説明

超音波診断教育用シミュレーション装置

【課題】実際の超音波診断における検体と同様の体位で行えるとともに同様の感覚でシミュレーションを行うことができ、携帯性に優れた超音波診断教育用シミュレーション装置を提供する。
【解決手段】胸部および/または腹部の所定位置に磁気を感知する磁気センサが埋設されるとともに光を発する発光部を具える中空の上半身人体模型と、内部に磁石、押圧力を感知する感圧センサ、回転角度を検出するジャイロセンサ、光を感知する受光部および傾斜角度を検出する3軸センサを具える擬似プローブと、心エコーおよび/または腹部エコーの平面実画像データを記憶する記憶部と、各センサから送られる情報を基に擬似プローブの空間位置を演算し、記憶部から該擬似プローブの空間位置に対応する平面実画像データを読み出す演算部と、平面画像データを表示する表示部と、からなる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹部超音波診断法および経胸壁心臓超音波診断法を習得するための教育用シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、心臓や腹部の疾患の診断には超音波診断装置が最も多く使用されているが、医師や検査技師が超音波診断装置を操作して検査を行い、的確な超音波診断を行うことができるようになるまでには、多くの訓練と経験が必要とされる。ことに、超音波プローブの操作には、熟練した技術が要求され、操作者は、超音波プローブを検体に当てる位置、角度および接触圧力等を微妙に調節しながら撮像しなくてはならない。
【0003】
一方で、超音波診断装置は高度化されていることもあって高価であり、加えて、所定の心臓疾患や内蔵疾患を有する検体を得ることは困難である。さらに、超音波診断画像は透過画像と異なり反射画像であることから、読映に学習と経験を必要とするが故に、医学教育の場においては、実際に使用される超音波診断装置に代えて教育用シミュレーション装置が益々多く使われる傾向にある。
【0004】
ところで、超音波診断に関する教育用シミュレーション装置における必須の技術要素として、超音波プローブの位置検出技術がある。
この位置検出技術には空間位置センサが使用されるが、従来から使用されている空間位置センサとして、たとえば、磁気を利用した磁気空間センサがある。この磁気空間センサは、磁束の変化によって、コイルに起電力が生ずるという原理を利用しているが、装置が高価であり、付近に磁性体があるとそれが直ちに誤差に結びつく、などの欠点がある。
【0005】
このような事情を背景に、磁気空間センサに頼らない超音波診断に関する教育用シミュレーション装置が提案されていて、たとえば、特開2002−336247号公報に開示の技術がある。
この技術は、発明の名称「画像表示装置及び画像表示方法」に係り、「実際の超音波診断におけるのと同様の感覚で操作訓練を行うことができる画像表示装置を提供する」ことを課題解決としていて、「超音波プローブを模した形状を有し画像の表示範囲を指示するために用いる疑似プローブと、疑似プローブを接触させるための人体表面を模した形状を有し疑似プローブの接触位置を検出する疑似体表と、人体内部の3次元画像データを記憶する画像メモリと、表示すべき人体の断層像の範囲を算出する表示範囲算出部と、表示範囲算出部が算出した範囲に対応する画像信号を生成するエコー信号生成部及び信号処理部と、生成された画像信号に基づいて画像を表示する表示部とを具備する」という構成により、この課題解決を図ったものであるが、疑似プローブの疑似体表に対する傾きを検出する傾き検出手段を、疑似プローブに備えられた発光ダイオードと、発光ダイオードから放射される光を撮影するためのステレオテレビカメラとに拠っている。
【0006】
ところで、特開2002−336247号公報に開示の技術は、腹部から超音波診断できる肝臓、腎臓、脾臓などを対象とするものであり、擬似プローブの位置検出に要求される精度は、心臓を対象とするものほどには高い精度が要求されることはなく、この技術をそのまま心エコー診断教育装置に使用することはできない。また、位置検出センサとして発光ダイオードとステレオテレビカメラを使用しているのであり、ステレオテレビカメラは実際の超音波診断装置には具えられていないものである上、装置も比較的大きくなるという問題を有するものである。
【0007】
そこで、本願出願人は、心臓を対象とする超音波診断シミュレーション装置であって、実際の超音波診断と同様の感覚でシミュレーションを行うことができ、擬似プローブの位置や傾きを比較的正確に精度よく把握し、さらに、携帯性に優れた心エコー診断教育装置を提供することを目的とした技術を開発し、この技術は、特許4679379号公報に開示されている。
