信号に、校正用超音波センサ組20で取得した受信信号と差異があれば、実測用超音波センサ組10に対し、計測条件値を更新させる。
また、超音波計測制御部5は、時間t2から時間t3までの間、校正用超音波センサ組20で基準箔65を計測した受信信号と、時間t3から時間t4までの間、実測用超音波センサ組10で基準箔65を計測した受信信号とに基づいて、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10との機差を取得する。
【0134】
前述した構成を有する本実施形態1に係る超音波計測方法、及び超音波計測装置の作用・効果について説明する。
【0135】
本実施形態1に係る超音波計測方法では、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62を塗布した電極60の厚み方向Zに対し、一方側に第1超音波センサ11を、他方側に第2超音波センサ12を、それぞれ空気層ARを介して配置し、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間で超音波USを伝播させることにより、電極ペースト62の厚み(目付け量)を計測する超音波計測方法において、超音波センサ組として、電極ペースト62の目付け量を計測する実測用超音波センサ組10を少なくとも1組と、第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12とは別で、一対の第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とからなる校正用超音波センサ組20とを有し、電極ペースト62の厚みの計測時に、校正用超音波センサ組20でキャリブレーションを行うと共に、校正用超音波センサ組20で得られた計測条件値を用いて、実測用超音波センサ組10により、電極ペースト62の目付け量を算出するので、電池製造工程において、金属箔61に電極ペースト62を塗布して電極60を製造する製造ラインのインライン上で、電極ペースト62等、電極ペースト62の厚みを計測する場合に、実測時に、超音波センサの自己発熱や空気層ARの温度変化に起因した計測精度の誤差要因を排除して、電極ペースト62の厚みをより高精度に計測することができる。
【0136】
すなわち、本実施形態1の超音波計測方法では、校正用超音波センサ組20がキャリブレーションを行う一方で、実測用超音波センサ組10が、電極ペースト62の目付け量の実測時にリアルタイムに、校正用超音波センサ組20から得られた計測条件値を採り入れて電極ペースト62の目付け量を算出している。
【0137】
ここで、超音波センサ(第1超音波センサ11、第2超音波センサ12、第1校正用超音波センサ21、第2校正用超音波センサ22)と、空気層ARにおける音速、密度、及び音響インピーダンスとの関係について、簡単に説明する。
空気層における音速、密度、及び音響インピーダンスは、次式より求められる。
(あ)音速
C=f×λ…式1
C:音速(m/sec)、f:超音波センサの周波数(kHz)、λ:波長(m)
また、
C=331.5+(0.61×t)…式2
t:温度(℃)
(い)密度
ρ=1.293×(273.15/(273.15+t))×(P/1013.2
5)…式3
ρ:密度(kg/m)(ntp)、t:温度(℃)、P:気圧(atm)
(う)音響インピーダンス
Z=ρ×C…式4
Z:音響インピーダンス(Pa・s/m)
大気圧の下、空気層ARにおける音速、密度、及び音響インピーダンスは、式2及び式4より、空気層ARの温度に比例し、式1中、周波数fを定数とみなすと、波長λも、空気層ARの温度に比例する関係にある。
【0138】
第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間には、特許文献1と同様、超音波が空気層ARを介して伝播する。
しかしながら、本実施形態1の超音波計測方法では、実測用超音波センサ組10は、例えば、空気層ARにおける音速、密度、音響インピーダンス、及び伝播する超音波USの波長等、空気層ARの温度変化に伴いパラメータとして変化する計測条件値を、電極ペースト62の目付け量の算出時にリアルタイムに、校正用超音波センサ組20から採り入れて実測している。
そのため、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間の空気層ARの温度が、たとえ計測中に変化しても、実測用超音波センサ組10が、校正用超音波センサ組20で補正された計測条件値の下、上述したように、実測時の実際の温度に対応した波長に基づいて、電極ペースト62の目付け量を算出することができる。
【0139】
また、キャリブレーションを超音波計測の実測と同時に行っていない従来の超音波計測方法では、同じ受波側超音波センサでも、図25及び図26に示すように、超音波センサの雰囲気温度(空気層ARの温度)が異なる場合や自己発熱に起因して、受波する超音波の波長の大きさが異なり、超音波計測を精度良くできない問題があった。
これに対し、本実施形態1の超音波計測方法では、実測用超音波センサ組10が、校正用超音波センサ組20による計測条件値を、電極ペースト62の目付け量の算出時にリアルタイムに採り入れて実測している。
そのため、第1,第2超音波センサ11,12による実測時と第1,第2校正用超音波センサ21,22によるキャリブレーションの実施時で、空気層ARの温度に差異が生じることはない。
【0140】
また、第1,第2超音波センサ11,12と第1,第2校正用超音波センサ21,22とが、共に同じタイミングで作動していれば、たとえ第1,第2超音波センサ11,12が作動時間の経過と共に自己発熱しても、第1,第2超音波センサ11,12と同様、第1,第2校正用超音波センサ21,22も自己発熱する。このとき、自己発熱した第1,第2超音波センサ11,12の温度と、自己発熱した第1,第2校正用超音波センサ21,22の温度との相対差はほとんどない。そのため、自己発熱により校正用超音波センサ組21,22で受波する超音波USの波長の大きさが変化しても、実測用超音波センサ組10でも、受波する超音波USの波長の大きさが、校正用超音波センサ組20と同じように変化する。
よって、実測用超音波センサ組10の波長の大きさと校正用超音波センサ組20の波長の大きさとの相対差はほとんど生じず、校正用超音波センサ組20の第1,第2校正用超音波センサ21,22と、実測用超音波センサ組10の第1,第2超音波センサ11,12とが共に自己発熱しても、超音波計測をより高精度に行うことができる。
【0141】
従って、本実施形態1の超音波計測方法によれば、超音波センサ11,12,21,22の自己発熱や空気層ARの温度変化に起因した計測精度の誤差要因が排除できるため、製造ラインで製造される電極60に対し、その塗布された電極ペースト62の目付け量(厚み)を、インライン上で高精度に計測することができる、という優れた効果を奏する。
【0142】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測方法では、校正用超音波センサ組20では、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とに、超音波USの伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び実測用超音波センサ組10では、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とに、超音波USの伝播がフラットタイプの超音波センサを用いるので、実測用超音波センサ組10では、第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12のうち、超音波USを受波する受信側超音波センサにおいて、電極ペースト62の目付け量(厚み)を求めるための受信信号が、超音波が局部的な部位に伝播するスポットタイプの超音波センサに比べて、電極60の広い範囲で得られるようになる。
そのため、電極ペースト62の目付け量や目付けプロファイル等、電極ペースト62の厚みに係る品質検査を、電極60の製造ライン上で実施することができる。
【0143】
また、受信側超音波センサで受波した受信信号を、塗布製品の広域から得ることができるため、電極60において電極ペースト62の厚みをより広い範囲で検出できることから、計測範囲内で電極ペースト62の厚みのバラツキ等がより正確に把握でき、電極ペースト62の塗布材の目付け量等、電極60の所定範囲内における電極ペースト62の全体的な厚みを、高い信頼性で計測することができる。
【0144】
また、校正用超音波センサ組20の第1校正用超音波センサ21及び第2校正用超音波センサ22と、実測用超音波センサ組10の第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12とが、いずれもフラットタイプの超音波センサである。
そのため、校正用超音波センサ組10と実測用超音波センサ組20との間で、超音波センサの超音波振動面11a,12a,21a,22aの形態の違いに起因した特性上の差異が生じず、実測用超音波センサ組10が、校正用超音波センサ組20によるキャリブレーションで得られた計測条件値を、精度良く適切な状態で取得することができる。
【0145】
なお、本実施形態1の超音波計測方法では、第1超音波センサ11、第2超音波センサ12、第1校正用超音波センサ21、及び第2校正用超音波センサ22に、公称の周波数として、同じ周波数帯の超音波センサを用いることが好ましい。また、第1超音波センサ11と第2超音波12センサとに対し、また第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とに対し、それぞれ超音波USを送信及び受信が可能な超音波センサを用いることが好ましい。
【0146】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測方法では、校正用超音波センサ組20では、実測用超音波センサ組10による実測前に、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22との間に、キャリブレーションで用いる基準箔65を配置し、第1校正用超音波センサ21から送波した超音波USを基準箔65に透過させ、第2校正用超音波センサ22で受波した超音波USの第1受信信号Sを、計測条件値として予め取得すること、実測用超音波センサ組10では、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間で電極60を透過した超音波USの第2受信信号Sを取得すること、電極60の電極ペースト62の厚みは、第1受信信号Sと第2受信信号Sとの相対比により算出するので、金属箔61に電極ペースト62を塗布した電極60に対し、電極ペースト62の目付け量や目付けプロファイル等、電極ペースト62の厚みを計測する場合、前述した式14より、キャリブレーションで用いる基準箔65の目付け量M、及び第1受信信号Sを、実測用超音波センサ組10による実測前に前もって取得しておけば、電極ペースト62の厚みの実測時に、電極ペースト62を透過する超音波USの減衰率と電極ペースト62の目付け量との関係を示した検量線(図12参照)等を全く必要とせず、第2受信信号Sを取得するだけで、電極ペースト62の目付け量を簡単に算出することができる。
【0147】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測方法では、実測用超音波センサ組10を基準箔65の配置位置まで移動させ、実測用超音波センサ組10により、第1超音波センサ11から送波した超音波USを基準箔65に透過させ、第2超音波センサ12で受波した超音波USの第3受信信号Sを取得するので、校正用超音波センサ組20の第1校正用超音波センサ21、第2校正用超音波センサ22と、実測用超音波センサ組10の第1超音波センサ11、第2超音波センサ12に機差がある場合、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10との機差は、第1受信信号Sと第3受信信号Sとの相対比よって把握することができる。
よって、実測用超音波センサ組10は、第1受信信号S及び第3受信信号Sに基づき、校正用超音波センサ組20との機差を考慮した上で電極ペースト62の目付け量を算出すれば、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10との機差による誤差要因を排除して、電極ペースト62の目付け量を高精度に算出することができる。
