説明

超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラム

【課題】 従来より広い領域についての血管の特徴量を計算することができ、その結果を観察者が迅速且つ簡単に視認することができる超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】 被検体の所定領域を超音波で走査することで、前記所定領域内の各位置における速度情報の分布を、所定期間に亘って検出する検出ユニットと、前記所定期間に亘る前記各位置の速度情報を用いて、前記所定期間における前記各位置の流速最大値、流速最小値、流速平均値の少なくともいずれか一つに基づく少なくとも一つの特徴量を計算する計算ユニットと、前記特徴量を所定の形態で表示する表示ユニットと、を具備する超音波診断装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カラーフローマッピング(Color Flow Mapping :CFM)等の血流情報を検出可能な超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに設けられた振動素子から発生する超音波パルスを被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる超音波反射波を振動素子により受信して生体情報を収集するものであり、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作で画像データのリアルタイム表示が可能となるため、各種臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
また、上記超音波診断装置は、循環器系の画像診断においても利用される。例えば、パルスドプラ法によって体表面から所望の深さにある特定部位における血流速度を計測し、例えばPI(Pulasatility Index)、RI(Resistance Index)、S/D等の血流に関する特徴量、流速最大値、流速平均値、流速最小値等の流速指標値を計算し、リアルタイムで表示する。術者は、表示される血流指標を観察することで、患者の血流状態を迅速に視認することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波診断装置では、PI、RI、S/D、最大値、平均値、最小値等の種々の血流指標値を計算する場合、パルスドプラ法を用いるため、例えば1、又は2ラスタ分程度の局所的な領域についての血流指標しか計算することができない。従って、医師等の観察者は、局所的な血流状態を迅速に視認することはできるが、一定以上の広い領域についての血流状態を迅速に視認することはできない(図15参照)。
【0005】
また、上述の様に、従来の超音波診断装置では局所的な領域についての血流指標値しか計算することができない。このため、例えば従来の超音波診断装置を用いて頚部血管全体の血流速度を計測する場合には、対象血管を長軸像で映像化し、パルスドプラのサンプリング位置(ゲート位置)を血管の長軸に沿って移動させながら、血管全体に異常がないかを順次視認する必要がある。このため、患者に身体的負担を、医師等に作業負担を強いることになる。
【0006】
上記事情を鑑みて、従来より広い領域についての血管の特徴量を計算することができ、その結果を観察者が迅速且つ簡単に視認することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る超音波診断装置は、被検体の所定領域を超音波で走査することで、前記所定領域内の各位置における速度情報の分布を、所定期間に亘って検出する検出ユニットと、前記所定期間に亘る前記各位置の速度情報を用いて、前記所定期間における前記各位置の流速最大値、流速最小値、流速平均値の少なくともいずれか一つに基づく少なくとも一つの特徴量を計算する計算ユニットと、前記特徴量を所定の形態で表示する表示ユニットと、を具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
【図2】図2は、本広域特徴量画像生成機能に従う処理(広域特徴量画像生成処理)の流れを示したフローチャートである。
【図3】図3は、血流検出ユニット24において生成され、RAWデータメモリ25が記憶するフレーム毎のカラーRAWデータの一例を示した図である。
【図4】図4は、血流情報・特徴量情報計算処理において流速指標値記憶部260、特徴量記憶部261に記憶される各情報の一例を示した図である。
【図5】図5は、モニター14にBモード画像に重畳して表示される広域特徴量画像の一例を示した図である。