【0008】
特許4679379号公報に開示の技術は、発明の名称「心エコー診断教育装置」に係り、「心臓を対象とする超音波診断シミュレーション装置であって、実際の超音波診断と同様の感覚でシミュレーションを行うことができる心エコー診断教育装置を提供することを目的」としていて、この課題を解決するために「心エコー診断教育装置を、胸部の体表の所定位置に位置センサーが埋設される人体模型と、磁石を内蔵し先端に少なくとも3つの感圧素子からなる感圧センサを具える擬似プローブと、心エコーの立体画像データを記憶する記憶部と、前記各センサーからの情報に基づいて擬似プローブの位置、傾きおよび押圧力を演算し、演算に基づいて立体画像データから平面画像データを切出しする演算部と、切出しされた平面画像データを平面画像として表示する表示部と、からなる構成」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−336247号公報
【特許文献2】特許4679379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許4679379号公報に開示の技術は、記憶部に記憶される心エコーの画像を立体画像としていて、擬似プローブの走査に合わせて演算部でこの立体画像から平面画像を切り出して、表示部に表示するようにしている。
【0011】
記憶部に記憶される立体画像からは容易に平面画像の切り出しと、表示が可能であり、立体画像の特徴として平面画像への切り出しが自由に行える特長の故に、検体上で実超音波プローブの走査によるエコー画像の撮像時には実超音波プローブの空間位置情報の収集を必要としなかった。一方で、立体画像から平面画像の切り出しに当たり画像分解能が低下し、超音波画像診断技術には不可欠な要素であるカラードップラ表示および心機能計測を行えない、という問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、心臓や他の臓器を対象とする超音波診断教育用シミュレーション装置であっても、実際の超音波診断における実人体の体位と同様の体位で行えるとともに同様の感覚でシミュレーションを行うことができ、携帯性に優れ画像分解能が低下することのない装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る超音波診断教育用シミュレーション装置は、胸部および/または腹部の体表の所定位置に磁気を感知する磁気センサが埋設されるとともに光を発する人体模型側発光部、または光を感知する人体模型側受光部を具える中空の上半身人体模型と、先端部に前記人体模型に対する押圧力を感知する感圧センサと磁石を具え、内部に回転角度を検出するジャイロセンサ、前記人体模型側発光部の光を感知するプローブ側受光部または前記人体模型側受光部に光を発するプローブ側発光部、および傾斜角度を検出する3軸センサを具える実超音波プローブを模した擬似プローブと、心エコーおよび/または腹部エコーの平面画像データを記憶する記憶部と、前記感圧センサが感圧を検出することにより、前記磁気センサが検出する前記擬似プローブの前記人体模型上の位置の情報、前記人体模型側受光部または前記プローブ側受光部が検出する該擬似プローブの回転基準位置の情報、前記ジャイロセンサが検出する該擬似プローブの相対的な回転角度の情報、および前記3軸センサが検出する該擬似プローブの傾斜角度の情報を取得し、該人体模型に対する該擬似プローブの空間位置を演算し、前記記憶部に記憶された前記平面画像データの中から該擬似プローブの空間位置に対応する該平面画像データを読み出す演算部と、読み出された前記平面画像データを表示する表示部と、からなる、ことを特徴としている。
また、本願請求項2に係る超音波診断教育用シミュレーション装置は、請求項1に記載の超音波診断教育用シミュレーション装置であって、前記感圧センサ、磁気センサ、ジャイロセンサ、3軸センサ、人体模型側受光部またはプローブ側受光部(以下、これらを総称する場合は「各センサ」という。)