【0148】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測方法では、第1校正用超音波センサ21及び第2校正用超音波センサ22と、第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12とは、それぞれ同期して超音波USを送受信しているので、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10とは、時間差のない同じ雰囲気温度の環境下に晒すことができ、空気層ARにおける音速、密度、及び音響インピーダンスは、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10とで、ほぼ同じとすることができる。
これにより、校正用超音波センサ組20で、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22との間で送受信する超音波USと、実測用超音波センサ組10で、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間で送受信する超音波USとが、ほぼ同じ条件の下で、空気層ARを伝播するようになる。
よって、実測用超音波センサ組10は、校正用超音波センサ組20と同じ条件の下、雰囲気温度や自己発熱等の温度による誤差要因を排除した高精度の校正値として、校正用超音波センサ組20から得られた計測条件値を取得することで、電極ペースト62の目付け量が、高精度に安定した状態で算出できる。
【0149】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測方法では、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62を塗布した電極60の厚み方向Zに対し、一方側に第1超音波センサ11を、他方側に第2超音波センサ12を、それぞれ空気層ARを介して配置し、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間で超音波USを伝播させることにより、電極ペースト62の厚み(目付け量)を計測する超音波計測装置1において、超音波センサ組として、電極ペースト62の厚みを計測する実測用超音波センサ組10を少なくとも1組と、第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12とは別で、一対の第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とからなる校正用超音波センサ組20とを有し、実測用超音波センサ組10は、電極ペースト62の目付け量の計測時に、校正用超音波センサ組20によるキャリブレーションで得られた計測条件値に基づいて、超音波USを送受信するので、電池製造工程において、金属箔61に電極ペースト62を塗布して電極60を製造する製造ラインのインライン上で、電極ペースト62等、電極ペースト62の厚みを計測する場合に、実測時に、超音波センサ11,12,21,22の自己発熱や空気層ARの温度変化に起因した計測精度の誤差要因を排除して、電極ペースト62の厚みをより高精度に計測することができる。
【0150】
また、第1,第2超音波センサ11,12と第1,第2校正用超音波センサ21,22とが、共に同じタイミングで作動していれば、たとえ第1,第2超音波センサ11,12が作動時間の経過と共に自己発熱しても、第1,第2超音波センサ11,12と同様、第1,第2校正用超音波センサ21,22も自己発熱する。このとき、自己発熱した第1,第2超音波センサ11,12の温度と、自己発熱した第1,第2校正用超音波センサ21,22の温度との相対差はほとんどない。そのため、自己発熱により校正用超音波センサ組20で受波する超音波USの波長の大きさが変化しても、実測用超音波センサ組10でも、受波する超音波USの波長の大きさが、校正用超音波センサ組20と同じように変化する。
よって、実測用超音波センサ組10の波長の大きさと校正用超音波センサ組20の波長の大きさとの相対差はほとんど生じず、校正用超音波センサ組20の第1,第2校正用超音波センサ21,22と、実測用超音波センサ組10の第1,第2超音波センサ11,12とが共に自己発熱しても、計測精度を高精度に維持したまま、電極ペースト62の厚みが計測できる。
【0151】
従って、本実施形態1の超音波計測装置1では、超音波センサ11,12,21,22の自己発熱や空気層ARの温度変化に起因した計測精度の誤差要因が排除できるため、製造ラインで製造される電極60に対し、その塗布された電極ペースト62の厚み(目付け量等)を、インライン上で高精度に計測することができる、という優れた効果を奏する。
【0152】
また、本実施形態1の超音波計測装置1では、電極60を製造する製造ラインを停止させる必要がなく、ライン稼働中に、実測用超音波センサ組10が、校正用超音波センサ組20によるキャリブレーションで得られた計測条件値を取得することができる。そのため、実測用超音波センサ組10の計測条件を校正するのに余分な工程が増えず、電極60がコスト高になることもない。
また、本実施形態1の超音波計測装置1は、製造ラインに設備するときのコストも安価である上、電極60を製造する製造ラインに対し、新設または既設にかかわらず容易に組み込むことができる。
【0153】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測装置1では、校正用超音波センサ組20では、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とに、超音波USの伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び実測用超音波センサ組10では、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とに、超音波USの伝播がフラットタイプの超音波センサを用いるので、先に例示したように、電池製造工程において、金属箔61に電極ペースト62を塗布して電極60を製造する製造ラインのインライン上で、電極ペースト62等の厚み(目付け量)を計測するときに、第1超音波センサ11から送波した超音波USが、電極60の広い面積にわたって照射されて電極60の金属箔61及び電極ペースト62を透過し、第2超音波センサ12が、より広範囲にわたって金属箔61及び電極ペースト62を透過した超音波(透過波)USを受波できる。
【0154】
これにより、第2超音波センサ12で受波した透過波USによる受信信号が、電極ペースト62の厚みを求めるための受信信号(第2受信信号S)として、電極60の広域から得ることができるため、電極60において電極ペースト62の厚みをより広い範囲で検出できる。よって、計測範囲内で電極ペースト62の厚みのバラツキ等がより正確に把握でき、電極ペースト62の目付け量等、電極60の所定範囲内における電極ペースト62の全体的な厚みを、高い信頼性で計測することができる。
【0155】
その一方で、校正用超音波センサ組20の第1校正用超音波センサ21及び第2校正用超音波センサ22と、実測用超音波センサ組10の第1超音波センサ11及び第2超音波センサ12とが、いずれもフラットタイプの超音波センサである。そのため、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10との間で、超音波センサの超音波振動面11a,12a,21a,22aの形態の違いに起因した特性上の差異が生じず、校正用超音波センサ組20によるキャリブレーションで得られた計測条件値が、実測用超音波センサ組10に、精度良く適切にフィードバックできるようになる。
【0156】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測装置1では、校正用超音波センサ組20及び実測用超音波センサ組10に対し、超音波USの送受信と計測条件とを制御する超音波計測制御部5を備え、超音波計測制御部5は、校正用超音波センサ組20による計測条件値を、実測用超音波センサ組10にフィードバックするので、常時、実測用超音波センサ組10が、計測環境変化に対応して、校正用超音波センサ組20によりキャリブレーションされた最新の計測条件値を、電極ペースト62の目付け量の算出時とリアルタイムに取得でき、電極ペースト62の目付け量が高精度に算出できる。
【0157】
すなわち、キャリブレーションを超音波計測の実測時と同時に行っていない従来の超音波計測方法では、先に行ったキャリブレーションと、その後に行ったキャリブレーションには、時間差があり、この時間内に、自己発熱による超音波センサの温度上昇、雰囲気温度や空気層の密度等の計測環境が変化することが多々ある。このような計測環境に変化がある中で、超音波センサにより塗布材の厚みの計測を行っても、計測結果は、計測環境変化に起因したバラツキを有し、計測結果に信頼性がない計測値となり問題である。
これに対し、本実施形態1の超音波計測装置1は、計測環境変化に対応し、常時、最新の計測条件値を採り入れて電極ペースト62の厚みを計測することができるため、電極ペースト62の目付け量の算出結果は、高精度でかつ高い信頼性を有した計測値となる。
【0158】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測装置1では、キャリブレーションで用いる基準箔65が、電極60と共に配置され、校正用超音波センサ組20が、基準箔65が配置されている第1位置L1と、第1位置L1から外れ、校正用第1超音波センサ21と校正用第2超音波センサ22との間に空気層ARだけが存在する第2位置L2との範囲を、少なくとも移動可能に設けられているので、校正用超音波センサ組20が、第1位置L1と第2位置L2との間を移動することにより、前述したように、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22との間に配置した基準箔65を伝播して受波する超音波の受信信号(箔有り受信信号)Sを第1位置L1で、箔無し受信信号Sを第2位置L2で、それぞれ取得することができる。
これにより、キャリブレーションを行う雰囲気温度や空気層ARの密度、自己発熱による超音波センサの温度上昇等の計測環境が、たとえ変化しても、校正用超音波センサ組20が、第1位置L1と第2位置L2との間を移動し、基準箔65を透過する超音波USの減衰率αを求めるのに必要な箔有り受信信号S及び箔無し受信信号Sを常時取得する。よって、電極60の電極ペースト62の厚みの実測時には、計測環境変化に応じて最適な上記減衰率αを取得することができる。
【0159】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測装置1では、実測用超音波センサ組10が、第1位置L1と、第1位置L1から外れ、電極60が配置されている第3位置L3A,L3Bとの範囲を少なくとも移動可能に設けられているので、実測用超音波センサ組10が第1位置L1と第3位置L3A,L3Bとの間を往来する度に、「正」とする基準箔65を用いてキャリブレーションを行っている校正用超音波センサ組20との最新の機差を、実測用超音波センサ組10に採り入れることができる。
そのため、電極ペースト62の厚みを計測する雰囲気温度や空気層ARの密度、自己発熱による超音波センサの温度上昇等の計測環境が、たとえ変化しても、校正用超音波センサ組20との機差による誤差要因を、より確実に排除することができる。
【0160】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測装置1では、捲回されている金属箔61は長尺状であり、金属箔61の長辺に沿う長手方向X及び金属箔61の厚み方向Zに直交する方向を、金属箔61の幅方向Yとしたときに、基準箔65は、電極60と幅方向Yに並んで配置され、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10とが、それぞれ幅方向Yに沿う方向に移動するので、校正用超音波センサ組20や実測用超音波センサ組10が同じ一対の上側スライド軸55A及び下側スライド軸55B上を移動し、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10とが同期で上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bと相対移動する構成であることから、校正用超音波センサ組20では、第1位置L1と第2位置L2との間の移動が、実測用超音波センサ組10では、第1位置L1と第3位置L3A,L3Bとの間の移動が、同時にできるようになる。
これにより、校正用超音波センサ組20と実測用超音波センサ組10とも、雰囲気温度や空気層ARの密度等の計測環境に応じた計測条件の設定の変更を、タイムロスがなく効率良く行うことができる。
【0161】
ここで、図13に、超音波計測装置のカバーの作用を説明する模式図を示す。図14に、受波された超音波において、空気層の対流により超音波強度に及ぼす影響について、その調査結果のグラフを一例として示す。
調査は、受波した超音波をサンプル数9とし、その超音波V1乃至V9が伝播する空気層の対流速度が流速0.1(m/sec.毎)のときに、超音波V1乃至V9の各受信信号強度Pにおける計測電圧をそれぞれ確認した。