【図6】図6は、変形例1に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図7】図7は、変形例2に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図8】図8は、変形例3に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図9】図9は、変形例4に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図10】図10は、変形例5に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図11】図11は、変形例6に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図12】図12は、変形例6に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図13】図13は、変形例7に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図14】図14は、変形例7に係る広域特徴量画像生成機能を説明するための図である。
【図15】図15は、従来のパルスドプラ法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、血流検出ユニット24、RAWデータメモリ25、特徴量計算ユニット26、画像生成ユニット27、表示処理ユニット28、制御プロセッサ(CPU)29、表示処理ユニット30、記憶ユニット31、インタフェースユニット32を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0011】
超音波プローブ12は、被検体に対して超音波を送信し、当該送信した超音波に基づく被検体からの反射波を受信するデバイス(探触子)であり、その先端に複数に配列された圧電振動子、整合層、バッキング材等を有している。圧電振動子は、超音波送信ユニット21からの駆動信号に基づきスキャン領域内の所望の方向に超音波を送信し、当該被検体からの反射波を電気信号に変換する。整合層は、当該圧電振動子に設けられ、超音波エネルギーを効率良く伝播させるための中間層である。バッキング材は、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止する。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送受信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0012】
なお、本実施形態に係る超音波プローブ12は、二次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列されたプローブ)、又はメカニカル4Dプローブ(超音波振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なプローブ)といったボリュームデータを取得可能なものであってもよい。また、当然ながら、超音波プローブ12は一次元アレイプローブであってもよい。
【0013】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。
【0014】
モニター14は、表示処理ユニット30からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0015】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。トリガ発生回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのトリガパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各トリガパルスに与えられる。パルサ回路は、このトリガパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0016】
なお、超音波送信ユニット21は、制御プロセッサ29の指示に従って所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0017】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、遅延回路、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたアナログのエコー信号をデジタルエコー信号に変換する。遅延回路では、デジタル変換されたたエコー信号に対し受信指向性を決定し、受信ダイナミックフォーカスを行うのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0018】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。
【0019】
血流検出ユニット24は、受信ユニット22から受け取ったエコー信号から血流信号を抽出し、血流データを生成する。血流の抽出は、通常CFM(Color Flow Mapping)で行われる。この場合、血流信号を解析し、血流データとして平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0020】
