説明

超音波診断装置及びその制御プログラム

【課題】悪性であると疑われる部位を見つけやすい画像を表示することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】Bモード画像BGにおける微小構造物を被検体に送信された超音波のエコー信号に基づいて抽出する抽出部と、抽出された微小構造物の密集部を検出する密集部検出部と、検出された密集部を強調した強調画像EGとして、点αを表示させる強調画像表示制御部と、を備えることを特徴とする。前記密集部検出部は、例えば単位面積あたりの微小構造物の数に基づいて前記密集部を検出する。前記強調画像表示制御部は、前記強調画像EGの表示と非表示とを切り替えるようになっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小構造物の密集部を検出する超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて作成される超音波画像を表示する超音波診断装置が知られている。そして、超音波診断装置に表示された超音波画像において、乳房組織に生じた微小石灰化を探して乳癌の診断を行なう場合がある。
【0003】
具体的には、乳癌になると乳房組織に生じる微小石灰化の部分は、Bモード画像において周囲よりも高輝度の点として表れる。従って、このような高輝度の点の有無をBモード画像において確認することにより、乳癌の診断が行なわれている。
【0004】
しかし、周囲よりも高輝度であるとはいっても、画像の中からこのような高輝度の点を目視で見つけることは困難である。そこで、微小石灰化のような微小構造物を、超音波画像に基づいて自動的に抽出する手法が特許文献1,2などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−102784号公報
【特許文献2】特開2006−305337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、微小石灰化が生じている部分が、必ずしも悪性の腫瘍であるとは限らず、微小石灰化した部分がが密集している場合に、悪性であると言われている。従来は、微小石灰化を自動的に抽出することはできても、悪性であると疑われる部位を自動的に検出することはできなかった。従って、悪性であると疑われる部位を見つけやすい画像を表示することができる超音波診断装置及びその制御プログラムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するためになされた第1の観点の発明は、超音波画像における微小構造物を抽出する抽出部と、抽出された微小構造物の密集部を検出する密集部検出部と、検出された密集部を強調した強調画像を表示させる強調画像表示制御部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0008】
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記密集部検出部は、単位面積あたりの微小構造物の数に基づいて前記密集部を検出することを特徴とする超音波診断装置である。
【0009】
第3の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記密集部検出部は、隣り合う二つの微小構造物の距離に基づいて前記密集部を検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置である。
【0010】
第4の観点の発明は、第1〜3のいずれか一の観点の発明において、前記強調画像は、前記密集部における各微小構造物を指示する画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第5の観点の発明は、第1〜3のいずれか一の観点の発明において、前記強調画像は、前記密集部全体を囲む画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第6の観点の発明は、第1〜3のいずれか一の観点の発明において、前記強調画像は、前記密集部の拡大画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第7の観点の発明は、第1〜6のいずれか一の観点の発明において、前記抽出部は、被検体に送信された超音波のエコー信号に基づいて、超音波画像において周囲よりも高輝度になっている点を抽出することを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
第8の観点の発明は、第1〜7のいずれか一の観点の発明において、前記強調画像表示制御部は、前記強調画像の表示と非表示とを切り替えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
第9の観点の発明は、コンピュータに、超音波画像における微小構造物を抽出する抽出機能と、抽出された微小構造物の密集部を検出する密集部検出機能と、検出された密集部を強調した強調画像を表示させる強調画像表示制御機能と、を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
上記観点の発明によれば、微小構造物の密集部を強調した強調画像が表示されるので、悪性であると疑われる部位を見つけやすい画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】微小構造物の抽出の説明図である。
【図4】微小構造物の抽出の対象となる画素付近の画素を示す概念図であり、(A)は微小構造物が抽出される場合の図、(B)は微小構造物が抽出されない場合の図である。
【図5】Bモード画像における微小構造物の図である。
【図6】実施形態の超音波診断装置の作用を示すフローチャートである。
【図7】表示部に表示された強調画像の一例である。
