超音波診断装置、画像データ表示装置及び3次元画像データ生成方法
【課題】 超音波入射角度に依存する高エコーの影響を低減し良好な3次元画像データを生成する。
【解決手段】 被検体に対して得られたボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する際、ベクトル演算部54は、臓器境界面の法線ベクトルをボクセル値の勾配に基づいて算出し、更に、各ボクセルに対し超音波の送受信方向を示す走査ベクトルを算出する。ボリュームデータ補正部53は、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて特定された高エコーの影響を受けたボクセルをフィルタリング処理して補正し、レンダリング演算部55は、ベクトル演算部54が補正後のボクセル値の勾配に基づいて新たに算出した法線ベクトルと画像データ観測者の視線方向を示す視線ベクトルに基づき補正前のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する。
【解決手段】 被検体に対して得られたボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する際、ベクトル演算部54は、臓器境界面の法線ベクトルをボクセル値の勾配に基づいて算出し、更に、各ボクセルに対し超音波の送受信方向を示す走査ベクトルを算出する。ボリュームデータ補正部53は、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて特定された高エコーの影響を受けたボクセルをフィルタリング処理して補正し、レンダリング演算部55は、ベクトル演算部54が補正後のボクセル値の勾配に基づいて新たに算出した法線ベクトルと画像データ観測者の視線方向を示す視線ベクトルに基づき補正前のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置、画像データ表示装置及び3次元画像データ生成方法に係り、特に、被検体から収集した3次元の超音波データをレンダリング処理して3次元画像データを生成する超音波診断装置、画像データ表示装置及び3次元画像データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、複数の振動素子が配列された超音波プローブを用いて被検体の複数方向に対し超音波送受信を行ない、このとき得られた反射波に基づいて生成した画像データをモニタ上に表示するものである。この装置は、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作で体内の2次元画像や3次元画像をリアルタイムで観測することができるため各種臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
従来、超音波によって被検体の3次元画像データを得るには、振動素子が1次元配列された超音波プローブをその配列方向に対して垂直な方向に移動あるいは回動させながら前記被検体の3次元領域に対し超音波を送受信し、このとき収集された超音波データ(ボリュームデータ)をレンダリング処理して3次元画像データの生成を行なってきた。
【0004】
又、近年では、振動素子が2次元配列された超音波プローブ(2次元アレイ超音波プローブ)が実用化されている。この超音波プローブを用いることにより3次元領域に対する超音波送受信方向の設定は全て電子的な制御で行なうことができるため、ボリュームデータの収集に要する時間が大幅に短縮され、3次元画像データのリアルタイム表示も可能になりつつある。
【0005】
ところで、被検体から収集されたボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する場合、先ず、3次元領域に対する超音波送受信によって得られた受信信号の振幅情報に対して空間的な補間処理を行ない小立方体の集合で構成されたボリュームデータを生成する。次いで、このボリュームデータにおける所定ボクセル及びその周囲ボクセルにおける信号強度(以下では、ボクセル値と呼ぶ。)から算出した勾配値に基づいて当該ボクセルの法線単位ベクトル(以下、法線ベクトルと呼ぶ。)を設定し、更に、画像観察者の視点と当該ボクセルの中心位置を結ぶ線上に視線単位ベクトル(以下、視線ベクトルと呼ぶ。)を設定する。そして、法線ベクトルと視線ベクトルの内積値に基づいて設定されたシェーディング値(臓器等を立体的に表現するための陰影値)と、画像観察者の視点から当該ボクセルまでの距離に基づいて設定された不透明度を用いてボリュームデータを処理することにより臓器表面等の立体的表示が行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−61956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波診断では、超音波の送受信方向が臓器等の境界面に対し垂直となった場合、その信号振幅が特異的に大きな値を示す超音波反射波(以下では、高エコーと呼ぶ。)が受信されることが一般に知られている。そして、この高エコーの影響を含んだボリュームデータの各ボクセルに対して法線ベクトルを算出し、更に、この法線ベクトルと視線ベクトルとの内積値に基づいてレンダリング処理を行なう場合、ボクセル値の勾配に基づいて得られた法線ベクトルの方向と実際の臓器境界面に対する法線方向との間に大きな誤差が発生し、ボリュームデータに対して正確なシェーディングを行なうことが困難になるという問題点が発生する。
【0007】
このような問題点を改善する方法として、臓器境界面の所定部位に対し異なる複数の方向から超音波送受信を行ない、このとき得られた受信信号を加算合成する、所謂、空間コンパウンド法が考えられる。しかしながら、この方法では所定部位に対して複数回の超音波送受信を行なう必要があるため、通常の走査密度でボリュームデータを収集する場合にはその収集に多くの時間を要し、3次元画像データを表示する際のフレーム周波数(単位時間に表示する画像データ枚数)が低下する欠点を有している。
【0008】
又、通常のフレーム周波数を維持するために走査密度を低くして超音波送受信を行なう場合には3次元画像データの画質は劣化する。即ち、複数方向の超音波送受信による空間コンパウンド法では、3次元画像データの時間分解能(フレーム周波数)と空間分解能(走査密度)の何れをも良好な状態に維持したまま高エコーに関わる上述の問題点を改善することはできない。
【0009】
一方、並列同時受信等の技術を適用して受信時のみの空間コンパウンド法を行なう方法では、時間分解能や空間分解能の劣化は生じないが送信方向に依存する高エコーの影響を効果的に排除することは困難であり、又、収集されたボリュームデータの全ての領域に対し一様なフィルタ処理を行なって高エコーの影響を平滑化する方法では、受信時のみの空間コンパウンド法と同様に時間分解能の劣化は発生しないが空間分解能やコントラスト分解能の劣化を招くという問題点を有している。
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検体から収集されたボリュームデータに基づいて3次元画像データを生成する際、臓器境界面等に対する超音波ビームの入射角度に依存する高エコーの影響を時間分解能や空間分解能を劣化させることなく低減することにより良好な3次元画像データを得ることが可能な超音波診断装置、画像データ表示装置及び3次元画像データ生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の超音波診断装置は、被検体の3次元領域に対して超音波を送受信するための振動素子を有した超音波プローブと、前記振動素子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて前記法線ベクトルを補正するベクトル演算手段と、補正された法線ベクトルに基づき、前記ボリュームデータ生成手段が生成したボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成するレンダリング演算手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
又、請求項2に係る本発明の超音波診断装置は、被検体の3次元領域に対して超音波を送受信するための振動素子を有した超音波プローブと、前記振動素子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記ボリュームデータのボクセルに対し法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するベクトル演算手段と、この特定結果に基づいて前記ボリュームデータを補正するボリュームデータ補正手段と、このボリュームデータ補正手段が補正したボリュームデータのボクセルに対し前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルに基づいて、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをレンダリング処理し3次元画像データを生成するレンダリング演算手段とを備えたことを特徴としている。
【0013】
更に、請求項9に係る本発明の画像データ表示装置は、被検体から得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するベクトル演算手段と、この特定結果に基づいて前記ボリュームデータを補正するボリュームデータ補正手段と、このボリュームデータ補正手段が補正したボリュームデータのボクセルに対し前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルに基づいて、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成するレンダリング演算手段と、前記3次元画像データを表示する表示手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
一方、請求項11に係る本発明の3次元画像データ生成方法は、ボリュームデータ生成手段が、被検体に対する超音波の送受信によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するステップと、ベクトル演算手段が、前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するステップと、ボリュームデータ補正手段が、前記ベクトル演算手段の特定結果に基づいて所定領域の前記ボリュームデータを補正するステップと、前記ベクトル演算手段が、補正された前記ボリュームデータのボクセルに対して法線ベクトルを新たに算出するステップと、レンダリング演算手段が、前記ボリュームデータ生成手段が生成したボリュームデータを新たに算出された前記法線ベクトルに基づいてレンダリング処理し3次元画像データを生成するステップとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検体から収集されたボリュームデータに基づいて3次元画像データを生成する際に、臓器境界面等に対する超音波ビームの入射角度に依存する高エコーの影響を時間分解能や空間分解能を劣化させることなく低減することが可能となり、従って、良好な3次元画像データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
以下に述べる本発明の第1の実施例における超音波診断装置では、被検体の3次元領域に対する超音波送受信によって得られたボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する際、臓器境界面の法線方向を示す法線ベクトルをボリュームデータのボクセル値の勾配に基づいて算出し、更に、前記ボリュームデータの各ボクセルに対する超音波の送受信方向を示す走査ベクトルを算出する。
【0018】
次いで、各ボクセルに対して算出した法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定し、このボクセルを中心とした所定領域のボクセル値をフィルタリング処理あるいは階調処理によって補正する。そして、補正後のボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて新たに算出した法線ベクトルと画像データ観測者の視線方向を示す視線ベクトルに基づき補正前のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する。
【0019】
尚、本実施例では、振動素子が2次元配列された所謂2次元アレイ超音波プローブを用いて収集されたボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する場合について述べるが、これに限定されるものではなく、例えば、複数の振動素子が1次元配列された超音波プローブを機械的に移動あるいは回動して得られたボリュームデータに基づいて3次元画像データを生成してもよい。
【0020】
又、上述のボリュームデータはBモードデータに基づいて生成される場合について述べるがカラードプラデータ等の他の超音波データであっても構わない。
【0021】
(装置の構成)
本実施例における超音波診断装置の構成につき図1乃至図6を用いて説明する。尚、図1は、超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2は、この超音波診断装置が備えた送受信部及び受信信号処理部のブロック図を示す。又、図6は、前記超音波診断装置の3次元画像データ生成部が備えたベクトル演算部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示した本実施例の超音波診断装置100は、被検体の3次元領域に対し超音波パルス(送信超音波)を送信し、この送信によって得られた超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)に変換する複数個の振動素子が2次元配列された超音波プローブ3と、前記被検体の所定方向に対して超音波パルスを送信するための駆動信号を前記振動素子に供給し、この振動素子から得られた複数チャンネルの受信信号を整相加算する送受信部2と、整相加算後の受信信号を処理してBモードデータを生成する受信信号処理部4と、超音波の送受信方向単位で得られたBモードデータを用いて3次元画像データを生成する3次元画像データ生成部5を備えている。
