説明

超音波診断装置および超音波画像生成方法

【課題】操作者により設定された多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離に関わらずに高画質の超音波画像の生成を図ることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】操作者により深度D1に第1のフォーカス点F1が設定された後、深度D2に第2のフォーカス点F2が設定されると、第1のフォーカス点F1と第2のフォーカス点F2のフォーカス間距離L1が算出され、このフォーカス間距離L1がフォーカス間距離テーブルに規定されている許容下限値Laと比較される。フォーカス間距離L1が許容下限値Laより小さい場合には、第1のフォーカス点F1との間のフォーカス間距離が許容下限値Laとなるまで、第2のフォーカス点F2の位置が自動的に補正され、第1のフォーカス点F1の深度D1から許容下限値Laだけ深い深度D2aに新たな第2のフォーカス点F2aが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置および超音波画像生成方法に係り、特に、被検体による超音波エコーを受信したアレイトランスデューサから出力される受信信号を受信信号処理部で処理することで得られる受信データに基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、超音波プローブのアレイトランスデューサから被検体内に向けて超音波ビームを送信し、被検体からの超音波エコーをアレイトランスデューサで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
超音波ビームは、各走査線上に送信フォーカス位置を定めてアレイトランスデューサから送信されるが、送信フォーカス位置付近では、超音波ビームが収束されるために分解能の高い画像が得られるものの、送信フォーカス位置から離れると、超音波ビームが十便に収束されず、分解能は低下する傾向にある。
そこで、例えば、特許文献1に開示されている超音波診断装置のように、操作者により各走査線の測定深度方向に複数の送信フォーカス位置を設定して多段フォーカス送信を行うものが知られている。
このような多段フォーカス送信を用いれば、測定深度の浅い領域から深い領域まで広範囲にわたって超音波ビームのフォーカスを絞ることができるため、高画質の超音波画像の生成が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−22656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、操作者により設定された各走査線上の多段フォーカス位置が互いに接近し過ぎると、フォーカス位置付近の音圧が極端に高くなり、受信信号のレベルに大きなムラを生じるために、画像全体にわたって画質を向上させることが困難になるおそれがある。超音波の減衰が少ない浅い測定深度領域ほど、このような複数のフォーカス位置の接近による影響は大きなものとなる。
逆に、測定深度の深い領域では、超音波の減衰が大きいことから、多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離が短くても、受信信号のレベルに生じるムラは小さくなる。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、操作者により設定された多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離に関わらずに高画質の超音波画像の生成を図ることができる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る超音波診断装置は、アレイトランスデューサから被検体に向けて送信パルスが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信したアレイトランスデューサから出力される受信信号を処理することで得られるサンプルデータに基づき超音波画像を生成して表示部に表示する超音波診断装置であって、操作者の操作により多段フォーカス位置を設定するための操作部と、操作部を介して設定された多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離が予め測定深度毎に設定された許容範囲を超えている場合に、許容範囲内となるように多段フォーカス位置を自動的に補正する多段フォーカス位置補正部とを備えたものである。
【0008】
好ましくは、測定深度とフォーカス間距離の許容範囲とが対応付けられたフォーカス間距離テーブルが保存されたメモリをさらに備え、多段フォーカス位置補正部は、メモリに保存されたフォーカス間距離テーブルを参照することにより多段フォーカス位置を補正する。
