説明

超音波診断装置のプローブ及びその制御方法

【課題】超音波診断装置のプローブ及びその制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の超音波診断装置のプローブは、ハウジングと、該ハウジングの内部で移動可能なように備えられるトランスデューサと、前記プローブの動き加速度を測定する感知部と、前記感知部からの前記動き加速度の出力値を受けて前記トランスデューサの動きを制御する駆動部とを備える。本発明によれば、超音波診断装置に備えられるプローブの動き加速度を測定し、その加速度に応じてトランスデューサの動きを抑制するホールディング電流の大きさを調節することにより、プローブに動きがない場合には少量のホールディング電流を流して発熱を抑制することができる。これにより、送信電圧を増加させて、映像を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置のプローブ及びその制御方法に関し、より詳細には超音波診断装置に備えられるプローブの動き加速度を測定し、その加速度に応じてトランスデューサの動きを抑制するホールディング電流(holding current)を制御することができる超音波診断装置のプローブ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、対象体の体表から体内の所望の部位に向かって超音波信号を照射し、そこから反射してきた超音波信号(超音波エコー信号)を用いて軟部組織の断層像や血流に関する情報を無侵襲に得る装置である。
【0003】
この装置は、X線診断装置、CTスキャナ(Computerized Tomography Scanner)、MRI(Magnetic Resonance Image)、核医学診断装置などの他の映像診断装置と比較して、小型かつ低廉であること、リアルタイムで表示可能であること、X線などの被曝がなく安全性が高いこと、などの長所があるため、心臓、腹部、泌尿器や産婦人科などの診断に広く用いられている。
【0004】
超音波診断装置は、対象体の超音波映像を得るために、超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射してくる超音波エコー信号を受信するためのプローブを備える。
【0005】
プローブは、トランスデューサと、上端が開放されたケースと、開放されたケースの上端に結合して対象体の表面と直接接触するカバーなどを備える。トランスデューサは、圧電物質が振動して電気信号と音響信号とを相互に変換させる圧電層と、圧電層から発射された超音波が対象体に最大限に伝達されるように圧電層と対象体との間の音響インピーダンス差を減少させる整合層と、圧電層の前方に進行する超音波を特定地点に集束させるレンズ層と、超音波が圧電層の後方に進行するのを遮断して映像の歪みを防止する吸音層とを備える。
【0006】
ユーザは、所望の超音波映像を得るために、前記のように構成されたプローブを対象体の体表に沿って移動させるか、対象体の体表に接触させた状態でプローブを回転させて超音波映像を得る。
【0007】
なお、前記で説明した技術は、本発明の属する技術分野の背景技術を述べたものであって、従来技術を全て述べているわけではない。
【0008】
3次元超音波映像を具現できる超音波診断装置に備えられるプローブにおいては、ハウジング内部の駆動部を中心に弧状の経路に沿って移動できるようにトランスデューサが設けられ、このトランスデューサがプローブ内を移動しながら3次元超音波映像を具現するための超音波エコー信号を超音波診断装置の本体に送信する。
【0009】
このとき、トランスデューサが移動する3Dプローブを3Dモードとしてではなく2Dモードとして用いる場合には、外部衝撃によりトランスデューサの位置が変わらないようにするために、ある一定の大きさのホールディング電流を駆動部から流してトランスデューサの動きを抑制している。
【0010】
しかし、このように一定の大きさのホールディング電流が継続的に流れると、プローブの発熱によってトランスデューサの表面温度が上昇するため、トランスデューサの送信電圧を上げるのが制限されてしまうだけでなく、電力消耗が増加する問題点がある。
【0011】
この発熱を軽減するため、ホールディング電流を一定の大きさ以下に制限すると、今度はある値以上の衝撃があった場合に、トランスデューサの位置が変わってしまう問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記のような問題点を改善するために考案されたもので、超音波診断装置に備えられるプローブの動き加速度を測定し、その加速度に応じてトランスデューサの動きを抑制するホールディング電流の大きさを調節できる超音波診断装置のプローブ及びその制御方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一形態に係る超音波診断装置のプローブは、ハウジングと、該ハウジングの内部で移動可能なように備えられるトランスデューサと、前記プローブの動き加速度を測定する感知部と、前記感知部からの前記動き加速度の出力値を受けて前記トランスデューサの動きを制御する駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明で駆動部は、3Dモードにおいては、トランスデューサがスイング(往復運動)できるように駆動電流を流し、2Dモードにおいては、感知部からの前記出力値を受けてトランスデューサの動きを抑制するためのホールディング電流を流す駆動制御部と、その駆動制御部から駆動電流および/またはホールディング電流の入力を受けてトランスデューサを駆動するモータと、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明で、感知部は、前記ハウジングの内部に備えられ、トランスデューサに近接して設けられることを特徴とする。
【0016】
また、本発明で、感知部は、加速度センサであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の形態に係るプローブの制御方法は、超音波診断装置のモードが3Dモードの状態にあるか否かを判断する段階と、モードが3Dモードの状態にある場合には、トランスデューサをスイング運動させるための駆動電流を流し、モードが3Dモードの状態でない場合には、プローブの動きを感知する感知部からの動き加速度の出力値を受けてプローブの動きを判断する段階と、プローブに動きがある場合には、その動きに応じて、トランスデューサの動き抑制のためのホールディング電流を流す段階と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明で、ホールディング電流を流す段階は、プローブの動きがない場合は少量のホールディング電流を流し、プローブの動きがある場合はプローブの動き加速度に応じて多量のホールディング電流を流すように行われることを特徴とする。