【0023】
更に、超音波診断装置100は、上述の3次元画像データ生成部5によって生成された3次元画像データを表示する表示部7と、被検体情報の入力や画像データ生成条件の設定等を行なう入力部8と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部9を備えている。
【0024】
超音波プローブ3は、2次元配列されたN個(N=N1×N2)の図示しない振動素子をその先端部に有し、この先端部を被検体の体表に接触させて超音波の送受信を行なう。又、超音波プローブ3の振動素子の各々は、図示しないNチャンネルの多芯ケーブルを介して送受信部2に接続されている。振動素子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルス(駆動信号)を超音波パルス(送信超音波)に変換し、又、受信時には超音波反射波(受信超音波)を電気的な受信信号に変換する機能を有している。
【0025】
この超音波プローブ3には、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等があり、操作者は診断部位に応じて任意に選択することが可能である。本実施例では、N個の振動素子が2次元配列されたセクタ走査用の超音波プローブ3を用いる場合について述べるが、リニア走査対応やコンベックス走査対応等の超音波プローブであっても構わない。
【0026】
次に、図2に示す送受信部2は、超音波プローブ3の振動素子に対して駆動信号を供給する送信部21と、振動素子から得られたNチャンネルの受信信号に対して整相加算を行なう受信部22を備えている。
【0027】
そして、送信部21は、レートパルス発生器211と、送信遅延回路212と、駆動回路213を備え、レートパルス発生器211は、送信超音波の繰り返し周期を決定するレートパルスを生成して送信遅延回路212に供給する。送信遅延回路212は、送信に使用される振動素子と同数のNチャンネルの独立な遅延回路から構成され、送信超音波を所定の深さに集束するための集束用遅延時間と、送信超音波を所定の方向に送信するための偏向用遅延時間を上記レートパルスに与え、このレートパルスを駆動回路213に供給する。駆動回路213は、送信遅延回路212と同数のNチャンネルの独立な駆動回路を有しており、超音波プローブ3に内蔵されたN個の振動素子を駆動し、被検体の体内に送信超音波を放射する。
【0028】
一方、受信部22は、Nチャンネルから構成されるA/D変換器221及び受信遅延回路222と、加算器223を備えており、振動素子から供給されたNチャンネルの受信信号は、A/D変換器221にてデジタル信号に変換され、受信遅延回路222に送られる。
【0029】
受信遅延回路222は、所定の深さからの受信超音波を集束するための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をA/D変換器221から出力されるNチャンネルの受信信号の各々に与え、加算器223は、受信遅延回路222からの受信信号を加算する。即ち、受信遅延回路222と加算器223により、所定方向から得られた受信信号は整相加算される。
【0030】
図3は、超音波プローブ3の中心軸をZ軸とした直交座標(X−Y−Z)における超音波の送受信方向(θp、φq)を示したものであり、この場合、振動素子はX軸方向及びY軸方向に配列され、θp及びφqは、X−Z平面及びY−Z平面に投影された送受信方向を示している。
【0031】
尚、受信遅延回路222及び加算器223は、その遅延時間の制御によって複数方向に対する受信超音波ビームを同時に形成する所謂並列同時受信を行なうことも可能である。この並列同時受信法の適用によりボリュームデータの収集に要する時間は大幅に短縮される。
【0032】
次に、図2の受信信号処理部4は、包絡線検波器411と対数変換器412を備え、包絡線検波器411は、受信部22の加算器223から供給された整相加算後の受信信号を包絡線検波し、この包絡線検波信号は対数変換器412においてその振幅が対数変換されBモードデータが生成される。尚、包絡線検波器411と対数変換器412は順序を入れ替えて構成してもよい。
【0033】
図1に戻って、3次元画像データ生成部5は、受信信号処理部4において生成されたBモードデータを3次元的な超音波送受信方向に対応させて順次保存するデータ記憶部51と、このBモードデータを補間処理して等方的なボクセルで構成されるボリュームデータを生成するボリュームデータ生成部52と、後述のベクトル演算部54によって算出される法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて上述のボリュームデータを補正するボリュームデータ補正部53を備え、更に、3次元画像データ生成部5は、法線ベクトル、走査ベクトル及び視線ベクトルを算出し、更に、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積演算等を行なうベクトル演算部54と、法線ベクトルと視線ベクトルに基づいてボリュームデータをレンダリング処理し3次元画像データを生成するレンダリング演算部55を備えている。
【0034】
図4は、データ記憶部51に保存されたBモードデータを模式的に示したものであり、このデータ記憶部51には、送受信方向S1に対して収集されたBモードデータの信号強度a11、a21、a31・・・、送受信方向S2に対して収集されたBモードデータの信号強度a12、a22、a32・・・、送受信方向S3に対して収集されたBモードデータの信号強度a13、a23、a33・・・が夫々保存され、各送受信方向におけるこれらのデータにはシステム制御部9から供給される送受信角度(θ、φ)の情報が付帯情報として付加される。
【0035】
図1に戻って、ボリュームデータ生成部52は、図示しない演算回路と記憶回路を有し、超音波プローブ3の中心位置(2次元配列された振動素子群の中心位置)と前記記憶回路にて所定サイズで形成された各ボクセルの中心位置は一義的に決定される。
【0036】
そして、ボリュームデータの生成に際し、ボリュームデータ生成部52の演算回路は、データ記憶部51において保存されているBモードデータを読み出し、このBモードデータの補間処理により前記記憶回路に設定された各ボクセルにおけるボクセル値を算出してボリュームデータを生成する。そして、得られたボリュームデータを前記記憶回路に保存する。
【0037】
図5は、前記演算回路によって行なわれる補間処理を模式的に示したものであり、説明を判りやすくするためにデータ記憶部51に保存されているBモードデータ(図5の●)を対応させて表示している。但し、図5では、Bモードデータに対し1次元方向(X方向)の補間処理を行なって各ボクセルのボクセル値を算出する場合について示しているが、実際には、当該ボクセルを取り囲む複数のBモードデータを用いた3次元的な補間処理が望ましい。
【0038】
例えば、ボクセルの中心位置が超音波の送受信方向S1と一致するボクセルB12ではBモードデータにおける信号強度a11がボクセル値c12として設定され、同様にして、ボクセルの中心位置が送受信方向S4と一致するボクセルB14ではBモードデータの信号強度a14がボクセル値c14として設定される。一方、ボクセルの中心位置が送受信方向と一致しないボクセルB13では、Bモードデータの信号強度a12及びその位置情報と信号強度a13及びその位置情報とに基づく補間処理によってボクセル値c13が算出される。
【0039】
更に、ボクセルの中心位置が送受信方向と一致しないボクセルB22、B23,B24,B32,B33,B34,・・・に対してはボクセルB13の場合と同様にして、隣接したBモードデータの信号強度とその位置情報に基づく補間処理によってボクセル値c22、c23、c24、c32、c33、c34、・・・が算出される。そして、得られたこれらのボクセル値は、前記記憶回路に保存されてボリュームデータが生成される。
【0040】
次に、図6のブロック図を用いてベクトル演算部54の具体的な構成について説明する。この図6に示すようにベクトル演算部54は、法線ベクトル算出部541と、走査ベクトル算出部542と、視線ベクトル算出部543と、内積演算部544を備えている。
【0041】
ベクトル演算部54の法線ベクトル算出部541は、ボリュームデータ生成部52において生成されたボリュームデータ、あるいは、後述のボリュームデータ補正部53によって高エコーの影響が低減された補正後のボリュームデータにおける各ボクセルの法線ベクトルを算出する。
【0042】
例えば、ボクセルB(x、y、z)における法線ベクトルN(x、y、z)を算出する場合、法線ベクトル算出部541は、先ず、ボリュームデータ生成部52あるいはボリュームデータ補正部53の記憶回路に保存されているボリュームデータの中からボクセルB(x、y、z)に隣接したボクセルB(x+1、y、z)、B(x−1、y、z)、B(x、y+1、z)、B(x、y−1、z)、B(x、y、z+1)、B(x、y、z−1)の各々におけるボクセル値c(x+1、y、z)、c(x−1、y、z)、c(x、y+1、z)、c(x、y−1、z)、c(x、y、z+1)、c(x、y、z−1)を読み出し、これらのボクセル値を次式(1)に代入することにより法線ベクトルN(x、y、z)を算出する。
【数1】
【0043】
更に、法線ベクトル算出部541は、ボリュームデータ生成部52によるボリュームデータに対して算出した法線ベクトルの情報を内積演算部544に供給し、ボリュームデータ補正部53による補正後のボリュームデータに対して算出した法線ベクトルの情報を後述のレンダリング演算部55に供給する。
【0044】
一方、ベクトル演算部54の走査ベクトル算出部542は、ボリュームデータ生成部52の記憶回路に保存されたボリュームデータにおけるボクセルの中心位置と超音波プローブ3の中心位置に基づいて、超音波の送受信方向を示す走査ベクトルを算出する。又、視線ベクトル算出部543は、上述のボリュームデータにおけるボクセルの中心位置と画像観測者の視点位置に基づいて視線方向を示す視線ベクトルを算出する。
【0045】
図7は、ベクトル演算部54によって算出される上述の3つの単位ベクトルを示したものであり、ボリュームデータを構成するボクセルBの中心P(x、y、z)を基準として臓器境界面に対する法線方向を示す法線ベクトルN(x、y、z)と、超音波送受信方向を示す走査ベクトルM(x、y、z)と、画像観測者の視線方向を示す視線ベクトルL(x、y、z)が夫々算出される。
【0046】
次に、ベクトル演算部54の内積演算部544は、走査ベクトル算出部542が算出したボクセルに対する走査ベクトルとこのボクセルに対して法線ベクトル算出部541が算出した法線ベクトルとの内積値βを各々のボクセルに対して算出し、この内積値βと自己の記憶回路に予め保管されている閾値αを比較する。そして、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在する場合には、その比較結果をボリュームデータ補正部53へ供給し、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在しない場合には、その比較結果を法線ベクトル算出部541へ供給する。
【0047】
一方、図1のボリュームデータ補正部53は、上述の比較結果に基づいてボリュームデータ生成部52の記憶回路に保存されているボリュームデータの1部あるいは全てを読み出し、上述の内積値βが閾値αより大きいボクセルとその周囲のボクセルのボクセル値に対してフィルタリング処理あるいは階調処理を行なう。
【0048】
即ち、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在する場合、ボリュームデータ補正部53は、当該ボクセルに対応する臓器境界面に対して超音波が略垂直に送受信され、従って、そのボクセル値は高エコーの影響を受けていると判定する。そして、この高エコーの影響を排除するために、当該ボクセルを中心とした所定範囲のボクセルにおけるボクセル値に対しフィルタリング処理あるいは階調処理を行なってボリュームデータの補正を行なう。尚、ボリュームデータに対するフィルタリング処理の範囲情報は、通常、ボリュームデータ補正部53が備える図示しない記憶回路に予め保管されているが、操作者が入力部8にて設定しても構わない。
【0049】
次に、レンダリング演算部55は、ベクトル演算部54の法線ベクトル算出部541がボリュームデータ補正部53における補正後のボリュームデータに対して算出した法線ベクトルの情報と視線ベクトル算出部543が算出した視線ベクトルの情報をボクセル単位でベクトル演算部54から受信する。そして、法線ベクトルと視線ベクトルとの内積値に基づくシェーディング値と、画像観察者の視点から当該ボクセルの中心までの距離に基づく不透明度を夫々のボクセルに対して算出する。
【0050】
次いで、レンダリング演算部55は、ボリュームデータ生成部52の記憶回路に保存されている補正前のボリュームデータを読み出し、このボリュームデータのボクセル値を上述のシェーディング値や不透明度の情報を用いてレンダリング処理し3次元画像データを生成する。
【0051】
一方、表示部7は、図示しない表示データ生成回路と変換回路とモニタを備え、前記表示データ生成回路は、3次元画像データ生成部5のレンダリング演算部55において生成された3次元画像データに被検体情報等の付帯情報を付加して表示データを生成する。一方、前記変換回路は、表示データ生成回路が生成した表示データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行なって前記モニタに表示する。
【0052】
入力部8は、操作パネル上に液晶表示パネルやキーボード、トラックボール、マウス等の入力デバイスを備え、被検体情報の入力、画像データ収集モードの選択、画像データの生成条件や表示条件の設定、視点位置の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう。
【0053】
そして、システム制御部9は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部8から供給された各種コマンド信号や制御信号に基づいて、上記各ユニットの制御や装置全体の制御を統括して行なう。特に、図2に示した送信部21の送信遅延回路122及び受信部22の受信遅延回路132における遅延時間を制御し、当該被検体の3次元領域に対し超音波送受信を行なう。