多段フォーカス位置補正部は、所定の測定深度より浅い測定領域においては、予め測定深度毎に設定された許容下限値に基づいて多段フォーカス位置を補正することが好ましい。一方、多段フォーカス位置補正部は、所定の測定深度以上に深い測定領域においては、予め測定深度毎に設定された許容上限値に基づいて多段フォーカス位置を補正することが好ましい。
また、フォーカス間距離テーブルとして、測定深度毎に浅い側のフォーカス間距離の許容範囲と深い側のフォーカス間距離の許容範囲とがそれぞれ対応付けられたものを用いることもできる。
【0009】
多段フォーカス位置補正部は、多段フォーカス位置のうち最も浅いフォーカス位置を固定して深い側のフォーカス位置を補正する、あるいは、多段フォーカス位置のうち操作部を介して設定中のフォーカス位置を固定して他のフォーカス位置を補正することができる。
また、多段フォーカス位置補正部により補正された多段フォーカス位置を表示部に表示してもよい。
【0010】
この発明に係る超音波画像生成方法は、アレイトランスデューサから被検体に向けて送信パルスが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信したアレイトランスデューサから出力される受信信号を処理することで得られるサンプルデータに基づき超音波画像を生成して表示部に表示する超音波画像生成方法であって、操作者の操作により多段フォーカス位置を設定し、設定された多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離が予め測定深度毎に設定された許容範囲を超えている場合に、許容範囲内となるように多段フォーカス位置を自動的に補正する方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、操作者の操作により設定された多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離が予め測定深度毎に設定された許容範囲を超えている場合に、許容範囲内となるように多段フォーカス位置を自動的に補正するので、操作者により設定された多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離に関わらずに高画質の超音波画像の生成を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の動作を示す図である。
【図3】実施の形態1の変形例の動作を示す図である。
【図4】実施の形態2の動作を示す図である。
【図5】実施の形態3の動作を示す図である。
【図6】実施の形態3の変形例の動作を示す図である。
【図7】実施の形態4における表示画面を示す図である。
【図8】実施の形態4の変形例における表示画面を示す図である。
【図9】実施の形態4の他の変形例における表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1に接続された診断装置本体2とを備えている。
超音波プローブ1は、アレイトランスデューサ3を有し、このアレイトランスデューサ3に送信回路4と受信回路5が接続され、送信回路4および受信回路5にプローブ制御部6が接続されている。
【0014】
診断装置本体2は、超音波プローブ1の受信回路5に接続された信号処理部11を有し、この信号処理部11にDSC(Digital Scan Converter)12、画像処理部13、表示制御部14および表示部15が順次接続されている。画像処理部13には、画像メモリ16が接続され、信号処理部11、DSC12、画像処理部13および画像メモリ16により画像生成部17が形成されている。信号処理部11、DSC12および表示制御部14に本体制御部18が接続されており、本体制御部18に多段フォーカス位置補正部19が接続され、さらに、多段フォーカス位置補正部19にメモリ20が接続されている。本体制御部18には、操作部21および格納部22もそれぞれ接続されている。
また、超音波プローブ1のプローブ制御部6と診断装置本体2の本体制御部18が互いに接続されている。
【0015】
超音波プローブ1のアレイトランスデューサ3は、1次元又は2次元のアレイ状に配列された複数の超音波トランスデューサを有している。これら複数の超音波トランスデューサは、それぞれ送信回路4から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
【0016】
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0017】