【図8】表示部に表示された強調画像の他例である。
【図9】表示部に表示された強調画像の他例である。
【図10】表示部に表示された強調画像の他例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図10に基づいて詳細に説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8を備える。
【0019】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。
【0020】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の送信条件で駆動させ、スキャン面を超音波ビームによって音線順次で走査させる。前記送受信部3は前記制御部8からの制御信号によって前記超音波プローブ2を駆動させる。
【0021】
また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で得られたエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0022】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等の所定の処理を行ない、Bモードデータを作成する。
【0023】
前記表示制御部5は、図2に示すように、超音波画像表示制御部51、抽出部52、密集部検出部53及び強調画像表示制御部54を有する。前記超音波画像表示制御部51は、スキャンコンバータ(Scan Converter)を含んで構成され、前記エコーデータ処理部4から出力されたBモードデータを前記表示部6に表示されるBモード画像データに走査変換する。そして、前記超音波画像表示制御部51は、前記Bモード画像データに基づくBモード画像を前記表示部6に表示させる。
【0024】
前記抽出部52は、エコー信号に基づいてBモード画像における微小構造物を抽出する。本例では、前記抽出部52は、エコー信号に基づいて作成されたBモード画像データに基づいて微小構造物を抽出する(抽出機能)。この微小構造物は、Bモード画像において周囲よりも高輝度になっている点であり、前記抽出部52は、このような微小構造物として例えば乳房組織における微小石灰化を抽出する。前記抽出部52は、本発明における抽出部の実施の形態の一例であり、抽出機能は本発明における抽出機能の実施の形態の一例である。
【0025】
前記抽出部52による微小構造物の抽出手法の一例について図3,4に基づいて説明する。前記抽出部52は、例えば画素毎に微小構造物の有無を判定することにより微小構造物の抽出を行なう。具体的に説明すると、図3において、微小構造物の有無の判定対象の画素をPとすると、この画素Pを通る音線方向l1とこの音線方向l1と直交する直交方向l2を想定する。次に、音線方向l1と直交方向l2において、画素Pを中心として所定範囲R1,R2における各画素(図示省略)の輝度Bを検出する。そして、画素Pの輝度Bが所定の閾値BTH以上であり、なおかつ音線方向l1及び直交方向l2の両方向において、閾値BTH以上の輝度になっている画素が所定数未満であれば、画素Pに微小構造物が存在すると判定する。一方で、画素Pの輝度Bが閾値BTH未満である場合、または音線方向l1及び直交方向l2のいずれかの方向において、閾値BTH以上の輝度になっている画素が所定数以上であれば、画素Pに微小構造物が存在しないと判定する。
【0026】
例えば、図4において斜線で示した画素が閾値BTH以上の輝度になっている場合、図4(A)に示すように、音線方向l1及び直交方向l2のいずれにおいても、画素Pのみが閾値BTH以上の輝度になっており、閾値BTH以上の輝度になっている画素が所定数未満である場合、画素Pに微小構造物が存在すると判定される。一方、図4(B)に示すように、直交方向l2において閾値BTH以上の輝度になっている画素が連続しており、このような画素が所定数以上あれば、画素Pには微小構造物が存在しないと判定される。
【0027】
ただし、微小構造物を抽出する手法としては、上述の手法に限られるものではなく、例えば前記特許文献1,2に記載された手法など他の公知の手法を用いることができる。
【0028】
前記密集部検出部53は、前記抽出部52によって抽出された微小構造物の密集部を検出する(密集部検出機能)。この密集部検出部53は、本発明における密集部検出部の実施の形態の一例であり、密集部検出機能は本発明における密集部検出機能の実施の形態の一例である。
【0029】
例えば、前記密集部検出部53は、単位面積あたりの微小構造物の数が所定値以上である部分を密集部とする。また、前記密集部検出部53は、隣り合う二つの微小構造物の距離に基づいて密集部の検出を行なってもよい。隣り合う二つの微小構造物の距離に基づく検出を行なう場合、例えば密集部検出部53は各微小構造物について、最も近い他の微小構造物を特定し、これらを隣り合う二つの微小構造物とする。例えば、図5に示すように、微小構造物X1については、微小構造物X2が最も近い微小構造物であり、微小構造物X2については、微小構造物X3が最も近い微小構造物であるものとする。この場合、微小構造物X1,X2及び微小構造物X2,X3は隣り合う二つの微小構造物である。そして、前記密集部検出部53は、隣り合う二つの微小構造物の距離Dの全てについて、所定の閾値DTHよりも小さいか判定し、閾値DTHよりも小さくなっているものが所定数よりも多ければ密集部とする。
【0030】
前記強調画像表示制御部54は、前記密集部検出部53によって検出された密集部を強調した強調画像を前記表示部6に表示させる(強調画像表示制御機能)。詳細は後述する。前記強調画像表示制御部54は、本発明における強調画像表示制御部の実施の形態の一例であり、また強調画像表示制御機能は本発明における強調画像表示制御機能の実施の形態の一例である。