【0054】
(3次元画像データの生成手順)
次に、本実施例における3次元画像データの生成手順につき図8のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
当該被検体に対する3次元データの収集に先立ち、超音波診断装置100の操作者は入力部8において被検体情報を入力し、更に、画像データ収集モードの選択、画像データの生成条件や表示条件の設定等を行なう。本実施例では、画像データ収集モードとして「3次元Bモード」を選択するがこれに限定されない。そして、入力部8にて入力された上述の入力情報、選択情報及び設定情報はシステム制御部9の記憶回路に保存される(図8のステップS1)。
【0056】
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、超音波プローブ3を被検体の体表に接触させた状態で入力部8より3次元データの収集開始コマンドを入力し、このコマンド信号がシステム制御部9に供給されることにより、当該被検体に対する3次元データの収集が開始される。
【0057】
3次元データの収集に際し、図2に示した送信部21のレートパルス発生器211は、システム制御部9から入力された制御信号に従ってレートパルスを生成し送信遅延回路212に供給する。送信遅延回路212は、送信において細いビーム幅を得るために所定の深さに超音波を集束するための遅延時間と、最初の送受信方向(θ1、φ1)に超音波を送信するための遅延時間を前記レートパルスに与え、このレートパルスをNチャンネルの駆動回路213に供給する。次いで、駆動回路213は、送信遅延回路212から供給されたレートパルスに基づいて所定の遅延時間を有した駆動信号を生成し、この駆動信号を超音波プローブ3におけるN個の振動素子に供給して被検体の体内に送信超音波を放射する。
【0058】
放射された送信超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる臓器境界面や組織にて反射し、前記振動素子によって受信されてNチャンネルの電気的な受信信号に変換される。次いで、この受信信号は、受信部22のA/D変換器221においてデジタル信号に変換された後、Nチャンネルの受信遅延回路222において所定の深さからの受信超音波を収束するための遅延時間と送受信方向(θ1、φ1)からの受信超音波に対し強い受信指向性を設定するための遅延時間が与えられ、加算器223にて整相加算される。
【0059】
そして、整相加算後の受信信号が供給された受信信号処理部4の包絡線検波器411及び対数変換器412は、この受信信号に対して包絡線検波と対数変換を行なってBモードデータを生成し3次元画像データ生成部5のデータ記憶部51に保存する。
【0060】
送受信方向(θ1、φ1)に対するBモードデータの生成と保存が終了したならば、超音波の送受信方向がφ方向にΔφずつ更新されたφq=φ1+(q−1)Δφ(q=2乃至Q)によって設定される送受信方向(θ1、φ2乃至φQ)に対して同様の手順で超音波の送受信を行なう。このとき、システム制御部9は、その制御信号によって送信遅延回路212及び受信遅延回路222の遅延時間を超音波の送受信方向に対応させて更新する。
【0061】
上述の手順によって送受信方向(θ1、φ1乃至φQ)に対する超音波送受信が終了したならば、送受信方向がθ方向にΔθずつ更新されたθp=θ1+(p−1)Δθ(p=2乃至P)を設定し、送受信方向θ2乃至θPの各々に対して上述のφ1乃至φQの超音波送受信を繰り返すことによって当該被検体に対する3次元走査が行なわれる。そして、各々の送受信方向に対する超音波送受信によって得られたBモードデータは送受信方向の情報と共にデータ記憶部51に順次保存されて3次元データが生成される。(図8のステップS2)。
【0062】
次いで、3次元画像データ生成部5のボリュームデータ生成部52は、データ記憶部51に保存されたBモードデータとその付帯情報(即ち、超音波送受信方向の情報)を読み出し、このBモードデータを用いた補間処理によって算出した3次元的なボクセル値を自己の記憶回路に保存してボリュームデータを生成する(図8のステップS3)。
【0063】
そして、ベクトル演算部54の法線ベクトル算出部541は、ボリュームデータ生成部52において生成されたボリュームデータの各ボクセルにおける法線ベクトルを上述の式(1)に基づいて算出する(図8のステップS4)。
【0064】
一方、ベクトル演算部54の走査ベクトル算出部542は、ボリュームデータ生成部52が生成したボリュームデータにおける各ボクセルの中心位置と超音波プローブ3の中心位置に基づいて走査ベクトルを算出し、視線ベクトル算出部543は、前記ボクセルの中心位置と画像観察者の視点位置に基づいて視線ベクトルを算出する(図8ステップS5)。
【0065】
但し、図8に示したフローチャートでは、法線ベクトルの算出(ステップS4)に後続して走査ベクトルと視線ベクトルを算出する場合について述べたが、これに限定されない。即ち、走査ベクトル及び視線ベクトルの算出は、3次元データやボリュームデータの生成に対して独立に行なうことができ、従って、上述のステップS1乃至ステップS4における各手順の何れかに後続あるいは何れかと並行して行なうことも可能である。
【0066】
次いで、ベクトル演算部54の内積演算部544は、前記ボクセルに対して走査ベクトル算出部542が算出した走査ベクトルと法線ベクトル算出部541が算出した法線ベクトルとの内積値βを各々のボクセルに対して算出する(図8のステップS6)。そして、算出された各ボクセルにおける内積値βと自己の記憶回路に予め保管されている閾値αを比較し(図8のステップS7)、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在する場合には、その比較結果をボリュームデータ補正部53に供給する。
【0067】
この比較結果を受信したボリュームデータ補正部53は、ボリュームデータ生成部52の記憶回路に保存されているボリュームデータを読み出し、上述の内積値βが閾値αより大きいボクセルとその周囲のボクセルのボクセル値に対しフィルタリング処理あるいは階調処理を行なってボリュームデータを補正する(図8のステップS8)。
【0068】
次いで、法線ベクトル算出部541は、ボリュームデータ補正部53において補正されたボリュームデータの各ボクセルに対し上述のステップS4と同様な演算を行なって法線ベクトルを算出し(図8のステップS9)、算出した法線ベクトルの情報をレンダリング演算部55へ供給する。
【0069】
一方、上述のステップS7において、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在しない場合、内積演算部544は、その比較結果を法線ベクトル算出部541へ供給し、法線ベクトル算出部541は、ステップS4において算出した法線ベクトルの情報をレンダリング演算部55へ供給する。
【0070】
次に、レンダリング演算部55は、法線ベクトル算出部541がステップS4あるいはステップS9において算出した法線ベクトルと視線ベクトル算出部543が算出した視線ベクトルとに基づいて各ボクセルのシェーディング値を算出し、更に、観察者の視点からボクセルの中心位置までの距離に基づいて各ボクセルの不透明度を算出する。そして、ステップS3においてボリュームデータ生成部52が生成したボリュームデータをその記憶回路から読み出し、このボリュームデータに対し上述のシェーディング値と不透明度を用いたレンダリング処理を行なって3次元画像データを生成する(図8ステップS10)。
【0071】
そして、表示部7の表示データ生成回路は、3次元画像データ生成部5のレンダリング演算部55において生成された3次元画像データに対し被検体情報等の付帯情報を付加して表示データを生成し、表示部7の変換回路は、表示データ生成回路が生成した表示データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行なってモニタに表示する(図8ステップS11)。
【0072】
次に、図9と図10を用いて本実施例の効果を模式的に説明する。図9(a)は、当該被検体から得られた3次元データに基づいてボリュームデータ生成部52が生成したボリュームデータを示しており、図9(b)は、このボリュームデータのボクセル値に基づいてベクトル演算部54の法線ベクトル算出部541が算出した各ボクセルの法線ベクトルを矢印で示している。
【0073】
一方、図10(a)は、ボリュームデータ補正部53による補正後のボリュームデータを示しており、図10(b)は、補正後のボリュームデータのボクセル値に基づいて法線ベクトル算出部541が算出した各ボクセルの法線ベクトルを示している。但し説明を簡単にするために、図9(a)及び図10(a)は、ボリュームデータの所定断面(X−Z断面)におけるボクセル値を示しており、図9(b)及び図10(b)は、上記断面のX方向及びZ方向におけるボクセル値の勾配に基づいて算出された各ボクセルの法線ベクトルを示している。
【0074】
又、図9(a)の各ボクセルに示した数値はボクセル値の具体例を示しており、ここではボクセル値「0」の臓器Aとボクセル値「1」の臓器Bの境界面Cに対して法線ベクトルを算出する場合について述べる。但し、境界面Cが超音波の送受信方向に対して略垂直に交差するボクセルB25は超音波入射角に依存する高エコーの影響を受け、他のボクセルのボクセル値と比較して特異的に高いボクセル値「5」を有している。
【0075】
このようなボクセル値を有するボリュームデータに対して法線ベクトルを算出する場合、例えば、ボクセルB24及びボクセルB26では、ボクセルB25における特異的なボクセル値「5」の影響を受け境界面Cに対する真の法線方向とは異なる方向の法線ベクトルN24及びN26が算出される。
【0076】
既に述べたように内積演算部544は、ボリュームデータ生成部52が生成したボリュームデータに対し法線ベクトル算出部541が算出した各ボクセルの法線ベクトルと走査ベクトル算出部542が算出した各ボクセルの走査ベクトルとの内積値βを計測し、この内積値βと閾値αを比較する。そして、ボリュームデータ補正部53は、この比較結果に基づいて上述のボリュームデータを補正する。このとき、ボリュームデータ補正部53は、このボリュームデータにおいて内積値βが閾値αより大きいボクセルB25を検出し、このボクセルB25に対してフィルタリング処理あるいは階調処理を行ない上述の高エコーの影響を低減する。
【0077】
図10(a)は、ボリュームデータ補正部53によって補正されたボリュームデータのボクセル値を示しており、ボクセルB25のボクセル値はフィルタリング処理あるいは階調処理によって周囲のボクセルのボクセル値に略等しい値に補正される。そして、補正後のボリュームデータを用いた法線ベクトル演算により、真の法線方向に略一致した法線ベクトルN24及び法線ベクトルN26が算出される(図10(b)参照)。
【0078】
以上述べた本発明の第1の実施例によれば、超音波入射角度に依存した高エコーの影響を受けているボクセルをボリュームデータの各ボクセルにおける法線ベクトルと走査ベクトルの内積値に基づいて特定し、このボクセルを中心とした所定領域に対してフィルタリング処理あるいは階調処理を行なうことにより、他の超音波情報を歪めることなく前記高エコーの影響を効果的に低減することができる。
【0079】
そして、フィルタリング処理等によって前記高エコーの影響が低減したボリュームデータを用いることにより臓器境界面等における正確な法線ベクトルの算出が可能となり、この法線ベクトルに基づくレンダリング処理によって良好な3次元画像データを生成することができる。
【0080】
又、上述の実施例では、補正後のボリュームデータの各ボクセルにおいて算出した法線ベクトルと視線ベクトルの情報を用いて補正前のボリュームデータをレンダリング処理しているため、空間分解能やコントラスト分解能を劣化させることなく有効なシェーディング処理を行なうことが可能となる。
【0081】
更に、高エコーの低減に際しては空間コンパウンド法を適用する必要がないため時間分解能が劣化することもない。
【0082】
上述の理由により、超音波ビームの入射角度に依存する高エコーの影響を時間分解能、空間分解能、更には、コントラスト分解能を劣化させることなく低減することが可能となり、良好な3次元画像データを得ることができる。
【実施例2】
【0083】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。上述の第1の実施例では、自己の送受信部2、超音波プローブ3及び受信信号処理部4を用いて被検体の3次元データを収集し、この3次元データに基づいて3次元画像データを生成する超音波診断装置100について述べたが、以下の第2の実施例では、別途設置された超音波診断装置から供給される3次元データに基づいて3次元画像データの生成及び表示を行なう画像データ表示装置について述べる。
【0084】
即ち、本実施例における画像データ表示装置では、ネットワーク等を介して超音波診断装置から供給される3次元データを用いて生成したボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する際、先ず、ボリュームデータの各ボクセルにおいて法線ベクトルと走査ベクトルを算出する。次いで、得られた法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定し、このボクセルを中心とした所定領域のボクセル値をフィルタリング処理あるいは階調処理によって補正する。そして、補正後のボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて新たに算出した法線ベクトルと画像データ観測者の視線方向を示す視線ベクトルに基づき補正前のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する。
【0085】
本発明の第2の実施例における画像データ表示装置の全体構成につき図11のブロック図を用いて説明する。但し、図1に示した超音波診断装置のユニットと略同様な機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0086】