その結果、流速0.1(m/sec.毎)で空気層に対流が生じると、図14に示すように、同じ受信信号強度Pでも、計測電圧が最も大きい超音波V9の計測電圧値Q2と、計測電圧が最も小さい超音波V3の計測電圧値Q1との間に変化量δが生じている。変化量δは、計測電圧値Q1の絶対値が計測電圧値Q2の絶対値の約半分に相当する量であり、超音波強度は、空気層の対流による影響を大きく受けていることが判る。
【0162】
これに対し、本実施形態1の超音波計測装置1では、校正用超音波センサ組20には、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とに対し、超音波振動面21a,22aと基準箔65との間の空気層ARを包囲する筒状の校正センサ用カバー32が設けられているので、キャリブレーションの実施時に、超音波振動面21a,22aと基準箔65との間の空気層ARにおいて、密度変化、温度変化、音響インピーダンスの変化、伝播する超音波USの指向性、ノイズとして外部から伝播する音波との干渉等、空気層ARの対流の影響による誤差要因を排除して、基準となる計測条件値をより高精度に設定することができる。
【0163】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測装置1では、実測用超音波センサ組10には、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とに対し、超音波振動面11a,12aと電極60との間の空気層ARを包囲する筒状の実測センサ用カバー31が設けられているので、電極ペースト62の厚みの実測時に、超音波振動面11a,12aと電極60との間の空気層ARにおいて、密度変化、温度変化、音響インピーダンスの変化、伝播する超音波の指向性、ノイズとして外部から伝播する音波との干渉等、空気層ARの対流の影響による誤差要因を排除して、より高精度に電極ペースト62の厚みを計測することができる。
【0164】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測装置1では、校正センサ用カバー32は、校正センサ用内筒側カバー32Aと、校正センサ用内筒側カバー32Aより外側に位置する校正センサ用外筒側カバー32Bとの2重構造で形成され、校正センサ用外筒側カバー32Bは、基準箔65と校正センサ用内筒側カバー32Aよりも離れるよう、金属箔61の厚み方向に沿う方向Zに対し、校正センサ用内筒側カバー32Aより短く形成されているので、図13に示すように、校正センサ用カバー32の外部で対流する空気が基準箔65の表面SL近くで校正センサ用カバー32に当たっても、校正センサ用内筒側カバー32Aによりこの空気の流れが変わり、この空気が、校正センサ用外筒側カバー32Bと校正センサ用内筒側カバー32Aの間に流れて、空気の乱流が、基準箔65の表面SL近くで生じ難くなる。
そのため、校正センサ用内筒側カバー32Aと基準箔65との間に僅かな隙間があっても、この小さな隙間を通気する空気は乱流の影響をほとんど受けず、超音波振動面21a,22aと基準箔65との間の空気層ARは、安定した状態を維持することができる。
【0165】
また、実測センサ用カバー31は、実測センサ用内筒側カバー31Aと、実測センサ用内筒側カバー31Aより外側に位置する実測センサ用外筒側カバー31Bとの2重構造で形成され、実測センサ用外筒側カバー31Bは、基準箔65及び電極60と実測センサ用内筒側カバー31Aよりも離れるよう、金属箔61の厚み方向に沿う方向Zに対し、実測センサ用内筒側カバー31Aより短く形成されているので、図13に示すように、実測センサ用カバー31の外部で対流する空気が、基準箔65の表面SL近くや、電極60の表面SL近くで実測センサ用カバー31に当たっても、実測センサ用内筒側カバー31Aによりこの空気の流れが変わり、この空気が、実測センサ用外筒側カバー31Bと実測センサ用内筒側カバー31Aとの間に流れて、空気の乱流が、基準箔65の表面SL近くや、電極60の表面SL近くで生じ難くなる。
そのため、実測センサ用内筒側カバー31Aと電極60(または基準箔65)との間に僅かな隙間があっても、この小さな隙間を通気する空気は乱流の影響をほとんど受けず、超音波振動面11a,12aと電極60との間の空気層ARは、安定した状態を維持することができる。
【0166】
また、このような本実施形態1に係る超音波計測装置1では、基材は、塗布製品である電池の電極60に用いる金属箔61であり、塗布材は、金属箔61に塗布された電極ペースト62であるので、電池製造工程において、金属箔61に電極ペースト62を塗布して電極60を製造する製造ラインで、ライン稼働中に、電極60に対し、電極ペースト62の目付け量に係る品質検査を広範囲にわたって精度良く実施できるようになる上、電極の全数検査をも可能にできるようになることから、高品質で高性能な電池が提供できるようになる。
【0167】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る超音波計測方法、及び超音波計測装置について説明する。
実施形態1では、超音波計測装置1を、基準箔65を固定させたまま配置する構成とした。また、第1校正用超音波センサ21から送波した超音波USを、固定された基準箔65内の1つの部位に透過させ、第2校正用超音波センサ22で受波した超音波USの信号を、第1受信信号Sとした。また、第1超音波センサ11から送波した超音波USを、固定された基準箔65内の1つの部位に透過させ、第2超音波センサ12で受波した超音波USの信号を、第3受信信号Sとした。また、第1超音波センサ11、第2超音波センサ12、第1校正用超音波センサ21、及び第2校正用超音波センサ22の周波数帯を、100〜250KHzの範囲とした。また、実測用超音波センサ組10に実測センサ用カバー31を、校正用超音波センサ組20に校正センサ用カバー32を設けた。
【0168】
これに対し、実施形態2では、超音波計測装置201が、基準箔65を回転運動させる機構を備えた構成となっている。また、第1受信信号Sが、第1校正用超音波センサ221から送波した超音波USを、回転運動する基準箔65内の5つの部位に透過させ、第2校正用超音波センサ222で受波した超音波USの5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5を演算処理することにより、取得されている。また、第3受信信号Sが、第1超音波センサ211から送波した超音波USを、回転運動する基準箔65内の5つの部位に透過させ、第2超音波センサ212で受波した超音波USの5つの第3サンプル受信信号SY1〜SY5を演算処理することにより、取得されている。また、第1超音波センサ211、第2超音波センサ212、第1校正用超音波センサ221、及び第2校正用超音波センサ222の周波数帯が、40KHz近傍となっている。また、実測センサ用カバーは実測用超音波センサ組210に、校正センサ用カバーは校正用超音波センサ組220に、それぞれ設けていない。
【0169】
すなわち、実施形態2は、基準箔65を回転運動させる点と、5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5に基づいて第1受信信号Sを取得する点と、5つの第3サンプル受信信号SY1〜SY5に基づいて第3受信信号Sを取得する点と、実測用超音波センサ組210と校正用超音波センサ組220とも超音波センサの周波数を40KHzとする点と、実測センサ用カバー及び校正センサ用カバーを配設しない点等で、実施形態1と異なるが、それ以外の部分は、実施形態1と同様である。
従って、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、その他について説明を簡略または省略する。
【0170】
図16は、実施形態2に係る超音波計測装置の構成を説明する模式図である。図17は、実施形態2に係る超音波計測装置の主要部を説明図であり、一部を、図16中、B−B矢視に相当する方向から見た断面で示した図である。
【0171】
はじめに、実測用超音波センサ組210の第1,第2超音波センサ211,212について、図16及び図17を用いて説明する。
第1超音波センサ211は、超音波USの伝播がフラットタイプの送信センサであり、超音波の受信をも可能とする超音波センサである。
フラットタイプの送信センサとは、第1超音波センサ211で超音波USを送波する第1振動面211aが、本実施形態2では、1つであり、第1振動面211aの全体形状が円形状に形成された超音波センサである。また、送波した超音波USを、空気層ARを介して、電極60のうち、第1振動面211aと対向するエリア内に少なくとも伝播させることができる超音波センサをいう。
第2超音波センサ212が送信側になる場合についても、第1振動面211aが第2振動面212aに変わるだけで、第1超音波センサ211と実質的に同じである。
【0172】
第2超音波センサ212は、超音波USの伝播がフラットタイプの受信センサであり、超音波の送信をも可能とする超音波センサである。
フラットタイプの受信センサとは、第2超音波センサ212で超音波USを受波する第2振動面212aが、本実施形態2では、1つであり、第2振動面212aの全体形状が円形状に形成された超音波センサである。また、第1超音波センサ211から送波、照射されて電極60を少なくとも透過した超音波(透過波)USを、空気層ARを介して第2振動面212a全体で受波することができる超音波センサをいう。
第1超音波センサ211が受信側になる場合についても、第2振動面212aが第1振動面211aに変わるだけで、第2超音波センサ212と実質的に同じである。
【0173】
この第2超音波センサ212には、第2振動面212aで受波した超音波振動を電圧に変換して受信信号を精度良く増幅して第2受信信号を取得するため、受波信号高精度化回路部213が設けられている。受波信号高精度化回路部213には、変換された受信信号に含まれる阻害要因の信号(ノイズ)を除去するノイズ除去回路と、ノイズを除去して受信信号を増幅させて第2受信信号、及び第3受信信号を生成する信号増幅回路と、が内蔵されている。
【0174】
第1,第2超音波センサ211,212の周波数は、約40KHz近傍で、公称の周波数として、同じ周波数帯の超音波センサが用いられる。第1超音波センサ211と第2超音波センサ212とは、電極60に対し、何れも垂直方向に配置されている。
実測用超音波センサ組210では、第1,第2超音波センサ211,212の周波数が40KHzの場合、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212とは、例えば、電極60(または基準箔65)を挟み、空気層ARを介して、対向する第1振動面211aと第2振動面212aとの距離を約70mm離間させて配置されている。すなわち、実測用超音波センサ組210では、第1振動面211aと電極60、基準箔65との距離、第2振動面212aと電極60、基準箔65との距離が、何れも35mmに設定されている。
【0175】
第1超音波センサ211は、上側スライド軸55Aに、その取付け位置を変更可能に取付けられており、所定位置で動かないよう、固定可能となっている。また、第2超音波センサ212は、下側スライド軸55Bに、その取付け位置を変更可能に取付けられており、第1超音波センサ211と互いに対向する位置で動かないよう、固定可能となっている。
【0176】
次に、校正用超音波センサ組220の第1,第2校正用超音波センサ221,222について、図16及び図17を用いて説明する。
第1校正用超音波センサ221は、超音波USの伝播がフラットタイプの送信センサであり、超音波の受信をも可能とする超音波センサであり、実質的には、第1,第2超音波センサ211,212と同じ仕様の超音波センサである。
すなわち、フラットタイプの送信センサとは、第1校正用超音波センサ221で超音波USを送波する第1振動面221aが、本実施形態2では、1つであり、第1振動面221aの全体形状が円形状に形成された超音波センサである。また、送波した超音波USを、空気層ARを介して、基準箔65と対向するエリア内に少なくとも伝播させることができる超音波センサをいう。
第2校正用超音波センサ222が送信側になる場合についても、第1振動面221aが第2振動面222aに変わるだけで、第1校正用超音波センサ221と実質的に同じである。
【0177】
第2校正用超音波センサ222は、超音波USの伝播がフラットタイプの受信センサで、超音波の送信をも可能とする超音波センサであり、実質的には、第1,第2超音波センサ211,212及び第1校正用超音波センサ221と同じ仕様の超音波センサである。
すなわち、フラットタイプの受信センサとは、第2校正用超音波センサ222で超音波USを受波する第2振動面222aが、本実施形態2では、1つであり、第2振動面222aの全体形状が円形状に形成された超音波センサである。また、第1校正用超音波センサ221から送波、照射されて基準箔65を少なくとも透過した超音波(透過波)USを、空気層ARを介して第2振動面222a全体で受波することができる超音波センサをいう。