RAWデータメモリ25は、Bモード処理ユニット23から受け取った複数のBモードデータを用いて、超音波走査線上のBモードデータであるBモードRAWデータを生成する。また、RAWデータメモリ25は、血流検出ユニット24から受け取った複数の血流データを用いて、超音波走査線上の血流データであるカラーRAWデータを生成する。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、RAWデータメモリ25の後にフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0021】
特徴量計算ユニット26は、後述する広域特徴量画像生成機能において、制御プロセッサ29からの制御に基づいて、CFMによって得られた所定期間に亘る血流情報をRAWデータメモリ25から受け取り、血管内の各位置についての血流に関する流速指標値、特徴量を計算する。ここで、血流に関する流速指標値とは、例えば最大値、平均値、最小値等であり、血流に関する特徴量とは、例えばPI、RI、S/D等である。
【0022】
画像生成ユニット27は、RAWデータメモリ25から受け取ったBモードRAWデータ、カラーRAWデータを用いて、Bモード画像データ、CFM画像データ、ボリュームデータをそれぞれ生成する。また、画像生成ユニット27は、ボリュームレンダリング、多断面変換表示(MPR:multi planar reconstruction)、最大値投影表示(MIP:maximum intensity projection)等の所定の画像処理を行う。さらに、画像生成ユニット27は、特徴量計算ユニット26において計算された各位置毎の特徴量を用いて、特徴量の値に応じて異なる色彩が割り当てられた特徴量画像を生成する。
【0023】
なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、画像処理ユニット27の後に二次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0024】
表示処理ユニット28は、画像処理ユニット28において生成・処理された各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。
【0025】
制御プロセッサ29は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ29は、記憶ユニット31から後述する広域特徴量画像生成機能を実現するための専用プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0026】
記憶ユニット31は、後述する広域特徴量画像生成機能を実現するための専用プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、計算された特徴量の値に応じて異なる色彩を割り当てるためのカラーテーブル、その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、図示しない画像メモリ中の画像の保管などにも使用される。記憶ユニット31のデータは、インタフェースユニット32を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0027】
インタフェースユニット32は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェースユニット32よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0028】
(広域特徴量画像生成機能)
次に、本超音波診断装置1が有する広域特徴量画像生成機能について説明する。この機能は、CFMによって得られた所定期間に亘る血流情報を用いて、血管内の各位置について血流に関する流速指標値と特徴量とを計算し、特徴量の値に応じて異なる色彩を割り当てることで特徴量画像を生成し表示するものである。これにより、従来に比して広範な領域についての特徴量を迅速且つ簡単に観察することができる。
【0029】
図2は、本広域特徴量画像生成機能に従う処理(広域特徴量画像生成処理)の流れを示したフローチャートである。以下、各ステップにおける処理の内容について説明する。
【0030】
[患者情報・送受信条件を入力受:ステップS1]
入力装置13を介して患者情報の入力、被検体の所定領域を超音波走査するための撮像モード、スキャンシーケンス、送受信条件等の選択が実行される(ステップS1)。ここでは、撮像モードとしてCFMモードが選択され、送受信条件としてサンプルボリューム、送信電圧等が入力される。入力、選択された各種情報・条件等は、自動的に記憶ユニット31に記憶される。
【0031】
[CFMモードによる血流情報の取得:ステップS2]
超音波プローブ12が被検体表面の所望の位置に当接され、診断部位(今の場合所望の血管)を含む領域を被走査領域として、CFMモードによる超音波走査が実行される。CFMモードによる超音波走査によって取得されたエコー信号は、逐次超音波受信ユニット22を経由して血流検出ユニット24に送られる。血流検出ユニット24は、CFMによって血流信号を抽出し、平均速度、分散、パワー等の情報を多点について求め、血流の速度情報(カラーデータ)をフレーム毎に生成する。RAWデータメモリ25は、血流検出ユニット24から受け取った複数のカラーデータを用いてカラーRAWデータをフレーム毎に生成する(ステップS2)。