この画像データ表示装置200は、超音波診断装置によって収集された3次元データを用いて3次元画像データを生成する3次元画像データ生成部5xと、この3次元画像データを表示する表示部7と、被検体情報や各種コマンド信号等を入力する入力部8と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部9を備えている。
【0087】
そして、3次元画像データ生成部5xは、別途設置された超音波診断装置が収集した当該被検体の3次元データをネットワーク10あるいは図示しない記憶媒体を介して保存するデータ記憶部51xと、この3次元データを補間処理して等方的なボクセルで構成されるボリュームデータを生成するボリュームデータ生成部52と、後述のベクトル演算部54によって算出される法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて上述のボリュームデータを補正するボリュームデータ補正部53を備え、更に、法線ベクトル、走査ベクトル及び視線ベクトルを算出し、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積演算等を行なうベクトル演算部54と、法線ベクトルと視線ベクトルに基づいてボリュームデータをレンダリング処理し3次元画像データを生成するレンダリング演算部55を備えている。
【0088】
超音波診断装置から供給された3次元データに基づく3次元画像データの生成に際し、3次元画像データ生成部5xのボリュームデータ生成部52は、ネットワーク10等を介して超音波診断装置から供給されデータ記憶部51xに一旦保存された3次元データを補間処理してボリュームデータを生成し、ベクトル演算部54は、このボリュームデータの各ボクセルにおいて法線ベクトルと走査ベクトルを算出する。更に、ベクトル演算部54は、得られた法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値を算出し、この内積値と予め設定された閾値とを比較する。
【0089】
一方、ボリュームデータ補正部53は、ベクトル演算部54による内積値と閾値との比較結果に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを前記ボリュームデータにおいて特定し、このボクセルを中心とした所定領域のボクセル値をフィルタリング処理あるいは階調処理によって補正する。そして、ベクトル演算部54は、補正後のボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて法線ベクトルを新たに算出し、レンダリング演算部55は、この法線ベクトルと画像データ観測者の視線方向を示す視線ベクトルに基づき補正前のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する。
【0090】
以上述べた本発明の第2の実施例によれば、上述の第1の実施例と同様にして、超音波入射角度に依存した高エコーの影響を受けているボクセルをボリュームデータの各ボクセルにおける法線ベクトルと走査ベクトルの内積値に基づいて特定し、このボクセルを中心とした所定領域に対してフィルタリング処理あるいは階調処理を行なうことにより、他の超音波情報を歪めることなく前記高エコーの影響を効果的に低減することができる。そして、フィルタリング処理等によって前記高エコーの影響が低減したボリュームデータを用いることにより臓器境界面等における正確な法線ベクトルの算出が可能となり、この法線ベクトルに基づくレンダリング処理によって良好な3次元画像データを生成することができる。
【0091】
又、上述の実施例では、補正後のボリュームデータの各ボクセルにおいて算出した法線ベクトルと視線ベクトルの情報を用いて補正前のボリュームデータをレンダリング処理しているため、空間分解能やコントラスト分解能を劣化させることなく有効なシェーディング処理を行なうことが可能となる。
【0092】
上述の理由により、超音波ビームの入射角度に依存する高エコーの影響を時間分解能、空間分解能、更には、コントラスト分解能を劣化させることなく低減することが可能となり、良好な3次元画像データを得ることができる。
【0093】
更に、上述の実施例における画像データ表示装置は、別途設置された超音波診断装置からネットワーク等を介して供給された3次元データに基づいて3次元画像データを生成することができるため、操作者は、時間や場所の制約をあまり受けることなく当該被検体の3次元画像データを生成あるいは観察することが可能となる。
【0094】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、変形して実施することが可能である。例えば、上述の第1の実施例及び第2の実施例では、Bモードデータに基づいてボリュームデータを生成する場合について述べたが、カラードプラデータ等、他の超音波データに基づいてボリュームデータを生成してもよい。
【0095】
又、2次元配列された振動素子による3次元走査について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、1次元配列された振動素子を配列方向に対して垂直な方向に移動あるいは回動させることによって3次元走査を行なってもよい。更に、コンベックス走査やリニア走査、更にはラジアル走査等、セクタ走査以外の走査法によってボリュームデータを生成してもよい。
【0096】
一方、ボリュームデータの補正におけるフィルタリング処理の範囲情報や閾値αの情報はボリュームデータ補正部53やベクトル演算部54の記憶回路に予め保管されている場合について述べたが、操作者が入力部8にて設定あるいは更新しても構わない。この方法によれば、3次元画像データの観察下にて最適な条件を設定することができる。
【0097】
又、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて高エコーの影響を受けたボクセルを特定する場合について述べたが、法線ベクトルと走査ベクトルとの交差角度が算出できる他の方法であっても構わない。
【0098】
更に、上述の実施例では、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて上述の高エコーの影響を受けたボクセルを特定する機能をベクトル演算部54が有している場合について述べたが、ボリュームデータ補正部53がこの機能を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例の超音波診断装置が備える送受信部及び受信信号処理部の構成を示すブロック図。
【図3】同実施例における超音波プローブの座標と超音波送受信方向の関係を示す図。
【図4】同実施例のデータ記憶部に保存されたBモードデータを模式的に示す図。
【図5】同実施例のボリュームデータ生成部が行なう補間処理を模式的に示す図。
【図6】同実施例におけるベクトル演算部の具体的な構成を示すブロック図。
【図7】同実施例のベクトル演算部が算出する法線ベクトル、走査ベクトル及び視線ベクトルを示す図。
【図8】同実施例における3次元画像データの生成手順を示すフローチャート。
【図9】同実施例における補正前のボリュームデータとこのボリュームデータにおいて算出される法線ベクトルを示す図。
【図10】同実施例における補正後のボリュームデータとこのボリュームデータにおいて算出される法線ベクトルを示す図。
【図11】本発明の第2の実施例における画像データ表示装置の全体構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0100】
2…送受信部
21…送信部
211…レートパルス発生器
212…送信遅延回路
213…駆動回路
22…受信部
221…A/D変換器
222…受信遅延回路
223…加算器
3…超音波プローブ
4…受信信号処理部
411…包絡線検波器
412…対数変換器
5、5x…3次元画像データ生成部
51、51x…データ記憶部
52…ボリュームデータ生成部
53…ボリュームデータ補正部
54…ベクトル演算部
541…法線ベクトル算出部
542…走査ベクトル算出部
543…視線ベクトル算出部
544…内積演算部
55…レンダリング演算部
7…表示部
8…入力部
9…システム制御部
10…ネットワーク
100…超音波診断装置
200…画像データ表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置、画像データ表示装置及び3次元画像データ生成方法に係り、特に、被検体から収集した3次元の超音波データをレンダリング処理して3次元画像データを生成する超音波診断装置、画像データ表示装置及び3次元画像データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、複数の振動素子が配列された超音波プローブを用いて被検体の複数方向に対し超音波送受信を行ない、このとき得られた反射波に基づいて生成した画像データをモニタ上に表示するものである。この装置は、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作で体内の2次元画像や3次元画像をリアルタイムで観測することができるため各種臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
従来、超音波によって被検体の3次元画像データを得るには、振動素子が1次元配列された超音波プローブをその配列方向に対して垂直な方向に移動あるいは回動させながら前記被検体の3次元領域に対し超音波を送受信し、このとき収集された超音波データ(ボリュームデータ)をレンダリング処理して3次元画像データの生成を行なってきた。
【0004】
又、近年では、振動素子が2次元配列された超音波プローブ(2次元アレイ超音波プローブ)が実用化されている。この超音波プローブを用いることにより3次元領域に対する超音波送受信方向の設定は全て電子的な制御で行なうことができるため、ボリュームデータの収集に要する時間が大幅に短縮され、3次元画像データのリアルタイム表示も可能になりつつある。
【0005】
ところで、被検体から収集されたボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する場合、先ず、3次元領域に対する超音波送受信によって得られた受信信号の振幅情報に対して空間的な補間処理を行ない小立方体の集合で構成されたボリュームデータを生成する。次いで、このボリュームデータにおける所定ボクセル及びその周囲ボクセルにおける信号強度(以下では、ボクセル値と呼ぶ。)から算出した勾配値に基づいて当該ボクセルの法線単位ベクトル(以下、法線ベクトルと呼ぶ。)を設定し、更に、画像観察者の視点と当該ボクセルの中心位置を結ぶ線上に視線単位ベクトル(以下、視線ベクトルと呼ぶ。)を設定する。そして、法線ベクトルと視線ベクトルの内積値に基づいて設定されたシェーディング値(臓器等を立体的に表現するための陰影値)と、画像観察者の視点から当該ボクセルまでの距離に基づいて設定された不透明度を用いてボリュームデータを処理することにより臓器表面等の立体的表示が行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−61956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波診断では、超音波の送受信方向が臓器等の境界面に対し垂直となった場合、その信号振幅が特異的に大きな値を示す超音波反射波(以下では、高エコーと呼ぶ。)が受信されることが一般に知られている。そして、この高エコーの影響を含んだボリュームデータの各ボクセルに対して法線ベクトルを算出し、更に、この法線ベクトルと視線ベクトルとの内積値に基づいてレンダリング処理を行なう場合、ボクセル値の勾配に基づいて得られた法線ベクトルの方向と実際の臓器境界面に対する法線方向との間に大きな誤差が発生し、ボリュームデータに対して正確なシェーディングを行なうことが困難になるという問題点が発生する。
【0007】
このような問題点を改善する方法として、臓器境界面の所定部位に対し異なる複数の方向から超音波送受信を行ない、このとき得られた受信信号を加算合成する、所謂、空間コンパウンド法が考えられる。しかしながら、この方法では所定部位に対して複数回の超音波送受信を行なう必要があるため、通常の走査密度でボリュームデータを収集する場合にはその収集に多くの時間を要し、3次元画像データを表示する際のフレーム周波数(単位時間に表示する画像データ枚数)が低下する欠点を有している。
【0008】
又、通常のフレーム周波数を維持するために走査密度を低くして超音波送受信を行なう場合には3次元画像データの画質は劣化する。即ち、複数方向の超音波送受信による空間コンパウンド法では、3次元画像データの時間分解能(フレーム周波数)と空間分解能(走査密度)の何れをも良好な状態に維持したまま高エコーに関わる上述の問題点を改善することはできない。
【0009】
一方、並列同時受信等の技術を適用して受信時のみの空間コンパウンド法を行なう方法では、時間分解能や空間分解能の劣化は生じないが送信方向に依存する高エコーの影響を効果的に排除することは困難であり、又、収集されたボリュームデータの全ての領域に対し一様なフィルタ処理を行なって高エコーの影響を平滑化する方法では、受信時のみの空間コンパウンド法と同様に時間分解能の劣化は発生しないが空間分解能やコントラスト分解能の劣化を招くという問題点を有している。
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検体から収集されたボリュームデータに基づいて3次元画像データを生成する際、臓器境界面等に対する超音波ビームの入射角度に依存する高エコーの影響を時間分解能や空間分解能を劣化させることなく低減することにより良好な3次元画像データを得ることが可能な超音波診断装置、画像データ表示装置及び3次元画像データ生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の超音波診断装置は、被検体の3次元領域に対して超音波を送受信するための振動素子を有した超音波プローブと、前記振動素子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて前記法線ベクトルを補正するベクトル演算手段と、補正された法線ベクトルに基づき、前記ボリュームデータ生成手段が生成したボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成するレンダリング演算手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