送信回路4は、例えば、複数のパルサを含んでおり、プローブ制御部6からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、アレイトランスデューサ3の複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサに供給する。
【0018】
受信回路5は、アレイトランスデューサ3の各超音波トランスデューサから送信される受信信号を増幅してA/D変換した後、プローブ制御部6からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、各受信信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信データ(音線信号)が生成される。
プローブ制御部6は、診断装置本体2の本体制御部18から伝送される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
【0019】
診断装置本体2の信号処理部11は、超音波プローブ1の受信回路6で生成された受信データに対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
DSC12は、信号処理部11で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部13は、DSC12から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部14に出力する、あるいは画像メモリ16に格納する。
【0020】
表示制御部14は、画像処理部13によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、表示部15に超音波診断画像を表示させる。
表示部15は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部14の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0021】
操作部21は、操作者が入力操作を行うためのもので、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができ、多段フォーカス送信時には、この操作部21を介して操作者により各走査線上の多段フォーカス位置が設定される。
格納部22は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体を用いることができる。
【0022】
多段フォーカス位置補正部19は、多段フォーカス送信時に操作部21を介して操作者により入力設定された各走査線上の多段フォーカス位置のフォーカス間距離を予め測定深度毎に設定された許容範囲と比較し、許容範囲を超えている場合に、フォーカス間距離が許容範囲内となるように多段フォーカス位置を自動的に補正する。
メモリ20には、測定深度とフォーカス間距離の許容範囲とが対応付けられたフォーカス間距離テーブルが予め保存されている。このフォーカス間距離の許容範囲は、多段フォーカス送信を行っても、フォーカス位置付近の音圧が極端に高くなって超音波画像の画質の低下を来すことがないような測定深度毎のフォーカス間距離を示している。
多段フォーカス位置補正部19は、メモリ20に保存されたフォーカス間距離テーブルを参照することにより多段フォーカス位置の補正を行う。
【0023】
本体制御部18は、操作者により操作部21から入力された各種の指令信号等に基づいて、診断装置本体2内の各部の制御を行うものである。
なお、信号処理部11、DSC12、画像処理部13、表示制御部14および多段フォーカス位置補正部19は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0024】
次に、実施の形態1の動作を説明する。
まず、多段フォーカス送信を用いた超音波診断に先立って、操作者により操作部21を介して各走査線上の多段フォーカス位置が設定される。ここでは、各走査線上に2つのフォーカス点が設定されるものとする。
例えば、図2に示されるように、ある走査線上において、深度D1に第1のフォーカス点F1が設定された後、深度D1より深い深度D2に第2のフォーカス点F2が設定されると、これら第1のフォーカス点F1の深度D1および第2のフォーカス点F2の深度D2が操作部21から本体制御部18を介して多段フォーカス位置補正部19に入力される。
【0025】
多段フォーカス位置補正部19は、本体制御部18を介して第1のフォーカス点F1の深度D1および第2のフォーカス点F2の深度D2が入力されると、これら深度D1およびD2から第1のフォーカス点F1と第2のフォーカス点F2のフォーカス間距離L1を算出し、このフォーカス間距離L1をメモリ20に予め保存されているフォーカス間距離テーブルの許容範囲と比較する。フォーカス間距離テーブルには、測定深度毎にフォーカス間距離の許容範囲が規定されており、第1のフォーカス点F1の深度D1に対して許容下限値Laが対応付けられているものとすると、多段フォーカス位置補正部19により、第1のフォーカス点F1および第2のフォーカス点F2のフォーカス間距離L1と第1のフォーカス点F1の深度D1に対する許容下限値Laが比較される。