が検出する情報は制御部により各センサ毎の情報に区分けされて前記演算部に送られる、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る超音波診断教育用シミュレーション装置は、請求項1または請求項2に記載の超音波診断教育用シミュレーション装置であって、前記人体模型側発光部または前記人体模型側受光部は前記人体模型の頭部側に固着され、該人体模型側発光部または前記プローブ側発光部は変調された赤外線を発する、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る超音波診断教育用シミュレーション装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の超音波診断教育用シミュレーション装置であって、前記平面画像データは検体上で実超音波プローブの走査により撮像した心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データと該実超音波プローブの該検体に対する平面的な位置情報、回転角度情報および傾斜角度情報からなる空間情報とを対応させて前記記憶部に記憶されている、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係る超音波診断教育用シミュレーション装置は、請求項4に記載の超音波診断教育用シミュレーション装置であって、前記心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データは所定時間撮像した動画像データまたは静止画像データである、ことを特徴としている。
そして、本願請求項6に係る超音波診断教育用シミュレーション装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の超音波診断教育用シミュレーション装置であって、前記表示部には前記平面画像データとともに該平面画像データに基づくシェーマが表示される、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上記解決手段により、本発明は以下の効果を奏する。
(1)本発明は、擬似プローブの位置を検出するセンサとして、人体模型の所定位置に埋設される磁気センサおよび発光部(人体模型側発光部またはプローブ側発光部)と受光部(人体模型側受光部またはプローブ側受光部)からなるフォトセンサから構成されている。磁気センサは極めて小さものであるので、実際の超音波診断に際して必要とする箇所に対応する位置に埋設することができ、人体模型の位置や向きに関係なく作動する。さらに、擬似プローブの基準位置を検出するフォトセンサも光を発する発光部が人体模型に具設されているので、人体模型の位置や向きに関係なく作動する。したがって、人体模型を仰臥位の状態に保持する必要はなく、側臥位あるいは座位のような実際の超音波診断に際して必要とする位置や向きとすることができる。なお、発光部が擬似プローブに具設されている場合も同様の効果を奏する。
(2)擬似プローブに内蔵される各センサ(感圧センサ、ジャイロセンサ、発光部と受光部からなるフォトセンサのいずれか一方のセンサ、および3軸センサ)、および制御回路は小型のものを使用しているので、実際の超音波プローブに擬した形状、質量などを有する擬似プローブとすることができる。
(3)平面画像データは検体上で実超音波プローブの走査により撮像した心エコー画像および/または腹部エコー画像の実画像データとし、そのときの実超音波プローブの空間情報を対応させて記憶部に記憶させ、擬似プローブの操作により表示部に表示される心エコー画像および/または腹部エコー画像が実画像であるため、画像分解能が低下することがなく鮮明な画像が表示される。また、実画像データを動画像データとすることにより、超音波画像診断に不可欠なカラードップラ表示や心機能計測(心エコー診断の場合)を行うことができる。
(4)実際の超音波診断装置において表示部に表示された平面画像がどの部位の画像であるかを読み取ることは、初学者にとっては勿論のこと、熟練者にとっても容易なものではないが、平面画像データとともに該平面画像データに基づくシェーマ(線画やデフォルメした図)を表示部に表示することにより、所定情報の読み取りを容易にし、超音波診断における平面画像の読み取り技術の習得も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例に係る超音波診断教育用シミュレーション装置の模式図である。
【図2】実施例に係る超音波診断教育用シミュレーション装置のブロック図である。
【図3】実施例に係る超音波診断教育用シミュレーション装置の各センサの検出項目説明図である。
【図4】実施例に係る超音波診断教育用シミュレーション装置の画像表示フローチャート図である。
【図5】心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データとなる撮像方法説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明を実施するための形態に係る実施例について、図1ないし図4に基づいて説明する。なお、図1ないし図3および図5において、符号1は実施例に係る超音波診断教育用シミュレーション装置、符号10は人体模型、符号11は磁気センサ、符号13は人体模型側発光部、符号15は制御部、符号30は擬似プローブ、符号31は磁石、符号33は感圧センサ、符号35はジャイロセンサ、符号37はプローブ側受光部、符号39は3軸センサ、符号41は制御回路、符号50はパーソナル・コンピュータ、符号51は表示部、符号53は演算部、符号55は記憶部、符号61は検体、符号63は実超音波プローブ、符号65は位置検出用センサユニット、符号67は赤外線発光器、である。