又、請求項2に係る本発明の超音波診断装置は、被検体の3次元領域に対して超音波を送受信するための振動素子を有した超音波プローブと、前記振動素子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記ボリュームデータのボクセルに対し法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するベクトル演算手段と、この特定結果に基づいて前記ボリュームデータを補正するボリュームデータ補正手段と、このボリュームデータ補正手段が補正したボリュームデータのボクセルに対し前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルに基づいて、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをレンダリング処理し3次元画像データを生成するレンダリング演算手段とを備えたことを特徴としている。
【0013】
更に、請求項9に係る本発明の画像データ表示装置は、被検体から得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するベクトル演算手段と、この特定結果に基づいて前記ボリュームデータを補正するボリュームデータ補正手段と、このボリュームデータ補正手段が補正したボリュームデータのボクセルに対し前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルに基づいて、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成するレンダリング演算手段と、前記3次元画像データを表示する表示手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
一方、請求項11に係る本発明の3次元画像データ生成方法は、ボリュームデータ生成手段が、被検体に対する超音波の送受信によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するステップと、ベクトル演算手段が、前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するステップと、ボリュームデータ補正手段が、前記ベクトル演算手段の特定結果に基づいて所定領域の前記ボリュームデータを補正するステップと、前記ベクトル演算手段が、補正された前記ボリュームデータのボクセルに対して法線ベクトルを新たに算出するステップと、レンダリング演算手段が、前記ボリュームデータ生成手段が生成したボリュームデータを新たに算出された前記法線ベクトルに基づいてレンダリング処理し3次元画像データを生成するステップとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検体から収集されたボリュームデータに基づいて3次元画像データを生成する際に、臓器境界面等に対する超音波ビームの入射角度に依存する高エコーの影響を時間分解能や空間分解能を劣化させることなく低減することが可能となり、従って、良好な3次元画像データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
以下に述べる本発明の第1の実施例における超音波診断装置では、被検体の3次元領域に対する超音波送受信によって得られたボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する際、臓器境界面の法線方向を示す法線ベクトルをボリュームデータのボクセル値の勾配に基づいて算出し、更に、前記ボリュームデータの各ボクセルに対する超音波の送受信方向を示す走査ベクトルを算出する。
【0018】
次いで、各ボクセルに対して算出した法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定し、このボクセルを中心とした所定領域のボクセル値をフィルタリング処理あるいは階調処理によって補正する。そして、補正後のボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて新たに算出した法線ベクトルと画像データ観測者の視線方向を示す視線ベクトルに基づき補正前のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する。
【0019】
尚、本実施例では、振動素子が2次元配列された所謂2次元アレイ超音波プローブを用いて収集されたボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する場合について述べるが、これに限定されるものではなく、例えば、複数の振動素子が1次元配列された超音波プローブを機械的に移動あるいは回動して得られたボリュームデータに基づいて3次元画像データを生成してもよい。
【0020】
又、上述のボリュームデータはBモードデータに基づいて生成される場合について述べるがカラードプラデータ等の他の超音波データであっても構わない。
【0021】
(装置の構成)
本実施例における超音波診断装置の構成につき図1乃至図6を用いて説明する。尚、図1は、超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2は、この超音波診断装置が備えた送受信部及び受信信号処理部のブロック図を示す。又、図6は、前記超音波診断装置の3次元画像データ生成部が備えたベクトル演算部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示した本実施例の超音波診断装置100は、被検体の3次元領域に対し超音波パルス(送信超音波)を送信し、この送信によって得られた超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)に変換する複数個の振動素子が2次元配列された超音波プローブ3と、前記被検体の所定方向に対して超音波パルスを送信するための駆動信号を前記振動素子に供給し、この振動素子から得られた複数チャンネルの受信信号を整相加算する送受信部2と、整相加算後の受信信号を処理してBモードデータを生成する受信信号処理部4と、超音波の送受信方向単位で得られたBモードデータを用いて3次元画像データを生成する3次元画像データ生成部5を備えている。
【0023】
更に、超音波診断装置100は、上述の3次元画像データ生成部5によって生成された3次元画像データを表示する表示部7と、被検体情報の入力や画像データ生成条件の設定等を行なう入力部8と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部9を備えている。
【0024】
超音波プローブ3は、2次元配列されたN個(N=N1×N2)の図示しない振動素子をその先端部に有し、この先端部を被検体の体表に接触させて超音波の送受信を行なう。又、超音波プローブ3の振動素子の各々は、図示しないNチャンネルの多芯ケーブルを介して送受信部2に接続されている。振動素子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルス(駆動信号)を超音波パルス(送信超音波)に変換し、又、受信時には超音波反射波(受信超音波)を電気的な受信信号に変換する機能を有している。
【0025】
この超音波プローブ3には、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等があり、操作者は診断部位に応じて任意に選択することが可能である。本実施例では、N個の振動素子が2次元配列されたセクタ走査用の超音波プローブ3を用いる場合について述べるが、リニア走査対応やコンベックス走査対応等の超音波プローブであっても構わない。
【0026】
次に、図2に示す送受信部2は、超音波プローブ3の振動素子に対して駆動信号を供給する送信部21と、振動素子から得られたNチャンネルの受信信号に対して整相加算を行なう受信部22を備えている。
【0027】
そして、送信部21は、レートパルス発生器211と、送信遅延回路212と、駆動回路213を備え、レートパルス発生器211は、送信超音波の繰り返し周期を決定するレートパルスを生成して送信遅延回路212に供給する。送信遅延回路212は、送信に使用される振動素子と同数のNチャンネルの独立な遅延回路から構成され、送信超音波を所定の深さに集束するための集束用遅延時間と、送信超音波を所定の方向に送信するための偏向用遅延時間を上記レートパルスに与え、このレートパルスを駆動回路213に供給する。駆動回路213は、送信遅延回路212と同数のNチャンネルの独立な駆動回路を有しており、超音波プローブ3に内蔵されたN個の振動素子を駆動し、被検体の体内に送信超音波を放射する。
【0028】
一方、受信部22は、Nチャンネルから構成されるA/D変換器221及び受信遅延回路222と、加算器223を備えており、振動素子から供給されたNチャンネルの受信信号は、A/D変換器221にてデジタル信号に変換され、受信遅延回路222に送られる。
【0029】
受信遅延回路222は、所定の深さからの受信超音波を集束するための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をA/D変換器221から出力されるNチャンネルの受信信号の各々に与え、加算器223は、受信遅延回路222からの受信信号を加算する。即ち、受信遅延回路222と加算器223により、所定方向から得られた受信信号は整相加算される。
【0030】
図3は、超音波プローブ3の中心軸をZ軸とした直交座標(X−Y−Z)における超音波の送受信方向(θp、φq)を示したものであり、この場合、振動素子はX軸方向及びY軸方向に配列され、θp及びφqは、X−Z平面及びY−Z平面に投影された送受信方向を示している。
【0031】
尚、受信遅延回路222及び加算器223は、その遅延時間の制御によって複数方向に対する受信超音波ビームを同時に形成する所謂並列同時受信を行なうことも可能である。この並列同時受信法の適用によりボリュームデータの収集に要する時間は大幅に短縮される。
【0032】
次に、図2の受信信号処理部4は、包絡線検波器411と対数変換器412を備え、包絡線検波器411は、受信部22の加算器223から供給された整相加算後の受信信号を包絡線検波し、この包絡線検波信号は対数変換器412においてその振幅が対数変換されBモードデータが生成される。尚、包絡線検波器411と対数変換器412は順序を入れ替えて構成してもよい。
【0033】
図1に戻って、3次元画像データ生成部5は、受信信号処理部4において生成されたBモードデータを3次元的な超音波送受信方向に対応させて順次保存するデータ記憶部51と、このBモードデータを補間処理して等方的なボクセルで構成されるボリュームデータを生成するボリュームデータ生成部52と、後述のベクトル演算部54によって算出される法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて上述のボリュームデータを補正するボリュームデータ補正部53を備え、更に、3次元画像データ生成部5は、法線ベクトル、走査ベクトル及び視線ベクトルを算出し、更に、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積演算等を行なうベクトル演算部54と、法線ベクトルと視線ベクトルに基づいてボリュームデータをレンダリング処理し3次元画像データを生成するレンダリング演算部55を備えている。
【0034】
図4は、データ記憶部51に保存されたBモードデータを模式的に示したものであり、このデータ記憶部51には、送受信方向S1に対して収集されたBモードデータの信号強度a11、a21、a31・・・、送受信方向S2に対して収集されたBモードデータの信号強度a12、a22、a32・・・、送受信方向S3に対して収集されたBモードデータの信号強度a13、a23、a33・・・が夫々保存され、各送受信方向におけるこれらのデータにはシステム制御部9から供給される送受信角度(θ、φ)の情報が付帯情報として付加される。
【0035】
図1に戻って、ボリュームデータ生成部52は、図示しない演算回路と記憶回路を有し、超音波プローブ3の中心位置(2次元配列された振動素子群の中心位置)と前記記憶回路にて所定サイズで形成された各ボクセルの中心位置は一義的に決定される。
【0036】
そして、ボリュームデータの生成に際し、ボリュームデータ生成部52の演算回路は、データ記憶部51において保存されているBモードデータを読み出し、このBモードデータの補間処理により前記記憶回路に設定された各ボクセルにおけるボクセル値を算出してボリュームデータを生成する。そして、得られたボリュームデータを前記記憶回路に保存する。
【0037】
図5は、前記演算回路によって行なわれる補間処理を模式的に示したものであり、説明を判りやすくするためにデータ記憶部51に保存されているBモードデータ(図5の●)を対応させて表示している。但し、図5では、Bモードデータに対し1次元方向(X方向)の補間処理を行なって各ボクセルのボクセル値を算出する場合について示しているが、実際には、当該ボクセルを取り囲む複数のBモードデータを用いた3次元的な補間処理が望ましい。
【0038】
例えば、ボクセルの中心位置が超音波の送受信方向S1と一致するボクセルB12ではBモードデータにおける信号強度a11がボクセル値c12として設定され、同様にして、ボクセルの中心位置が送受信方向S4と一致するボクセルB14ではBモードデータの信号強度a14がボクセル値c14として設定される。一方、ボクセルの中心位置が送受信方向と一致しないボクセルB13では、Bモードデータの信号強度a12及びその位置情報と信号強度a13及びその位置情報とに基づく補間処理によってボクセル値c13が算出される。
【0039】
更に、ボクセルの中心位置が送受信方向と一致しないボクセルB22、B23,B24,B32,B33,B34,・・・に対してはボクセルB13の場合と同様にして、隣接したBモードデータの信号強度とその位置情報に基づく補間処理によってボクセル値c22、c23、c24、c32、c33、c34、・・・が算出される。そして、得られたこれらのボクセル値は、前記記憶回路に保存されてボリュームデータが生成される。
【0040】
次に、図6のブロック図を用いてベクトル演算部54の具体的な構成について説明する。この図6に示すようにベクトル演算部54は、法線ベクトル算出部541と、走査ベクトル算出部542と、視線ベクトル算出部543と、内積演算部544を備えている。