【0032】
[流速指標値、特徴量の計算:ステップS3]
次に、特徴量計算ユニット26は、CFMによって得られた血流情報のうち所定期間に亘る血流情報をRAWデータメモリ25から受け取り、血管内の各位置についての流速指標値、特徴量を計算する(ステップS3)。
【0033】
図3は、血流検出ユニット24において生成され、RAWデータメモリ25が記憶するフレーム毎のカラーRAWデータの一例を示した図である。同図は、血流検出ユニット24において生成された、第nフレームにおけるサンプルx、ラスタyの速度情報をV(x,y,n)と定義し、フレーム数N、サンプル数400、ラスタ数200とした場合の例である。また、第1フレームから第Nフレームまでのサンプルx、ラスタyにおける最大速度を、Vmax(x,y)、サンプルx、ラスタyにおける最小速度をVmin(x,y)、サンプルx、ラスタyにおける平均速度をVmean(x,y)と定義する。さらに、第1フレームから第Nフレームまでのサンプルx、ラスタyにおけるPI(x,y)、RI(x,y)をそれぞれ以下の式(1)、(2)によって定義する。
【0034】
PI(x,y)={Vmax(x,y)−Vmin(x,y)}/Vmean(x,y) (1)
RI(x,y)={Vmax(x,y)−Vmin(x,y)}/Vmax(x,y) (2)
特徴量計算ユニット26は、第1フレームの速度情報V(x,y,1)(ただし、x,yはそれぞれ1≦x≦400,1≦y≦200を満たす自然数)をRAWデータメモリ25から受け取ると、自身が有する一時記憶メモリに記憶する。
【0035】
次に、特徴量計算ユニット26は、第2フレームの速度情報V(x,y,2)をRAWデータメモリ25から受け取ると、自身が有する一時記憶メモリに記憶すると共に、第1フレームの速度情報V(x,y,1)と比較して、サンプルx、ラスタyにおける最大速度Vmax(x,y)、最小速度をVmin(x,y)、平均速度Vmean(x,y)を計算すると共に、得られたVmax(x,y)、Vmin(x,y)、Vmean(x,y)を用いて、上記式(1)、(2)に従ってPI(x,y)、RI(x,y)をそれぞれ計算する。さらに、特徴量計算ユニット26は、取得したVmax(x,y)、Vmin(x,y)、Vmean(x,y)を流速指標値記憶部260に、PI(x,y)、RI(x,y)を自身が有する特徴量記憶部261に、それぞれ記憶する。
【0036】
次に、特徴量計算ユニット26は、第3フレームの速度情報V(x,y,3)をRAWデータメモリ25から受け取ると、自身が有する一時記憶メモリに記憶すると共に、速度情報V(x,y,3)と第2フレームまでの最大速度Vmax(x,y)とを比較して、速度情報V(x,y,3)が第2フレームまでの最大速度Vmax(x,y)よりも大きい場合には最大速度Vmax(x,y)を更新し、速度情報V(x,y,3)が第2フレームまでの最大速度Vmax(x,y)より小さい場合には当該最大速度Vmax(x,y)を維持する。また、特徴量計算ユニット26は、Vmin(x,y)についての計算も同様にして実行すると共に、第1、第2、第3フレームの速度情報(或いは第2フレームまでの平均速度Vmean(x,y)と第3フレームの速度情報V(x,y,3))とを用いて、第3フレームまでの平均速度Vmean(x,y)を計算する。さらに、特徴量計算ユニット26は、得られたVmax(x,y)、Vmin(x,y)、Vmean(x,y)を用いて、上記式(1)、(2)に従ってPI(x,y)、RI(x,y)をそれぞれ計算し、取得したVmax(x,y)、Vmin(x,y)、Vmean(x,y)を流速指標値記憶部260に、PI(x,y)、RI(x,y)を自身が有する特徴量記憶部261に、それぞれ記憶する。
【0037】
以降、第Nフレームまで、同様の処理が逐次実行される。その結果、流速指標値記憶部260、特徴量記憶部261には、それぞれ例えば図4に示すような各情報が記憶されることになる。
【0038】
なお、PI(x,y)、RI(x,y)の計算、及び特徴量記憶部261への記憶(更新)は、Vmax(x,y)、Vmin(x,y)、Vmean(x,y)の計算や流速指標値記憶部260への記憶(更新)と同じタイミングである必要はない。例えば、CFMによって得られる血流情報やECG等の生体情報によって心拍を検出し、これらを基準として(例えば心拍毎に)PI(x,y)、RI(x,y)の計算、及び特徴量記憶部261への記憶(更新)を行うようにしてもよい。
【0039】
[広域特徴量画像の生成・表示:ステップS4、S5]
次に、画像生成ユニット27は、取得した血流情報を用いて、広域特徴量画像を生成する(ステップS4)。すなわち、画像生成ユニット27は、ステップS4において得られたPI(x,y)の値に応じて異なる色彩を対応する位置に割り当てることで、特徴量をPI(x,y)とする広域特徴量画像を生成する。また、画像生成ユニット27は、ステップS4において得られたRI(x,y)の値に応じて異なる色彩を対応する位置に割り当てることで、特徴量をRI(x,y)とする広域特徴量画像を生成する。生成された広域特徴量画像は、所定の表示処理を受けた後、所定の形態にてモニター14に表示される(ステップS5)。