【0031】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0032】
前記制御部8は、CPU(CentRal Processing Unit)を有して構成される。この制御部8は、図示しない記憶部に記憶された制御プログラムを読み出し、前記抽出機能、前記密集部検出機能及び前記強調画像表示制御機能をはじめとする前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0033】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について図6のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1では、前記超音波プローブ2によって被検体に対して超音波を送受信を開始し、エコー信号を取得する。このエコー信号に基づいて作成されたBモード画像が前記表示部6に表示される。次に、ステップS2では、前記抽出部52が微小構造物の抽出を行なう。そして、ステップS2において微小構造物が抽出されると、ステップS3では前記密集部検出部53が密集部の検出を行なう。
【0034】
ステップS3において密集部が検出されると、ステップS4では前記強調画像表示制御部54が密集部を強調した強調画像を表示させる。前記強調画像表示制御部54は、例えば図7に示すように、表示部6に表示されたBモード画像BGにおいて、強調画像EGとして、密集部における各微小構造物(図示省略)上に点αを表示させる。本例では、点αは白色で表示されるものとする。ただし、白色以外の色で表示されてもよい。また、前記点αを点滅させるようにしてもよい。前記点αは、本発明における強調画像の実施の形態の一例であり、各微小構造物を指示する画像の実施の形態の一例である。
【0035】
ただし、強調画像EGは、点αに限られるものではない。強調画像EGの他例について説明すると、前記強調画像表示制御部54は、図8に示すように密集部における各微小構造物Xを囲む円βを前記強調画像EGとして表示してもよい。この円βも本発明において各微小構造物を指示する画像の実施の形態の一例である。
【0036】
また、前記強調画像表示制御部54は、図9に示すように密集部全体を囲む画像、すなわち密集部における微小構造物Xの全てを囲む一つの円γを前記強調画像EGとして表示してもよい。さらに、前記強調画像表示制御部54は、図10に示すように密集部の拡大画像δを前記強調画像EGとして表示してもよい。本例では、前記拡大画像δは前記密集部の一部を拡大した画像であり、カーソルCを基準として設定された一点鎖線(仮想線)で示す領域Aの拡大画像である。この領域Aは、前記操作部7のポインティングデバイスなどを用いてカーソルCを移動させることにより、所望の位置に設定することができ、所望の領域の拡大画像δを表示させることができるようになっている。
【0037】
ここで、前記強調画像表示制御部54は、前記強調画像EGの表示と非表示とを切り替えるようになっていてもよい。この場合、前記強調画像表示制御部54は、例えば前記操作部7からの入力に基づいて前記強調画像EGの表示と非表示とを切り替える。
【0038】
以上説明した超音波診断装置1によれば、前記強調画像EGが表示されるので、悪性であると疑われる部位を見つけやすい画像を表示することができる。
【0039】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。
【符号の説明】
【0040】
1 超音波診断装置
52 抽出部
53 密集部検出部
54 強調画像表示制御部
EG 強調画像
X 微小構造物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像における微小構造物を抽出する抽出部と、
抽出された微小構造物の密集部を検出する密集部検出部と、
検出された密集部を強調した強調画像を表示させる強調画像表示制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記密集部検出部は、単位面積あたりの微小構造物の数に基づいて前記密集部を検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記密集部検出部は、隣り合う二つの微小構造物の距離に基づいて前記密集部を検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記強調画像は、前記密集部における各微小構造物を指示する画像であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記強調画像は、前記密集部全体を囲む画像であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記強調画像は、前記密集部の拡大画像であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記抽出部は、被検体に送信された超音波のエコー信号に基づいて、超音波画像において周囲よりも高輝度になっている点を抽出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記強調画像表示制御部は、前記強調画像の表示と非表示とを切り替えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
コンピュータに、
超音波画像における微小構造物を抽出する抽出機能と、
抽出された微小構造物の密集部を検出する密集部検出機能と、
検出された密集部を強調した強調画像を表示させる強調画像表示制御機能と、
を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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