第1校正用超音波センサ221が受信側になる場合についても、第2振動面222aが第1振動面221aに変わるだけで、第2校正用超音波センサ222と実質的に同じである。
【0178】
この第2校正用超音波センサ222には、第2振動面222aで受波した超音波振動を電圧に変換して受信信号を精度良く増幅して第1受信信号を取得するため、受波信号高精度化回路部223が設けられている。受波信号高精度化回路部223には、変換された受信信号に含まれる阻害要因の信号(ノイズ)を除去するノイズ除去回路と、ノイズを除去して受信信号を増幅させて第1受信信号を生成する信号増幅回路と、が内蔵されている。
【0179】
また、第1,第2校正用超音波センサ221,222の周波数は、第1,第2超音波センサ211,212と同様、約40KHz近傍で、公称の周波数として、同じ周波数帯の超音波センサが用いられる。第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222とは、基準箔65に対し、何れも垂直方向に配置されている。
実測用超音波センサ組210と同様、校正用超音波センサ組220でも、第1,第2校正用超音波センサ221,222の周波数が40KHzの場合、第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222とは、例えば、基準箔65を挟み、空気層ARを介して、対向する第1振動面221aと第2振動面222aとの距離を約70mm離間させて配置されている。すなわち、校正用超音波センサ組220では、第1振動面221aと基準箔65との距離、及び第2振動面222aと基準箔65との距離が、何れも35mmに設定されている。
【0180】
第1校正用超音波センサ221は、上側スライド軸55Aに、その取付け位置を変更可能に取付けられており、所定位置で動かないよう、固定可能となっている。また、第2校正用超音波センサ222は、下側スライド軸55Bに、その取付け位置を変更可能に取付けられており、第1校正用超音波センサ211と互いに対向する位置で動かないよう、固定可能となっている。
【0181】
第1超音波センサ211と第1校正用超音波センサ221とは、第1超音波発振器211Fと電気的に接続されている。第1超音波発振器211Fは、電圧を印加して第1振動面211a,221aを超音波振動させるための発振回路と、第1振動面211a,221aで受波した超音波振動を電圧に変換して受信するための受信回路とを有している。
【0182】
また、第2超音波センサ212と第2校正用超音波センサ222とは、第2振動面212a,222aに超音波振動を発振させる第2超音波発振器212Fと電気的に接続されている。第2超音波発振器212Fは、電圧を印加して第2振動面212a,222aを超音波振動させるための発振回路と、第2振動面212a,222aで受波した超音波振動を電圧に変換して受信するための受信回路とを有している。
第1超音波発振器211Fと第2超音波発振器212Fとは、超音波計測制御部205と電気的に接続されている。
【0183】
次に、超音波計測制御部205について、図16及び図17を用いて説明する。
超音波計測制御部205は、実施形態1で説明した超音波計測制御部5と同様、実測用超音波センサ組210(第1,第2超音波センサ211,212)、及び校正用超音波センサ組220(第1,第2校正用超音波センサ221,222)に対し、超音波USの送受信及び、実測用超音波センサ組210と校正用超音波センサ組220との間で計測条件を制御する。さらに、この超音波計測制御部205は、後述するように、駆動手段280のモータ281の駆動制御と、ロータリーエンコーダ290の検出制御とを行う。
【0184】
この超音波計測制御部205は、実測用超音波センサ組210の第1,第2超音波センサ211,212、及び校正用超音波センサ組220の第1,第2校正用超音波センサ221,222のそれぞれに対し、例えば、最大発振電圧1Kv、最大発振周波数10Hz(100μsで1回の頻度で発振)、最大発振波数100波(所定時間内に送波可能な波数)、最大A/D変換周波数100MHz等の制御条件で、超音波USを発振できるようになっている。
【0185】
また、超音波計測制御部205は、厚み演算部240と電気的に接続されている。厚み演算部240は、第1超音波センサ211及び第2超音波センサ212のうち、いずれか一方の受波側超音波センサで受波した超音波USの受信信号に基づいて、電極ペースト62(図7参照)の目付け量及び目付けプロファイルを算出する。厚み演算部240は、CPU、RAM及びROM等公知の構成のマイクロコンピュータ(図示しない)を備えている。
【0186】
RAMには、超音波USが空気層ARを伝播するときの減衰率、超音波USが基準箔65を透過するときの減衰率、超音波USが電極60を透過するときの減衰率、超音波USが金属箔61を透過するときの減衰率または金属箔61の厚み、図示しない温度計により計測した空気層ARの雰囲気温度や、第1,第2超音波センサ211,212、第1,第2校正用超音波センサ221,222の発熱温度、第1振動面211a,221aと第2振動面212a,222aとのプローブ間距離、空気層ARにおいて、温度に対応した音速、密度、音響インピーダンス、超音波を伝搬させる空気層ARの気圧、基準箔65内で超音波USを透過させる部位の座標等が、設定値として入力できるようになっている。
【0187】
また、ROMには、校正用超音波センサ組220の第1,第2校正用超音波センサ221,222のキャリブレーションを実行するプログラム、実測用超音波センサ組210で第1,第2超音波センサ211,212のいずれかにより基準箔65を透過した透過波の減衰率を算出するプログラム、実測用超音波センサ組210において、第1,第2超音波センサ211,212のいずれかにより電極60(電極ペースト62)を透過した透過波の減衰率を算出するプログラム、受波した透過波の音波波形をサイン波に近似補正するプログラム、算出された透過波の減衰率に基づいて、電極ペースト62の厚み、目付け量を演算処理する目付け量算出プログラム、演算処理した結果をモニタ41に数値や画像で表示するプログラム、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bを幅方向(Y軸方向)に動作させるプログラム、モータ281の駆動制御やロータリーエンコーダ290の作動を制御するプログラム、第1,第2超音波センサ211,212と第1,第2校正用超音波センサ221,222との機差を補正するプログラム、その他のプログラムが記憶されている。
【0188】
厚み演算部240では、CPUにロードすることにより、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bの操作のほか、電極ペースト62の目付け量及び目付けプロファイル、基準箔65内で超音波を透過させる部位を、当該厚み演算部240と接続するモニタ41に数値や画像で表示すること等の所定の動作が実行できるようになっている。
【0189】
次に、基準箔65を回転運動させる機構について、図17及び図18を用いて説明する。図18は、実施形態2に係る超音波計測装置に構成された基準箔保持部材を示す斜視図である。なお、図18は、図面を見易くするため、図16において、超音波計測制御部と電気的に接続されている第1,第2超音波発振器、上側スライド軸、及び下側スライド軸との配線経路を省略して図示されている。
【0190】
本実施形態2では、超音波計測装置201は、基準箔65を回転運動させる機構として、基準箔保持部材270(保持部材)、駆動手段280、及びロータリーエンコーダ290(位置決め手段)を備えている。
【0191】
はじめに、基準箔保持部材270について説明する。基準箔保持部材270は、本実施形態2では、正方形形状で形成された一片の基準箔65を、その四辺の各縁部を載置させ、基準箔65の面方向に弛みをなくしつつ、必要以上にテンションをかけない自然な平面状態を維持して保持させる部材である。基準箔保持部材270は、例えば、図17及び図18に示すように、軸心G1を中心に円筒状に形成された立設部272と、軸心G1を中心とする環状に形成され、この立設部272の下側と接続する基部271と、立設部272の上側と接続する平板状の基準箔保持部273とから構成されている。
【0192】
基準箔保持部273は、その上面である回転検出面273aと、正方形形状の貫通孔である開口部274とを有している。この開口部274の四辺縁部には、回転検出面273aと段差を有した支持面273bが、開口部274の四辺縁部に沿って設けられている。基準箔65の四辺縁部は、図17に示すように、四辺縁部の支持面273bに載置される。そして、支持面273bに載置した基準箔65が、その面方向に弛みをなくしつつ、必要以上にテンションをかけない自然な平面状態を維持して保持できるよう、開口部274の周囲で、図示しない固定部材により固定できるようになっている。支持面273bを含む開口部274は、図18に示すように、その開口部中心点G2を、基準箔保持部材270の軸心G1から偏心させた位置に形成されている。
【0193】
次に、駆動手段280について説明する。駆動手段280は、基準箔保持部材270を、本実施形態2では、回転運動させて動作させると共に、その動作を停止させる。
具体的には、駆動手段280は、モータ281と、このモータ281の回転力を伝達する駆動軸282と、駆動伝達部283と、駆動被伝達部284とからなる。モータ281は、超音波計測制御部205と電気的に接続されており、超音波計測制御部205が、モータ281を駆動制御して、モータ281の回転とその停止を行う。駆動伝達部283及び駆動被伝達部284は、駆動軸282の回転方向(図17において、Y軸に沿う軸心を中心とする回転方向)を、軸心G1を中心とする基準箔保持部材270の回転方向(図17において、Z軸に沿う軸心を中心とする回転方向)に変換する。すなわち、駆動手段280は、モータ281の回転を、軸心G1を中心とする基準箔保持部材270の回転運動に変換する。
【0194】
超音波計測装置201では、基準箔保持部材270の基準箔保持部273の支持面273bに載置されて保持された基準箔65が、駆動手段280により基準箔保持部材270を回転させて、対向する第1超音波センサ211の中心と第2超音波センサ212の中心とを結ぶ仮想線Mと交差する範囲内で、固定された状態にある第1超音波センサ211及び第2超音波センサ212と相対的に移動可能に配置されている。また、基準箔保持部材270の基準箔保持部273の支持面273bに載置して保持された基準箔65が、駆動手段280により基準箔保持部材270を回転させて、対向する第1校正用超音波センサ221の中心と第2校正用超音波センサ222の中心とを結ぶ仮想線Nと交差する範囲内で、固定された状態にある第1校正用超音波センサ221及び第2校正用超音波センサ222と相対的に移動可能に配置されている。
【0195】
次に、ロータリーエンコーダ290について説明する。本発明の位置決め手段は、本実施形態2では、周知技術のロータリーエンコーダ290である。ロータリーエンコーダ290は、被検出部291と、位置検出センサ部292とからなる。被検出部291は、図18に示すように、環状に形成されており、基準箔保持部材270の基準箔保持部273の回転検出面273aに設けられている。また、位置検出センサ部292は、この基準箔保持部273の回転検出面273aと対向する所定位置に設けられており、超音波計測制御部205と電気的に接続されている。
【0196】
ロータリーエンコーダ290は、図16及び図17に示すように、軸心G1を中心に回転動作する基準箔保持部材270に対し、対向する第1超音波センサ211の中心と第2超音波センサ212の中心とを結ぶ仮想線Mが基準箔65内の所定部位である超音波透過部位C1〜C5の中心C1a〜C5a(図19参照)に交差する状態に対応する位置を検出する。また、ロータリーエンコーダ290は、対向する第1校正用超音波センサ221の中心と第2校正用超音波センサ222の中心とを結ぶ仮想線Nが基準箔65内の所定部位である超音波透過部位C1〜C5の中心C1a〜C5aに交差する状態に対応する位置を検出する。
【0197】
次に、本実施形態2に係る超音波計測方法について説明する。本実施形態2に係る超音波計測方法は、前述したように構成された超音波計測装置201を用いて電極ペースト62の目付け量の品質検査を行うときの方法である。
【0198】