【0040】
図5は、モニター14にBモード画像に重畳して表示される広域特徴量画像の一例を示した図である。同図に示すように、従来に比して広い領域についてのPI(x,y)或いはRI(x,y)を可視化することができる。
【0041】
以上述べた広域特徴量画像生成機能は、種々変形可能である。以下、本広域特徴量画像生成機能の代表的な変形例について説明する。
【0042】
(変形例1)
変形例1に係る広域特徴量画像生成機能は、図6に示すように、CDI画像と広域特徴量画像とを並列表示するものである。本変形例によれば、観察者は、同時に表示されたCDI画像と広域特徴量画像とを同時に観察することで、血流速度と血流の特徴量とを迅速且つ容易に視認することができる。特に、広域特徴量画像はCFMによって取得される速度情報を利用していることから、おおよそCDI画像と同範囲の広域特徴量画像が同時に表示されることになる。これにより、CDI画像と広域特徴量画像との対応付けや比較を容易に行うことができ、観察効率を向上させることができる。
【0043】
(変形例2)
変形例2に係る広域特徴量画像生成機能では、例えば左右の頚動脈の広域特徴量画像を比較したい場合等に、図7に示すように、複数断面の広域特徴量画像を同時に表示する。本変形例によれば、観察者は、同時に表示される複数の広域特徴量画像を観察することで、空間的に離れた各部位の特徴量を、容易且つ迅速に比較することができる。
【0044】
なお、本変形例2に係る表示形態は、例えば異なるタイミングで取得した複数の広域特徴量画像を同時に観察したい場合にも有効である。
【0045】
(変形例3)
変形例3に係る広域特徴量画像生成機能は、複数の広域特徴量画像を空間的な対応付けをして一枚の合成画像(フュージョン画像、つなぎ合わせ画像、連結画像、パノラマ画像とも言う)として表示するものである。この合成画像は、例えばBモードのフレーム間の画像変化から移動量を算出し、複数の広域特徴量画像の空間的な対応付けをして繋ぎ合わせることで、生成することができる。
【0046】
図8は、本変形例3に係る、複数の広域特徴量画像によって生成された合成画像の一例を示している。図8と図5とを比較してわかるように、合成画像により、さらに広い領域における血流の特徴量を、迅速且つ容易に視認することができる。
【0047】
(変形例4)
変形例4に係る広域特徴量画像生成機能は、計算して得られた特徴量情報、流速指標値を文字情報として表示するものである。
【0048】
図9は、本変形例4に係る表示形態を説明するための図である。同図に示すように、例えばCDI画像(或いは所定の広域特徴量画像)と共に、PI等の特徴量情報、Vmax等の血流情報を文字情報として表示しても、流速指標値と血流の特徴量とを迅速且つ容易に視認することが可能である。
【0049】
(変形例5)
変形例5に係る広域特徴量画像生成機能は、計算して得られた特徴量情報をグラフ表示するものである。
【0050】
図10は、本変形例5に係る表示形態を説明するための図である。同図に示すように、例えば入力装置13を介してCDI画像上に所望の経路A−Bを設定すると、計算結果に基づいて当該経路A−BについてのPI、RIの空間変化率を示すグラフが作成され、同図ように表示される。この様な特徴量情報のグラフ表示によっても、流速指標値と血流の特徴量とを迅速且つ容易に視認することが可能である。
【0051】
(変形例6)
変形例6に係る広域特徴量画像生成機能は、広域特徴量画像上において所望の位置(例えば、PI値が高い位置)を特定し、当該特定された位置にサンプリングポジションを自動設定してパルスドプラを実行するものである。
【0052】
例えば、図11に示すような広域特徴量画像が取得され表示される場合を想定する。係る場合において、入力装置13を介してパルスドプラの開示指示が入力されると、例えばPI値が最大となる位置を自動検出し、所望の位置Pが特定される。制御プロセッサ29は、特定された位置Pにサンプリングポジションを自動設定し、パルスドプラを実行して、位置Pについて例えば図12に示すようなドプラ波形を取得する。なお、サンプリングポジションを自動設定した後のパルスドプラの実行タイミングは、装置側で自動的に判断してもよいし、入力装置13から入力される操作者からの指示に応答して決定してもよい。
【0053】
(変形例7)
変形例7に係る広域特徴量画像生成機能は、特徴量が計測された領域(特徴量計測領域)をつなぎ合わせることで、表示される血管のより多くの領域に関する特徴量を一度に表示するものである。
【0054】
図13、図14は、本変形例7に係る表示形態を説明するための図である。図13に示す様に、ステップS3において個別に計算された特徴量計測領域a1、a2、a3を空間的対応を取りながらつなぎ合わせることで(連結することで)、血管の多くの領域に関する特徴量を示す広域特徴量画像Aを生成し表示することができる。
【0055】
また、図13に示したような複数の特徴量計測領域を有する広域特徴量画像を、変形例3で述べた手法に従って空間的対応を取りながらつなぎ合わせることで(連結することで)、図14に示す様な一枚の合成画像を生成し表示することも可能である。この様な合成画像により、さらに広範囲での血流特徴量を、迅速かつ容易に視認することが可能となる。