【0017】
まず、実施例に係る超音波診断教育用シミュレーション装置1の構成および作用について、図1ないし図4を基に説明するが、擬似プローブの位置関係の説明では、人体模型を横断する方向をX軸とし、人体模型を縦断する方向であって前記X軸に直交する方向をY軸とし、前記X軸および前記Y軸に直交する方向、すなわち、人体模型を垂直に貫く方向をZ軸として説明する。
【0018】
超音波診断教育用シミュレーション装置1は、主に、人体模型10、擬似プローブ30およびパーソナル・コンピュータ50から構成されている。
【0019】
人体模型10は、頭部を含む上半身を模し、内部が空洞の筐体となっていて、弾力性を有する合成樹脂製で形成されている。そして、人体模型10の筐体内には、複数の磁気センサ11、人体模型側発光部13、および制御部15が設置されている。
【0020】
磁気センサ11は、擬似プローブ30に内蔵される磁石31の磁気を検出する位置センサであって、超音波診断をするときに実際に実超音波プローブを押し当てる所定の位置のそれぞれに配置されて、人体模型10の胸部や腹部に相当する筐体壁の内面に固着されている。そして、磁気センサ11が磁石31の磁気感知情報を後述する演算部53に送付することにより、演算部53は、人体模型10に対する擬似プローブ30の平面上の位置であるX軸およびY軸を座標軸とする座標上の位置(x、y)を取得する。
【0021】
人体模型側発光部13は、人体模型10の下顎部に設置され、胸部方向に向けて38kHzに変調され拡散した赤外線が発せられるようになっていて、発光源には、赤外線LEDが使用されている。なお、人体模型側発光部13の設置位置は、後述するプローブ側受光部37が発した光を受光することができる位置であれば良く、たとえば、仰臥位で使用する場合には肩口近傍に設置すると良い。
【0022】
そして、制御部15は、磁気センサ11、感圧センサ33、ジャイロセンサ35、プローブ側受光部37および3軸センサ39から送られる各データを各センサ毎の情報に区分けして、演算部53に送る役割を担っている。
【0023】
擬似プローブ30は、実際の超音波プローブの形状を模したものであって、先端に感圧センサ33および磁石31を具え、ジャイロセンサ35、フォトセンサの一方であるプローブ側受光部37および3軸センサ39を内蔵している。
【0024】
感圧センサ33は、擬似プローブ30の先端にあって、人体模型10に押し当てられると、擬似プローブ30の中心軸方向の押圧力(Pz)を検出する。そして、ジャイロセンサ35は、擬似プローブ30の相対的な回転角度を検出し、プローブ側受光部37は、人体模型側発光部13から発せられた赤外線を感知することにより、人体模型10に対する擬似プローブ30の基準となる回転角度を検出する。また、3軸センサ39は擬似プローブ30の傾斜角度、すなわち、X軸に対する傾き(Gx)、Y軸に対する傾き(Gy)およびZ軸に対する傾き(Gz)を検出する。
なお、受光部を人体模型10に設置して人体模型側受光部とし、発光部を擬似プローブ30側に設置してプローブ側発光部としても良く、この場合における人体模型側受光部の役割はプローブ側受光部37と同一であり、プローブ側発光部の役割は人体模型側発光部と同一である。
【0025】
そして、感圧センサ33、ジャイロセンサ35、プローブ側受光部37および3軸センサ39のそれぞれにより検出された押圧力(Pz)、相対的な回転角度、基準となる回転角度、X軸に対する傾き(Gx)、Y軸に対する傾き(Gy)およびZ軸に対する傾き(Gz)のデータは、制御回路41を介して制御部15に送られる。
【0026】
パーソナル・コンピュータ50は、表示部51、演算部53および記憶部55を具えている。
そして、記憶部55には、検体上で実超音波プローブの走査により撮像した心エコー画像および/または腹部エコー画像の実画像データであって、実超音波プローブの位置のデータ(x、y)、回転角のデータ(Jθ)、およびX軸、Y軸、Z軸に対する傾きのデータ(Gx、Gy、Gz)と対応させて収納されている。また、演算部53は、人体模型10および擬似プローブ30に設置される各センサから送られる擬似プローブ30の位置データ(x、y)、相対的な回転角度と基準となる回転角度とから算出される絶対的な回転角度(Jθ)、および各軸に対する傾き(Gx、Gy、Gz)のデータから、対応する平面画像データである実画像データを記憶部55から選択し、当該平面画像データを表示部52に送付し平面画像として表示させる。