本実施形態2に係る超音波計測方法は、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212とが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属製の金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62を塗布した電極60の厚み方向Zに対し、一方側に第1超音波センサ211を、他方側に第2超音波2センサ212を、それぞれ空気層ARを介して配置し、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212との間で超音波USを伝播させることにより、電極ペースト62の厚み(目付け量)を計測する超音波計測方法において、超音波センサ組として、電極ペースト62の目付け量を計測する実測用超音波センサ組210を少なくとも1組と、第1超音波センサ211及び第2超音波センサ212とは別で、一対の第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222とからなる校正用超音波センサ組220とを有し、電極ペースト62の厚みの計測時に、校正用超音波センサ組220でキャリブレーションを行うと共に、校正用超音波センサ組220で得られた計測条件値を用いて、実測用超音波センサ組210により、電極ペースト62の目付け量を算出する。
【0199】
また、本実施形態2に係る超音波計測方法は、校正用超音波センサ組220では、第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222とに、超音波USの伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び実測用超音波センサ組210では、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212とに、超音波USの伝播がフラットタイプの超音波センサを用いる。
【0200】
また、本実施形態2に係る超音波計測方法は、校正用超音波センサ組220では、実測用超音波センサ組210による実測前に、参照する図10に示すように、第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222との間に、キャリブレーションで用いる基準箔65を配置し、第1校正用超音波センサ221から送波した超音波USを基準箔65に透過させ、第2校正用超音波センサ222で受波した超音波USの第1受信信号Sを、計測条件値として予め取得する。
【0201】
また、この第1受信信号Sを取得するのに、本実施形態2に係る超音波計測方法は、第1校正用超音波センサ221から送波した超音波USを、基準箔65内の複数の所定部位C1〜C5(超音波透過部位C1〜C5)に透過させ、第2校正用超音波センサ222で受波した超音波USの受信信号として、第1サンプル受信信号SK1〜SK5を、基準箔65内の5つの超音波透過部位C1〜C5で取得する。そして、第1受信信号Sは、この5つ(複数)の第1サンプル受信信号SK1〜SK5に基づいて、演算処理され取得される。
【0202】
具体的に、図17及び、図19乃至図21を用いて説明する。図19は、実施形態2に係る超音波計測方法において、基準箔内の5つの部位に超音波を透過させて第1サンプル受信信号または第3サンプル受信信号を取得する様子を示す模式図である。図20は、実施形態2に係る超音波計測方法において、実測用超音波センサ組による目付け量計測と、校正用超音波センサ組による基準箔計測とを行うタイミングを模式的に示したタイムチャートである。図21は、実施形態2に係る超音波計測方法において、第1サンプル受信信号を模式的に示す説明図である。
【0203】
本実施形態2に係る超音波計測方法では、基準箔65を用いて校正用超音波センサ組220によりキャリブレーションを行うときには、図19に示すように、第1校正用超音波センサ221から送波した超音波USを、基準箔65内にある5つの超音波透過部位C1〜C5(複数の部位)に向けて透過させる。すなわち、実測用超音波センサ組210では、第1校正用超音波センサ221は上側スライド軸55Aの所定位置に停止させ固定された状態にあり、第2校正用超音波センサ222も、第1校正用超音波センサ221と対向する位置で、第1校正用超音波センサ221の中心と第2校正用超音波センサ222の中心とを結ぶ仮想線N上にある位置に停止され、下側スライド軸55Bに固定された状態にある。
【0204】
そこで、駆動手段280とロータリーエンコーダ290を作動させ、基準箔65を回転運動させる。そのためには、基準箔65は、その基準箔中心点Hを基準箔保持部材270の開口部274の開口部中心点G2に合わせてセットして保持しておき、モータ281を回転させて、基準箔保持部材270を、中心G1を中心に回転させる。このとき、基準箔保持部材270に保持された基準箔65は、中心G1を中心に基準箔保持部材270と相対的に回転するが、開口部中心点G2が基準箔保持部材270の中心G1と偏心し、基準箔中心点Hが基準箔保持部材270の開口部274内に存在している。そのため、基準箔保持部材270の回転により、第1校正用超音波センサ221の中心と第2校正用超音波センサ222の中心とを結ぶ仮想線Nが、基準箔中心点Hとする円で、所望とする5つの超音波透過部位C1〜C5の中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aを通る軌跡のピッチ円R上を通過する。
【0205】
本実施形態2に係る超音波計測方法では、基準箔65内のうち、5つの超音波透過部位C1〜C5(複数の部位)で、校正用超音波センサ組220によりキャリブレーションが行われるため、基準箔保持部材270の回転中、仮想線Nがピッチ円Rのうち、中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aの順にそれぞれ到達したところで、一時的にモータ281の回転を停止させる。モータ281の回転の停止位置は、ロータリーエンコーダ290で検出され、具体的には、位置検出センサ部292が、中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aにそれぞれ相当する基準箔保持部材270の周方向の位置、すなわち被検出部291の周方向の位置を検出する。
【0206】
そして、第1校正用超音波センサ221の中心と第2校正用超音波センサ222の中心とを結ぶ仮想線Nが、中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aと交差する位置で、第1校正用超音波センサ221から送波した超音波USを、基準箔65に向けて透過させる。仮想線Nが中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aに交差したところで、第1校正用超音波センサ221から送波した超音波USは、超音波透過部位C1〜C5(複数の部位)に向けて透過され、第2校正用超音波センサ222で受波した超音波の受信信号として、5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5(図21参照)が取得される。すなわち、第1サンプル受信信号SK1は、超音波透過部位C1を透過した超音波USの受信信号である。第1サンプル受信信号SK2は、超音波透過部位C2を透過した超音波USの受信信号である。第1サンプル受信信号SK3は、超音波透過部位C3を透過した超音波USの受信信号である。第1サンプル受信信号SK4は、超音波透過部位C4を透過した超音波USの受信信号である。第1サンプル受信信号SK5は、超音波透過部位C5を透過した超音波USの受信信号である。かくして、第1受信信号Sが、これら5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5に基づいて、最小二乗法により演算処理されて取得される。
【0207】
次いで、電極60の電極ペースト62の目付け量(厚み)の実測時に、実測用超音波センサ組210で、図11(b)に示すように、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212との間に、電極60を配置し、第1超音波センサ211から送波した超音波USを電極60に透過させ、第2超音波センサ212で受波した超音波USの第2受信信号Sを取得する。電極ペースト62の目付け量(厚み)が、第1受信信号Sと第2受信信号Sとの相対比により算出される。
【0208】
このとき、目付け量(厚み)の計測では、図20に示すように、先の目付け量計測WM1で用いる第1受信信号Sを、その次に行う目付け量計測WM2で用いる第1受信信号Sに、そのまま使うのではなく、前述したキャリブレーションは、先の目付け量計測WM1と、次の目付け量計測WM2とで、別々に行う。すなわち、目付け量計測を行う度に、その都度、5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5を取得して、目付け量計測の条件をリアルタイムに補正し更新して、精度の高い第1受信信号Sを用いることが重要である。
【0209】
次に、実測用超音波センサ組210と校正用超音波センサ組220との間で、超音波センサの個体機差、すなわち、第1超音波センサ211と、第2超音波センサ212と、第1校正用超音波センサ221と、第2校正用超音波センサ222との機差を確認する調査方法について、説明する。
上記超音波センサの個体機差を確認するには、キャリブレーションを行う校正用超音波センサ組220において、前述した本実施形態2に係る超音波計測方法により、第1受信信号Sを求める必要がある。
【0210】
また、実測用超音波センサ組210を基準箔65の配置位置まで移動させ、実測用超音波センサ組210により、第1超音波センサ211から送波した超音波USを基準箔65に透過させ、第2超音波センサ212で受波した超音波USの第3受信信号S(図9(b)に示すSに相当)を取得する。このとき、この第3受信信号Sを取得するのに、本実施形態2に係る超音波計測方法は、第1超音波センサ211から送波した超音波USを、基準箔65内の複数の所定部位C1〜C5(超音波透過部位C1〜C5)に透過させ、第2超音波センサ212で受波した超音波USの受信信号として、第3サンプル受信信号SY1〜SY5を、基準箔65内の5つの超音波透過部位C1〜C5で取得する。そして、第3受信信号Sは、この5つ(複数)の第3サンプル受信信号SY1〜SY5に基づいて、演算処理されて取得される。
【0211】
具体的に、図19、図20、及び図22を用いて説明する。図22は、実施形態2に係る超音波計測方法において、第3サンプル受信信号を模式的に示す説明図である。
【0212】
本実施形態2に係る超音波計測方法では、基準箔65を用いて、校正用超音波センサ組220と実測用超音波センサ組210との機差を確認調査するときには、前述したように、まず第1受信信号Sを、5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5に基づいて、最小二乗法により演算処理して取得しておく。なお、第1サンプル受信信号SK1〜SK5を取得するのに超音波USを透過させる超音波透過部位C1〜C5と、第3サンプル受信信号SY1〜SY5を取得するのに超音波USを透過させる超音波透過部位C1〜C5とが、同じ部位であることが好ましい。実測用超音波センサ組210と校正用超音波センサ組220との間で、超音波センサの機差の確認をより精度良く行うためである。
【0213】
次に、実測用超音波センサ組210において、図19に示すように、第1超音波センサ211から送波した超音波USを、基準箔65内にある5つの超音波透過部位C1〜C5(複数の部位)に向けて透過させる。すなわち、基準箔65の配置位置まで移動させた実測用超音波センサ組210では、第1超音波センサ211は上側スライド軸55Aの所定位置に停止させ固定された状態にあり、第2超音波センサ212も、第1超音波センサ211と対向する位置で、第1超音波センサ211の中心と第2超音波センサ212の中心とを結ぶ仮想線M上にある位置に停止され、下側スライド軸55Bに固定された状態にある。
【0214】
そこで、駆動手段280とロータリーエンコーダ290を作動させ、基準箔保持部材270の開口部274のセットされた基準箔65を回転運動させる。このとき、基準箔保持部材270に保持された基準箔65は、中心G1を中心に基準箔保持部材270と相対的に回転するが、開口部中心点G2が基準箔保持部材270の中心G1と偏心し、基準箔中心点Hが基準箔保持部材270の開口部274内に存在している。そのため、基準箔保持部材270の回転により、第1超音波センサ211の中心と第2超音波センサ212の中心とを結ぶ仮想線Mが、基準箔中心点Hとする円で、所望とする5つの超音波透過部位C1〜C5の中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aを通る軌跡のピッチ円R上を通過する。
【0215】