【0026】
図2に示されるように、フォーカス間距離L1が許容下限値Laより小さい場合には、第1のフォーカス点F1との間のフォーカス間距離が許容下限値Laとなるまで、多段フォーカス位置補正部19により第2のフォーカス点F2の位置が自動的に補正される。すなわち、第1のフォーカス点F1の深度D1から許容下限値Laだけ深い深度D2aに新たな第2のフォーカス点F2aが設定される。
【0027】
このようにして、操作者により設定された第1のフォーカス点F1と、多段フォーカス位置補正部19により補正されて新たに設定された第2のフォーカス点F2aに基づき、超音波プローブ1の送信回路4からの駆動信号に従って、アレイトランスデューサ3の複数の超音波トランスデューサから順次超音波ビームが送信される。各超音波トランスデューサで受信された受信信号が順次受信回路5に出力されて受信データが生成される。
同様にして、他の走査線についても、2つのフォーカス点が設定され、順次超音波ビームの送受信が行われて受信データが生成される。
これらの受信データに基づいて診断装置本体2の画像生成部17で画像信号が生成され、さらに、画像信号に基づいて表示制御部14により超音波画像が表示部15に表示される。
【0028】
このとき、多段フォーカス位置補正部19により第1のフォーカス点F1との間のフォーカス間距離が許容下限値Laとなるように第2のフォーカス点F2の位置が自動的に補正されるので、互いのフォーカス間距離が許容下限値Laに満たない第1のフォーカス点F1および第2のフォーカス点F2が操作者により設定されても、フォーカス位置付近の音圧が極端に高くなって受信信号のレベルに大きなムラを生じることが未然に防止され、高画質の超音波画像を生成することが可能となる。
【0029】
なお、操作者により設定された第1のフォーカス点F1と第2のフォーカス点F2との間のフォーカス間距離が既に許容下限値La以上である場合には、多段フォーカス位置補正部19による補正は行われず、第1のフォーカス点F1および第2のフォーカス点F2に基づいて超音波ビームの送受信が行われ、超音波画像が生成される。
また、測定深度が深い領域では、超音波の減衰が比較的大きいので、複数のフォーカス点のフォーカス間距離が短くても、フォーカス位置付近の音圧が極端に高くなることがない。このため、この実施の形態1は、特に所定の測定深度より浅い領域において有用なものである。
【0030】
上記の実施の形態1では、操作者が、第1のフォーカス点F1の深度D1よりも深い深度D2に第2のフォーカス点F2を設定した場合に、第1のフォーカス点F1の深度D1を基準とし、この深度D1に対する許容下限値Laとフォーカス間距離L1とが比較され、フォーカス間距離L1が許容下限値Laより小さいときに、浅い側の第1のフォーカス点F1を固定して、深い側の第2のフォーカス点F2の位置を補正したが、これに限るものではない。
【0031】
例えば、操作部21を介して設定中のフォーカス位置を固定し、既に設定されているフォーカス位置を補正してもよい。すなわち、図3に示されるように、操作者により、深度D1に第1のフォーカス点F1が設定された後、深度D1より深い深度D2に第2のフォーカス点F2が設定されると、多段フォーカス位置補正部19は、メモリ20内のフォーカス間距離テーブルから第2のフォーカス点F2の深度D2に対する許容範囲を読み出して、フォーカス間距離L1をこの許容範囲と比較する。
【0032】
許容範囲として、第2のフォーカス点F2の深度D2に対して許容下限値Lbが対応付けられているものとすると、フォーカス間距離L1が許容下限値Lbと比較され、フォーカス間距離L1が許容下限値Lbより小さいときに、多段フォーカス位置補正部19は、第2のフォーカス点F2との間のフォーカス間距離が許容下限値Lbとなるまで、既に設定されている浅い側の第1のフォーカス点F1の位置を自動的に補正する。これにより、第1のフォーカス点F1がさらに浅い方へ移動され、第2のフォーカス点F2の深度D2から許容下限値Lbだけ浅い深度D1aに新たな第1のフォーカス点F1aが設定される。
このようにしても、同様に、高画質の超音波画像を生成することが可能となる。
【0033】
実施の形態2
測定深度が深い領域では、超音波の減衰が比較的大きいので、複数のフォーカス点のフォーカス間距離が短くても、フォーカス位置付近の音圧が極端に高くなるおそれがないだけでなく、互いの減衰分を補うことで、より良好な受信信号を取得することができる。