【0041】
ベクトル演算部54の法線ベクトル算出部541は、ボリュームデータ生成部52において生成されたボリュームデータ、あるいは、後述のボリュームデータ補正部53によって高エコーの影響が低減された補正後のボリュームデータにおける各ボクセルの法線ベクトルを算出する。
【0042】
例えば、ボクセルB(x、y、z)における法線ベクトルN(x、y、z)を算出する場合、法線ベクトル算出部541は、先ず、ボリュームデータ生成部52あるいはボリュームデータ補正部53の記憶回路に保存されているボリュームデータの中からボクセルB(x、y、z)に隣接したボクセルB(x+1、y、z)、B(x−1、y、z)、B(x、y+1、z)、B(x、y−1、z)、B(x、y、z+1)、B(x、y、z−1)の各々におけるボクセル値c(x+1、y、z)、c(x−1、y、z)、c(x、y+1、z)、c(x、y−1、z)、c(x、y、z+1)、c(x、y、z−1)を読み出し、これらのボクセル値を次式(1)に代入することにより法線ベクトルN(x、y、z)を算出する。
【数1】
【0043】
更に、法線ベクトル算出部541は、ボリュームデータ生成部52によるボリュームデータに対して算出した法線ベクトルの情報を内積演算部544に供給し、ボリュームデータ補正部53による補正後のボリュームデータに対して算出した法線ベクトルの情報を後述のレンダリング演算部55に供給する。
【0044】
一方、ベクトル演算部54の走査ベクトル算出部542は、ボリュームデータ生成部52の記憶回路に保存されたボリュームデータにおけるボクセルの中心位置と超音波プローブ3の中心位置に基づいて、超音波の送受信方向を示す走査ベクトルを算出する。又、視線ベクトル算出部543は、上述のボリュームデータにおけるボクセルの中心位置と画像観測者の視点位置に基づいて視線方向を示す視線ベクトルを算出する。
【0045】
図7は、ベクトル演算部54によって算出される上述の3つの単位ベクトルを示したものであり、ボリュームデータを構成するボクセルBの中心P(x、y、z)を基準として臓器境界面に対する法線方向を示す法線ベクトルN(x、y、z)と、超音波送受信方向を示す走査ベクトルM(x、y、z)と、画像観測者の視線方向を示す視線ベクトルL(x、y、z)が夫々算出される。
【0046】
次に、ベクトル演算部54の内積演算部544は、走査ベクトル算出部542が算出したボクセルに対する走査ベクトルとこのボクセルに対して法線ベクトル算出部541が算出した法線ベクトルとの内積値βを各々のボクセルに対して算出し、この内積値βと自己の記憶回路に予め保管されている閾値αを比較する。そして、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在する場合には、その比較結果をボリュームデータ補正部53へ供給し、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在しない場合には、その比較結果を法線ベクトル算出部541へ供給する。
【0047】
一方、図1のボリュームデータ補正部53は、上述の比較結果に基づいてボリュームデータ生成部52の記憶回路に保存されているボリュームデータの1部あるいは全てを読み出し、上述の内積値βが閾値αより大きいボクセルとその周囲のボクセルのボクセル値に対してフィルタリング処理あるいは階調処理を行なう。
【0048】
即ち、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在する場合、ボリュームデータ補正部53は、当該ボクセルに対応する臓器境界面に対して超音波が略垂直に送受信され、従って、そのボクセル値は高エコーの影響を受けていると判定する。そして、この高エコーの影響を排除するために、当該ボクセルを中心とした所定範囲のボクセルにおけるボクセル値に対しフィルタリング処理あるいは階調処理を行なってボリュームデータの補正を行なう。尚、ボリュームデータに対するフィルタリング処理の範囲情報は、通常、ボリュームデータ補正部53が備える図示しない記憶回路に予め保管されているが、操作者が入力部8にて設定しても構わない。
【0049】
次に、レンダリング演算部55は、ベクトル演算部54の法線ベクトル算出部541がボリュームデータ補正部53における補正後のボリュームデータに対して算出した法線ベクトルの情報と視線ベクトル算出部543が算出した視線ベクトルの情報をボクセル単位でベクトル演算部54から受信する。そして、法線ベクトルと視線ベクトルとの内積値に基づくシェーディング値と、画像観察者の視点から当該ボクセルの中心までの距離に基づく不透明度を夫々のボクセルに対して算出する。
【0050】
次いで、レンダリング演算部55は、ボリュームデータ生成部52の記憶回路に保存されている補正前のボリュームデータを読み出し、このボリュームデータのボクセル値を上述のシェーディング値や不透明度の情報を用いてレンダリング処理し3次元画像データを生成する。
【0051】
一方、表示部7は、図示しない表示データ生成回路と変換回路とモニタを備え、前記表示データ生成回路は、3次元画像データ生成部5のレンダリング演算部55において生成された3次元画像データに被検体情報等の付帯情報を付加して表示データを生成する。一方、前記変換回路は、表示データ生成回路が生成した表示データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行なって前記モニタに表示する。
【0052】
入力部8は、操作パネル上に液晶表示パネルやキーボード、トラックボール、マウス等の入力デバイスを備え、被検体情報の入力、画像データ収集モードの選択、画像データの生成条件や表示条件の設定、視点位置の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう。
【0053】
そして、システム制御部9は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部8から供給された各種コマンド信号や制御信号に基づいて、上記各ユニットの制御や装置全体の制御を統括して行なう。特に、図2に示した送信部21の送信遅延回路122及び受信部22の受信遅延回路132における遅延時間を制御し、当該被検体の3次元領域に対し超音波送受信を行なう。
【0054】
(3次元画像データの生成手順)
次に、本実施例における3次元画像データの生成手順につき図8のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
当該被検体に対する3次元データの収集に先立ち、超音波診断装置100の操作者は入力部8において被検体情報を入力し、更に、画像データ収集モードの選択、画像データの生成条件や表示条件の設定等を行なう。本実施例では、画像データ収集モードとして「3次元Bモード」を選択するがこれに限定されない。そして、入力部8にて入力された上述の入力情報、選択情報及び設定情報はシステム制御部9の記憶回路に保存される(図8のステップS1)。
【0056】
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、超音波プローブ3を被検体の体表に接触させた状態で入力部8より3次元データの収集開始コマンドを入力し、このコマンド信号がシステム制御部9に供給されることにより、当該被検体に対する3次元データの収集が開始される。
【0057】
3次元データの収集に際し、図2に示した送信部21のレートパルス発生器211は、システム制御部9から入力された制御信号に従ってレートパルスを生成し送信遅延回路212に供給する。送信遅延回路212は、送信において細いビーム幅を得るために所定の深さに超音波を集束するための遅延時間と、最初の送受信方向(θ1、φ1)に超音波を送信するための遅延時間を前記レートパルスに与え、このレートパルスをNチャンネルの駆動回路213に供給する。次いで、駆動回路213は、送信遅延回路212から供給されたレートパルスに基づいて所定の遅延時間を有した駆動信号を生成し、この駆動信号を超音波プローブ3におけるN個の振動素子に供給して被検体の体内に送信超音波を放射する。
【0058】
放射された送信超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる臓器境界面や組織にて反射し、前記振動素子によって受信されてNチャンネルの電気的な受信信号に変換される。次いで、この受信信号は、受信部22のA/D変換器221においてデジタル信号に変換された後、Nチャンネルの受信遅延回路222において所定の深さからの受信超音波を収束するための遅延時間と送受信方向(θ1、φ1)からの受信超音波に対し強い受信指向性を設定するための遅延時間が与えられ、加算器223にて整相加算される。
【0059】
そして、整相加算後の受信信号が供給された受信信号処理部4の包絡線検波器411及び対数変換器412は、この受信信号に対して包絡線検波と対数変換を行なってBモードデータを生成し3次元画像データ生成部5のデータ記憶部51に保存する。
【0060】
送受信方向(θ1、φ1)に対するBモードデータの生成と保存が終了したならば、超音波の送受信方向がφ方向にΔφずつ更新されたφq=φ1+(q−1)Δφ(q=2乃至Q)によって設定される送受信方向(θ1、φ2乃至φQ)に対して同様の手順で超音波の送受信を行なう。このとき、システム制御部9は、その制御信号によって送信遅延回路212及び受信遅延回路222の遅延時間を超音波の送受信方向に対応させて更新する。
【0061】
上述の手順によって送受信方向(θ1、φ1乃至φQ)に対する超音波送受信が終了したならば、送受信方向がθ方向にΔθずつ更新されたθp=θ1+(p−1)Δθ(p=2乃至P)を設定し、送受信方向θ2乃至θPの各々に対して上述のφ1乃至φQの超音波送受信を繰り返すことによって当該被検体に対する3次元走査が行なわれる。そして、各々の送受信方向に対する超音波送受信によって得られたBモードデータは送受信方向の情報と共にデータ記憶部51に順次保存されて3次元データが生成される。(図8のステップS2)。
【0062】
次いで、3次元画像データ生成部5のボリュームデータ生成部52は、データ記憶部51に保存されたBモードデータとその付帯情報(即ち、超音波送受信方向の情報)を読み出し、このBモードデータを用いた補間処理によって算出した3次元的なボクセル値を自己の記憶回路に保存してボリュームデータを生成する(図8のステップS3)。
【0063】
そして、ベクトル演算部54の法線ベクトル算出部541は、ボリュームデータ生成部52において生成されたボリュームデータの各ボクセルにおける法線ベクトルを上述の式(1)に基づいて算出する(図8のステップS4)。
【0064】
一方、ベクトル演算部54の走査ベクトル算出部542は、ボリュームデータ生成部52が生成したボリュームデータにおける各ボクセルの中心位置と超音波プローブ3の中心位置に基づいて走査ベクトルを算出し、視線ベクトル算出部543は、前記ボクセルの中心位置と画像観察者の視点位置に基づいて視線ベクトルを算出する(図8ステップS5)。
【0065】
但し、図8に示したフローチャートでは、法線ベクトルの算出(ステップS4)に後続して走査ベクトルと視線ベクトルを算出する場合について述べたが、これに限定されない。即ち、走査ベクトル及び視線ベクトルの算出は、3次元データやボリュームデータの生成に対して独立に行なうことができ、従って、上述のステップS1乃至ステップS4における各手順の何れかに後続あるいは何れかと並行して行なうことも可能である。
【0066】
次いで、ベクトル演算部54の内積演算部544は、前記ボクセルに対して走査ベクトル算出部542が算出した走査ベクトルと法線ベクトル算出部541が算出した法線ベクトルとの内積値βを各々のボクセルに対して算出する(図8のステップS6)。そして、算出された各ボクセルにおける内積値βと自己の記憶回路に予め保管されている閾値αを比較し(図8のステップS7)、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在する場合には、その比較結果をボリュームデータ補正部53に供給する。
【0067】
この比較結果を受信したボリュームデータ補正部53は、ボリュームデータ生成部52の記憶回路に保存されているボリュームデータを読み出し、上述の内積値βが閾値αより大きいボクセルとその周囲のボクセルのボクセル値に対しフィルタリング処理あるいは階調処理を行なってボリュームデータを補正する(図8のステップS8)。
【0068】
次いで、法線ベクトル算出部541は、ボリュームデータ補正部53において補正されたボリュームデータの各ボクセルに対し上述のステップS4と同様な演算を行なって法線ベクトルを算出し(図8のステップS9)、算出した法線ベクトルの情報をレンダリング演算部55へ供給する。
【0069】
一方、上述のステップS7において、内積値βが閾値αより大きいボクセルが存在しない場合、内積演算部544は、その比較結果を法線ベクトル算出部541へ供給し、法線ベクトル算出部541は、ステップS4において算出した法線ベクトルの情報をレンダリング演算部55へ供給する。
【0070】
次に、レンダリング演算部55は、法線ベクトル算出部541がステップS4あるいはステップS9において算出した法線ベクトルと視線ベクトル算出部543が算出した視線ベクトルとに基づいて各ボクセルのシェーディング値を算出し、更に、観察者の視点からボクセルの中心位置までの距離に基づいて各ボクセルの不透明度を算出する。そして、ステップS3においてボリュームデータ生成部52が生成したボリュームデータをその記憶回路から読み出し、このボリュームデータに対し上述のシェーディング値と不透明度を用いたレンダリング処理を行なって3次元画像データを生成する(図8ステップS10)。
【0071】
そして、表示部7の表示データ生成回路は、3次元画像データ生成部5のレンダリング演算部55において生成された3次元画像データに対し被検体情報等の付帯情報を付加して表示データを生成し、表示部7の変換回路は、表示データ生成回路が生成した表示データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行なってモニタに表示する(図8ステップS11)。
【0072】