本実施形態2に係る超音波計測方法では、基準箔65内のうち、5つの超音波透過部位C1〜C5(複数の部位)で、実測用超音波センサ組210により超音波USを基準箔65に透過させるため、基準箔保持部材270の回転中、仮想線Mがピッチ円Rのうち、中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aの順にそれぞれ到達したところで、一時的にモータ281の回転を停止させる。モータ281の回転は、前述したように、ロータリーエンコーダ290により、中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aにそれぞれ相当する基準箔保持部材270の周方向の位置を検出して、この位置で停止される。
【0216】
そして、第1超音波センサ211の中心と第2超音波センサ212の中心とを結ぶ仮想線Mが、中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aと交差する位置で、第1超音波センサ211から送波した超音波USを、基準箔65に向けて透過させる。仮想線Mが中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aにそれぞれ交差したところで、第1超音波センサ211から送波した超音波USは、超音波透過部位C1〜C5(複数の部位)に向けて透過され、第2超音波センサ212で受波した超音波の受信信号として、5つの第3サンプル受信信号SY1〜SY5(図22参照)が取得される。すなわち、第3サンプル受信信号SY1は、超音波透過部位C1を透過した超音波USの受信信号である。第3サンプル受信信号SY2は、超音波透過部位C2を透過した超音波USの受信信号である。第3サンプル受信信号SY3は、超音波透過部位C3を透過した超音波USの受信信号である。第3サンプル受信信号SY4は、超音波透過部位C4を透過した超音波USの受信信号である。第3サンプル受信信号SY5は、超音波透過部位C5を透過した超音波USの受信信号である。かくして、第3受信信号Sが、これら5つの第3サンプル受信信号SY1〜SY5に基づいて、最小二乗法により演算処理されて取得される。
【0217】
ここで、空気層を伝播する超音波と、この空気層の状態との関係について、例示する校正用超音波センサ組220を用いて説明する。
第1校正用超音波センサ221の第1振動面221aと基準箔65との間の空気層ARや、第2校正用超音波センサ222の第2振動面222aと基準箔65との間の空気層ARでは、厳密に言えば、空気層ARの密度、空気層ARの温度、及び空気層ARの対流の状態が、時々刻々と変化している。勿論、これ等の空気層ARの状態は、厳密に言えば、実測用超音波センサ組210のある場所と、校正用超音波センサ組220のある場所とで、異なっている。
【0218】
ところで、実施形態1で前述したように、空気層ARの密度や温度等の状態が変化すると、空気層ARにおいて音速、密度、音響インピーダンス、及び伝播する超音波USの波長等が、空気層ARの温度変化に伴い、パラメータとして変化してしまうことが分かっている。特に、空気層ARの温度が1℃変化するだけで、受波側超音波センサの受信信号強度が、その基準となる受信信号強度に対し、約0.2%変化することが、これまでの出願人の調査で判っている。その上でさらに、出願人は、空気層ARの気圧の変化と、受波側超音波センサにおいて、空気層ARを伝播し受波した超音波の受信信号強度との関係について、調査を行った。
【0219】
調査は、受波する超音波が伝播する空気層の環境を、25℃の一定温度に設定された恒温室内とし、公称周波数40KHzの受波側超音波センサをサンプル数3、受波した超音波の受波周波数を100Hz(10μsで1回の頻度で受波)、調査期間を1日当たり24時間連続で1ヶ月間継続とした。
【0220】
図23に、受波側超音波センサについて、空気層の気圧と、受波した超音波の受信信号強度との関係について、調査した結果のグラフを示す。なお、図23は、大気圧として一般的に用いられる気圧1013hPaのときの受信信号強度を100%とし、横軸を「気圧(hPa)」、縦軸を、受波側超音波センサの受信信号強度である「超音波透過信号量」としている。また、調査で取得されたデータを、最小二乗法による演算処理(Y=0.1779X−80.195 R=0.9959)を施して処理している。
【0221】
図23に示す調査結果から、空気層ARの気圧が1hPa変化するだけで、受波側超音波センサの受信信号強度が、その基準となる受信信号強度に対し、約0.2%変化することが判る。つまり、空気層ARにおける密度、温度のほかに、気圧等の状態が変化すると、空気層ARにおいて音速、密度、音響インピーダンス、及び伝播する超音波USの波長等が、厳密に言えば、空気層ARの状態変化に伴い、時々刻々とパラメータとして変化していることを意味する。勿論、これ等の空気層ARの状態は、厳密に言えば、実測用超音波センサ組210のある場所と、校正用超音波センサ組220のある場所とでも、異なっている。
【0222】
そのために、目付け量計測を行う度に、その都度、5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5を取得して、目付け量計測の条件をリアルタイムに補正し更新して、精度の高い第1受信信号Sを用いることが重要となってくる。勿論、基準箔65を用いて、校正用超音波センサ組220と実測用超音波センサ組210との機差を確認調査する度に、第3受信信号Sが、これら5つの第3サンプル受信信号SY1〜SY5に基づいて、最小二乗法により演算処理され取得されるのも、空気層ARの状態変化が時々刻々とパラメータとして変化し、このことを目付け量計測に反映させるために行うものである。
【0223】
前述した構成を有する本実施形態2に係る超音波計測方法、及び超音波計測装置の作用・効果について説明する。
【0224】
本実施形態2に係る超音波計測方法では、実施形態1と同様、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212とが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62を塗布した電極60の厚み方向Zに対し、一方側に第1超音波センサ211を、他方側に第2超音波センサ212を、それぞれ空気層ARを介して配置し、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212との間で超音波USを伝播させることにより、電極ペースト62の厚み(目付け量)を計測する超音波計測方法において、超音波センサ組として、電極ペースト62の目付け量を計測する実測用超音波センサ組210を少なくとも1組と、第1超音波センサ211及び第2超音波センサ212とは別で、一対の第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222とからなる校正用超音波センサ組220とを有し、電極ペースト62の厚みの計測時に、校正用超音波センサ組220でキャリブレーションを行うと共に、校正用超音波センサ組220で得られた計測条件値を用いて、実測用超音波センサ組210により、電極ペースト62の目付け量を算出するので、電池製造工程において、金属箔61に電極ペースト62を塗布して電極60を製造する製造ラインのインライン上で、電極ペースト62等、電極ペースト62の厚みを計測する場合に、実測時に、超音波センサの自己発熱や空気層ARの温度変化に起因した計測精度の誤差要因を排除して、電極ペースト62の厚みをより高精度に計測することができる。
【0225】
従って、実施形態1と同様、本実施形態2に係る超音波計測方法によれば、超音波センサ211,212,221,222の自己発熱や空気層ARの温度変化に起因した計測精度の誤差要因が排除できるため、製造ラインで製造される電極60に対し、その塗布された電極ペースト62の目付け量(厚み)を、インライン上で高精度に計測することができる、という優れた効果を奏する。
【0226】
また、このような本実施形態2に係る超音波計測方法では、第1校正用超音波センサ221から送波した超音波USを、基準箔65に透過させ、第2校正用超音波センサ222で受波した超音波USの受信信号として、第1サンプル受信信号SK1〜SK5を、基準箔65内の5つの超音波透過部位C1〜C5で取得すること、第1受信信号Sは、5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5に基づいて演算処理された信号であること、を特徴とするので、基準箔65を用いて、校正用超音波センサ組220によりキャリブレーションを行うときに、基準箔65を透過する超音波USの減衰率(第1サンプル受信信号SK1〜SK5)に、基準箔65内の超音波透過部位C1、C2、C3、C4、C5によってバラツキがある場合でも、信頼性がより高い最適な大きさの第1受信信号Sが得られる。
【0227】
すなわち、厳密に言えば、第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222との間に配置した1つの基準箔65において、校正用超音波センサ組220により超音波USが透過する部位が異なると、例えば、参照する前述の式6、式8、式10において、SKA≠SKB≠Sや、SKA≒SKB≠Sとなる場合等のように、超音波USの減衰率(第1サンプル受信信号SK1〜SK5)にバラツキが生じることがある。校正用超音波センサ組220によりキャリブレーションを行うときに、基準箔65を透過する部位によって、超音波USの減衰率にバラツキがあると、第1受信信号Sに係る信頼性が低下してしまい、実測用超音波センサ組220に反映させる計測条件値が、より高精度に得られない。
【0228】
これに対し、本実施形態2の超音波計測方法では、第1サンプル受信信号SK1〜SK5が、基準箔65内の5つの超音波透過部位C1〜C5で取得され、第1受信信号S(基準箔を透過する超音波の減衰率)が、得られた5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5に基づき、最小二乗法等の演算処理により、得られた信号である。そのため、第1受信信号Sは、信頼性がより高い最適な大きさの信号となる。特に、実測用超音波センサ組220により電極60(電極ペースト62)の厚み(目付け量)を計測し算出する毎に、第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222との間を超音波USが伝播する空気層ARに対し、その温度、密度、及び気圧を計測したその各データが、電極ペースト62の厚みの計測毎に補正されることが好ましい。上記各データが電極ペースト62の目付け量を算出する毎に補正された状態で、その都度、第1受信信号Sが取得されれば、第1受信信号Sは、より信頼性の高い信号で、高精度に維持されたままの信号とすることができる。
【0229】
また、基準箔65を透過する超音波USの減衰率が、信頼性がより高く、高精度に得ることができることから、実測用超音波センサ組210により電極ペースト62の厚み(目付け量)を計測し算出するときに、高精度に取得できた第1受信信号Sが、第2受信信号Sと共に、実測用超音波センサ組210の計測条件値に反映されて、電極ペースト62の厚み(目付け量)が一層高精度に算出することができる。
【0230】
また、このような本実施形態2に係る超音波計測方法では、第1超音波センサ211から送波した超音波USを、基準箔65に透過させ、第2超音波センサ212で受波した超音波USの受信信号として、第3サンプル受信信号SY1〜SY5を、基準箔65内の5つの超音波透過部位C1〜C5で取得すること、第3受信信号Sは、5つの第3サンプル受信信号SY1〜SY5に基づいて演算処理された信号であること、を特徴とするので、基準箔65を用いて、校正用超音波センサ組220と実測用超音波センサ組210との機差を確認するときに、基準箔65を透過する超音波USの減衰率(第3サンプル受信信号SY1〜SY5)に、基準箔65内の超音波透過部位C1、C2、C3、C4、C5によってバラツキがある場合でも、信頼性がより高い最適な大きさの第3受信信号Sが得られる。第3受信信号S(基準箔65を透過する超音波の減衰率)は、得られた5つの第3サンプル受信信号SY1〜SY5に基づき、最小二乗法等の演算処理により得られた信号であるため、複数の第3サンプル受信信号SY1〜SY5にバラツキが存在していても、信頼性がより高い最適な大きさの信号となるからである。
【0231】
特に、校正用超音波センサ組220についても、第1受信信号Sが、基準箔65内の5つの超音波透過部位C1〜C5から取得した5つの第1サンプル受信信号SK1〜SK5に基づいて処理された信号であることが好ましい。そして、このような第1受信信号Sと、第3受信信号Sとから、校正用超音波センサ組220と実測用超音波センサ組210との機差を確認する調査が行われれば、上記機差に係る調査結果がより高精度に得ることができる。
【0232】