そこで、この実施の形態2では、上述した実施の形態1において、所定の測定深度以上に深い領域に対し、測定深度毎に許容上限値が許容範囲として対応付けられたフォーカス間距離テーブルがメモリ20に予め保存されている。
すなわち、所定の測定深度以上に深い領域では、複数のフォーカス点のフォーカス間距離が、フォーカス間距離テーブルに規定された許容上限値を超えないように補正される。
【0034】
例えば、図4に示されるように、操作者により、所定の測定深度以上に深い領域において、深度D3に第1のフォーカス点F3が設定された後、深度D3より深い深度D4に第2のフォーカス点F4が設定されると、多段フォーカス位置補正部19により、第1のフォーカス点F3と第2のフォーカス点F4との間のフォーカス間距離L2が算出されると共に、メモリ20内のフォーカス間距離テーブルから第1のフォーカス点F3の深度D3に対する許容範囲が読み出される。
【0035】
許容範囲として、第1のフォーカス点F3の深度D3に対して許容上限値Lcが対応付けられているものとすると、多段フォーカス位置補正部19によって、フォーカス間距離L2が許容上限値Lcと比較される。
図4に示されるように、フォーカス間距離L2が許容上限値Lcを超えている場合には、第1のフォーカス点F3との間のフォーカス間距離が許容上限値Lcとなるまで、多段フォーカス位置補正部19により第2のフォーカス点F4の位置が自動的に補正される。すなわち、第2のフォーカス点F4が浅い方へ移動され、第1のフォーカス点F3の深度D3から許容上限値Lcだけ深い深度D4aに新たな第2のフォーカス点F4aが設定される。
【0036】
このようにして設定された第1のフォーカス点F3および第2のフォーカス点F4aに基づいて超音波ビームの送受信が行われ、超音波画像が生成される。
これにより、所定の測定深度以上に深い領域における超音波の減衰分が補われ、深い領域においても高画質の超音波画像を生成することが可能となる。
この実施の形態2においても、操作者により設定された第1のフォーカス点F3および第2のフォーカス点F4のうち、操作部21を介して設定中のフォーカス位置を固定し、既に設定されているフォーカス位置を補正するようにしてもよい。
【0037】
実施の形態3
上述した実施の形態1および2では、各走査線上に2つのフォーカス点が設定されるものとしたが、これに限るものではなく、3つ以上のフォーカス点を各走査線上に設定することもできる。
例えば、図5に示されるように、操作者により、深度D5に第1のフォーカス点F5が設定された後、深度D5より深い深度D6に第2のフォーカス点F6が設定されると、多段フォーカス位置補正部19により、第1のフォーカス点F5と第2のフォーカス点F6との間のフォーカス間距離L3が算出されると共に、メモリ20内のフォーカス間距離テーブルから第1のフォーカス点F5の深度D5に対する許容範囲が読み出される。
【0038】
許容範囲として、第1のフォーカス点F5の深度D5に対して許容下限値Ldが対応付けられているものとすると、多段フォーカス位置補正部19によって、フォーカス間距離L3が許容下限値Ldと比較される。
図5に示されるように、フォーカス間距離L3が許容下限値Ldより小さい場合には、第1のフォーカス点F5との間のフォーカス間距離が許容下限値Ldとなるまで、多段フォーカス位置補正部19により第2のフォーカス点F6の位置が自動的に補正される。すなわち、第2のフォーカス点F6が深い方へ移動され、第1のフォーカス点F5の深度D5から許容下限値Ldだけ深い深度D6aに新たな第2のフォーカス点F6aが設定される。
【0039】
さらに、操作者により、新たな第2のフォーカス点F6aの深度D6aより深い深度D7に第3のフォーカス点F7が設定されると、多段フォーカス位置補正部19により、新たな第2のフォーカス点F6aと第3のフォーカス点F7との間のフォーカス間距離L4が算出されると共に、メモリ20内のフォーカス間距離テーブルから新たな第2のフォーカス点F6aの深度D6aに対する許容範囲が読み出される。
【0040】
許容範囲として、新たな第2のフォーカス点F6aの深度D6aに対して許容下限値Leが対応付けられているものとすると、多段フォーカス位置補正部19によって、フォーカス間距離L4が許容下限値Leと比較される。
図5に示されるように、フォーカス間距離L4が許容下限値Leより小さい場合には、新たな第2のフォーカス点F6aとの間のフォーカス間距離が許容下限値Leとなるまで、多段フォーカス位置補正部19により第3のフォーカス点F7の位置が自動的に補正される。すなわち、第3のフォーカス点F7が深い方へ移動され、新たな第2のフォーカス点F6aの深度D6aから許容下限値Leだけ深い深度D7aに新たな第3のフォーカス点F7aが設定される。
【0041】