次に、図9と図10を用いて本実施例の効果を模式的に説明する。図9(a)は、当該被検体から得られた3次元データに基づいてボリュームデータ生成部52が生成したボリュームデータを示しており、図9(b)は、このボリュームデータのボクセル値に基づいてベクトル演算部54の法線ベクトル算出部541が算出した各ボクセルの法線ベクトルを矢印で示している。
【0073】
一方、図10(a)は、ボリュームデータ補正部53による補正後のボリュームデータを示しており、図10(b)は、補正後のボリュームデータのボクセル値に基づいて法線ベクトル算出部541が算出した各ボクセルの法線ベクトルを示している。但し説明を簡単にするために、図9(a)及び図10(a)は、ボリュームデータの所定断面(X−Z断面)におけるボクセル値を示しており、図9(b)及び図10(b)は、上記断面のX方向及びZ方向におけるボクセル値の勾配に基づいて算出された各ボクセルの法線ベクトルを示している。
【0074】
又、図9(a)の各ボクセルに示した数値はボクセル値の具体例を示しており、ここではボクセル値「0」の臓器Aとボクセル値「1」の臓器Bの境界面Cに対して法線ベクトルを算出する場合について述べる。但し、境界面Cが超音波の送受信方向に対して略垂直に交差するボクセルB25は超音波入射角に依存する高エコーの影響を受け、他のボクセルのボクセル値と比較して特異的に高いボクセル値「5」を有している。
【0075】
このようなボクセル値を有するボリュームデータに対して法線ベクトルを算出する場合、例えば、ボクセルB24及びボクセルB26では、ボクセルB25における特異的なボクセル値「5」の影響を受け境界面Cに対する真の法線方向とは異なる方向の法線ベクトルN24及びN26が算出される。
【0076】
既に述べたように内積演算部544は、ボリュームデータ生成部52が生成したボリュームデータに対し法線ベクトル算出部541が算出した各ボクセルの法線ベクトルと走査ベクトル算出部542が算出した各ボクセルの走査ベクトルとの内積値βを計測し、この内積値βと閾値αを比較する。そして、ボリュームデータ補正部53は、この比較結果に基づいて上述のボリュームデータを補正する。このとき、ボリュームデータ補正部53は、このボリュームデータにおいて内積値βが閾値αより大きいボクセルB25を検出し、このボクセルB25に対してフィルタリング処理あるいは階調処理を行ない上述の高エコーの影響を低減する。
【0077】
図10(a)は、ボリュームデータ補正部53によって補正されたボリュームデータのボクセル値を示しており、ボクセルB25のボクセル値はフィルタリング処理あるいは階調処理によって周囲のボクセルのボクセル値に略等しい値に補正される。そして、補正後のボリュームデータを用いた法線ベクトル演算により、真の法線方向に略一致した法線ベクトルN24及び法線ベクトルN26が算出される(図10(b)参照)。
【0078】
以上述べた本発明の第1の実施例によれば、超音波入射角度に依存した高エコーの影響を受けているボクセルをボリュームデータの各ボクセルにおける法線ベクトルと走査ベクトルの内積値に基づいて特定し、このボクセルを中心とした所定領域に対してフィルタリング処理あるいは階調処理を行なうことにより、他の超音波情報を歪めることなく前記高エコーの影響を効果的に低減することができる。
【0079】
そして、フィルタリング処理等によって前記高エコーの影響が低減したボリュームデータを用いることにより臓器境界面等における正確な法線ベクトルの算出が可能となり、この法線ベクトルに基づくレンダリング処理によって良好な3次元画像データを生成することができる。
【0080】
又、上述の実施例では、補正後のボリュームデータの各ボクセルにおいて算出した法線ベクトルと視線ベクトルの情報を用いて補正前のボリュームデータをレンダリング処理しているため、空間分解能やコントラスト分解能を劣化させることなく有効なシェーディング処理を行なうことが可能となる。
【0081】
更に、高エコーの低減に際しては空間コンパウンド法を適用する必要がないため時間分解能が劣化することもない。
【0082】
上述の理由により、超音波ビームの入射角度に依存する高エコーの影響を時間分解能、空間分解能、更には、コントラスト分解能を劣化させることなく低減することが可能となり、良好な3次元画像データを得ることができる。
【実施例2】
【0083】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。上述の第1の実施例では、自己の送受信部2、超音波プローブ3及び受信信号処理部4を用いて被検体の3次元データを収集し、この3次元データに基づいて3次元画像データを生成する超音波診断装置100について述べたが、以下の第2の実施例では、別途設置された超音波診断装置から供給される3次元データに基づいて3次元画像データの生成及び表示を行なう画像データ表示装置について述べる。
【0084】
即ち、本実施例における画像データ表示装置では、ネットワーク等を介して超音波診断装置から供給される3次元データを用いて生成したボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する際、先ず、ボリュームデータの各ボクセルにおいて法線ベクトルと走査ベクトルを算出する。次いで、得られた法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定し、このボクセルを中心とした所定領域のボクセル値をフィルタリング処理あるいは階調処理によって補正する。そして、補正後のボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて新たに算出した法線ベクトルと画像データ観測者の視線方向を示す視線ベクトルに基づき補正前のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する。
【0085】
本発明の第2の実施例における画像データ表示装置の全体構成につき図11のブロック図を用いて説明する。但し、図1に示した超音波診断装置のユニットと略同様な機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0086】
この画像データ表示装置200は、超音波診断装置によって収集された3次元データを用いて3次元画像データを生成する3次元画像データ生成部5xと、この3次元画像データを表示する表示部7と、被検体情報や各種コマンド信号等を入力する入力部8と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部9を備えている。
【0087】
そして、3次元画像データ生成部5xは、別途設置された超音波診断装置が収集した当該被検体の3次元データをネットワーク10あるいは図示しない記憶媒体を介して保存するデータ記憶部51xと、この3次元データを補間処理して等方的なボクセルで構成されるボリュームデータを生成するボリュームデータ生成部52と、後述のベクトル演算部54によって算出される法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて上述のボリュームデータを補正するボリュームデータ補正部53を備え、更に、法線ベクトル、走査ベクトル及び視線ベクトルを算出し、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積演算等を行なうベクトル演算部54と、法線ベクトルと視線ベクトルに基づいてボリュームデータをレンダリング処理し3次元画像データを生成するレンダリング演算部55を備えている。
【0088】
超音波診断装置から供給された3次元データに基づく3次元画像データの生成に際し、3次元画像データ生成部5xのボリュームデータ生成部52は、ネットワーク10等を介して超音波診断装置から供給されデータ記憶部51xに一旦保存された3次元データを補間処理してボリュームデータを生成し、ベクトル演算部54は、このボリュームデータの各ボクセルにおいて法線ベクトルと走査ベクトルを算出する。更に、ベクトル演算部54は、得られた法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値を算出し、この内積値と予め設定された閾値とを比較する。
【0089】
一方、ボリュームデータ補正部53は、ベクトル演算部54による内積値と閾値との比較結果に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを前記ボリュームデータにおいて特定し、このボクセルを中心とした所定領域のボクセル値をフィルタリング処理あるいは階調処理によって補正する。そして、ベクトル演算部54は、補正後のボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて法線ベクトルを新たに算出し、レンダリング演算部55は、この法線ベクトルと画像データ観測者の視線方向を示す視線ベクトルに基づき補正前のボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成する。
【0090】
以上述べた本発明の第2の実施例によれば、上述の第1の実施例と同様にして、超音波入射角度に依存した高エコーの影響を受けているボクセルをボリュームデータの各ボクセルにおける法線ベクトルと走査ベクトルの内積値に基づいて特定し、このボクセルを中心とした所定領域に対してフィルタリング処理あるいは階調処理を行なうことにより、他の超音波情報を歪めることなく前記高エコーの影響を効果的に低減することができる。そして、フィルタリング処理等によって前記高エコーの影響が低減したボリュームデータを用いることにより臓器境界面等における正確な法線ベクトルの算出が可能となり、この法線ベクトルに基づくレンダリング処理によって良好な3次元画像データを生成することができる。
【0091】
又、上述の実施例では、補正後のボリュームデータの各ボクセルにおいて算出した法線ベクトルと視線ベクトルの情報を用いて補正前のボリュームデータをレンダリング処理しているため、空間分解能やコントラスト分解能を劣化させることなく有効なシェーディング処理を行なうことが可能となる。
【0092】
上述の理由により、超音波ビームの入射角度に依存する高エコーの影響を時間分解能、空間分解能、更には、コントラスト分解能を劣化させることなく低減することが可能となり、良好な3次元画像データを得ることができる。
【0093】
更に、上述の実施例における画像データ表示装置は、別途設置された超音波診断装置からネットワーク等を介して供給された3次元データに基づいて3次元画像データを生成することができるため、操作者は、時間や場所の制約をあまり受けることなく当該被検体の3次元画像データを生成あるいは観察することが可能となる。
【0094】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、変形して実施することが可能である。例えば、上述の第1の実施例及び第2の実施例では、Bモードデータに基づいてボリュームデータを生成する場合について述べたが、カラードプラデータ等、他の超音波データに基づいてボリュームデータを生成してもよい。
【0095】
又、2次元配列された振動素子による3次元走査について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、1次元配列された振動素子を配列方向に対して垂直な方向に移動あるいは回動させることによって3次元走査を行なってもよい。更に、コンベックス走査やリニア走査、更にはラジアル走査等、セクタ走査以外の走査法によってボリュームデータを生成してもよい。
【0096】
一方、ボリュームデータの補正におけるフィルタリング処理の範囲情報や閾値αの情報はボリュームデータ補正部53やベクトル演算部54の記憶回路に予め保管されている場合について述べたが、操作者が入力部8にて設定あるいは更新しても構わない。この方法によれば、3次元画像データの観察下にて最適な条件を設定することができる。
【0097】
又、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて高エコーの影響を受けたボクセルを特定する場合について述べたが、法線ベクトルと走査ベクトルとの交差角度が算出できる他の方法であっても構わない。
【0098】
更に、上述の実施例では、法線ベクトルと走査ベクトルとの内積値に基づいて上述の高エコーの影響を受けたボクセルを特定する機能をベクトル演算部54が有している場合について述べたが、ボリュームデータ補正部53がこの機能を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例の超音波診断装置が備える送受信部及び受信信号処理部の構成を示すブロック図。
【図3】同実施例における超音波プローブの座標と超音波送受信方向の関係を示す図。
【図4】同実施例のデータ記憶部に保存されたBモードデータを模式的に示す図。
【図5】同実施例のボリュームデータ生成部が行なう補間処理を模式的に示す図。
【図6】同実施例におけるベクトル演算部の具体的な構成を示すブロック図。
【図7】同実施例のベクトル演算部が算出する法線ベクトル、走査ベクトル及び視線ベクトルを示す図。
【図8】同実施例における3次元画像データの生成手順を示すフローチャート。
【図9】同実施例における補正前のボリュームデータとこのボリュームデータにおいて算出される法線ベクトルを示す図。
【図10】同実施例における補正後のボリュームデータとこのボリュームデータにおいて算出される法線ベクトルを示す図。
【図11】本発明の第2の実施例における画像データ表示装置の全体構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0100】
2…送受信部
21…送信部
211…レートパルス発生器
212…送信遅延回路
213…駆動回路
22…受信部
221…A/D変換器
222…受信遅延回路
223…加算器
3…超音波プローブ
4…受信信号処理部
411…包絡線検波器
412…対数変換器
5、5x…3次元画像データ生成部
51、51x…データ記憶部
52…ボリュームデータ生成部
53…ボリュームデータ補正部
54…ベクトル演算部
541…法線ベクトル算出部
542…走査ベクトル算出部
543…視線ベクトル算出部
544…内積演算部
55…レンダリング演算部
7…表示部
8…入力部
9…システム制御部
10…ネットワーク
100…超音波診断装置
200…画像データ表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の3次元領域に対して超音波を送受信するための振動素子を有した超音波プローブと、