【0019】
また、本発明で、プローブの動きを判断する段階で、動き加速度の前記出力値が一定値以上である場合には、トランスデューサを初期位置に戻すための駆動電流を流す段階をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、超音波診断装置に備えられるプローブの動き加速度を測定し、その加速度に応じてトランスデューサの動きを制御するホールディング電流の大きさを調節することにより、プローブに動きがない場合には少ないホールディング電流を流して発熱を抑制する。これにより、トランスデューサを励振する送信電圧を増加させることができ、映像を改善することができる。
【0021】
また、バッテリを用いる超音波診断装置においては、ホールディング電流を少なくすることにより、バッテリの使用時間を延ばすことができる。
【0022】
一方、強い外部衝撃があるかプローブが突然動く場合には、大量のホールディング電流を流してトランスデューサの動きを阻止することができる。
【0023】
また、衝撃により、プローブにある一定以上の動きが発生した場合には、トランスデューサを初期位置に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に係るプローブを備える超音波診断装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示した超音波診断装置のプローブのブロック構成図である。
【図3】図1に示した超音波診断装置のプローブを概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る超音波診断装置のプローブの制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例に係る超音波診断装置のプローブ制御方法によって調節されるホールディング電流を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る超音波診断装置のプローブ及びその制御方法の一実施例を説明する。なお、図面に示した線の太さや構成要素の大きさなどは、説明の明瞭性と便宜上、誇張して図示する場合がある。また、本文で用いられる用語は、本発明での機能を考慮して定義されたものであって、これはユーザ、運用者の意図または慣例によって変わることがある。従って、このような用語に関する定義は、本明細書全般に渡った内容に基づいて下されなければならない。
【0026】
図1は本発明の一実施例に係るプローブを備える超音波診断装置を示す斜視図であり、図2は図1に示した超音波診断装置のプローブの構成図であり、図3は図1に示した超音波診断装置のプローブを概略的に示す断面図である。
【0027】
まず、図1を参照すると、本発明の一実施例に係るプローブ100は、超音波診断装置10に備えられる。超音波診断装置10は、超音波診断装置10を制御、操作するための本体12及びこの本体12で生成される超音波映像を表示する表示部14を備える。
【0028】
本実施例のプローブ100は、対象体の超音波映像を得るために超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射されてきた超音波エコー信号を受信して本体12に転送する。
【0029】
プローブ100は、図2及び図3に示すようにトランスデューサ110、駆動部120、プローブ100の動きを測定する感知部である加速度センサ130を備える。
【0030】
トランスデューサ110は、圧電物質を振動させて電気信号と音響信号とを相互に変換させる圧電層(図示せず)と、圧電層で発生した超音波信号が対象体に最大限に伝達されるように圧電層と対象体との間の音響インピーダンス差を減少させる整合層(図示せず)と、圧電層の前方(対象体の方向)に伝播する超音波信号を特定地点に集束させるレンズ層(図示せず)と、を備える。
【0031】
このとき、トランスデューサ110は、プローブ100のハウジング140内部で移動が可能なように備えられる(図3参照)。
【0032】
加速度センサ130は、プローブ100に動きがあると、その動きの加速度を測定して動きの加速度を駆動部120に伝達する。
【0033】
このとき、加速度センサ130は、トランスデューサ110の動きを予測するため、ハウジング140内部のトランスデューサ110と隣接する位置で、ハウジング140の内壁に備えられる。
【0034】
しかし、加速度センサ130の位置は必ずしもこれに限定される必要はなく、プローブ100の動き加速度を測定してトランスデューサ110の動きを予測できる位置であれば、どの位置でも設置が可能である。
【0035】
駆動部120は、ハウジング140の内部に備えられ、トランスデューサ110と結合し、トランスデューサ110を駆動させる。トランスデューサ110が駆動部120を中心とする弧状の経路に沿って移動することにより、プローブ装置100は、3D超音波映像を具現するための超音波エコー信号を超音波診断装置10の本体12に送信する。
【0036】
駆動部120は、超音波診断装置10の駆動制御により、駆動モードが3Dモードの状態にあれば、トランスデューサ110をスイング(往復運動)させるように駆動させ、2Dモードの状態にあれば加速度センサ130からの出力(加速度の伝達)に応じて、トランスデューサ110の動きを抑制する。
【0037】
これを行うため、駆動部120は、駆動制御部122とモータ124とを備える。
【0038】
駆動制御部122は、トランスデューサ110がスイングできるように駆動電流を流すか、加速度センサ130で測定された加速度の情報を受けて、トランスデューサ110の動きを抑制するためのホールディング電流を流す。モータ124は、駆動制御部122からの指令に従い、トランスデューサ110を駆動する。
【0039】
図4は本発明の一実施例に係る超音波診断装置のプローブ制御方法を説明するためのフローチャートであり、図5は本発明の一実施例に係る超音波診断装置のプローブ制御方法によって調節されるホールディング電流を示すグラフである。
【0040】
図1から図5に示したように、超音波診断装置のプローブ制御方法において、駆動制御部122は、最初に超音波診断装置10の診断モードが3Dモードであるか否かを識別する(S10)。