このようにして設定された第1のフォーカス点F3、新たな第2のフォーカス点F6aおよび新たな第3のフォーカス点F7aに基づいて超音波ビームの送受信が行われ、超音波画像が生成される。
【0042】
図5では、操作者が操作部21を介して3つのフォーカス点F5〜F7を浅い方から順次設定しつつ、既に設定されたフォーカス点を固定して、新たに設定中の次のフォーカス点を必要に応じて補正したが、逆に、操作部21を介して設定中のフォーカス位置を固定し、既に設定されているフォーカス位置を補正するようにしてもよい。ただし、既に2つのフォーカス点の設定が完了している場合には、新たに設定する3つ目のフォーカス点を固定してしまうと、既に設定された2つのフォーカス点を共に補正する必要が生じることから、新たに設定する3つ目のフォーカス点を補正対象とすることが好ましい。
【0043】
また、操作者が操作部21を介して3つのフォーカス点F5〜F7を設定する際に、測定深度毎にフォーカス間距離の許容範囲が対応付けられたフォーカス間距離テーブルを参照することで、多段フォーカス位置補正部19がフォーカス位置を1つずつ補正したが、これに限るものではなく、測定深度毎に浅い側のフォーカス間距離の許容範囲と深い側のフォーカス間距離の許容範囲の双方がそれぞれ対応付けられたフォーカス間距離テーブルを用いることもできる。多段フォーカス位置補正部19は、操作者により3つのフォーカス点F5〜F7が設定された後に、フォーカス間距離テーブルを参照して3つのフォーカス点F5〜F7のうち中央部に位置するフォーカス点F6を固定しつつ、残りの2つのフォーカス点F5およびF7の補正を行う。
【0044】
例えば、図6に示されるように、操作者により、浅い方から深い方へ向けて、深度D5に第1のフォーカス点F5が、深度D6に第2のフォーカス点F6が、深度D7に第3のフォーカス点F7が、操作部21を介して順次設定されるものとする。このようにして3つのフォーカス点F5〜F7が設定されると、多段フォーカス位置補正部19により、第1のフォーカス点F5と第2のフォーカス点F6との間のフォーカス間距離L5および第2のフォーカス点F6と第3のフォーカス点F7との間のフォーカス間距離L6が算出されると共に、メモリ20内のフォーカス間距離テーブルから3つのフォーカス点F5〜F7のうち中央部に位置する第2のフォーカス点F6の深度D6に対する浅い側の許容範囲と深い側の許容範囲が読み出される。
【0045】
第2のフォーカス点F6の深度D6に対し、浅い側の許容範囲として許容下限値Lfが対応付けられ、深い側の許容範囲として許容下限値Lgが対応付けられているものとすると、多段フォーカス位置補正部19によって、フォーカス間距離L5が許容下限値Lfと比較されると共に、フォーカス間距離L6が許容下限値Lgと比較される。
【0046】
図6に示されるように、第1のフォーカス点F5と第2のフォーカス点F6との間のフォーカス間距離L5が許容下限値Lfより小さい場合には、第2のフォーカス点F6との間のフォーカス間距離が許容下限値Lfとなるまで、多段フォーカス位置補正部19により第1のフォーカス点F5の位置が自動的に補正される。すなわち、第1のフォーカス点F5が浅い方へ移動され、第2のフォーカス点F6の深度D6から許容下限値Lfだけ浅い深度D5aに新たな第1のフォーカス点F5aが設定される。
【0047】
同様に、第2のフォーカス点F6と第3のフォーカス点F7との間のフォーカス間距離L6が許容下限値Lgより小さい場合には、第2のフォーカス点F6との間のフォーカス間距離が許容下限値Lgとなるまで、多段フォーカス位置補正部19により第3のフォーカス点F7の位置が自動的に補正される。すなわち、第3のフォーカス点F7が深い方へ移動され、第2のフォーカス点F6の深度D6から許容下限値Lgだけ深い深度D7aに新たな第3のフォーカス点F7aが設定される。
【0048】
なお、所定の測定深度以上に深い領域に対しては、実施の形態2と同様に、フォーカス間距離の許容範囲として許容上限値を測定深度に対応付けることができ、これにより、各走査線上に3つのフォーカス点を設定する場合においても、深い領域における超音波の減衰分を補うことで、高画質の超音波画像を生成することが可能となる。
この実施の形態3では、各走査線上に3つのフォーカス点を設定する場合について例示したが、同様にして、各走査線上に4つ以上のフォーカス点を設定することもできる。
【0049】
実施の形態4
上述した実施の形態1〜3においては、多段フォーカス位置補正部19が自動的に多段フォーカス位置の補正を行うため、補正されたフォーカス点を操作者に認知させることが望ましい。
そこで、この実施の形態4は、多段フォーカス位置補正部19により補正されたフォーカス位置を表示するようにしたものである。