前記振動素子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、
前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記ボリュームデータの法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて前記法線ベクトルを補正するベクトル演算手段と、
補正された法線ベクトルに基づき、前記ボリュームデータ生成手段が生成したボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成するレンダリング演算手段とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
被検体の3次元領域に対して超音波を送受信するための振動素子を有した超音波プローブと、
前記振動素子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、
前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記ボリュームデータのボクセルに対し法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するベクトル演算手段と、
この特定結果に基づいて前記ボリュームデータを補正するボリュームデータ補正手段と、
このボリュームデータ補正手段が補正したボリュームデータのボクセルに対し前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルに基づいて、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをレンダリング処理し3次元画像データを生成するレンダリング演算手段とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
前記ボリュームデータ生成手段は、前記被検体の3次元領域から収集された3次元データを補間処理して前記ボリュームデータを生成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した超音波診断装置。
【請求項4】
前記ベクトル演算手段は、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータ、あるいは、前記ボリュームデータ補正手段が補正した前記ボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて前記法線ベクトルを算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した超音波診断装置。
【請求項5】
前記ベクトル演算手段は、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータにおけるボクセルの中心位置情報と前記超音波プローブの中心位置情報に基づき、前記ボクセルに対する超音波送受信方向を示す前記走査ベクトルを算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した超音波診断装置。
【請求項6】
前記ベクトル演算手段は、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルの内積値を算出し、この内積値と予め設定された閾値との比較によって前記高エコーの影響を受けたボクセルを特定することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記ボリュームデータ補正手段は、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータにおける前記ベクトル演算手段が特定したボクセルあるいはこのボクセルを中心とした所定領域に対してフィルタリング処理あるいは階調処理の少なくとも何れかを行なうことを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記レンダリング演算手段は、前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルと画像観察者の視線ベクトルに基づき、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをシェーディング処理し前記3次元画像データを生成することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項9】
被検体から得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するベクトル演算手段と、
この特定結果に基づいて前記ボリュームデータを補正するボリュームデータ補正手段と、
このボリュームデータ補正手段が補正したボリュームデータのボクセルに対し前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルに基づいて、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成するレンダリング演算手段と、
前記3次元画像データを表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする画像データ表示装置。
【請求項10】
前記ベクトル演算手段は、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータ、あるいは、前記ボリュームデータ補正手段が補正した前記ボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて前記法線ベクトルを算出することを特徴とする請求項9記載の画像データ表示装置。
【請求項11】
ボリュームデータ生成手段が、被検体に対する超音波の送受信によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するステップと、
ベクトル演算手段が、前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するステップと、
ボリュームデータ補正手段が、前記ベクトル演算手段の特定結果に基づいて所定領域の前記ボリュームデータを補正するステップと、
前記ベクトル演算手段が、補正された前記ボリュームデータのボクセルに対して法線ベクトルを新たに算出するステップと、
レンダリング演算手段が、前記ボリュームデータ生成手段が生成したボリュームデータを新たに算出された前記法線ベクトルに基づいてレンダリング処理し3次元画像データを生成するステップとを
有することを特徴とする3次元画像データ生成方法。
【請求項1】
被検体の3次元領域に対して超音波を送受信するための振動素子を有した超音波プローブと、
前記振動素子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、
前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記ボリュームデータの法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて前記法線ベクトルを補正するベクトル演算手段と、
補正された法線ベクトルに基づき、前記ボリュームデータ生成手段が生成したボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成するレンダリング演算手段とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
被検体の3次元領域に対して超音波を送受信するための振動素子を有した超音波プローブと、
前記振動素子を駆動して超音波の送信を行なう送信手段と、
前記超音波の送受信によって得られた前記被検体からの反射信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記ボリュームデータのボクセルに対し法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するベクトル演算手段と、
この特定結果に基づいて前記ボリュームデータを補正するボリュームデータ補正手段と、
このボリュームデータ補正手段が補正したボリュームデータのボクセルに対し前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルに基づいて、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをレンダリング処理し3次元画像データを生成するレンダリング演算手段とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
前記ボリュームデータ生成手段は、前記被検体の3次元領域から収集された3次元データを補間処理して前記ボリュームデータを生成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した超音波診断装置。
【請求項4】
前記ベクトル演算手段は、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータ、あるいは、前記ボリュームデータ補正手段が補正した前記ボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて前記法線ベクトルを算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した超音波診断装置。
【請求項5】
前記ベクトル演算手段は、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータにおけるボクセルの中心位置情報と前記超音波プローブの中心位置情報に基づき、前記ボクセルに対する超音波送受信方向を示す前記走査ベクトルを算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した超音波診断装置。
【請求項6】
前記ベクトル演算手段は、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルの内積値を算出し、この内積値と予め設定された閾値との比較によって前記高エコーの影響を受けたボクセルを特定することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記ボリュームデータ補正手段は、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータにおける前記ベクトル演算手段が特定したボクセルあるいはこのボクセルを中心とした所定領域に対してフィルタリング処理あるいは階調処理の少なくとも何れかを行なうことを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記レンダリング演算手段は、前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルと画像観察者の視線ベクトルに基づき、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをシェーディング処理し前記3次元画像データを生成することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項9】
被検体から得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するボリュームデータ生成手段と、
前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するベクトル演算手段と、
この特定結果に基づいて前記ボリュームデータを補正するボリュームデータ補正手段と、
このボリュームデータ補正手段が補正したボリュームデータのボクセルに対し前記ベクトル演算手段が新たに算出した法線ベクトルに基づいて、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータをレンダリング処理して3次元画像データを生成するレンダリング演算手段と、
前記3次元画像データを表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする画像データ表示装置。
【請求項10】
前記ベクトル演算手段は、前記ボリュームデータ生成手段が生成した前記ボリュームデータ、あるいは、前記ボリュームデータ補正手段が補正した前記ボリュームデータにおけるボクセル値の勾配に基づいて前記法線ベクトルを算出することを特徴とする請求項9記載の画像データ表示装置。
【請求項11】
ボリュームデータ生成手段が、被検体に対する超音波の送受信によって得られた3次元データに基づいてボリュームデータを生成するステップと、
ベクトル演算手段が、前記ボリュームデータのボクセルにおける法線ベクトル及び走査ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと前記走査ベクトルとの角度情報に基づいて超音波入射角度に依存する高エコーの影響を受けたボクセルを特定するステップと、
ボリュームデータ補正手段が、前記ベクトル演算手段の特定結果に基づいて所定領域の前記ボリュームデータを補正するステップと、
前記ベクトル演算手段が、補正された前記ボリュームデータのボクセルに対して法線ベクトルを新たに算出するステップと、
レンダリング演算手段が、前記ボリュームデータ生成手段が生成したボリュームデータを新たに算出された前記法線ベクトルに基づいてレンダリング処理し3次元画像データを生成するステップとを
有することを特徴とする3次元画像データ生成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−301218(P2007−301218A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133820(P2006−133820)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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