【0027】
なお、平面画像データの表示に際しては、この平面画像に対応し、擬似プローブ30の各データを伴ったシェーマを表示することとしている。そして、このシェーマもまた記憶部55に収納されている。
【0028】
つぎに、実施例に係る超音波診断教育用シミュレーション装置1の使用形態例について、図4に基づいて順を追って説明する。
【0029】
(1)超音波診断教育用シミュレーション装置1の電源を入れて、人体模型10に擬似プローブ33を当てて押圧すると、演算部53は感圧センサ33から送られる擬似プローブ30の押圧力(Pz)信号を検出し、この押圧力(Pz)が所定値以上であれば、超音波診断教育用シミュレーション装置1が作動する(ステップS1)。
【0030】
(2)演算部53は、複数の磁気センサ11の内、いずれの磁気センサから送られた信号であるかを検出して疑似プローブ30の位置データ(x、y)を取得する(ステップS2)。
【0031】
(3)さらに、演算部53は、ジャイロセンサ35、およびプローブ側受光部37の信号から疑似プローブ30の人体模型10に対する絶対的な回転角データ(Jθ)を取得し(ステップS3)、さらに、3軸センサ39の信号を検出して疑似プローブ30の傾きデータ(Gx、Gy、Gz)を取得する(ステップS4)。
【0032】
(4)演算部53は、取得した疑似プローブ30の(x、y)、(Jθ)、および(Gx、Gy、Gz)データからなる疑似プローブ30の空間位置データを基に、記憶部55から該当する平面画像データを選択する。すなわち、演算部53は、人体模型10および擬似プローブ30に設置される各センサから送られる(x、y)、(Jθ)、および(Gx、Gy、Gz)のデータと実画像データとを対比させて、一致する実画像データを記憶部55から選択する(ステップS5)。
【0033】
(5)さらに、演算部53は、ステップS5で選択した実画像データに対応するシェーマを記憶部55から選択して表示部52に表示させる(ステップS6)。
【0034】
(6)超音波診断教育用シミュレーション装置1の使用を終了する場合は、電源を切れば良いが、さらに、使用を続ける場合には、ステップ1に戻り(ステップS7)、所定箇所を擬似プローブ30で押圧すると、演算部53は感圧センサ33から送られる擬似プローブ30の押圧力(Pz)信号を検出する(ステップS1)。
【0035】
なお、表示部52に表示する平面画像は、時間軸を伴った動画像であるので、カラードップラ表示および心エコー診断の場合には心機能計測を行うことができる。
【0036】
つぎに、心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データの撮像方法を図5に基づいて説明する。
【0037】
心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データの撮像に際しては、位置検出用センサユニット65を添着した実超音波プローブ63を検体61の所定箇所に押し当てるとともに、検体61の頭部側に赤外線発光器67を設置し、この赤外線発光器67からは下半身方向に向けて赤外線を発して位置検出用センサユニット65がその赤外線を受光するようにしている。そして、位置検出用センサユニット65には、赤外線発光器67から発せられた赤外線を感知することにより実超音波プローブ63の基準となる回転角度を検出する受光部、および実超音波プローブ63の相対的な回転角度を検出するジャイロセンサが内蔵されている。なお、実超音波プローブ63は図示外の超音波診断装置を介して図示外のパーソナル・コンピュータに接続され、位置検出用センサユニット65はこのパーソナル・コンピュータに接続されている。
【0038】
超音波診断に係る検査技師が実超音波プローブ63を操作することにより、撮像された心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データは、実超音波プローブ63の中心軸方向の押圧力(Pz)および実超音波プローブ63の傾斜角度、すなわち、X軸に対する傾き(Gx)、Y軸に対する傾き(Gy)およびZ軸に対する傾き(Gz)のデータとともに前記のパーソナル・コンピュータに記録される。さらに、位置検出用センサユニット65が取得した実超音波プローブ63の基準となる回転角度および相対的な回転角度は前記のパーソナル・コンピュータに送られ実超音波プローブ63の検体61に対する絶対的な回転角度が演算されて、この絶対的な回転角度データと実超音波プローブ63の所定箇所データを先に記録した各データ(心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データと実超音波プローブ63の押圧力および傾斜角度のデータ)に同期させて前記のパーソナル・コンピュータに記録する。