【0056】
なお、ステップS3における特徴量計算は、一心拍毎或いは複数心拍毎を単位として実行することができる。これは、一心拍或いは複数心拍に亘る第1フレームから第Nフレームまでの各フレームにおける速度情報V(x,y,n)につき(nは1≦n≦Nを満たす整数)、ステップS3で述べた特徴量計算を行うことで実現できる。図13、図14のつなぎ合わせ画像を作成する場合、各特徴量領域における特徴量は、同一心拍数を単位として計算したものであることが好ましい。また、各特徴量領域につき複数心拍を単位として特徴量を取得する場合、各特徴量領域につき各心拍毎の特徴量を計算して複数心拍に対応する特徴量を計算し、これらの平均を計算するようにしてもよい。
【0057】
(効果)
以上述べた本超音波診断装置によれば、CFMによって得られた所定期間に亘る血流情報を用いて、血管内の各位置について血流に関するPI値等の特徴量を計算し、その値に応じて異なる色彩を割り当てることで、特徴量画像を生成し表示することができる。従って、従来のパルスドプラに比して広い領域についてのPI値等の特徴量を計算し、その結果を広域特徴量画像として表示することができる。操作者は、表示された広域特徴量画像を観察することで、従来よりも広い血管領域についての流速指標値と特徴量とを迅速且つ容易に視認することができる。
【0058】
また、従来の超音波診断装置においては、パルスドプラのサンプリングポジションを血管に沿って移動させることにより血管全体の検査していたため時間がかっていた。これに対し、例えば頸部血管超音波検査において血流速度の計測を行う際に、本広域特徴量画像によって対象血管を長軸像で描出し、スクリーニングを実行して異常の有無を迅速且つ簡便に判別することができる。その結果、操作者は、異常がなければ検査を終了し、異常があればパルスドプラのサンプリングポジションを移動させ精密検査を行えばよく、検査効率を向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0060】
(1)例えば、本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0061】
(2)CFMモードによって取得された血流情報を記憶しておき、事後的に本広域特徴量画像を生成し表示するようにしてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態においては、取得された特徴量の値に応じて異なる色彩を対応する位置に割り当てることで、広域特徴量画像を生成し表示する例を示した。しかしながら、当該例に構成されず、例えば取得された流速指標値の値に応じて異なる色彩を対応する位置に割り当てることで、広域流速指標値画像を生成し表示するようにしてもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、CFMを行う撮像モードによって得られた信号列を用いて速度情報の空間分布を生成し、広域特徴量画像生成処理を実行する場合を例として説明した。しかしながら、当該例に限定されず、他の撮像モードによって得られた信号列を用いて速度情報の空間分布を生成し、広域特徴量画像生成処理を実行することも可能である。例えば、Bモードスキャンによって取得した信号系列に対してドプラ処理を実行する撮像モードによって得られた信号列を用いて速度情報の空間分布を生成し、広域特徴量画像生成処理を実行することができる。さらに、上記撮像モードの他に、例えばスキャン範囲を絞ったBモードスキャンを高速で実行し、得られるBモード画像のフレーム間の相関処理(例えばスペックルトラッキング処理)を行うことで、速度情報の空間分布を生成することができる。本広域特徴量画像生成処理は、このような速度情報の空間分布用いても実行可能である。
【0064】
また、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…血流検出ユニット、25…RAWデータメモリ、26…特徴量計算ユニット、27…画像生成ユニット、28…表示処理ユニット、29…制御プロセッサ、30…記憶ユニット、31…インタフェースユニット、260…流速指標値記憶部、261…特徴量記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定領域を超音波で走査することで、前記所定領域内の各位置における速度情報の分布を、所定期間に亘って検出する検出ユニットと、
前記所定期間に亘る前記各位置の速度情報を用いて、前記所定期間における前記各位置の流速最大値、流速最小値、流速平均値の少なくともいずれか一つに基づく少なくとも一つの特徴量を計算する計算ユニットと、