また、このような本実施形態2に係る超音波計測装置201では、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212とが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属箔61の両面61a,61bに電極ペースト62を塗布した電極60の厚み方向Zに対し、一方側に第1超音波センサ211を、他方側に第2超音波センサ212を、それぞれ空気層ARを介して配置し、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212との間で超音波USを伝播させることにより、電極ペースト62の厚み(目付け量)を計測する超音波計測装置201において、超音波センサ組として、電極ペースト62の厚みを計測する実測用超音波センサ組210を少なくとも1組と、第1超音波センサ211及び第2超音波センサ212とは別で、一対の第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222とからなる校正用超音波センサ組220とを有し、実測用超音波センサ組210は、電極ペースト62の目付け量の計測時に、校正用超音波センサ組220によるキャリブレーションで得られた計測条件値に基づいて、超音波USを送受信するので、電池製造工程において、金属箔61に電極ペースト62を塗布して電極60を製造する製造ラインのインライン上で、電極ペースト62等、電極ペースト62の厚みを計測する場合に、実測時に、超音波センサ211,212,221,222の自己発熱や空気層ARの温度変化に起因した計測精度の誤差要因を排除して、電極ペースト62の厚みをより高精度に計測することができる。
【0233】
また、第1,第2超音波センサ211,212と第1,第2校正用超音波センサ221,222とが、共に同じタイミングで作動していれば、たとえ第1,第2超音波センサ211,212が作動時間の経過と共に自己発熱しても、第1,第2超音波センサ211,212と同様、第1,第2校正用超音波センサ221,222も自己発熱する。このとき、自己発熱した第1,第2超音波センサ211,212の温度と、自己発熱した第1,第2校正用超音波センサ221,222の温度との相対差はほとんどない。そのため、自己発熱により校正用超音波センサ組220で受波する超音波USの波長の大きさが変化しても、実測用超音波センサ組210でも、受波する超音波USの波長の大きさが、校正用超音波センサ組220と同じように変化する。
よって、実測用超音波センサ組210の波長の大きさと校正用超音波センサ組220の波長の大きさとの相対差はほとんど生じず、校正用超音波センサ組220の第1,第2校正用超音波センサ221,222と、実測用超音波センサ組210の第1,第2超音波センサ211,212とが共に自己発熱しても、計測精度を高精度に維持したまま、電極ペースト62の厚みが計測できる。
【0234】
従って、実施形態1と同様、本実施形態2の超音波計測装置201では、超音波センサ211,212,221,222の自己発熱や空気層ARの温度変化に起因した計測精度の誤差要因が排除できるため、製造ラインで製造される電極60に対し、その塗布された電極ペースト62の厚み(目付け量等)を、インライン上で高精度に計測することができる、という優れた効果を奏する。
【0235】
また、このような本実施形態2に係る超音波計測装置201では、基準箔65を保持する基準箔保持部材270と、基準箔保持部材270を動作させると共に、その動作を停止させる駆動手段280と、を備え、基準箔保持部材270で保持された基準箔65が、駆動手段280により、対向する第1超音波センサ211の中心と第2超音波センサ212の中心とを結ぶ仮想線Mと交差する範囲内で、第1超音波センサ211及び第2超音波センサ222と相対的に移動可能に配置されていること、または対向する第1校正用超音波センサ221の中心と第2校正用超音波センサ222の中心とを結ぶ仮想線Nと交差する範囲内で、第1校正用超音波センサ221及び第2校正用超音波センサ222と相対的に移動可能に配置されていること、を特徴とするので、校正用超音波センサ組220において、第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222との間に配置した1つの基準箔65を用いてキャリブレーションを行う場合に、第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222との間で伝播する超音波USが、本実施形態2では、基準箔65内の5つの超音波透過部位C1〜C5を透過できるようになる。これにより、透過するこの超音波USの減衰率が、1つの基準箔65内において、超音波USが透過する超音波透過部位C1、C2、C3、C4、C5の各部位毎に算出可能になる。
【0236】
また、基準箔65を用いて、校正用超音波センサ組220と実測用超音波センサ組210との機差を確認する場合に、第1超音波センサ211と第2超音波センサ212との間で伝播する超音波USが、基準箔65内の5つの超音波透過部位C1〜C5を透過できるようになる。これにより、透過するこの超音波USの減衰率が、1つの基準箔65内において、超音波USが透過する超音波透過部位C1、C2、C3、C4、C5の各部位毎に算出可能になる。ひいては、校正用超音波センサ組220によるキャリブレーションや、第1校正用超音波センサ221と、第2校正用超音波センサ222と、第1超音波センサ211と、第2超音波センサ212との機差の確認がより高精度に行うことができる。
【0237】
また、このような本実施形態2に係る超音波計測装置201では、動作する基準箔保持部材270に対し、仮想線M、Nが基準箔65内の所定位置である超音波透過部位C1〜C5の中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aに交差する状態に対応する位置を検出するロータリーエンコーダ290を備えていること、を特徴とするので、第1校正用超音波センサ221と第2校正用超音波センサ222との間に配置した基準箔65を用いてキャリブレーションを、複数回繰り返し行う場合に、ロータリーエンコーダ290により、仮想線Nが基準箔65内で交差する超音波透過部位C1〜C5の超音波透過部位C1の中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aが、キャリブレーションを行うサイクル毎に、同じ位置に設定することができる。ひいては、信頼性の高いキャリブレーションが実現できる。また、校正用超音波センサ組220と実測用超音波センサ組210との機差を、複数回繰り返し確認する場合に、ロータリーエンコーダ290により、仮想線M、Nが基準箔65内で交差する超音波透過部位C1の中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aが、機差の確認を行うサイクル毎に、同じ位置に設定することができる。ひいては、校正用超音波センサ組220と実測用超音波センサ組210との機差調査が信頼性を高くして行うことができる。
【0238】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0239】
(1)例えば、実施形態1では、実測用超音波センサ組10に対し、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12とを、電極60を挟んで配置し、第1超音波センサ11と第2超音波センサ12との間で、電極60を透過した超音波(透過波)の受信信号に基づいて、電極60の目付け量を算出した。
同様に、校正用超音波センサ組20に対しては、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とを、基準箔65を挟んで配置し、この基準箔65を用いて、第1校正用超音波センサ21と第2校正用超音波センサ22とによりキャリブレーションを行った。
【0240】
しかしながら、実測用超音波センサ組と校正用超音波センサ組とに用いる超音波センサは、それぞれ3つの超音波センサを1セットとした超音波計測装置でも良い。具体的に、図15を用いて説明する。図15は、変形形態に係る超音波計測装置の構成を説明する模式図である。
超音波計測装置101では、図15に示すように、実測用超音波センサ組10に、第1,第2超音波センサ11,12のほか、第3超音波センサ13と、校正用超音波センサ組20に、第1,第2校正用超音波センサ21,22のほか、第3校正用超音波センサ23とが設けられている。第1超音波センサ11及び第1校正用超音波センサ21は、上側第1スライド軸155Aに取り付け、第3超音波センサ13及び第3校正用超音波センサ23は、上側第2スライド軸155Cに取り付けられている。第2超音波センサ11及び第2校正用超音波センサ22は、下側スライド軸155Bに取り付けられている。
【0241】
第1超音波センサ11及び第1校正用超音波センサ21と、第3超音波センサ13及び第13校正用超音波センサ23とを、空気層を介して電極60の一方側(図15中、上側)に配置する。具体的な配置位置として、超音波が、第1超音波センサ11と第3超音波センサ13との間で、及び第1校正用超音波センサ21と第3校正用超音波センサ23との間で、それぞれ正反射する位置に配置する。
第2超音波センサ12及び第2校正用超音波センサ22を、空気層を介して電極60の他方側(図15中、下側)に、第1超音波センサ11及び第1校正用超音波センサ21の軸心方向Zに向けて電極60を透過した位置に配置する。
【0242】
このように、実測用超音波センサ組と校正用超音波センサ組とにそれぞれ、3つの超音波センサを1セットに配置すると、電極60の一面側の電極ペースト(塗布材)の厚みは、第3超音波センサ13で受波した超音波の横波による受信信号に基づいて、計測することができる。これと同時に、電極60の他面側の電極ペーストの厚みも、第2超音波センサ12で受波した超音波の縦波による受信信号に基づいて計測することができる。そのため、電極60の両面側の電極ペーストの厚み(目付け量)を計測する設備の簡素化を図ることができる。
勿論、実施形態1と同様、第1,第2,第3校正用超音波センサ21,22,23による第1,第2,第3超音波センサ11,12,13のキャリブレーションや、第1,第2,第3超音波センサ11,12,13と第1,第2,第3校正用超音波センサ21,22,23との機差による誤差要因も排除することができる。
【0243】
(2)実施形態2では、ロータリーエンコーダ290により、仮想線M、Nが基準箔65内の所定位置である超音波透過部位C1〜C5の中心C1a、C2a、C3a、C4a、C5aに交差する状態に対応する位置を検出した。しかしながら、駆動手段に構成されるモータに、ロータリーエンコーダを内蔵したサーボモータが用いられ、サーボモータの回転量が検出されれば、位置決め手段を用いなくても、仮想線が基準箔内の所定位置に交差する状態に対応する位置は、検出できる。
【0244】
(3)実施形態2では、第1超音波センサ211(または第2校正用超音波センサ221)から送波し、第2超音波センサ212(または第2校正用超音波センサ222)で複数の第1サンプル受信信号SK1等(または第3受信信号S等)を得るのに、駆動手段280により、基準箔保持部材270で保持された基準箔65を回転運動させて、超音波透過部位C1〜C5で超音波が透過するようにした。
しかしながら、実施形態1のように、基準箔65を固定したまま、上側スライド軸55A及び下側スライド軸55Bに沿って、実測用超音波センサ組10(または校正用超音波センサ組20)を、実測用超音波センサ組10(または校正用超音波センサ組20)から伝播された超音波が基準箔65を透過可能な範囲内で移動させても良い。これにより、駆動手段を設けなくても、基準箔65内で、一列状に並ぶ複数の部位で、第1サンプル受信信号SK1等や第3サンプル受信信号SY1等を取得することができる。
【0245】
(4)実施形態2では、基準箔65を、基準箔保持部材270で保持して、駆動手段280により回転させて、複数の第1サンプル受信信号SK1等や、複数の第3サンプル受信信号SY1等を取得した。勿論、実測用超音波センサ組及び校正用超音波センサ組を構成する超音波センサの周波数帯が実施形態2と異なる実施形態1においても、基準箔を、保持部材で保持して、駆動手段により回転させて、複数の第1サンプル受信信号や、複数の第3サンプル受信信号等を取得できる超音波計測装置としても良い。
【0246】
(5)実施形態2では、実測用超音波センサ組210及び校正用超音波センサ組220において、校正センサ用カバー(または実測センサ用カバー)を設けなかったが、実施形態1のように、校正センサ用カバーを校正用超音波センサ組の第1,第2校正用超音波センサそれぞれに、実測センサ用カバーを、実測用超音波センサ組の第1,第2超音波センサそれぞれに、設けることがより好ましい。
【0247】
(6)実施形態2では、超音波を、正方形形状の基準箔65内に、ピッチ円Rの軌跡上に位置する5つの超音波透過部位C1〜C5に透過させて、キャリブレーションや機差の調査を行ったが、基準箔の形状ほか、基準箔内において、超音波を透過させる部位の数や位置については、実施形態1,2に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0248】