図7に示されるように、超音波画像Gが表示される表示部15において、超音波画像Gに対応させて測定深度の目盛りSを表示し、この目盛りSの上に、複数のフォーカス点の位置が表示される。このとき、例えば、走査方向の中央部の走査線C上におけるフォーカス点の位置を代表して目盛りSの上に表示することができる。
【0050】
図7においては、操作者により操作部21を介して第1のフォーカス点が設定されると、この第1のフォーカス点の深さ方向の位置がマークM1で示され、続いて操作者により第2のフォーカス点が設定されると、この第2のフォーカス点の深さ方向の位置がマークM2で示されるが、第1のフォーカス点と第2のフォーカス点との間のフォーカス間距離が許容下限値より小さいために、多段フォーカス位置補正部19により自動的に第2のフォーカス点が補正されて新たな第2のフォーカス点が設定され、この新たな第2のフォーカス点の位置がマークM2aで示されている。
【0051】
このとき、操作者により入力されたものの多段フォーカス位置補正部19の補正対象となって実際には使用されない第2のフォーカス点に対応するマークM2と、実際に設定されて多段フォーカス送信に使用される第1のフォーカス点に対応するマークM1および新たな第2のフォーカス点に対応するマークM2aとを識別するために、少なくともマークM2を他のマークM1およびM2aとは異なる色彩、形状等で表示することが好ましい。
図7では、実際に使用されないマークM2が破線の三角形により表示され、実際に使用されるマークM1およびM2aが実線の三角形により表示され、さらに、操作者により入力されてそのままフォーカス点として設定された第1のフォーカス点に対応するマークM1が白抜きの三角形により、多段フォーカス位置補正部19により自動的に生成された新たな第2のフォーカス点に対応するマークM2aが黒塗りの三角形により、それぞれ表示されている。
また、破線の三角形により表示されたマークM2は、操作者により入力されたものの実際には使用されないものであるため、多段フォーカス位置補正部19により新たなマークM2aが表示された後、例えば所定時間が経過した時点で自動的に表示が消去されるか、あるいは、手動で表示を消去することが好ましい。これは、マーク表示が増加して見づらくなることを防止するためである。
【0052】
また、目盛りSを表示する代わりに、図8に示されるように、超音波画像Gの上にフォーカス線を重畳表示してもよい。操作者により設定された複数の走査線上の第1のフォーカス点を互いに接続することにより、第1のフォーカス線A1が超音波画像G上に重畳表示され、操作者により設定された複数の走査線上の第2のフォーカス点を互いに接続することにより、第2のフォーカス線A2が超音波画像G上に重畳表示されている。さらに、多段フォーカス位置補正部19により自動的に各走査線上の第2のフォーカス点が補正されて生成された新たな第2のフォーカス点を互いに接続することにより、新たな第2のフォーカス線A2aが超音波画像G上に重畳表示されている。
【0053】
この場合も、実際に使用されない第2のフォーカス線A2を、他のフォーカス線A1およびA2aから区別するために、少なくとも第2のフォーカス線A2を他のフォーカス線A1およびA2aとは異なる色彩、線種等で表示することが好ましい。
図8では、実際に使用されるフォーカス線A1およびA2aが、破線で表示され、実際に使用されない第2のフォーカス線A2が、他のフォーカス線A1およびA2aよりも細い破線で表示されている。
また、フォーカス線A1、A2およびA2aは、超音波画像G上に重畳表示されるため、そのまま表示し続けると、診断に影響を及ぼすおそれがある。そこで、これらのフォーカス線は、表示から所定時間が経過した後に自動的に表示が消去されるか、あるいは、手動で表示を消去することが好ましい。
このように、超音波画像Gの上にフォーカス線を重畳表示すれば、より感覚的に多段フォーカス位置を把握することができ、効率よく超音波診断を行うことが可能となる。
【0054】
さらに、図9に示されるように、測定深度の目盛りSの上に複数のフォーカス点の位置をマークM1、M2およびM2aで表示すると同時に、超音波画像Gの上に複数のフォーカス線A1、A2およびA2aを重畳表示することもできる。
【0055】
なお、上記の実施の形態1〜4における超音波プローブ1と診断装置本体2との接続は、有線による接続および無線通信による接続のいずれの形態をとることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 超音波プローブ、2 診断装置本体、3 アレイトランスデューサ、4 送信回路、5 受信回路、6 プローブ制御部、11 信号処理部、12 DSC、13 画像処理部、14 表示制御部、15 表示部、16 画像メモリ、17 画像生成部、18 本体制御部、19 多段フォーカス位置補正部、20 メモリ、21 操作部、22 格納部、F1〜F7 操作者により設定されたフォーカス点、F1a,F2a,F4a,F5a,F6a,F7a 