【0041】
このとき、超音波診断装置10が3Dモードであれば、駆動制御部122は、トランスデューサ110をスイングさせるように駆動電流をモータ124に流す(S20)。
【0042】
一方、超音波診断装置10が2Dモードであれば、駆動制御部122は、トランスデューサ110の動きを抑制するためのホールディング電流を流すために、プローブ100の動きを感知する加速度センサ130から動き加速度の出力を受ける(S30)。
【0043】
前記の加速度センサ130からの出力値(動き加速度値)に応じて駆動制御部122は、プローブ100の動きを感知する(S40)。
【0044】
このとき、プローブ100に動きがなければ、小さい力でトランスデューサ110を抑制することができるため、少ないホールディング電流をモータ124に流す(S60)。
【0045】
即ち、プローブ100に動きがない場合には、少ないホールディング電流をモータ124に流すため、モータ124が発生する熱によってプローブ100の表面温度が上昇するのを防止することができる。
【0046】
一方、プローブ100の動きが感知された場合には、加速度センサ130で測定された加速度に応じて、トランスデューサ110の動きを抑制するためのホールディング電流を流す(S50)。
【0047】
即ち、図5に示すように、加速度が事前設定加速度である「A」に到達するまでは、加速度に比例してホールディング電流を流す。
【0048】
また、加速度センサ130は、測定された加速度が事前設定加速度である「A」を超えるか否かを判断する(S70)。
【0049】
このとき、外部から強い衝撃があったり、プローブ100が急激に動くと、加速度が事前設定加速度「A」を超える場合がある。この場合には、多量のホールディング電流を流してトランスデューサ110の動きを抑制すると共に、トランスデューサ110を初期位置に移動させるための駆動電流を流して初期位置に戻す(S80)。
【0050】
本発明を図面に示した実施例を参考にして説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術に属する分野で通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形及び同等な他の実施例が考案可能であることを理解するであろう。従って、本発明の真正な技術的保護範囲は、特許請求の範囲によって定める。
【符号の説明】
【0051】
10:超音波診断装置、12:本体、14:表示部、100:プローブ、110:トランスデューサ、120:駆動部、122:駆動制御部、124:モータ、130:加速度センサ、140:ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波診断装置のプローブであって、
ハウジングと、
該ハウジングの内部で移動可能なように備えられるトランスデューサと、
前記プローブの動き加速度を測定する感知部と、
前記感知部からの前記動き加速度の出力値に応じて前記トランスデューサの動きを制御する駆動部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置のプローブ。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記トランスデューサがスイングできるように駆動電流を流すか、あるいは、前記感知部からの前記出力値を受けて前記トランスデューサの動きを抑制するためのホールディング電流を流す駆動制御部と、
前記駆動制御部から前記駆動電流および/または前記ホールディング電流を受けて前記トランスデューサを駆動するモータと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置のプローブ。
【請求項3】
前記感知部は、前記ハウジングの内部に備えられ、前記トランスデューサに近接して設けられることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置のプローブ。
【請求項4】
前記感知部は、加速度センサであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の超音波診断装置のプローブ。
【請求項5】
トランスデューサを含むプローブと、該プローブの動きを感知する感知部とを有する超音波診断装置のプローブ制御方法であって、
前記超音波診断装置が3Dモードの状態にあるか否かを判断する段階と、
前記超音波診断装置が前記3Dモードの状態である場合には、前記トランスデューサをスイングさせる駆動電流を流し、前記超音波診断装置が前記3Dモードの状態ではない場合には、前記プローブの動きを感知する前記感知部からの動き加速度の出力値を受けて前記プローブの動きを検知する段階と、
前記プローブの動きに応じて、前記トランスデューサの動きを抑制するためのホールディング電流を流す段階と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置のプローブ制御方法。
【請求項6】
前記ホールディング電流を流す段階は、前記プローブに動きがない場合は少量の前記ホールディング電流を流し、前記プローブに動きがある場合は前記プローブの前記動き加速度に応じて、大量の前記ホールディング電流を流すように行われることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置のプローブ制御方法。
【請求項7】
前記プローブの動きを検知する段階で、前記動き加速度の前記出力値が一定値以上の場合、前記トランスデューサを初期位置に戻すための駆動電流を流す段階をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置のプローブ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−87914(P2011−87914A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180393(P2010−180393)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(597096909)株式会社 メディソン (269)
【氏名又は名称原語表記】MEDISON CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】114 Yangdukwon−ri,Nam−myun,Hongchun−gun,Kangwon−do 250−870,Republic of Korea
【Fターム(参考)】