1,101,201 超音波計測装置
5,205 超音波計測制御部(制御手段)
10,210 実測用超音波センサ組
11,211 第1超音波センサ
11a,21a,211a,212a 第1振動面(超音波振動面)
12,212 第2超音波センサ
13 第3超音波センサ
12a,22a,221a,222a 第2振動面(超音波振動面)
20,220 校正用超音波センサ組
21,221 第1校正用超音波センサ
22,222 第2校正用超音波センサ
23 第3校正用超音波センサ
31 実測センサ用カバー
31A 実測センサ用内筒側カバー
31B 実測センサ用外筒側カバー
32 校正センサ用カバー
32A 校正センサ用内筒側カバー
32B 校正センサ用外筒側カバー
60 電極(塗布製品)
61 金属箔(基材)
61a,61b両面
62 電極ペースト(塗布材)
65 基準箔
270 基準箔保持部材(保持部材)
280 駆動手段
290 位置決め手段
X 長手方向
Y 幅方向
Z 厚み方向
AR 空気層
US 超音波
L1 第1位置
L2 第2位置
L3,L3A,L3B 第3位置
第1受信信号
K1,SK2,SK3,SK4,SK5 第1サンプル受信信号
第2受信信号
第3受信信号
Y1,SY2,SY3,SY4,SY5 第3サンプル受信信号
M,N 仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1超音波センサと第2超音波センサとが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属製の基材の片面または両面に塗布材を塗布した塗布製品の厚み方向に対し、一方側に前記第1超音波センサを、他方側に前記第2超音波センサを、それぞれ空気層を介して配置し、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、前記塗布材の厚みを計測する超音波計測方法において、
前記超音波センサ組として、前記塗布材の厚みを計測する実測用超音波センサ組を少なくとも1組と、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサとは別で、一対の第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとからなる校正用超音波センサ組とを有し、
前記塗布材の厚みの計測時に、前記校正用超音波センサ組でキャリブレーションを行うと共に、前記校正用超音波センサ組で得られた計測条件値を用いて、前記実測用超音波センサ組により、前記塗布材の厚みを算出すること、
を特徴とする超音波計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載する超音波計測方法において、
前記校正用超音波センサ組では、前記第1校正用超音波センサと前記第2校正用超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び
前記実測用超音波センサ組では、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、
を特徴とする超音波計測方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する超音波計測方法において、
前記校正用超音波センサ組では、前記実測用超音波センサ組による実測前に、前記第1校正用超音波センサと前記第2校正用超音波センサとの間に、キャリブレーションで用いる基準箔を配置し、前記第1校正用超音波センサから送波した超音波を前記基準箔に透過させ、前記第2校正用超音波センサで受波した超音波の第1受信信号を、前記計測条件値として予め取得すること、
前記実測用超音波センサ組では、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとの間で前記塗布製品を透過した超音波の第2受信信号を取得すること、
前記塗布材の厚みは、前記第1受信信号と前記第2受信信号との相対比により算出すること、
を特徴とする超音波計測方法。
【請求項4】
請求項3に記載する超音波計測方法において、
前記第1校正用超音波センサから送波した超音波を、前記基準箔に透過させ、前記第2校正用超音波センサで受波した超音波の受信信号として、第1サンプル受信信号を、前記基準箔内の複数の部位で取得すること、
前記第1受信信号は、前記複数の第1サンプル受信信号に基づいて処理された信号であること、
を特徴とする超音波計測方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載する超音波計測方法において、
前記実測用超音波センサ組を前記基準箔の配置位置まで移動させ、前記実測用超音波センサ組により、前記第1超音波センサから送波した超音波を前記基準箔に透過させ、前記第2超音波センサで受波した超音波の第3受信信号を取得すること、
を特徴とする超音波計測方法。
【請求項6】
請求項5に記載する超音波計測方法において、
前記第1超音波センサから送波した超音波を、前記基準箔に透過させ、前記第2超音波センサで受波した超音波の受信信号として、第3サンプル受信信号を、前記基準箔内の複数の部位で取得すること、
前記第3受信信号は、前記複数の前記第3サンプル受信信号に基づいて処理された信号であること、
を特徴とする超音波計測方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載する超音波計測方法において、
前記第1校正用超音波センサ及び前記第2校正用超音波センサと、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサとは、それぞれ同期して超音波を送受信していること、
を特徴とする超音波計測方法。
【請求項8】
第1超音波センサと第2超音波センサとが一対の超音波センサ組を有し、ロール状に捲回されていた金属製の基材の片面または両面に塗布材を塗布した塗布製品の厚み方向に対し、一方側に前記第1超音波センサを、他方側に前記第2超音波センサを、それぞれ空気層を介して配置し、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、前記塗布材の厚みを計測する超音波計測装置において、
前記超音波センサ組として、前記塗布材の厚みを計測する実測用超音波センサ組を少なくとも1組と、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサとは別で、一対の第1校正用超音波センサと第2校正用超音波センサとからなる校正用超音波センサ組とを有し、
前記実測用超音波センサ組は、前記塗布材の厚みの実測時に、前記校正用超音波センサ組によるキャリブレーションで得られた計測条件値に基づいて、超音波を送受信すること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項9】
請求項8に記載する超音波計測装置において、
前記校正用超音波センサ組では、前記第1校正用超音波センサと前記第2校正用超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、及び
前記実測用超音波センサ組では、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとに、超音波の伝播がフラットタイプの超音波センサを用いること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載する超音波計測装置において、
前記校正用超音波センサ組及び前記実測用超音波センサ組に対し、超音波の送受信と計測条件とを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記校正用超音波センサ組による前記計測条件値を、前記実測用超音波センサ組にフィードバックすること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、
キャリブレーションで用いる基準箔が、前記塗布製品と共に配置され、
前記校正用超音波センサ組が、前記基準箔が配置されている第1位置と、前記第1位置から外れ、前記第1校正用超音波センサと前記第2校正用超音波センサとの間に空気層だけが存在する第2位置との範囲を、少なくとも移動可能に設けられていること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項12】
請求項11に記載する超音波計測装置において、
前記基準箔を保持する保持部材と、前記保持部材を動作させると共に、その動作を停止させる駆動手段と、を備え、
前記保持部材で保持された前記基準箔が、前記駆動手段により、
対向する前記第1超音波センサの中心と前記第2超音波センサの中心とを結ぶ仮想線と交差する範囲内で、前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサと相対的に移動可能に配置されていること、または
対向する前記第1校正用超音波センサの中心と前記第2校正用超音波センサの中心とを結ぶ仮想線と交差する範囲内で、前記第1校正用超音波センサ及び前記第2校正用超音波センサと相対的に移動可能に配置されていること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項13】
請求項12に記載する超音波計測装置において、
動作する前記保持部材に対し、前記仮想線が前記基準箔内の所定部位に交差する状態に対応する位置を検出する位置決め手段を備えていること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項14】
請求項11乃至請求項13のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、
前記実測用超音波センサ組が、前記第1位置と、前記第1位置から外れ、前記塗布製品が配置されている第3位置との範囲を少なくとも移動可能に設けられていること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項15】
請求項11乃至請求項14のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、
捲回されている前記基材は長尺状であり、前記基材の長辺に沿う長手方向及び前記基材の厚み方向に直交する方向を、前記基材の幅方向としたときに、
前記基準箔は、前記塗布製品と前記幅方向に並んで配置され、
前記校正用超音波センサ組と前記実測用超音波センサ組とが、それぞれ前記幅方向に沿う方向に移動すること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項16】
請求項11乃至請求項15のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、
前記校正用超音波センサ組には、前記第1校正用超音波センサと前記第2校正用超音波センサとに対し、超音波振動面と前記基準箔との間の空気層を包囲する筒状の校正センサ用カバーが設けられていること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項17】
請求項8乃至請求項16のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、
前記実測用超音波センサ組には、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとに対し、超音波振動面と前記塗布製品との間の空気層を包囲する筒状の実測センサ用カバーが設けられていること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載する超音波計測装置において、
前記校正センサ用カバー及び前記実測センサ用カバーは、内筒側カバーと、前記内筒側カバーより外側に位置する外筒側カバーとの2重構造で形成され、
前記外筒側カバーは、前記基準箔または前記塗布製品と前記内筒側カバーよりも離れるよう、前記基材の厚み方向に沿う方向に対し、前記内筒側カバーより短く形成されていること、
を特徴とする超音波計測装置。
【請求項19】
請求項8乃至請求項18のいずれか1つに記載する超音波計測装置において、
前記基材は、前記塗布製品である電池の電極に用いる金属箔であり、前記塗布材は、前記金属箔に塗布された電極ペーストであること、
を特徴とする超音波計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−215561(P2012−215561A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47543(P2012−47543)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】