そして、記録されたこれらのデータは、パーソナル・コンピュータ50の記憶部55に取り込まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 実施例に係る超音波診断教育用シミュレーション装置
10 人体模型
11 磁気センサ
13 人体模型側発光部
15 制御部
30 擬似プローブ
33 感圧センサ
35 ジャイロセンサ
37 プローブ側受光部
39 3軸センサ
50 パーソナル・コンピュータ
51 表示部
53 演算部
55 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部および/または腹部の体表の所定位置に磁気を感知する磁気センサが埋設されるとともに光を発する人体模型側発光部、または光を感知する人体模型側受光部を具える中空の上半身人体模型と、
先端部に前記人体模型に対する押圧力を感知する感圧センサと磁石を具え、内部に回転角度を検出するジャイロセンサ、前記人体模型側発光部の光を感知するプローブ側受光部または前記人体模型側受光部に光を発するプローブ側発光部、および傾斜角度を検出する3軸センサを具える実超音波プローブを模した擬似プローブと、
心エコーおよび/または腹部エコーの平面画像データを記憶する記憶部と、
前記感圧センサが押圧力を検出することにより、前記磁気センサが検出する前記擬似プローブの前記人体模型上の位置の情報、前記人体模型側受光部または前記プローブ側受光部が検出する該擬似プローブの回転基準位置の情報、前記ジャイロセンサが検出する該擬似プローブの相対的な回転角度の情報、および前記3軸センサが検出する該擬似プローブの傾斜角度の情報を取得し、該人体模型に対する該擬似プローブの空間位置を演算し、前記記憶部に記憶された前記平面画像データの中から該擬似プローブの空間位置に対応する該平面画像データを読み出す演算部と、
読み出された前記平面画像データを表示する表示部と、からなる、ことを特徴とする超音波診断教育用シミュレーション装置。
【請求項2】
前記感圧センサ、磁気センサ、ジャイロセンサ、3軸センサ、人体模型側受光部またはプローブ側受光部(以下、これらを総称する場合は「各センサ」という。)が検出する情報は制御部により各センサ毎の情報に区分けされて前記演算部に送られる、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断教育用シミュレーション装置。
【請求項3】
前記人体模型側発光部または前記人体模型側受光部は前記人体模型の頭部側に固着され、該人体模型側発光部または前記プローブ側発光部は変調された赤外線を発する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波診断教育用シミュレーション装置。
【請求項4】
前記平面画像データは検体上で実超音波プローブの走査により撮像した心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データと該実超音波プローブの該検体に対する平面的な位置情報、回転角度情報および傾斜角度情報からなる空間情報とを対応させて前記記憶部に記憶されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の超音波診断教育用シミュレーション装置。
【請求項5】
前記心エコー画像データおよび/または腹部エコー画像データは所定時間撮像した動画像データまたは静止画像データである、ことを特徴とする請求項4に記載の超音波診断教育用シミュレーション装置。
【請求項6】
前記表示部には前記平面画像データとともに該平面画像データに基づくシェーマが表示される、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の超音波診断教育用シミュレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−141402(P2011−141402A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1532(P2010−1532)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(505476777)エッチ・アール・エス コンサルタントサービス有限会社 (1)
【Fターム(参考)】