前記特徴量を所定の形態で表示する表示ユニットと、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記特徴量は、PI(Pulasatility Index)、RI(Resistance Index)、S/Dのうちの少なくとも一つを含む請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記検出ユニットは、カラードプラ―モードを用いて前記所定領域内の各位置における速度情報の分布を、所定期間に亘って検出すること請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの特徴量のそれぞれに応じて異なる色相が割り当てられた、少なくとも一つの指標画像を生成する画像生成ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記少なくとも一つの指標画像を表示する請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記表示ユニットは、前記少なくとも一つの指標画像とカラードプラ画像とを同時に表示する請求項4記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像生成ユニットは、前記少なくとも一つの指標画像を空間的に対応付けて繋ぎ合わせることで、合成画像を生成し、
前記表示ユニットは、前記合成画像を表示する請求項4記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示ユニットは、複数の前記指標画像を同時に表示する請求項4記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記計算ユニットは、前記所定期間における前記各位置の流速最大値、流速最小値、流速平均値の少なくともいずれか一つに基づく複数の前記特徴量を計算し、
前記画像生成ユニットは、前記複数の特徴量のうちの第1の特徴量を用いて前記指標画像を生成し、
前記表示ユニットは、前記第1の特徴量を用いて生成された前記指標画像と、
前記複数の特徴量のうち前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量と、を所定の形態で表示する請求項4項記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記表示ユニットは、入力装置によって設定された所定の経路に関する空間的な変化を示すグラフとして、前記流速指標値及び特徴量のうちの少なくとも一方を表示する請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
パルスドプラモードを実行する場合において、前記流速指標値及び特徴量のうちの少なくとも一方に基づいて、サンプリングポジションの位置を決定する決定ユニットをさらに具備する請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記計算ユニットは、心拍又は脈拍を基準として前記流速指標値及び特徴量のうちの少なくとも一方を計算する請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記計算ユニットは、前記少なくとも一つの特徴量を一心拍、或いは複数の心拍単位で計算する請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記検出ユニットは、Bモードスキャンによって取得した信号系列に対してドプラ処理を実行する撮像モードを用いて、所定期間に亘って前記所定領域内の各位置における速度情報の分布を検出すること請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記検出ユニットは、Bモードスキャンによって取得した複数の画像を用いたスペックルトラッキング処理を実行することで、所定期間に亘って前記所定領域内の各位置における速度情報の分布を検出すること請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項15】
被検体の所定領域を超音波で走査することで、所定期間に亘って検出された前記所定領域内の各位置における速度情報を記憶する記憶ユニットと、
前記所定期間に亘る前記各位置の速度情報を用いて、前記所定期間における前記各位置の流速最大値、流速最小値、流速平均値の少なくともいずれか一つに基づく少なくとも一つの特徴量を計算する計算ユニットと、
前記特徴量を所定の形態で表示する表示ユニットと、
を具備する超音波画像処理装置。
【請求項16】
コンピュータに、
被検体の所定領域を超音波で走査することで得られた所定期間に亘る超音波データを用いて、前記所定領域内の各位置における速度情報の分布を前記所定期間に亘って検出させる検出機能と、
前記所定期間に亘る前記各位置の速度情報を用いて、前記所定期間における前記各位置の流速最大値、流速最小値、流速平均値の少なくともいずれか一つに基づく少なくとも一つの特徴量を計算させる計算機能と、
前記特徴量を所定の形態で表示させる表示機能と、
を実現させるための超音波画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−176232(P2012−176232A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20678(P2012−20678)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】