補正後のフォーカス点、D1〜D7 操作者により設定されたフォーカス点の深度、D1a,D2a,D4a,D5a,D6a,D7a 補正後のフォーカス点の深度、L1〜L6 フォーカス間距離、La,Lb,Ld,Le,Lf,Lg フォーカス間距離の許容下限値、Lc フォーカス間距離の許容上限値、G 超音波画像、S 測定深度の目盛り、M1,M2 操作者により設定されたフォーカス点の位置に対応するマーク、M2a 補正後のフォーカス点の位置に対応するマーク、C 中央部の走査線、A1,A2 操作者により設定されたフォーカス点によるフォーカス線、A2a 補正後のフォーカス点によるフォーカス線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイトランスデューサから被検体に向けて送信パルスが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記アレイトランスデューサから出力される受信信号を処理することで得られるサンプルデータに基づき超音波画像を生成して表示部に表示する超音波診断装置であって、
操作者の操作により多段フォーカス位置を設定するための操作部と、
前記操作部を介して設定された多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離が予め測定深度毎に設定された許容範囲を超えている場合に、前記許容範囲内となるように前記多段フォーカス位置を自動的に補正する多段フォーカス位置補正部と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
測定深度とフォーカス間距離の許容範囲とが対応付けられたフォーカス間距離テーブルが保存されたメモリをさらに備え、
前記多段フォーカス位置補正部は、前記メモリに保存された前記フォーカス間距離テーブルを参照することにより前記多段フォーカス位置を補正する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記多段フォーカス位置補正部は、所定の測定深度より浅い測定領域においては、予め測定深度毎に設定された許容下限値に基づいて前記多段フォーカス位置を補正する請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記多段フォーカス位置補正部は、所定の測定深度以上に深い測定領域においては、予め測定深度毎に設定された許容上限値に基づいて前記多段フォーカス位置を補正する請求項2または3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記フォーカス間距離テーブルは、測定深度毎に浅い側のフォーカス間距離の許容範囲と深い側のフォーカス間距離の許容範囲とがそれぞれ対応付けられたものである請求項2〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記多段フォーカス位置補正部は、前記多段フォーカス位置のうち最も浅いフォーカス位置を固定して深い側のフォーカス位置を補正する請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記多段フォーカス位置補正部は、前記多段フォーカス位置のうち前記操作部を介して設定中のフォーカス位置を固定して他のフォーカス位置を補正する請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記多段フォーカス位置補正部により補正された前記多段フォーカス位置が前記表示部に表示される請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
アレイトランスデューサから被検体に向けて送信パルスが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記アレイトランスデューサから出力される受信信号を処理することで得られるサンプルデータに基づき超音波画像を生成して表示部に表示する超音波画像生成方法であって、
操作者の操作により多段フォーカス位置を設定し、
設定された多段フォーカス位置におけるフォーカス間距離が予め測定深度毎に設定された許容範囲を超えている場合に、前記許容範囲内となるように前記多段フォーカス位置を自動的に補正する
ことを特徴とする超音波画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−55979(P2013−55979A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194721(P2011−194721)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】